ASRock X399 Taichi



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AMD Ryzenのエンスー向けCPU「Ryzen Threadripper」に対応するX399チップセット搭載TR4 SocketマザーボードとしてASRockからリリースされた、Fatal1ty最上位モデルの基礎的な部分の高性能さはそのままに付加価値的な要素を省いてコスパを重視するミドルハイブランド”Taichi”シリーズの最新モデル「ASRock X399 Taichi」のレビュー用サンプルをメーカーよりお借りできたのでレビューしていきます。X399ロンチマザーボード中でも最安モデルとなっており、コスパを優先するユーザーを始めとしてRyzen Threadripperユーザーにおすすめの鉄板モデルです。
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製品公式ページ:http://www.asrock.com/MB/AMD/X399 Taichi/index.jp.asp
マニュアル:http://asrock.pc.cdn.bitgravity.com/Manual/X399 Taichi_jp.pdf
X399 Taichi





ちなみにASRockにおける「Taichi」ブランドの歴史は比較的新しくX399 Taichiでちょうど1周年くらいとなっています。16年6月に発売されたエンスー向けCPUであるIntel Broadwell-E対応の後期X99マザーボードとしてTaichiシリーズは初登場しました。
それでは「TaichiってASRockのマザボブランドの中でどんな位置づけなのか?」というと、ASRockではゲーミングマザーボードのブランドは「Fatal1ty」と名付けられており、その最上位として「Fatal1ty Professional Gaming」が存在します。X99やZ270のチップセットを搭載した「Fatal1ty Professional Gaming」と「Taichi」を見比べると一目瞭然なのですが、「Taichi」は「Fatal1ty Professional Gaming」から付加価値性の高い一部機能をオミットした廉価版という位置付けになっています。
X99Z270

なので今回レビューするX399 Taichiは、ゲーミングモデル最上位「ASRock Fatal1ty X399 Professional Gaming」に対して、CPUのOCに関連したクロックジェネレーター「Hyper BCLK Engine III」や安定した電圧供給を支える11フェーズVRM電源など基礎的な部分はそのままに、10Gbイーサなど付加価値的な要素を外してコストパフォーマンスを重視したモデルとなっています。



【注意事項】
検証中のトラブルなども記事内で記載していますが、AMD Ryzen Threadripper CPU自体が発売されたばかりなので、OSの問題なのか、マザーボードBIOSの問題なのか原因の切り分けが現状でできないものも少なくありません。今後ドライバやBIOSなどソフトウェアの更新でパフォーマンスや安定性が向上することは期待できると思うので、その辺りも念頭に置いて読んでもらえるとありがたいです。
同検証は17年8月上旬に行っており「ASRock X399 Taichi」のBIOS:P1.30
を使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:http://www.asrock.com/MB/AMD/X399 Taichi/index.jp.asp#BIOS

【17年8月9日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:P1.30で検証




ASRock X399 Taichi レビュー目次


1.ASRock X399 Taichiの外観・付属品
2.ASRock X399 Taichiの基板上コンポーネント詳細
3.ASRock X399 Taichiへのパーツ組み込み(ギャラリー)
4.ASRock X399 Taichiの検証機材セットアップ
5.ASRock X399 TaichiのBIOSについて
6.ASRock RGB LEDについて
7.ASRock X399 TaichiのOC設定について
8.
ASRock X399 Taichiの動作検証・OC耐性
9.ASRock X399 Taichiのレビューまとめ


ASRock X399 Taichiの外観・付属品

まず最初にASRock X399 Taichiの外観と付属品をチェックしていきます。
ASRock X399 Taichiは最上位のフラッグシップマザーボード感の溢れる見開きショーケースな構造のパッケージになっていました。キャラメル箱と呼ばれる厚手の外箱に2段重ねの内パッケージという構造です。
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上段の内箱にはマザーボード本体が入っており、下段の内箱には組み立て関連のパーツとマニュアル類にパーティション分けされて付属品が収められていました。
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マザーボード本体は衝撃から保護するスポンジの枠にケーブルタイでしっかりと止められているので、輸送時の破損などの心配もありません。
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付属品を簡単にチェックしていきます。
マニュアル類について今回のサンプルには付属していませんが日本語のソフトウェアマニュアル、多言語の簡易マニュアルが通常は付属します。またドライバや専用ソフトウェアが収録されたCDが付属します。ドライバ類についてはそろそろUSBメモリに移行して欲しいところ。
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多言語マニュアルには日本語のページもありますが、オンラインで公開されている日本語マニュアルのほうがページ数も多く詳細に説明されているのでオンラインマニュアルの参照を推奨します。
マニュアル:http://asrock.pc.cdn.bitgravity.com/Manual/X399 Taichi_jp.pdf

組み立て関連の付属品はSATAケーブル4本、リアI/Oパネル、スティック型WiFiアンテナ2本、M.2 SSD固定ネジ*3、SLI HBブリッジ、3Way-SLIブリッジ、4Way-SLIブリッジです。
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SLIブリッジについては17年に入ってからはGTX 10XXシリーズの広帯域SLI接続に対応したSLI HBブリッジが付属するようになっており、ASRock X399 Taichiには2スロットスペース型SLI HBブリッジが入っていました。またGTX 10XXシリーズでは正式サポート外となっていますが、ASRock X399 Taichiはワークステーション向けに3Wayや4WayマルチGPU環境にも対応しているので3Wayと4Way-SLIブリッジも付属します。
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リアI/Oシールドは表面はシンプルなマットブラックカラーとなっています。裏面のマザーボードと接する部分にはスポンジなど緩衝材はありませんでした。5万円を超える高級マザーボードなのでスポンジを詰めておいて欲しいところ。
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マザーボード全体像は次のようになっています。
ASRock X399 TaichiはATXフォームファクタのマザーボードで、シルキーで滑らかなブラックのPCB基板を背景にしてグレーとツートンカラーになっています。PCB基板には湿度による電気短絡を防ぎ安定動作を助ける「高密度ガラス繊維PCB」が採用されています。
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AMD Ryzen Threadripperの競合となるIntel Skylake-Xに対応する「ASRock X299 Taichi」と比較してみると、VRM電源クーラーの大型化、U.2端子の追加、オンボードスイッチの設置など「ASRock X399 Taichi」の方が豪華な構成になっているのがわかります。
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マザーボード右下のチップセット用ヒートシンクもブラック&グレーのツートンカラーになっています。ASRock Taichiといえばブラック&ホワイトのコントラストの効いたモノトーンカラーでTaichiの名前通りマザーボード全体で太極図を模したデザインが特徴でしたが、X399 Taichiではホワイトの部分がグレーになっており名前の由来でもある太極図より、その構成要素の歯車が主張するデザインになっています。太極図を模したユニークデザインも売りの1つだったはずなのでTaichiファンにとっては残念かも。
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リアI/Oカバーは特徴の少ない簡素なデザインですが、ガンメタルカラーのヘアラインアルミニウムでできた大型ヒートシンクは豪華かつクールです。VRMヒートシンクについて溝のエッジ部分がかなり鋭くなっており指を切りやすいので注意してください。
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CPUソケット上のVRM電源ヒートシンクはX299 Taichiのものよりも大型化され、左側メモリソケットの隣にも設置された大型ヒートシンクとヒートパイプで連結されています。
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ASRock X399 TaichiのVRM電源には、最上位ではコア・スレッド数が16コア32スレッドともなるAMD Ryzen Threadripper CPUにも安定した電力供給が可能なように11フェーズVRM電源が実装されています。従来比で飽和電流を最大3 倍まで効果的に増加させるためマザーボードのVcore電圧を強化する「新世代プレミアム60Aパワーチョークコイル」や12000時間の高寿命・高信頼性な「ニチコン製12Kブラックコンデンサ」などを採用しタフなOC耐性を実現します。
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多コア&高クロックCPUへ安定した大電力供給が行えるように「ASRock X399 Taichi」のEPS端子は8+4PINが実装されていますが、配置をマザーボードの左右に分けることで電力効率を改善し、発熱を小さくしているとのこと。EPS電源端子については電源容量800W以下の電源ユニットでは1つしか端子がない場合があるので、EPS端子が足りているか事前に注意して確認してください。
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リアI/Oには最新のUSB3.1規格に対応したUSB端子としてType-AとType-Cの2端子が設置されています。そのほかのUSB端子についてはUSB3.0端子が8基が搭載されています。マウス・キーボードなどの周辺機器を多数繋いでいても、HTC ViveやOculus Rift CV1のようなVR HMDに十分対応可能です。個人的に残念なポイントとしてはUSB3.0/3.1は無線マウスと電波干渉を起こすことがあるので少し離れた場所にUSB2.0も設置して欲しかったです。ゲーマーには嬉しいPS/2端子も搭載されています。
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ネットワーク関連では低CPU負荷かつ高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーが採用された有線LAN端子が2基も搭載されています。無線LANモジュールも標準搭載しており、接続規格としてはWi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac、2.4/5GHzデュアルバンド、Bluetooth 4.2に対応しています。リアI/Oには無線モジュールのアンテナ端子が設置されているので付属のスティック型アンテナを接続できます。
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またリアI/Oには「BIOS FlashBack」ボタンが設置されており所定のUSB端子にBIOSファイルの入ったUSBメモリを接続してボタンを押すと「BIOS FlashBack」機能によってCPUやメモリなしの状態でもBIOSの修復・アップデートが可能です。
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重量計を使用して重さを測定してみたところ、ASRock X399 Taichiは1405gでした。同じくATXサイズX299マザーボードのASRock X299 TaichiやASRock Fatal1ty X299 Professional Gaming i9は1100g前後なので大型ヒートシンクなど豪華な構成になった分だけ重量は増えています。
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ASRock X399 Taichiの基板上コンポーネント詳細

続いて「ASRock X399 Taichi」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。
システムメモリ用DDR4メモリスロットはCPUソケット両側に4基ずつで計8基のスロットが設置されています。
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固定時のツメはマザーボード上側の片側ラッチとなっています。グラフィックカードのあるPCI-Eスロット側はラッチがないので干渉の心配もありません。
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グラフィックボードなどを設置するPCI-Eスロットは上から[x16、N/A、x16、x1、x16、N/A、x16]サイズが設置されています。プライマリGPUは1段目のスロットなので大型のハイエンド空冷クーラーを使用する場合はグラフィックボードとCPUクーラーの干渉に注意が必要です。
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1段目、3段目、5段目、7段目のx16サイズPCI-EスロットのPCI-Eレーン配分は次のようになっています。
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グラフィックボード向けのx16スロットは1段目、5段目に配置されており、現在主流な2スロット占有グラフィックボードを使用しても下位グラフィックボードが上位グラフィックボードのエアフローを妨げないよう配慮されています。付属の2スロットスペース型SLI HBブリッジを使用すれば、NVIDIAの最新GPUであるGTX 1080 Ti、GTX 1080、GTX 1070を使用したマルチGPU SLI環境を構築可能です。
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最近のトレンドとしてはグラフィックボード用のx16スロットには1Kgを超える重量級グラボの重さに耐えるメタルアーマーが採用されています。ASRockの「STEEL SLOT」ではスロット全体に金属アーマーを装着して四隅をハンダで固定する構造になっています。(下写真はASRock Fatal1ty Z270 Gaming-ITX/acのもの)
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4段目のx1スロットは右端に切り込みが入れられているので、通信速度がPCI-Ex1で問題なければx2サイズ以上の拡張カードも使用可能になっています。
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マザーボード右下にはグラフィックボードなどPCI-Eスロットに設置した拡張カードへ安定した電力供給を行うための追加電源としてグラフィックボード補助電源のPCI-E 6PINと同じコネクタのオプション電源端子が用意されています。オプション扱いですがマルチGPU構成で組む場合は接続したほうがよさそうです。
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なお最下段のPCI-Eスロットに2スロット以上を占有するグラフィックボードを設置する場合、各種ヘッダーに接続するケーブルとの干渉に注意が必要です。
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ASRock X399 TaichiにはSATAストレージ用の端子は8基搭載されています。SATA_0~7の8基はAMD X399チップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。
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高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットはチップセット下、PCI-Eスロット間2か所の計3基が設置されています。M2_1M2_2M2_3はいずれもNVMeとSATAの両方に対応しています。M2_1はU.2端子と排他利用となっています。
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また17年最新マザーボードでは実装の減りつつあるNVMe対応U.2端子もASRock X399 Taichiには実装されています。U.2端子はM2_1と排他利用となっています。
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ATX 24PIN端子のすぐ左とマザーボード右下には内部USB3.0ヘッダーが2基が設置されています。
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マザーボード下には内部USB2.0ヘッダーも2基設置されていました。CorsairLinkやNZXT CAM対応製品など内部USB2.0を使用する機器も増えていますが、ASRock X399 Taichiであればそれらの機器も問題なく使用可能です。
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ASRock X399 Taichiはオンボードサウンドに「PURITY SOUND4」という高音質ソリューションが採用されています。アナログ出力はニチコン製オーディオ向けキャパシタやSN比120dBのDACなど高品質素子を採用し、7.1チャンネル HDオーディオに対応しており、デジタル出力でもオーディオ用の外部アンプ等との接続に最適な光デジタル端子が設置されています。
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フロントオーディオコネクタについては、高音質な15μゴールドオーディオジャックを採用した通常の垂直配置ヘッダー(左)に加えて、4WayマルチGPU時にグラフィックボードと干渉せずにフロントオーディオを使用するための水平配置ヘッダー(右)も設置されています。
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マザーボード基板上にはOCerのみならず一般自作erにとっても組み立て中の動作確認に便利なオンボードのスタートスイッチとリセットスイッチが実装されています。CMOSクリアのハードウェアスイッチも設置されているのでOC設定をミスっても簡単に初期化が可能です。POST中のハードウェア検出エラーを知らせてくれるQ-Code LEDも備わっているので、CPUやメモリの設置ミスがあってもすぐにわかります。
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冷却ファンを接続するためのコネクタについてはPWM対応4PINファンコネクタがマザーボード上に5基設置されています。マザーボード上部のCPUソケット周辺にCPUファン端子CPUオプションファン端子(水冷ポンプ対応)、マザーボード下部の外周にケースファン端子3基(右上は水冷ポンプ対応)の計5基です。水冷ポンプ対応ファン端子は1.5A、18Wの電源出力が可能です。
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ASRock X399 Taichiには「Hyper BCLK Engine III」という外部ベースクロックジェネレータが実装されています。「Hyper BCLK Engine III」はオーバークロックにおいて正確なクロック波形の提供やBCLKの変更を可能にする便利なモジュールです。
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ASRock X399 Taichiへのパーツ組み込み

ASRock X399 TaichiにDDR4メモリとCPUクーラーを設置してみました。内容的には写真のギャラリーだけになっています。
DDR4メモリには「G.Skill Trident Z F4-3866C18Q-32GTZR」(レビュー記事)、CPUクーラーにはNZXT KRAKEN X62(レビュー)を使用しています。
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ASRock X399 Taichiの検証機材

ASRock X399 Taichiを使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。ASRock X399 Taichi以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成
CPU AMD Ryzen Threadripper 1950X
16コア32スレッド 定格全コア同時3.6GHz
レビュー
CPUクーラー NZXT KRAKEN X62
280サイズ簡易水冷 (レビュー
メインメモリ G.Skill Trident Z RGB
F4-3866C18Q-32GTZR
DDR4 8GB*4=32GB (レビュー
CPUベンチ用
ビデオカード
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC
ファンレス (レビュー
システムストレージ
Samsung 850 PRO 256GB (レビュー
OS Windows10 Home 64bit
電源ユニット Corsair RM650i (レビュー
ベンチ板 STREACOM BC1 (レビュー

AMD Ryzen ThreadripperのTR4 Socketに対応する280サイズラジエーター採用で最高クラスの冷却性能を誇る簡易水冷CPUクーラー「NZXT KRAKEN X62」をNZXTの国内正規代理店タイムリー社よりAMD Ryzen Threadripper CPUやX399チップセット搭載TR4マザーボードをお借りして検証機材として使用しています。個別レビュー記事も公開中です。
最も美しい簡易水冷CPUクーラー「NZXT KRAKEN X62」をレビュー
NZXT KRAKEN X62
なお「NZXR KRAKEN X62」については水冷チューブがメモリスロットと干渉してしまうので規定の向きではメモリ8枚刺しができません。メモリ4枚刺しであれば問題ありませんが予めご注意ください。
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CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
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グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
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CPUクーラー設置の際は、VRM電源クーラー側のネジを締める際にハンドスクリューを手で回すと溝のエッジ部分で手を切る可能性があるのでドライバーを使用してネジ止めを推奨します。
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以上で検証機材のセットアップが完了となります。
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ASRock X399 TaichiのBIOSについて

ASRock X399 Taichiを使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。
(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付がおかしいですが無視してください。また内容的に差異のないものは過去の同社製マザーボードのBIOSスクリーンショットを流用しています。)

ASRock X399 TaichiのBIOSに最初にアクセスすると従来通りの文字ベースBIOSメニューが表示されました。画面右下の「English」と表記されたボタンから言語設定が可能です。
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ASRock X399 TaichiのBIOSについては多言語に対応しており、「Save Changes and Exit」が「変更がそして退出することを保存します」のように翻訳が怪しい部分はあるものの日本語にも対応しているので初心者ユーザーにも優しいBIOSだと思います。
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ASRock X399 TaichiのBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出はトップメニュータブ最右端の「出口」から行えます。特定のブートデバイスを指定してBIOSから退出するBoot Override機能もあります。
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レビュー用サンプルの初期BIOSバージョンは「L1.14」でしたが、製品版用の最新BIOS「P1.30」にアップデートを行いました。
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BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルを公式DLページからダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:http://www.asrock.com/MB/AMD/X399 Taichi/index.jp.asp#BIOS

USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、トップメニュータブ「ツール」の「Instant FLASH」を選択します。「Instant FLASH」を選択すると自動でUSBメモリ内から総当たりでアップデートファイルを探索してくれます。探索方法は総当たりなのでファイルが多いと時間がかかるため、アップデート時はファイルの少ないUSBメモリを使用するのがおすすめです。
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USBメモリからアップデートファイルが見つかると更新するかどうか尋ねられるので、更新を選択すればあとは自動でBIOSがアップデートされます。
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ブートとOSインストール周りについて紹介します。とはいってもASRock X399 Taichiのブート回りは下画像のように非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。
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OSのインストールも「起動順序 #1」に「UEFI 〇〇」というOSインストールメディアを設定して保存&退出でOKです。「UEFI 〇〇」をブートオーバーライドで指定しても同様にOSのインストールデバイスから起動可能です。
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BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、ASRock X399 TaichiのBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。

アドバンスドのストレージ設定からはSATAストレージだけでなく、M.2スロットに接続されたSATA接続M.2 SSDやNVMe接続M.2 SSDの一覧が確認できます。
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ファンコントロール機能について紹介します。
ASRock X399 Taichiのファンコン機能は設置されている5つのファン端子を個別に設定可能です。
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「標準/サイレント/パフォーマンス/最大速度」の4種類のプリセット設定に加えて、個別に温度・ファン速度の比例カーブを指定できる「カスタマイズ」の5つのモードを使用できます。
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「カスタマイズ」モードでは比例カーブを決める温度とファン速度を4つ指定できます。CPUファンはCPUソースで固定ですが、CPU_OPTとケースファン3基はソースとなるセンサーにCPU温度とマザーボード温度の2つから選択できます。外部温度センサーには非対応です。
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各種モニターとファン端子コントロールの間に「Fan Tuning」と「Fan-Tasticチューニング」という項目があります。「Fan Tuning」はワンクリックで自動で接続された冷却ファンの動作を最適化してくれる機能です。「Fan-Tasticチューニング」はグラフィカルUIによるファンコントールの設定機能になっています。
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機能的には上で紹介したコンソールのファンコンと同じで、グラフィカルUIでわかりやすく設定できるよという機能になっています。直感的にわかりますし直打ちが苦手な人にはありがたい機能だと思います。マウス操作重視のUIですがキーボードからもカーソルキーでフルコントロール可能です。
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イルミネーション操作機能「ASRock RGB LED」について

ASRockでもマザーボード備え付けのLEDイルミネーションや4PIN RGB LEDテープに対応したイルミネーション操作機能「ASRock RGB LED」が用意されています。ASRock X399 Taichiについてはマザーボード備え付けのLEDイルミネーションはチップセットクーラーとPCI-Eスロットのみで控えめです。PCI-Eスロットについては使用中のスロットのみが点灯します。
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ASRock X399 Taichiではマザーボード備え付けのLEDイルミネーションに加えて4PIN RGB LEDテープに対応した4PIN LEDヘッダーが2基設置されています。当サイトでもレビュー記事を掲載しているLEDテープ「SilverStone SST-LS02」やLEDファングリル「SilverStone FG121 / FG141」などが接続可能です。1端子あたり3A、36WまでのLED機器を接続可能です。
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「ASRock RGB LED」は製品サポートページで配布されている専用アプリを使用することで他社のLEDイルミネーション操作同様に発光カラーや発光パターンを設定できます。
発光パターンには「Static」「Breathing」「Strobe」「Cycling」「Random」「Music」「Wave」を選択できます。赤→緑→青に緩やかに変化するカラーサイクルについては「Cycling」ではなく「Wave」が対応しています。
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「Static」「Breathing」「Strobe」など特定の発光カラーを指定する発光パターンでは、リング型RGBカラーパレットを使用して発光カラーを自由に設定できます。
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ASRock RGB LEDにはBIOS上のグラフィカルUIでLEDイルミネーションの調整をデスクトップアプリ同様に行えるという特徴があったのですが、「ASRock X399 Taichi」についてはBIOS:1.30では機能自体はあるものの、グラフィカルUIではなくテキストベースUIでした。LEDイルミネーション関連は流石にグラフィカルUIにして欲しいので次回の更新を待ちたいです。
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下はASRock Z270 SuperCarrierのものですが、BIOSの詳細モードでツールのRGB LEDからLEDイルミネーションの設定画面にアクセスすると、使用しているマザーボードに合わせて写真も表示され、専用アプリ同様にLEDイルミネーションの操作が可能です。
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ASRock X399 TaichiのOC設定について

ASRock X399 Taichiを使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。


AMD Ryzen Threadripper CPUについては純正のOCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」が用意されていますが、こちらの使い方については下の記事を参考にしてください。
AMD Ryzen専用純正OCツール「AMD Ryzen Masterユーティリティ」の使い方
AMD Ryzen Masterユーティリティ

ASRock X399 Taichiのオーバークロック設定はOCツールというトップメニューのタブページにCPUコアクロック、メモリ、電圧など各種設定項目が集約されています。OCツールのページをスクロールしていくとCPUコアクロック、メモリ、電圧の順番で設定項目が表示されます。
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CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
コアクロックはコア数に対して各コアに最大動作クロック(BCLKに対する倍率)を指定できます。「コア0:コア1:コア2:コア3」を倍率として、例えば「45:43:43:42」のようにバラバラに指定した場合、4つのコアのうち1つに負荷が掛かる場合は4コアのうち1つが45倍動作、2つと3つの場合は43、4つの場合は42となります。そしてベースクロック(BCLK)は通常100MHzなので動作倍率40倍であればコアクロックは4.0GHzとなります。

AMD Ryzen Threadripper CPUについても定格では同様に、例えばRyzen Threadripper 1950Xでは冷却性能依存の自動OC機能「XFR」の影響で若干前後しますが、単コア負荷の場合は4.2GHz、全コア負荷の場合はTDPの範囲内で変動しますが軽いワークロードであれば全コア4.0GHzで動作し、動画のエンコードなど重いワークロードでは平均3.5~3.6GHz程度で動作します。
AMD Ryzen Threadripper 1950X def clock
Ryzen ThreadripperのCPUコアクロックに関してBIOSから行う基本的なOC設定や専用ユーティリティー「Ryzen Master」によるOC設定では、単一の「P-State」を設定して固定コアクロックかつ固定電圧でOC設定としていますが、Ryzen CPUでは本来、複数の「P-State」が設定可能です。
アイドル時のP-State0、低負荷時のP-State1、高負荷時のP-State2のように負荷に応じてP-State(コアクロックと電圧の組み合わせ)という状態を遷移できます。例えばRyzen Threadripperの定格動作ではCPUごとにデフォルトで設定されたP-Stateに従って動作しているので可変コアクロックかつ可変電圧になっています。
固定最大コアクロック&固定電圧によるOCに比べて、複数のP-Stateを設定する方法は難易度が高いですが、一部のコアのみより高いクロックで動作させるなど細かい設定が可能になります。とはいえやはり複数のP-Stateを設定する方法は難易度が高い設定になるので、簡単な単一P-Stateで固定最大倍率&固定電圧のOCがおすすめです。
Ryzen P-State_1


ASRock X399 TaichiのコアクロックのOC設定方法はコアクロック(MHz)の指定値を直に打ち込む形になっていました。「CPU Frequency and Voltage Change」の項目を「手動」に変更すると「CPU Frequency」の項目が表示されます。例えば「4025」のように「CPU Frequency」を設定すると4025MHzで動作するように設定されます。コアクロックは25MHz間隔で指定可能です。「CPU Frequency」はコアクロックを打ち込む形になっていますが実態は1/100の倍率を指定しています。4000を打ち込んだ場合は40倍でBCLKが100MHzなら4.0GHz、110MHzなら4.4GHz動作になるので設定の際は注意してください。
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ASRock X399 Taichiでベースクロック(BCLK)を変更する場合は「Overclock Mode」を手動(Manual)に変更すると、「APU/PCIE Frequency」という設定値名でベースクロックの設定欄が表示されます。100~200MHzの範囲内、1MHz刻みでベースクロックを変更可能です。
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ASRock X399 TaichiではAMD CPUのマルチスレッディング機能である「SMT: サイマルテイニアス マルチスレッディング(Simultaneous multithreading)」の有効・無効をBIOS上から設定可能です。
ASRock X399 Taichi_BIOS_OC_4


続いてコア電圧の調整を行います。
ASRock X399 TaichiではOCツールの項目で下にスクロールしていくと、各種電圧設定項目が表示されますが、AMD Ryzen Threadripper CPUの手動OCに関連する電圧設定については基本的に「CPU Core電圧」「CPU SOC電圧」「DRAM電圧」の3項目のみに注目すればOKです。
ASRock X399 Taichi_BIOS_OC_5

CPUコアクロックのOCに関連する電圧設定としては、ASRock X399 Taichiでは「CPU Frequency」のすぐ下にある「CPU Voltage」の項目を変更します。電圧設定の箇所にもコア電圧の項目がありますが、そちらは自動のままで放置してOKです。
ASRock X399 Taichiではマニュアルの設定値を指定して入力する固定モードのみが使用できます。AMD Ryzen Threadripper CPUのコア電圧は0.00625V刻みでコア電圧の設定が可能です。電圧設定の目安としては1950Xの場合、全コア4.0GHzで1.300~1.400V程度となります。
ASRock X399 Taichi_BIOS_OC_6
CPUコア電圧モードについて簡単に説明すると、オフセットモードやアダプティブモードはCPU負荷に比例して電圧が設定されており、低負荷時は電圧が下がるので省電力に優れるのですが、OCをする場合はマザーボードによって挙動に差があり安定する設定を見極めるのが難しいので、個人的にはオフセットやアダプティブは定格向け、OCには固定値適用の固定モードを推奨しています。
仮にOCでオフセットやアダプティブを使う場合も最初はコアクロックに対して安定する電圧を見極める必要があるので、まずは固定モードを使用します。
ちなみにマザーボードにより対応しているモードは異なりますが、CPUのオーバークロックに付随するコア電圧のモードの概略図は次のようになっています。
vc

あとデフォルト設定では自動になっている「電圧設定」の「ロードライン・キャリブレーション(負荷時のコア電圧の低下を防ぐ機能)」は添え字が小さくなるほど補正が強くなるのでレベル2~レベル5を選んでください。補正最大のレベル1ではVRM電源温度の発熱が急激に増加するためVRM電源が水冷orLN2極冷の場合のみ使用してください。レベルを上げる(添え字は下がります)ほどCPUやVRM電源の発熱が大きくなりますが、温度についてはサーマルスロットリングの保護機能もありますし、OC時に最も安定しやすいので冷やせる範囲内でレベルを上げておくのが良いと思います。
ASRock X399 Taichi_BIOS_OC_7

あと「ASRock X399 Taichi」では複数のP-State(Custom P-State)の個別設定も可能です。設定項目は若干わかりにくい場所にに配置されており、トップメニュータブのOCツールの「CPU Frequency and Voltage Change」の項目を「手動」にした状態で、トップメニュータブのアドバンスドから「AMD CBS」、「Zen Common Options」「Custom Pstates / Throttling」と順番に下っていくことでアクセスできます。
ASRock X399 Taichi_BIOS_OC_8
Custom P-Stateでは「P-State X FID」「P-State X DID」「P-State X VID」の3種の設定値を各P-State Xに対して設定します。いずれの設定値も16進数(0~9、A~F)による設定で例えば、3a(16進数)=3*16+10=58(10進数)となります。
各P-State Xに対するコアクロックの設定は次のようになります。
 コアクロック = BCLK(ベースクロック)*FID / DID * 2
つまり「FID / DID * 2」がコアクロックOC一般に言うコア倍率になります。例えば上のスクリーンショットでは「FID:88」「DID:8」なので10進数に戻してコア倍率を計算すると、34.00となりBCLK:100MHzに乗じて3400MHz動作となります。「Custom P-States X」の下にある「Frequency(MHz)」の横のテキストボックスにも3400と表示されています。似たようなコア倍率に対して「Core FID」と「Core DID」の組み合わせが複数存在する可能性がありますが、この組み合わせによるOC安定性に関する違いまではわからないので、そのあたりは各自で詰めてみてください。
各P-State Xに対するコア電圧は「P-State X VID」によって決まっており、同様に16進数による設定値入力で、0~FFの範囲内で設定可能です。「P-State X VID」の設定値に対してコア電圧は次のようになります。
 コア電圧 = 1.55000V - 0.00625 * VID
例えばVID:3a(16進数)=58(10進数)の場合はコア電圧は1.18750Vとなります。
以上のような流れで最大コアクロックをP-State 0として順番に下がるように設定していきます。



メモリのオーバークロックについても簡単に紹介だけしておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。

なおAMD Ryzen Threadripper環境ではメモリのオーバークロックに伴って、コアクロックOC時のコア電圧の要求値が上がるので注意してください。一例として1950XとASRock X399 Taichiの組み合わせで全コア4.0GHzのOCに関して、メモリ周波数2133MHzでは1.275Vで回った石でもメモリ周波数3466MHzにOCすると1.320V程度が安定動作に要求されました。

メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、「ASRock X399 Taichi」では正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動で2133MHzのような緩い設定で再起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。



メモリOCで有名なXMPプロファイルはIntelの策定した規格なのでAMD CPU&マザーボードの環境では非対応ですが、ASRock X399 TaichiではXMPプロファイルの項目が表示されており、おそらくXMPプロファイルから適当なOCプロファイルを自動生成しているものと思われます。
ASRock X399 Taichi_BIOS_OC_9

ASRock X399 TaichiのBIOS:1.30においてはメモリ周波数・タイミングの手動オーバークロックを行う設定項目の場所は少々わかりにくいところにあります。
設定項目にはトップメニュータブ「アドバンスド」から「AMD CBS」、「UMC Common Options」、「DRAM Timing Configuration」の順番に下っていくとアクセスできます。ここで「Overclock」の項目を「Enabled」に設定すると各種メモリOC設定項目が表示されます。
ASRock X399 Taichi_BIOS_OC_10
メモリ周波数は「Memory Clock Speed」の項目から選択します。一般的な表記の半分の数値がプルダウンメニューから表示されるので、例えば3200MHzに設定したい場合は1600MHzを選択してください。メモリ周波数もBCLKに対する倍率で決まりますが、BCLK100MHzに対してBIOS:P1.30では最大40倍(4000MHz)まで設定可能です。
ASRock X399 Taichi_BIOS_OC_11

「ASRock X399 Taichi」ではメモリタイミングの個別手動設定も可能です。
メモリタイミングを手動で設定する場合は基本的には「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS Read (tRCDrd)」、「RAS to CAS Write (tRCDwr)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な5タイミングと、加えて「Command Rate:1 or 2」の6つ以外はAutoのままでいいと思います。
「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS Read (tRCDrd)」、「RAS to CAS Write (tRCDwr)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」のの5つについてはメモリ周波数の設定項目の下に配置された項目から設定可能です。
ASRock X399 Taichi_BIOS_OC_12
タイミングの設定値はいずれも16進数(0~9、A~F)による設定になっています。
例えば、2a(16進数) = 2*16+10 = 42(10進数) となります。

ASRock X399 Taichi_BIOS_OC_13
「Command Rate:1 or 2」の設定場所はメモリ周波数や主要タイミングとは少し違うところにあって、トップメニュータブ「アドバンスド」から「AMD CBS」、「UMC Common Options」、「DRAM Controller Configuration」の順番に下っていくとアクセスできます。
またその下にある「GearDownMode」をEnabledに設定すると、メモリ周波数を3200MHz以上にOCする場合は動作が安定するかもしれないので、Autoで上手くいかない場合は設定を変更してみてください。
ASRock X399 Taichi_BIOS_OC_16
メモリタイミングの下の方にある「ProcODT」という設定値がAutoのままではPOSTがクリアできない場合があります。AutoでPOSTをクリアできない、もしくは起動後に安定しない場合は「ProcODT」を43.6~68.6の間で固定して安定するものを探してみてください
ASRock X399 Taichi_BIOS_OC_15

DDR4メモリの周波数OCを行う際はトップメニュータブ「OCツール」で下の方にスクロールしていくと出てくる「DRAM電圧AB/CD」の項目を、3000MHz以上にOCする場合は1.300~1.350V、3500MHz以上にOCする場合は1.370~1.400Vに上げる必要があります。メモリをOCする場合は最初から1.350V以上にDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。
ASRock X399 Taichi_BIOS_OC_17
加えてAMD Ryzen Threadripper CPUでメモリの動作クロックをOCする場合はDRAM電圧だけでなく「CPU SOC電圧(CPU NB電圧)」も1.100V程度に盛ってやると動作が安定しやすいようです。
ASRock X399 Taichi_BIOS_OC_18



ASRock X399 Taichiの動作検証・OC耐性

BIOS周りの管理人的に気になるところの紹介はこのあたりにしてASRock X399 Taichiを使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。

まずはFast Bootとフルスクリーンロゴを無効(BIOS設定)にしてOSの起動時間を測定したところ、ASRock X399 Taichiの起動時間は24秒ほどした。多機能なエンスー向けマザーボードの起動時間としてはPOST時間も長すぎることはなく良好な結果だと思います。



続いてASRock X399 Taichiを使用した場合のCPUとメモリのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。


Ryzen Threadripper 1950XのOC設定は「CPUクロック:4000MHz」「CPUコア電圧:1.31875V」「CPUロードラインキャリブレーション: レベル2」「VDDCR_SOC電圧:1.100V」「VDDCR_SOC ロードラインキャリブレーション: レベル2」「メモリ周波数:3466MHz」「メモリ電圧:1.400V」「メモリタイミング:18-19-19-40-CR1」としています。
ASRock X399 Taichi_BIOS_OC_test_1ASRock X399 Taichi_BIOS_OC_test_2ASRock X399 Taichi_BIOS_OC_test_3

上の設定を適用したところ問題なくOSを起動させることができました。
ASRock X399 Taichi_OC test_1
ASRock X399 Taichi_OC test_2

ASRock X399 Taichiの環境(BIOS:P.130)でメモリ周波数を3466MHzにOCしてメモリタイミング:18-19-19-40-CR1に詰めることができました。
ASRock X399 Taichi_OC test_aida64

16コア32スレッド「AMD Ryzen Threadripper 1950X」のコアクロック4.0GHz、メモリ周波数3466MHz、メモリタイミング18-19-19-40-CR1でCinebenchも問題なくクリアできました。
ASRock X399 Taichi_OC test_cine

続いてこのOC設定を使用してストレステストを実行しました。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はThreadripper 1950Xの場合10分ほどなので同じ動画のエンコードを2つ並列して2周実行しています。テスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
AMD Ryzen Threadripper_stress

ストレステスト中のCPU温度とCPU使用率のログは次のようになりました。マザーボードにASRock X399 Taichiを使用して「AMD Ryzen Threadripper 1950X」のコアクロック4.0GHz、メモリ周波数3466MHzにOCしてストレステストをクリアできました。CPUクーラーのファン回転数は1500RPMで固定しています。
ASRock X399 Taichi_OC test_stress_temp

スマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE」を使用してASRock X399 TaichiのVRM電源温度をチェックしてみました。
まずは同マザーボードにおいてAMD Ryzen Threadripper 1950Xをデフォルト設定で負荷をかけてからVRM電源温度を測定してみました。定格では180W制限下で動作するため平均して全コア3.5~3.6GHz程度での動作となります。
AMD Ryzen Threadripper 1950X def clock
デフォルト設定の動作でもEPS端子経由の消費電力は180W程度に達するので、簡易水冷CPUクーラーでVRM電源周りに風が直接当たらない場合、VRM電源温度は高温部分で70度半ばに達します。ソフトウェア読みでも70度半ばでした。破損に繋がるレベルの温度ではありませんが定格運用であっても可能であればスポットクーラーなどでVRM電源周りを冷やしたいところです。
ASRock X399 Taichi_FLIR (1)
ASRock X399 Taichi_FLIR (2)

続いてRyzen Threadripper 1950Xを上記のBIOS設定でOCした時の負荷テスト中の温度をチェックしていきます。同マザーボードに限った話ではありませんが、Ryzen Threadripper CPUで12コア以上のモデルをOCする場合はスポットクーラーを使用してVRM電源部分の冷却推奨です。ちなみにASRock X399 Taichi環境でRyzen Threadripper 1950Xを4.0GHz、メモリ3466MHzまでOCするとシステム全体の消費電力が370~400Wに達します。
ASRock X399 Taichi review_09276ASRock X399 Taichi_OC test_power
Ryzen Threadripper 1950Xを全コア4.0GHzにOCしていますがスポットクーラーとして120mmファンを1500RPMで回しているのでサーモグラフィー上ではVRM電源周りの温度は70度前後に収まっていました。ただしソフトウェア読みのVRM電源温度は最大86度に達していたのでRyzen Threadripper 1950Xでコアクロック4.0GHz、メモリ周波数3000MHz以上にOCするのであればVRM電源周りにスポットクーラーの使用を強く推奨します。
ASRock X399 Taichi_FLIR (3)
ASRock X399 Taichi_FLIR (4)



ASRock X399 Taichiのレビューまとめ

最後に「ASRock X399 Taichi」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ
  • ブラック&グレーがメインのクールなデザイン
  • 重量級グラボにも耐えるメタルアーマー採用PCI-Eスロット
  • 16コアRyzen TR 1950X 4.0GHz、メモリクロック3466MHz OCで安定動作
  • 11フェーズVRM電源とEPS端子の左右分離構造
  • 「Hyper BCLK Engine III」で高精度なBCLKの調整が可能
  • 高速NVMe接続のM.2スロットが3基設置されている
  • 高速NVMe接続のU.2端子が1基設置されている (M2_1と排他利用)
  • NVIDIA GTX 10XXシリーズのマルチGPU用のSLI HBブリッジが付属する
悪いところor注意点
  • Ryzen Threadripper 1950X/1920XのOC時はスポットクーラーの併用を推奨
  • VRM電源クーラーの角で手を切りやすいので注意
    簡易水冷CPUクーラーの設置時はドライバーでネジ止め推奨

AMD Ryzen Threadripper CPU対応X399マザーボード「ASRock X399 Taichi」は、ASRockのX399ロンチマザーボード最上位のASRock Fatal1ty X399 Professional Gamingから付加価値的な機能を省きつつも、基本的な機能を手堅く揃えた高コストパフォーマンスなミドルハイX399マザーボードとして仕上がっています。X399マザーボードの全ロンチモデルの中で最安値となっており、マルチスレッド性能で高コストパフォーマンスなRyzen Threadripper CPUと組み合わせることを考えると、基本機能が一取り揃ったASRock X399 Taichiは鉄板と言っても過言ではない一押しの1枚だと思います。

Taichiといえばブラック&ホワイトのコントラストの効いたモノトーンカラーでTaichiの名前通りマザーボード全体で太極図を模したデザインが特徴でしたが、X399 Taichiではホワイトの部分がグレーになっており名前の由来でもある太極図より、その構成要素の歯車が主張するデザインになっています。シンプル寄りなデザインになり万人受けしやすくなってはいるものの、太極図を模したユニークデザインも売りの1つだったはずなのでTaichiファンにとっては残念かもしれません。

ASRock X399 Taichiを使用した検証機では16コア32スレッドのAMD Ryzen Threadripper 1950Xを全コア4.0GHzに、メモリ周波数も3466MHzにオーバークロックして負荷テストをクリアすることができました。
Ryzen Threadripper 1950Xと組み合わせて使用した場合、定格運用ではTDP180Wの制限内で動作するためCPU温度は240サイズ以上の簡易水冷CPUクーラーであればサーマルスロットリングの閾値となる実温度68度、Tctl95度以下での運用も難しくはありません。ただし定格とはいえ消費電力は180WなのでVRM電源温度はサーモ・ソフト読みで70度半ばまで達します。ヒートパイプで連結された大型VRM電源クーラーが採用されていますが、可能であれば定格運用でもスポットクーラーを使用したいところです。
またRyzen Threadripper 1950XのOCについてはEPS端子経由の消費電力も300Wを超えてくるのでスポットクーラーによるVRM電源周りの冷却は必須です。VRM電源周りの発熱自体はありますがスポットクーラーさえ適切に運用すればRyzen TR 1950Xの4.0GHz OCでも最大80度半ばに抑えることができるのでRyzen TR 1950XのOC環境としても十分戦えると思います。

ASRock X399 TaichiのBIOSではクラシカルなUIが採用されており、翻訳が少しおかしいところはあるものの日本語ローカライズもされて、OSインストールのブート設定からオーバークロックまで多方面に使いやすいUIだと思います。管理人個人的にも好みです。


以上、「ASRock X399 Taichi」のレビューでした。
ASRock X399 Taichi








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