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Western DigitalのPCゲーマーなどハイエンド志向なユーザーをターゲットにしたWD_BLACKシリーズから発売された、連続読み出し7.3GB/sに達するハイエンドNVMe M.2 SSDの大容量4TBモデル「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB(型番:WDS400T2X0E-00BCA0)」をレビューします。
製品公式ページ:https://www.westerndigital.com/ja-jp/products/internal-drives/wd-black-sn850x-nvme-ssd
WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB レビュー目次
1.WD_BLACK SN850X NVMe SSDについて
2.WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TBの外観
3.WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TBの検証機材と基本仕様
4.WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TBのベンチマーク比較
5.WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TBの連続書き込みについて
6.WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TBの消費電力と温度
・PlayStation 5 拡張スロットでの冷え具合を試す
7.WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TBの実用性能比較
8.WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TBのデータコピー・ゲーム性能比較
9.WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TBのレビューまとめ
【機材協力:WD 国内正規代理店 株式会社ケミック】
WD_BLACK SN850X NVMe SSDについて
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」は、メモリチップにWD/SanDisk製TLC型3D NAND、メモリコントローラーにPCIE4.0x4帯域のNVMe接続に対応するWD独自コントローラーが採用された、NVMe(PCIE4.0x4)接続でM.2 2280フォームファクタのM.2 SSDです。「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」にはSSD容量として1TB(型番:WDS100T2X0E-00BCA0)、2TB(型番:WDS200T2X0E-00BCA0)、4TB(型番:WDS400T2X0E-00BCA0)の3モデルがラインナップされています。
さらにWD_BLACK製品でお馴染みのミリタリー風な独自M.2 SSDヒートシンクを搭載したモデル(1TBと2TB)も同時に展開されています。PlayStation 5の拡張スロットにも互換サイズです。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」のアクセススピードは容量によって若干異なりますが、最大でシーケンシャル読出7300MB/s、シーケンシャル書込6600MB/s、ランダム読出1,200,000IOPS、ランダム書込1,100,000IOPSの超高速アクセスを実現しています。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」は専用管理アプリケーションWD_BLACK Dashboardから設定可能な新機能 Game Mode 2.0(Windows PC限定)にも対応しています。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」のMTTF(平均故障間隔)は175万時間、書込耐性は1TBが600TBW、2TBが1200TBW、4TBが2400TBWとなっており、メーカーによる製品保証期間は5年間です。
WD_BLACK SN850X NVMe SSD スペック一覧 |
|||
容量 | 1TB WDS100T2X0E-00BCA0 |
2TB WDS200T2X0E-00BCA0 |
4TB WDS400T2X0E-00BCA0 |
ヒートシンク | WDS100T2XHE-00BCA0 |
WDS200T2XHE-00BCA0 |
- |
インターフェース |
M.2, NVMe (PCIE4.0x4) |
||
コントローラー |
WD in-house NVMe | ||
メモリー | WD/SanDisk製 TLC型3D NAND | ||
連続読み出し | 7300MB/s | ||
連続書き込み | 6300MB/s | 6600MB/s | 6600MB/s |
ランダム読み出し (4KB) |
800,000 IOPS | 1,200,000 IOPS | 1,200,000 IOPS |
ランダム書き込み (4KB) |
1,100,000 IOPS | 1,100,000 IOPS | 1,100,000 IOPS |
消費電力 (Average Active/Max) |
65mW / 6W | 65mW / 7W | 65mW / 8W |
動作温度範囲 | 0°C~85°C | ||
MTTF | 175万時間 | ||
耐久性評価 | 600TBW | 1200TBW | 2400TBW |
保証期間 | メーカー5年 |
WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TBの外観
まず最初に「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。WD_BLACK SN850X NVMe SSDシリーズのパッケージは、近年のWD_BLACK製品と同じく、マットブラックを基調にオレンジのアクセントカラーで洒落なデザインです。
紙製のパッケージを開くとSSD本体はプラスチックのスペーサーに収められていました。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」のSSD本体デザインについては普通にM.2 2280サイズ、M-Key型のM.2 SSDです。PCB基板は黒色になっています。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」の表面にはM.2端子の側から順にメモリコントローラー、その隣にDRAMキャッシュ、残り半分のスペースには2枚のメモリチップが実装されています。
WD_BLACK SN850X NVMe SSDの1TBと2TBはメモリコントローラーやメモリチップが表面のみに実装される片面実装ですが、今回レビューする最大容量の4TBモデルは背面にもメモリチップ等の実装がある両面実装です。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」のメモリコントローラーにはPCIE4.0対応SSDで採用の多いPHISON製ではなく、WD/SanDiskのインハウス製メモリコントローラーが採用されています。表面に貼られていたシールも普通のビニール製で、金属製プレートなどの放熱を補助するパーツは装着されていません。
データ保存領域となるNANDメモリについても、WD/SanDisk製、最新の112層TLC型3D NAND”BiCS5”(さらに最新の164層かも?)が採用されています。4TBモデルのDRAMキャッシュはSamsung製でした。
WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TBの検証機材と基本仕様
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」の各種検証を行う環境としては、PCIE4.0/5.0に対応するIntel Core i9 12900K&ASUS ROG MAXIMUS Z690 HEROなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 12900K (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z5 RGB F5-6000U3636E16GX2-TZ5RS DDR5 16GB*2=32GB (レビュー) 6000MHz, 36-36-36-76 |
マザーボード |
ASUS ROG MAXIMUS Z690 HERO (レビュー) |
ビデオカード | MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 980 PRO 500GB (レビュー) |
OS | Windows11 Pro 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
システムメモリの検証機材には、高級感のあるヒートシンクや8分割ARGB LEDを搭載してデザイン面でも優れ、16GB×2枚組み32GBの大容量で6000MHz/CL36のメモリOCに対応した「G.Skill Trident Z5 RGB F5-6000U3636E16GX2-TZ5RS」を使用しています。
・「G.Skill Trident Z5 RGB」をレビュー。XMPで6000MHz OCに対応!
検証環境については上述の通り、Intel Core i9 12900KやASUS ROG MAXIMUS Z690 HEROで構成されるテストベンチ機を使用していますが、検証するNVMe M.2 SSDはM.2-PCIE変換拡張ボード「Aquacomputer kryoM.2」を介して、CPU直結PCIE5.0レーンに接続された5段目のPCIEスロットに設置しています。
「Aquacomputer kryoM.2」はPCIE3.0x4対応製品として2016年に発売されたヒートシンク付き変換ボードですが、品質が高く、PCIE4.0x4で安定動作することを確認しています。
なおPCIE AIC型のNVMe SSDも同じPCIEスロットに設置し、SATA接続ストレージは普通にマザーボードのSATA端子に接続しています。
ASUS ROG MAXIMUS Z690 HEROにM.2 SSDを設置する場合、M.2-PCIE変換ボードも使用するなら、計5つの候補があり、どこに接続するかでベンチマーク結果が大きく変わります。
Intel第12/11世代CPUのCPU直結PCIEレーンは、主にグラフィックボードで使用するPCIE5.0/4.0x16レーン(x8×2に分割可能)に加えて、CPU内にNVMe M.2 SSD用のPCIE4.0x4レーンがあり、実のところNVMe M.2 SSDを使用するなら、このCPU直結PCIE4.0x4レーンが最速となります。
PCIE4.0やPCIE3.0までのM.2 SSDだけを検証するのであれば、このM.2スロットを使用するのが最適なのですが、PCIE AIC型や2022年中にも登場が噂されているPCIE5.0対応SSDの検証も想定して、CPU直結PCIE5.0x8レーンに接続された5段目のPCIEスロットを使用しています。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」のボリュームをWindows11上で作成したところ、空きスペースは3.63TBでした。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」などWD製SSD向けには純正クライアントアプリケーション WD Dashboardが配布されています。ランダム性能を引き上げるゲームモードの切り替えやファームウェアの更新といったSSDの管理をWD Dashboardから行うことが可能です。
WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TBのベンチマーク比較
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」の性能を測るためストレージに関する基本的なベンチマークソフトを使用して測定を行います。まずはCrystalDiskMark8.0.4a (1GiB, +Mix)について、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」のベンチマークススコアは連続読み出し7000MB/s、連続書き込み6600MB/sとなりました。4Kランダム読み出しも90MB/s以上と非常に高速です。
連続読み出しが仕様値の7300MB/sよりも若干低いですが、今回のテストシステムがIntel第12世代CPU&Z690に対して、公式スペックはAMD Ryzen 5000&X570環境で測定されています。PCIE4.0対応SSDの連続性能は使用するプラットフォームによって6800~7300MB/sで変動するので、この程度であれば測定誤差の範囲内です。
また「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」は純正クライアントアプリケーションWD Dashboardから設定を行うことでゲーム性能を引き上げるゲームモードに切り替えが可能です。ゲームモードの切り替えにはシステムの再起動が要求されます。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」でゲームモードを有効にすると、CrystalDiskMarkでは4Kランダム読み出しと4Kランダム書き込みが若干高速化します。実用的にもゲームモードの名前の通り、PCMark10や3DMarkによるストレージのゲーム性能のスコアが上昇する傾向です。
ゲームモードは標準モードと比較して一部のアクセスでは性能が低下し(相性の悪いゲームタイトルでも)、デメリットもある機能でしたが、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」が対応するゲームモード2.0では、”常時オン/常時オフ”に加えて、特定のゲームフォルダにアクセスがあった時だけゲームモードを有効にする”自動”が追加されています。
ゲームモードの設定を”自動”にすると、WD Dashboard 設定メニューのゲームモード2.0において、ゲームフォルダを登録でき、このフォルダ内にあるゲームの起動をトリガーとして「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」の動作が通常モードからゲームモードに切り替わります。
”自動”は通常モードから一度切り替えてしまえば、その後のゲームモードのオン/オフ切り替えにはOSの再起動は必要ありません。
以下、各種比較対象SSDのベンチマークスコアになっています。
ATTO Disk Benchmark 4.00.0f2 (512B-64MB, 1GB, QD1/QD4)について、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
ATTO Disk Benchmarkはブロックサイズ別の性能を主にチェックするベンチマークなので4KB~1MBを抜粋してリード/ライト性能をグラフにして比較しました。
AS SSD Benchmark v2.0.6821.41776 (1GB)について、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
以下、各種比較対象SSDのベンチマークスコアになっています。
WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TBの連続書き込みについて
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」に連続書き込みを行った場合の動作についてチェックします。TLC型やQLC型と呼ばれる3bit以上のマルチレベルセルで動作するNANDが採用されているSSDでは、マルチレベルセル化によって遅くなる書き込み速度の底上げのため、NANDメモリの一部を高速キャッシュ領域とする機能が実装されています。
2022年現在、TLCやQLCの記憶領域を動的にSLC化する製品が多いので、この高速キャッシュ領域のことをSLCキャッシュと呼ぶことにします。(可能性としてTLC型SSDやQLC型SSDがMLCで高速キャッシュを構築することもありうる)
このようなSLCキャッシュを有するSSDにおいては、連続した大容量の書き込みによって書き込み総量がSLCキャッシュを超過した場合、書き込み速度がステップ状にガクッと下がります。
例えば600MB/sが理論的な上限速度となるSATA SSDの場合は、動画ファイルなど数十GB以上の単一ファイルの連続書き込みが発生すると、SLCキャッシュ超過後はCrystalDiskMarkなどベンチマークソフトで表示される500MB/s程度の連続書き込み速度を維持できず、100~200MB/sまで書き込み速度が低下する可能性があります。
最新のTLC型NANDをメモリチップに採用する「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」がどのような挙動を見せるのか確認してみたところ、製品仕様でも紹介されているように書き込み開始直後は6000MB/s近い書き込みスピードを発揮しており、使用済み容量が0GBで始まると、その後100GB以上もSLCキャッシュを使用できることが分かります。
使用済み容量が0GBの状態から書き込みを続けていくと(100GBの動画フォルダをSLC1~の連番フォルダへ順番に別のSSDからコピーすると)、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」では1100GB程度をSLCキャッシュとして使用でき、超過後の書き込み速度は1500MB/s程度に下がりました。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」は空き容量を200GBまで減らした状態で100GBの連続データの書き込みを行っても、使用済みSLCキャッシュが十分に開放された状態であれば、速度低下なく100GBのデータを書き込むことができました。
TLC型SSDのSLCキャッシュは可変容量であっても通常、空き容量の1/3程度が上限になるので(3bitのマルチレベルセルを1bitにするので当然)、空き容量200GBの状態で100GB書き込んで速度低下しないことがあるというのはかなり不思議です。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」のSLCキャッシュについては、使用しても数分程度ですぐに開放される空き容量に対して10~20%程度の高速領域に加えて、SLCキャッシュ外でも一気に1500MB/sまで下がらず、また時間経過でじわじわと高速領域として開放されていく、書き込み速度3000MB/s程度になる中間層?的な部分がありました。
あと容量1TBモデルと同じくOSシャットダウンからの起動によって解放されるSLCキャッシュ領域もあるかもしれません。
SLCキャッシュの挙動について容量下位の1TBモデルと似た傾向を示す部分もあるものの、異なる部分もあり、全容を把握することはできませんでした。
ただ「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」のSLCキャッシュについて、『空き容量の20%程度はSLCキャッシュとして使用でき、使用後の開放も速い』という点は確実です。
空き容量200~300GBの20%で40~60GBもあれば不足することは少ないと思いますし、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」はSLCキャッシュ超過後でも書き込み速度が1500MB/s程度と高速なので、SLCキャッシュ超過による性能低下で不便を感じることもないと思います。
WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TBの消費電力と温度
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」の消費電力についてチェックしていきます。NVMe M.2 SSDの消費電力測定には、当サイトの検証に使用するためワンオフで特注した測定ツール「GPU Power Tester」を使用しています。
「GPU Power Tester」はその名の通り、PCIEスロット経由とPCIE補助電源の消費電力を直接に測定しグラフィックボードの消費電力を検証する機器ですが、M.2-PCIE変換ボードを改造した増設ユニットを使用することでNVMe M.2 SSDの消費電力を測定できます。
グラフィックボードの消費電力測定に使用するライザーケーブルからさらにM.2-PCIE変換ボードを中継すると、CPU/MB/SSDなど使用する機材によってはSSDの動作が不安定になることがあるのですが、この方法なら改造前のM.2-PCIE変換ボードと同等の性能で安定して消費電力を測定できます。
消費電力の測定負荷についてはCrystalDiskMark8.0.4a (1GiB, +Mix)を使用していますが、各アクセスタイプで測定時間20秒/測定回数1回、測定インターバル10秒に変更しています。12種類のアクセスタイプの負荷に加えて、テスト終了後のアイドル状態の消費電力も測定しています。
なおCrystalDiskMark、特に連続読み出し/連続書き込みのアクセスタイプはワーストケースに近いSSD負荷です。実用シーンの一例として3DMark Storage Benchmark中の負荷はそれよりも大幅に低い消費電力を示します。
CrystalDiskMarkで負荷をかけた時の「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」の消費電力の推移は次のようになっています。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」の消費電力は、大きくなりやすい連続読み出しや連続書き込みのアクセスで平均6.5W程度です。大容量4TBでメモリチップを4枚搭載していることもあって一般的な1TB容量のSSDよりも消費電力は高めです。
また2TBモデルの時もそうでしたが、Read RND 4K Q32T16のアクセスタイプで消費電力が最も大きくなり最大で7.5Wに達しています。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」でゲームモードを有効にした時の消費電力はコンマW単位での微増もしくは微減という傾向ではあるものの、無効時とほぼ同じでした。
参考までにWD_BLACK SN850X NVMe SSDの1TBモデルと2TBモデルの消費電力を同様に測定するとこんな感じでした。
消費電力が特に大きくなりやすい連続読み出し/連続書き込み(SEQ 1M Q8T1)について、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」と各種ストレージを比較すると次のようになります。
実用性能に影響の大きいランダム読み出し/ランダム書き込み(RND 4K Q1T1)について、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」と各種ストレージを比較すると次のようになります。
推移グラフの方でも書いたように、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」はRead RND 4K Q32T16のアクセスタイプで消費電力が高めです。
PC電源ONでSSDに対して読み書きアクセスがないアイドル状態の消費電力について、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」と各種ストレージを比較すると次のようになります。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」の温度についての検証は省略します。
近年ではマザーボードM.2スロットに十分な性能のM.2 SSDヒートシンク搭載が標準化しており、市販M.2 SSDヒートシンクも安価で高性能なものが簡単に見つかるようになっています。
PCIE4.0対応でドンドン高速化していく中、NVMe M.2 SSDをヒートシンクなしで温度測定や耐久テストを行うのは時勢に合わない、上記の通りヒートシンクも多様化しているので一例を示してもあまり参考にならない、と思ったという理由です。
どうしてもヒートシンクなし、もしくは冷却が限定される環境での運用を検討する必要があるのであれば、上記の消費電力測定で消費電力が小さいSSDを選ぶ、というのが正解ですし。
なおヒートシンク標準搭載のM.2 SSDについてはこれまで通り、CrystalDiskMark等を負荷にして温度検証も行います。
マザーボード備え付けのM.2 SSDヒートシンクの冷却性能が不十分で市販製品を探しているということであれば、PlayStation5の増設スロットにも互換なコンパクトサイズながら高い冷却性能を発揮する「CFD HSN-TITAN」、シリコンバンド固定で着脱が簡単な「SilverStone TP02」などがオススメです。
PlayStation 5 拡張スロットでの冷え具合を試す
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」はPlayStation 5の拡張スロットによるストレージ増設で使用可能なPCIE4.0対応M.2 SSDなので、PS5のSSD増設で十分に冷えるのか試してみました。PlayStation 5の拡張スロットによるストレージ増設ではM.2 SSDヒートシンクの併用が推奨されているので、市販の高性能M.2 SSDヒートシンク「CFD HSN-TITAN」を組み合わせて検証を行いました。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」のメモリコントローラーと、メモリコントローラーに一番近いメモリチップの2カ所に温度センサーを貼り付けています。
下写真では温度センサーの位置が見て分かりやすいように透明テープで固定していますが、実際の測定ではテープ類は使用せず測定素子とサーマルパッドで挟み込む形で温度センサーを固定しています。
温度センサーのケーブルは拡張スロットの一部にあるスリットから出して、拡張スロットの標準カバーも装着しています。
最後にPlayStation 5の外装カバーも装着し、この状態で各種温度測定を行います。
PlayStation 5におけるSSDの温度測定については、
『1. アイドル: PS5のホーム画面を表示したままSSD温度が変化しなくなるまで放置』
『2. コピーインストール: PS5のゲーム(約160GB)をUSB3.1 Gen2外付けストレージから、拡張スロットのM.2 SSDへコピーインストール』
『3. ゲームプレイ&ロード: PS5内部温度が十分に高くなった状態で、PS5ネイティブ対応ゲームのロードやファストトラベルを繰り返す』
以上の3パターンで行いました。
コピーインストールでは、アイドルでSSD温度が安定した状態において、Horizon Forbidden West、ラチェット&クランク パラレル・トラブル、Marvel's Spider-Man: Miles Moralesの3タイトル、約160GBをUSB外付けストレージからコピーしています。コピー中の最大温度をチェックしています。
ゲームプレイ&ロードは、温度測定を始める前にPS5のシステム消費電力が220W前後になるHorizon Forbidden Westを高画質モードで放置し、SSD温度が変化しなくなった状態にしています。その後、Horizon Forbidden Westでゲームロードやファストトラベル、他ゲームの起動によってSSDに負荷をかけ、最大温度をチェックしています。
PlayStation 5の増設ストレージとして「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」を使用した、実用シーンにおけるSSD温度の検証結果は次のようになっています。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」は適切なM.2 SSDヒートシンクを組み合わせれば、メモリコントローラーとメモリチップともに50度程度の温度に収まっており、PS5増設用SSDとしては十分な冷え具合です。熱暴走の心配もなく、安心して運用できます。
PlayStation 5の拡張スロットによるストレージを増設についてさらに詳しい情報はこちらの記事も参考にしてみてください。
WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TBの実用性能比較
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」の実用性能をPCMark10 Storage Benchmarkを使用してチェックしていきます。PCMark10 Storage BenchmarkはWindows10 OSの起動速度、PhotoshopやPremiere ProといったAdobeアプリの起動速度、PCゲームの起動速度、AdobeアプリやMicrosoft Officeの素材領域としての読み出し・書き込み速度など、SSDの実用性能について測定できるベンチマークソフトです。
PCMark10 Storage Benchmarkは、NVMe SSDなど最新の高速ストレージについて、Windows OSの起動、OfficeやAdobe系ソフトなどアプリケーションの起動、PCゲームの起動、OfficeやAdobe系ソフトで使用する素材データ領域としての読み出し・書き込み性能といった、実用的なストレージ性能を測定するベンチマークソフトとなっており、”Trace”と呼ばれる23種類のテストで構成されています。
当サイトでは同ベンチマークを使用した評価に当たって、ストレージの用途を、Windowsや各種アプリケーションをインストールする『システムストレージ』、PCゲームをインストールする『ゲームストレージ』、各種アプリケーションで使用する素材を保存しておく『データストレージ』の3種類に大別し、23種類のうち17種類のテストを下記のように振り分けました。
なおPCMark10 Storage Benchmarkでは一部製品において使用済み容量が大きくなるとフォーマット直後の0%使用時に比べて性能が低下することがあるので、空き容量が半分前後になるようにデータを書き込んだ状態で測定を行っています。
ベンチマーク測定に使用するPCMark10 Storage Benchmarkには上の概要で紹介したように23種類のテストがあるので、その中からシステム/ゲーム/データの3種類に大別された17種類のテストの結果を抜粋し、各テストにおいてSamsung SSD 980 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取り、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」など各種SSDに関して総合的なSSD実用性能の比較グラフ(パフォーマンスサマリー)を作成しました。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」を前モデルSN850(1TB)と、PCMark10 Storage Benchmarkの個別Traceについて比較(対象を100%として性能差をパーセント表示)すると下のグラフのようになっています。
後継モデルなので当然と言えばその通りですが、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」はほぼ全てで前モデルSN850に勝ち越しています。
システムストレージとしての性能に大別された7種類のテスト結果を使用して、各テストにおいてSamsung SSD 980 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取り、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」など各種SSDに関してシステムストレージとしてのSSD実用性能の比較グラフ(パフォーマンスサマリー)を作成しました。
ゲームストレージとしての性能に大別された3種類のテスト結果を使用して、各テストにおいてSamsung SSD 980 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取り、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」など各種SSDに関してゲームストレージとしてのSSD実用性能の比較グラフ(パフォーマンスサマリー)を作成しました。
データストレージとしての性能に大別された7種類のテスト結果を使用して、各テストにおいてSamsung SSD 980 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取り、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」など各種SSDに関してデータストレージとしてのSSD実用性能の比較グラフ(パフォーマンスサマリー)を作成しました。
WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TBのデータコピー・ゲームロード性能比較
続いて「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」で大容量・多数データのコピーやPCゲームのロード時間など実際の使用について性能比較をしてみました。まずはデータコピーに関する実性能比較となります。検証には、総容量が約50GBの動画フォルダ(10GBの動画ファイルが5つ)、総容量が約80GBで多数のファイルが入ったPCゲームフォルダの2種類を使用しています。
データのコピーにおいては当然ですが、元データのあるストレージの読み出し性能とコピー先の書き込み性能の両方が重要になります。
書き込み先/読み出し元の相手になるストレージが必要なので、コピー相手にはM.2-PCIE変換アダプタAquacomputer kryoM.2に設置したSamsung SSD 980 PRO 1TBを使用しています。マザーボード上の設置位置としてはIntel Z690チップセット経由のPCIE4.0x4レーンです。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」など各種検証ストレージとSamsung SSD 980 PRO 1TBとの間で50GBの動画フォルダおよび80GBのゲームフォルダをコピーした時間の比較結果は次の通りです。
まずは50GBの動画フォルダのコピーについてですが、動画フォルダの中身は10GBの大容量ファイルなので実際のコピーではベンチマークの連続読み出し・書き込み性能が重要になります。
Windows11エクスプローラーのファイルシステム的にコピー速度は3GB/sで頭打ちになるので(複数に分けて並列実行するとスケーリングしますが)、PCIE3.0/4.0対応NVMe SSD間では大きな差は付きにくいのですが、それでも「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」はトップクラスの性能を発揮しています。
続いてゲームフォルダのコピーについてですが、ゲームフォルダは大小様々なファイルを含むので、実際のコピーではベンチマークの連続性能だけでなく、ランダム性能も重要になってきます。
続いて3DMark Storage Benchmarkを使用して、PCゲームのロード時間やプレイ動画の保存といったゲーミングシーンでの「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」のストレージ性能を比較します。
3DMark Storage Benchmarkは各検証ストレージについて3回ずつ実行しており、総合スコア、ゲームロード速度(Battlefield V、Call of Duty Black Ops 4、Overwatch)、プレイ動画の録画(Overwatchのゲームプレイ中のデータアクセスとOSBによるフルHD/60FPSの録画)について平均値を比較しています。
またPCMark10 Storage Benchmarkと同様に、各ストレージは空き容量が半分前後になるようにデータを書き込んだ状態で測定を行っています。
3DMark Storage Benchmarkのトータルスコアについて、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」やその他ストレージの比較は次のようになっています。
3DMark Storage Benchmarkの総合スコアには、プレイデータのセーブ、PCゲームのインストール/移動は実用面で優先度が低いテストの結果も含まれるので、ここからはPCゲーム用ストレージとして優先度の高い個別テストを抜粋して見ていきます。
3DMark Storage BenchmarkのBattlefield V ゲームロード速度について、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」やその他ストレージの比較は次のようになっています。
3DMark Storage BenchmarkのCall of Duty Black Ops 4 ゲームロード速度について、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」やその他ストレージの比較は次のようになっています。
3DMark Storage BenchmarkのOverwatch ゲームロード速度について、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」やその他ストレージの比較は次のようになっています。
3DMark Storage Benchmarkのプレイ動画録画性能について、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」やその他ストレージの比較は次のようになっています。
下記クリック展開で、2020年から2021年頃の検証結果ですが、現在でも概ね当てはまると思うのでSSD/HDDのゲーム性能の違いを参考までに。
FORSPOKENのテクノロジーデモでアピールされていますが、DirectXの新API「DirectStorage」が採用されれば、高速NVMe M.2 SSDのメリットも高まると思うのですが。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」はPCIE4.0対応NVMe M.2 SSDなので、PlayStation 5の拡張スロットによってストレージ増設にも使用できます。詳しくはこちらの記事で。
WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TBのレビューまとめ
最後に「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB(型番:WDS400T2X0E-00BCA0)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 最大性能で連続読み出し7.3GB/s、連続書き込み6.6GB/s
- PCMark10や3DMarkの実用性能ベンチで最速クラスの性能
- PlayStation5の拡張スロットに使用可能なPCIE4.0対応NVMe M.2 SSD
- SLCキャッシュは空き容量の20~30%程度を使用でき、使用後の開放も速い
- メーカー正規保証期間が5年間
- 高速7GB/sかつ容量4TBで税込み8.6万円(同スペックでは安価)
- TLC型なのでSLCキャッシュ超過後に速度低下が発生する
キャッシュ容量は空き容量依存(詳細)で、超過後の書き込み速度は1500MB/s程度 - 4TBモデルは両面実装
- 1TBモデルや2TBモデルと比べて容量単価が高い
- メモリチップ4枚なので1TBモデルや2TBモデルと比べて消費電力は高め
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」を検証してみたところ、CrystalDiskMarkなど基礎的な各種ベンチマークでは仕様値通り、連続読み出しと連続書き込みが最大7GB/s前後というハイエンドPCIE4.0対応NVMe SSD的な性能です。
PCMark10や3DMark、ファイルコピーといった実用性能テストでも、同社前モデルWD_BLACK SN850無印やPCIE4.0対応SSDでは代表格のSamsung SSD 980 PROをしっかりと上回る性能を発揮しており、SK Hynix Platinum P41やSeagate FireCuda 530といった現状で最速クラスの競合製品とも遜色なく、特にゲーム用ストレージとして高い性能を発揮しています。
WD_BLACK SN850X NVMe SSDにはTLCタイプ3D NANDメモリが採用されているので、多くのTLC型SSDと同様の特徴が大容量書き込み時にでており、容量可変のSLCキャッシュを超過すると、4TBモデルなら1500MB/s程度まで書き込み速度は低下します。
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」のSLCキャッシュ構造については上で述べたように全容を把握できなかったものの、『1.空き容量の20%前後を使用できる』、『2.その範囲なら使用後の開放も速い』という2点は確実でした。
空き容量200~300GBの20%で40~60GBもあれば不足することは少ないと思いますし、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」はSLCキャッシュ超過後でも書き込み速度が1500MB/s程度と高速なので、実用的にSLCキャッシュ超過による性能低下で不便を感じることはないはずです。
連続読み出しが7GB/s、連続書き込みが6~7GB/sに達するPCIE4.0対応NVMe M.2 SSDはここ1,2年で各社から発売されていますが、この超高速に加えて最大容量4TBモデルもラインナップする製品は少なく、WDのようなストレージメーカー大手の製品ではSeagate FireCuda 530、Kingston KC3000くらいです。(いずれもPHISON PS5018-E18コントローラー採用SSD)
競合製品のSeagate FireCuda 530、Kingston KC3000の4TBモデルが税込み10万円以上に対して、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」は税込み8.6万円程度です。1TB/2TBモデルと比較すると容量当りの価格は割高ですが、4TBの大容量SSDとしては比較的に安価なところは魅力だと思います。
以上、「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」のレビューでした。
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最大容量の4TBモデル!
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) September 21, 2022
連続読み出し7.3GB/sに達するハイエンドNVMe M.2 SSD「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 4TB」をレビュー。
前モデルSN850などPCIE4.0対応最新SSDと性能を徹底比較。https://t.co/gm1hWhsbnB pic.twitter.com/3xDK9f8inq
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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