Intel Core i9 10900K


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Intel第10世代Comet Lake-Sシリーズから、10コア20スレッドで倍率アンロックなOC対応の最上位モデル「Intel Core i9 10900K」をレビューします。Core i9 10900KをIntelの仕様値通りTDP125Wで運用できるのか、さらに前世代最上位モデルのCore i9 9900Kや、コア数で勝る競合製品のRyzen 9 3900X/3950Xと比較して、クリエイティブタスクやPCゲーミングにおいてどれくらい性能を発揮するのか、各種ベンチマーク比較によって徹底検証していきます。
Intel第10世代Comet Lake-Sのレビュー記事一覧へ


製品公式ページ:https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/products/processors/core/i9-processors/i9-10900k.html
Intel 10th-Gen Comet Lake-S_Core i9 10900K





Intel Core i9 10900K レビュー目次


1.Intel Core i9 10900Kの外観・付属品・概要
2.Intel Core i9 10900Kの検証機材・動作設定
3.Intel Core i9 10900Kの動作クロック・消費電力・温度

  Intel Core i9 10900KのOC耐性について

4.Intel Core i9 10900Kの基礎ベンチマーク
5.Intel Core i9 10900Kのクリエイティブ性能

  ・3Dレンダリング性能
  ・動画エンコード性能
  ・RAW現像性能
  ・PCゲーム/スマホアプリのビルド性能
6.Intel Core i9 10900Kのゲーミング性能
  ・4K解像度/60FPSターゲット
  ・フルHD解像度/ハイフレームレート
  ・バトルロイヤル系PCゲーム/240FPSターゲット

7.CPUエンコーダとリアルタイム配信について

8.Intel Core i9 10900Kのレビューまとめ

  ・温度・消費電力について
  ・クリエイティブ性能について
  ・ゲーム性能について
  ・総評 - ゲーマー向け最速は偽りなし


リンク.Intel第10世代Comet Lake-Sのレビュー記事一覧へ


【執筆:2020年5月20日、最終更新:2020年6月7日】


Intel Core i9 10900Kの外観・付属品・概要

「Intel Core i9 10900K」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。またこの章では「Intel Core i9 10900K」の仕様等について簡単に触れておきたい概要もあれば紹介します。
「Intel Core i9 10900K」の製品パッケージは縦長の直方体の一角から面を切り出したユニークな形状の化粧箱が採用されています。
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Core i9 9900KFやRyzen 9 3950Xの製品パッケージとサイズを比較するとこんな感じです。CPUクーラーが付属しない一般的なIntel製CPUのパッケージを一回り大きくしたようなサイズ感になっています。9900Kの12面体パッケージは地味に嵩張って邪魔だったので、 Core i9 10900Kは良い塩梅です。
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「Intel Core i9 10900K」はパッケージの開封手順も独特(構造は簡単)で、外装の蓋を上に引き抜いて、CPU本体が収められたスペーサーを横から引き出します。
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「Intel Core i9 10900K」などIntel第10世代Comet Lake-SはCPUソケットがIntel LGA1200に更新されていますが、CPUのPCB基板サイズなど基本的な形状は従来とほぼ共通です。
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前世代となる第9世代CoffeeLake Refresh-Sではヒートスプレッダの形状がかなり昔のものに先祖返り?して、CPUクーラーと接する面積が小さくなっていましたが、Core i9 10900KなどIntel第10世代Comet Lake-Sはヒートスプレッダが僅かながら大きくなっているように見受けられます。
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コンマミリ単位で僅かに薄くなっているようにも見えますが、Core i9 10900KとCore i9 9900KのPCB基板の厚みはほぼ同じです。
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重量を比較するとCore i9 10900Kのほうが2g程度重く、ここからもヒートスプレッダの大型化が確認できます。同じ材質なら熱容量はヒートスプレッダの質量にほぼ直結するので、「Intel Core i9 10900K」などIntel第10世代Comet Lake-SではCPUの発熱に対するヒートスプレッダのバッファ性能も高まっているはずです。
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第9世代CoffeeLake Refresh-SではCPUダイの厚みが従来よりも増しており、ダイ研磨によって冷却性能が上がるとプロOCerが検証を行ったり、ダイ研磨の専用ツールが発売されるなど話題になりましたが、Intel第10世代Comet Lake-SではCPUダイを薄くすることで温度が下がっているとアピールされています。TIMは前世代に引き続きソルダリング寄りな性能のSTIMが採用されているとのことなので、やはり殻割りクマメタル化が捗りそうです。
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Core i9 10900Kの殻割りクマメタル化&銅製IHSの冷却性能を検証
ROCKIT COOL 10th Gen Copper Upgrade kit


「Intel Core i9 10900K」は10コア20スレッドのCPUで、ベースクロックは3.7GHz、最大シングルブーストクロックは5.3GHz、最大全コアブーストクロックは4.9GHzとなっています。倍率アンロックなK付きCPUは従来TDP95Wでしたが、「Intel Core i9 10900K」からTDP125Wへ引き上げられています。
新機能の「Thermal Velocity Boost」はCPU温度を閾値とした追加ブースト機能となっており、CPU温度が一定以下であれば全コア最大動作倍率、TBM3の単コア最大動作倍率の設定値を超えるコアクロックのブーストを可能にし、Core i9 10900Kでは最大シングルブーストクロック5.3GHz/最大全コアブーストクロック4.9GHzの高速動作を実現します。
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またIntel第10世代Comet Lake-SのCoreシリーズは、Intel製エンスージアスト向けCPUのCore-Xでいち早く採用された「Turbo Boost Max 3.0 Technology」に対応しています。TBM3.0は、CPUダイ上で最も電圧特性の良いコア(CPU個体ごとに異なる)を自動で選別し、非常に高い単コア最大ブーストクロックで動作させ、アクティブタスクへ優先的に割り当ててくれる機能です。
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「Intel Core i9 10900K」を、前世代最上位のIntel Core i9 9900Kや、競合AMDのメインストリーム向け最上位モデルであるRyzen 9 3950XやRyzen 9 3900Xと比較すると次のようになっています。
Intel Core i9 10900K スペック簡易比較

Core i9 10900K
Core i9 9900K Ryzen 9 3950X
Ryzen 9 3900X
コアスレッド 10コア20スレッド 8コア16スレッド 16コア32スレッド 12コア24スレッド
ベースクロック 3.7GHz 3.6GHz 3.5GHz 3.8GHz
全コア最大ブースト 4.9GHz 4.7GHz ~4.3GHz ~4.3GHz
単コア最大ブースト 5.3GHz 5.0GHz 4.7GHz 4.6GHz
オーバークロック
O
L3キャッシュ 20MB 16MB 64MB 64MB
TDP 125W 95W 105W
CPUクーラー X 付属
(Wraith Prism)
iGPU
O X
メモリ ch / pcs
2 / 4
CPU直結PCIEレーン
16 16 + 4
おおよその国内価格
(北米希望小売価格)
7.2万円
(488ドル)
5.8万円
(499ドル)
9.8万円
(749ドル)
6.0万円
(499ドル)

Intel第10世代Comet Lake-Sシリーズでは「Intel Core i9 10900K」などK付きCPUのOC機能についても改良が加えられています。特に大きな改良ポイントとして、従来ではオフセットやアダプティブのような大雑把な調整しか不可能だったV/Fカーブ(動作周波数と動作電圧の関係)を細かく調整できるようになっています。
Intel 10th-Gen Comet Lake-S_XTU_VF Curve_1
現時点では既定の8点の周波数に対して設定されたCPU個体毎のストック電圧に対して、+/-のオフセット電圧を設定できます。Core i9 10900Kの場合は800MHz、2500MHz、3500MHz、4300MHz、4800MHz、5100MHz、5200MHz、5300MHzに対してコア電圧オフセット値を指定できます。
Intel 10th-Gen Comet Lake-S_XTU_VF Curve_2
その他にも、コア単位でハイパースレッディングの有効と無効を切り替えに対応、X299環境では対応済みでしたがPCIEレーンやDMIレーンの動作周波数のOCも可能になっています。Intel公式の詳細OC設定ユーティリティ「Intel Extreme Tuning Utility」や自動OCユーティリティ「Intel Performance Maximizer」も第10世代CPUに合わせてアップデートされています。
Intel 10th-Gen Comet Lake-S_overclocking

Intel第10世代Comet Lake-Sのプラットフォーム関連について、まずCore i9とCore i7は定格メモリ周波数が従来の2666MHzから2933MHzへと引き上げられています。Core i5以下の定格メモリ周波数は2666MHzとなり、Core i5は据え置き、Core i3以下は従来モデルから引き上げという形です。
ネットワーク関連では、CPUにIntel AX201というWiFi6対応無線LANコントローラーがチップセットに統合されています。160MHz幅で通信可能にするGig+にも対応し、最大2400Mbpsで通信可能です。またオプショナルな要素として、Intel製2.5Gb LANコントローラー I225-V(Foxville)やThunderbolt3も増設IOとしてサポートします。
Intel 10th-Gen Comet Lake-S_feature
Intel第10世代Comet Lake-Sの対応マザーボードチップセットは新しい400シリーズチップセットとなり、CPUソケットもLGA1200に変わるので、Z390やH370なと300シリーズチップセットを搭載するLGA1151ソケットの旧世代マザーボードとは非互換です。
400シリーズチップセットには、すでにマザーボード製品が各社から発表されている最上位「Intel Z490」に加えて、安価な「Intel H470」、「Intel B460」、「Intel H410」などもラインナップされています。
Intel_chipset_400

主要4社Z490マザーボードを徹底比較!第10世代Core-Sにイチオシはどれか?
Intel Z490マザーボード比較



Intel Core i9 10900Kの検証機材・動作設定

以下、「Intel Core i9 10900K」の各種検証を行うベンチ機、および比較対象となる各CPUのベンチ機の詳細となります。
Intel LGA1200(Z490)環境 テストベンチ機の構成
CPU Intel Core i9-10900K(レビュー
Intel Core i9-10900(レビュー
Intel Core i7-10700K(レビュー
Intel Core i7-10700F(レビュー
Intel Core i5-10400(レビュー
Intel Core i3-10100(レビュー
マザーボード ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME
 (レビュー
CPUクーラー Fractal Design Celsius S36 (レビュー
Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー
メインメモリ G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK
DDR4 8GB*4=32GB (レビュー
3600MHz, CL16-16-16-36-CR1
ビデオカード(共通) ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core
レビュー
システムストレージ(共通) Samsung 860 PRO 256GB (レビュー
OS(共通) Windows10 Home 64bit
電源ユニット(共通) Corsair HX1200i (レビュー
ベンチ板 STREACOM BC1 (レビュー

Intel LGA1151(Z490) Test Bench

Intel LGA1200(Z490)環境では検証機材マザーボードとして「ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME」を使用しています。「ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME」でCPU動作設定を標準設定のAutoとした場合、同環境で検証する各CPUのBy Core Usage動作倍率は単コア/全コアは仕様通りで、長時間電力制限PL1による電力制限も正常に適用されます。短時間電力制限PL2や短期間電力制限時間Tauについても以下のテーブルで示すIntel公式仕様の通り設定されていました。
Intel第10世代CPUの電力制限仕様値
TDP PL1 PL2 Tau
Core i9 125W 125W 250W 56s
65W 65W 224W 28s
35W 35W 123W 28s
Core i7 125W 125W 229W 56s
65W 65W 224W 28s
35W 35W 123W 28s
Core i5 125W 125W 182W 56s
65W 65W 134W 28s
35W 35W 92W 28s
Core i3 65W 65W 90W 28s
35W 35W 55W 28s

長時間負荷をかけた時のCPU消費電力(CPU Package Power)がTDPの範囲内に収まるCPUについては特に追加の設定を設けていませんが、Core i9-10900Kのように全コア最大動作倍率においてTDPを大きく上回るCPUに関してはBy Core Usage動作倍率は定格のまま、『PL1=TDP、PL2=(テーブルの仕様値)、Tau=56s(125W) or 28s(65W)』のIntel公式仕様および『PL1/PL2無効化』の2つのケースで測定を行います。
「ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME」の場合、By Core Usage動作倍率および電力制限は下記のような形でBIOS上から設定が可能です。
Intel LGA1200(Z490)_TDP_BIOS (1)Intel LGA1200(Z490)_TDP_BIOS (2)
上の設定はASUS製マザーボードのBIOSメニューから設定した例ですが、ASRock、GIGABYTE、MSIなど主要4社のマザーボードであれば同種の設定項目が用意されているはずなので、同じように電力制限を課すことができます。再起動等で初期化されることもあるので、確実性の高いBIOSからの設定が推奨なのですが、「Intel Extreme Tuning Utility」からも設定が可能です。





ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する2020年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Intel Core-XやAMD Ryzen TRのようなハイエンドデスクトップ環境はもちろん、メインストリーム向けでもハイパフォーマンスな環境を目指すのであれば、システムストレージ用に一押しのSSDです。
「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
Samsung SSD 860 PRO 256GB

CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
Intel Core i9 10900K review_09103_DxO


グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。Thermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスで適量が塗布されていれば、CPUクーラー固定時の圧着でヒートスプレッダ全体へ自然に伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
Thermal Grizzly Kryonaut_apprication

サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
「Thermal Grizzly Carbonaut」はCore i9 9900Kを冷やせるか!?
Thermal Grizzly Carbonaut_Core i9 9900K





Intel Core i9 10900Kの動作クロック・消費電力・温度

「Intel Core i9 10900K」に関する検証のはじめに、「Intel Core i9 10900K」の動作クロック、消費電力、温度など同CPUの基本的な動作についてチェックしていきます。

「Intel Core i9 10900K」は10コア20スレッドのCPUであり、定格動作において1コア~10コアまで同時に負荷がかかった時の最大動作倍率はコア数1~10に対して順番に[53, 53, 51, 50, 50, 49, 49, 49, 49, 49]です。全10コアへ同時に負荷がかかっても最大で4.9GHz動作が可能となっています。
Intel Core i9 10900K_CPU-Z
HWiNFOから「Intel Core i9 10900K」のコアクロックの挙動を確認したところ、確かに負荷の軽い場面では最大5.3GHz程度で動作するコアがありました。
Intel Core i9 10900K_Boost-Clock_Single
またIntel第10世代Core-S CPUの製品仕様によると、Intel Core i9 10900Kの電力制限は、「Turbo Boost Power Max(長期間電力制限/Power Limit 1)」が125W(=TDP)、「Turbo Boost Short Power Max(短期間電力制限/Power Limit 2)」が250W、「Turbo Boost Power Time Window(短期間電力制限時間/Tau)」が56sになっているはずです。
Intel Package Power Control
Intel 10th-Gen CometLake-S_Package Turbo Specifications_K-series
「Intel Core i9 10900K」をZ490マザーボード「ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME(BIOS:0302)」と組み合わせてCPU動作をBIOS標準設定とすると、PL1:125W、PL2:250W、Tau:56sの電力制限で動作するので、Cinebenchのような短時間のベンチマークや、Aviult&x264エンコードの最初の1分弱など、全10コアへ同時に大きな負荷がかかった時の動作クロックは全コア4.9GHzに張り付きました。このときCPU Package PowerはTDP=PL1=125Wを大幅に超過し200W~220W程度を示します。
仮にマザーボードの標準設定において電力制限が無効化されている場合、コアクロックは全コア4.9GHzに張り付いて変動せず、負荷開始からTauが経過しても、この消費電力が発生し続けます。
Intel Core i9 10900K_Boost-Clock_multi_PL2
一方で「Intel Core i9 10900K」を仕様通り電力制御(PL1:125W、PL2:250W、Tau:56s)で動作させると、負荷開始からTauで指定される短期間電力制限の期間内ではTDPを大きく上回る消費電力が発生しますが、Tau経過後はTDP(PL1:長時間電力制限)と同じ125WへCPU Package Powerが抑制されます。
「Intel Core i9 10900K」はPL1:125Wの電力制限下において、全コアの実動平均コアクロックは4.3~4.4GHz程度となります。
Intel Core i9 10900K_Boost-Clock_multi_PL1

続いてCPU消費電力の検証結果をチェックしていきますが、当サイトのCPUレビューでは主として”CPU温度への影響要因”という意味においてCPU消費電力を評価しているので、動画のエンコードによって長期間電力制限が効いている状態の平均的な消費電力をCPU消費電力として比較します。
個人的な意見としては短期間電力制限は短期間かつCPU温度によっても制御されるのでCPU温度への影響要因として比重は小さく、また瞬間ピーク電力はせいぜいがTDP+100W程度なので、マザーボードVRM電源の破損を心配するほどではなく、その程度の電力超過は電源ユニットで十分吸収できるので、評価対象としてあまり意味がないと思っています。
またCPU製品仕様のTDPについては、定義がIntel/AMDで厳密には異なり、各社の具体的な測定・算出方法も不明なので、CPU動作クロックを含めて総合的に判断する必要があるものの、基本的には長期間電力制限時の消費電力がTDP仕様値とほぼ一致、もしくはTDP仕様値を下回れば正常であると評価します。
当レビュー記事では簡単のため割愛しますが、CPUの消費電力に関する評価基準の補足として下記の記事も参考にしてください。
2019年最新CPUの消費電力・発熱・TDP・温度について - 爆熱評価のウソほんと
2019年最新CPUの消費電力・発熱・TDP・温度について

CPU消費電力の測定には電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの出力ではなく変換ロスを差し引いた入力電力をチェックしています。
また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子を除いた、各種電源端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。そのため測定値にはEPS電源端子を経由して供給されるCPU消費電力以外の消費電力は含まれません。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。
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Intel Core i9 10900K_power_cl

CPUの消費電力や温度の測定を行う負荷テストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、Aviutl&x264を使って動画のエンコードを行います。動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列実行、16コア以上は3並列実行としています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTやPrimeなど専用負荷ソフトを使用しているレビューもありますが、管理人の私見としてはCPU負荷が非現実的なので、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースを想定した場合、ほぼ最大のCPU負荷となるx264による動画エンコードとストレステストに採用しています。
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「Intel Core i9 10900K」と比較対象の各CPUについて、上記負荷テスト中の”平均値を消費電力”、”最大値を瞬間的な最大電源負荷”と表記した場合、消費電力測定結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ

TDP:125Wの添え字があるケースについては『PL1:125W、PL2:250W、Tau:56s』と電力制限を課しているので当然ですが、「Intel Core i9 10900K」のCPU消費電力は152W程度となりました。電力制限を解除すると全コア4.9GHz動作となりEPS電源経由の消費電力は230W前後で推移します。
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Z390環境における第8/9世代CPUのEPS電力と比較して、「Intel Core i9 10900K」など第10世代CPU各種はCPU Package Powerに対するEPS電力の値が15~20W程度大きい(EPS電源経由の消費電力が大きい)という傾向が確認されています。
そこで、いくつかのCPUにおいてシステム消費電力(EPS電源消費電力と同じくCorsair HX1200iの出力電力ログを参照)と、CPU Package Power(HWiNFOによってソフトウェアモニタリング)の2種類についても測定し、『EPS電力とCPU Package Powerの差分』、『システム電力とEPS電力の差分』の2つを下のグラフにまとめました。
Intel Core i9 10900K_power_2_P-diff
まず前提として、システム電力とEPS電力の差分(青色バー)がミニマックスでも5W程度の差に収まっているので、第10世代CPU&Z490の環境においてATX24PIN電源の消費電力がEPS電源へ転嫁されているというわけではないようです。
次に赤色バーに注目すると、EPS電力とCPU Package Powerの差分には第10世代CPUと第8/9世代CPUとの間にはやはり大きな差が見られます。
原因の1つとして、Z490環境については検証機材であるASUS ROG MAXIMUS XII EXTREMEは16フェーズと規模の大きいVRM電源回路を備えているので、その損失を考えたのですが、9フェーズ回路のASRock Z490 Phantom Gaming ITX/TB3で検証を行っても同じ結果が得られたので、VRM電源の損失という説は違うようです。
10コアダイの10900Kや10700KだけであればCPU Package Powerにマイナスのオフセットがかかっているという可能性も否定できなくはないのですが、第8世代CoffeeLake-Sをそのまま流用しているらしい6コアダイの10400でも同じ傾向になっており、8700Kと比較した時のコアクロックおよび消費電力との整合性を考えると、CPU Package Powerのオフセット説も疑問が残ります。
事実として第10世代CPUのEPS電源経由の消費電力は従来よりも15~20W程度大きいという傾向はあるものの、どうしてそうなるのか具体的な原因がわからないというのが正直なところです。


続いて「Intel Core i9 10900K」は一般的な120サイズ冷却ファン搭載のサイドフロー型空冷CPUクーラーで運用できるかどうかを検証してみました。
検証負荷には消費電力測定と同様に動画のエンコードを実行しています。空冷CPUクーラー使用時のCPU温度検証の検証機材CPUクーラーには、Noctua製サイドフロー型CPUクーラーのスタンダードモデル「Noctua NH-U12S」を使用しており、冷却ファンは次世代120mmファン「Noctua NF-A12x25 PWM」に交換しています。
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「Intel Core i9 10900K」を120サイズ空冷CPUクーラーで冷やしてみると、電力制限無効化の全コア4.9GHzではベンチ板上での測定でもCPU温度が90度に達しました。一方で定格動作の通りにPL1=TDP=125Wの電力制限を適用するとCPU温度は60度前後に収まっています。
電力制限無効化で200W超の発熱になる全コア4.9GHz張り付きの状態では240サイズ以上のマルチファン簡易水冷CPUクーラーが推奨ですが、仕様値通りにTDP125Wの電力制限が適用されていれば「Intel Core i9 10900K」は一般的な120サイズ冷却ファンの空冷CPUクーラーでも問題なく運用が可能です。
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TDP125W動作時のIntel Core i9 10900Kの全コア動作クロックは実動平均で4.3GHz程度になっており、全コア4.9GHzに張り付く電力制限無効化との性能差は概算で10~15%程度です。ワークロードの重さによっては、これよりも実動コアクロックが低くなる可能性もありますが、ベースクロック仕様値の3.7GHzはTDP125W制限下でもクリアできていると見て問題ないと思います。

なお電力制限無効化の全コア4.9GHzについては240サイズラジエーターの簡易水冷CPUクーラーなら十分な静音性を維持したままで運用が可能です。
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検証機材として組み合わせて使用されるマザーボードによっては、標準設定がTDP125Wを満たす定格動作を無視されていることがあります。そういったマザーボードを使用したレビューにおいてはIntel Core i9 10900Kは消費電力(発熱)が非常に大きく、CPU温度が高温になるためハイエンド空冷やマルチファン大型簡易水冷のCPUクーラーが必要である、と評価される恐れがありますが、仕様値通りにTDP125Wの動作設定であれば当然ながら消費電力は抑制され、一般的な空冷CPUクーラーでも問題なく運用できます。
当サイトでは約3年前のCore i9 7900Xのレビューから指摘していたことですが、『IntelはES品等の検証において定格動作設定を使用するガイドラインを示す』、『マザーボードベンダーはBIOS標準設定に定格動作を満たす設定を採用する』の2点を徹底してもらいたいというのが管理人の意見です。



Intel Core i9 10900KのOC耐性について

「Intel Core i9 10900K」のOC耐性について簡単に紹介します。(検証した個体が今のところ1つだけなので個体差がよくわからないという点はご注意ください)

まず端的に「Intel Core i9 10900K」の手動OCで常用可能なコア電圧は1.300V前後、個体差があるかもしれませんが全コア5.2GHz程度がこの電圧において安定動作する限界です。コア電圧が1.350V~1.400Vを超えると市販のCPUクーラーで最高性能な360サイズ簡易水冷でもCPU温度が80~90度を大幅に超えてくるのでDIY水冷の領域になります。
ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME_OC-test_10900K_cinebenchR20
コア電圧を盛ればコアクロック自体は伸びていくのでCinebenchの1発芸なら全コア5.4GHz以上も狙えます。とはいえ素性の良い個体でも常用限界はやはり全コア5.2~5.3GHzではないかと。

参考までに全コア5.2GHz動作時にaviutl&x264エンコードが30分以上安定する下限コア電圧を調べたところ、今回管理人が入手した「Intel Core i9 10900K」については1.300V前後でした。
Core i9 10900K-OC_Stress-Test
全コア5.2GHzで動画エンコードによる負荷をかけた時のシステム消費電力は330~350W程度となっており、EPS電源経由の消費電力は300W前後に達します。Core-Xシリーズを彷彿とさせる消費電力です。
ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME_OC-test_10900K_power
OC検証で使用したマザーボードはASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME、電圧設定はコア電圧:1.320V、ロードラインキャリブレーション:レベル7です。その他の詳細なBIOS設定は下のスクリーンショットの通りです。
ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME_OC-test_10900K_BIOS (1)ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME_OC-test_10900K_BIOS (2)
ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME_OC-test_10900K_BIOS (3)ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME_OC-test_10900K_BIOS (4)
9900Kを同程度のコアクロックにOCした時と比べて10コアなので消費電力は増えていますが、CPUダイ面積が大きくなり、またIntelがプレススライドでアピールしているようにCPUダイが薄くなった影響なのか、殻割りクマメタル化を施した当たり石のCore i9 9900Kくらいの冷え具合&電圧特性なので、「Intel Core i9 10900K」は手動OCして楽しいCPUだと思います。
Intel 10th-Gen Comet Lake-S_Thin-Die-STIM



Intel Core i9 10900Kの基礎ベンチマーク

Intel Core i9 10900Kの基本的なCPU性能を専用ベンチマークソフトで検証しました。
この章ではPCMark 8とPCMark 10という総合ベンチマークソフトを使用していますが、デスクトップ向けの高性能CPUの性能比較ベンチマークとしては頭打ちな傾向があります。レビュー項目の1つとして参考までにスコア比較していますが、実用的なCPU性能については後半の個別性能比較を参考にしてください。
また同ベンチマークはシングルスレッド性能(動作クロックの高さ)が重要になる傾向も強く、近年のCPUを見ると、Intel第8/9世代Coreに比べて第2世代以前のAMD Ryzen CPUでは低めのスコアが出ていましたが、AMD第3世代RyzenはIntel第8/9世代Coreとそん色ないパフォーマンスを発揮できるようになっています。

まずは「PCMark 8 Creative Test (Run Accelerated)」のベンチマーク結果をチェックしていきます。「PCMark 8」は動画再生能力、DirectX9のグラフィック性能、Webブラウジング、ビデオチャットなど一般ユースにおけるPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトです。
Intel Core i9 10900K_PCM8_ss

「Intel Core i9 10900K」を含めた各CPU環境のPCMark 8ベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_bench_PCM8

「PCMark 10 Extended」のベンチマーク結果をチェックしていきます。「PCMark 10」はPCMark 8と同様にPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトですが、DirectX11に対応するなどPCMark 8よりも最近のPCの性能測定に最適化されています。
Intel Core i9 10900K_PCM10_ss

「Intel Core i9 10900K」を含めた各CPU環境について、PCMark 10ベンチマークの総合スコアを比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_bench_PCM10_1

「PCMark 10 Extended」にはPCの基本性能を測る「Essentials」、ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」、クリエイティブ性能を測る Digital Content Creation」、ゲーム性能を測る「Gaming」の大きく分けて4つのテストグループがあるので、個別にベンチマークスコアを比較してみました。

PCの基本性能を測る「Essentials」は、アプリケーションの起動に要する時間を測る「App Start-up」、 ウェブブラウジングの性能を測る「Web Browsing」、1対1または多対多のビデオ会議をシミュレートする「Video Conferencing」の3つのワークロードで構成されています。
モバイル版Core i7 1065G7を搭載するSurface Pro 7との比較でわかりますが、一般的なPC利用において大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Essentials」について「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_bench_PCM10_2

ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」は、ワープロソフト(マイクロソフトWordなど)の処理性能をシミュレートする「Writing」、表計算ソフト(マイクロソフトExcelなど)の処理性能をシミュレートする「Spreadsheets」の2つのワークロードで構成されています。
モバイル版Core i7 1065G7を搭載するSurface Pro 7との比較でわかりますが、一般的なオフィスワークにおいて大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Productivity」について「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_bench_PCM10_3

クリエイティブ性能を測る「Digital Content Creation」は、写真に対するフィルタリング処理の性能をシミュレートする「Photo Editing」、動画編集の性能をシミュレートするワークロード「Video Editing」、レイトレーシングによる3Dグラフィクス制作(3Dレンダリング)をシミュレーションする「Rendering and Visualization」の3つのワークロードで構成されています。
「Digital Content Creation」について「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_bench_PCM10_4

ゲーム性能を測る「Gaming」は、グラフィックボードの性能測定で幅広く活用されているベンチマークソフト「3DMark」に収録された「Fire Strike」と同じベンチマークテストを実行するワークロードです。
「Gaming」について「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_bench_PCM10_5



Intel Core i9 10900Kのクリエイティブ性能

Intel Core i9 10900Kについて3Dレンダリング、動画エンコード、RAW現像、PCゲーム/スマホアプリのビルドなどクリエイティブ作業に関する性能を各種ベンチマークソフトや実際のアプリケーションで検証しました。

Intel Core i9 10900Kの3Dレンダリング性能

CPUのマルチスレッド性能を比較するベンチマークソフトとして国内外で最も知られている「Cinebench R15」をはじめとして、Cinebenchの2019年リリースの最新バージョン「Cinebench R20」、オープンソース3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトの4種類を使用して、CPUの3Dレンダリング性能についてベンチマーク測定を行いました。

Cinebench R15は3Dレンダリング性能を測定するベンチマークソフトになっており、マルチスレッド性能を測定するテストとシングルスレッド性能を測定するテストの2種類を実行しています。また2019年リリースの最新バージョンCinebench R20についてはマルチスレッド性能を測定するテストのみを実行しました。
Intel Core i9 10900K_cinebench-R15
Intel Core i9 10900K_cinebench-R20

Cinebench R15 マルチスレッド性能テストについて「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_rendering_cine_r15_multi

Cinebench R15 シングルスレッド性能テストについて「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_rendering_cine_r15_single

Cinebench R20 マルチスレッド性能テスト
について「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_rendering_cine_r20_multi

3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト
について「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_rendering_blender_1_time
「Blender」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_rendering_blender_2_pef

3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフトについて「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_rendering_corona_1_time
3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_rendering_corona_2_pef

3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトについて「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_rendering_v-ray_1_time
3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_rendering_v-ray_2_perf


Intel Core i9 10900Kの動画エンコード性能

続いて無料で利用できる動画編集ソフトとして国内外で多数のユーザーがいる「Aviutl」と、商用動画編集ソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」と「Adobe Premiere Pro(Media Encoder)」を使用して、「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUの動画エンコード性能を比較していきます。

AviutlとTMPGEnc Video Mastering Works 7はいずれも、現在主流なH.264 (MPEG-4 AVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x264」エンコーダ、そしてH.264より高圧縮・高画質で次世代規格として期待されているH.265(HEVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x265」エンコーダが使用できるので、CPUをリソースとして各エンコーダで共通の動画ファイルのエンコードを行いました。
エンコードを行う動画ファイルについては、Tom Clancy's Ghost Recon Wildlandsのゲーム内ベンチマーク(60秒ほど)をNVIDIA ShadowPlayで録画したものを使用しています。1920×1080/60FPS/50Mbpsと3840×2160/60FPS/120Mbpsの2種類の動画ファイルを作成し、「1920×1080 to 1920×1080」、「3840×2160 to 1920×1080」、「3840×2160 to 3840×2160」の3種類のエンコードを行っています。
Aviutlのx264/x265のエンコード設定は次のスクリーンショットのようになっています。TMPGEnc Video Mastering Works 7については固定ビットレートで1920×1080へエンコードする場合は25Mbps、3840×2160へエンコードする場合は60Mbpsに設定しています。
x264_encode_settingx265_encode_setting
エンコーダと解像度設定が同じであればaviutlとTMPGEncのCPU別エンコード速度の傾向は概ね一致するので、aviutlのケースを抜粋してグラフを掲載します。厳密にはソフトウェアによって若干CPUメーカー別で得意不得意もあるので、aviutlとTMPGEncの全CPU比較データはリンクから各自で参照してください。x2/x3/x4のバーについては同じエンコードを添え字の数だけ並列実行した時の合計変換フレームレートを示しています。

なおフルHD解像度では8コア16スレッド程度、4K解像度では16コア32スレッド程度でマルチスレッド分散がボトルネックになり始め、1つのエンコードだけではCPUが遊び始めます。20コアオーバーのウルトラメニーコアCPUでマルチスレッド性能をフル活用しようと思うと、8K解像度のような超高解像度のエンコード、もしくは4K動画の複数並列エンコードを行う必要があるので注意してください。


x264エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)
Intel Core i9 10900K_encode_aviutl_x264_1920-1920

x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)
Intel Core i9 10900K_encode_aviutl_x264_3840-1920

x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)
Intel Core i9 10900K_encode_aviutl_x264_3840-3840

x265エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)
Intel Core i9 10900K_encode_aviutl_x265_1920-1920

x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)
Intel Core i9 10900K_encode_aviutl_x265_3840-1920

x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)
Intel Core i9 10900K_encode_aviutl_x265_3840-3840

加えてAdobe Premiere Pro(Media Encoder)による動画エンコードについても、「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUの動画エンコード性能を比較しました。

Adobe Premiere Proのエンコード設定はCPUリソースのx264エンコードで、1920×1080へエンコードする場合は25Mbps、3840×2160へエンコードする場合は60Mbpsの固定ビットレートです。Media Encoderでは1つのプロジェクトを複数の設定で同時にエンコードできますが、複数のプロジェクトを同時にエンコードすることができないので単一エンコードのみを比較しています。
Adobe Premiere Proによる動画エンコードについてはAMD Ryzen CPUは苦手である評価されていることが多いですが、2020年現在では最適化も進んでおり、コアスレッド数とコアクロックに比例した性能が発揮できるようになっています。
【Adobe Premiere Pro 全CPU比較データ:1920to1920 / 3840to1920 / 3840to3840
Intel Core i9 10900K_encode_ADPP_x264


Intel Core i9 10900KのRAW現像性能

続いてDxO PhotoLabによるRAW現像を行って「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。「SONY DSC-RX100M5」で撮影した5472×3648解像度のRAW画像ファイル 100枚に対して、DxO PhotoLabの画質プリセット「DxO 標準」をベースにノイズ除去を「PRIME」に変更したプリセットを適用し、RAW現像を行いました。なおDxO PhotoLabによるRAW現像は並列処理数を設定できますが、CPUコア数の半分もしくはそれより一つ少ないくらいの並列処理で最速になるようです。
DxO PhotoLab
DxO PhotoLabによるRAW現像速度について「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_DxO


Intel Core i9 10900KのPCゲーム/スマホアプリのビルド性能

最後に「Unreal Engine 4」や「Unity」などフリーウェアながら高画質なPCゲームやスマホゲームを製作可能なゲームエンジンを使用したゲーム制作におけるCPU性能の検証として、「Unreal Engine 4」で「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。
検証にはEpic Games Storeで無料配布されているデモプロジェクト「Infiltrator」を使用したビルド時間の比較を行います。検証設定としてリアルタイム表示はオフ、ライティングの品質をプロダクションとしています。Unreal Engine 4のバージョンは4.22.3、Windows10のバージョンは1903で統一しています。
Unreal Engine 4_Infiltrator_test
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間について「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_ue_1_time
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのビルド速度を性能比としてグラフ化しました。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_ue_2_perf



Intel Core i9 10900Kのゲーミング性能

Intel Core i9 10900KのPCゲームに関する性能を実ゲームを用いたベンチマーク測定で検証しました。
なお章タイトルではゲーミング性能と表記してはいますが、Intel第7/8/9世代Core-SやAMD第2/3世代Ryzenなどここ数年で発売された4コア4スレッド以上のCPUであればフルHD~4K解像度の60FPSターゲットにおいてCPUボトルネックが発生するケースは多くありません。そのためCPUゲーム性能比較の具体的な内容は”高フレームレートにおけるCPUボトルネック比較”と表現するのが実状に即しています。
ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するCPUとしてIntel Core i5 10400やAMD Ryzen 5 3600など6コア12スレッド以上を個人的に推奨しています。

ゲームタイトルにもよりますがPCゲームにおけるCPU負荷は基本的にTDP内に収まることが多く、CPUコアクロックは全コア最大動作倍率に張り付きます。フレームレートに対するCPUボトルネックの緩和においては、この全コア最大動作倍率の高さが重要になり、クリエイティブタスクと違って電力制限は支配的ではなくなります。(PCゲームではIntel製CPUのPL1、AMD製CPUのPPTは影響をほとんど及ぼさなくなる)
PC-Gaming_CPU-Power
Core i9 9900KやRyzen 7 3700XのようにTDPに対して全コア動作倍率の高いCPUでは、PCゲームにおいてもCPU使用率が高くなるハイフレームレートでCPU消費電力がTDPを超過するタイミングもありますが、TDP内に制限した場合と比較して大きな差は出ません。
そのためクリエイティブタスクなどここまでの検証において複数の電力制限で測定していたCPUも、PCゲームでは簡単のため電力制限が緩い方だけを使用して性能を測定します。
CPU_game_TDP

「Intel Core i9 10900K」の場合は、200~300FPSの超高フレームレートでCPU負荷が比較的大きい状態でもCPU Package PowerはTDP125Wを下回り、全コア4.9GHzの高速動作となります。
Intel Core i9 10900K_Game-Clock

各CPUのゲーミング性能を測定するため統一検証機材として、2020年最速のGPUである「NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti」を搭載したグラフィックボード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Core」を使用しています。
CPU Bench_Gaming_GPU
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Coreは、RTX 2080 TiのAIBパートナーの中でも屈指のOCチューニング力を誇るZOTACによって良質なGPUコアが選別され、リファレンスよりも200MHz以上も高いブーストクロック、さらにGDDR6メモリのメモリクロックまで引き上げるという、RTX 2080 Tiグラフィックボードで最速を狙えるファクトリーOCが施されています。加えて、ZOTACを高品質メーカーとして一躍ブランド力を押し上げたAMP Extremeシリーズの代名詞とも言える3スロットを占有する超弩級な大型GPUクーラーが採用され、静音性も非常に優れたモデルです。
「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme」をレビュー
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme


CPU別ゲーミング性能の比較には2020年最新PCゲームから、Assassin's Creed OdysseyTom Clancy's Ghost Recon WildlandsShadow of the Tomb RaiderMiddle-Earth: Shadow of Warの4種類を使用しています。60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度/高画質設定と、100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/中画質設定の2種類について、各ゲームで平均フレームレートと最小フレームレートを測定しました。
Game_Performance
なおCPUボトルネック比較の性質上、平均FPSと最小FPSをある程度の精度で測定する必要があるため、検証ではほぼ同一シーンで測定が可能なゲーム内ベンチマークを使用しています。


Intel Core i9 10900Kのゲーム性能 - 4K解像度/60FPSターゲット

まずは60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度/高画質設定のゲーミング性能について「Intel Core i9 10900K」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。
なお上述の通り60FPSターゲットでは基本的にCPUボトルネックは発生しないので、グラフの掲載順は性能(平均フレームレート)による昇順ではなく、当サイト既定のCPU分類順としています。

Assassin's Creed Odyssey(4K解像度、超高-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_game_1_3840_acod

Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands(4K解像度、非常に高い-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_game_1_3840_gr

Shadow of the Tomb Raider(4K解像度、DirectX12、最高-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_game_1_3840_sottr

Middle-Earth: Shadow of War(4K解像度、ウルトラ-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_game_1_3840_sow


Intel Core i9 10900Kのゲーム性能 - フルHD解像度/ハイフレームレート

続いて100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/中画質設定のゲーミング性能について「Intel Core i9 10900K」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。

Assassin's Creed Odyssey(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_game_2_1920_acod

Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_game_2_1920_gr

Shadow of the Tomb Raider(フルHD解像度、DirectX12、中-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_game_2_1920_sottr

Middle-Earth: Shadow of War(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i9 10900K_game_2_1920_sow


Intel Core i9 10900Kのゲーム性能 - バトルロイヤル系PCゲーム

最後に近年流行りのオンライン対戦PCゲームの中でも競技ゲーマーにも愛用される240Hzの超ハイリフレッシュレートなゲーミングモニタのユーザーが多いであろうバトルロイヤル系PCゲームにおけるCPU別ゲーム性能をチェックしていきます。
検証にはバトルロイヤルというジャンルにおける4大タイトルと言っても過言ではない、Apex LegendsCall of Duty: Black Ops 4FortnitePlayerUnknown’s Battlegroundsを使用します。
Game_Performance_br



Apex Legends(フルHD解像度、RTX 2080 Tiの既定プリセット)に関する「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。
一応、平均FPSの昇順で並べましたが、Apex Legendsは240FPSターゲットでもCPUボトルネックの影響が小さいタイトルとなっており、第1/2世代Ryzenが若干劣る程度で、第3世代Ryzenや第9世代Coreなど最新CPUは6コア6スレッド以上ならほぼ横並びです。
Intel Core i9 10900K_game_3_br240hz_al

Call of Duty: Black Ops 4(フルHD解像度、RTX 2080 Tiの既定プリセット)に関する「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。
Intel Core i9 10900K_game_3_br240hz_codbo4

Fortnite(フルHD解像度、高-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。
Intel Core i9 10900K_game_3_br240hz_fn

PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「Intel Core i9 10900K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。
PUBGのベンチマーク測定に使用しているトレーニングモードは他プレイヤーの影響を受けやすく測定精度は他の検証に比べるとやや劣るのですが、今回検証した中ではIntel Core i9 10900KとCore i9 9900Kが頭1つ飛びぬけ、第3世代Ryzen各種やCore i7(8C8T, 6T12T)は測定誤差の範囲内でほぼ同性能といった具合でした。それ以下ではCore i5(6C6T)、Core i3(4C4T)、第2世代Ryzenと順に性能がスケーリングしていきます。
Intel Core i9 10900K_game_3_br240hz_pubg



CPUエンコーダとリアルタイム配信について

ゲーム実況やライブ配信と呼ばれるPCゲームのリアルタイム配信について、現在ではNVIDIA GeForce GTX 1660やAMD Radeon RX 580などミドルクラスGPUをエンコーダとすることでフルHD解像度で必要十分な画質とフレームレートが得られます。
GPUエンコーダは動作自体も軽いので、これらGPUエンコーダの登場によってリアルタイム配信やプレイ動画の録画におけるCPUエンコーダの役目は終わったというのが一時期の私見でしたが、メインストリーム向けCPUのコアスレッド数の増加に伴い、x264 Mediumのような高画質プリセットのプレイ&録画が一般ユーザー的にも現実的になってきています。

Youtube LiveやTwitchなどリアルタイム配信(ライブストリーミング)サービスで、PS4/Xbox/Switch等のコンシューマーゲーム機やPCゲームのプレイ動画・ゲーム実況を快適に配信するのに必要なCPU性能については、現在、連載を続けている【快適配信】シリーズで詳細に解説しています
一口にゲーム実況と言っても、『1.ビデオキャプチャを使用してPCは録画配信作業のみを行う』、『2.PC1台で同時にゲームプレイと録画配信を行う』の2つのケースに大別され、どちらで使用するのかで要求されるCPU性能やCPUメーカー毎の得手不得手など事情が変わってくるので注意してください。

ざっくりと現状でCPUを使用したリアルタイム配信・ゲーム実況に要求されるCPU性能だけ述べておくと、『ビデオキャプチャを使用した配信の最低水準は6コア12スレッドのCPU』、『ゲームをプレイしながら配信の最低水準は8コア16スレッドのCPU』です。



【快適配信】シリーズの記事一覧へ
【快適配信】シリーズの記事一覧へ


画質と快適性を求めるなら録画・配信専用マシンもオススメ

ビデオキャプチャ業界の進歩も目覚ましく、2018年に発売された「AVerMedia Live Gamer Ultra」は4K/60FPS/HDRやフルHD/240FPSの映像ソースを無遅延なパススルー表示しつつ、フルHD/60FPSのプレイ動画として録画・配信できるUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャとなっており、プレイ動画の録画・配信に関する多様なニーズを網羅し得る名機です。
4K/HDRや240FPSのパススルー対応「AVerMedia Live Gamer Ultra」をレビュー
AVerMedia Live Gamer ULTRA

前述の通りフルHD/60FPSの録画・配信であればGTX 1060程度の性能のGPUをエンコーダとすることで必要十分な画質が得られて動作も軽いので、録画配信のために高性能な反面、非常に高額なCPUに投資するよりも、多少コストがかかっても「AVerMedia Live Gamer Ultra」などのビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するほうが、録画・配信の手法としてはわかりやすくてハードルが低いと思います。
Intel Core i9 10900K review_00899

AVerMedia製ビデオキャプチャの最新おすすめ機種を機能比較
AVerMedia最新ビデオキャプチャのおすすめ

「AVerMedia Live Gamer Ultra」などUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するのであれば、ASRock Deskmini GTX 1060ベアボーン採用BTO PCの「G-GEAR alpha」や「GALLERIA Mini 1060」がおすすめです。
PCサイズはコンパクトなのでサブ機としてもあまり余分にスペースを占有せず、GPUにはGTX 1060を搭載しておりフルHD/60FPSのGPUエンコードにも余裕で対応できて、CPUには最大で「G-GEAR alpha」ならCore i7 8700、「GALLERIA Mini 1060」ならCore i7 7700を選択可能、2基の2.5インチSATA SSDと3基のM.2 SSDを搭載可能なのでストレージ拡張性も十分です。ASRock Deskmini GTXシリーズについてはレビューも公開しているので参考にしてみてください。
GTX 1060搭載で容積2.7LのスーパーコンパクトPC「GALLERIA Mini 1060」をレビュー
GALLERIA Mini 1060

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Intel Core i9 10900Kのレビューまとめ

「Intel Core i9 10900K」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ or 概要
  • Intel初のメインストリーム向け10コア20スレッドCPU
  • 定格でメモリ周波数2933MHzに対応
  • TDP125Wの電力制限下において全コアが実動平均で4.3~4.4GHz程度
  • TDP125W制限なら空冷CPUクーラーでも問題なく運用可能
  • Core i9 9900Kよりも20%程度高いクリエイティブタスク性能
  • 240FPSなどハイフレームレートPCゲーミングでは現状で最高の選択肢
悪いところ or 注意点
  • 電力制限無効化の場合はマルチファン簡易水冷CPUクーラーを推奨
  • 競合製品Ryzen 9 3900Xと比較して高価で、クリエイティブタスク性能で劣る

温度・消費電力について

温度・消費電力に関する章や補足記事で解説した通り。Intel Core i9 7900Xの登場以降、Intel CPUは検証機材に使用するマザーボードに依るとはいえ基本的にIntelの仕様を満たす電力制限が無効化されていることが多く、Intel Core i9 10900KもまたCPU温度と消費電力が非常に高いと多くのレビューでは評価される可能性が高いと思われます。

しかしながら電力制限をIntelの仕様に合わせて設定すれば当然、Core i9 10900Kは問題なくTDP125WのCPUとして運用することができ、TDP125Wの電力制限を課していれば120サイズの一般的な空冷CPUクーラーでも適切な温度と十分な静音性で運用が可能です。
TDP125Wに制限した場合の性能についても各章で紹介した検証結果の通り、最大動作倍率となる全コア4.9GHzで電力制限を無視した時よりは当然下がりますが、性能差は10~15%程度に収まっており、10コア20スレッドCPUらしい性能を発揮します。

とはいえマザーボードが電力制限を無視している設定を標準設定に採用しているケースが多いことも事実です。電力制限自体は簡単な設定ではあるものの、一般ユーザーがそのまま使用するとマザーボード次第では全コア4.9GHzの動作になることが予想され、そうなると検証結果の通り一般的な空冷CPUクーラーでは運用が難しくなります。
折角、Intelのメインストリーム向け最上位CPU「Intel Core i9 10900K」で自作PCを組むのであれば、CPUの最大性能を引き出すことが可能な240サイズ以上の簡易水冷CPUクーラーを使用するのがオススメです。


クリエイティブ性能について

「Intel Core i9 10900K」のクリエイティブ性能については、10コア20スレッドのCPUが全コア4.3~4.4GHz(TDP125W制限)もしくは全コア4.9GHz(電力制限無効化)で動作するという額面通りのパフォーマンスです。前世代のメインストリーム向け最上位CPUである8コア16スレッドのCore i9 9900Kと比較して、コアスレッド数に比例した20~25%程度の性能向上を果たしています。

一方で競合AMDのメインストリーム向けCPUである第3世代Ryzenと比較すると、希望小売価格で競合するRyzen 9 3900Xは12コア24スレッドCPUなので、消費電力が140~150Wで一致するTDP125W制限ではコアスレッド数に比例して20%程度の性能差があり、電力制限無効化の全コア4.9GHzでもCore i9 10900KはRyzen 9 3900Xに及びません。
ただし2020年5月現在の国内価格を見るとRyzen 9 3900Xが6万円以下で購入できるのに対して、Core i9 10900Kは7.2万円と1万円以上の差があるため(初値なので在庫が潤沢になりしばらくしたら多少の値下がりは期待できると思いますが)、コストパフォーマンスでも厳しい戦いを強いられています。
Intel Core i9 10900K_Performance_vs-9900K-3900X

またワットパフォーマンスの参考として、横軸をCinebenchR20のスコア、縦軸をCinebenchR20/EPS電源消費電力にしたグラフを作成してみました。Intel製CPUの場合はPL1、AMD製CPUの場合はPPTを使って、35Wから10W刻みで電力制限を変更するという形で測定しています。
10コアのCore i9 10900Kと8コアのCore i7 10700KやCore i9 9900Kのカーブを比較すると、左側の低電力・低コアクロックの領域では多コアをゆっくりの法則の通り、Core i9 10900Kのワットパフォーマンスが高く、一方で実動コアクロックが4.0GHz以上の領域では20%性能が伸びるように右側へカーブがオフセットしている様子が見て取れます。
AMD第3世代Ryzenは8コアCCDをベースにしたCPUなので、良VF選別な8コア×1の3800X、6コア有効×2の3900X、良VF選別な8コア×2の3950Xという構造がワットパフォーマンスのカーブからも読み取れるのが面白いです。
CPUにせよGPUにせよ電力に対する性能は2乗根的カーブで増加するので、任意の定点を取り出してワットパフォーマンスに言及するのはあまり参考にならないというのが持論なのですが、このように曲線としてまとめると、Intel製CPUがAMD製CPUと比較してワットパフォーマンスに劣るというのがハッキリします。
Intel Core i9 10900K_Performance_per-Wtt

Intelのエンスージアスト向けCore-Xシリーズの10コア20スレッドCore i9 7900Xと比較すると、7XXX~10XXXのナンバリングのCore-Xは市販のCPUクーラーで運用可能なOC設定が全コア4.5GHz前後なので、電力制限無効化で4.9GHz、手動OCなら5GHzオーバーも狙えるCore i9 10900Kがクリエイティブタスク性能で軽々と上回ります。
Core i9 10900Kも決してワットパフォーマンスが良いわけではありませんが、Core i9 7900Xを4.5GHzにOCするとCPU消費電力が300Wを超過するのに対して、Core i9 10900Kは全コア4.9GHzでも230W程度に収まるところも魅力です。
メモリチャンネル数やPCIEレーン数などCore-Xで替えの効かない要素もありますが、メインストリーム向け最上位が10コア20スレッドになった以上、12コア24スレッドでも少々力不足、Core-Xを選ぶなら、14コアのCore i9 10940Xか18コアのCore i9 10980XEを選びたいところです。


ゲーム性能について

Intelが第9世代CPUの発表スライドにおいて世界最高のゲーミングCPU(World's Best Gaming processor)を掲げてCore i9 9900Kを発表したのは記憶に新しいですが、最上位に「Intel Core i9 10900K」を擁する第10世代Comet Lake-Sでも文言が微妙に変わっていますが、やはり『ゲーマー向け最速CPU(World's ”Fastest” Gaming processor)』であることがアピールされています。
コア数の増加は必ずしもゲーム性能、とくに200FPSを超えるハイリフレッシュレートなPCゲーミングにおけるCPUボトルネックの緩和に繋がらないので、競合AMDに対する戦略としてコア数の増加が必要という条件との兼ね合いは難しいものがあっただろうと想像するのですが、「Intel Core i9 10900K」は全コア最大4.9GHz/単コア最大5.3GHzという高コアクロック・低レイテンシによって前最速のCore i9 9900Kを上回って、ゲーマー向け最速の冠に偽りないゲーミング性能を発揮しました。

「Intel Core i9 10900K」は、PCゲームにおけるCPUボトルネックを最も緩和できるCPUであり、240Hz+の超ハイリフレッシュレートなゲーミングモニタの性能を最大限発揮できるので、バトルロイヤル系などオンライン対戦PCゲームをプレイし、勝つためのゲーミングPCに搭載するCPUとしては間違いなく最良の選択肢です。

競合製品のAMD製CPUも第3世代Ryzenでは、第2世代以前に感じたIntel製CPUに対する超えられない壁はなく、ハイフレームレートなPCゲーミングでもIntelのCore i7やCore i5と伯仲する性能を発揮するようになっていますが、その中でもやはり前世代最上位Core i9 9900Kは頭一つ飛びぬけた性能があり、そのさらに上を行く「Intel Core i9 10900K」は圧巻です。

ゲーム性能検証の冒頭でも述べたようにフルHD~4K解像度の60FPSターゲットであれば4コア4スレッド以上の最新CPUであればどれを使用しても大差はありません。
ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するCPUとしては、2万円台半ばから購入できることもありCore i5 10400やAMD Ryzen 5 3600など6コア12スレッド以上を個人的に推奨しています。
60FPSターゲットであってもAssassin's Creed OdysseyのようにCPUによって差が出るケースもあるので、PCゲームメーカーの最適化の優先順位まで考慮するとIntelのメインストリーム向け最新CPUのPCゲーミングにおける安定性にはやはり信頼がおけます。

またプレイ動画の配信についてはNVIDIA GeForceグラフィックボードで使用可能なハードウェアエンコーダNVEncの動作が軽快で、画質も最新Turing世代ではCPUによるx264の実用プリセットに迫る品質に改良されているので主流になりつつあります。この分野ではCPUの存在感は薄まりつつありますが、プレイ動画の作成や編集においては依然として動画のエンコード性能しかりCPUの性能が重要であることは間違いないので、プレイ動画の作成という面もゲーム性能と捉えるなら、その意味でもCore i9 10900Kは優れたゲーミングCPUです。


なおIntel第10世代Core-S環境においてゲーム性能を遺憾なく発揮するには3200MHz~3600MHzにメモリ周波数をOCする必要があり、Z490マザーボードとの組み合わせが必須なので注意してください。
下位チップセットのH470やB460マザーボードではメモリ周波数が定格値を上限として制限されるので、メモリOCを行うにはZ490マザーボードを選択しなければなりません。(メモリのOC自体は3200MHz~3600MHzならOCプロファイルで簡単に動くので難しくありません) 【詳しくはCore i5 10400のレビュー記事で
Intel Core i5 10400_mem2666_game_1920
OCメモリの選び方や具体的なオーバークロックの設定方法については、こちらの記事を参考にしてください。
【できる!メモリOC】 OCメモリの選び方から設定まで完全解説
【できる!メモリOC】 OCメモリの選び方から設定まで完全解説


総評 - ゲーマー向け最速は偽りなし

”ハイフレームレートなPCゲーミング用に一番高速なCPUが欲しいPCゲーマー”と”Intelのメインストリーム向け10コア20スレッドCPUを5GHzオーバーの限界OCでシバキ倒したいOCer”がIntel Core i9 10900Kの主とした購買層であると断言して間違いないと思います。
Intel公式のプレススライドの通り、Intel Core i9 10900Kはゲーム性能においてCore i9 9900Kを上回っており、ゲーマー向け最速CPUは偽りなしです。


クリエイティブタスク性能やそのコストパフォーマンスでは競合するRyzen 9 3900Xやさらに上位のRyzen 9 3950Xには及びませんが、「Intel Core i9 10900K」も10コアCPUとして見れば十分な性能と、メインストリーム向けCPUとしての扱いやすさ(電力制限がちゃんと働いていれば)を兼ね備えており、言うまでもなくゲーム性能では上回っています。10年以上、自作PC業界をリードしてきた実績と環境があり、Intel製CPUは各種アプリケーションとの互換性など信頼性の高さも魅力だと思います。

以上、「Intel Core i9 10900K」のレビューでした。
Intel Core i9 10900K



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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)



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