PS5のVRR対応が不完全な理由


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PlayStation 5は可変リフレッシュレート同期(VRR)機能に対応していますが、低フレームレート補正 LFC(一部のゲームでいうところの120Hzモード)をシステムから強制できないという不完全な対応状況が続いています。
本来理想的なVRRなら従来の画面表示と比較してどう変わるのか、またファイナルファンタジー16など一部のゲームでVRRが使用できるのにスタッターが生じてガクガクと画面の動きが滑らかではない理由を解説します。


PlayStation 5はVRRに対応

現在最新ファームウェアにおいて、PlayStation 5は可変リフレッシュレート同期(VRR:Variable Refresh Rate)機能に対応しています。
PS5_VRR_1

少し補足しておくと、以前当サイトで取り上げたPS5のVRRを使用した時に液晶モニタの点滅・焼き付きが発生する現象についてはPS5の最新ファームウェアで修正済みです。



可変リフレッシュレート同期機能はNVIDIA G-Syncを皮切りに、PC向けディスプレイの業界団体VESAがAdaptive-Syncとして規格化し、それに準拠した内容でAMDがFreeSyncという認証を作成するなどゲーミングPCで最初に広まっていった機能です。(その後、NVIDIAもG-Sync Compatibleという認証をAdaptive-Sync対応モニタに対して付与)
VRRの技術的な話やPCゲーミングにおけるTipsについては、PC向けのG-Sync/FreeSyncに関する記事で説明しているのでこちらを参照してください。


近年ではこの記事の題材でもあるPlayStation 5やXbox Series X|Sといった最新コンソールゲーム機がVRRをサポートしています。
HDMIの最新バージョンであるHDMI2.1にHDMI Variable Refresh RateとしてVESA Adaptive-Syncが組み込まれたことで、映像表示機器についてもPC向けディスプレイだけでなく、SONY製を含め国内メーカー製テレビがVRRをサポートしており、出力機器と入力機器のトータルで一般的なゲーミングシーンに普及しつつある機能です。
HDMI2.1_Feature







VRRの効果を解説。同じようなFPSでも滑らかに

続いて具体的にVRRの効果を動画で説明していきます。
ROG ALLYのレビュー用に作成した素材ですが、フレームレート表示やカラーバーなどOSDが使えるほうが参考動画として分かり易いので。PCゲームの画面でもPS5でも結果は同じです。

まずPS5やXboxなどコンソールゲーム機で一般的な垂直同期とVRRの比較です。
一般的な60HzのテレビやPCモニタにおいてゲーム機の映像出力がピッタリ60FPSであるならスタッター(カクツキ)は発生しません。昔のコンソールゲーム機はだいたいが30FPSもしくは60FPSの固定フレームレートで安定して描画できる設計でした。(PS2のFF12とか例外もありましたが)
Monitor Refresh_Sync_1_ideal

PS5でも60FPSのフレームレートを安定して出せるなら垂直同期でもVRRでも画面の滑らかさに差は生まれません。VRRだと通常、低遅延になるので操作レスポンス面で差はありますが。

しかしPS4/PS4 Pro以降、コンソールゲーム機でもフレームレート優先設定でも40~60FPSの変動フレームレートというゲームが増えてきました。60Hzのモニタの場合、画面更新のタイミングを1回逃すと16ms程度、さらにもう1度逃すと計32ms程度のように、ハッキリとカクつきとして認識できるスタッターが生じてしまいます。
(画質優先ですら30FPSをベースに負荷においてはそれを下回ることも。流石にそこまで下がるとどうしようもない)
Monitor Refresh_Sync_2_V-Sync

そういった近年の40~60FPSの変動フレームレートなゲームにおいて、垂直同期と(完全な)VRRを比較したのが次の動画です。
垂直同期ではゲームのフレームレートがリフレッシュレートに一致せず、下回る時に生じるスタッター(カクツキ)がVRRでは綺麗に解消されています。フレームレート自体は似たような数字ですが、画面更新が等間隔なので体感する滑らかさはVRRの方が圧倒的に上です。


また補足として、コンソールゲーム機のゲームでは滅多に使用されることはありませんが同期なし(垂直同期無効)との比較です。
同期なしは、フレームレートがリフレッシュレートと一致しない場合に(概ね一致したとしてもフレーム出力と画面リフレッシュのタイミングはほぼ確実にズレるので)、テアリングと呼ばれるフレーム更新による画面の分断が生じます。また垂直同期よりは軽減されますが多少のカクツキもあります。VRRならテアリングもなく画面更新もほぼ一定間隔でスムーズです。




PS5のVRR対応が不完全な理由。LFC非対応だから

さてここからが本題です。
PS5も本来ならVRRと垂直同期を比較した上の動画のように、VRRを有効化できるゲーム全てで画面表示が滑らかになる(スタッターが解消される)はずなのですが、実際にはそうなっていません。その理由が「低フレームレート補正(LFC: Low Framerate Compensation)」です。

PS5のビデオ出力情報にも表示されるように、VRRではリフレッシュレートが可変になりますがリフレッシュレートを変化させられる範囲(VRRレンジ)、つまりフレームレートの変化に対して画面更新が追従できる範囲が決まっています。
PS5_VRR_1

ゲームフレームレートがVRRの下限リフレッシュレートを下回っても滑らかに画面を更新できるようにする機能が低フレームレート補正(LFC: Low Framerate Compensation)です。
LFCはフレームレートが下限を下回った時に、フレームを複製して倍数の高速リフレッシュレートで同期することにより滑らかな更新を維持する機能です。そのため、LFCに対応するには『最大リフレッシュレートが下限リフレッシュレートの2.5倍以上である』という要件があります。
PS5の場合は下限リフレッシュレートが48Hzなので、LFCに対応するには最大リフレッシュレートが『48Hz×2.5=120Hz』である必要があります。
Low framerate compensation

Marvel’s Spider-Man 2(RemasteredやMiles Morales)やラチェット&クランク パラレル・トラブルの120Hzモード、Horizon Forbidden Westのグラフィックモード:バランスを使用するとディスプレイの最大リフレッシュレートが120Hzになります。
これらの設定をゲーム内でONにすると、VRRレンジが48Hz~120Hzとなるので実質的にPS5におけるLFCの有効化にあたります。
PS5_VRR_2_120Hz

PS5ではシステムに「VRR非対応タイトルにおけるVRRの有効化」という設定が用意されており、ファイナルファンタジー16等でもVRRを有効化できます。
PS5_VRR_3
しかしながら、上記設定を有効にした状態でファイナルファンタジー16等のゲームを起動しても、映像出力設定を見ての通り、VRRレンジは48Hz~60HzなのでLFCを利用できていません。
PS5_VRR_4_60Hz
ファイナルファンタジー16の場合、ゲームの動作をパフォーマンス優先にすると、フレームレートは40~60FPS程度で変動しますが、48FPSを下回ることも多く、下限を下回るとリフレッシュレートは60Hz固定の垂直同期と同じになるのでスタッターが生じます。
DSC00637_DxO

LFC対応(120Hzモード)と非対応の比較が次の通りです。
48HzのVRR下限リフレッシュレートに対して前半1分くらいはフレームレートが48FPSを下回っているので、同じVRRでも上限リフレッシュレートが60Hzの右側はカクツキが生じています。一方、120HzでLFCが有効になっている左側は48FPS未満でも概ね均等な間隔で画面が更新され、滑らかです。
一方で後半は50FPSを超えてるのでほぼ同じになります。



現在、PS5でFF16のVRRがパフォーマンスモードでもガクガクなのはこれが原因です。
スパイダーマン 2やラチェット&クランクは忠実度モードにおいてフレームレートは40FPS前後ですが、同時に120Hzモード(つまりLFC)も使用できるので体感的に滑らかです。
PS5_VRR_game_Marvel's Spider-Man Remastered
DSC00627_DxO
DSC00650_DxO
120Hzモードという設定はありませんが、Horizon Forbidden Westもグラフィックモード:バランスを選ぶと、モニタのリフレッシュレートは120Hzになるので40FPS前後でも画面表示が滑らかになります。(フレームレート優先も120Hzになりますが、元々のフレームレートがほぼ60FPS張り付きなので体感的に差はない)
DSC00636_DxO


PS5もソフトウェアアップデートでとっととシステム設定としてテレビ・ゲーミングモニタの120Hz表示(LFC)を強制できるようにして欲しいところ。


あと、こちらはPS5の問題ではありませんが、PS5とPC向けゲーミングモニタを組み合わせた時によくある報告なので、一読してみてください。



以上、『PS5のVRR対応が不完全な理由』でした。
PS5のVRR対応が不完全な理由



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