有機ELモニタのHDR輝度性能評価が難しくなる理由について簡単に考察と解説。
ウィンドウサイズ=APLと一般的に考えられますが、イコールと考えていいのか注意が必要で、有機ELモニタのEOTF測定がEOTFになっていない話。
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有機ELモニタのHDR輝度性能評価が難しくなる理由について簡単に考察と解説をします。
実のところ、”APL”の考え方そのものに落とし穴があります。
一般的なHDR輝度性能の測定方法では『画面全体に対して大きさが〇%のウィンドウサイズの測定窓を中央に配置し、背景は完全な黒色 RGB値0』というテストパターンが使用されます。
このような測定パターンに対してウィンドウサイズ=APLと一般的に考えられますが、イコールと考えていいのか注意が必要です。
必ずしもウィンドウサイズ = APLではない
例えばウィンドウサイズを20%とした場合、測定窓のRGBレベルを50%(約100cd/m^2)にしても、APL 20%におけるRGBレベル 50%の輝度を測定することにはなりません。
ウィンドウサイズが20%の時のRGBレベル 50%の輝度であって、APL 20%の時のではありません。この時のAPLは単純計算でも『 100cd/m^2 * 0.2 / 10000 』、つまりAPL 0.2%になります。
上の模式図左側のテストパターンに小さくRGBレベル 50%の四角形を追加した場合、左右のテストパターンではAPLが大きく異なるので、同じRGBレベルでも実際の表示輝度が大きく異なる可能性があります。
EOTFとは本来、特定フレーム(=特定のAPL)において各RGBレベルがどういった輝度になるかを示すものです。
APL制御によって輝度が変わる有機ELモニタの場合、こういったテストパターンで測定した輝度カーブはRGB値毎にAPLが異なるので本質的にEOTFと異なるものになります。
APLが異なる輝度値の集合なので、当然、実際のHDR映像の明るさの評価と一致しません。
APL計算が『各ピクセルの輝度値はPQカーブで決まり、その総和を10000cd/m^2で割る』くらいに単純であれば、長方形テストパターンの作り方(背景レベルの調整や複数段・複数ウィンドウなど)を工夫すれば平均RGBレベルの調整はできなくもありませんが、次章で説明する通り、現実には特定のAPLを狙った調整は困難です。
この計算にあたり問題というか、エンドユーザーからすると複数の不明点があります。
まず不明点の中でも分かり易いものとして、画面全体の総和輝度を測定する時点で『カットオフピーク輝度』が存在します。
カットオフピーク輝度とは、例えばHDR10規格の場合、最大10000cd/m^2までの輝度がPQカーブで規定されていますが、各ピクセルの輝度総和を計算する時にカットオフピーク輝度よりも高い輝度のRGB値であっても特定値とみなす上限輝度です。
APL計算においてカットオフピーク輝度が存在すること自体はいくつかの簡単な測定で分かりますし、複数の有機ELモニタで確認しています。ただその厳密な数値自体は不明ですし、モニタ製品やHDR動作モードで異なります。MaxML/MaxCLLなど代表的なHDRメタデータと必ずしも一致するわけでもありません。
例えばカットオフピーク輝度が500cd/m^2と900cd/m^2の2種類のモニタについて、中央にウィンドウサイズ 20%、RGBレベル 100%の高輝度窓、背景は約100cd/m^2のRGBレベル 50%のテストパターンを考えてみます。
カットオフピーク輝度が500cd/m^2のモニタの場合、画面全体の総和輝度は『500*0.2 + 100*0.8 = 180cd/m^2』、一方で900cd/m^2のモニタの場合、画面全体の総和輝度は『900*0.2 + 100*0.8 = 260cd/m^2』となります。
カットオフピーク輝度がAPLの分母となる平均フレーム輝度と一致すると仮定すると、前者のAPLは36.0%、後者のAPLは28.9%となります。つまり同じ映像を表示していてもAPLが一致しません。
カットオフピーク輝度の存在についてはまだ簡単な部類で、その他にも、
これらすべてを手探りの状態から解析して、各モニタのAPL制御の挙動を把握した上で輝度性能を評価するのは実質不可能です。
これが有機ELモニタのHDR輝度性能評価を難しくする理由です。
こうなるとAPLによる輝度制御の強い有機ELモニタについては実際のゲーム・映像における輝度性能を単純な長方形テストパターンで評価するのは困難であり、精度の面でも怪しいと言わざるを得ません。
そこで妥協案として、実際のHDRゲーム映像の中央にウィンドウサイズ 2%の測定ウィンドウを重ねるという測定方法を採用しました。
この方法でも測定ウィンドウ自体のRGB値によってAPLへの影響はあるものの、黒背景でウィンドウサイズ=APLとするよりかは、特定APLのEOTFに近い測定結果が得られます。
採用したテストシーンはAPL別でLow、Middle #1/2、Middle+、High、Flashの6種類です。
APL:Low~Highの5種類についてはシンプルに測定ウィンドウがリファレンスに対してどれくらいの輝度を発揮できるのか見ます。
APL:Flashは爆発など文字通りフラッシュ表現における瞬間的な高輝度を見ます。フラッシュ表現であっても必ずしも画面全てが高輝度というわけではなく、比較的に広く高輝度が広がるというのが実状なので、APL:Flashについては基本的にリファレンスで600~1000cd/m^2以上の最大輝度に注目すればOKです。今回選抜したAPL:High以上の高輝度シーンにおける輝度性能の参考にしてもかまいません。
筆者は全画面で1000cd/m^2以上を発揮できるFALD液晶モニタも検証したことがあり、経験的に言って輝度性能が高ければ高いほど、リアルさの再現性や迫力が増すことは間違いありません。
同時にHDRの魅力の1つである高輝度表現(ダイナミックレンジの広さ)を正しく体験する水準について言うなら、Samsung S95BやSONY INZONE M9程度の輝度性能が必要と感じています。
具体的には、Flashを除く5種類のテストシーンにおいて最大輝度で600cd/m^2以上、50%のベース輝度で70~80cd/m^2以上をキープできるくらいの輝度性能がないと、高輝度やダイナミックレンジという意味でのHDR体験には不十分だと思います。
今回、APL:Highとして指定しているシーンよりも高輝度なシーンも実際にはありますが、ひとまずHDR体験の入門として及第点が出せるかどうかを基準に6種類のテストシーンを選抜しました。
Alienware AW3225QFのTrueBlackモードの場合、一般的なウィンドウサイズ別で単純に異なるRGB値のEOTFを測定するとこんな感じになります。
ゲーム映像に測定ウィンドウを重ねて概ねAPLが一定になるようにして測定するとこうなります。
有機ELモニタにおいて正しいAPL別のEOTFは高輝度になるにつれて途中でリファレンスから離れるのではなく、APLの増加に応じて全体が低輝度方向へオフセットします。
よく考えればこちらの方がAPLに対する挙動としては自然です。逆にこの正しいEOTFを見た後だと、上のウィンドウサイズ別の測定は最大輝度以外に全く意味がないというか、現実のHDR映像に対してどういった反映がされるのか全く分からないことが浮き彫りになります。
Alienware AW3225QFのPeak 1000モードの場合、一般的なウィンドウサイズ別で単純に異なるRGB値のEOTFを測定するとこんな感じになります。
20%以上のウィンドウサイズでTrueBlackよりも暗くなっていそうなイメージはあるものの、これだけ見ると100cd/m^2まではまるでリファレンス通りに輝度が出ているかのように見えます。
しかし、ゲーム映像に測定ウィンドウを重ねて概ねAPLが一定になるようにして測定するとこうなります。
今回選抜した中では低APLなシーンですら、100~250cd/m^2のベース輝度部分はリファレンスを下回りますし、標準的な明るさのMiddle以上のAPLではリファレンスの半分も輝度を発揮できません。
比較的に素直なTrueBlackモードですら実際の映像がどうなるかよく分かりませんし、Peak1000モードの映像の暗さも直感的に把握できないので、やはり従来の単純な長方形テストパターンによるEOTF測定は有機ELモニタを評価するには不十分な手法と言わざるを得ません。
またLG製有機ELパネルを採用するASUS ROG Swift OLED PG27AQDMについて、ゲーム映像に測定ウィンドウを重ねて概ねAPLが一定になるようにして測定するとこうなります。
Alienware AW3225QFのTrueBlackモードと比較すると、APL:LowやMiddleではシンプルに高輝度ですが、Middle+やHighになるとより高いピーク輝度を発揮する反面、100~250cd/m^2のベース輝度は少し暗くなります。Flashもピーク輝度は近いですが、中間部分はASUS ROG Swift OLED PG27AQDMのほうがかなり低輝度です。
こういった細かい違いも従来のテストパターンでは観測できません。
理由は単純にAPLが増大することによって100~500cd/m^2のようなベース輝度からちょっと明るいくらいの輝度域で輝度が下がることはないからです。
従来の長方形テストパターンでも、実際のゲーム映像の中央に重ねたテストパターンでも、EOTFのカーブはほぼ同じになります。
ただし上のグラフを見ての通り、FALDバックライト制御が理由で、低APLにおいて輝度がリファレンスやモニタ固有の最大性能よりも下がることがあります。
具体的な影響として、先日レビューしたXiaomi G Pro 27iでも指摘しているように、暗い背景の白文字やゲームのUIが暗くなります。有機ELとはまた違った問題点もあるので、次はこの辺りを上手く評価する方法を検討しようと思っています。
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
ウィンドウサイズ=APLと一般的に考えられますが、イコールと考えていいのか注意が必要で、有機ELモニタのEOTF測定がEOTFになっていない話。
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有機ELモニタのHDR輝度性能評価が難しくなる理由について簡単に考察と解説をします。
実のところ、”APL”の考え方そのものに落とし穴があります。
一般的なHDR輝度性能の測定方法では『画面全体に対して大きさが〇%のウィンドウサイズの測定窓を中央に配置し、背景は完全な黒色 RGB値0』というテストパターンが使用されます。
このような測定パターンに対してウィンドウサイズ=APLと一般的に考えられますが、イコールと考えていいのか注意が必要です。
必ずしもウィンドウサイズ = APLではない
例えばウィンドウサイズを20%とした場合、測定窓のRGBレベルを50%(約100cd/m^2)にしても、APL 20%におけるRGBレベル 50%の輝度を測定することにはなりません。ウィンドウサイズが20%の時のRGBレベル 50%の輝度であって、APL 20%の時のではありません。この時のAPLは単純計算でも『 100cd/m^2 * 0.2 / 10000 』、つまりAPL 0.2%になります。
上の模式図左側のテストパターンに小さくRGBレベル 50%の四角形を追加した場合、左右のテストパターンではAPLが大きく異なるので、同じRGBレベルでも実際の表示輝度が大きく異なる可能性があります。
EOTFとは本来、特定フレーム(=特定のAPL)において各RGBレベルがどういった輝度になるかを示すものです。
APL制御によって輝度が変わる有機ELモニタの場合、こういったテストパターンで測定した輝度カーブはRGB値毎にAPLが異なるので本質的にEOTFと異なるものになります。
APLが異なる輝度値の集合なので、当然、実際のHDR映像の明るさの評価と一致しません。
APL計算が『各ピクセルの輝度値はPQカーブで決まり、その総和を10000cd/m^2で割る』くらいに単純であれば、長方形テストパターンの作り方(背景レベルの調整や複数段・複数ウィンドウなど)を工夫すれば平均RGBレベルの調整はできなくもありませんが、次章で説明する通り、現実には特定のAPLを狙った調整は困難です。
APL計算には謎が多く、解析は困難
APLの計算には当然の大枠として、『画面全体の総和輝度を計算してAPLの分母となる平均フレーム輝度で割る』という手順が必要になります。この計算にあたり問題というか、エンドユーザーからすると複数の不明点があります。
まず不明点の中でも分かり易いものとして、画面全体の総和輝度を測定する時点で『カットオフピーク輝度』が存在します。
カットオフピーク輝度とは、例えばHDR10規格の場合、最大10000cd/m^2までの輝度がPQカーブで規定されていますが、各ピクセルの輝度総和を計算する時にカットオフピーク輝度よりも高い輝度のRGB値であっても特定値とみなす上限輝度です。
APL計算においてカットオフピーク輝度が存在すること自体はいくつかの簡単な測定で分かりますし、複数の有機ELモニタで確認しています。ただその厳密な数値自体は不明ですし、モニタ製品やHDR動作モードで異なります。MaxML/MaxCLLなど代表的なHDRメタデータと必ずしも一致するわけでもありません。
例えばカットオフピーク輝度が500cd/m^2と900cd/m^2の2種類のモニタについて、中央にウィンドウサイズ 20%、RGBレベル 100%の高輝度窓、背景は約100cd/m^2のRGBレベル 50%のテストパターンを考えてみます。
カットオフピーク輝度が500cd/m^2のモニタの場合、画面全体の総和輝度は『500*0.2 + 100*0.8 = 180cd/m^2』、一方で900cd/m^2のモニタの場合、画面全体の総和輝度は『900*0.2 + 100*0.8 = 260cd/m^2』となります。
カットオフピーク輝度がAPLの分母となる平均フレーム輝度と一致すると仮定すると、前者のAPLは36.0%、後者のAPLは28.9%となります。つまり同じ映像を表示していてもAPLが一致しません。
カットオフピーク輝度の存在についてはまだ簡単な部類で、その他にも、
- APLの分母となる平均フレーム輝度も独立して設定されているかも
- 総和計算時の各ピクセル輝度値はHDRリファレンス(PQカーブ)と一致しないかも
- RGB値 0など黒に近い数値は総和計算においてネガティブ値の可能性も
- 総和計算が全ピクセルの総和ではなく、エリア分割した最大値の抜粋の可能性も
これらすべてを手探りの状態から解析して、各モニタのAPL制御の挙動を把握した上で輝度性能を評価するのは実質不可能です。
これが有機ELモニタのHDR輝度性能評価を難しくする理由です。
有機ELモニタのHDR輝度性能の評価
APLの計算方法が単純かつ統一されたものであれば、背景レベルの調整や複数段・複数ウィンドウなどテストパターンの工夫で、特定のAPLに固定して各RGB値の輝度を測定できるかと思ったのですが、前章で述べた通り、ブラックボックス過ぎるので諦めました。こうなるとAPLによる輝度制御の強い有機ELモニタについては実際のゲーム・映像における輝度性能を単純な長方形テストパターンで評価するのは困難であり、精度の面でも怪しいと言わざるを得ません。
そこで妥協案として、実際のHDRゲーム映像の中央にウィンドウサイズ 2%の測定ウィンドウを重ねるという測定方法を採用しました。
この方法でも測定ウィンドウ自体のRGB値によってAPLへの影響はあるものの、黒背景でウィンドウサイズ=APLとするよりかは、特定APLのEOTFに近い測定結果が得られます。
採用したテストシーンはAPL別でLow、Middle #1/2、Middle+、High、Flashの6種類です。
APL:Low~Highの5種類についてはシンプルに測定ウィンドウがリファレンスに対してどれくらいの輝度を発揮できるのか見ます。
APL:Flashは爆発など文字通りフラッシュ表現における瞬間的な高輝度を見ます。フラッシュ表現であっても必ずしも画面全てが高輝度というわけではなく、比較的に広く高輝度が広がるというのが実状なので、APL:Flashについては基本的にリファレンスで600~1000cd/m^2以上の最大輝度に注目すればOKです。今回選抜したAPL:High以上の高輝度シーンにおける輝度性能の参考にしてもかまいません。
筆者は全画面で1000cd/m^2以上を発揮できるFALD液晶モニタも検証したことがあり、経験的に言って輝度性能が高ければ高いほど、リアルさの再現性や迫力が増すことは間違いありません。
同時にHDRの魅力の1つである高輝度表現(ダイナミックレンジの広さ)を正しく体験する水準について言うなら、Samsung S95BやSONY INZONE M9程度の輝度性能が必要と感じています。
具体的には、Flashを除く5種類のテストシーンにおいて最大輝度で600cd/m^2以上、50%のベース輝度で70~80cd/m^2以上をキープできるくらいの輝度性能がないと、高輝度やダイナミックレンジという意味でのHDR体験には不十分だと思います。
今回、APL:Highとして指定しているシーンよりも高輝度なシーンも実際にはありますが、ひとまずHDR体験の入門として及第点が出せるかどうかを基準に6種類のテストシーンを選抜しました。
有機ELモニタのAPL別EOTFは本来こうなる
実際のHDRゲーム映像の中央に測定ウィンドウを重ねる測定方法の場合、APL別のEOTFがどうなるのか見ていきます。APL別といってもこちらで任意に選んだ6種類ではありますが。Alienware AW3225QFのTrueBlackモードの場合、一般的なウィンドウサイズ別で単純に異なるRGB値のEOTFを測定するとこんな感じになります。
ゲーム映像に測定ウィンドウを重ねて概ねAPLが一定になるようにして測定するとこうなります。
有機ELモニタにおいて正しいAPL別のEOTFは高輝度になるにつれて途中でリファレンスから離れるのではなく、APLの増加に応じて全体が低輝度方向へオフセットします。
よく考えればこちらの方がAPLに対する挙動としては自然です。逆にこの正しいEOTFを見た後だと、上のウィンドウサイズ別の測定は最大輝度以外に全く意味がないというか、現実のHDR映像に対してどういった反映がされるのか全く分からないことが浮き彫りになります。
Alienware AW3225QFのPeak 1000モードの場合、一般的なウィンドウサイズ別で単純に異なるRGB値のEOTFを測定するとこんな感じになります。
20%以上のウィンドウサイズでTrueBlackよりも暗くなっていそうなイメージはあるものの、これだけ見ると100cd/m^2まではまるでリファレンス通りに輝度が出ているかのように見えます。
しかし、ゲーム映像に測定ウィンドウを重ねて概ねAPLが一定になるようにして測定するとこうなります。
今回選抜した中では低APLなシーンですら、100~250cd/m^2のベース輝度部分はリファレンスを下回りますし、標準的な明るさのMiddle以上のAPLではリファレンスの半分も輝度を発揮できません。
比較的に素直なTrueBlackモードですら実際の映像がどうなるかよく分かりませんし、Peak1000モードの映像の暗さも直感的に把握できないので、やはり従来の単純な長方形テストパターンによるEOTF測定は有機ELモニタを評価するには不十分な手法と言わざるを得ません。
またLG製有機ELパネルを採用するASUS ROG Swift OLED PG27AQDMについて、ゲーム映像に測定ウィンドウを重ねて概ねAPLが一定になるようにして測定するとこうなります。
Alienware AW3225QFのTrueBlackモードと比較すると、APL:LowやMiddleではシンプルに高輝度ですが、Middle+やHighになるとより高いピーク輝度を発揮する反面、100~250cd/m^2のベース輝度は少し暗くなります。Flashもピーク輝度は近いですが、中間部分はASUS ROG Swift OLED PG27AQDMのほうがかなり低輝度です。
こういった細かい違いも従来のテストパターンでは観測できません。
補足:FALD対応液晶モニタの場合は?
APL制御についてFALD対応液晶モニタは基本的に気にする必要はありません。理由は単純にAPLが増大することによって100~500cd/m^2のようなベース輝度からちょっと明るいくらいの輝度域で輝度が下がることはないからです。
従来の長方形テストパターンでも、実際のゲーム映像の中央に重ねたテストパターンでも、EOTFのカーブはほぼ同じになります。
ただし上のグラフを見ての通り、FALDバックライト制御が理由で、低APLにおいて輝度がリファレンスやモニタ固有の最大性能よりも下がることがあります。
具体的な影響として、先日レビューしたXiaomi G Pro 27iでも指摘しているように、暗い背景の白文字やゲームのUIが暗くなります。有機ELとはまた違った問題点もあるので、次はこの辺りを上手く評価する方法を検討しようと思っています。
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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