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3月3日に発売されたAMD Ryzen 7 CPUについていくつかのレビューで”Ryzen 7はゲーム性能が高くない”、”Ryzen 7はゲームに不向き”といった趣旨の結論が目立ちました。もちろんそれを理由付ける検証結果のベンチマークも記事内には盛り込まれていたものの、その内容には疑問が残ったので実際にAMD Ryzen 7 1700とその競合とAMD公式が位置付けているIntel Core i7 7700Kを使用してこれらのゲーム性能を比較してみました。
なおCPU別のゲーム性能に関する検証は手探りなので不定期連載形式にする予定です。i3 7350Kやi5 7600Kなども参戦予定。
検証の指針と検証機材について
『AMD Ryzen 7は本当にゲームに不向きなのか?』という疑問を確認するための検証の指針として、意図的にCPUボトルネックを発生させてフレームレートの上限値(もしくは下限値)をゲーム性能と評価するのではなく、当記事では実用に基づき60FPSターゲット下においてAMD Ryzen 7 1700とIntel Core i7 7700Kにどの程度の差があるのかをIntel Core i7 7700Kを基準として比較検証しました。具体的な手順を述べると、各種ゲームにおいてまず基準となるIntel Core i7 7700K検証機で、平均60FPS前後となり実際にユーザーが使用するであろうグラフィック設定でベンチマーク測定を行います。その後、各ゲームで同上のグラフィック設定を用いてAMD Ryzen 7 1700検証機でベンチマーク測定を行います。あとはIntel Core i7 7700Kのベンチマークスコアを基準として、AMD Ryzen 7 1700のゲーム性能はどの程度の差があるのかをチェックしました。
AMD Ryzen 7 1700とIntel Core i7 7700Kのゲーム性能比較には次の検証機材を使用しました。グラフィックボードにはGTX 1080を使用しています。
テストベンチ機の構成 | ||
AMD 検証機材 |
Intel 検証機材 |
|
OS | Windows10 64bit Home | |
CPU |
AMD Ryzen 7 1700 Core3.8GHz, 1.300V (レビュー) |
Intel Core i7 7700K Core/Cache:5.0/4.8GHz, 1.300V 殻割り&クマメタル化(レビュー) |
M/B |
ASUS ROG CROSSHAIR VI HERO (レビュー) |
ASRock Z270 SuperCarrier (レビュー)(BIOS:1, 2) |
メインメモリ | G.Skill TridentZ DDR4 8GB*4=32GB |
Corsair Dominator Platinum Special Edition DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) |
グラフィックボード | EVGA GTX 1080 SC2 iCX Gaming (レビュー) |
|
システムストレージ |
Samsung 950 PRO 512GB NVMe接続M.2 SSD (レビュー) |
Crucial MX300 SATA M.2 SSD 1TBCT1050MX300SSD4 |
電源ユニット | Corsair RM650i (レビュー) |
|
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
60FPSターゲット下におけるRyzen 7 1700とCore i7 7700Kの平均FPS比較
上で説明した検証の指針に基づいて実用に則した60FPSターゲット下におけるRyzen 7 1700とCore i7 7700Kの平均FPS比較を行いました。ベンチマーク測定を行ったタイトルは、Assassin's Creed Syndicate(フルHD、最高設定、TXAA2xFXAA)、Battlefield 1(WQHD、最高設定)、The Division(WQHD、グラフィック設定)、DarkSouls3(WQHD、最高設定)、Ghost Recon Wildlands(フルHD、グラフィック設定)、Mirrors Edge Catalyst(WQHD、ハイパー設定)、Rise of the Tomb Raider(WQHD、最高設定、FXAA、DX12)、Titanfall2(WQHD、グラフィック設定)、Watch_Dogs2(フルHD、最高設定プリセット)、The Witcher3(WQHD、最高設定)以上10タイトルです。いずれも垂直同期をOFFにして測定を行っています。
ベンチマーク例は次のようになっています。
平均FPS比較の検証結果は次のようになりました。
i7 7700Kのほうが平均FPSは基本的に高いですが、7700Kのほうが性能が高いゲームのみを抜粋した性能差は2%程度しかありませんでした。i7 7700KとRyzen 7 1700のゲーム性能はどちらが高いのか?と聞かれればi7 7700Kであるというのが答えになるのは間違いありません。しかしながらRyzen 7 1700のゲーム性能が実用的な60FPSターゲットの場面で問題になるかというと平均FPS比較を見る限りはならないはずです。
60FPSターゲット下におけるRyzen 7 1700とCore i7 7700Kのフレームタイム比較
続いて60FPSターゲット下におけるRyzen 7 1700とCore i7 7700Kのフレームタイム(1フレームを描画するのにかかる時間)を比較しました。FPSは1秒間のフレーム数、フレームタイムは1フレームを描画する時間なのでFPSとフレームタイムの平均的な関係は次のようになっています。この章では縦軸をフレームタイムで表記しているので適宜頭の中で変換してください。フレームタイムとFPSは逆数の関係なのでフレームタイムは小さいほど高性能です。
フレームタイムとFPSの関係 | |
FPS (Frame per second) |
Frametime (1000/FPS) |
120 | 8.3ms |
60 | 16.7ms |
50 | 20ms |
40 | 25ms |
33 | 30ms |
20 | 50ms |
各ゲームのベンチマーク中のフレームタイムの推移が次のようになっています。グラフの見方は縦軸に低い(フレームタイムが小さい)ほうがFPSが高く高性能、また縦方向の幅が狭いほうが描画ペースが安定しています。
平均FPS比較通りにi7 7700Kのほうが横軸寄りにグラフが位置しておりFPSが高いことが確認できます。またグラフの幅に着目してもi7 7700KのほうがRyzen 7 1700よりも狭いので描画ペースが安定していることがわかります。またRyzen 7 1700のほうがスタッターの原因になりうるハズレ値が多い傾向も確認できます。
Ryzen 7 1700とi7 7700Kのゲーム性能比較まとめ
今回の検証結果のまとめを箇条書きで。- 60FPSターゲットのゲーム性能においてRyzen 7 1700はCore i7 7700K比で2.0%低い
- フレームタイムのグラフを見るとi7 7700Kのほうが幅が狭く安定している
- Ryzen 7 1700のほうがスタッタ―の原因となりうるハズレ値のフレームタイムが目立つ
「Ryzen 7 1700はi7 7700Kよりもゲーム性能が低いのか?」と聞かれれば、答えはYesであることは間違いではありませんが「その差は有意なのか?」と聞かれば大半のPCゲーマーが属するであろう60FPSターゲットな環境下であれば、上のグラフやテーブルの数字を見てもらえばわかるように無視しても構わないレベルだというのが管理人の判断です。
Ryzen 7とi7 7700KなどIntel CPUのゲーム性能比較において現状で明確にIntel CPUを選択すべき条件があるとすれば、その他の各種CPUボトルネック検証で結果が出ているように60FPSオーバーのハイフレームレート環境で使用する場合です。正直、ハイフレームレートのCPUボトルネックだけを見てRyzen 7のゲーム性能を測るのは「日本は雨が降るから長靴が最強の靴だよね」と言うような違和感を感じざるを得ません。
またAMD Ryzen CPU自体が出たばかりであって、CPUに対するWindows OSやゲームなどの最適化やデバッグが完全ではないので現状の差も今後埋まる可能性は十分に存在すると思います。
以上を踏まえて、純粋にゲーム特化CPUをということなら現状でコアクロック5GHz越えでシングルスレッド性能に優れるi7 7700Kを選択して間違いないと思いますが、動画編集など多コア多スレッドの恩恵も受けたいと考える場合に60FPSターゲットの一般的なPCゲーム環境でRyzen 7 1700のゲーム性能がネックになることはないと思います。
AMD Ryzen 7のSMTのON/OFF比較やIntel Core i3やi5のCPU性能比較も後日追加で検証予定です。
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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今後はIntelだけでなくAMDのプラットフォームを基準に開発するところがあっても
可笑しくはなさそうな結果だな