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PCIE4.0x4接続により連続読み出し5GB/s前後に達する、M.2 2230サイズでASUS ROG AllyやSteam DeckのSSD換装にも使用可能なNVMe M.2 SSD「Seagate FireCuda 520N 1TB / 2TB」をレビューします。
製品公式ページ:https://www.seagate.com/jp/ja/products/gaming-drives/pc-gaming/firecuda-520n-ssd/
目次
1.Seagate FireCuda 520Nについて
2.Seagate FireCuda 520N 1TB / 2TBの外観
3.Seagate FireCuda 520N 1TB / 2TBの検証機材と基本仕様
4.Seagate FireCuda 520N 1TB / 2TBのベンチマーク比較
5.Seagate FireCuda 520N 1TB / 2TBの連続書き込みについて
6.Seagate FireCuda 520N 1TB / 2TBの消費電力と温度
7.Seagate FireCuda 520N 1TB / 2TBのレビューまとめ
付録.ROG AllyのSSD換装とOS再インストールする方法を解説 (別記事へ)
【機材協力:Seagate】
Seagate FireCuda 520Nについて
「Seagate FireCuda 520N」は、メモリコントローラーにPCIE4.0x4帯域のNVMe接続に対応するPhison PS5021-E21Tコントローラー、メモリチップにMicron製のTLC/QLC型 176層3D NANDが採用された、NVMe(PCIE4.0x4)接続でM.2 2230フォームファクタのM.2 SSDです。「Seagate FireCuda 520N」はM.2 SSDとして一般的な2280サイズではなく、長さ30mmの2230サイズとなっており、Surface Pro 9/8、ASUS ROG AllyやSteam DeckのSSD換装に対応します。(注:SSD換装後の製品保証の継続はPC次第です)
「Seagate FireCuda 520N」にはSSD容量として1TB(型番:ZP1024GV3A002)、2TB(型番:ZP2048GV3A002)の2モデルがラインナップされています。
「Seagate FireCuda 520N」のアクセススピードは容量によって若干異なりますが、最大でシーケンシャル読出5,000MB/s、シーケンシャル書込4,700MB/s、ランダム読出800,000IOPS、ランダム書込900,000IOPSの超高速アクセスを実現しています。
「Seagate FireCuda 520N」のMTBF(平均故障間隔)は180万時間、書込耐性は1TBが600TBW、2TBが450TBWとなっており、メーカーによる製品保証期間は5年間です。
さらに落下や水没でもデータ復旧を行ってもらえるSeagate公式によるRescue Data Recovery Services(データ復旧サービス)が3年間無償で利用できます。
Seagate FireCuda 520N スペック一覧 |
||
容量 | 1TB ZP1024GV3A002 |
2TB ZP2048GV3A002 |
インターフェース |
M.2, NVMe (PCIE4.0x4) |
|
コントローラー |
Phison PS5021-E21T | |
メモリ (非公表、実機サンプルより) |
Micron製 TLC型 176層3D NAND |
Micron製 QLC型 176層3D NAND |
DRAMキャッシュ | - | |
連続読出 | 4,800MB/s | 5,000MB/s |
連続書込 | 4,700MB/s | 3,200MB/s |
4Kランダム読出 | 800,000 IOPS | 480,000 IOPS |
4Kランダム書込 | 900,000 IOPS | 750,000 IOPS |
消費電力 (Active avg) |
4.3 W | 3.8 W |
動作温度範囲 | 0~70 ℃ |
|
MTBF | 180万時間 | |
耐久性評価 | 600TBW |
450TBW |
保証期間 | メーカー5年 |
Seagate FireCuda 520Nの外観
まず最初に「Seagate FireCuda 520N」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。紙製のパッケージを開くとSSD本体はプラスチックのスペーサーに収められていました。
「Seagate FireCuda 520N」のSSD本体の外観は次のようになっています。基板はM.2 2230サイズ、M-Key型のM.2 SSDです。PCB基板は黒色です。
「Seagate FireCuda 520N」の裏面については最大容量の2TBモデルも含めて素子の実装はなく、いずれも片面実装のSSDです。
「Seagate FireCuda 520N」の表面にはM.2端子を右にして右端にメモリコントローラー、その左隣にメモリチップが実装されています。
「Seagate FireCuda 520N」では同じくDRAMキャッシュレスのPhison製メモリコントローラー PS5021-E21Tが採用されています。
メモリチップは全容量で基板左側の1枚のみ、いずれもMicron製ですが、1TBモデルはTLC型 176層3D NAND(ICCIG94AYA、B47R)に対して、2TBモデルはQLC型 176層3D NAND(ICCVG96AZA、N48R)が採用されています。
「Seagate FireCuda 520N」はSSD上に実装されたDRAMキャッシュの代わりに、PCIE3.0/4.0の高速帯域を介してシステムメモリの一部をキャッシュとして使用するHMB(Host Memory Buffer)に対応しています。
自作PC向けなどで市販されているM.2 SSDは基本的に長さ80mmのM.2 2280サイズですが、「Seagate FireCuda 520N」には長さ30mmの2230サイズです。
M.2 2230サイズの「Seagate FireCuda 520N」はASUS ROG AllyやSteam DeckのハンドヘルドゲーミングPCやSurface Pro 9/8のSSD換装に対応します。
Seagate FireCuda 520N 1TB/2TBの検証機材と基本仕様
「Seagate FireCuda 520N 1TB / 2TB」の各種検証を行う環境としては、PCIE4.0/5.0に対応するAMD Ryzen 9 7950X&GIGABYTE X670E AORUS MASTERなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。テストベンチ機の構成 | |
CPU | AMD Ryzen 9 7950X (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z5 Neo F5-6000J3038F16GX2-TZ5N DDR5 16GB×2=32GB (レビュー) |
マザーボード |
GIGABYTE X670E AORUS MASTER (レビュー) |
ビデオカード | PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 990 PRO 1TB (レビュー) |
OS | Windows 11 Pro 64bit 22H2 |
電源ユニット | Corsair HX1500i 2022 (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
システムメモリの検証機材には、Ryzen 7000用OCメモリのスイートスポットとアピールされているメモリ周波数6000MHz/CL30の低レイテンシなメモリOCに対応した「G.Skill Trident Z5 Neo(型番:F5-6000J3038F16GX2-TZ5N)」を使用しています。
G.Skill Trident Z5 NeoシリーズはAMD EXPOのOCプロファイルに対応した製品なので、AMD Ryzen 7000シリーズCPUで高性能なPCを構築するお供としてオススメのOCメモリです。ARGB LEDイルミネーションを搭載したバリエーションモデル G.Skill Trident Z5 Neo RGBもラインナップされています。
・「G.Skill Trident Z5 Neo」をレビュー。EXPOで6000MHz/CL30のOCを試す!
2023年最新のSSDレビューでは高度に圧縮されたゲームデータをグラフィックボードのVRAMへ直接取り込んで、GPUによって高速に展開するDirectX 12のDirectStorageのようなAPIに対応したPCゲームも検証しています。
その時にSSDの理想的な性能を検証できるように、最新のウルトラハイエンドGPUを搭載したグラフィックボード「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN」を使用しています。
PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8は、ベイパーチャンバー構造のベースコアや、厚みのあるファンブレードをバリヤーリングで結合した重厚な冷却ファンを採用する4スロット占有大型GPUクーラーにより、各社AIBモデルの中でもトップクラスの静音性を実現しています。
メーカーのPNYは2022年に株式会社アスクが販売代理店契約を結んだばかりの新参なので国内での知名度は高くありませんが、北米など海外市場では30年以上に渡りコンシューマーならびにビジネス向けで電子機器の製造・販売を行う大手メーカーです。
国内正規品なら代理店を介してPNY公式のグローバル保証と同じ3年間の長期保証が受けられるところも魅力です。
・「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8」をレビュー
検証環境については上述の通り、AMD Ryzen 9 7950XやGIGABYTE X670E AORUS MASTERで構成されるテストベンチ機を使用していますが、検証するNVMe M.2 SSDはマザーボード上のCPUソケット直下に配置されている、CPU直結PCIE5.0x4レーン接続のM.2スロットに設置しています。
またサーマルスロットリングによる性能低下の可能性を排除するため、JIUSHARK M2-THREEという60mm角ファンでアクティブ冷却できるM.2 SSDヒートシンクを組み合わせた状態で設置しています。
GIGABYTE X670E AORUS MASTERにM.2 SSDを設置する場合、M.2-PCIE変換ボードも使用するなら、計5つの候補があり、どこに接続するかでベンチマーク結果が大きく変わります。
Ryzen 7000シリーズCPU&X670Eマザーボードの環境においてCPU直結PCIEレーンは、主にグラフィックボードで使用するPCIE5.0x16レーンに加えて、NVMe M.2 SSD用のPCIE5.0x4レーンが2つがあり、実のところNVMe M.2 SSDを使用するなら、このNVMe M.2 SSD用のCPU直結PCIE5.0x4レーンが最速となります。
「Seagate FireCuda 520N 1TB」のボリュームをWindows 11上で作成したところ、空きスペースは931GBでした。
「Seagate FireCuda 520N 2TB」のボリュームをWindows 11上で作成したところ、空きスペースは1.86TBでした。
「Seagate FireCuda 520N」はSSD上に実装されたDRAMキャッシュの代わりに、PCIE3.0/4.0の高速帯域を介してシステムメモリの一部をキャッシュとして使用するHMB(Host Memory Buffer)に対応しています。 「Seagate FireCuda 520N」の1TBモデルと2TBモデルともに、SSDが指定する最適バッファサイズは64MBで、実際に確保されるバッファサイズも64MBでした。
Seagate FireCuda 520N 1TB/2TBのベンチマーク比較
「Seagate FireCuda 520N 1TB / 2TB」の性能を測るためストレージに関する基本的なベンチマークソフトを使用して測定を行います。まずはCrystalDiskMark8.0.4 (1GiB, +Mix)について、「Seagate FireCuda 520N 1TB / 2TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
「Seagate FireCuda 520N 1TB」のベンチマークススコアは連続読み出しと連続書き込みが4.8GB/s前後に達しており、製品スペック通りの性能です。実用性能への影響の大きい4Kランダム読み出し(Q1T1)も79MB/s程度と高速です。
「Seagate FireCuda 520N 2TB」も連続読み出しが5.1GB/s、連続書き込みが3.8GB/sで製品仕様の通りです。2TBモデルはQLC型NANDなので4Kランダム読み出しが68MB/s程度と、1TBモデルよりも若干遅くなります。
ASUS ROG Allyに採用されているMicron 2400の1TB版と2TB版(標準搭載は512GB版)のCrystalDiskMarkスコアは次のようになっています。
以下、各種比較対象SSDのCrystalDiskMark8 ベンチマークスコアになっています。
AS SSD Benchmark v2.0.6821.41776 (1GB)について、「Seagate FireCuda 520N 1TB / 2TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
以下、各種比較対象SSDのAS SSD Benchmark ベンチマークスコアになっています。
Anvil’s Storage Utilities v1.1.0 (1GB)について、「Seagate FireCuda 520N 1TB / 2TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
以下、各種比較対象SSDのAnvil’s Storage Utilities ベンチマークスコアになっています。
Seagate FireCuda 520N 1TB/2TBの連続書き込みについて
「Seagate FireCuda 520N 1TB / 2TB」に連続書き込みを行った場合の動作についてチェックします。TLC型やQLC型と呼ばれる3bit以上のマルチレベルセルで動作するNANDが採用されているSSDでは、マルチレベルセル化によって遅くなる書き込み速度の底上げのため、NANDメモリの一部を高速キャッシュ領域とする機能が実装されています。
2022年現在、TLCやQLCの記憶領域を動的にSLC化する製品が多いので、この高速キャッシュ領域のことをSLCキャッシュと呼ぶことにします。(可能性としてTLC型SSDやQLC型SSDがMLCで高速キャッシュを構築することもありうる)
このようなSLCキャッシュを有するSSDにおいては、連続した大容量の書き込みによって書き込み総量がSLCキャッシュを超過した場合、書き込み速度がステップ状にガクッと下がります。
例えば600MB/sが理論的な上限速度となるSATA SSDの場合は、動画ファイルなど数十GB以上の単一ファイルの連続書き込みが発生すると、SLCキャッシュ超過後はCrystalDiskMarkなどベンチマークソフトで表示される500MB/s程度の連続書き込み速度を維持できず、100~200MB/sまで書き込み速度が低下する可能性があります。
最新のTLC型NANDをメモリチップに採用する「Seagate FireCuda 520N 1TB」がどのような挙動を見せるのか確認してみました。
「Seagate FireCuda 520N 1TB」のSLCキャッシュは2段階の動作となっており、空き容量が250GB以上あれば60GB程度、空き容量が200GBを下回ると10GB程度をSLCキャッシュ容量として使用できる構造になっており、その範囲内であれば製品仕様で紹介されているように書き込み開始から一貫して5GB/s近い書き込みスピードを発揮できました。
フォーマット直後の状態からボリューム全域に書き込みを行った時の書き込み速度の推移が下のようになっています。実用的にはあまり意味のない評価方法ですが、SLCキャッシュの挙動を把握する上では役立つこともあるので。
上でも説明した通り、5GB/s近い書き込み速度を発揮する高速なSLCキャッシュは空き容量が100%の状態でも60GB程度です。SLCキャッシュ容量自体は大きくありませんが、超過後は書き込み速度は低下するものの、TLC領域へ直接書き込むので1800MB/s程度と高速です。
「Seagate FireCuda 520N 1TB」はSLCキャッシュ外でも1800MB/s程度と書き込み速度は高速ですが、SLCキャッシュの開放と平行して書き込みアクセスが発生すると一時的に書き込み速度が100~200MB/s程度まで下がることがあります。
Seagate FireCuda 520N 2TBのSLCキャッシュについて
同じ製品シリーズでも容量モデルで性能が異なること自体は珍しくありませんが、「Seagate FireCuda 520N」は1TBモデルにTLC型NAND、2TBモデルにQLC型NANDが採用されており、全く別のSSD製品と言っても過言ではないので注意が必要で、特にSLCキャッシュの動作が大きく異なります。最新のQLC型NANDをメモリチップに採用する「Seagate FireCuda 520N 2TB」がどのような挙動を見せるのか確認してみました。
「Seagate FireCuda 520N 2TB」は空き容量が400~500GB以上あり、SLCキャッシュが十分に開放された状態であれば、100GBの書き込みを行っても、製品仕様でも紹介されているように書き込み開始から一貫して3.5GB/s以上の書き込みスピードを発揮できました。
フォーマット直後の状態からボリューム全域に書き込みを行った時の書き込み速度の推移が下のようになっています。実用的にはあまり意味のない評価方法ですが、SLCキャッシュの挙動を把握する上では役立つこともあるので。
4GB/s近い書き込み速度を発揮する高速なSLCキャッシュは空き容量が100%の状態なら460GB程度を使用でき、超過後は書き込み速度が100MB/s程度へと大幅に低下しています。
「Seagate FireCuda 520N 2TB」のSLCキャッシュ容量は空き容量に対して可変となっており、未使用状態の460GB程度を上限として、最大で空き容量の20%程度をSLCキャッシュとして使用できます。QLC型SSDは空き容量の4分の1、つまり25%がSLCキャッシュとして確保できる最大容量なので、ほぼ理想的な容量設定です。
上記グラフの通り、空き容量に対して20%程度のSLCキャッシュ容量の確保を確認はしたものの、実はSLCキャッシュの開放条件に癖があるというか、「Seagate FireCuda 520N 2TB」は書き込み終了後、積極的にSLCキャッシュを開放しません。
書き込み直後のデータをすぐに使用する(読み出す)ことを想定して、高速なSLCキャッシュ上に残す動作仕様になっているのか、後述の消費電力に関する検証の通り、今回のテスト環境では非ASPMだと上手くアイドル状態に移行していないようなので、それが原因かもしれません。
空き容量を埋めるデータとして10GBの動画ファイルを含む計100GBのフォルダを順次書き込んでいるのですが、1つのファイルサイズが10GBだからなのか、書き込みが完了した状態で十分な時間放置してもSLCキャッシュは10GB+α程度しか解放されません。
その後、40GBを書き込んで削除すると40GB、100GBを書き込んで削除すると100GBのように、書き込み後に一定時間放置することでSLCキャッシュは開放されました。(もちろん空き容量で決まる上限の範囲内で)
上記の手順で空き容量に対するSLCキャッシュ容量を確認したものの、実用的に本当に上記容量を使用できるのかどうかは筆者も半信半疑です。裏技的にSLCキャッシュを開放した可能性もあり、通常の使用方法というか本来のSLCキャッシュ開放トリガーで動作させた場合にどの程度のSLCキャッシュが確保できるのかよく分かりません。
少なくとも10GB程度は常にSLCキャッシュが確保されるとは思いますが、どちらにせよSLCキャッシュを積極的に開放しない(開放するトリガーの発動が遅い)仕様であることは間違いないので、「Seagate FireCuda 520N 2TB」は大容量な書き込みを頻繁に行う用途には不向きです。
Seagate FireCuda 520N 1TB/2TBの消費電力と温度
「Seagate FireCuda 520N 1TB / 2TB」の消費電力についてチェックしていきます。NVMe M.2 SSDの消費電力測定には、当サイトの検証に使用するためワンオフで特注した測定ツール GPU Power Testerを使用しています。
GPU Power Testerはその名の通り、PCIEスロット経由とPCIE補助電源の消費電力を直接に測定しグラフィックボードの消費電力を検証する機器ですが、M.2延長カードを改造した増設ユニットを使用することでNVMe M.2 SSDの消費電力を測定できます。
グラフィックボードの消費電力測定に使用するようなライザーケーブル/ライザーカードから、さらにM.2-PCIE変換ボードを中継すると、機器の組み合わせやPCIE5.0等の高速接続規格によってはSSDの動作が不安定になることがありますが、この方法ならマザーボードのM.2スロットにM.2 SSDを直結した時と同等の性能で安定して消費電力を測定できます。
まずはSSDの消費電力の傾向を把握するため、CrystalDiskMark8.0.4 (1GiB, +Mix)を測定負荷としてアクセスタイプ別に消費電力がどうなるのかチェックしていきます。
CrystalDiskMarkの設定は各アクセスタイプで測定時間20秒/測定回数1回、測定インターバル10秒に変更しています。12種類のアクセスタイプの負荷に加えて、テスト終了後のアイドル状態の消費電力も測定しています。
CrystalDiskMarkを測定負荷とした時に連続読み出し/連続書き込みのアクセスタイプは、消費電力が最も大きくなる、ワーストケースに近い負荷となります。
CrystalDiskMarkで負荷をかけた時の「Seagate FireCuda 520N 1TB」の消費電力の推移は次のようになっています。
「Seagate FireCuda 520N 1TB」の消費電力は最大値でも4Wを下回ります。最大アクセススピードが控えめ(帯域的に上限が7GB/sのPCIE4.0対応としては)、メモリチップが1枚だけ、DRAMキャッシュレスなどの要因が重なって、かなり省電力なSSDです。
実用性能への影響が大きく、PCゲーミングの実消費電力に近い数値となる4Kランダム(Q1T1)も1.3~1.5Wとなっており、やはりPCIE4.0対応SSDとしてはトップクラスの省電力性能です。
一方でアイドル状態の消費電力が若干高く、瞬間的に下がっている数値を見ると本来のアイドル状態の消費電力は0.70W前後っぽいのですが、そこまで消費電力が下がらずに4Kランダム時相当、1.40W弱の消費電力が発生しています。検証環境との相性が悪かったのか、Phison PS5021-E21T特有の挙動なのか。
Surface ProやハンドヘルドゲーミングPCを含め近年のモバイルPCはバッテリー持続時間を少しでも伸ばすため、ASPM(Active-State Power Management)が基本的に標準で有効になっています。
デスクトップPC環境ではASPMは通常、使用されませんが、機能自体はBIOS設定とWindows設定を変更することで有効化できるので、ASPM時のアイドル電力も測定してみたところ、0.10Wまでアイドル時の消費電力が下がりました。
「Seagate FireCuda 520N 2TB」はQLC型NAND搭載なので、若干傾向は変わりますが、メモリコントローラーはPhison PS5021-E21Tで共通しているので、やはり最大でも4W未満、実用性能への影響が大きい4Kランダム(Q1T1)読み出しは1.4~1.5Wと低消費電力です。
消費電力が特に大きくなりやすい連続読み出し/連続書き込み(SEQ 1M Q8T1)について、「Seagate FireCuda 520N 1TB」と各種ストレージを比較すると次のようになります。
実用性能に影響の大きいランダム読み出し/ランダム書き込み(RND 4K Q1T1)について、「Seagate FireCuda 520N 1TB」と各種ストレージを比較すると次のようになります。
PC電源ONでSSDに対して読み書きアクセスがないアイドル状態の消費電力について、「Seagate FireCuda 520N 1TB」と各種ストレージを比較すると次のようになります。
続いて、実用シーンのSSD消費電力として当サイト的に重要なPCゲームのプレイシーンをチェックしていきます。
使用しているタイトルは、DirectStorageに対応するPCゲームとしてラチェット&クランク パラレル・トラブル(Ratchet & Clank: Rift Apart)とFORSPOKEN、ストレージへのAPIが従来式の高画質PCゲームとしてMarvel’s Spider-Man RemasteredとForza Horizon 5となっており、いずれも4K解像度でグラフィック設定は基本的に各設定項目が最高設定です。以上4種類のゲームを使用して120秒間の5つのシーンについてSSDの消費電力を測定しており、具体的には次の動画の通りです。
「Seagate FireCuda 520N 1TB / 2TB」のDirectStorage対応を含む4種類のPCゲーム、5つのシーンにおけるSSD消費電力の推移は次のようになっています。
グラフ中には上で行ったCrystalDiskMarkによる消費電力測定の結果のうち、連続読み出し(SEQ 1M Q8T1)、ランダム読み出し(RND 4K Q1T1)、アイドルの3種類の消費電力も横線で併記しています。
2023年最新水準の高画質タイトルを使用して検証していますが、PCゲームシーンだとDirectStorage対応と従来式のどちらであっても、SSD消費電力の平均値は、CDMのランダム読み出しとアイドルの消費電力の中間に収まります。
DirectStorage対応PCゲーム、ラチェット&クランクのワープやFORSPOKENのロード・ファストトラベルでは連続アクセス的な大きい消費電力も発生しますが、いずれも1~2秒あるかどうかという瞬間的なものです。
「Seagate FireCuda 520N 1TB / 2TB」を含めた各種ストレージについてゲームシーンの平均消費電力を比較すると次のようになっています。(最大値も併記していますが、上の推移グラフを見ての通り瞬間的なピーク値となっており測定毎に振れ幅があるので参考程度に考えてください。)
現状ではPCゲームプレイ中のSSD消費電力は、データの読み出しが多いタイトルでもCDMの4Kランダム読み出しと同程度、そうでなければアイドル状態をベースにして4Kランダム読み出し的な消費電力のアクセスがぽつぽつと発生する感じなので、製品別に見てもSSD消費電力の傾向はCDMの4Kランダム読み出しかアイドルに一致します。
「Seagate FireCuda 520N 1TB / 2TB」の温度についての検証は省略します。
近年ではマザーボードM.2スロットに十分な性能のM.2 SSDヒートシンク搭載が標準化しており、市販M.2 SSDヒートシンクも安価で高性能なものが簡単に見つかるようになっています。
PCIE4.0/5.0対応でドンドン高速化していく中、NVMe M.2 SSDをヒートシンクなしで温度測定や耐久テストを行うのは時勢に合わない、上記の通りヒートシンクも多様化しているので一例を示してもあまり参考にならない、と思ったというのも1つ理由です。
どうしてもヒートシンクなし、もしくは冷却が限定される環境での運用を検討する必要があるのであれば、上記の消費電力測定で消費電力が小さいSSDを選ぶ、というのが正解ですし。
またゲームシーンの消費電力検証で見た通り、実用シーンでCrystalDiskMarkの連続アクセスのようなPCIE4.0なら7GB/s前後、PCIE5.0なら10GB/sを超える高速アクセスが長時間に渡って発生するのかは疑わしく、比較的に理想的な連続アクセスが生じる動画ファイルのコピーでも、100GBの読み書きは5GB/sなら20秒、長く見積もっても30秒前後で済むので、それ以上のストレステストに意味があるのか疑問です。
またCrystalDiskMark自体はストレージベンチとして非常に有用ですが、SSDの温度検証という観点でいうとテストの3/4で連続アクセス的な消費電力が発生するCrystalDiskMarkを測定負荷に採用するのはあまり意味がないと感じています。
延長カード型でPCIE5.0にも対応するM.2 SSD消費電力測定モジュールも無事に完成したので、PCゲーム以外の実用シーンについてもSSD消費電力を調査しつつ、SSD温度検証の在り方について調べるのが今後の課題だと思っていますが、今回は省略ということで。
Seagate FireCuda 520N 1TB/2TBのレビューまとめ
最後に「Seagate FireCuda 520N 1TB / 2TB」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- ASUS ROG AllyやSteam Deck、Surface ProのSSD換装が可能なM.2 2230サイズ
- 最大性能で連続読み出し5000MB/s、連続書き込み4700MB/s
- 最大容量2TBモデルがラインナップ
- 1TBモデルはTLC型でSLCキャッシュ超過後も書込速度 1800MB/s程度と高速
- メーカー正規保証期間が5年間
- データ復旧サービスが3年間無償で利用できる
- 1TBモデルはTLC型、2TBモデルはQLC型でNANDタイプが異なる
- DRAMキャッシュレス、HMB(Host Memory Buffer)対応
- TLC型なのでSLCキャッシュ超過後に速度低下が発生する
キャッシュ容量は空き容量依存(詳細)
「Seagate FireCuda 520N」は最新デスクトップPC向けSSDとしてはエントリー~ミドルクラスくらいの性能ですがハンドヘルドゲーミングPCやSurface Pro 8/9などCPU・GPU性能が限られるモバイル端末用としては必要十分な性能となっており、1TBや2TBの大容量にアップグレードできるだけでも十分に魅力的な製品です。
M.2 2230サイズのSSDは選択肢が限られていて、少し前まではOEM向け横流し品?を使う必要があったのですが、大手ストレージメーカー Seagate製かつ正規の市販品を選べるのは信頼性や製品保証の面でも嬉しいところ。
5年間の長期保証に加えて、持ち運びの多いモバイル端末向けSSDなので、落下や水没でもデータ復旧を行ってもらえるSeagate公式によるRescue Data Recovery Services(データ復旧サービス)が3年間無償で利用できるところも魅力です。
同じ製品シリーズでも容量モデルで性能が異なること自体は珍しくありませんが、「Seagate FireCuda 520N」は1TBモデルにTLC型NAND、2TBモデルにQLC型NANDが採用されており、全く別のSSD製品と言っても過言ではないので注意が必要です。
特に差が大きいのはSLCキャッシュの容量と超過後の書き込み速度です。
TLC型NANDの1TBモデルは10~60GB程度なので、空き容量の1/3を使用できる近年のTLC型SSD製品と比べるとSLCキャッシュの容量は大きくありませんが、超過しても1800MB/s程度で安定して高速な書き込みが可能なので実用的に不便を感じることはないはずです。また超過後の書き込み速度は高速な部類です。
一方、QLC型NANDの2TBモデルはSLCキャッシュの容量は空き容量依存で比較的大きいものの、超過後の書き込み速度が100MB/s程度とかなり遅く、また使用済みSLCキャッシュの開放も遅い(トリガーもよく分からない)ので大容量な書き込みアクセスが頻繁に発生する用途には不向きです。
M.2 2230サイズのSSDの中にはASUS ROG Allyに採用されているMicron 2400のようにQLC型SSDも多いですが、「Seagate FireCuda 520N 1TB」はTLC型SSDなので大容量データの書き込みに強く(相対的に)、実用性能ベンチで高い性能を発揮するので、Surface Pro 9/8のように普段使いするPCのアップグレードには特に最適だと思います。
一方で消費電力を見ると、「Seagate FireCuda 520N」もトップクラスに省電力ではあるものの、Micron 2400には一歩及びません。
PCゲームの読み出しアクセスがメインになる、ASUS ROG AllyやSteam DeckといったハンドヘルドゲーミングPCのSSD換装では、「Seagate FireCuda 520N」も不向きというわけではありませんが、Micron 2400のほうがより適していると感じました。(QLC型SSDの書き込み性能の低さも大してデメリットにならないので)
とはいえSoCの消費電力が10~20W程度なので、せいぜい1~2W程度(ASPM有効なモバイル端末ではゲームによっては1W未満になることも)のSSD消費電力はバッテリー持ちの観点では誤差とも言えますし、容量単価や保証条件の1つである書き込み耐性なども総合的に考えてお好みで選べばいいかなと。
以上、「Seagate FireCuda 520N 1TB」のレビューでした。
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PCIE4.0x4接続により連続読み出し5GB/s前後に達する、M.2 2230サイズでASUS ROG AllyやSteam DeckのSSD換装にも使用可能なNVMe M.2 SSD「Seagate FireCuda 520N 1TB / 2TB」をレビューhttps://t.co/SXrEce0azs
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) December 29, 2023
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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