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GIGABYTEからリリースされているAMD Ryzen CPU対応X370チップセットを搭載する高性能AM4マザーボードの最上位モデル「GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7」をレビューします。基本的な機能はすでにレビュー済みのGA-AX370-Gaming 5と同じですが、GA-AX370-Gaming K7にはベースクロックの高精度調整を可能にする「Turbo B-Clock」というICが搭載されており高度なオーバークロックにも対応するマザーボードです。
製品公式ページ:http://www.gigabyte.jp/Motherboard/GA-AX370-Gaming-K7-rev-10#kf
マニュアル:http://download.gigabyte.asia/FileList/Manual/mb_manual_ga-ax370-gaming-k7_j.pdf
OCガイド:https://www.joomag.com/Frontend/WebService/downloadPDF.php?UID=0517370001491902144
「GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7」は国内でも販売されていますが、北米Aamazon(通称、米尼)から国内直送で個人輸入可能です。管理人は国内発売前に米尼から購入しました。
<できる!個人輸入 ② アメリカ Amazon(通称:米尼)の使い方>
【注意事項】
検証中のトラブルなども記事内で記載していますが、Ryzen 7自体が発売されたばかりなので、OSの問題なのか、マザボBIOSの問題なのか原因の切り分けが現状でできないものも少なくありません。今後ドライバやBIOSなどソフトウェアの更新でパフォーマンスや安定性が向上することは期待できると思うので、その辺りも念頭に置いて読んでもらえるとありがたいです。
同検証は17年6月上旬に行っておりGIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7のBIOSはF4e(ベータBIOS)を使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
【17年6月15日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:F4eで検証
GIGABYTE製のマザーボードについて
GIGABYTE製マザーボードについてはGIGABYTEの公式サポートページにおいてアカウント登録が必要ですが、意外なことに日本語による問い合わせに対応しています。問い合わせページのインターフェースの言語は英語なので英語で行けるところは英語で入力するほうがいいと思いますが、長文を書く必要がある問い合わせの本文では日本語で書いてもしっかり対応してもらえました。サポートページ:http://esupport.gigabyte.com/Login/Index?ReturnUrl=%2f
国内のマザーボードベンダー大手を見ると、ASUSとMSIが代理店に丸投げで直通の有人サポートなしに対して、GIGABYTEは日本語対応可能な有人サポートありというのはかなり好印象です。メーカー直通の日本語対応有人サポートが欲しい人はGIGABYTE製マザーボードの購入を検討する価値はあると思います。
GIGABYTEマザーボードでは多数の独自機能アプリが用意されており、統合ランチャーである「APP Center」をスタート地点に利用できます。なお独自アプリの一部は「APP Center」をインストールしてからでないとインストールできないので注意してください。
「RGB Fusion」やファンコン統合インフォソフト「System Information Viewer」などユーザーにとって魅力的なアプリが多岐にわたって展開されていますが、各アプリの機能や使い方の概要は下の公式紹介ページにて日本語でわかりやすく解説されているので、GIGABYTE独自アプリを使いたい人は参考にしてください。
GIGABYTE独自アプリ解説:http://www.gigabyte.jp/MicroSite/369/images/app-center.html
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7 レビュー目次
1.GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7の外観・付属品
2.GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7の基板上コンポーネント詳細
3.GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7へのパーツ組み込み(ギャラリー)
4.GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7の検証機材のセットアップ
5.GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7のBIOSについて
6.多機能かつ使いやすいファンコン機能「スマートFan 5」について
7.LEDイルミ操作機能「GIGABYTE RGB Fusion」について
8.GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7のOC設定について
9.GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7の動作検証・OC耐性
10.GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7のレビューまとめ
Aorus GA-AX370-Gaming K7の外観・付属品
まず最初にGIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7の外観と付属品をチェックしていきます。パッケージを開くと上段にはマザーボード本体が静電防止ビニールに入った状態で収められていました。マザーボードを取り出すと2重底になっており下段には各種付属品が入っています。
付属品一覧は次のようになっています。
マニュアルやドライバCDなど必要なものが一通り揃っています。ドライバ類についてはそろそろUSBメモリに移行して欲しいところ。
管理人は米尼から個人輸入したので付属の冊子マニュアルの言語は当然英語ですが、GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7は詳細な日本語マニュアルがオンライン上で公開されています。
マニュアル:http://download.gigabyte.asia/FileList/Manual/mb_manual_ga-ax370-gaming-k7_j.pdf
組み立てに関連する付属品としては、SATAケーブル4本、リアI/Oパネル、LEDテープ接続ケーブル、SLI HBブリッジ、サーモセンサー2本、G-Connectorとなっています。GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7は外部温度センサーに対応しているのでそれに接続できるサーモセンサーも付属しているところが特徴的です。
リアI/Oシールドの表面は光沢のあるガンメタリックになっています。ブランドネーム「AORUS」ロゴも入っておりシンプルにカッコいいリアI/Oシールドです。裏面のマザーボードと接する部分はスポンジが入っていました。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7は汎用LEDヘッダーとして、マザーボードメーカー各社が採用しているRGB 4PINに加えて、白色LEDを搭載するRGBWに対応した5PIN LEDヘッダーが実装されており、LEDケーブルとしては5PIN用のもののみ付属しました。ちなみにWのピンは一番端なのでRGB 4PINケーブルとしても併用はできるようです。
SLIブリッジについてはGTX 10XXシリーズの広帯域SLI接続に対応したSLI HBブリッジが200シリーズマザーボードからは付属するようになっており、GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7には1スロットスペース型のSLI HBブリッジが入っていました。SLIコネクタがプラスチックではなく金属シールドタイプなのがマザボ付属品としては非常に好印象です。
GIGABYTEの一部のマザーボードではフロントパネルコネクタのマザーボードへの装着を簡単にする独自パーツ「G-Connector」が付属します。
今回は検証用スイッチ&LEDで試してみましたが次のように「G-Connector」へ各種コネクタを装着します。
あとはこのまま「G-Connector」をマザーボードのフロントパネルヘッダーに挿せばOKという非常に便利な独自機能です。
マザーボード全体像は次のようになっています。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7はATXフォームファクタのマザーボードです。以前レビューしたGA-AX370-Gaming 5はブラックメインでクーラーやI/OカバーがホワイトというカラーリングでしたがGIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7は黒一色になっています。
マザーボード右下のチップセット用ヒートシンクについては同製品のブランドネーム「AORUS」と「Speed(素早さ)」「Power(力強さ)」「Accuracy(精密さ)」を表現したという”鷲(イーグル)”をモチーフにしたロゴが刻印されており、エッジの効いたカットにヘアラインの入ったアルミヒートシンクは高級感があります。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7ではVRM電源が10フェーズでした。8コア16スレッドのRyzen 7のオーバークロックにも耐えるよう各社がVRM電源フェーズ数を盛る中で比較的少ない数となっておりOC検証の結果が気になるところです。リアI/Oカバーはブラック一色にブランドネームが刻印されており、VRM電源部分にはチップセットヒートシンク同様ににエッジの効いたカットでヘアライン表面加工がされたアルミヒートシンクが装着されています。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7はVRM電源フェーズ数こそ控えめなものの、IR デジタル・コントローラーおよびPowIRstage ICによってVRM電源間の負荷が均一に分散するよう調停しており、一部のVRM電源へ集中した過負荷がかかりオーバーヒートが発生することを防ぐことで安定した電力供給を可能にしています。また超低ESR特性で長寿命のDurable Black固体コンデンサが採用されています。
AMD Ryzenはメインストリーム向け最上位の8コア16スレッド「Ryzen 7」からエントリー向けの「Ryzen 3」まで共通のマザーボードとなるので、X370チップセット搭載の上位マザーボードではRyzne 7のOCにも耐えるようにCPU補助電源はEPS 8PIN+4PINを要求するものも少なくありませんが、GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7で要求されるのはEPSコネクタは8PINが1つだけなので今後発売されるRyzen 5などにも最適な仕様です。
リアI/Oに設置されたUSB端子のうちType-Aの3基とType-Cの1基で計4基の赤色USB端子は最新のUSB3.1規格に対応しています。Type-Aが2つのほうはX370チップセット、Type-A&CのほうはASMedia製のコントローラーになっています。そのほかのUSB端子についてはUSB3.0端子が6基設置されています。個人的に残念なポイントとしてはUSB3.0/3.1は無線マウスと電波干渉を起こすことがあるので少し離れた場所にUSB2.0を設置して欲しかったです。ゲーマーには嬉しいPS/2端子も搭載されています。
ビデオ出力にはHDMIのみ実装されていますが4K・60FPSに非対応で4K・30FPSが上限となるver1.4対応でした。有線LANには低CPU負荷、高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーに加えて、Windows上の専用アプリからアクセス優先度の最適化が可能でオンライン対戦PCゲームのパフォーマンス向上が期待できる「Killer™ E2500」LANコントローラ採用の有線LANも設置されています。
重量計を使用して重さを測定してみたところ、GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7は993gとなっており、同じくATXのAM4マザーボードであるMSI X370 GAMING CARBONは896g、ASUS ROG CROSSHAIR VI HEROが941gで平均的なATXマザーボードの重量でした。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7の基板上コンポーネント詳細
続いて「GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。まず最初にGIGABYTEは「GA-AX370-Gaming K7」を「GA-AX370-Gaming 5」の1つ上のモデルとしてリリースしていますが、外観のカラーリング以外で5とK7の違いは、K7にのみベースクロックを変更する「Turbo B-Clock」というチューニングICが実装されているところです。BCLKを使用するOCはかなり難易度が高いのでOCer向けの機能ですが、100MHz固定の場合でもBCLKの安定性が増すので一般的なOCでも恩恵の大きいモジュールです。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7のマザーボードの各種コンポーネントをチェックしていて、各コンポーネントの基板上ヒントのフォントサイズが大きいところが非常に好印象で感動しました。こういう細部のこだわりがユーザビリティーを向上させるという良い例だと思います。
システムメモリ用のDDR4メモリスロットはCPUソケット右側に4基のスロットが設置されています。メモリスロット間にはLEDイルミネーションも実装されています。
固定時のツメは両側ラッチとなっています。片側ラッチよりも固定が少し面倒ですが、しっかりとDDR4メモリを固定できるので信頼性は高い構造です。
DDR4メモリスロットには外部ノイズEMIから保護して安定したメモリOC環境を実現し、またメモリモジュールの挿抜によるPCB基板の歪みや破損を防止する金属シールド「Ultra Durable Memory Armor」が実装されています。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7ではマザーボード右端から順にDIMM_1/3/2/4とメモリスロットが配置されており、添え字の順番通りにメモリを設置すればOKです。Ryzen対応のAM4マザーボードでは信号反射などの影響から添え字の数字を無視した設置が推奨されていることが多いですが、GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7ではこの辺の表記もしっかりと調整してあるのが好印象です。
メモリスロットのすぐ右にはAccent LEDというアクリルバーが設置されています。アクリルバーには模様が入っていますが、このアクリルバーは着脱が可能なので好きなイラストやロゴの入ったアクリルバーに交換することができます。マザーボード備え付けのその他のLEDイルミネーション同様にGIGABYTE RGB Fusiionから発光カラーや発光パターンの設定が可能です。
グラフィックボードなどを設置するPCI-Eスロットは上から[x1、x16、N/A、x1、x16、x1、x16]サイズのスロットが設置されています。上段のプライマリグラフィックボードを2段目のスロットに配置することで、大型ハイエンド空冷CPUクーラーとグラフィックボードの干渉を回避しています。
グラフィックボード向けのx16スロットは2スロット、5スロットに配置されており、現在主流な2スロット占有グラフィックボードを使用しても下位グラフィックボードが上位グラフィックボードのエアフローを妨げないよう配慮されています。付属の1スロットスペース型SLI HBブリッジを使用すれば、NVIDIAの最新GPUであるGTX 1080 Ti、GTX 1080、GTX 1070を使用したマルチGPU SLI環境を構築可能です。
またGIGABYTEからはAORUSブランドのSLI HBブリッジもリリースされているので、個別販売されている「AORUS SLI HB Bridge RGB」を使用するのもおすすめです。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7にも最近のトレンドとして2, 5, 7段目のx16スロットにはPCI-Eスロット補強用メタルアーマー「Ultra Durable PCIe Armor」とPCI-Eスロット左右端の固定を補強するGIGABYTE特許取得済「Double Locking Bracket」による2重の保護で1Kgを超える重量級グラボの重さに耐えるように対策が施され垂直方向に3.2倍、水平方向に1.7倍と両方向の負荷に対する強度が大幅に向上しています。
SATAストレージ用の端子はマザーボード右下に8基搭載されています。SATA(0~7)はいずれもAMD X370チップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。すでにディスコンの気配すら漂うSATA-Expressにも対応していました。
高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットはチップセット下に1基のみ設置されています。NVMe(PCI-E3.0x4)とSATA接続の両方のM.2 SSDに対応しています。他社の3万円前後の高級AM4マザーボードではM.2スロットを2基以上設置しているモデルがあるのでM.2 SSDを多く使用したいユーザーには悩ましい仕様です。
また17年最新マザーボードでは実装の減りつつあるNVMe対応U.2端子もGIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7には実装されています。U.2端子にも外部ノイズEMIから保護する金属シールドで信号伝送が最適化されています。U.2端子とM.2スロットは排他利用です。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7に関して、PCI-Eスロットや各種ストレージ端子の排他利用についてまとめると次のようになっています。
- GPU用PCIスロット(PCI-E3.0)は[x16, N/A]or[x8, x8]帯域
- 最下段のPCI-Ex16スロット(PCI-E2.0)はPCI-Ex1スロット3種と排他利用
[N/A, N/A, N/A, x4] or [x1, x1, x1 x1] or [N/A, x1, x1, x2] - M.2スロットとU.2端子は排他利用
- SATA接続のM.2 SSDを使用する場合、SATA_3は排他利用
USB2.0の内部ヘッダーも2基ずつマザーボード下に設置されています。CorsairLinkやNZXT CAM対応製品など内部USB2.0を使用する機器も増えていますが、GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7であればそれらの機器も問題なく使用可能です。
ゲーミングマザーボードということでGIGABYTE独自の高音質オンボードサウンド機能「AMP-UP AUDIO」も採用されています。SN比120dBにいたる圧倒的なオーディオ再生能力を誇るALC1220というオーディオコーデックをフロント/リアのオーディオ出力用にデュアルで搭載しており、自動でヘッドホンのインピーダンスを検出して最適な出力を可能にする「Smart Headphone Amp」機能やSN比114dBのDSD128録音機能などが利用可能です。オーディオコンポーネントにはニチコン製音響用コンデンサなどが採用されています。
リアI/Oに設置されているUSB3.0ポートのうち左の黄色USB端子と2基の内部USB3.0ヘッダーは「USB DAC-UP 2」というUSB機器接続時に電圧の低下やノイズの無い電力を供給することが可能な専用電源回路付き可変電圧USBポートです。例えばUSB給電のUSB DACを接続した場合に高音質化が期待できたり、ケーブルの長いVR HMDを接続する時の信号損失を解消します。
マニュアルからの画像を使用しますが、冷却ファンや簡易水冷クーラーのポンプの接続用の端子はマザーボード上の各場所に計8か所設置されていました。これだけあれば360サイズなどの大型ラジエーターを複数基積んだハイエンド水冷構成を組んでもマザーボードのファン端子だけで余裕で運用可能です。加えて「PUMP」の添え字の付いたファン端子2基は最大24W(12V、2A)の出力にも対応しているので本格水冷向けのD5やDDCポンプの電源としても変換ケーブルを噛ませることで使用できます。
マザーボード右側のUSB3.0内部端子のすぐ上とフロントパネルヘッダーの左上には本格水冷PCユーザーには嬉しい外部温度センサーの接続端子が設置されています。GIGABYTEのファンコントロール機能は外部センサーをソースにした水温依存のファンコントロールが可能なので水冷ユーザーにお勧めです。
上記の外部温度センサー2基に加えてマザーボード上備え付けの温度センサー7基で計9基の温度センサーから自由にソース温度を選択してファンコントロールが可能です。
マザーボード基板右下にはPOSTエラーのチェックができるDebug LEDが、またマザーボード右上にはOCerのみならず一般自作erにとっても組み立て中の動作確認に便利なオンボードとスタートスイッチとリセットスイッチが実装されています。またCMOSクリアのハードウェアスイッチも設置されているのでOC設定をミスっても簡単に初期化が可能です。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7にはGIGABYTE特許取得済みの「デュアルBIOS」機能が採用されており、OC設定によってメインBIOS(M_BIOS)のデータが破損してもバックアップBIOS(B_BIOS)によってメインBIOSの復旧や重要データのバックアップが可能になります。BIOSの修復方法はこちらの記事で紹介しています。
マザーボード右下にはフロントパネルI/Oヘッダーがあります。同社独自パーツの「G-Connector」が付属するのであまり重要ではありませんが、フロントI/Oヘッダーは基板上に色分けされたプリントがあるので林立している各ヘッダーピンを視認しやすくピンアサインは基板上にヒントもプリントされているのでユーザービリティーに優れる設計です。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7へのパーツ組み込み
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7にDDR4メモリとCPUクーラーを設置してみました。内容的には写真のギャラリーだけになっています。DDR4メモリには「Corsair Dominator Platinum Special Edition」(レビュー記事)、CPUクーラーには「Corisair H110i」(レビュー記事)を使用しています。
Aorus GA-AX370-Gaming K7の検証機材セットアップ
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7を使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | AMD Ryzen 7 1800X (レビュー) |
CPUクーラー | Corsair H110i (レビュー) |
メインメモリ | Kingston HyperX Fury DDR4 HX424C15FB2K2/16 DDR4 8GB*2=16GB (レビュー予定) |
CPUベンチ用 ビデオカード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
CFD SATA SSD 120GB |
OS | Windows10 64bit Home |
電源ユニット | Corsair RM650i (レビュー) |
280サイズラジエーター採用で最高クラスの冷却性能を誇る簡易水冷CPUクーラー「Corsair H110i(型番:CW-9060026-WW)」はAMD Ryzen 7発売当初からAM4マウントに対応しており、同製品をCorsair社からRyzen CPUやAM4マザーボードの検証機材としてご提供いただいたので、同レビューでも検証機材として使用しています。個別レビュー記事も公開中です。
・Ryzen対応の最強簡易水冷「Corsair H110i」をレビュー
検証機材のCPUにはAM4マザーボードで使用可能なAMD Ryzen CPUの最上位、8コア16スレッドの「Ryzen 7 1800X」を使用しています。またCPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。熱伝導効率も高く、柔らかいグリスで塗布しやすいのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
以上で検証機材のセットアップが完了となります。
Aorus GA-AX370-Gaming K7のBIOSについて
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7を使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付がおかしいですが無視してください。また内容的に差異のないものは過去の同社製マザーボードのBIOSスクリーンショットを流用しています。)
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7のBIOSに最初にアクセスするとクラシックモードという従来通りの文字ベースBIOSメニューが表示されました。トップに表示されるシステムタブのシステム言語から日本語を選択可能です。
GIGABYTE製マザーボードのBIOSの翻訳は一部誤訳もあるものの比較的まともなので日本語UIとしては使いやすいのですが、フォントサイズの調整が微妙で見切れたりするところが玉に瑕です。トップメニューのタブは左右カーソルキーで簡単に移動できます。「alt」キーを押すことで右下にメニューとポップアップヒントが表示されています。
一応、流行に合わせてグラフィカルUIのイージーモードも用意されており、右下メニューや「F2」キーでイージーモードを表示できます。パッと見の見栄えは良いのですが詳細設定ができないのでクラシックモードの利用がおすすめです。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7のBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出はトップメニュータブ最右端の「保存して終了(save and exit)」から行えます。特定のブートデバイスを指定してBIOSから退出するBoot Override機能もあります。
今回の個体については初期のBIOSバージョンは「F3」だったので、6月12日現在公開されている最新ベータ版の「F4e」にアップデートしました。(ベータ版は不具合が発生する可能性があるので一般的にはアップデート非推奨です)
BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルをダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
http://www.gigabyte.jp/Motherboard/GA-AX370-Gaming-K7-rev-10#support-dl
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、「alt」キーでクラシックモード右下に表示される「Q-FLASH」を選択するか、「F8」キーのショートカットキーでQ-FLASHを起動します。
Update BIOSを選択し、接続したUSBメモリからアップデートファイルを選択します。
詳しくはBIOSのアップデートまでの手順を動画で撮影したので参考にしてください。
ブートとOSインストール周りについて紹介します。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7のブート回りは下画像のようにトップメニュータブの「BIOSの機能(BIOS)」の中で非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。OSのインストールも「起動オプション #1」に「UEFI 〇〇」というOSインストールメディアを設定して保存&退出でOKです。
GIGABYTEのBIOSではブートデバイスの指定が可能なので起動オプションで設定せずに、「保存して終了(save and exit)」のタブメニューから「UEFI 〇〇」というOSインストールメディアを選択してもOKです。
ちなみにWindows10の製品パッケージに付属するUSBメモリではUEFIで認識できないトラブルが発生することがあるようなのでそういうときはこちらの記事に従ってMS公式ツールを使用して適当なUSBメモリでOSインストールメディアを作成すると上手くいきます。
BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7のBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7に搭載される独自機能である「USB DAC-UP 2」という専用電源回路付き可変電圧USBポートについてBIOSから設定可能で電圧補償値を0.1~0.3Vに設定できます。
多機能かつ使いやすいファンコン機能「スマートFan 5」について
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7などGIGABYTE製マザーボードに採用されるファンコントロール機能「スマートFan 5」が外部温度センサー対応など多機能かつ、ユーザービリティーにも優れたUIでかなり使いやすいので詳しくチェックしていきます。ちなみに「スマートFan 5」はWindows OS上の専用アプリからも設定が可能ですが、BIOSからも専用アプリと同様にフルコントロール可能なので、一度設定したら頻繁に弄るものでもありませんし、余計なものを入れるよりもBIOS上からの操作に慣れておく方がおすすめです。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7のファンコントロール機能「スマートFan 5」には、「alt」キーでクラシックモード右下に表示される「スマートFan 5」を選択するか、「M.I.T.」タブの「スマートFan 5」を選択することでアクセスできます。
「GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7」のファンコントロール機能は下のスクリーンショットのようにグラフィカルUIによる設定のみで一部他社製品のようなコンソールで値を打ち込むようなメニューは存在しません。グラフィカルUIでマウスを使って簡単にできる機能なのですが、マウスレスでも全て設定可能となっており、ASUSやASRockのBIOSのような直打ちUIが好きな管理人でも使いやすいと感じる良いファンコンでした。
同ファンコントロール機能でユーザーが主に触る部分は下のスクリーンショットで囲った、「設定を行うファン端子」「速度設定プリセットの選択」「手動設定時のファンカーブ」「ファンカーブの温度ソース」「設定の適用」の5つになると思います。
左上「Monitor」と表示されたすぐ横にあるプルダウンメニューからはファンコン設定を行うファン端子を選択可能で、選択したファン端子について、その下に位置する各設定項目を変更できます。選択したファン端子について「〇〇ファン速度制御」の項目から、「通常」「静音」「フルスピード((定格)」の3つのプリセットに加えて、ユーザーが各自でファンカーブをカスタマイズできる「手動」の4種類を選択できます。
また選択しているファン端子の操作を行う温度ソースは「Fan Control Use Temperaturae input」から選択可能になっており、マザーボード備え付けの7つの温度センサーに加えて、増設可能な2つの温度センサーで計9個の温度センサーを温度ソースに指定できます。ただしCPUファンについてはCPU温度ソース固定となります。水温センサーを外部温度センサー端子に接続すれば水温ソースにしたラジエーターファンのファンコンにも対応可能なので水冷PC用のマザーボードとしても最適なファンコン機能です。
「〇〇ファン速度制御」の項目で「手動:を選択した場合はファンカーブのグラフにおいて、ファンストップ温度と、フルスピード温度に加えて、グラフ内で任意の4点についてファンカーブを設定できます。「Monitor」と「〇〇ファン速度制御」の項目間で上下カーソルキーを使うことで各ファンカーブ頂点を指定することができます。注目ポイントとしては「Shift」キーとカーソルキーの同時押しによってマウスレスでファンカーブの頂点を格子上で移動可能となっており、直打ち派の管理人も唸る非常に設定しやすいグラフィカルUIでした。
また「0」と書かれたファンカーブの頂点はファンストップ温度となっており、指定した温度ソースがファンストップ温度以下の場合、設定を行ったファン端子に接続されたファンを停止させる、所謂セミファンレス機能が使用できます。試しに止めてみました。
「Monitor」からは特定のファン端子を選択するので選択したファン端子1つだけについて設定を適用することも可能なのですが、設定の適用を行う「Apply to」のボタンをクリックするとマザーボードに設置されたファン端子が全て列挙され、ファン端子名の左にあるチェックボックスのチェックを入れるもしくは外すことで、現在設定を行っているファン端子と同じ設定を他のファン端子にも一斉に適用することが可能です。ファン設定の同期適用機能があるというのはユーザービリティーに優れ非常に好印象です。
その他にも急激な温度変化へファンコンが過敏に反応しないようファン速度変化に1~3秒の猶予を設ける「Temperature Interval」、ファン操作モードを「DC/PWM/自動検出」から設定する「〇〇ファン Control Mode」などのファンコン設定項目があります。ちなみにファン操作モードがPWMの場合でも手動設定時のセミファンレス機能を問題なく使用できました。(ASUSマザボではDCモードのみだった気がします。)
またマザーボードにブザーユニットが接続されている場合は、特定温度ソースが一定温度を超えた場合にエラーを知らせる「Temperature Warning」や接続されているファンに不具合が発生した(回転数の検出ができない)場合に警告を行う「〇〇ファン以上警告」といった設定も可能です。
欲を言えば数値直打ちのコンソール型UIもあると嬉しいとか個人的な要望はあるものの、マザーボードのファンコントロール機能としては同じく外部温度センサーソースに対応したASUSの「Q-Fan control」以上に多機能です。
「Smartファン5」はWindows OS上の専用アプリcというインフォメーションソフト「System Information Viewer」に統合されており同アプリ上から、BIOSと同じくファンコントロールが可能です。(System Information Viewerの利用にはAPP Centerのインストールも必要になります。)
上で紹介したBIOS上のファンコントロール同様に、個別のファンについてファンカーブの設定、セミファンレス機能のON/OFF、ヒステリシス間隔の変更など詳細なファンコントロール設定が可能です。
上のメニューで左にあるケースアイコンをクリックするとPCケース内におけるファンの設置位置やファンコンのソース温度を設定するメニューが表示されます。
その他にも温度やファン回転数などのハードウェアモニタリングやモニタリング値によるアラーム機能、モニタリング値のログ機能なども用意されていました。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7などGIGABYTE製マザーボードに採用されるファンコントロール機能「Smartファン5」はおそらく一般ユーザーにとっては最も使いやすく機能の優れたファンコントロールだと思います。
LEDイルミ操作機能「GIGABYTE RGB Fusion」について
最新のGIGABYTE製マザーボードでは一部上位機種でLEDイルミネーションや4PIN RGB LEDテープに対応したLEDイルミネーション調整機能「GIGABYTE RGB Fusion」が用意されています。マザーボード右端にある「Accent LED」というLEDライトバーはデフォルトでは幾何学模様のアクリルプレートが装着されていますが、このアクリルプレートはユーザーで交換可能になっています。
4基のDDR4メモリスロットの間に3本列のLEDイルミネーションが設置されているのが特徴的です。
またAorus GA-AX370-Gaming 5にはなかったLEDイルミネーションの要素として、Aorus GA-AX370-Gaming K7ではリアI/OカバーにもLEDイルミネーションが実装されていました。
マザーボード上にはLEDイルミネーション同期調整機能「GIGABYTE RGB Fusion」による操作に対応した汎用ヘッダーとして4PIN LEDヘッダーがCPUソケット左下、5PINヘッダーがマザーボード左下に設置されています。当サイトでもレビュー記事を掲載してる「SilverStone SST-LS02」などが接続可能です。出力は最大24W(12V, 2A)まで対応しており、最長2mのLEDテープを延長接続可能です。
GIGABYTEのLEDイルミネーション操作機能「RGB Fusion」はWindows OS上の同名アプリ「RGB Fusion」から各種設定が可能です。
ちなみにRGB Fusionの使用は統合ランチャーAPP Center経由の利用が推奨されていますが、アプリのインストール自体は単独でも可能になっており、インストールフォルダから実行ファイル「Selled.exe」を起動することで問題なく使用できました。
ウィンドウ左にあるアイコンの「Basic」を選択すると、LEDイルミネーション発光パターンとして「Static(固定発光)」「Pulse(ゆっくり明滅)」「Flash(点滅)」「Color Cycle(カラーサイクル)」「Random(ランダムに点滅)」「Music(音声出力に同期)」「Inteligent(各種ソースに同期)」の7つがGA-AX370-Gaming K7では選択可能でした。
「Static(固定発光)」「Pulse(ゆっくり明滅)」「Flash(点滅)」「Music(音声出力に同期)」「Inteligent(各種ソースに同期)」では円形カラーパレットから自由に発光カラーを設定できます。
GA-AX370-Gaming K7の「Color Cycle(カラーサイクル)」プリセットは点滅に感じるような急激な発光カラー変化があるので発光パターンとしては微妙に感じました。
「Inteligent(各種ソースに同期)」はCPU温度やCPU使用率などハードウェアモニタリングの数値に応じて発光カラーが変更する発光パターンです。状態に応じて3種類の発光カラーをアサインすることができます。
ウィンドウ左にあるアイコンの「Advanced」を選択するとより詳細なLEDイルミネーション設定が可能になり、LEDイルミネーションを場所ごとに個別に設定可能になります。ただしGA-AX370-Gaming K7ではマザーボード上のLEDイルミネーションは一括設定となっており、増設可能な汎用ヘッダーの発光カラー・パターンのみ個別に設定可能でした。
Advancedの注目もポイントとしては発光パターン「Custom」では任意のカラーバーを設定して3~8分割で任意の待機・遷移時間を指定してカラーサイクル表示が可能です。Basicの「Color Cycle」プリセットは微妙なのでここでカラーサイクルを個別設定するのがおすすめです。
「GIGABYTE RGB Fusion」はデスクトップアプリだけでなくBIOS上のグラフィカルUIでLEDイルミネーションの調整を行えます。いちいち専用アプリをインストールするのが面倒なのでBIOSから設定できるのは非常に便利なのですが、残念ながら、設定可能な発光パターンが少なく、マザーボード上の個別箇所設定が不可能など、デスクトップアプリと比べて設定内容が限定されています。
RGB Fusionの設定へアクセスするには「周辺機器(Peripherals)」タブメニューにある「RGB Fusion(誤訳?:アンビエントLED)」を選択します。ちなみにすぐ上にある「LED_C コネクト」を無効化すると汎用ヘッダーに接続されたLED機器を消灯できます。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7で選択可能な発光パターンも「Breathing(パルス発光モード)」「カラーサイクル(Color Cycle)」「固定(Static Mode)」「点滅(Flash Mode)」の4種類となっており他社のLEDイルミ機能に比べると少ないのが少し残念です。
またPCと同じネットワーク上にあるスマートフォンからもLEDイルミネーションの設定が可能です。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7のOC設定について
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7を使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
AMD Ryzen CPUについてはX370チップセット搭載マザーボードと組み合わせた場合に使用できる純正のOCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」が用意されていますが、こちらの使い方については下の記事を参考にしてください。
・AMD Ryzen専用純正OCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」の使い方
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7ではオーバークロック関連の設定項目はトップメニュータブ「M.I.T.」の「高度な周波数設定」「高度なメモリ設定」「高度な電圧設定」に各種設定がまとめられています。ちなみに設定値を直接入力する項目でデフォルトの「Auto」に戻す場合は「a」キーを入力すればOKです。
CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
コアクロックはコア数に対して各コアに最大動作クロック(BCLKに対する倍率)を指定できます。「コア0:コア1:コア2:コア3」を倍率として、例えば「45:43:43:42」のようにバラバラに指定した場合、4つのコアのうち1つに負荷が掛かる場合は4コアのうち1つが45倍動作、2つと3つの場合は43、4つの場合は42となります。
AMD Ryzen CPUについても定格では同様に例えばRyzn 7 1800Xでは、冷却性能依存の自動OC機能「XFR」の影響で若干前後しますが、単コア負荷の場合は4.0GHz、全コア負荷の場合は3.7GHzで動作します。しかしながら当レビュー記事執筆時点(3月31日)ではBIOSとRyzen専用OCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」ともにRyzen CPUは全コア同時のコアクロック設定しか行えませんでした。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7のコアクロックのOC設定方法はベースクロック(BCLK):100MHzに対する倍率指定となっており0.25倍単位でCPUコアクロックの倍率を設定できます。「CPU クロック倍率: 40.00」と設定することでデフォルトのベースクロック100MHzの40倍で4.0GHzで動作します。上で説明したように現時点では全コア同時の最大クロックしか設定できません。
CPU クロック倍率の上にある「CPUベースクロック」の項目ではその名の通りベースクロック(BCLK)を変更可能です。100~300MHzの範囲内で0.01MHz刻みで設定できます。
コアクロック倍率設定の下にある「高度なCPUコア設定」へアクセスすると追加でいくつか重要なCPU設定が可能になります。
「Down Core Control」の項目では動作させるコア数をプルダウンメニューから指定することができます。8コアCPUのRyzen 7を使用している場合は2コア([1+1]or[2+0])、3コア([3+0])、4コア([2+2]or[4+0])、6コア([3+3])が選択可能です。
AMD CPUのマルチスレッディング機能である「SMT:サイマルテイニアス マルチスレッディング(Simaltaneous multithreading)」の有効・無効をBIOS上から設定可能です。
続いてコア電圧の調整を行います。
AMD Ryzen CPUの手動OCに関連する電圧設定については基本項目が「CPU Core電圧」「CPU VCCSA(CPU SOC電圧)」「DRAM電圧」の3項目のみと非常に簡単化されています。
CPUコアクロックのOCに関連する電圧のOC設定としては、GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7ではCPUコア電圧(BIOS上ではCPU Core voltageもしくはCPU Vコアと表記されています)の項目を変更します。GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7ではマニュアルの設定値を指定して入力する固定モードのみが使用できます。AMD Ryzen CPUのコア電圧は0.00625V刻みでコア電圧の設定が可能です。
CPUコア電圧モードについて簡単に説明すると、オフセットモードやアダプティブモードはCPU負荷に比例して電圧が設定されており、低負荷時は電圧が下がるので省電力に優れるのですが、OCをする場合はマザーボードによって挙動に差があり安定する設定を見極めるのが難しいので、個人的にはオフセットやアダプティブは定格向け、OCには固定値適用の固定モードを推奨しています。
仮にOCでオフセットやアダプティブを使う場合も最初はコアクロックに対して安定する電圧を見極める必要があるので、まずは固定モードを使用します。
ちなみにマザーボードにより対応しているモードは異なりますが、CPUのオーバークロックに付随するコア電圧のモードの概略図は次のようになっています。
またコアクロックを高く設定する時に追加で変更するといい電圧設定項目としてCPUコア電圧の設定欄の下にある「CPU VRINロードラインキャリブレーション」が挙げられます。この設定を変更することでCPU負荷時の電圧降下を補正してOCを安定させることが可能です。補正を強くするほどOCの安定性は増しますがCPUやVRM電源部分の発熱も大きくなるので真ん中あたりを最初に使っておいて、ストレステストのCPU温度をチェックしながらモードを上げていくのがおすすめです。
GA-AX370-Gaming K7では「CPU VRINロードラインキャリブレーション」の設定方法が少し特殊で、デフォルトの設定値は「Auto」ですが、数字キーの1~6が「Standard」「Low」「Medium」「High」「Turbo」「Extreme」に割り当てられており、その他の入力を行うと「Auto」に戻ります。
キーボードにテンキーがある場合は「+」「-」キーで設定内容を「Standard」~「Extreme」で変更できました。「Standard」の動作がよくわかりませんが、「Low」~「Extreme」は補正の強さをそのまま示しているので、High辺りから使っていけばいいと思います。
メモリのオーバークロックについても簡単に紹介だけしておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、「GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7」では正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動で2133MHzのような緩い設定で起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。
メモリOCで有名なXMPプロファイルはIntelの策定した規格なのでAMD CPU&マザーボードの環境では非対応ですが、GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7ではXMPプロファイルの項目が表示されており、おそらくXMPプロファイルから適当なOCプロファイルを自動生成しているものと思われます。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7ではメモリクロックの設定方法も少々独特で、1333MHz(13.33倍)から4000MHz(40.00倍)まで選択可能ですが、プルダウンメニューによる選択ではなく、メモリ周波数の直打ち(補正あり)か、テンキーの「+/-」キーによる設定値変更で選択する形式になっています。
メモリ周波数もBCLKに対する倍率で動作周波数が決まっているので、BCLKを標準値の100MHzから120MHzに上げると、40倍設定時の動作周波数は4000MHzから4800MHzに上がります。
メモリ設定にある「チャンネルA/Bサブタイミング」ではメモリタイミングの個別打ち込み設定が可能です。チャンネルAとチャンネルBで設定項目が分かれていますが、デュアルチャンネルでメモリを使用している場合は片方だけ設定すればもう片方はAutoのままでも設定が共有されるので片方だけ設定すればOKです。なおGIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7でXMPを使用せずに手動でメモリ周波数をOCする場合はタイミングの主要5項目はAutoにせず「18-18-18-18-38」など適当な値を指定してください。
DDR4メモリについては3000MHz以上にOCする場合はDRAM電圧を1.300~1.350Vに上げる必要があります。メモリをOCする場合は最初から1.350VにDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。ちなみにAMD Ryzen CPUでメモリの動作クロックをOCする場合はDRAM電圧だけでなく「CPU VCCSA(CPU SOC電圧)」も適度に盛ってやるとメモリOCが安定します。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7のOC設定についてはベースクロックBCLKの変更もできるので高度なオーバークロックも可能なマザーボードです。テンキーの「+/-」キーで設定値の変更はできるものの、メモリ周波数やロードラインキャリブレーションの設定がプルダウンメニューでないところが非常に不便なのでこの点についてはアップデートで修正して欲しいです。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7の動作検証・OC耐性
BIOS周りの管理人的に気になるところの紹介はこのあたりにしてGIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7を使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。まずは高速ブートを無効にしてBIOS上の起動設定を次のようにしてOSの起動時間を測定しました。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7の起動時間は18秒ほどとなりました。
これまで検証したX370チップセット搭載AM4マザーボードの中でも最速クラスの起動時間となっており、Intel KabyLake対応高性能マザーボードの環境と比較しても速い部類です。
続いてGIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7を使用した場合のCPUのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
Ryzen 7 1800XのOC設定は「CPUクロック倍率:40」「CPUコア電圧:1.39375V固定」「CPU VRINロードラインキャリブレーション: High」「メモリ周波数:3200MHz」「メモリ電圧:1.350V」「メモリタイミング:18-18-18-18-38」としています。
上の設定を適用したところ問題なくOSを起動させることができました。
検証機材のメモリ「Kingston HyperX Fury DDR4 HX424C15FB2K2/16」はXMP2400MHzのメモリなので3200MHzで正常動作ということでかなり相性が良いようです。
AMD Ryzen CPUの発売当初(と言ってもほんの3か月前ですが)はマザーボードとメモリの相性問題が厳しく、Samsung Bダイ等一部の相性の良いメモリを除くと、シングルランクかつ2枚組のデュアルチャンネルでも2666MHzで動作させるのが難しいという状況でした。
しかしながら6月に入っていリリースされたAGESA 1.0.0.6のマイクロコードに対応するBIOSにアップデートすることでこういったメモリ相性問題の状況が一変しています。管理人の手元にあるメモリでOCを実行したところ「Corsair VENGEANCE LPX(型番:CMK16GX4M2B3200C16)」と「HyperX Predator(型番:HX433C16PB3K2/16)」で容易に3200MHzにオーバークロックすることができました。XMP3200
MHz以上のメモリであればほぼ問題なく3200MHzで動作させることができそうな手ごたえを感じます。
Ryzen 7 1800Xの4.0GHz、メモリ3200MHzでCinebenchも問題なくクリアできました。
続いてこのOC設定を使用してストレステストを実行しました。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はRyzen 7 1800Xの場合15分ほどなので同じ動画で4周させています。エンコード中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
ストレステスト中のCPU温度とCPU使用率のログは次のようになりました。マザーボードにGIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7を使用することでRyzen 7 1800Xを全コア同時4.0GHzにOCしてストレステストをクリアできました。CPUクーラーのファン回転数は1200RPMで固定しています。
スマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE」を使用してストレステスト終盤のGIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7のマザーボード上の各所の温度をチェックしました。今回は簡易水冷クーラーを検証機材に使用したのでVRM電源部分の温度が高くなることは予想していたのですが、90度を超えるという残念な結果になりました。CPU側のVRM電源として機能するのがソケット右側の6フェーズのみなのでRyzen 7を4.0GHzにOCすると負荷が集中して温度が非常に高くなってしまいます。水冷クーラーを使用する場合は別途ファンでVRM電源部分を冷やすなど対応したいところです。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7のレビューまとめ
最後に「GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- ブラックメインのクールなデザイン
- 重量級グラボにも耐える2大独自機能「Ultra Durable PCIe Armor」と「Double Locking Bracket」
- 外部ノイズから保護することで安定したメモリOCを実現する「Ultra Durable Memory Armor」
- スタート・リセットスイッチなど動作検証に便利なオンボードスイッチ
- 起動時間が18秒と高性能X370 AM4マザーボードの中でも最速クラス、POST速い
- 検証機ではRyzen 7 1800Xの全コア同時4.0GHz OCで正常動作 (注:VRM電源部分の温度)
- 外部温度センサーに対応したファンコン「Smartfan 5」は多機能で使いやすい
- 高速NVMe接続のU.2端子を搭載 (PCI-E3.0x4のM.2と排他利用)
- NVIDIA GTX 10XXシリーズのマルチGPU用の金属端子SLI HBブリッジが付属する
- フロントパネルコネクタのマザーボードへの装着を簡単にする独自パーツ「G-Connector」
- AGESA 1.0.0.6のマイクロコード対応でメモリ相性問題が大幅に緩和されている
- 大幅なCPUコアクロックOCを行った場合に実働VRMが6フェーズなので90度を超える可能性あり
- LEDイルミネーションの発光パターンが少ない
- M.2スロットは1基しかない
- リアI/OにUSB2.0端子がないのでワイヤレスUSB機器との干渉が心配
Ryzen CPU対応X370チップセットを搭載したAM4マザーボード「GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7」は販売価格3万円とX370マザーボードのなかでも高価な製品というだけあって、各種機能が豊富に取り揃えられています。特にGIGABYTE社のファンコントロール機能「Smartfan 5」は外部センサーを含めた9個温度センサーをソースに8基のファンを自由自在にコントロールできるので、これを目当てにGIGABYTE製マザーボードを購入しても後悔のないほど非常に優れた機能でした。水冷ユーザーにもおすすめです。
基本的な機能は下位モデルの「GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming 5」と大きく違いはありませんが、「GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7」にのみ搭載されているベースクロックのチューニングIC「Turbo B-Clock」によって、ベースクロックを0.01MHz刻みで制御可能なのでより高度なオーバークロックが可能になっています。
GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7を使用した検証機ではRyzen 7 1800Xの全コア4.0GHzで安定動作を実現しました。しかしながらOC時のVRM電源部分の温度に不安が残る結果となったので、大幅なOCを狙うなら簡易水冷CPUクーラーを使用する場合は追加ファンでVRM電源部分クーラーに風を当てるか、トップフローCPUクーラーを使用して適度なOCに留めるのが無難です。
AGESA 1.0.0.6のマイクロコード対応でメモリ相性問題が大幅に緩和されており、管理人が検証した限りではXMP3200MHz以上のメモリであれば、3200MHzが余裕で実現できそうな手ごたえを感じたので、メモリ周りについても安心して大丈夫だと思います。
BIOSデザインについては好みの問題かと思いますが、GIGABYTE Aorus GA-AX370-Gaming K7ではカーソルキー操作を基本としたクラシカルなUIが採用されており管理人的に好みでした。ただグラフィカルUI好きにとっては物足りないかもしれません。
翻訳は一部誤訳があるものの比較的まともですが、日本語フォントの調整が微妙なのが玉に瑕です。あとOC設定でLLCやメモリ周波数などプルダウン選択形式が推奨されそうな項目で直打ちorテンキーで設定変更なところは改善して欲しいです。
【まとめの続きについてはBIOSの成熟やWindow OSのRyzen CPU向けアプデを待って追記予定です】
・AM4マザーボード:
<Amazon><TSUKUMO><PCショップアーク>
<PCワンズ><ドスパラ><パソコン工房>
CORSAIR VENGEANCE LPX Series DDR4 メモリ (XMP3200MHzモデル推奨)
Amazon.co.jpで詳細情報を見る
<TSUKUMO><PCショップアーク><パソコン工房>
Corsair
<TSUKUMO><PCショップアーク><パソコン工房>
Ryzen 7のOCについて、3.9GHzまでは電圧でごり押しできますが、それ以上を狙うとVcoreとCPU温度の板挟みで設定が難しくなってくるので、4.0GHz常用を目標にするならAM4マウントに対応している280サイズラジエーター採用簡易水冷CPUクーラー「Corsair H110i」がおすすめです。
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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”の”がいらないと思います。