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1152分割で部分駆動する直下型Mini-LEDバックライトを搭載し、最大輝度1000nits超のHDR表示やVRR同期機能に対応する、WQHD解像度かつ180Hzリフレッシュレートの27インチ量子ドットIPS液晶ゲーミングモニタ「Xiaomi Mini LED ゲーミングモニター G Pro 27i(型番:P27QBA-RGPGL)」をレビューします。
レビュー目次
1.Xiaomi G Pro 27iの概要
2.Xiaomi G Pro 27iの開封・付属品
3.Xiaomi G Pro 27iのモニタ本体
4.Xiaomi G Pro 27iのOSD操作・設定
5.Xiaomi G Pro 27iの発色・輝度・視野角
6.Xiaomi G Pro 27iの色精度・ガンマ・色温度
7.Xiaomi G Pro 27iのリフレッシュレート
8.Xiaomi G Pro 27iの応答速度・表示遅延
9.Xiaomi G Pro 27iの可変リフレッシュレート同期
10.Xiaomi G Pro 27iのHDR表示やCSゲーム機対応
11.Xiaomi G Pro 27iのHDR性能やローカルディミング
12.Xiaomi G Pro 27iのレビューまとめ
【2024年8月1日】 初稿、ソフトウェアバージョン V1.0.07で検証
製品公式ページ:https://www.mi.com/jp/product/xiaomi-mini-led-gaming-monitor-g-pro-27i
Xiaomi G Pro 27iの概要
Xiaomi G Pro 27iの開封・付属品
まずは「Xiaomi G Pro 27i」を開封していきます。「Xiaomi G Pro 27i」のパッケージサイズは幅70cm×高さ40cm×厚み25cmで、27インチモニタが入っている箱としては最小限に近い大きさだと思います。重量は7~8kg程度です。天面に持ち手もあるので、成人男性・女性なら問題なく持ち運べると思います。
各種付属品はスペーサーに蓋もなく収められているので、保護スペーサーをパッケージから取り出す際は、付属品が脱落しないように、付属品のある面が上になるように確認してから引き出してください。
発泡スチロール製スペーサーの上側に各種付属品とモニタスタンドが収納されており、下の段にはモニタ本体があります。
「Xiaomi G Pro 27i」はDCI-P3やAdobeRGBを100%近くカバーする広色域や色精度の高さも公式にアピールされており、sRGBとDCI-P3でΔE(00)<1の色精度を証明するキャリブレーションレポートが封入されています。
「Xiaomi G Pro 27i」の付属品を簡単にチェックしておくと、DisplayPortケーブル、ACアダプタ、IOポートカバー、モニタスタンド組み立てネジ&L字ドライバー、マニュアル冊子類が付属します。
各種ケーブルを個別に購入する場合のオススメ製品も紹介しておきます。
視覚損失のない非可逆圧縮機能DSCに対応するDisplayPort1.4ケーブルなら「サンワサプライ KC-DP14シリーズ」を推奨しています。
標準で付属するケーブルよりもケーブル径が細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。「Xiaomi G Pro 27i」で正常動作も確認済みです。
HDMI2.1ケーブルについては「エレコム ウルトラハイスピードHDMIケーブル スリム CAC-HD21ESシリーズ」がおすすめです。標準で付属するケーブルよりもケーブル径が細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。
同製品は4.5mm径のスリムケーブルながら、HDMI2.1の正常動作を証明するUltra High Speed HDMIケーブル認証を取得しており、安心して使用できます。
当サイトでもGeForce RTX 40シリーズGPU搭載PC、PlayStation 5、Xbox Series X/Sで正常動作を確認しています。
ACアダプタ外付け式の場合、PCモニタではACアダプタとACケーブル(コンセントケーブル)が別になっていることが多いですが、「Xiaomi G Pro 27i」に付属するACアダプタは変換部分からコンセント端子が出ていて、直接コンセントに挿す構造です。
「Xiaomi G Pro 27i」は最大1000nitsの超高輝度に対応するモニタですが、USB Type-C給電機能を搭載していないからか、ACアダプタの電源出力は65W(24V・2.71A)と意外に控えめです。
「Xiaomi G Pro 27i」のモニタスタンドはメインフレームとフットフレームの2つの部品から構成されています。組み立てに当たり、付属のL字ドライバーを使ってネジ止めする工程があります。
メインフレーム端にフットフレームを挿入して、底面のネジを締めるだけで簡単にモニタスタンドを組み立てられます。ネジはレバーが付いているツールレスタイプではなく、付属のL字ドライバーを使って固定します。
「Xiaomi G Pro 27i」のモニタ本体の破損防止のため、発砲スチロール製スペーサーに置いた状態で、背面のスタンド装着部を露出させて、スタンドを装着してください。
モニタスタンドを組み立てたら、「Xiaomi G Pro 27i」のモニタ本体背面の溝に斜め下の方向からモニタスタンドを差し込めば取り付け完了です。
モニタスタンドの装着プレート根本にあるスイッチを押下するとモニタスタンドのロックが解除されます。モニタスタンドを装着した時と逆に手前方向に斜め上へ引き上げればモニタスタンドが取り外し可能です。
Xiaomi G Pro 27iのモニタ本体
続いて「Xiaomi G Pro 27i」のモニタ本体をチェックしていきます。「Xiaomi G Pro 27i」はフレームレス構造ですが、フレーム内パネル上には非表示領域があり、上左右の非表示領域の幅は8mm程度です。
上左右は完全にフレームレスですが、下側には厚み数mm程度出っ張ったプラスチック製パネルが装着されたフレームがあり、幅は20mm程度です。
「Xiaomi G Pro 27i」のモニタ背面は、柔らかい曲面のマットなホワイトカラー外装が採用されており、Dell Alienware的なSF感のあるデザインです。
「Xiaomi G Pro 27i」のモニタスタンドの付け根、黒色の鏡面円形プレートと白色外装パネルの隙間にはRGB LEDイルミネーションが内蔵されています。
LEDイルミネーションの発光カラーや発光パターンはOSDメニューから変更できます。完全に消灯させることも可能です。
固定カラー、七色に変化するレインボーなどよくある設定に加えて、画面表示の色に合わせてLEDイルミネーションの発光カラーが同期変化するモードもあります。
「Xiaomi G Pro 27i」は最大1000nits超の高輝度に対応するためバックライトの消費電力(発熱)も大きく、モニタ本体側面の黒色フレーム部分には放熱用エアスリットが設けられています。特にHDRで使用中はここを塞がないように注意してください。
「Xiaomi G Pro 27i」のモニタスタンドにはケーブルホールがあるので、各種ケーブルをまとめることができます。
またI/Oポートは外装パネル下側を大きく切り開く形で配置されていますが、付属のI/Oポートカバーによって塞ぐことができ、背面から見てもスタイリッシュに仕上がります。I/Oポートカバーはプラスチックのツメでツールレスに簡単に着脱できます。
「Xiaomi G Pro 27i」のモニタ本体の厚さは最厚部で70mmほどと27インチ級のモニタとしても大きめですが、背面は見ての通り湾曲していて左右端は25mm程度の厚みなので体感的には意外とスリムです。
モニタ本体重量は4.9kg程度なので一般的なモニターアームと組み合わせて問題なく使用できます。
「Xiaomi G Pro 27i」の背面には下向きに各種I/Oポートが実装されています。
左から順にACアダプタ接続用DC端子、2基のHDMI2.0、2基のDisplayPort1.4、3.5mmヘッドホンジャックが設置されています。
「Xiaomi G Pro 27i」の付属モニタスタンドの左右スイーベルの可動域は左右35度(70度)に対応していま
「Xiaomi G Pro 27i」の付属モニタスタンドの上下チルトの可動域は仕様通り下に5度、上に21度となっています。
モニタの高さはモニタ本体とスタンドの付け根部分が上下に動く構造になっており、全高で406mm〜526mmの範囲内で調整できます。
「Xiaomi G Pro 27i」の付属モニタスタンドはピボットに対応しており、縦向きにして使用できます。付属スタンドは時計回りと反時計回りのどちらにも回転可能です。
「Xiaomi G Pro 27i」はVESA75x75規格のVESAマウントに対応しておりサードパーティ製のモニターアームを使用できます。モニタ単体の重量も4.9kgほどなのでモニターアームを問題なく利用可能です。
「Xiaomi G Pro 27i」のVESAネジ穴は一般的な100mm間隔ではなく、上に書いたと通り、VESA75x75規格なので75mm間隔です。
エルゴトロン LX デスクマウントアームなど有名どころのモニターアームであれば、VESA75x75とVESA100x100の両方に対応しているので大丈夫ですが、VESA100x100しかサポートしていないモニターアームもなくはないのでモニターアームの選択時には一応注意してください。
オススメのモニターアームや調整機能が豊富なVESA汎用モニタースタンド、VESAマウントの干渉を避ける方法についてはこちらの記事で詳細に解説しているので、導入を検討している人は参考にしてください。
Xiaomi G Pro 27iのOSD操作・設定
「Xiaomi G Pro 27i」のOSD操作は、正面から見て右裏に設置されている操作スティックを使用します。操作スティックの3秒長押しや、クイックメニューにおける押下は電源オフの操作になっています。誤操作の可能性もあるので電源ボタンは操作スティックとは別に離れた場所に実装して欲しかったところ。
モニタ正面の右下には電源LEDインジケーターがありますが、OSD設計から完全に消灯させることも可能です。
「Xiaomi G Pro 27i」では操作スティックを押下すると画面右下にクイックメニューが表示されます。
その後、右に倒すと詳細設定メニューの表示、上下は輝度調整ショートカット、左はビデオ入力選択ショートカットが表示されますが、クイックメニューが表示されていない状態で操作スティックを同様に操作しても同じように表示されます。
クイックメニュー特有の機能は表示中に操作スティック押下で電源オフになることくらいです。
上で説明した通り、クイックメニューの表示・非表示に依らず、操作スティックを上下で輝度調整ショートカット、左でビデオ入力選択ショートカットが表示されます。
操作スティックを左に倒すと画面右下に詳細設定メニューが表示されます。
詳細設定メニュー27インチ画面の4分の1ほど、文字もちょうどいいサイズ感なので、OSD操作スティックに手が届く範囲なら視認性は良好です。
「Xiaomi G Pro 27i」は国内正規品でもアウトボックス時点では英語UIが適用されていました。日本語UIにも対応しているので下記の手順で日本語に変更が可能です。
「Xiaomi G Pro 27i」のOSDメニューには大きく分けて、「写真モード(Picture Mode)」「ゲームモード(Game Mode)」「高度」「入力」「メニュー設定」「システム」の6つの項目が用意されています。
「Xiaomi G Pro 27i」の画質モードは”写真モード”と”ゲームモード”の2カ所に分けて配置されています。
”写真モード”ではユーザーカスタム設定のベースにしやすい「標準」に加えて、「省エネ」「映画」「ブルーライ低減」の3種類、”ゲームモード”には「FPS」「RPG」「MOBA」の3種類で計7種類です。
2カ所に分けて配置されているので混乱しますが、これら7種類の画質モードは色温度・ガンマなどの初期値違いのプリセットであり、各自でカスタム可能なプロファイルと考えればOKです。
INNOCN系列のモニタ製品によく見かけるOSD設計ですが、「Xiaomi G Pro 27i」については『標準モードからFPSモードに切り替えて、再び標準モードに戻すと設定がリセットされている』というような扱いに困るOSDの挙動にはなっておらず、各画質モードはユーザー設定のプロファイルとしてもちゃんと機能しているようなので、そこは安心して大丈夫です。
ただし、4基あるビデオ入力の全てで現在の画質モードやローカルディミング設定が共有される仕様です。
ビデオ入力別に異なる画質設定を適用する(ビデオ入力の切り替えで自動的に画質モードも切り替わる)ことは不可能ですし、SDRビデオ入力からHDRビデオ入力に切り替えた時の色温度バグもあるので、複数の映像機器を繋いでこまめに切り替えるような使い方には不便です。
一般にオーバードライブと呼ばれる応答速度を調整する機能は、Xiaomi G Pro 27iでは「応答速度」の名前で配置されています。
オーバードライブ補正の強度を標準(Normal)、高速(Fast)、さらに高速(Faster)、最速(Fastest)の4段階で設定ができて、標準設定は高速になっています。
暗所を明るく(白く)表示して視認性を改善する「ダークシーンブースト」という設定が用意されています。
0~100まで10刻みで設定でき、50は補正なしで設定値を上げると明るく(白く)、設定値を下げると暗くなります。
「Xiaomi G Pro 27i」はリアルタイムリフレッシュレート表示に対応しています。OSDクロスヘアやタイマーといったゲーミングモニタで定番の便利機能には非対応です。
Xiaomi G Pro 27iの発色・輝度・視野角
Xiaomi G Pro 27iの発色・輝度・視野角など画質についてチェックしていきます。まず直接的な画質ではありませんがXiaomi G Pro 27iのディスプレイパネル表面処理は光沢のあるグレアではなくアンチグレアタイプなので暗転時に自分の顔などが映り込みません。
PC向けディスプレイパネルには、LEDバックライトを必要とする液晶パネルと、画素そのものが自発光する有機EL(OLED)パネルの2種類があります。さらに、PCモニタで一般的な液晶パネルはIPS液晶パネルとVA液晶パネルとTN液晶パネルの3種類に大別されます。
各ディスプレイパネルの特性を簡単にまとめると次の表のようになります。
ディスプレイパネルの簡易比較表 | ||||
パネルタイプ | 有機EL | 液晶 | ||
IPS液晶 | VA液晶 | TN液晶 | ||
色域 (高彩度の発色) |
〇〇 | 〇 量子ドットなら〇〇 |
△ | |
コントラスト (黒レベルの低さ) |
〇〇 | △ | 〇 | △ |
視野角 | 〇 | 〇 | 〇 | △ |
応答速度 | コンマms級 | 〇 (遅いものもある) |
△ |
〇 |
大型テレビ | 40~80インチ超まで幅広く採用 |
近年は 採用なし |
||
最大輝度 | △ |
〇〇 高輝度FALDなら1000nits超も |
- |
|
ハロー現象 Backlight Blooming |
発生しない |
FALDでは発生 |
- |
|
焼付の可能性 | あり |
発生しない | ||
価格 (高リフレッシュレート) |
× |
△ (×) |
△ | 〇 |
液晶パネルの種類による性能・特性の違いについてはこちらの記事も参照してみてください。
「Xiaomi G Pro 27i」は180Hzの高速リフレッシュレート対応ながら、IPS液晶パネルが採用されているので視野角も良好です。
ここからはカラーキャリブレータを使用して、色域・輝度・コントラスト・均一性など画質に直結するモニタの性能について詳細な検証結果を見ていきます。なおこれらのモニタ性能(特に輝度の均一性)については同じ製品であっても個体差があるのでご注意ください。
検証にはカラーフィルター式(色差式)で比色計と呼ばれるCalibrite Display Plus HLと分光式(スペクトロメーター)のX-Rite i1 Basic Pro 3を使用しています。
「Xiaomi G Pro 27i」のディスプレイ輝度について白色点の輝度をOSD設定別で測定しました。OSD上の輝度設定10%刻みで0%~100%の輝度変化は次のようになっています。
「Xiaomi G Pro 27i」において、一般に見やすい明るさと言われる120cd/m^2は輝度7%前後、室内照明に依りますが個人的に見やすいと感じる明るさの180~200cd/m^2は輝度15%前後です。
SDR表示でも最大輝度が900cd/m^2以上と、通常必要ないレベルで高輝度なモニタです。0~400cd/m^2の範囲内で100段階の輝度調整ができる標準輝度モードのような動作があればよかったのですが。
「Xiaomi G Pro 27i」はバックライトの調光にPWM方式を採用しているようです。所謂、”フリッカーフリー”のモニタではなく、フリッカーがあります。
直下型Mini LEDバックライト採用製品ではTitan Army P32A6V(国内では同等製品としてINNOCN 32M2Vが流通し有名)やMOBIUZ EX321UXもPWM方式ですが、MOBIUZ EX321UXよりもさらに、「Xiaomi G Pro 27i」の方が輝度の振り幅が非常に大きいです。
また同製品の最大リフレッシュレートである180Hz、6ms程度の間隔で周期的な変動もあり、応答速度の章で掲載している16倍速の960FPSスーパースローモーション程度でもハッキリと明滅が確認できます。
通常の目視で画面の点滅を感じるわけではありませんが、フリッカーに敏感な人だと目の疲れを感じやすいかもしれません。
「Xiaomi G Pro 27i」のディスプレイ輝度の均一性(Uniformity)を検証しました。画面中央の輝度が約120cd/m^2になるOSD設定において、画面を横7×縦5の35分割として各位置の白色点の輝度を測定し、中央輝度を基準にしたパーセンテージで等高線マップにしています。
「Xiaomi G Pro 27i」は中央に凸な輝度分布になっていて四隅は少し輝度が下がります。とはいえ35カ所の測定点のうち、差分15%を超えるポイントがなく、上下の最大差分でも15%程度という良好な均一性を発揮しました。
液晶モニタにおいて輝度の低下が特に大きい四隅&四辺は、上のような領域分割測定では見落とされてしまうので、同様に中央120cd/m^2を基準にして個別に測定したところ次のようになりました。
「Xiaomi G Pro 27i」は中央の均一性が高く、色ムラもない分、20%程度の輝度低下がある外周付近は単色のような表示だと相対的に暗くなっている感が目立ちます。
参考までに輝度と色温度による色差の分布です。
「Xiaomi G Pro 27i」については、今回入手した個体の場合、中央と比較して上端にいくほど寒色に、下端にいくほど暖色に若干色温度がシフトする感じでした。上の写真で見るとやや強調されていますが、四隅の輝度低下以外は体感的にはさほど気になりません。
例外は右上で、寒色寄りかつ輝度低下も20%程度なので暗くなっている感は強めです。
「Xiaomi G Pro 27i」は1152分割のフルアレイ型ローカルディミングに対応していますが、HDR表示だけでなくSDR表示でもローカルディミングを有効化(無効化も)できます。SDR表示中は基本的に無効でいいと思いますが。
なお輝度等の設定と並んでDCR(ダイナミックコントラスト)という設定があります。オンにすると輝度が自動制御になります。
DCR(ダイナミックコントラスト)は所謂、グローバルディミングの機能となっており、表示内容に合わせて画面全体のバックライト輝度を一律で可変調整します。こちらも基本的にオフ設定でOKです。
直下型Mini LEDバックライトを採用する一部の製品では、ローカルディミング無効化のSDR表示でもバックライト配列による縞模様が浮かぶことがありますが、「Xiaomi G Pro 27i」にはそういった症状はなく、単色でも均一に表示されました。
画面中央の白色点が約120cd/m2になるOSD設定において「Xiaomi G Pro 27i」のブラックレベルを測定したところ次のようになりました。
またこの時のコントラスト比も算出したところ次のようになっています。
なおコントラスト比に大きく影響するブラックレベルはコンマ2桁での測定になるため測定精度が若干怪しく、ブラックレベル0.01の差でコントラスト比が大きく変わるので参考程度と考えてください。
「Xiaomi G Pro 27i」はsRGBだけでなく、DCI-P3を99%、Adobe RGBを95%もカバーするという極めて広い色域を実現しています。
HDR表示の色域のスタンダードであるRec.2020もカバー率が81%となっており、「Xiaomi G Pro 27i」は2024年の液晶ディスプレイとして最高峰の性能です。
色域のカバー率については、量子ドット技術を採用する液晶/有機ELでもRec.2020の色域をフルにカバーする製品は存在しないので、Rec.2020のカバー率はそのまま高彩度な色の発色性能と考えられます。
また、2024年現在ではDCI-P3(CIE1931)を85%以上カバーすれば広色域モニタの入門レベル、95%以上なら高彩度の色性能が非常に高いモニタと考えてOKです。
分光型測色計で白色点のカラースペクトラムを測定しました。
「Xiaomi G Pro 27i」のディスプレイパネルには量子ドット技術(Quantum Dot Technology)が採用されており、赤緑青の分離は良好かつ、それぞれのピークも鋭く尖っています。
量子ドット技術採用パネルはIPSでもVAでも非常に高価になる傾向ですが、発色や色再現性では頭1つ飛び抜けた性能です。
Xiaomi G Pro 27iの色精度・ガンマ・色温度
続いて「Xiaomi G Pro 27i」の色精度やガンマ・色温度に関する検証結果です。前章が高輝度、高コントラスト、高彩度といった画質の綺麗さに影響する特性を調べているのに対して、クリエイターやWebデザイナーといった”色の正確性が求められる用途(SDRコンテンツ)で使用できるかどうか”を評価する章になっています。
標準設定そのままの色の正確性について
まずは「Xiaomi G Pro 27i」で標準設定そのままの色の正確性について検証していきます。モニタのOSD設定は標準モードで各種補正機能を無効化し、色温度はプリセットの中で最もD65に近い”標準”、ディスプレイ輝度は120cd/m^2になるように調整しています。コントラストは初期値の”75”のまま、ローカルディミングはオフです。
SDR 8bitで0~255のグレーを32分割にして測定し、ガンマ値やRGBバランス、色温度を確認してみました。
下のグラフは標準モードでガンマの設定値を”2.2”にした状態でのガンマカーブですが、全体的に固定値2.2よりも浮いていて、なおかつ最大2.6程度までガンマが右肩上がりに増加するので、固定値2.2やsRGBカーブよりも暗い映像になります。
「Xiaomi G Pro 27i」はガンマカーブ設定にも対応しており、5種類の設定値がありますが、標準設定の”2.2”を基準に設定値の名前通りに各RGBポイントで0.2ずつ上下オフセットしていきます。色空間設定がネイティブの場合、sRGBカーブは選択できません。
「Xiaomi G Pro 27i」で色空間の設定がネイティブの時のガンマについてはsRGBカーブをターゲットして、ガンマが浮く方向にズレているのかと最初は思ったのですが、後述する色域エミュレートのsRGBともカーブが異なりますし、またAdobeRGBやDCI-P3はより固定値2.2をターゲットにしているのが分かるガンマで、こちらとも異なります。
シンプルに校正が取れていないわけではなく、「Xiaomi G Pro 27i」はゲーミングモニタという位置づけの製品なので、絵作りとして意図があってガンマが特殊なチューニングになっているようです。
「Xiaomi G Pro 27i」で色空間の設定をネイティブにする場合は、標準モード等のガンマ設定の初期値である”2.2”よりも”2.0”のほうがsRGBカーブに近いので、カラーキャリブレーションを行う時のベースにするならこちらの方が良いと思います。
「Xiaomi G Pro 27i」はアウトボックス状態において、画質モード:標準などで色空間の設定が”DCI-P3”になっているため、色温度がグレーアウトして設定できません。
色温度を変更するためには最初に色空間の設定を”ネイティブ”に変更してください
「Xiaomi G Pro 27i」には色温度設定として寒色/標準/暖色の3種類のプリセットがあります。
なお画質モードのうちブルーライト低減モードを経由すると、別の画質モードにしても一時的に(モニタ電源ON/OFFまで)、色温度が設定したものと別になるバグを確認しています。
ブルーライト低減モード自体については使用する人は少ないと思いますが、別モードへの影響があるバグなので、最初に好みの色温度を探る時には一応注意してください。
これらを切り替えてもホワイトポイントや発色に違和感がある場合は、ユーザー設定でRGBのバランスを好みに合わせて整えてください。
同じくSDR 8bitで0~255のグレーを32分割にして測定した各点のRGBバランスと色温度です。
OSDの色温度設定はプリセットの中からD65に最も近かった”標準”としていますが、i1Pro3で測定した色温度は6900~7000K程度でした。RGB値255の白においてxy色度は(0.3073, 0.3168)です。
参考までに色温度設定の暖色は5500K程度(0.3322, 0.3306)、寒色は8800K程度(0.2903, 0.2915)でした。
量子ドットのような広色域技術が採用されたディスプレイはメタメリック障害と呼ばれる現象が理由で、スペクトロメーターであってもi1Pro3程度の性能だと正確には白色の色温度やRGBバランスを評価できない(体感と一致しないことがある)のですが、今回はRGBバランスの測定結果の通り、「Xiaomi G Pro 27i」はD65よりも寒色寄りで少し青色が強い白色でした。
テレビの色温度設定だとナチュラルとかニュートラルと表示される、透明感のある白色なので日本人好みではあると思います。
D65からズレているのでRGBバランスは均等(0%付近に収束)ではありませんが、色付きに見えることのある100~255のレベルで平行に推移しているので、測定ホワイトポイントを基準にしてブラックからホワイトは色付きやバンディングのない綺麗なグラデーションです。
カラーチェッカーやマクベスチャートと呼ばれる24色のカラーパッチを使って色の正確性を確認していきます。
まずはICC等のカラーマネジメントの影響を受けず単純に特定のRGB値のカラーパッチを表示して、その色度を測定しました。
Windows OSや一般的なWebコンテンツはsRGBの色規格で表示・作成されているので、sRGB色規格内でそのRGB値を表示した時の色度をリファレンスとして、測定値との色差を出しています。
高性能(広色域)なモニタほど彩度が強調されるので、色差が大きくなります。一応測定していますが、この段階での色差(色の正確性)にはあまり意味がありません。
「Xiaomi G Pro 27i」はDCI-P3を100%、Rec.2020すら82%をカバーする非常に色域の広いモニタなので、ICCによるカラーマネジメントを行わない場合、一般的なSDR(sRGB)コンテンツは上のxy色度図の通り彩度が強調されます。
WindowsでプレイするPCゲームはもちろん、PlayStation 5やXbox Series X|Sといったコンソールゲーム機もディスプレイ色域がsRGB(BT.709)のつもりでRGB値をそのまま出力するので、同様に想定される色(リファレンス)よりも彩度は強調されます。
続いてモニタのネイティブ色域を基準にRGB値から算出した色度をリファレンスにした場合の色差が次の通りです。広色域モニタでも良く出荷前校正された製品ならネイティブ色域をリファレンスにすれば色は概ね一致します。
「Xiaomi G Pro 27i」はsRGBカーブや固定値2.2のような一般的なガンマではないので、ネイティブ色域をリファレンスにしても平均ΔE(00)は1.86程度と色差は大きいです。
今回はネイティブ色域と固定値2.2のガンマをリファレンスとしており、xy色度図では各有色パッチの色度は一致しているように見えますが、ガンマが固定値2.2ではなく、各色の明るさがズレているため、ΔE(00)の色差は大きくなっています。
OSD設定のガンマ設定値をsRGBカーブに近い”2.0”にして、リファレンスのガンマをsRGBにすると、上よりは数字が良くなるものの、それでも平均ΔE(00)は1.0を下回りません。
メーカーによる出荷前色校正としては、決して悪くはありませんが、可もなく不可もなくという感じです。クリエイター・Webデザイナー向けとして評価するなら、あまり良くない、微妙となりそうですが。
また詳しくは色域エミュレートに関する評価の次の節で解説しますが、ネイティブ色域に対する色精度が低い場合、CalibriteやDatacolorのツール&純正ソフトによる簡易的なカラーキャリブレーションでは色が一致しないことも多い(補正して上手くいくこともありますが)ので注意が必要です。
色域エミュレートモードの色の正確性について
sRGBやAdobeRGBなど代表的な色規格通りの色域、場合によってはホワイトポイントやガンマを再現するエミュレートモードにおける色の正確性を検証していきます。「Xiaomi G Pro 27i」は色空間の設定値をネイティブにするとディスプレイパネルの性能を最大限に発揮し、上のような非常に広い色域で動作しますが、同じ設定でsRGB、DCI-P3、AdobeRGBを選択することで各色域に一致するエミュレート動作も可能です。
色空間の設定でsRGB、DCI-P3、AdobeRGBを選択した場合、各色規格をエミュレートする動作になるので、ガンマと色温度は自動制御となります。
「Xiaomi G Pro 27i」のsRGBモード(sRGBエミュレート)については、色域だけでなく、ガンマと色温度もカラーモードによる自動制御になります。
sRGBモードのガンマカーブはRGB値で100あたりまではsRGBカーブに沿って動くものの、そこから255まではネイティブ色域の時同様に少し浮いて右肩上がりに増加します。
sRGB色規格のホワイトポイントはD65ですが、sRGBモードの色温度はi1Pro3による測定では6000K程度、赤色かマゼンタ色がかった白色です。
メタメリック障害もあるので厳密な評価は難しいのですが、筆者にはD65からはズレて、割と強めに赤色がかった白色に見えました。D65と見なすのは難しいと思います。
RGBバランスは平行なのでグレーグラデーションはバンディングや色付きもなく綺麗です。
sRGBモードにするとネイティブではAdobeRGBやDCI-P3を軽くオーバーしていた色域がsRGB相当に制限されます。カバーされる広さはsRGB相当になりますが、sRGBの色規格からは色域(RGB三原色のプライマリ)が微妙にズレています。
「Xiaomi G Pro 27i」のsRGBモードはi1Pro3の測定ではホワイトポイントがD65からズレているので全体的に色がシフトしてしまい、sRGB色規格をリファレンスにすると色差は平均ΔE(00)が4以上と、全く色が合っていません。
一応、sRGBモードの実測色域からリファレンスの色度を出すと平均ΔE(00)は1.01程度になるので、メーカーで全く校正が取れていないわけではありませんが、可もなく不可もなく、という感じです。ホワイトポイントがD65から比較的に大きくズレているのは測定結果の通りなので、実測色域で色が合っているからといって実用性があるかとなると微妙ですし。
ともあれ、前述の通り、sRGB色規格を基準にすると、全く色が合っていないので、sRGBエミュレートの色精度は悪い、という評価になると思います。
「Xiaomi G Pro 27i」のDCI-P3モード(DCI-P3エミュレート)については、色域だけでなく、ガンマと色温度もカラーモードによる自動制御になります。
DCI-P3にはDisplay P3など同じ色域でホワイトポイントやガンマが異なる派生系がいくつかあり分かり難いのですが、「Xiaomi G Pro 27i」のDCI-P3モードはホワイトポイントがD65、ガンマは固定値2.2になるようチューニングされているようです。
DCI-P3モードでは若干右肩上がりな傾向はあるものの固定値2.2をターゲットにしているとみなせる程度の軌跡にはなっています。
標準設定のところでも掲載したグラフですが、DCI-P3モードのガンマは後述するAdobeRGBモードのガンマと一致し、sRGBモードのガンマとは異なっています。
AdobeRGBモードのガンマと一致しているので、DCI-P3モードがターゲットとしているガンマはおそらく固定値2.2です。
DCI-P3モードの色温度は、sRGBモードや後述のAdobeRGBモードと同じく、i1Pro3による測定では6000K程度、赤色かマゼンタ色がかった白色でした。
メタメリック障害もあるので厳密な評価は難しいのですが、筆者にはD65からはズレて、割と強めに赤色がかった白色に見えました。D65と見なすのは難しいと思います。
RGBバランスは平行なのでグレーグラデーションはバンディングや色付きもなく綺麗です。
DCI-P3の派生系の1つであるDisplay P3はホワイトポイントはD65ではあるものの、ガンマはsRGBカーブなので、「Xiaomi G Pro 27i」のDCI-P3モードとは異なります。
というかあえて色域だけでなくホワイトポイント(色温度)とガンマを固定して、DCI-P3の色域かつD65と固定値2.2の組み合わせにするというのは特殊な設定です。普通は単純に色域だけ制限するか、WP・ガンマも組み合わせてシネマ向け想定なら6300K&2.6、もしくはDisplay P3のD65&sRGBカーブの3択なので。
DCI-P3モードにするとネイティブではオーバーしていた色域がDCI-P3相当に制限されます。sRGBモードに比べると軽微ですが、DCI-P3モードでもやはり、DCI-P3色規格からは色域(RGB三原色のプライマリ)が微妙にズレています。
「Xiaomi G Pro 27i」のDCI-P3モードはi1Pro3の測定ではホワイトポイントがD65からズレているので全体的に色がシフトしてしまい、DCI-P3色規格(D65, γ2.2)をリファレンスにすると色差 ΔE(00)が平均4.0以上、有色パッチに限定しても平均3.0以上と、全く色が合っていません。
一応、DCI-P3モードの実測色域からリファレンスの色度を出すと平均ΔE(00)は1.02程度になるので、メーカーで全く校正が取れていないわけではありませんが、可もなく不可もなく、という感じです。ホワイトポイントがD65から比較的に大きくズレているのは測定結果の通りなので、実測色域で色が合っているからといって実用性があるかとなると微妙ですし。
ともあれ、前述の通り、DCI-P3色規格を基準にすると、全く色が合っていないので、DCI-P3エミュレートの色精度は悪い、という評価になると思います。
「Xiaomi G Pro 27i」のAdobeRGBモード(AdobeRGBエミュレート)については、色域だけでなく、ガンマと色温度もカラーモードによる自動制御になります。
AdobeRGBモードでは若干右肩上がりな傾向はあるものの固定値2.2をターゲットにしているとみなせる程度の軌跡にはなっています。
AdobeRGB色規格のホワイトポイントはD65ですが、sRGBモードと同じく、AdobeRGBモードの色温度はi1Pro3による測定では6000K程度、赤色かマゼンタ色がかった白色でした。
メタメリック障害もあるので厳密な評価は難しいのですが、筆者にはD65からはズレて、割と強めに赤色がかった白色に見えました。D65と見なすのは難しいと思います。
RGBバランスは平行なのでグレーグラデーションはバンディングや色付きもなく綺麗です。
AdobeRGBモードにするとネイティブではAdobeRGBやDCI-P3を軽くオーバーしていた色域が、カバーできる範囲内でAdobeRGB相当に制限されます。緑成分の色域が不足しているので、概ねフルカバーのsRGBやDCI-P3と比べて曖昧ですが、やはりAdobeRGB色規格からは赤色の色度が微妙にズレているように思います。
AdobeRGBに対して高彩度の緑色の色域が不足しており、ホワイトポイントも含め全体的にマゼンタ寄りに色がシフトする可能性はあるのですが、それを考慮しても「Xiaomi G Pro 27i」のAdobeRGBモードはi1Pro3の測定ではホワイトポイントがD65からズレているので全体的に色がシフトしてしまい、AdobeRGB色規格をリファレンスにすると色差 ΔE(00)が平均4.0以上、有色パッチに限定しても平均3.0以上と、全く色が合っていません。
一応、AdobeRGBモードの実測色域からリファレンスの色度を出すと平均ΔE(00)は1.84程度でした。メーカー校正の精度としてはかなり微妙です。”ディスプレイパネルの性能の範囲内でAdobeRGBを違和感なく表示できる”という意味で良く校正されているかというと、その点でも不適格だと思います。
前述の通り、AdobeRGB色規格を基準にすると、全く色が合っていないので、AdobeRGBエミュレートの色精度は悪い、という評価になると思います。
カラーキャリブレーション後の色の正確性について
最後にカラーキャリブレータを使用して色校正を行うことで、「Xiaomi G Pro 27i」は正確な色を出すことができるのか検証していきます。カラーキャリブレーションはX-Rite i1 Basic Pro 3と純正ソフトi1Profilerを使用して行いました。
キャリブレーション設定はホワイトポイントがD65、白色輝度が120cd/m^2、ガンマは固定値2.2としています。キャリブレーションのカラーパッチ数は中(211)です。
「Xiaomi G Pro 27i」のOSD設定については標準モードで各種補正機能はオフ、コントラストは初期設定の”75”、ガンマは固定値2.2やsRGBカーブに一番近かったので設定値を”2.0”としています。
色温度設定はプリセットの中では”標準”が最もD65に近いですが、i1Profilerの初期設定においてホワイトポイントがD65からズレていて、RGBの強さに差が大きいとアラートが出たので、手動で調整できるユーザー設定モードでR(赤)=50, G(緑)=47, B(青)=45としてキャリブレーションを行いました。
X-Rite i1 Basic Pro 3によってカラーキャリブレーションで作成したICCファイルを適用し、同じくi1Profilerのディスプレイ品質検証(色の正確性の検証)機能で測定した色精度は次のようになっています。
カラーキャリブレーション後にi1Pro3で測定した「Xiaomi G Pro 27i」の色の正確性はΔE 0.4でした。
色域エミュレートを含めアウトボックス状態のメーカー校正はいまいちでしたが、カラーキャリブレーションでモニタプロファイルを作成すれば、「Xiaomi G Pro 27i」はかなり高い精度で色を出すことが可能です。
なおX-Riteが公開している色差に関するブログポストによると、によると『ΔE=1程度で2つの色を横にくっつけて見比べた時に違いが判別できるレベル』とのこと。
補足としてi1Pro3で行ったカラーキャリブレーションの結果についてもう少し詳しく見ていきます。
まずは単純に0~255を32分割したRGB値のテストパターンをそのまま表示してガンマを確認しました。ガンマ2.2になるようにキャリブレーションしたので、校正モニタプロファイルを適用した「Xiaomi G Pro 27i」は固定値2.2のガンマで綺麗に安定しています。色温度もD65(6500K)前後、RGBバランスも安定しており全く問題ありません。
sRGB、AdobeRGB、DCI-P3 D65のICCプロファイルを埋め込んだpng画像をテストパターンにして測定したガンマ値は次のようになっています。
sRGBはsRGBカーブ、AdobeRGBは固定値2.2、DCI-P3 D65は固定値2.6のようにICCプロファイルで指定されるガンマへ綺麗に変換されています。
(ICCなし画像はRGB値がそのまま出力される場合とsRGB扱いで変換になる場合に分かれ、ソフトやモニタICCプロファイルによって挙動が変わります)
カラーキャリブレーションで作成したICCをモニタプロファイルとして適用すれば、sRGB/AdobeRGB/DCI-P3 D65のICCが埋め込まれたpng画像をテストパターンとしてi1Pro3で測定した色度は、各色規格から算出したリファレンスに概ね一致するはずです。
「Xiaomi G Pro 27i」は市販カラーキャリブレータによる一般的なキャリブレーション(モニタICCプロファイルの作成)によって、sRGB/AdobeRGB/DCI-P3 D65などの色を正確に表示できます。
標準設定や各種色域エミュレートの測定結果の通り、入手した個体が不良なのか、ファームウェアバグなのか、最悪、そもそもメーカー校正が全くできていないのか、原因は分かりませんが、アウトボックス状態では色域エミュレートも含めて色精度がいまいちだったので、一般的なカラーキャリブレーションで色精度が出せるか不安でしたが、上手くいってよかったです。
色精度を出すにはCalibriteやDatacolorのカラーキャリブレーションツールによる校正が必要になるので、初心者向けかというと微妙ですが、ともあれ、それさえできれば「Xiaomi G Pro 27i」はSDRでちゃんと色精度を出すことができます。
Xiaomi G Pro 27iのリフレッシュレートについて
「Xiaomi G Pro 27i」のリフレッシュレートについてチェックしていきます。120Hzや144Hzなどリフレッシュレートについて、その意味自体は特に説明せずとも多くの読者はご存知だと思いますが、一般的な60Hzリフレッシュレートの液晶モニタが1秒間に60回の画面更新を行うのに対して、144Hzリフレッシュレートであれば標準的な60Hzの2.4倍となる1秒間に144回の画面更新を行います。
最近では競技ゲーマー向け製品で240Hzの超高速リフレッシュレートなゲーミングモニタも普及しつつあり、さらには、それを上回る360Hzや540Hzの超々高速なリフレッシュレート対応製品も各社から販売されています。
120Hz+の高リフレッシュレートなゲーミングモニタを使用する3大メリット『滑らかさ』『低遅延』『明瞭さ』についてはこちらの記事で概要を解説しているのでゲーミングモニタ選びの参考にしてみてください。
「Xiaomi G Pro 27i」ではNVIDIA GeForce RTX 40/30シリーズやAMD Radeon RX 7000/6000シリーズなど最新グラフィックボードのDisplayPort1.4のビデオ出力に接続することによって、モニタリフレッシュレートを144Hzなどに設定できます。
「Xiaomi G Pro 27i」にはサブ入力としてHDMIビデオ入力を搭載しています。HDMIビデオ入力のバージョンはHDMI2.0なので、最大リフレッシュレートはWQHD解像度において144Hzです。
モニタリフレッシュレートの設定は、NVIDIA製GPUの場合は上のスクリーンショットのようにNVIDIAコントロールパネルから、AMD製GPUの場合はWindowsのディスプレイ設定から行います。
高性能なゲーミングモニタには高性能なGPUが必要
ゲーミングモニタのリフレッシュレート(と解像度/フレームレート)と対になって重要なのが、PCのグラフィック性能を左右するGPU、グラフィックボードです。ハイフレームレートはヌルヌル、サクサクと表現できるような快適なゲーミングを実現するだけでなく、上で説明したように競技系ゲームを有利に運ぶ意味でも重要ですが、ゲーミングモニタがハイリフレッシュレートに対応していても、PCのグラフィック性能が不足していて大元の映像データが60FPS前後しか出ていなければ宝の持ち腐れになってしまいます。
当サイトでは240Hz+の競技ゲーマー向けモニタや4K/120Hz+のラグジュアリーな画質重視モニタを検証するにあたりモニタ性能を最大限に発揮できるよう、2023年最新にして最速のウルトラハイエンドGPUを搭載したグラフィックボード「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN」を使用しています。
PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8は、ベイパーチャンバー構造のベースコアや、厚みのあるファンブレードをバリヤーリングで結合した重厚な冷却ファンを採用する4スロット占有大型GPUクーラーにより、各社AIBモデルの中でもトップクラスの静音性を実現しています。
メーカーのPNYは2022年に株式会社アスクが販売代理店契約を結んだばかりの新参なので国内での知名度は高くありませんが、北米など海外市場では30年以上に渡りコンシューマーならびにビジネス向けで電子機器の製造・販売を行う大手メーカーです。
国内正規品なら代理店を介してPNY公式のグローバル保証と同じ3年間の長期保証が受けられるところも魅力です。
・「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8」をレビュー
「Xiaomi G Pro 27i」のポテンシャルを最大限に引き出すには、元から軽めのPCゲームや画質設定を下げた最新PCゲームであってもグラフィックボードのGPU性能はかなり高い水準で要求されます。
ゲーミングモニタとして「Xiaomi G Pro 27i」を使用するのであれば2023年最新GPUであるNVIDIA GeForce RTX 4070 SUPERやAMD Radeon RX 7800 XTがおすすめです。
・GeForce RTX 40シリーズのレビュー記事一覧へ
・Radeon RX 7000シリーズのレビュー記事一覧へ
Xiaomi G Pro 27iの応答速度・表示遅延
次にゲーミングモニタのハードウェア性能として特に重要な、「Xiaomi G Pro 27i」の応答速度や表示遅延についてチェックしていきます。まずは「Xiaomi G Pro 27i」の応答速度について検証していきます。
なおゲーミングモニタを選ぶ、もしくはモニタの応答速度や残像を評価する上で重要な予備知識である『液晶モニタの応答速度とオーバードライブ機能』についてはこちらの記事で簡単に紹介しているので、よくわからないという人は先に確認してみてください。
「Xiaomi G Pro 27i」のOSDメニュー上では 一般にオーバードライブと呼ばれる応答速度を調整する機能は「応答速度」の名前で配置されています。
オーバードライブ補正の強度を標準(Normal)、高速(Fast)、さらに高速(Faster)、最速(Fastest)の4段階で設定ができて、標準設定は”高速”です。
なお「Xiaomi G Pro 27i」はHDR表示が有効になると、応答速度の設定が配置されている写真モード・ゲームモードのタブ自体がグレーアウトして設定できなくなります。
HDR表示中のオーバードライブ補正はSDR表示において最後に適用していたものを引き継ぐのではなく、”標準”の設定値と同じになるようです。
応答速度の確認には「UFO Test: Ghosting」を使用します。同テストではUFOが移動する背景カラーを選択できますが、今回の検証ではブラック/グレー/ホワイトの3色を選択しています。
背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
まずは簡単にシャッタースピードを十分に速くして「UFO Test: Ghosting」の様子を写真撮影してみたところ、「Xiaomi G Pro 27i」を180Hzリフレッシュレート、オーバードライブは標準設定の”高速”で動作させると、ベストタイミングでも1つ前のフレームが薄っすらと残りました。
120~180Hzならベストタイミングで1フレーム単独になる液晶モニタもあるので最速クラスというわけではありませんが、KSFpタイプならともかく、量子ドット技術採用IPS液晶モニタとしてはなかなか高速です。
オーバードライブ”最速”にするとオーバーシュートによる逆像は生じるものの、色滲みはかなり薄いです。
過渡応答はより高速になり、クッキリ感は増すので、実際に使ってみて違和感がなければ最速でも問題ありません。「Xiaomi G Pro 27i」のオーバードライブ設定は好みで選べばOKです。
さらに「Xiaomi G Pro 27i」のリフレッシュレートを変えてみたり、他の液晶モニタを比較対象にしたりしながら、UFO Test: Ghostingの様子をSONY DSC-RX100M5の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、比較してみます。
「Xiaomi G Pro 27i」において最適というか、特におすすめなオーバードライブ設定は特にありません。
設定値に応じて順番に過渡応答が速くなり、”最速”の設定ではオーバーシュートで僅かに色滲み感は出ますが、60Hz~180Hzまでどのオーバードライブ設定でも残像・逆像感にはほとんど違いがないので、”最速”から順番に試してみて、各自で違和感がないものを選べばOKです。
ここからはSONY DSC-RX100M5の960FPS(16倍速)よりもさらに高速な5760FPS(96倍速)のスーパースローモーションカメラを使用して「Xiaomi G Pro 27i」の応答速度を比較検証していきます。
最初に5760FPSスーパースローでも180Hzや120Hzの時のオーバードライブ設定について確認しておくと、960FPSスーパースローでも見た通り、”高速”、”さらに高速”、”最速”にはほとんど違いはありません。
5760FPSのスーパースローモーションで見ると”最速”だけでなく、”さらに高速”にもオーバーシュートによる逆像が確認できますが、いずれにせよ薄っすらと生じる程度なので、繰り返しになりますが、お好みで選べばOKです。
続いてモニタ製品別の比較です。
「Xiaomi G Pro 27i」の応答速度は、BenQ MOBIUZ EX3210UやASUS ROG Swift PG32UQなど1D型LD対応のAUO製量子ドットIPS液晶パネル採用製品や、FALDに対応した量子ドットIPS液晶のTitan Army P32A6V(国内では同等製品としてINNOCN 32M2Vが流通し有名)よりも高速です。
BenQ MOBIUZ EX321UXにこそ及びませんが、量子ドットIPS液晶パネル採用製品としては「Xiaomi G Pro 27i」は高速な部類です。
また、下の動画の通り流石に理想スイッチ的な応答を見せる有機ELには当然のように敵いませんが、SONY INZONE M9、MOBIUZ EX2710Uなど公称スペックとしてGTG 1msが表記されるLG/AUO/InnoluxのKSF蛍光体構造の液晶パネルと比較して同等か、やや下回るくらいの性能を実現しています。
続いてスーパースローモーション動画ではなく、オシロスコープ&光プローブのような光センサーを利用した定量的な測定で応答速度についてチェックしていきます。
ここで確認するのは製品スペックに置いて『〇〇s (GTG)』などと表記される性能そのものです。統計的な扱いや解析には差があるかもしれませんが。
「Xiaomi G Pro 27i」については、PWM式バックライト調光の振り幅がかなり大きいため、Perceived/Completeやオーバーシュートエラーの算出が難しいので、スーパースローモーションでも綺麗な応答を見せたOD設定”高速(Fast)”と、加えて180Hzでは”さらに高速(Faster)”におけるTransient Responseの比較グラフのみ掲載します。
「Xiaomi G Pro 27i」の最大リフレッシュレートで最適OD設定を適用した時の応答速度は次のようになっています。
ゲーム機や動画視聴において一般的な60Hzリフレッシュレートにおいて、「Xiaomi G Pro 27i」に最適OD設定を適用した時の応答速度は次のようになっています。
ゲーミングPCだけでなくPlayStation 5やXbox Series X/Sといった最新ゲーム機も対応する120Hzの高速リフレッシュレートにおいて、「Xiaomi G Pro 27i」に最適OD設定を適用した時の応答速度は次のようになっています。
最後に「Xiaomi G Pro 27i」の表示遅延(内部遅延)について測定を行いました。
モニタにはGPUのビデオ出力が送られてきてから実際にモニタに表示されるまで遅延が存在し、この遅延が大きいと例えば、FPSゲームでゲームパッドのトリガーやマウスのクリックによる操作からワンテンポ遅れて、マズルフラッシュが表示される、といった現象が発生します。人間は当然目で見てから操作するので、格闘ゲームやFPSゲームなど1,2フレームを争うような競技性の高いゲームにおいてはモニタの表示遅延が可能な限り小さいことが望まれます。
システム表示遅延やディスプレイ表示遅延の測定には、フォトセンサーを使用した特殊な測定機器「PC Gaming Latency Tester」を使用しています。当サイトのレビュー用に特注した機器なので、詳細についてはこちらの記事を参照してください。
「Xiaomi G Pro 27i」やその他の比較モニタのディスプレイ表示遅延の測定結果は次のようになりました。測定方法的に遅延が2ms以下であればディスプレイ内部の表示遅延は誤差の範囲内で十分に小さいと考えてOKです。
「Xiaomi G Pro 27i」は標準的な60Hzから最大値の180Hzまで理想的なディスプレイ表示遅延を発揮しています。
「Xiaomi G Pro 27i」やその他の比較モニタのシステム表示遅延の測定結果は次のようになりました。この測定値は一般的なPCゲームにおける操作から画面表示の変化までの遅延に一致します。
グラフの通りリフレッシュレートを上げると応答速度だけでなく表示遅延も改善するのでゲーマーにとってハイリフレッシュレートなゲーミングモニタを選択するメリットは大きいということが分かると思います。
Xiaomi G Pro 27iの可変リフレッシュレート同期について
続いて「Xiaomi G Pro 27i」が対応する可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible(VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」についてチェックしていきます。モニタの画面更新(リフレッシュ)に関する基本的な予備知識や、「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」と「NVIDIA G-Sync Compatible」の関係についてはこちらの記事を参考にしてください。
・ゲーミングモニタの選び方[3] FreeSyncとG-Sync Compatibleについて
「Xiaomi G Pro 27i」はAMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)など可変リフレッシュレート同期に対応しています。
2024年7月現在、GeForce Driver 560.70でG-Sync Compatible認証は未取得でした。
従来のNVIDIA製GPUではHDMI経由でG-Sync Compatibleは利用できないケースが多かったのですが、HDMI2.1では伝送技術の規格の一部としてVRR同期が内包されているので、「Xiaomi G Pro 27i」ではHDMI経由でもG-Sync Compatibleを利用できます。
当然、AMD製GPU環境でもDisplayPortとHDMIの両方でVRRを利用できます。
「Xiaomi G Pro 27i」で可変リフレッシュレート同期機能を使用するには、ゲーミングPCやCSゲーム機で共通の確認事項として、OSD設定から「FreeSync」の項目をオンにする必要があります。
可変リフレッシュレート同期機能が正常に動作してリフレッシュレートが可変になると、「Xiaomi G Pro 27i」のOSD機能で確認できるリアルタイムリフレッシュレートがフレームレートに合わせて変動するようになるので、機能が正しく動作しているかどうかはここを見て確認してください。
Xiaomi G Pro 27iのHDR表示やCSゲーム機対応について
「Xiaomi G Pro 27i」のHDR表示やCSゲーム機の対応(4Kエミュレートなど)についてチェックしていきます。HDR表示やCSゲーム機対応について | |
HDMI ver, ポート数 |
HDMI2.0(VRR対応) ×2 |
HDR表示 | 対応 |
VRR同期 | 対応、PS5でも使用可能 |
カラーフォーマット DP1.4(DSC) |
WQHD/180Hz/10bit RGB |
カラーフォーマット HDMI2.0 |
WQHD/144Hz/10bit RGB |
ピーク輝度(実測) | 1335 cd/m^2 (APL 75%) 1224 cd/m^2 (APL 100%) |
輝度認証 | VESA DisplayHDR 1000 |
ローカルディミング | 対応、1152分割 |
4Kエミュレート | 非対応 |
PlayStation 5 | WQHD/120FPS対応, (HDR YUV422) |
Xbox Series X/S | WQHD/120FPS対応 4K非対応なのでHDR非対応 |
「Xiaomi G Pro 27i」はHDR表示におけるピーク輝度は最大1000nits(cd/m^2)で、VESAがPCモニター向けに展開している輝度認証においてハイエンドクラスのDisplayHDR 1000を取得しています。
さらに「Xiaomi G Pro 27i」には4608個のMini LEDによる直下型LEDバックライトが採用されており、1152分割のフルアレイ型ローカルディミングに対応します。
VESA DisplayHDR Compliance Testsから「Xiaomi G Pro 27i」のEDIDに収録されているHDRスペックが確認できます。
HDR表示モードやOSD設定について
「Xiaomi G Pro 27i」でHDR映像ソースを正常に表示するには、”HDR”の設定項目を自動もしくはオンにする必要があります。アウトボックス状態では”自動”が設定値として適用されているので、ユーザーが特に設定しなくてもHDR映像を問題なく表示できますが、HDR表示で何か問題がある時はまずここを確認してください。
ちなみにオンにすると映像ソースがSDR・HDR依らずHDR扱いになるので、自動ではなくオンを選択する理由はあまりないと思います。HDRの設定をオフにするとPC・ゲーム機など映像出力機器からはモニタがHDR非対応として認識されます。
加えて、PlayStaion5など一部機器をHDMIに接続した場合、「Xiaomi G Pro 27i」のOSD設定でFreeSyncがオフになっているとHDRに非対応と表示されてしまうので注意してください。
HDR設定を”自動”にした状態でHDR映像ソースが認識されると、自動的にHDR表示モードに切り替わります。
HDRモードでは画面表示に関わるほぼ全ての設定がグレーアウトします。HDR映像ソースが入力されると輝度も自動制御になります。
テレビであればHDR表示でもSDR表示の時とほとんど同じように設定が可能なので、好みの画質(明るさ、色温度、彩度など)に調整することができないという点はHDR対応PCモニタの弱点です。
HDR関連でユーザーが変更できる唯一の設定はローカルディミングです。
『バックライトの速さ(更新頻度)』や『輝点に対するカバー領域』といったローカルディミングの挙動を低/中/高の3段階の設定から選択できます。
なお、「Xiaomi G Pro 27i」ではローカルディミング設定をSDR表示とHDR表示で引き継ぐ仕様になっています。
SDR表示は通常、ローカルディミング無効が推奨ですが、オフのSDRからHDRに映像を切り替えてもローカルディミングは自動で有効になりませんし、逆にオン(低/中/高)のHDRからSDRに切り替えてもローカルディミングが無効になりません。
「Xiaomi G Pro 27i」にはホットキー等を使用したショートカット設定機能もないので、HDRとSDRを切り替える使い方の場合、都度、ローカルディミング設定を変更する必要があり、地味に厄介です。
「Xiaomi G Pro 27i」のローカルディミング設定は50~300cd/m^2程度のベース輝度となるような明るさにおいてEOTFに大きく影響します。
3つの設定値の中では最も明るくなる”高”設定でもHDRリファレンス輝度より暗いですが、”中”設定はさらに暗くなり、”低”設定ではバックライトの追従遅延も加わるので実質、”高”設定一択だと思います。
「Xiaomi G Pro 27i」の特異なところとして、液晶パネルのオーバードライブ設定が、写真モード/ゲームモード内の小項目として配置されているため、HDR表示モードに切り替わるとオーバードライブ設定も自動制御になります。
SDR表示において最後に適用していたものを引き継ぐのではなく、HDR表示中のオーバードライブ補正は”標準”の設定値と同じになるようです。
「Xiaomi G Pro 27i」のHDR表示におけるホワイトポイントについては赤色成分が強くなるバグを1件確認しています。
SDR表示のビデオ入力からHDR表示のビデオ入力に切り替えた時に、HDR表示側はホワイトポイントがズレて赤色成分が強くなります。HDR表示中のビデオ入力間で切り替えた場合はこの現象は発生しません。
SDR表示の色温度によってズレ具合が変わります。SDRが暖色設定だと大幅にズレるのですぐ分かりますが、寒色寄りだと微妙な差になるので厄介です。
HDR表示で画面が赤くなるバグが発生した場合は、『モニタの電源を入れ直す』、もしくは『そのビデオ入力のままでHDRのON/OFFを切り替え直す(モニタ側、ソース側どちらでも可)』の操作で正常に戻ります。
PC接続時の解像度やカラーフォーマットについて
「Xiaomi G Pro 27i」はDisplayPort1.4ビデオ入力でPCと接続した場合、WQHD/180HzのHDR表示において、RGB 10bitのカラーフォーマットに対応します。「Xiaomi G Pro 27i」のHDMIビデオ入力のバージョンはHDMI2.0です。
もう少し厳密に説明すると、HDMIの最新バージョンであるHDMI2.1には後方互換性があり、48Gbpsなど高速帯域に対応する映像データ伝送方式 FRLにだけでなく、HDMI2.0の伝送方式であるTMDSもサポートしています。
「Xiaomi G Pro 27i」の場合は、HDMI2.1規格に内包される機能のうちHDMI VRRには対応する一方で、映像データの伝送方式としてFRLはサポートせず、HDMI2.0の伝送方式であるTMDSにのみ対応する、という実装になっています。
HDMI2.1規格の後方互換&VRR対応という実装なので、「Xiaomi G Pro 27i」はPlayStation 5でもVRRを利用できます。
「Xiaomi G Pro 27i」のHDMIビデオ入力のバージョンはHDMI2.0なので、WQHD/144HzにおいてHDRを有効にするとNVIDIA製GPU環境ではデフォルトのカラーフォーマットがRGB 8bitになります。
WQHD/144Hzでもカスタムカラー設定を使用すれば、カラーフォーマットをクローマサンプリングのYUV422にすることでbit深度を10bitにすることが可能です。
デフォルトのカラー設定を含め、WQHD解像度のHDR表示でRGB 10bitに対応するのは最大60Hzリフレッシュレートまででした。
CSゲーム機接続時の4KエミュレートやHDCP対応について
「Xiaomi G Pro 27i」のサブ入力として設置されている2基のHDMI端子はいずれもHDMI2.0ですが、4Kエミュレートには非対応です。PlayStaion5も現在の最新ファームウェアバージョンではWQHD解像度に対応しているので、「Xiaomi G Pro 27i」を接続した場合、WQHDの60Hzや120Hzで表示できます。
PlayStaion5では「Xiaomi G Pro 27i」のOSD設定でFreeSyncがオフになっているとHDRに非対応と表示されてしまうので注意してください。
「Xiaomi G Pro 27i」は4Kエミュレートに非対応のため、ゲーム機側の仕様として4KでないとHDR表示ができないXbox Series X/SではゲームのHDR表示は利用できません。
「Xiaomi G Pro 27i」のHDMIビデオ入力は公式仕様ではHDMI2.0と表記されていますが、『映像データの伝送方式はHDMI2.0のTMDSのみサポートだが、VRRなど一部のHDMI2.1機能に対応』というHDMI2.1の後方互換で実装されています。
そのためHDMI2.0のAMD FreeSyncをサポートするAMD製GPU搭載PCやXbox Series X/Sだけでなく、PlayStation 5のようにHDMI2.1のVRRをサポートするゲーム機であればVRR同期機能を利用できます。
実用的に何か悪影響があるわけではありませんが、ALLMにはなぜか非対応でした。
Xiaomi G Pro 27iのHDR性能やローカルディミングについて
最後に「Xiaomi G Pro 27i」のHDR表示における輝度性能、ローカルディミング対応、色性能をチェックしていきます。HDR表示における輝度性能について
HDR対応モニタ/テレビのHDRモードにおけるディスプレイ輝度は、高輝度領域の広さ(APL: Average Picture Level)や高輝度表示の継続時間に依存するので、Calibrite Display Plus HLを使用してHDR時の最大輝度を条件別で測定してみました。VESA DisplayHDR Compliance Tests以外の測定はdogegenというWindows上でRGB 10bitのHDRカラーをそのまま表示できるテストパターンジェネレーターを使用しています。
「Xiaomi G Pro 27i」はVESA DisplayHDR Compliance Testsで確認すると、画面全体でも最大1200cd/m^2程度という非常に高い輝度を発揮できました。
FALDの場合、高輝度領域が狭くなるとコントラスト向上のため点灯できるバックライトが減るので輝度は若干下がることもありますが、同製品では10% APLでも輝度低下はなく、1200cd/m^2前後の高輝度を発揮します。VESA DisplayHDR 1000の基準をクリアする性能です。
1000cd/m^2を超える高輝度は輝度性能の高いFALD対応液晶モニタといえど、APL 100%の全白では時間経過で輝度が低下し、数秒から10秒程度しか維持できない製品も多いです。
「Xiaomi G Pro 27i」は画面全体の最大輝度である1200cd/m^2を維持できるのは5秒程度で、そこから10秒程度かけて輝度が徐々に低下していきます。
最大輝度を発揮できる時間には制限があるものの、「Xiaomi G Pro 27i」は30秒以上も画面全体で1000cd/m^2程度を維持し続けることが可能です。
先日レビューしたMOBIUZ EX321UXほどではありませんが、既存の1000cd/m^2超のHDR対応モニタと比較すると非常に高い持続輝度性能です。
高輝度領域に対するHDR輝度(APL:Average Picture Level)をもう少し細かく見ていくと、「Xiaomi G Pro 27i」はローカルディミング設定を”高”にした場合、APL 50%までなら30秒以上も1000cd/m^2を超える最大輝度をキープできます。
高APLになると時間経過で輝度が下がりますが、それでもAPL 70%で1200cd/m^2以上、100% APLで1000cd/m^2前後という高輝度を発揮できます。
1152分割とはいえ縦横で言うと30~40程度の分割数なので、周辺バックライトを消灯する必要のある10% APL未満では高輝度とハロー軽減はトレードオフの関係になりますが、「Xiaomi G Pro 27i」は高輝度性能重視のバックライト制御になっており、2% APLでも1000cd/m^2前後を発揮します。
最大輝度をローカルディミング設定別で見ると”中”設定は短時間でも30秒程度の持続でも”高”設定とほぼ同じです。
”低”設定は少しですが傾向が異なり、2%や5%といった低APLにおける最大輝度が低下する代わりに、70%など高APLにおける持続輝度が”高”設定や”中”設定よりも若干高くなります。
FALD対応液晶や有機ELの各種製品とAPLによる輝度性能を比較してみました。
「Xiaomi G Pro 27i」などFALD対応液晶モニタの特長はやはり50%~100%のような広い高輝度領域に対して安定して各製品の最大輝度を発揮できるところです。有機ELモニタは2024年現在トップクラスの性能でもVESA DisplayHDR 600相当の性能を発揮できるのは20% APL以下のような限られたシーンになります。
一方で、FALD対応液晶モニタはハローをどこまで抑制するかで小領域の輝度性能に制限がかかります。有機ELはピクセル単位で輝度を調整できるので2%や5%の小さい領域でもハローなしで高輝度を発揮できるのが強みです。
ローカルディミング対応について
「Xiaomi G Pro 27i」は4608個のMini LEDによる直下型LEDバックライトが採用され、1152分割のローカルディミングに対応しています。「Xiaomi G Pro 27i」はローカルディミングの挙動を低/中/高の3段階の設定から選択できます。
この設定は『バックライトの速さ(更新頻度)』や『輝点に対するカバー領域』といったローカルディミングの動作に影響します。
*注:ローカルディミングの比較動画においては違いを分かり易くするため異なる露出設定を使用しています。
1つの動画内で左右に並べた素材についてはISO感度など露出を統一していますが、異なる動画間ではカメラの露出設定が異なる場合があるので注意してください。
「Xiaomi G Pro 27i」のローカルディミングでは黒色表示かつ近傍に輝点がなければ、その部分のバックライトは完全に消灯します。
輝点付近のバックライトのみが点灯するので黒の表現力は高く、輝点の輪郭を超えてバックライトが点灯するハロー・ブルーミングがやはりあるものの、1152分割のFALDなので漏れ出す範囲は狭めです。
「Xiaomi G Pro 27i」の場合、同じローカルディミング設定でもリフレッシュレートによって若干挙動が変わるっぽいのですが、基本的に”高”もしくは”中”の設定が推奨です。
”低”設定は映像に対するバックライト更新が明らかに遅く、バックライト遅延による彗星の尾のような残像・色滲みが生じます。
バックライトの点灯が弱く、ハロー・ブルーミングが狭めなので、おそらく、”低”設定は静止画の状態でHDRコンテンツを確認するための動作モードです。
”高”と”中”についてはバックライトの追従(更新間隔)についてはほぼ同等で、単純に後述のEOTFなど輝度特性の違いのように感じました。
「Xiaomi G Pro 27i」は校正が悪くてHDRリファレンスよりも輝度が低くなるので、まずは”高”を試してみて、それでも明る過ぎると感じるようなら”中”にするという手順でいいと思います。
”高”と”中”のどちらの設定でもバックライトの追従が若干遅く、輝点が高速で移動すると、液晶パネルの表示とバックライトの点灯位置が1~2フレーム程度ズレる感じでした。(16~24ms程度遅い)
残光感を抑制するためバックライトの追従を高速にすると、バックライト変化に対してチラつきを感じやすくなることもあるので、FALDのチューニングの難しいところです。
ちなみに「Xiaomi G Pro 27i」はエリア近傍に輝点がなければバックライトは完全に消灯しますが、HDR 10bitにおいて、バックライトの消灯はRGBレベル(Code Value)で5以下となっており、RGBレベル 6以上のドットがあるとバックライトが点灯します。
後述のテスト動画でローカルディミングの動作を確認中も、輝点が通り過ぎた後に、輝点そのものにバックライトは追従しているのに、一部のバックライトが点灯したまま残ったり、何もない(ように見える)ところで急にフワッとバックライトが点灯する現象もありました。正面から見た時に残光を強く感じるわけではありませんが(室内照明が暗いと気になるかも)。
検証に使用した動画を調べると下の画像は1フレームの一部分を切り出したものですが、白丸が通った軌跡上にRGB値が0ではなく1のドット(SDR 8bitで)がいくつかあり、これを検出してバックライトが点灯しています。(分かり易いように白色ドットになるよう輝度調整してあります)
ストリーミングも含め動画ファイルは一般的に前後フレームを参照して圧縮するので、RGB値が0の黒色想定の部分がノイズ的にSDR 8bitで1や2の黒(HDRでも10未満の数値でノイズ)になっていることも珍しくありません。
これくらいの条件だとバックライトは完全消灯と判断するくらいのチューニングが正解だと思うので、バックライト制御が甘いというのが個人的な意見です。
現在10万円程度で販売されている4K/144Hz対応ゲーミングモニタの多くは、ローカルディミングに対応していても短冊状の1D型かつ分割数が10~20程度なので、輝点に対してかなりの広範囲でバックライトが点灯してしまうのがかなり微妙でした。
下の比較動画の通り1152分割でローカルディミングに対応した「Xiaomi G Pro 27i」の良さは一目瞭然です。
続いて96分割FALDのSONY INZONE M9と比較してみました。
分割数に比例して1152分割FALDの「Xiaomi G Pro 27i」のほうがハローの影響が小さいのが一目で分かります。
ハローを確認しやすいように斜めから撮影しているので、一般的な実用シーンである正面から見た時よりもハローの効果が強調されているのですが、やはりピクセルレベルで調光が可能な有機ELと比べると、1152分割でも輝点に対する光漏れはあります。
ローカルディミング、液晶バックライトの部分駆動は、明部暗部の境界を超えて明るく/暗くなったり、マウスカーソルのような小さい輝点に反応したりして、デスクトップ作業のように明暗の領域が綺麗に分かれるシーンでは違和感を覚えることがあります。
「Xiaomi G Pro 27i」ではローカルディミングは2次元型で1152分割なのでバックライト自体の解像度も高そうに思えますが、縦横で言うと分割数は44×26程度しかありません。
PS5のメニューはグレー寄りの背景カラーに白色文字なので、フルアレイ型ローカルディミングではバックライト浮き、バックライト更新のチラつきが気になりやすいシーンです。
ただ「Xiaomi G Pro 27i」についてはバックライトのチラつきやハローよりも先に、後述するHDR表示における薄暗さのほうが気になるというか、薄暗くてそもそも視認性が微妙という問題があります。
実際のゲームだと、FINAL FANTASY VII REMAKEの神羅本社ビル潜入直前のように暗くて細かい輝点のあるシーンでバックライトのチラつきが強く、個人的にはかなり気になりました。
有機ELモニタのHDR輝度を下げる形で明るさを揃えて撮影し比較していますが、「Xiaomi G Pro 27i」では輝点に対するハローやバックライト更新のチラつきで、画面を動かした時にノイズ感があるのが分かると思います。
低解像度で見るとH.264エンコードのブロックノイズが乗るのでフルHDで確認してください。
「Xiaomi G Pro 27i」より分割数が少なくても同じシーンでバックライトのチラつき感が気にならないFALD対応液晶モニタもあるので(代わりにコントラストやHDR輝度とトレードオフになっていますが)、バックライト制御の上手さ(最適化)の問題だと思います。
ともあれ、バックライトをどこまで上手く制御できるかはFALD型液晶モニタの弱点というか課題の1つで、それが浮き彫りになる感じの現象です。
HDR表示における輝度性能(EOTF)や色性能について
「Xiaomi G Pro 27i」のHDR表示における輝度性能(EOTF)や色性能についてもう少しだけ深堀りしていきます。カラーキャリブレータとしてX-Rite i1 Basic Pro 3やCalibrite Display Plus HLを使い分けています。
一桁cd/m^2以下の低輝度の検出が安定しているので輝度の絶対値については比色計のCalibrite Display Plus HLの測定データを使用しています。彩度マップやRGBバランスなどある程度明るく、色精度が重要な項目はスペクトロメーターのX-Rite i1 Basic Pro 3で測定しています。
ソフトウェアはdogegenというWindows上でRGB 10bitのHDRカラーをそのまま表示できるテストパターンジェネレーターを使用しています。
この章の測定ではパネルタイプに応じて理想的な性能を確認できるように、特別に設定について補足がない場合、液晶パネルの場合は50%部分/背景カラー20%グレー、有機ELパネルの場合は10%部分/背景カラー0%ブラックとしています。
まずは輝度性能について、HDR10など一般的なHDRコンテンツで採用され、PQ EOTFとも呼ばれるHDRガンマ曲線(SMPTE ST 2084)に対して、実際のディスプレイ輝度を測定しました。
「Xiaomi G Pro 27i」はローカルディミング設定 ”高”において、最大で1300cd/m^2超の高輝度を発揮します。
最大輝度に達するまではリファレンスカーブをやや下回るものの、似たような弧を描いて増加していきます。モニタの最大輝度ではリファレンスと一致して、輝度が飽和すると、その後のホワイトレベルではクリップされるというシンプルな挙動です。
ローカルディミング設定の”中”や”低”についてもEOTFは上下にオフセットするだけです。”低”については前節で見た通り、バックライトの追従に違いがありますが、”中”と”高”はシンプルに輝度の高低の違いと考えていいと思います。
ローカルディミング設定の違いについてはそんな感じなので、以下、”高”設定の挙動に的を絞って詳しく見ていきます。
RGBレベルに対するPQカーブの絶対値・Logスケールのグラフでは分かり難いのですが、「Xiaomi G Pro 27i」は0~400cd/m^2までのSDR輝度域、HDR映像においてもベース輝度となる範囲において実際の輝度が大分低くなっています。
PQ EOTFとも呼ばれるHDRガンマ曲線(SMPTE ST 2084)で指定されるリファレンス輝度を横軸にして、0~400cd/m^2までのリファレンス輝度と実際の輝度をグラフにすると分かり易いと思います。
本来なら120cd/m^2程度の明るさが出るべきところで「Xiaomi G Pro 27i」は70~80cd/m^2程度の輝度しか出してくれません。HDRコンテンツはPQ EOTFを輝度の基準として作成されるので、「Xiaomi G Pro 27i」ではあらゆるHDRコンテンツがメーカー想定よりも暗く表示されてしまいます。
0~10cd/m^2までの黒色に近い範囲においても、階調表現自体は維持されていますが、やはり本来の明るさよりも実際の輝度は低くなっています。
またウィンドウサイズと背景輝度の組み合わせ、50%/20%と10%/0%の例を見ての通り、ローカルディミングのバックライト制御も影響するため、PS5のシステムメニューのような暗めの映像はより暗くなります。
「Xiaomi G Pro 27i」のHDR表示がどれくらい暗いのか、SDR用モニタと最大輝度が大して変わらないVESA DisplayHDR 400の液晶モニタと比べてみました。両者の輝度特性はAPL別で次のようになっています。
比較対象のVESA DisplayHDR 400対応液晶モニタは300cd/m^2までのSDR輝度域において若干リファレンスを上回る程度であるのに対して、すでに説明した通り、「Xiaomi G Pro 27i」は10%以上のAPLでもHDRのリファレンス輝度を大幅に下回り、またFALDバックライト制御の影響もあって、低APLほど輝度低下は大きくなります。
「Xiaomi G Pro 27i」のHDR表示特性はPS5のシステムメニューだけでなく、実際のゲームシーン、低輝度なシーンにおいて本来よりもかなり薄暗くなり、視認性も悪いです。
HDR映像であっても高輝度成分を多分には含まない、200~300cd/m^2程度までの一般的な明るさのシーンであれば、「Xiaomi G Pro 27i」のほうがVESA DisplayHDR 400の液晶モニタより大分暗くなります。体感としては低彩度にも感じるかもしれません。
価格は大分違いますが、2024年発売のSamsung製QD-OLEDパネルを採用するモニタ製品とも比べてみました。
2024年発売のSamsung製QD-OLEDパネル採用モニタは実質的に400cd/m^2までの階調しか表現できないので(Peak1000モードは暗くなり過ぎて使い物にならない、当サイトとしては非推奨)、800~1000cd/m^2を超えるような高輝度成分を含む映像であれば「Xiaomi G Pro 27i」のほうが高輝度を発揮できます。
下の写真や動画においてQD-OLEDでは高輝度部分が明るさ若干低めの白色で広く塗りつぶすようになっているのは内部処理の段階で400cd/m^2以上の高輝度データはクリップされるためです。
1000cd/m^2以上も表示できる「Xiaomi G Pro 27i」は高輝度の階調も綺麗に再現されます。この点は同製品の魅力です。
ただベース輝度部分が暗いのはそのままなので、やはり薄暗い、もじくは低彩度な感じはあります。
ゾーン数が96分割と少ないですが同じくFALD対応液晶モニタのSONY INZONE M9と比較すると、こちらは高APLでも輝度低下がないので、シンプルにベース輝度はSONY INZONE M9のほうが明るいというか、Xiaomi G Pro 27iは薄暗く、SONY INZONE M9が表現できる800cd/m^2を超える超高輝度の階調表現はXiaomi G Pro 27iの方が良いという分かり易い結果です。
SDR色精度の章でも触れたようにメタメリック障害があるので量子ドット技術を採用する「Xiaomi G Pro 27i」の色温度については参考程度ではあるものの、i1Pro3で測定した色温度は6100~6200K前後、xy色度は(0.3199, 0.3176)でした。
HDR規格標準のD65からはズレも大きく、赤色成分も強いので、D65や日本人に馴染みのあるニュートラルと呼ばれる7000~7500Kくらいホワイトポイントに慣れていると、赤みやマゼンタ色がかった白色に見えると思います。筆者の体感も測定値と一致して赤みやマゼンタ色がかった白色に見えました。
見続けていれば目はそのホワイトポイントで順応しますが、SDRとHDRを切り替えて使用する場合はSDR側の色温度を7000K程度の標準ではなく、カスタム設定でHDRのホワイトポイントに近いものに揃えないと、切り替えるたびに違和感を覚えることになります。
またスマホ等をはじめとして、D65や日本人好みの7000~7500Kのホワイトに調整されたものは周囲にありふれているので、HDR表示においてホワイトポイントを変更できない「Xiaomi G Pro 27i」はメーカー校正でD65として違和感のない色味に合わせてもらいたかったところです。
完璧を求めるわけではありませんが、目視でも明らかに赤色に寄っていたので、もう少し違和感のない色味に詰められたのでは、というのが率直な感想です。
RGBバランス(D65基準)は赤色が特に強く、青と緑にも強弱があるものの、各色は概ね平行に推移する形で安定しているので、グラデーションにバンディングや色付きはありません。
続いてHDR表示における色性能(色域、色精度)をチェックするため彩度マップ、CIE Diagramを作成しました。【HDR規格に良く校正された例】
彩度の強調や不足の参考になるようにSaturation Shifts/Luminanceのグラフも作成しています。なお、Saturation Shiftsはuv色空間(CIE1976)を参考に重み付けをしています。Saturation Luminanceは白色輝度がリファレンスに一致するものとして正規化しています。
「Xiaomi G Pro 27i」はホワイトポイントがD65ではなく6000K程度の暖色方向、赤みやマゼンタ色がかる方に寄っているので全体的にマゼンタ色方向へシフトしていますが、彩度の飽和は均等で変にバラつかず上手く表現できています。
Saturation Shifts/Luminanceのバランス的に彩度が50%~80%の青色だけは若干、暗いか低彩度に見えるかもしれませんが、色味が変に破綻するほどではありません。
先に説明したEOTFの通り、本来よりも暗くなることを除けば、Rec.2020やDCI-P3(D65)を想定して作成されてHDRコンテンツも、彩度・色相については概ねメーカーの想定通りの表示になると思います。
彩度マップはホワイトポイントに合わせてシフトしているだけで、推移自体は均等ですし、暗いと指摘したEOTFもリファレンスカーブに沿って下回りに弧を描くだけで変化そのものは乱れもなく綺麗な、素直な挙動です。SDR色校正の検証同様にHDRでも3D LUTで補正して意図した表示を再現することは容易だと思います。
ちなみにローカルディミング設定を”中”や”低”にした時の彩度マップやSaturation Shifts/Luminanceは次のようになります。
基本的に”高”設定と同じですが、”中”や”低”では白色基準で赤、青、マゼンタの輝度低下が大きくなるようなので、単純にそれらの色味が暗く見えるか、低彩度に感じると思います。
Xiaomi G Pro 27iのレビューまとめ
最後に「Xiaomi G Pro 27i」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 画面サイズ27インチでWQHDゲーミングモニタとしてはちょうどいいサイズ
- 発色や視野角に優れたIPS液晶パネル
- 量子ドット技術により実測で100% DCI-P3、95% Adobe RGBの広色域
- 液晶パネルは反射防止のアンチグレア
- ビデオ入力はDisplayPort1.4×2、HDMI2.0×2の計4系統
- DP1.4はWQHD/180Hz VRR/HDR 10bit RGBに対応
- HDMI2.0はWQHD/144Hz VRRに対応 (HDRは10bit YUV422でフルRGB非対応)
- 可変リフレッシュレート同期(VRR)機能に対応、PS5でも利用可能
- HDR表示において、実測で最大1300cd/m^2超の高輝度性能
- 直下型Mini LEDバックライトで1152分割のローカルディミングに対応
- モニタ本体重量4.9kgかつVESAマウント対応でモニターアームを使用可能
- 税込み4.9万円と安価 (さらに予約時は2000円オフだった)
- VESAマウントは一般的な100mmではなく75mm
- PWM式バックライト調光なので非フリッカーフリー
- アウトボックスでの色精度は色域エミュレート含め低い
色精度が必要な用途にはキャリブレーションが必要(校正すれば綺麗に一致) - SDR表示とHDR表示で個別にローカルディミング設定を選べない
- HDR表示においてリファレンス(SMPTE ST 2084)より輝度が低い
- SDRのビデオ入力からHDRのビデオ入力に切り替えた時に色温度バグ
- HDMIビデオ入力は4Kエミュレートに非対応
「Xiaomi G Pro 27i」はWQHD解像度かつネイティブ180Hzの高速リフレッシュレートという2024年現在、RTX 4070やRX 7800 XTなどを搭載したアッパーミドルクラスのゲーミングPCに最適なスペックのゲーミングモニタです。
さらに量子ドットIPSによる広色域や1000ニットを超える超高輝度なHDRにも対応するので、PCやGPUのスペックはそのままに1ランク上のゲーム体験を実現できます。
HDR表示については、実測でも1000cd/m^2を余裕で上回る超高輝度と1152分割のバックライト部分駆動によって、黒が引き締まって立体感が出たり、太陽やフラッシュ・爆炎の眩しさが大迫力で感じられたりと、ゲーム体験のリアリティを向上させる意味で高い効果を感じられました。
数百単位で分割数の多いFALDに対応した液晶テレビはサイズが55インチ以上になってしまいますが、そういった大型テレビを置けない私室で、HDR対応ゲームをプレイ、映画を視聴したい人には魅力的な製品です。
ただ、「Xiaomi G Pro 27i」がPCモニタやHDR表示に詳しくない初心者向けかというと正直なところ微妙です。
この記事を読んで解説してるネガティブポイントを正しく理解でき、その上で上手く運用できる人にとっては”価格破壊的な超コスパ製品”であることは間違いありません。
ただし、そうでなければ”WQHD/180Hzで量子ドットIPSパネル、メーカーの色校正は微妙、OSDもやや使い難いけど4万円台後半で安い”という、安かろう悪かろうではないものの、そこそこコスパがいいかなくらいの製品に成り下がります。
また、OSD周りでいくつかバグもあり、USBポートがないのでファームウェアアップデートにもおそらく期待できませんし、人によっては安物買いの…となる可能性もあるかもです。複数ビデオ入力を使い分ける、OSD設定を決め打ちせず細かく変更する、という人は特に注意が必要です。
そういう使い方で尚且つ予算にも制限があるなら、量子ドットは諦めてKSFp型の広色域IPS液晶で、OSD周りがしっかりした大手メーカー製を選ぶ方が無難です。
『そのままではSDR色精度が悪い(個体差がある?)』、『フリッカーが強め』、『HDR表示でホワイトポイントが赤方向にズレている』、『HDR表示で輝度がリファレンスに対して低い』、『ローカルディミング設定がSDRとHDRで引き継がれる』など落とし穴的な細かいポイントがいくつかあります。
カラーキャリブレータを使って自分で校正できる人、レビューで挙げた細かい欠点が気にならない人にとっては確かにHDRスペックからするとコスパは高いですし、分かった上でというなら購入するのは止めませんが、単純に”スペック的にコスパが高い”という評判に惑わされて購入するのはオススメしません。
HDR表示のホワイトポイントのズレ、リファレンスに対する輝度の低さは3D LUTで直せる、というのも間違いではありませんが、”3D LUTで直せるのはPCで表示するHDRコンテンツに限定される”という点にも注意が必要です。
PC向けはPCゲームだけでなくYouTubeやAmazonPrimeビデオなどストリーミングHDR映像もあるとはいえ、やはりHDRコンテンツというと、PlayStation 5やXbox Series X|Sの最新ゲーム機のCSゲームや、4K Ultra HDブルーレイの映画やアニメは切り離せません。
そういったよりメジャーなHDRコンテンツに対して、ホワイトポイントや輝度や彩度を各ユーザーの好みに調整できないところは、多くのHDR対応PCモニタの欠点です。
とりわけ、「Xiaomi G Pro 27i」は彩度や輝度を盛った派手な絵作りというわけでもなく、リファレンス準拠を目指して素のHDR校正が微妙という仕上がりなので、HDR入門を検討している初心者は素直に、HDR対応テレビを購入するか、数は限られますがHDRでも画質調整が可能なPCモニタを選ぶのをオススメします。
付け加えるなら、予算の問題もあると思いますが、HDR入門でPCモニタなら有機ELモニタにしておいたほうが初心者には満足度が高いと思う、というのが筆者の正直な感想です。
以上、「Xiaomi G Pro 27i」のレビューでした。
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4万円台で1152分割FALDや最大輝度1000nits超のHDR表示に対応するWQHD/180Hzの量子ドットIPS液晶モニタ「Xiaomi G Pro 27i Mini LED ゲーミングモニター」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) August 2, 2024
本当に価格破壊な超コスパなのか、応答速度・遅延やHDR表示性能、ローカルディミングの見え方を徹底検証https://t.co/DLTavdcudc pic.twitter.com/KODW5APkx2
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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