Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition


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Radeon R9 Furyシリーズから2年ぶりとなるAMDの次世代ハイエンドGPUであるRadeon RX Vega 64のリファレンス水冷限定モデル「Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition」をレビューします。
NVIDIAから昨年”New King”の名でGTX 1080が投入されて以来、PC向けハイエンドGPU市場はNVIDIAに独占される形になってしまっていましたが、AMDの最新ハイエンドGPUであるRX Vega 64を極限までOCした限定水冷モデル「Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition」がNVIDIAの築き上げたハイエンドGPUの牙城にどこまで食い込むことができるのか徹底検証していきます。

Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition review_01071



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Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition レビュー目次


1.Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionの外観
2.Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionの検証機材セットアップ
3.Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionのゲーム性能
4.Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionの温度・消費電力
5.倍速補完機能「AMD Fluid Motion」の効果と使い方
6.Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionのレビューまとめ



Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionの外観

早速、Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionを開封していきます。
簡易水冷GPUクーラーを採用する「Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition」のパッケージサイズは空冷モデルと比較して2倍以上と非常に巨大です。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition review_01072Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition review_01073
キャラメルボックス型の外スリーブから取り出した茶色段ボールの内パッケージを開くとスポンジスペーサー&静電防止ビニールという一般的な梱包でグラフィックボード本体が鎮座していました。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition review_01074
グラフィックボード本体と水冷ラジエーターは傷防止のビニールで保護されています。グラフィックボード以外の付属品は簡易マニュアルやラジエーター固定用のネジセットです。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition review_01076Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition review_01075
ラジエーター固定ネジの規格はUNC No.6-32でした。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition review_01092

梱包や付属品のチェックは簡単に済ませて、グラフィックボード本体を見ていきます。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition review_01099
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionは標準リファレンスモデル同様に全長267mm程度です。競合製品となるNVIDIA GeForce GTX 1080のリファレンスモデルであるFounders Editionと同じボード長となっています。
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Radeon RX Vega 64の標準リファレンスモデルはAMDのミドル帯GPUであるRX 480のリファレンスボードと同じくブラック外装となっています。
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Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled EditionはGPUやグラフィックボード基板など基本的な部分は標準リファレンスモデルと全く同じですが、ヘアライン仕上げのシルバーアルミニウム外装となる限定の簡易水冷GPUクーラーが搭載されているところが最大の違いです。シンプルならが洗練された高級感を感じるデザインとなっています。
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GTX 10XXシリーズのリファレンスモデルはポリゴンを模したダイヤモンドカットのGPUクーラー外装が前衛的でしたが、Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionはシンプルにカッコよく、それでいてGPUクーラー側面のRADEONの刻印、正面のVegaロゴマーク、右端のRキューブがRX Vegaとしてのオリジナリティーも主張しています。
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Radeon RX Vega 64のリファレンス水冷モデルとなるLiquid Cooled Editionは2スロット占有グラフィックボードとなっています。
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Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionはグラフィックボード基板自体は空冷リファレンスと同じですが、GPUクーラー側面の高さが空冷リファレンスよりも若干高くなっています。
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Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionは限定モデルの位置付けですが、GPUクーラー&バックプレートが専用のものである以外はリファレンス空冷モデルと同等なので、補助電源数も8PIN*2となっています。
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Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionは限定モデルとはいえAMDのリファレンスモデルなので販売ベンダーによらずグラフィックボード自体は共通となりますが、今回購入したPowerColorの箱詰め品についてはPCI-E端子に保護カバーが装着されていました。
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Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionのビデオ出力はHDMI2.0×1、DisplayPort1.4×3の4基が実装されています。
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「Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition」はその名の通り簡易水冷GPUクーラーが標準搭載されたRadeon RX Vega 64グラフィックボードです。
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水冷ラジエーターには標準的な120mmサイズが採用されています。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition review_01090Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition review_01091
ラジエーターの面積は汎用性の高い120サイズですが、厚さは標準的な30mm厚よりも10mm程厚い40mm厚で標準冷却ファンを含めて65mm程となっています。55mm厚ではないので注意してください。
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水冷チューブの長さは550mm程度と若干長めになっています。
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「Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition」の水冷チューブは細くしなやかで、引っかかり防止のスリーブも装着されているのでMini-ITXサイズのPCケースにも組み込める可能性があります。
Lian Li PC-Q38 review_00782Lian Li PC-Q38 review_00784

Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionにはオリジナルイラストのプリントされたアルミニウム製バックプレートが装着されています。GPUクーラー本体同様にシルバーのヘアライン表面加工が施され高級感のある面持ちです。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition review_01080
補助電源部分にはGPUの負荷状況を示すLEDインジケーターである「GPU Tach」が並んでいます。「GPU Tach」については左上に実装された小型スイッチによってLED発光カラーを赤と青、また発光の有無自体も設定可能です。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition review_01096
PCIブラケット付近にはBIOS切り替え用のスライドスイッチが設置されています。PCIブラケット側にスライドされている標準状態がプライマリBIOS、逆側はセカンダリBIOSとなっています。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition review_01095
デュアルBIOSについてはGPU性能や静穏化に関わる消費電力制限(パワーリミット)に影響します。プライマリは標準パフォーマンス、セカンダリは省電力で静穏重視なプロファイルとなっています。
Power Profile

なおグラフィックボードの重量はGTX 1080 Ti Founders Editionが1056gに対してRadeon RX Vega 64 Limited Editionも同等の1046gですが、水冷版のRadeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionは水冷ラジエーターを除いて1301gと若干重量が大きくなっています。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition review_01102Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition review_01103ZOTAC GTX 1080 Ti Mini review_06107
バックプレート等で基板の反りは防止されていますが、PCI-Eスロットへの負荷を考えるとVGAサポートステイなどで垂れ下がりを防止したほうがいいかもしれません。




Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionの検証機材

外観やハードのチェックはこのあたりにして早速、Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionを検証用の機材に組み込みました。テストベンチ機の構成は次のようになっています。
テストベンチ機の構成

ベンチ機1
ベンチ機1
ベンチ機2
ベンチ機2
OS Windows10 Home 64bit

CPU

Core i7 7700K
Core/Cache:5.0/4.8GHz, 1.300V
殻割り&クマメタル化(レビュー
Core i7 7700K
レビュー
M/B ASRock Z270 SuperCarrier
レビュー)(BIOS:1, 2
ASUS ROG
MAXIMUS IX FORMULA
レビュー
メインメモリ Corsair Dominator Platinum
Special Edition
DDR4 8GB*4=32GB (レビュー
3200MHz, 14-16-16-36-CR2
G.Skill Trident Z
DDR4 8GB*4=32GB
レビュー
システムストレージ
【システム】
Crucial MX300 SATA M.2 SSD 1TBCT1050MX300SSD4
【ゲームデータ】
SanDisk SSD Ultra 3D SATA SSD
SDSSDH3-2T00-J25 (レビュー
Intel SSD 540シリーズ
SATA M.2 SSD 240GB
電源ユニット
Corsair HX1200i
レビュー
Thermaltake Toughpower
iRGB PLUS 1250W Titanium
レビュー
PCケース/
ベンチ板
STREACOM BC1 (レビュー
Cooler Master
MASTERCASE MAKER 5t
レビュー
NZXT Aer F 140 3基(レビュー

DSC02974
DSC02973


GPU-Z上ではGPUクロックは1750MHzと表示されていますが、Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionの仕様値としてはベースクロック1406MHz、ブーストクロック1677MHzとなっています。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_gpu-z (1)
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_gpu-z (2)


RX Vega 56とRX Vega 64の空冷リファレンスモデルではコアクロックに関して最大の状態であるステータス7のコア電圧はどちらも1200mVでしたが、Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionではさらに高い1250mVまで昇圧されてコアクロックも最大1752MHzまでOCされていることがわかります。
RX Vega 64 Liquid_clock_c
RX Vega 56_clock_cRX Vega 64_clock_c
一方でメモリクロックに関してはRadeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionではメモリ周波数945MHzに対してメモリ電圧が950mVでした。RX Vega 64 空冷リファレンスはメモリ周波数945MHzに対してメモリ電圧が1100mV、RX Vega 56はメモリ周波数800MHzに対してメモリ電圧が950mVなので、RX VegaはHBM2のOC耐性別で選別されているのかもしれません。
RX Vega 64 Liquid_clock_m
RX Vega 56_clock_mRX Vega 64_clock_m

Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled EditionではスライドスイッチによるBIOS切り替えに加えて、Radeon設定-グローバルWattManのパフォーマンスプロファイルから「Power Save」「Balanced」「Turbo」の3つモードを選択できます。
1512312652
下のテーブルのようにBIOSスイッチとパフォーマンスプロファイルの組み合わせて計6種のパワーモードを選択することが可能です。なおパフォーマンスプロファイルによる電力制御はWattManやAfterBurnerによるパワーリミットのスライダー設定と同じ動作でした。
Power Profile



Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionのゲーム性能

Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionの性能を測るべく各種ベンチマークを実行しました。Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled EditionはBIOSスイッチとパフォーマンスプロファイルで電力制限モードを変更できますが、今回のゲーム性能検証ではプライマリBIOSとBalancedの標準設定を使用しています。性能比較には「EVGA GTX 1080 SC2 Gaming iCX」、「Radeon RX Vega 64 Limited Edition」、「EVGA GTX 1070 SC Gaming ACX3.0」を使用しています。
比較サンプル_GTX 1080 EVGA SC比較サンプル_RX Vega 64 LE比較サンプル_GTX 1070 EVGA SC


まずFFXIV 紅蓮のリベレーター ベンチマークのフルHD・最高品質のスコアは同検証環境で17000程度となりました。Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled EditionであればFFXIV 紅蓮 リベレーターに余裕で対応可能なグラフィック性能があります。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_ff14
なおFF14ベンチではスコアが1万を超えたあたりからFPSが上がりすぎてCPUベンチの傾向が強くなりグラフィックボードの性能比較ベンチとしてはあまり使えなくなってくるので注意してください。FFXIV 紅蓮のリベレーターに最適なグラフィックボードやCPUなどPCスペックについては次の記事でも紹介しています。
FFXIV 紅蓮のリベレーターにおすすめなグラボやPCは?
FFXIV 紅蓮のリベレーターにおすすめなグラボやPCは? 新ベンチマークで17年最新グラフィックボードやCPUを徹底比較


3DMarkで現在主流なDirectX11のベンチマーク「FireStrike」による比較になります。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_bench_fs

FireStrike Extreme Ultra
RX Vega 64 Liquid
(BIOS1, BL)
23020 11029 5605
RX Vega 64 LE
(BIOS1, BL)
22430 10684 5306
GTX 1080 11Gbps 22833 10880 5467
GTX 1070
18292 8599 4262

3DMarkの最新DirectX12ベンチマーク「TimeSpy」による性能比較となります。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_bench_ts

TimeSpy Asyncなし 性能伸び率
RX Vega 64 Liquid
(BIOS1, BL)
7376 6905 107%
RX Vega 64 LE
(BIOS1, BL)
6905 6688 106%
GTX 1080 11Gbps 7678 7296 105%
GTX 1070 5968 5735 104%


続いて実ゲームを用いたベンチマークになります。解像度はフルHD、WQHD、4K(3840*2160)の3種類について行っており、同一のグラフィック設定で同一のシーンについて平均FPSを比較しました。 

ベンチマーク測定を行ったタイトルは、Battlefield 1(最高設定プリセット)、Destiny2(最高設定プリセット)、The Divisionグラフィック設定)、For Honor(超高設定プリセット)、Ghost Recon Wildlandsグラフィック設定)、Mirrors Edge Catalyst(ハイパー設定プリセット)、Rise of the Tomb Raiderグラフィック設定)、Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)、Titanfall 2グラフィック設定)、WatchDogs_2(最高設定プリセット)、The Witcher3グラフィック設定)、Gears of War 4(最高設定プリセット)以上の12タイトルです。


Battlefield 1(最高設定プリセット)のベンチマーク結果です。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_game_bf1

Destiny2(最高設定プリセット)のベンチマーク結果です。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_game_des2

The Divisionグラフィック設定)のベンチマーク結果です。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_game_div

For Honor(超高設定プリセット)のベンチマーク結果です。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_game_fhv

Ghost Recon Wildlandsグラフィック設定)のベンチマーク結果です。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_game_gr

Mirrors Edge Catalyst(ハイパー設定プリセット)のベンチマーク結果です。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_game_mec

Rise of the Tomb Raiderグラフィック設定)のベンチマーク結果です。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_game_rottr

Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)のベンチマーク結果です。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_game_sow

Titanfall 2グラフィック設定)のベンチマーク結果です。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_game_tf2

WatchDogs_2(最高設定プリセット)のベンチマーク結果です。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_game_wd2

The Witcher3グラフィック設定)のベンチマーク結果です。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_game_wit3

Gears of War 4(最高設定プリセット)のベンチマーク結果です。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_game_xgow4


Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition、Radeon RX Vega 64 Limited Edition、GTX 1080 11Gbps OC、GTX 1070 OCの4種類について実ゲーム性能の比率の平均を出したところ、Radeon RX Vega 64はGTX 1070よりも20%以上高速という結果になりました。ゲームごとに得手不得手があり今回の比較に使用した12種のゲームによる性能比率では5%ほどGTX 1080の方が高い性能になっていますが、Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled EditionはGTX 1080競合と見なしていいパフォーマンスを発揮しています。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_pefsum



Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionの温度・消費電力

Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionoの負荷時のGPU温度とファンノイズを検証しました
温度とファンノイズの検証負荷としてはFireStrike Extreme ストレステストを使用しました。プライマリBIOSにおけるパフォーマンスプロファイルのBalancedとPowerSaveの2つについて同じ測定を行ってGPU温度とメモリ温度とファン回転数を比較しました。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled EditionではGPUコア温度のターゲット温度が空冷リファレンスよりも低い65度に設定されていますが、標準パフォーマンスプロファイルのBalancedだけでなくTurboでもターゲット温度以下の60度程度に収まりました。流石に簡易水冷GPUクーラーは良く冷えます。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_temp
なおRadeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionでモニタリング可能なのはファン回転数ではなくポンプ回転数のようです。ポンプとファンの速度調整デューティ比は一致しているようなのでグラフ中のポンプ回転数同様にファン回転数はテスト序盤で一度最大値をマークしますが、最終的には十分低い値に収束します。正確なファン回転数は不明ですが、後ほどサウンドレベルメーターによる検証でファンノイズの大きさを直接比較していきます。

Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled EditionのGPUコア動作クロックは仕様値ではベースクロック1406MHz、ブーストクロック1677MHzと表記されていますが、実際はBIOSスイッチやパフォーマンスプロファイルの組み合わせで電力制限がかかって動作クロックは逐次変動します。
各電力モードについて動作クロックをモニタリングしたところ次のようになりました。標準動作のプライマリBIOS&Balancedの場合は平均して1400MHz程度で動作します。プライマリBIOS&Turboに設定すると最大で1600MHz程度で動作します。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_clock_2
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled EditionとRX Vega 64の空冷リファレンスモデルについてコアクロックを比較すると標準設定となるプライマリBIOS&Balancedでは平均コアクロックには100MHz程度の差がありました。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_clock_1



【ベンチ機2に入れた実用負荷テストは後日更新します】


Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionを含めていくつかのグラフィックボードについてサウンドレベルメーターを利用してゲーム負荷時のノイズレベルを測定・比較しました。ノイズレベルの測定には「サンワダイレクト 400-TST901A」を使用しています。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition review_02999
電源OFF時の騒音値は33~35dBです。目安として40dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになり、45dB前後で煩く感じます。50dBを超えてくるとヘッドホンをしていても煩く感じます。同じ騒音値でも不快に感じたり感じなかったりと音の性質にもよるので注意してください。

ノイズレベルの測定結果は次のようになっています。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled EditionのファンノイズはBalancedの収束値では34.8dBとなり無音状態にほぼ近いサウンドレベルでした。パフォーマンスとともに発熱がさらに大きくなるTurboモードでも収束値で37dB、今回の検証においてファンノイズが最も大きくなるTurboのピーク値であってもファンノイズは40dB程度という抜群の静音性を発揮しました。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_noise


Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionの消費電力と瞬間的な最大電源負荷を測定しました。
測定には電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの出力ではなく変換ロスを差し引いた入力電力をチェックしています。また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。右下スクリーンショットのように、この状態でCPUに負荷をかけても測定値が変動しないのでCPUによる消費電力の変動は基本的に含まれないと考えて大丈夫です。
GPU_Power_1CPU_Power_2
測定負荷にFireStrike Extreme ストレステストを使用して、”平均値を消費電力”、”最大値を瞬間的な最大電源負荷”としたところ、測定結果は次のようになりました。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_power_1
同検証環境に置いてRadeon RX Vega 64 Liquid Cooled EditionのプライマリBIOS&Balancedにおける消費電力は381W、瞬間最大負荷は514Wとなりました。競合モデルのGTX 1080はもとよりその上位モデルのGTX 1080 TiのOCモデルと比較してもさらに大きく上回る消費電力となっており、上で行ったゲームパフォーマンスの比較も考えるとワットパフォーマンスはやはり厳しいものがあります。
簡易水冷GPUクーラーの性能が十分高いのでGPU温度やファンノイズへの発熱による影響はないものの、Balancedのピーク値である瞬間負荷500Wとなると電流値では40Aを超えるのでマルチレーンなどで電流の容量が小さい電源ユニットの場合は負荷時に電源が落ちる可能性もあり、800~1000W級の電源ユニットが必要になるため導入のハードル自体が上がってしまうという問題もあります。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionの電力モード別の消費電力は次のようになっています。パフォーマンスプロファイルをPowerSaveにすればRX Vega 64の空冷リファレンス程度の消費電力に押さえることもできるので各自の環境に合わせてパワーリミットの調整をしたいところです。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_power_2

なお電力モード別で消費電力やコアクロックなど各数値について比較すると下のテーブルのようになりました。測定負荷にはFireStrikeExtremeストレステストを使用して数値は最後の1分間から計算しています。
平均FPSと消費電力からワットパフォーマンスを見るとやはり省電力モードのPowerSaveが優秀です。ただしパフォーマンス自体も空冷リファレンス相当まで下がるので、純粋な性能を取るかワッパを取るかが難しいところだと思います。
RX Vega 64 Liquid BIOS/PM別比較
BIOS1-PM:Balanced BIOS1-PM:Save BIOS1-PM:Turbo BIOS2-PM:Balanced BIOS2-PM:Save
消費電力 390 302 482 337 262
最大温度 61 53 62 57 49
ファン回転数 935 931 1308 934 932
コアクロック 1536 1396 1636 1455 1319
平均FPS 59.0 54.8 61.5 56.9 52.7
ワッパ 100% 120% 84% 112% 133%
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_wp



倍速補完機能「AMD Fluid Motion」の効果と使い方

AMD Radeonグラフィックボード限定で使用可能な動画フレーム倍速補完機能「AMD Fluid Motion」を実際に試してみました。「AMD Fluid Motion」は映画やアニメなどの各種動画で幅広く採用されている24FPSや30FPSの動画を60FPSに補完する機能で、高性能TVに搭載される”倍速機能”と同じことをグラフィックボードで行っています。

サンプルに動画を2つ用意しました。1つ目の動画はわかりにくいですが、Fluid Motionによって若干動画がヌルヌルになっています。


2つ目のように同じような画像が大きくスクロールしていくシーンでは倍速補完の効果は絶大になっています。カクカク感が気にならない動画よりもオリジナルで気になる動画でより効果を発揮するようです。


ちなみにRX 460とi7 6700Kの環境でFluid Motion使用時と非使用時のGPU温度(最大)、GPU使用率(平均)、CPU使用率(平均)は次のようになりました。GPU使用率は大きくなっていますがファンノイズが煩くなるほどGPU温度は上がらないので、GPU性能が比較的低いエントリー帯のRX 560やRX 460でもFluid Motion使用に伴うハード面での弊害は特にないようです。
RX_fm


AMD Fluid Motionの利用には同機能に対応したビデオ(DVD、BD、動画ファイル)プレイヤーが必要で、市販のソフトウェアで正式に対応しているプレーヤーは「PowerDVD」となっています。

ただし市販品でなくても「Media Player Classic - Homecinema(以下、MPC HC)」というフリーソフトの動画プレイヤーと、同じくフリーで公開されているプラグイン等を使用することでAMD Fluid Motionを利用可能なので実際に試してみました。
AMD Fluid Motionを使うのに必要なフリーソフトは「Media Player Classic - Homecinema」、「Bluesky Frame Rate Converter」の2つになります。各ソフトをリンク先からダウンロードしてください。管理人はMPC HCは圧縮ファイル版、「Bluesky Frame Rate Converter」はインストール版を使用しました。

各種ソフトのインストールや解凍が完了したら、まず「Bluesky Frame Rate Converter」の設定を行います。こちらは次の画像のように各項目が設定されていれば問題ありません。(後ほどもしも動画が60FPS化されない場合は「AFMサポートを初期化する」を選んで再起動すると正常に動作するかも)
Fluid Motionの使い方 (1)
続いて「MPC HC」の設定を行います。メニューの表示から最下部にあるオプションを選択します。
Fluid Motionの使い方 (2)
オプション画面が表示されるので、左側メニューから「外部フィルタ」を選択して、右側のフィルタ追加を選び,、リストから「Bluesky Frame Rate Converter」を登録します。
Fluid Motionの使い方 (3)
追加した後は「フィルタを追加」の下の部分で「優先する」選択してください。
Fluid Motionの使い方 (4)
最後にRadeon設定から「AMD Fluid Motion」を有効化すれば設定完了です。
Fluid Motionの使い方 (5)
AMD Fluid Motionを利用する準備は完了です。「MPC HC」で動画ファイルやDVD、BDを再生すると60FPS化されると思います。60FPS化の確認には「MPC HC」メニューの「表示-統計情報」でボトムに詳細情報が各種表示できてフレームレートも書かれているのでここで確認可能です。
Fluid Motionの使い方 (6)

60FPS化が上手くいかない場合はMPC HCを再起動したり、上で書いたように「Bluesky Frame Rate Converter」から「AFMサポートを初期化する」を選んで再起動すると正常に動作するかもしれないので試してみてください。
あと動画ファイルについては対応できるものとできないものがあるようで管理人が試しただけでもFraps取ったaviファイルが60FPS化できず、そのファイルを「つんでれんこ」というソフトでエンコードしたファイルは24FPS化できました。

AMD Fluid Motionによる倍速補完機能自体は非常に有用だと思うのですが、使用準備がやや面倒だったりと若干ハードルが高いのでAMDにはぜひ純正のAMD Fluid Motion対応プレーヤーを公開してもらいたいです。


Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition レビューまとめ

最後にAMDが送る次世代ハイエンドGPU Radeon RX Vega 64の限定リファレンスモデル「Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionを検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ
  • 最新PCゲームをフルHD最高設定やWQHD高画質設定でプレイ可能なグラフィック性能
  • 競合他社製品のGTX 1080のOCモデルと並ぶ性能
  • Liquid Cooled Edition限定のヘアラインアルミなシルバーのGPUクーラーがカッコいい
  • 簡易水冷GPUクーラーなので冷却性能と静音性が抜群に優れている
  • 倍速補完機能「AMD Fluid Motion」に対応
悪いところor注意点
  • GTX 1080 TiのOCモデルよりも消費電力が大きい
  • 極度な流通不足で入手困難


AMDのゲーマー向けGPU"Radeon RX"シリーズの次世代ハイエンドモデルRadeon RX Vega 64は、高帯域な次世代メモリHBM2を採用しており、発売前は一部ではGTX 1080 Ti越えが囁かれるなど非常に期待が大きかったものの、極限近くまでOCされた「Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition」に17年末の大型アップデートが施された最新ドライバ「AMD Radeon Adrenalin Edition 17.12.1」を適用して、競合NVIDIAのミドルハイGPUであるGTX 1080と同等のパフォーマンスとなりました。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition_pefsum
しかしながら競合NVIDIAのナンバリング最上位GTX 1080 Tiの性能には及ばず、消費電力はGTX 1080 TiのOCモデルを大幅に超える結果になっており、同社のフラッグシップを飾るGPUであることを考えるとやはり物足りなさを感じざるを得ません。980Ti競合なら無双できたかもしれないのに……
動画の倍速補完機能「AMD Fluid Motion」や低負荷なプレイ動画の録画・配信機能「ReLive」などソフトウェア周りは充実しており、ハード面でもアダプティブシンク機能「AMD FreeSync」に対応した液晶モニタはG-Sync対応製品よりも安価かつ多数モデルが流通しているので、そういった部分も含めて考えれば多少価値を見出せなくもありません。

RX Vega 64の弱点の一つである消費電力の大きさゆえのGPU温度の高さやファンノイズの煩さはRadeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionに搭載されているオリジナル簡易水冷GPUクーラーの性能でカバーできており、最も消費電力が大きくなるTurboモードでもGPU温度は60度程度に収まり、ファンノイズも抜群に小さくなっています。ファクトリーOCが施されているので空冷リファレンスよりもさらに消費電力が大きいため電源ユニットへの要求も高いですがパワーリミットの調整で消費電力については緩和することも可能なので、RX Vega 64を狙い撃ちで選択するユーザーにとって、管理人的には「Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition」が一番オススメだと思います。

あとはやはり価格でしょうか。RX Vega 64の水冷モデルは国内相場が9万円前後とGTX 1080 TiのAIBモデルに手を伸ばせるお値段なのがつらいです。RX Vega 64を決め打ちで購入しようと思っているユーザーでないとなかなか手を伸ばしにくいかと。しかもマイニング需要でゲーマーとは別の方向に売れているので極度な品薄も重なっています。あと残念ながらLiquid Cooled Editionについては17年12月現在すでに終売との情報もあります……。

RX Vega 64やRX Vega 56の空冷リファレンスモデルを使用しているユーザーで手軽に水冷グラボを使用したいのであれば、EKWBが12月にロンチしたモジュラー型水冷キット「EK-MLC Phoenix」(参考記事)がおすすめです。120/140/240/280/360サイズなど複数のラジエーターコアユニットがラインナップされており、コアユニットとGPU水冷ブロックにはクーラントもプリフィルドされているので水冷未経験でも導入は容易だと思います。
EK-MLC Phoenix GPU Module FC Radeon Vega - Acetal+Nickelmlc_radiator_140_noshadow_2
導入のイメージとしては旧モデルのEK-XLC Predatorと社外製QDを使用した利用例を紹介しているので参考にしてみてください。
【できる!水冷グラボ】 EK-XLC PredatorとKoolance製QDで簡単導入
e47ac92a



以上、Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Editionのレビューでした。
Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition




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