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10コア20スレッド「Core i9 10900K」など第10世代Comet Lake-S CPUに対応するZ490チップセット搭載マザーボードとしてMSIからリリースされた、90A対応Dr. MOSで構成される17フェーズの超堅牢VRM電源を搭載するゲーマー向けハイエンドモデル「MSI MEG Z490 ACE」をレビューします。
製品公式ページ:https://jp.msi.com/Motherboard/MEG-Z490-ACE
マニュアル:https://download.msi.com/archive/mnu_exe/mb/E7C71v1.0.pdf
MSI MEG Z490 ACE レビュー目次
1.MSI MEG Z490 ACEの外観・付属品
2.MSI MEG Z490 ACEの基板上コンポーネント詳細
3.MSI MEG Z490 ACEの検証機材
4.MSI MEG Z490 ACEのBIOSについて
5.イルミネーション操作機能「MSI Mystic Light」について
6.MSI MEG Z490 ACEのOC設定について
7.MSI MEG Z490 ACEの動作検証・OC耐性
8.MSI MEG Z490 ACEのレビューまとめ
【注意事項】
同検証は2020年5月中旬に行っておりMSI MEG Z490 ACEのBIOSは100(サポートページでは7C71v10と表記)を使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:https://jp.msi.com/Motherboard/support/MEG-Z490-ACE#down-bios
【2020年5月26日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:100(サポートページでは7C71v10と表記)で検証
【機材協力:MSI Japan】
MSI MEG Z490 ACEの外観・付属品
まず最初にMSI MEG Z490 ACEの外観と付属品をチェックしていきます。パッケージを開くと上段にはマザーボード本体が静電防止ビニールに入った状態で収められていました。マザーボードを取り出すと2重底になっており下段には各種付属品が入っています。
付属品一覧は次のようになっています。
マニュアルやドライバCDなど必要なものが一通り揃っています。ドライバ類についてはそろそろUSBメモリに移行して欲しいところ。付属の多言語マニュアルには日本語のページもありますが50ページほどで内容は多くありません。詳細について知りたい場合は公式ページでPDFファイルとして公開されている英語のマニュアルを見てください。
内容品はSATAケーブル4本、WiFiアンテナ、RGB対応4PIN LED機器接続用Y字分岐延長ケーブル、アドレッサブルRGB対応VG-D型3PIN LED機器接続ケーブル、Corsair製LED機器接続ケーブル、M.2 SSD用ネジです。
MSI MEG Z490 ACEにはRGB対応汎用4PIN LEDヘッダーがマザーボード上に実装されており、付属の2分岐ケーブルによって1つのLEDヘッダーに2つのLEDイルミネーション機器を接続可能です。
MSI MEG Z490 ACEにはアドレッサブルRGB対応VG-D型汎用3PIN LEDヘッダーがマザーボード上に実装されていますが、それをロック付き3PINコネクタに変換する延長ケーブルが付属します。
MSI MEG Z490 ACEにはCorsair社からリリースされているLEDイルミネーション搭載ファン用コントロールボックスが接続できるLEDヘッダーが実装されており、それに対応した延長ケーブルも付属します。
マザーボード全体像は次のようになっています。
MSI MEG Z490 ACEはATXフォームファクタのマザーボードです。少し緑がかった黒を基調にしてプレミアム感あふれるゴールドカラーがアクセントになっています。
マザーボード右下のチップセット用ヒートシンクとPCIEスロット間のM.2 SSDヒートシンクはドラゴンの手を模したアウトラインを描いています。MSIのゲーミングマザーボードでは珍しくフラットデザインが採用されていますが、高級感のあるヘアラインアルミニウムをベースにしてスリットやサンドブラストなど複数の表面加工が組み合わさっているので立体感があります、チップセットクーラーの中央にはアクセントカラーのゴールドでさりげなく、MSIゲーミングブランドのロゴアイコンであるドラゴンマークが描かれています。
「MSI MEG Z490 ACE」のリアI/Oカバーも緑がかった黒を基調にゴールドがアクセントカラーというデザインで、マットな黒色プレートに掘られたACEの”A”ロゴにはLEDイルミネーションが内蔵されています。
「MSI MEG Z490 ACE」はVRM電源クーラーとして、緑がかったヘアライン仕上げのアルミニウム塊にフィンカットが施され、ヒートパイプによって連結された大型の高性能ヒートシンクを搭載しています。熱伝導率7W/mkの高性能サーマルパッドや、放熱を補助する金属製バックプレートも採用されています。
「MSI MEG Z490 ACE」のリアI/Oカバーの内側には、VRM電源ヒートシンクの放熱を補助する冷却ファンが内蔵されており、通気口が設けられたリアI/Oカバー側から吸気するアクティブ冷却が採用されています。高耐久なダブルボールベアリングを採用する高品質な冷却ファンです。
「MSI MEG Z490 ACE」のVRM電源クーラー冷却ファンには「Zero Frozr Technology」と呼ばれるセミファンレス機能が採用されており、ファン動作モードとして「Balance Mode(標準設定)」や「Silence Mode」を選択すると、チップセット温度が閾値以下の場合に冷却ファンが停止します。
MSI MEG Z490 ACEにはメインストリーム向けマザーボードながら、大幅なオーバークロックによって300Wを超えるIntel Core i9 10900Kへ安定した電力供給をおこうことができるよう、17(16+1)フェーズの超堅牢なVRM電源回路が実装されています。
VRM電源回路を構成する素子も、定格90Aを処理可能なSmart Power Stage(所謂、低発熱で定評のあるDr. MOSの90A対応版)、従来製品より電力効率を改善した「TITANIUM CHOKE III」、93%のエネルギー変換効率かつCPUクーラーと干渉し難い小型サイズキャパシタ「Hi-C CAP」、低ESRかつ10年以上の長寿命な日本製個体コンデンサなどなど厳選された高品質素子です。
一般的なダブラーよりも均等な負荷分散が可能なISL製フェーズコントローラーによって、1フェーズを二重化するMirrored Power Arrangement構造によって、リプルが25%抑制され、より安定した電力供給を可能にしています。
最大10コアのメニーコアがラインナップされるIntel第10世代Core-S CPUへ安定した大電力供給が行えるように「MSI MEG Z490 ACE」にはEPS電源端子として8PIN×2が実装されています。EPS電源端子については電源容量800W以下の電源ユニットでは1つしか端子がない場合があるので、EPS端子が足りているか事前に注意して確認してください。
マザーボード裏面左側には頑丈な金属製バックプレートが装着されています。各種素子の半田の出っ張りで指を切ることがありますが、バックプレートがあればその心配もありません。
「MSI MEG Z490 ACE」にはマザーボード一体型リアI/Oバックパネルも採用されています。PCケースにパネルを装着する作業は固くて装着し難かったり、忘れてしまうこともあるのでマザーボードに統合されているのは嬉しい機能です。
以下USB規格に関する説明がありますが『USB3.2 Gen2 = USB3.1 Gen2』、『USB3.2 Gen1 = USB3.1 Gen1 = USB3.0』と考えて基本的に問題ありません。
「MSI MEG Z490 ACE」のリアI/Oには接続帯域20Gbpsに達する次世代規格USB3.2 Gen2x2に対応したUSB Type-C端子が1基実装されています。
USB3.2 Gen2x2の接続に対応した外付けストレージについてはWDから新製品「WD_BLACK P50 Game Drive(レビュー)」が2020年1月に発売されており、USB3.2 Gen2x2に対応したUSB Type-Cで接続することによって連続アクセス2GB/sの超高速を実現できます。
リアI/Oには最新のUSB3.2 Gen2規格に対応したUSB端子として3基のType-Aが設置されています。そのほかのUSB端子については2基のUSB2.0端子と2基のUSB3.0端子が搭載されています。マウス・キーボードなどの周辺機器を多数繋いでいても、HTC ViveやOculus Rift SのようなVR HMDに十分対応可能です。ただUSB3.0/3.1は無線マウスと電波干渉を起こすことがあるので、USB2.0は少し離れた場所に配置して欲しかったです。加えてゲーマーには嬉しいPS/2端子も搭載されています。
有線LANには低CPU負荷、高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーが採用されたLAN端子に加えて、一般的なギガビットイーサの2.5倍の帯域幅を実現するRealtek製2.5Gbイーサ(RTL8125B)が搭載されています。
さらに次世代規格WiFi6に対応したIntel AX201コントローラーによる無線LANも搭載しています。接続規格としてはWi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac/ax、2.4/5GHzデュアルバンド、最大通信速度2400Mbps、Bluetooth 5.1に対応しています。リアI/Oには無線モジュールのアンテナ端子が設置されているので付属のアンテナを接続できます。
またリアI/Oには「BIOS Flash」ボタンが設置されており所定のUSB端子にBIOSファイルの入ったUSBメモリを接続してボタンを押すと「BIOS Flash」機能によってCPUやメモリなしの状態でもBIOSの修復・アップデートが可能です。
MSI MEG Z490 ACEの基板上コンポーネント詳細
続いて「MSI MEG Z490 ACE」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。システムメモリ用のDDR4メモリスロットはCPUソケット右側に4基のスロットが設置されています。固定時のツメはマザーボード下側の片側ラッチとなっています。グラフィックカードを設置するPCIEスロットとは十分な距離があるのでメモリの着脱時に干渉の心配はありません。
DDR4メモリスロットには外部ノイズEMIから保護するための金属シールド「DDR4 Steel Armor」が実装されており、DDR4 BOOSTというMSI独自の基板配線の最適化技術と組み合わせて、より安定したメモリのオーバークロック環境を実現しています。
グラフィックボードなどを設置するPCIEスロットは上から[N/A、x16、N/A、x1、x16、x1、x16]サイズのスロットが設置されています。上段のプライマリグラフィックボードを2段目のスロットに配置することで、大型ハイエンド空冷CPUクーラーとグラフィックボードの干渉を回避しています。
2段目と5段目のPCIEスロットはCPU直結PCIEレーンに接続されており、[x16, N/A] or [x8, x8]で使用できます。最下段のx16サイズスロットの帯域はチップセット経由でPCIE3.0x4ですが、M2_3と帯域を共有しており、どちらかをPCIE3.0x4で使用するか、両方をPCIE3.0x2で使用するか、選ぶ形になっています。2基のx1サイズスロットはPCIE3.0x1で排他利用はありません。
別売りオプションパーツのNVLink SLI Bridgeが必要ですが、3スロット(1スロットスペース)のNVLink SLI BridgeがあればNVIDIAの最新GPUであるRTX 2080 TiやRTX 2080でもマルチGPU環境を構築可能です。
MSI MEG Z490 ACEにも最近のトレンドとして全てのx16サイズスロットには1kgを超える重量級グラボの重さに耐えるように補強用メタルアーマー搭載スロット「MSI PCI Express Steel Armor slots」が採用されています。半田付けによってPCIEスロットの固定を強化したことで従来よりも4倍も頑丈になっており、PCIEスロットをシールドで覆うことによって外部ノイズEMIから保護する役割も果たします。
SATAストレージ用の端子はマザーボード右下に6基搭載されています。SATA_1~6はいずれもIntel Z490チップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/5/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。
高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットは、PCIEスロットと並んで計3基が設置されています。M2_1とM2_2はNVMe(PCIE3.0x4)接続とSATA接続のM.2 SSD両方に対応していますが、M2_3はNVMe(PCIE3.0x4)接続のM.2 SSDのみをサポートします。
M2_1でSATA接続のM.2 SSDを使用するとSATA_2ポートが排他利用になります。M2_2を使用するとSATA_5/6ポートが排他利用になります。M2_3は最下段のx16サイズPCIEスロットと帯域を共有しており、どちらかをPCIE3.0x4で使用するか、両方をPCIE3.0x2で使用するか、選ぶ形になっています。
3基のM.2スロットにはMSI独自のSSDヒートシンク「M.2 Shield Frozr」が設置されており、同ヒートシンクを使用することで、グラフィックボードなど発熱から保護し、M.2 SSDがむき出しの状態よりもサーマルスロットリングの発生を遅くする効果が見込まれます。
マザーボード右側には最新接続規格USB3.1 Gen2に対応する内部USB3.1 Gen2ヘッダーと、内部USB3.0ヘッダーがあり、内部USB3.0ヘッダーはマザーボード基板と平行に実装されています。
マザーボード下側には2基の内部USB2.0ヘッダーが設置されています。Corsair iCUEやNZXT CAM対応製品などUSB2.0内部ヘッダーを使用する機器も増えていますが、「MSI MEG Z490 ACE」であればそれらの機器も問題なく使用可能です。内部USB2.0が2基でも不足する場合はUSB2.0ヘッダー増設ハブの「NZXT INTERNAL USB HUB」や「Thermaltake H200 PLUS」がおすすめです。
「MSI MEG Z490 ACE」はエンスージアストゲーマー向けマザーボードということで、MSI独自の高音質オンボードサウンド機能を、ハイエンドオーディオで採用されるESS製DAC「SABRE9018Q2C」によって、従来機種よりもさらに強化した「AUDIO BOOST HD」が採用されています。日本ケミコン製のオーディオコンデンサを採用し、オーディオパートはマザーボードから物理的に分離され、左右のオーディオチャンネルがレイヤー分けされることでクリアな音質を実現します。FPSゲームなどで足音や銃声をゲーム内にOSD表示で可視化する「NAHIMIC Sound Technology」も使用できます。
冷却ファンを接続するためのコネクタについてはPWM対応4PINファンコネクタとしてCPUファン端子、水冷ポンプ対応端子、ケースファン端子5基の計7基が搭載されています。これだけあれば360サイズなどの大型ラジエーターを複数基積んだハイエンド水冷構成を組んでもマザーボードのファン端子だけで余裕で運用可能です。水冷ポンプ対応の「PUMP_FAN1」端子は最大24W(12V、2A)の出力にも対応しているので本格水冷向けのD5やDDCポンプの電源としても変換ケーブルを噛ませることで使用できます。
MSIのファンコントロール機能にはソース温度の乱高下を無視してスムーズなファン回転数変化を実現するヒステリシス機能も備わっています。
またマザーボード右下にはOCerのみならず一般自作erにとっても組み立て中の動作確認に便利なオンボードとスタートスイッチとリセットスイッチが実装されています。POSTエラーのチェックができるDebug Code LEDも設置されています。リアパネルにはCMOSクリアのハードウェアスイッチも設置されているのでオーバークロック設定を失敗しても簡単に初期化が可能です。
「MSI MEG Z490 ACE」のリアI/Oに設置されたUSB Type-C端子はThunderbolt3には非対応ですが、マザーボード下側にThunderbolt3用Headerがあるので、他社製品ですが最新のTITAN RIDGEを搭載した拡張ボード「GIGABYTE GC-TITAN RIDGE」を使用することでThunderbolt3端子の増設が可能です。
GIGABYTE GC-TITAN RIDGE Thunderbolt3拡張カード
<TSUKUMO><PCショップアーク><ドスパラ>
<PCワンズ><パソコン工房><ソフマップ>
GIGABYTE
Amazon.co.jp で詳細情報を見る <米尼><TSUKUMO><PCショップアーク><ドスパラ>
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なお「MSI MEG Z490 ACE」でThunderbolt3端子増設拡張カードを使用するには、BIOSからThunderbolt3サポート設定を有効化する必要があります。
MSI MEG Z490 ACEの検証機材
MSI MEG Z490 ACEを使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。MSI MEG Z490 ACE以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 10900K (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) |
CPUベンチ用 ビデオカード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
システムメモリの検証機材には、XMP OCプロファイルによるメモリ周波数4000MHzかつメモリタイミングCL15の超低レイテンシなオーバークロックに対応する8GB×4=32GBのメモリキット「G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK」を使用しています。かなりピーキーなOC設定なので一般にはオススメし難い製品ですが。
・「G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK」をレビュー
高級感のあるヒートシンクや8分割ARGB LEDを搭載してデザイン面でも優れる「G.Skill Trident Z Neo」シリーズは当サイトでも特にオススメしているDDR4メモリです。第3世代Ryzen向けにリリースされた製品ですが、3200MHz/CL14や3600MHz/CL16といった定番スペックがラインナップされていて、Intel第10世代Comet Lake-S CPU&Z490マザーボード環境でも高いパフォーマンスを発揮できるので、選んで間違いのないオススメなOCメモリです。
・「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」をレビュー
360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、メインストリーム向けでもハイパフォーマンスな環境を目指すのであれば、システムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
・「Thermal Grizzly Carbonaut」はCore i9 9900Kを冷やせるか!?
以上で検証機材のセットアップが完了となります。
MSI MEG Z490 ACEのBIOSについて
MSI MEG Z490 ACEを使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付がおかしいですが無視してください。また内容的に差異のないものは過去の同社製マザーボードのBIOSスクリーンショットを流用しています。)
BIOSに最初にアクセスするとイージーモードというグラフィカルな画面が表示されます。パッと見の見栄えは良いのですが詳細モードでないと詳細設定ができないので「F7」キーを押してサクッと詳細モード移るのがおすすめです。右上には表示言語変更のプルダウンメニューがあります。MSIマザーボードはASUSの次くらいにしっかりとローカライズされているので日本語UIも使いやすいと思います。
MSIのBIOS詳細モードでは「SETTING」「OC」「M-FLASH」「OC PROFILE」「HARDWARE」「BOARD EXPLORER」の6つのアイコンを選択することで中央のイラスト部分や画面全体に詳細設定項目が表示されるという構造になっています。キーボード操作も可能ですがマウス操作を重視したUIです。
MSI MEG Z490 ACEのBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出は「SETTING」アイコンの「保存して終了」の項目内に存在します。ASUS、ASRock、GIGABYTEなどと違ってカーソルキーのみの移動で設定保存と退出関連の項目にサクッと移動できないのが少し不便に感じます。起動デバイスを指定して再起動をかける「Boot Override」機能があるのは使い勝手が良くて好印象です。
BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルをダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://jp.msi.com/Motherboard/support/MEG-Z490-ACE#down-bios
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、詳細モード左下の「M-FLASH」を選択します。「M-FLASH」モードはBIOSとは完全に別で用意されており再起動するか尋ねられるので再起動します。ただし手動でOCを行っている場合は「M-FLASH」を選択しても一度設定をデフォルトに戻して再起動がかかるので、再度BIOSに入って「M-FLASH」を選択する必要があるようです。
再起動して「M-FLASH」に入ったら下のようにUSBメモリ内のBIOSファイルを選択してアップデートを実行すればBIOSのアップデートが完了します。なおBIOSアップデート後は自動でBIOSへ入らないので注意してください。アップデート後はOC設定なども初期化されてしまうので初回は自動でBIOSに入って欲しいです。
ブートとOSインストール周りについて紹介します。
MSI MEG Z490 ACEのブートデバイス関連の設定は「SETTING」アイコンの「ブート」という項目にまとめられています。
起動デバイスの優先順位は「FIXED BOOT ORDER Priorities」という項目で、ハードディスクやDVDドライブなど大別した優先順位が設定可能となっており、その下にある「〇〇 Drive BBS Priorities」で同じ種類のデバイスについて個別の起動優先順位の設定を行えます。
一般的にはWindows OSの入った「UEFI:HardDisk:Windows Boot Manager(〇〇)」を最上位に設定して、その他の起動デバイスは無効化しておけばOKです。
Windows 10 OSのインストール手順(BIOSにおける設定)についても簡単に紹介しておきます。
Windows 10のOSインストールメディア(USBメモリ)については「UEFI USB Key:UEFI: 〇〇」という名前になります。「UEFI USB Key:UEFI: 〇〇」を起動優先順位の最上位に設定してください。
起動優先順位でインストールメディアを最上位に設定したら設定を変更してBIOSから退出します。ただMSI MEG Z490 ACEはブートデバイスを指定できるBoot Overrideを使用できるので直接OSインストールメディアを起動デバイスとして指定して再起動してもOKです。
ちなみにWindows10の製品パッケージに付属するUSBメモリではUEFIで認識できないトラブルが発生することがあるようなのでそういうときはこちらの記事に従ってMS公式ツールを使用して適当なUSBメモリでOSインストールメディアを作成すると上手くいきます。
BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、MSI MEG Z490 ACEのBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。
「MSI MEG Z490 ACE」の1段目のPCIEスロットについては、プライマリグラフィックボードで使用する標準的なPCIE3.0x16モードに加えて、PCIE帯域を「2つのPCIE3.0x8」もしくは「1つのPCIE3.0x8と、2つのPCIE3.0x4」に分割するモードが用意されています。
MSI MEG Z490 ACEのファンコントロールや各種コンポーネント温度のハードウェアモニタリングはトップメニューの「HARDWARE」アイコンからアクセスできます。
「MSI MEG Z490 ACE」のファンコントロール機能は下のスクリーンショットのようにグラフィカルUIのみが用意されています。
ファンカーブの設定には画面中央のグラフから頂点座標をマウスで直接操作するか、少し分かり難いのですが、右にある温度とファン速度(デューティ比or電圧)を直接数値入力するかのどちらかで行います。
「MSI MEG Z490 ACE」にはモニタリング可能な温度が7種類も用意されています。
「MSI MEG Z490 ACE」に搭載された9基のファン端子については、いずれも個別にファン制御モードをPWM制御とDC制御から選択でき、ファンコントロールソース温度やヒステリシス(Step Up/Down Time)の設定もできます。
「MSI MEG Z490 ACE」に搭載されたファン端子のうちCPUファン端子、PUMP端子、ケースファン端子_1~4の6つはファンコンソース温度として、CPU温度、MOS(VRM電源)温度、PCH(チップセット)温度などの7種類から選択できます。
「MSI MEG Z490 ACE」ではVRM電源クーラーに搭載された冷却ファンについても、BIOS上で「MOS」として表記されており、ファン制御が可能です。
「MSI MEG Z490 ACE」のチップセットクーラー冷却ファンについては、他のファン端子と異なり、ファンカーブを自分で設定するのではなく「Silence Mode」「Balance Mode(標準設定)」「Boost Mode」の3つのプリセットと、ファン回転デューティ比を固定する「Manual Mode」の4つの動作モードを選択する形式になっています。
MSI製マザーボードのファンコントロール機能はグラフィカルUIでわかりやすく設定できるよ、という機能になっています。直感的にわかりますし直打ちが苦手な人にはありがたい機能だと思います。
ただ個人的にはテキストUIで数値直打ちが好きなので管理人がMSIマザボを敬遠してしまう理由の1つです。
あと細かいところですがBIOS内のスクリーンショットをF12キーで撮影できますがスクリーンショットファイルの名前がタイムスタンプではなく保存するUSBメモリのルートに存在するファイルで重複しない連番なのが少し使い難かったです。間違って上書き保存してしまうことがあるのでタイムスタンプにして欲しいです。
イルミネーション操作機能「MSI Mystic Light」について
「MSI MEG Z490 ACE」はマザーボード備え付けのLEDイルミネーションやRGB対応汎用4PIN/アドレッサブルRGB対応汎用3PINイルミネーション機器を操作可能なライティング制御機能「MSI Mystic Light」に対応しています。MSI MEG Z490 ACEにはマザーボード備えつけのLEDイルミネーションとして、リアI/OカバーとチップセットクーラーにアドレッサブルLEDイルミネーションが内蔵されています。
MSIのライティング制御機能「MSI Mystic light」による操作に対応したRGB対応汎用4PIN LEDヘッダーがマザーボード右上に設置されています。当サイトでもレビュー記事を掲載しているLEDテープ「SilverStone SST-LS02」やLEDファングリル「Phanteks Halos Lux RGB Fan Frames」などが接続可能です。
またCorsair製のLEDイルミネーション機器が接続可能な独自規格の3PINヘッダーもATX24PIN端子のすぐ傍に実装されており、「Corsair RGB Fan」や「Corsair Lighting PRO LEDストリップ」を接続して、MSI Mystic Lightでライティング制御が行えます。
さらにアドレッサブルLED機器に対応したARGB対応VD-G型3PIN LEDヘッダーがマザーボードの右下に実装されています。「MSI MEG Z490 ACE」で使用可能なアドレッサブルLEDテープとしては、国内で発売済みの「BitFenix Alchemy 3.0 Addressable RGB LED Strip」や「ASUS ROG ADDRESSABLE LED STRIP-60CM」や「AINEX アドレサブルLEDストリップライト」が動作することが確認できています。
MSI Mystic Lightに対応する機器についてはMSIの公式ページで一覧が公開されています。
MSI Mystic Light対応機器:https://jp.msi.com/Landing/mystic-light-motherboard#mystic
MSI MEG Z490 ACEに搭載されたLEDイルミネーションや汎用ヘッダーに接続されたイルミネーション機器は発光カラーや発光パターンを専用アプリ「Dragon Center」から同期操作可能です。Dragon Centerは公式ホームページやマザーボードのサポートページから最新版をダウンロードできます。
Dragon Center公式DL:https://jp.msi.com/Landing/mystic-light-rgb-gaming-pc/download
「Dragon Center」の左側メニューに表示されている「Mystic Light」を選択するとライティング制御の設定ページが表示されます。「Dragon Center」による発光パターン・発光カラーの設定を行うUIは次のようになっています。
静的発光など全体の発光カラーが一致する発光パターンについては右側のカラーパレットから発光カラーが設定でき、アドレッサブルな発光パターンでも変化スピードや明るさが設定できます。画面右のマザーボード写真がそのままライティングのプレビューになっているので設定がさらに容易になっています。
「Dragon Center」ではマザーボードプレビューの左上に、Mystic Light Sync対応機器の同期設定アイコンや、マザーボードの個別部位の選択プルダウンメニューが配置されています。
「Dragon Center」のライティング制御で選択可能な発光パターンは30種近くと非常に豊富です。
MSI MEG Z490 ACEのOC設定について
MSI MEG Z490 ACEを使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
MSI MEG Z490 ACEではオーバークロック関連の設定項目はトップメニューの「OC」アイコンに各種設定がまとめられています。下にスクロールしていくと概ね「コアクロック→メモリ→電圧」の順番で並んでいます。設定値を直接入力する項目でデフォルトの「Auto」に戻す場合は「a」キーを入力すればOKです。
OCメニューのトップには「OC Explore Mode」という項目があり一般的なOC設定の可能な「Normal」モードに加えて、一部の高度なOC設定項目を解除できる「Expert」モードがあります。今回は「Expert」モードで紹介していきますが、基本的なOC設定は「Normal」モードでも十分行えるので初心者は無理せず「Normal」モード推奨です。
CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
コアクロックはコア数に対して各コアに最大動作クロック(BCLKに対する倍率)を指定できます。「コア0:コア1:コア2:コア3」を倍率として、例えば「45:43:43:42」のようにバラバラに指定した場合、4つのコアのうち1つに負荷が掛かる場合は4コアのうち1つが45倍動作、2つと3つの場合は43、4つの場合は42となります。
「MSI MEG Z490 ACE」ではCPU内部クロック倍率の設定モードとして、標準では全コア動作倍率を指定するAll Coreモードだけが表示されます。
ユーザーがCPUのOCを行う場合は通常、全コアの最大倍率を一致させると思いますが、同マザーボードの場合は、NormalモードもしくはExpertモードのAll Coreにおいて「CPUの内部倍率を変更」の項目で動作倍率を45と設定することでデフォルトのBCLK(ベースクロック)が100MHzなのでその45倍の4.5GHzで動作します。
All CoreモードやPer Coreモードでは通常、CPUコア負荷率に応じて動作倍率を下げる省電力機能が働きますが、「MSI MEG Z490 ACE」では、「CPU Ratio Mode」の設定項目から省電力機能による動作倍率の変動が発生する「Dynamic Mode」に加えて、指定の最大動作倍率に張り付き動作となる「Fixed Mode」を選択できます。
OC Explore ModeでExpertを選択すると、「CPU Ratio Apply Mode」の項目名でいくつかの動作倍率モードを選択できるようになります。
「MSI MEG Z490 ACE」では、全コアの倍率を同じに設定する「All Core」、負荷のかかっているコア数によって最大動作倍率を設定する「Turbo Ratio」(一般に言うところのBy Core Usage)、定格のBy Core Usage倍率に対して一律に倍率オフセットを適用する「Turbo Ratio Offset」、コア別に倍率を適用する「Per Core」の4種類が選択できます。
キャッシュ動作倍率にあたる「キャッシュ動作倍率(BIOS:100ではRing Ratioと表記されています)」を変更可能です。CPUコアクロック同様にベースクロックに対する動作倍率でメッシュの動作周波数を設定できます。
CPUクロック動作倍率の下にある「CPUベースクロック(CPU Base Clock)」の項目ではその名の通りベースクロック(BCLK)を変更可能です。デフォルトでは100MHzに固定されていますが、設定値を直打ちすることで0.05MHz刻みで設定できます。
CPUコアクロックはBCLKに対する動作倍率で設定されるのでBCLK110MHz、動作倍率45倍の場合はコアクロック4.95GHz動作となります。ただしBCLKを使用したOCはかなり上級者向けなので通常はAutoか100MHzが推奨です。
「CPU Base Clock Apply Mode」ではBIOS設定を保存してから退出して再起動後にBCLKの変更を適用する「Next Boot」とリアルタイムで設定変更を反映させる「Immediate」の2つのモードを選択できます。
その他にもBCLK設定の下にある「Clockgen Features」を選択するベースクロックに関する詳細な設定項目が表示されます。管理人のOCerレベルではよくわかりませんが上級者にとっては嬉しい機能かも。
続いてコア電圧の調整を行います。
Intel第10世代CPUではCPUコアとキャッシュへの電圧は共通なので、CPUコアクロックやキャッシュクロックのOCに関連する電圧設定として、「MSI MEG Z490 ACE」では「CPU Core Voltage」や「CPU Core Voltage Mode」の項目を変更します。
「MSI MEG Z490 ACE」ではCPUコア電圧をマニュアルの設定値に固定する「Override」モードが標準動作ですが、Expertモードを選択すると、CPUに設定された比例値にオフセットかける「Offset」モード、ターボブースト時にのみ昇圧を行う「Adaptive」モードなどを使用できます。
「MSI MEG Z490 ACE」でCPUコア/キャッシュクロックのOCを行う場合、CPUコア電圧の設定については設定が簡単で安定しやすいので固定値を指定するOverrideモードがおすすめです。10コア20スレッドCore i9 10900KをOCする場合、CPUコア電圧の目安としては最大で1.300~1.350V程度が上限になると思います。
CPUコア電圧モードについて簡単に説明すると、オフセットモードやアダプティブモードはCPU負荷に比例して電圧が設定されており、低負荷時は電圧が下がるので省電力に優れるのですが、OCをする場合はマザーボードによって挙動に差があり安定する設定を見極めるのが難しいので、個人的にはオフセットやアダプティブは定格向け、OCには固定値適用の固定モードを推奨しています。
仮にOCでオフセットやアダプティブを使う場合も最初はコアクロックに対して安定する電圧を見極める必要があるので、まずは固定モードを使用します。
ちなみにマザーボードにより対応しているモードは異なりますが、CPUのオーバークロックに付随するコア電圧のモードの概略図は次のようになっています。
またコアクロックを高く設定する時に追加で変更するといい電圧設定項目として「DigitALL power」がCPUコア電圧の設定欄の直上にあります。
「DigitALL power」内で特に調整した方がよい項目として「CPUロードラインキャリブレーション」があります。CPUロードラインキャリブレーションはCPU負荷時の電圧降下を補正してOCを安定させる機能です。補正の強度としてMode1~Mode8まで設定可能となっており、Mode1を補正最大として、添え字の数字が小さくなるほど補正が強くなります。補正を強くするほどOCの安定性は増しますがCPUの発熱も大きくなるので、Mode3あたりを最初に使っておいて、ストレステストのCPU温度をチェックしながら補正を調整するのがおすすめです。
またCPU動作倍率設定の下にある「Advanced CPU Configuration」の下層には「短時間電力制限(Short Duration Power Limit)」「長時間電力制限(Long Duration Power Limit)」という2つの電力制限機能があり、電力制限がかかる閾値(単位はW)と電力制限がかかるまでの時間を設定できます。
電力制限がかかるとその指定電力内に収まるようにコアクロックに制限がかかります。デフォルトの状態では「Auto」になっていますが、MSI MEG Z490 ACEではCPUコアクロックをOCするとパワーリミットが掛からないように勝手に設定してくれるので放置でも問題ありません。基本的に一定消費電力以内に収めるための省電力機能(+若干のシステム保護機能)と考えてください。
メモリのオーバークロックについても簡単に紹介しておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
一方でXMPによるメモリOCは上の手順によるOCをメーカー側がすでに行い動作確認をしているので、メーカーが動作確認を行ったOCプロファイルを適用するだけで簡単にメモリをオーバークロックできます。
メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、「MSI MEG Z490 ACE」では正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動で2133MHzのような緩い設定で起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。
MSI MEG Z490 ACEでは「Extreme Memory Profile(X.M.P)」という項目をEnabledに設定することでXMPによるメモリのオーバークロックが可能です。
XMPを使用せず、「DRAM Frequency(DRAM周波数)」の設定値がAutoになっている場合は、使用するメモリにSPD情報として収録されている動作クロック2133~2666MHzなど周波数およびタイミングによる定格動作となります。
手動でメモリ周波数を設定する場合は「DRAM Frequency」の項目でプルダウンメニューから最大8533MHzまでの動作クロック(倍率)設定が可能です。
メモリ周波数もBCLKに対する倍率で動作周波数が決まっているので、BCLKを標準値の100MHzから120MHzに上げると、44倍設定時の動作周波数は4000MHzから5280MHzに上がります。
メモリタイミングの個別打ち込み設定も可能です。メモリタイミングを手動で設定する場合は基本的には「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS (tRCD)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な4タイミングと、加えて「Refresh Cycle Time (tRFC)」と「Command Rate:1 or 2」の6つ以外はAutoのままでいいと思います。
DDR4メモリの周波数OCを行う際は「DRAM CH AB/CD Voltage」の項目を、3000MHz以上にOCする場合は1.300~1.350V、3800MHz以上にOCする場合は1.370~1.400Vに上げる必要があります。メモリをOCする場合は最初から1.350V以上にDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。
過去のIntel CPUではメモリ周波数を3200MHz以上にOCする場合は「VCCSA(CPU SA Voltage)」を盛るとメモリOCが安定したのですが、Intel第10世代CPU環境における「VCCSA」の影響は今のところよくわかりません。Auto設定で安定しない場合は昇圧を試してみても良いかもしれません。
また今のところZ490環境では不具合を確認できていませんでしたが、メモリのオーバークロックでPCIE拡張カードの検出不可やオンボードUSB端子の干渉などが発生する場合は「電圧設定」にある「VCCIO(CPU VCCIO Voltage)」や「チップセット電圧(PCH Core Voltage)」を盛ると安定するかもしれません。
MSI MEG Z490 ACEの動作検証・OC耐性
BIOS周りの管理人的に気になるところの紹介はこのあたりにしてMSI MEG Z490 ACEを使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。まずはFast Bootとフルスクリーンロゴを無効にしてOSの起動時間を測定したところ、MSI MEG Z490 ACEの起動時間は16秒ほどした。多機能なハイエンドマザーボードはPOSTやWindowsのブートに時間がかかる傾向がありますが、MSI MEG Z490 ACEは起動が非常に高速です。
「MSI MEG Z490 ACE」にCore i9 10900Kを組み込んだ場合のBIOS標準設定における動作についてですが、Intel Extreme Tuning Utilityから確認したところ、2コアまでは53倍、全10コアで49倍の動作倍率になっており、CPUコア動作倍率は仕様値通りです。しかしながら電力制限については無効化されていたので、BIOS標準設定ではCore i9 10900Kは全コア4.9GHz、CPU消費電力200Wオーバーで動作します。
TDPに対して全コア最大動作倍率が高く設定されているCPUに電力制限を適用してIntelの公式仕様通りに使用したい場合、例えばCore i9 10900Kでは長期間電力制限を125W、短期間電力制限時間を58sに設定してください。
続いてMSI MEG Z490 ACEを使用した場合のCPUとメモリのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
Core i9 10900KのOC設定は「CPUクロック倍率:52」「キャッシュ倍率:47」「CPUコア電圧:1.320V」「ロードラインキャリブレーション: Mode2」、メモリのOC設定は「メモリ周波数:4000MHz」「メモリ電圧:1.500V」「メモリタイミング:16-16-16-36-CR2」としています。(メモリOC設定は正確には、G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVKのOCプロファイルを適用しCAS Latencyのみ16に変更しています)
上の設定を適用したところ問題なくOSを起動させることができました。
MSI MEG Z490 ACEの環境(BIOS:100)においてメモリのオーバークロックを行ったところ、G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVKのOCプロファイルをベースにして、メモリ周波数を4000MHz、メモリタイミング:16-16-16-36-CR2の高速周波数&低レイテンシで安定動作を確認できました。
今回のOC検証ではメモリの検証機材として、XMP OCプロファイルによるメモリ周波数4000MHzかつメモリタイミングCL15の超低レイテンシなオーバークロックに対応する8GB×4=32GBのメモリキット「G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK」を使用しています。
MSI MEG Z490 ACE(BIOS:100)では、4000MHz/CL15のXMPプロファイルを適用すると、OSの起動までは問題なく、起動後もある程度の安定性はあるものの、HCI MemTest ProやKarhu Software RAM Testによるメモリストレステストでエラーが出ました。
メーカーQVLにあるZ390マザーボードや、一部のZ490マザーボードでは同OCプロファイルの正常動作を確認しているので、「MSI MEG Z490 ACE」によるセカンド・サードタイミングのオートフィルが適切な値を設定できていないようです。今後のBIOSアップデートで上手く対応して欲しいところです。
10コア20スレッド「Intel i9 10900K」のコア5.2GHz/キャッシュ4.7GHz、メモリ周波数4000MHz、メモリタイミング16-16-16-36-CR2でCinebench R20も問題なくクリアできました。
続いてこのOC設定を使用してストレステストを実行しました。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間7分、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)をソースとしてAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。Core i9 10900Kは10コア20スレッドのCPUなので、同じ動画のエンコードを2つ並列して実行し、30分程度負荷をかけ続けます。ストレステスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
ストレステスト中のCPU温度とCPU使用率のログは次のようになりました。マザーボードにMSI MEG Z490 ACEを使用することでCore i9 10900Kを全コア同時5.2GHz、キャッシュ4.7GHz、メモリ4000MHzにOCしてストレステストをクリアできました。CPUクーラーのファン回転数は1200RPMで固定しています。
スマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE Pro」(レビュー)を使用してMSI MEG Z490 ACEのVRM電源温度をチェックしてみました。
最初からCore i9 10900Kを上記のBIOS設定でOCした時の負荷テスト中の温度をチェックしていきます。MSI MEG Z490 ACE環境でCore i9 10900Kを全コア5.2GHzまでOC、かつメモリも4000MHzにOCするとシステム全体(ほぼCPU)の消費電力が330Wに達します。
Core i9 10900Kを全コア5.2GHzにOCするとEPS電源経由の消費電力は300Wに達し、エンスージアスト向けCore-Xもかくや、というくらい非常に大きいCPU消費電力が発生します。
そんなCPU消費電力300W級のVRM電源負荷に対して、「MSI MEG Z490 ACE」は90A対応Dr. MOSで構成される超堅牢な17(16+1)フェーズVRM電源回路と、1基のアクティブ冷却ファンを内蔵するヒートパイプで連結されたVRM電源クーラーのみで、VRM電源温度はソフトウェアモニタリングで65度前後、サーモグラフィーのホットスポットでも80度以下に収めることができました。
「MSI MEG Z490 ACE」であれば、市販CPUクーラーで最高性能な360サイズ簡易水冷はもちろん、DIY水冷も含めて、Core i9 10900Kの常用OCに標準装備のみで十分に対応が可能です。
上に掲載した負荷テスト中の温度グラフに併記していますが、VRM電源温度はソフトウェアモニタリング値で60度半ばまで上回るのでVRM電源に内蔵された冷却ファンが動作します。ファン回転数は3000RPM前後まで達しますが、ファンが小径なのでノイズレベルは35dB未満に余裕で収まっており、PCケースに入れてしまえばまず聞こえません。
「MSI MEG Z490 ACE」は360サイズ簡易水冷CPUクーラーで冷却可能なOCであれば標準装備だけでもVRM電源を十分低温に収めることができますが、さらにVRM電源の冷却を増強すべくスポットクーラーを使用するのであれば、フレキシブルファンアーム「サイズ 弥七」や、可変アルミニウム製ファンフレームでVRM電源を狙って設置が容易な「IN WIN MARS」がオススメです。
・マザーボードVRM電源クーラーのレビュー記事一覧へ
MSI MEG Z490 ACEのレビューまとめ
最後に「MSI MEG Z490 ACE」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- ブラックを基調にゴールドがアクセントカラー、フラットデザインがスマート
- マザーボード備え付けのアドレッサブルなLEDイルミネーションが綺麗
- 17フェーズの堅牢なVRM電源回路、冷却ファン搭載VRM電源クーラーを搭載
- 10コアCore i9 10900K 5.2GHz、メモリクロック4000MHz/CL16で安定動作
- 10900Kの全コア5.2GHz OCでもVRM電源温度は60度台に収まる
- 重量級グラボにも耐えるメタルアーマー採用PCIEスロット「MSI PCI Express Steel Armor slots」
- ヒートシンク付きのNVMe対応M.2スロットを3基搭載
- USB3.2 Gen2x2対応Type-C端子をリアI/Oに標準搭載
- Realtek製2.5Gbイーサ(RTL8125B)をリアI/Oに標準搭載
- ESS製DACを採用したハイエンドオーディオクラスのオンボードオーディオ
- スタート・リセットスイッチなど動作検証に便利なオンボードスイッチ
- 製品価格が5万円ほどと高価
- BIOS標準設定ではCore i9 10900KのPL1:125Wの電力制限が無効化されている
- 4000MHz以上のメモリOCでセカンド・サードタイミングのオートフィルが微妙
10コア20スレッド「Core i9 10900K」など第10世代Comet Lake-S CPUに対応するZ490チップセット搭載マザーボードとしてリリースされた「MSI MEG Z490 ACE」は、10コア20スレッド倍率アンロックなCore i9 10900Kの大幅なOCにも対応できる90A対応Dr. MOSで構成された17(16+1)フェーズVRM電源回路を搭載することに始まり、アクティブ冷却構造のVRM電源クーラー、オンラインゲームに最適なRealtek製2.5Gbイーサや次世代規格WiFi6に対応した無線LANを搭載、ESS製DACによるハイレゾ対応オンボードサウンドなど、ブランドが志向するエンスージアストゲーマーを満足させる機能がてんこ盛りなエース級モデルです。
MSIのゲーミングモデルというと同社ゲーミングブランドのロゴマークにもなっているドラゴンをモチーフにした若干ゴテゴテとしたデザインが装飾過剰に感じて、人を選ぶきらいもありましたが、「MSI MEG Z490 ACE」ではフラットでスマートなデザインに変わったところも注目ポイントです。
「MSI MEG Z490 ACE」のBIOSデザインについては好みの問題かと思いますが、マウス&キーボード環境を想定したグラフィカルなUIが採用されており管理人的には少し使いづらいと感じてしまいました。個人的にMSIマザボを敬遠してしまう理由の1つではあるのですが、グラフィカルUIが好きなユーザーにとっては嬉しい仕様だとも思うので個々人の好みで評価は分かれるところです。
「MSI MEG Z490 ACE」のBIOS標準設定(ver100)でCore i9 10900Kを動作させるとTDP125W制限が無効化されます。BIOSから手動設定を行えばIntel公式仕様値通りに動作させることが可能ですが、電力制限無効化の場合、CPUクーラーは240サイズ以上の簡易水冷CPUクーラーが推奨されるくらいの発熱が生じるので注意が必要です。
MSI MEG Z490 ACEを使用した検証機では10コア20スレッドのIntel Core i9 10900Kを全コア5.2GHzに、メモリ周波数も4000MHzにオーバークロックして負荷テストをクリアすることができました。
マザーボードのOC耐性を評価する上で重要なファクターになるVRM電源について、「MSI MEG Z490 ACE」は優秀な性能を発揮しました。「MSI MEG Z490 ACE」であれば市販の簡易水冷やDIY水冷など環境を選ばず、VRM電源周りは標準装備のままでCore i9 10900KをガンガンOCできます。
10コア20スレッドのCore i9 10900Kを常用限界までOCすると、EPS電源経由のCPU消費電力が300Wを超えますが、「MSI MEG Z490 ACE」ではその強烈なVRM電源負荷に対しても、90A対応Dr. MOSなどで構成される17(16+1)フェーズの超堅牢なVRM電源回路が適切に熱を分散します。
アクティブ冷却ファンを内蔵し、CPUソケット上左のアルミニウム塊型ヒートシンクをヒートパイプで連結したVRM電源クーラーという標準装備のみ、スポットクーラーの増設を必要とせずに、VRM電源温度を80度以内に収めることができました。
メモリOCについてはメモリ周波数と主要タイミングのみを指定するカジュアルOC設定で、デュアルチャンネル4枚刺しのメモリ周波数4000MHzにおいてメモリタイミング16-16-16-36-CR2まで詰めることができたので及第点は余裕でクリアしていると思います。
しかしながら検証機材として使用している「G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK」に収録されたメモリ周波数4000MHz/メモリタイミングCL15のXMPプロファイルはメモリストレステストをクリアできなかったので、メモリOC時のセカンド・サードタイミングのオートフィルについては今後BIOSアップデートによる改良を期待したいところです。
以上、「MSI MEG Z490 ACE」のレビューでした。
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MSI MEG Z490 ACE レビュー
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) May 26, 2020
良い
✅90A対応Dr. MOSによる17フェーズVRM電源
✅10900Kの全コア5.2GHz OCでもVRM電源温度は80度以下
✅ESS製DACを採用したオンボードサウンド
✅USB3.2 Gen2x2やRealtek製2.5Gb LANを搭載
悪いor注意
⛔BIOS標準設定で10900Kの電力制限無効https://t.co/XbzydVDfi7
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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