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10コア20スレッド「Core i9 10900K」など第10世代Comet Lake-S CPUに対応するZ490チップセット搭載マザーボードとしてASRockからリリースされた50A対応Dr. MOSで構成される15フェーズの超堅牢VRM電源とトリプルファンで冷やすアクティブ空冷VRM電源クーラーを搭載するハイエンドモデル「ASRock Z490 Taichi」をレビューします。
他社がハイエンド製品に90A対応Dr. MOSを採用する中、50A対応に留めた「ASRock Z490 Taichi」がCore i9 10900Kの大幅なOCに対応できるのか徹底検証していきます。
製品公式ページ:https://www.asrock.com/mb/Intel/Z490%20Taichi/index.asp
マニュアル:https://download.asrock.com/Manual/Z490%20Taichi_jp.pdf
ASRock Z490 Taichi レビュー目次
1.ASRock Z490 Taichiの外観・付属品
2.ASRock Z490 Taichiの基板上コンポーネント詳細
3.ASRock Z490 Taichiの検証機材
4.ASRock Z490 TaichiのBIOSについて
5.イルミネーション操作機能「ASRock Polychlome RGB Sync」について
6.ASRock Z490 TaichiのOC設定について
7.ASRock Z490 Taichiの動作検証・OC耐性
8.ASRock Z490 Taichiのレビューまとめ
【注意事項】
同検証は2020年5月下旬に行っておりASRock Z490 TaichiのBIOSはver1.30を使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:https://www.asrock.com/mb/Intel/Z490%20Taichi/index.asp#BIOS
【2020年5月28日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:1.30で検証
【機材協力:ASRock Japan】
ASRock Z490 Taichiの外観・付属品
まず最初にASRock Z490 Taichiの外観と付属品をチェックしていきます。「ASRock Z490 Taichi」はキャラメル箱と呼ばれる形状の厚手の外箱に2段重ねの内パッケージという構造で梱包されています。
マザーボード本体は静電防止スポンジで保護され、タイラップでしっかりと固定されています。運送中に衝撃が加えられても故障の心配はなく安心です。
マニュアル類は、英語のソフトウェアマニュアル、多言語の簡易マニュアル、ドライバCDが付属します。ドライバ類についてはそろそろUSBメモリに移行して欲しいところ。
組み立て関連の付属品はSATAケーブル4本、WiFiアンテナ、M.2 SSD固定ネジ&スペーサーセット、SLI HBブリッジ、トルクスドライバーです。
マザーボード全体像は次のようになっています。
ASRock Z490 TaichiはATXフォームファクタのマザーボードで、シルキーで滑らかなブラックのPCB基板を背景にアンティーク調な真鍮カラーとツートーンをなし、シックで落ち着きのあるデザインです。PCB基板には湿度による電気短絡を防ぎ安定動作を助ける「高密度ガラス繊維PCB」が採用されています。
「ASRock Z490 Taichi」にはチップセットとM.2 SSDのヒートシンクを兼ねたマザーボード下側全体を覆う3分割の金属製カバーが搭載されています。チップセットのある右上部分は細かいパーツで構成された機械仕掛けなデザインで、今にも歯車が動き出しそうなギミック感があります。一方で左側の金属プレートは鍛造アルミニウム製、高品位な黒色塗装となっており、少し濃い黒色で歯車のイラストが描かれています。
VRM電源部分に覆いかぶさるようして伸びる大型のリアI/Oカバーもツートンカラーをなしており、下位シリーズSteal LegendとTaichiを融合させたような機械的なデザインが採用され、ブラックカラーの「XXL アルミニウム合金製ヒートシンク」と名付けられているVRM電源ヒートシンクとも上手く調和しています。アルミニウム製のVRM電源クーラーにはヒートシンク全体で効率的に放熱を行うため熱の拡散を速めるヒートパイプが組み込まれています。
「ASRock Z490 Taichi」のVRM電源クーラーには上側に2基、左側に1基の冷却ファンが搭載されています。5万時間の長寿命な高耐久性ファンによるアクティブ冷却で、CPUソケット周辺に風の当たらない簡易水冷CPUクーラー環境においてVRM電源回路の温度を十分に下げて、ベストな性能を発揮します。
「ASRock Z490 Taichi」のVRM電源冷却ファンはBIOS上からVRM電源温度をソースにしたファン制御カーブの設定が可能です。BIOSメニュー上では左側の1基が「MOS ファン1」、上側の2基が「MOS ファン2」として登録されています。BIOS標準設定(BIOS:1.00)ではVRM電源ファンがかなり煩くなるようなので、各自手動で調整するのがオススメです。
「ASRock Z490 Taichi」のCPUソケット上側のVRM電源クーラーヒートシンクはフィンアレイ型になっているので、アクティブ冷却ファンによる風が上から下に抜けるようになっており、より効率的にVRM電源回路を冷やすことができます。
加えてPCB基板にもVRM電源回路の冷却を助ける構造として「ASRock Heat Dissipating PCB Technology」が採用されています。
「ASRock Z490 Taichi」はメインストリーム向けマザーボードながら、15フェーズの超堅牢なVRM電源回路が実装されています。
VRM電源回路にハイサイド/ローサイドMOS-FETとドライバICをワンパッケージし、低発熱で定評のある「Dr. MOS」を採用するのはハイエンドマザーボードでは定番ですが、「ASRock Z490 Taichi」には50A対応Dr. MOSが使用されています。
その他にも、従来比で飽和電流を最大3倍まで効果的に増加させるためマザーボードのVcore電圧を強化する「新世代プレミアム60Aパワーチョークコイル」、12,000時間の寿命でより優れた安定性と信頼性を提供する「ニチコン製 12K ブラックコンデンサ」、820uFと100uFのポリマーコンデンサを組み合わせることによって、よりクリアで効率的かつ優れた応答性でCPU Vcoreを供給できる「Combo Caps構造」などで堅牢なVRM電源回路が構築されています。
最大10コアのメニーコアがラインナップされるIntel第10世代Core-S CPUへ安定した大電力供給が行えるように「ASRock Z490 Taichi」にはEPS電源端子として8PIN×2が設置されています。700W以下のメインストリーム電源ユニットではEPS端子が1つしかないものもあるので組み合わせて使用する電源ユニットには注意が必要です。
「ASRock Z490 Taichi」のマザーボード裏面には頑丈な金属製バックプレートが装着されています。各種素子のハンダの出っ張りで指を切ることがありますが、バックプレートがあればその心配もありません。またVRM電源背面とサーマルパッドを介して接しており、バックプレートは放熱板としての役割も果たします。
「ASRock Z490 Taichi」には一体型リアI/Oバックパネルも採用されています。PCケースにパネルを装着する作業は固くて装着し難かったり、忘れてしまうこともあるのでマザーボードに統合されているのは嬉しい機能です。
一体型リアI/Oバックパネルを採用したのは主要4社ではASRockが最後でしたが、同機能をただ搭載するだけに留まらず、上下左右にオフセット可能としてPCケースとの互換性が確保する構造に改良され、「Flexible Integrated I/O Shield」と名付けられています。
以下USB規格に関する説明がありますが『USB3.2 Gen2 = USB3.1 Gen2』、『USB3.2 Gen1 = USB3.1 Gen1 = USB3.0』と考えて基本的に問題ありません。
「ASRock Z490 Taichi」のリアI/Oには接続帯域20Gbpsに達する次世代規格USB3.2 Gen2x2に対応したUSB Type-C端子が1基実装されています。なおこのUSBポートはM.2スロットM2_3およびSATA3_4/5と帯域を共有しており、いずれかが使用されている場合、接続帯域が16Gbpsに制限されます。
USB3.2 Gen2x2の接続に対応した外付けストレージについてはWDから新製品「WD_BLACK P50 Game Drive(レビュー)」が2020年1月に発売されており、USB3.2 Gen2x2に対応したUSB Type-Cで接続することによって連続アクセス2GB/sの超高速を実現できます。
リアI/Oには最新のUSB3.1 Gen2規格に対応した3基のType-Aの端子が設置されています。そのほかのUSB端子については4基のUSB3.2 Gen1端子が搭載されています。マウス・キーボードなどの周辺機器を多数繋いでいてもVR HMDに余裕で対応可能です。個人的に残念なポイントとしてはUSB3.0/1は無線マウスと電波干渉を起こすことがあるので、加えてUSB3.0端子から少し離れた場所にUSB2.0を設置して欲しかったです。ゲーマーには嬉しいPS/2端子も搭載されています。
ネットワーク関連では低CPU負荷かつ高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーが採用された有線LAN端子に加えて、一般的なギガビットイーサの2.5倍の帯域幅を実現するRealtek製2.5Gbイーサ「Dragon 2.5 Gigabit LAN(RTL8125BG)」も搭載しています。
「ASRock Z490 Taichi」は次世代規格WiFi6に対応した無線LAN(Intel AX200)も搭載しています。接続規格としてはWi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac/ax、2.4/5GHzデュアルバンド、最大通信速度2400Mbps、Bluetooth 5.0に対応しています。リアI/Oには無線モジュールのアンテナ端子が設置されているので付属のアンテナを接続できます。
またリアI/Oには「BIOS FlashBack」ボタンが設置されており所定のUSB端子にBIOSファイルの入ったUSBメモリを接続してボタンを押すと「USB BIOS FlashBack」機能によってCPUやメモリなしの状態でもBIOSの修復・アップデートが可能です。
ASRock Z490 Taichiの基板上コンポーネント詳細
続いて「ASRock Z490 Taichi」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。システムメモリ用のDDR4メモリスロットはCPUソケット右側に4基のスロットが設置されています。固定時のツメはマザーボード上側(下写真の右側)の片側ラッチとなっています。グラフィックカードのあるPCIEスロット側はラッチがないので干渉の心配もありません。
グラフィックボードなどを設置するPCIEスロットは上から[N/A、x16、N/A、x1、x16、x1、x16]サイズのスロットが設置されています。上段のプライマリグラフィックボードを2段目のスロットに配置することで、大型ハイエンド空冷CPUクーラーとグラフィックボードの干渉を回避しています。
2段目と5段目のPCIEスロットはCPU直結PCIEレーンに接続されており、[x16, N/A] or [x8, x8]で使用できます。最下段のx16サイズスロットの帯域はPCIE3.0x4、2基のx1サイズスロットの帯域はPCIE3.0x1で、いずれも排他利用はありません。
別売りオプションパーツのNVLink SLI Bridgeが必要ですが、3スロット(1スロットスペース)のNVLink SLI BridgeがあればNVIDIAの最新GPUであるRTX 2080 TiやRTX 2080でもマルチGPU環境を構築可能です。
グラフィックボード用のx16スロットには近年のマザーボードでは採用が一般的な1kgを超える重量級グラボの重さに耐えるメタルアーマー「STEEL SLOT Gen4」が採用されています。アンカーポイントを6個に増やすことによって堅牢さをさらに増しています。AMD X570から採用され始めた同機能ですが、Intel Z490マザーボードの新製品からはラッチ部分にも補強が加えられてパワーアップしています。
ASRock Z490 TaichiにはSATAストレージ用の端子は8基搭載されています。右寄りにあるSATA_1~6の6基はIntel Z490チップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/5/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。左側の2基はASMedia製コントローラーASM1061による接続です。
「ASRock Z490 Taichi」のマザーボード下側全体を覆う金属カバーはトルクスネジで固定されていますが、付属ドライバーで着脱が可能です。「ASRock Z490 Taichi」のマザーボード下側全体を覆う金属カバーは、チップセットクーラーとサーマルパッド経由で接触し、加えてM.2 SSDの放熱ヒートシンクの役割も果たします。
高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットは、CPUソケット下とPCIEスロット間に計3基が設置されています。M2_2とM2_3はNVMe(PCIE3.0x4)接続とSATA接続のM.2 SSD両方に対応していますが、M2_1はNVMe(PCIE3.0x4)接続のM.2 SSDのみをサポートします。
M2_1には排他利用はありません。M2_2はSATA3_0/1と排他利用です。M2_3はSATA3_4/5と帯域を共有しており、SATA3_4/5を使用する場合、接続帯域はPCIE3.0x2に制限されます。またM2_3はリアI/OのUSB3.2 Gen2x2とも帯域を共有しています。
「ASRock Z490 Taichi」にはM.2_1スロットの反対側にM.2_4スロットが実装されていますが、これば次世代以降のCPU用のスロットとなっており、Core i9 10900Kなど第10世代Comet Lake-S CPUでは使用しません。
マザーボードの右端には、内部USB3.1 Gen2ヘッダーと2基の内部USB3.0ヘッダーが実装されています。2基の内部USB3.0ヘッダーのうち一方はマザーボードと平行な向きに実装されています。
マザーボード下には内部USB2.0ヘッダーも2基設置されていました。CorsairLinkやNZXT CAM対応製品など内部USB2.0を使用する機器も増えていますが、ASRock Z490 Taichiであればそれらの機器も問題なく使用可能です。内部USB2.0が2基でも不足する場合はUSB2.0ヘッダー増設ハブの「NZXT INTERNAL USB HUB」や「Thermaltake H200 PLUS」がおすすめです。
ASRock Z490 TaichiはオンボードサウンドにESS製DAC等を使用した高音質ソリューションが採用されています。フロントパネルへのアナログ出力にはSN比130dBのESS SABRE9218 DACやWIMAオーディオ向けキャパシタなどハイエンドオーディオに採用される高品質素子で構成されています。7.1チャンネル HDオーディオに対応しており、デジタル出力でもオーディオ用の外部アンプ等との接続に最適な光デジタル端子が設置されています。
マザーボード基板上にはOCerのみならず一般自作erにとっても組み立て中の動作確認に便利なオンボードのスタートスイッチとリセットスイッチが実装されています。POSTエラーのチェック便利なDebug LEDが設置されています。またCMOSクリアのハードウェアスイッチ実装されておりOC設定に失敗してもPCケースを開くことなくBIOSの設定をクリアできるので手動でOCを行うユーザーにとても便利です。
冷却ファンを接続するためのコネクタについてはPWM対応4PINファンコネクタがマザーボード上に8基設置されています。マザーボード上部のCPUソケット右上にCPUファン端子とCPUオプションファン端子(水冷ポンプ対応)、さらにケースファン端子6基(水冷ポンプ対応)の計8基です。水冷ポンプ対応ファン端子は2A、24Wの電源出力が可能です。
ASRock Z490 Taichiには「Hyper BCLK Engine III」という外部ベースクロックジェネレータが実装されています。Hyper BCLK Engine IIIはオーバークロックにおいて正確なクロック波形の提供やBCLKの変更を可能にする便利なモジュールです。
「ASRock Z490 Taichi」のリアI/Oに設置されたUSB3.1 Gen2 Type-C端子はThunderbolt3には非対応ですが、マザーボード下側にTB1 Headerが実装されており、同社製のThunderbolt3拡張ボード「ASRock Thunderbolt 3 AIC R2.0」(レビュー)を使用することでThunderbolt3端子を増設可能です。
ASRock Thunderbolt 3 AIC R2.0には1つ前の世代のThunderbolt3コントローラーALPINE RIDGEが採用されていますが、他社からは2019年最新Thunderbolt3コントローラーTITAN RIDGEを採用した「GIGABYTE GC-TITAN RIDGE」が発売されています。他社製品なので正式サポートはされませんが、「ASRock Z490 Taichi」でも使用可能です。
GIGABYTE GC-TITAN RIDGE Thunderbolt3拡張カード
<TSUKUMO><PCショップアーク><ドスパラ>
<PCワンズ><パソコン工房><ソフマップ>
GIGABYTE
Amazon.co.jp で詳細情報を見る <米尼><TSUKUMO><PCショップアーク><ドスパラ>
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ASRock Z490 Taichiの検証機材
ASRock Z490 Taichiを使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。ASRock Z490 Taichi以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 10900K (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) |
CPUベンチ用 ビデオカード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
システムメモリの検証機材には、XMP OCプロファイルによるメモリ周波数4000MHzかつメモリタイミングCL15の超低レイテンシなオーバークロックに対応する8GB×4=32GBのメモリキット「G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK」を使用しています。かなりピーキーなOC設定なので一般にはオススメし難い製品ですが。
・「G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK」をレビュー
高級感のあるヒートシンクや8分割ARGB LEDを搭載してデザイン面でも優れる「G.Skill Trident Z Neo」シリーズは当サイトでも特にオススメしているDDR4メモリです。第3世代Ryzen向けにリリースされた製品ですが、3200MHz/CL14や3600MHz/CL16といった定番スペックがラインナップされていて、Intel第10世代Comet Lake-S CPU&Z490マザーボード環境でも高いパフォーマンスを発揮できるので、選んで間違いのないオススメなOCメモリです。
・「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」をレビュー
360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、メインストリーム向けでもハイパフォーマンスな環境を目指すのであれば、システムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
・「Thermal Grizzly Carbonaut」はCore i9 9900Kを冷やせるか!?
以上で検証機材のセットアップが完了となります。
ASRock Z490 TaichiのBIOSについて
ASRock Z490 Taichiを使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付がおかしいですが無視してください。また内容的に差異のないものは過去の同社製マザーボードのBIOSスクリーンショットを流用しています。)
BIOSに最初にアクセスすると「ASRock Z490 Taichi」ではイージーモードというグラフィカルな画面が表示されます。パッと見の見栄えは良いのですが詳細モードのほうが結局のところ使いやすいので「F6」キーを押してサクッと詳細モード移るのがおすすめです。
次回起動以降に詳細モードを最初から表示する場合は、「アドバンスド - UEFI設定スタイル」の項目で起動時のモードは指定できます。
ASRock Z490 TaichiのBIOSの詳細モードは、従来通りの文字ベースBIOSメニューになっています。画面上に表示されている「メイン」「OCツール」「詳細」などメニュータブから左右カーソルキーで各設定ページが表示できます。画面右下の「English」と表記されたボタンから言語設定が可能です。
ASRock Z490 TaichiのBIOSは日本語に対応しています。ASRockのマザーボードというと「Save Changes and Exit」が「変更がそして退出することを保存します」のように翻訳が怪しい部分がありましたが、ASRock Z490 Taichiなど最新マザーボードでは翻訳が正確になっています。
ASRock Z490 TaichiのBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出はトップメニュータブ最右端の「出口」から行えます。特定のブートデバイスを指定してBIOSから退出するBoot Override機能もあります。
BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルを公式DLページからダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://www.asrock.com/mb/Intel/Z490%20Taichi/index.asp#BIOS
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、トップメニュータブ「ツール」の「Instant FLASH」を選択します。「Instant FLASH」を選択すると自動でUSBメモリ内から総当たりでアップデートファイルを探索してくれます。自動探索は便利なのですが、反面、探索方法は総当たりなのでファイルが多いと時間がかかるため、アップデート時はファイルの少ないUSBメモリを使用するのがおすすめです。
USBメモリからアップデートファイルが見つかると更新するかどうか尋ねられるので、更新を選択すればあとは自動でBIOSがアップデートされます。
ブートとOSインストール周りについて紹介します。とはいってもASRock Z490 Taichiのブート回りは下画像のように非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。
OSのインストールも「起動順序 #1」に「UEFI 〇〇」というOSインストールメディアを設定して保存&退出でOKです。出口(Exit)のメニューから「UEFI 〇〇」をブートオーバーライドで指定して起動しても同様にOSのインストールデバイスから起動可能です。
ちなみにWindows10の製品パッケージに付属するUSBメモリではUEFIで認識できないトラブルが発生することがあるようなのでそういうときはこちらの記事に従ってMS公式ツールを使用して適当なUSBメモリでOSインストールメディアを作成すると上手くいきます。
BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、ASRock Z490 TaichiのBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。
「ASRock Z490 Taichi」のファンコントロール機能について紹介します。
ASRock Z490 Taichiのファンコントロール機能ではマザーボード上に設置されている各ファン端子について個別に設定が可能です。
「標準/サイレント/パフォーマンス/最大速度」の4種類のプリセット設定に加えて、個別に温度・ファン速度の比例カーブを指定できる「カスタマイズ」の5つのモードを使用できます。
「カスタマイズ」モードでは比例カーブを決める温度とファン速度を4つ指定できます。CPUファンはCPUソースで固定ですが、ケースファン端子はソースとなるセンサーにCPU温度とマザーボード温度の2つから選択できます。外部温度センサーには非対応です。
またカスタマイズモードでは、下限温度以下で冷却ファンを停止させる所謂セミファンレス機能を実現する「Allow Fan Stop」の設定が表示されます。
「ASRock Z490 Taichi」はVRM電源クーラーに冷却ファンが搭載されていますが、BIOSメニュー上では左側の1基が「MOS ファン1」、上側の2基が「MOS ファン2」として登録されています。いずれもVRM電源温度をソースとしてファン制御されます。
カスタマイズモードでは他のファン端子と同様に比例カーブを決める温度とファン速度を4つ指定できます。下限温度となる温度1に対するファン速度を0に設定すると、VRM電源温度が温度1以下の時にVRM電源冷却ファンは停止します。
また各種プリセットではVRM電源温度が80度を上回るとファン制御が外れて、VRM電源冷却ファンはフル回転になりますが、カスタマイズ設定ではVRM電源冷却ファンがフル回転になる臨界温度を最大100度まで引き上げて設定できます。
各種モニタリングとファン端子コントロールの間に「Fan Tuning」と「Fan-Tasticチューニング」という項目があります。「Fan Tuning」はワンクリックで自動で接続された冷却ファンの動作を最適化してくれる機能です。「Fan-Tasticチューニング」はグラフィカルUIによるファンコントールの設定機能になっています。
機能的には上で紹介したコンソールのファンコンと同じで、グラフィカルUIでわかりやすく設定できるよという機能になっています。直感的にわかりますし直打ちが苦手な人にはありがたい機能だと思います。マウス操作重視のUIですがキーボードからもカーソルキーでフルコントロール可能です。
イルミネーション操作機能「ASRock Polychlome RGB Sync」について
「ASRock Z490 Taichi」はマザーボード備え付けのLEDイルミネーションやRGB対応汎用4PIN/アドレッサブルRGB対応汎用3PINイルミネーション機器を操作可能なライティング制御機能「ASRock Polychlome RGB Sync」に対応しています。「ASRock Z490 Taichi」はリアI/Oカバー、チップセットクーラー、マザーボード背面右端にアドレッサブルLEDイルミネーションが搭載されており、ASRock製マザーボード史上最高クラスに豪華な装いです。
「ASRock Z490 Taichi」ではマザーボード備え付けのLEDイルミネーションに加えてライティング制御機能「ASRock Polychlome RGB Sync」による操作に対応したRGB対応汎用4PIN LEDヘッダーが1基設置されています。当サイトでもレビュー記事を掲載しているLEDテープ「SilverStone SST-LS02」やLEDファングリル「Phanteks Halos Lux RGB Fan Frames」などが接続可能です。
またアドレッサブルLED機器を接続可能なARGB対応VD-G型3PIN LEDヘッダーも2基実装されています。「ASRock Z490 Taichi」で使用可能なアドレッサブルLEDテープとしては国内で発売済みの「BitFenix Alchemy 3.0 Addressable RGB LED Strip」や「ASUS ROG ADDRESSABLE LED STRIP-60CM」や「AINEX アドレサブルLEDストリップライト」が動作することが確認できています。
「ASRock Polychlome RGB Sync」は製品サポートページで配布されている専用アプリを使用することで他社のLEDイルミネーション操作同様に発光カラーや発光パターンを設定できます。
「Static」「Breathing」「Strobe」「Cycling」「Random」「Music」「Wave」などのRGB発光パターン、「Spring」「Meteor」「Stack」「Cram」「Scan」「Neon」「Water」「Rainbow」などのアドレッサブルRGB発光パターンが選択できます。「Static」「Breathing」「Strobe」など特定の発光カラーを指定する発光パターンでは、リング型RGBカラーパレットやRGBスライダーを使用して発光カラーを自由に設定できます。
「ASRock Z490 Taichi」ではBIOS上からもグラフィカルUIで簡易的にLEDイルミネーションのライティング制御が可能です。
ASRock Z490 TaichiのOC設定について
ASRock Z490 Taichiを使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
ASRock Z490 TaichiなどASRock製Z490マザーボードのオーバークロック設定はOCツールというトップメニューの項目にまとめられ、下位グループとして「CPU設定」「DRAM設定」「電圧設定」の3種類が用意されています。
CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
コアクロックはコア数に対して各コアに最大動作クロック(BCLKに対する倍率)を指定できます。「コア0:コア1:コア2:コア3」を倍率として、例えば「45:43:43:42」のようにバラバラに指定した場合、4つのコアのうち1つに負荷が掛かる場合は4コアのうち1つが45倍動作、2つと3つの場合は43、4つの場合は42となります。
ASRock Z490 TaichiではCPUクロック動作倍率の設定モードとして、マザーボードのお任せとなる「自動(Auto)」、全コアの倍率を同じに設定する「すべてのコア(Sync All Cores)」、負荷のかかっているコア数によって最大動作倍率を設定する「コア毎(Per Core)」、CPUコア1つ1つに個別に最大動作倍率を指定する「Specific Per Core」の4つのモードが存在します。
ユーザーがCPUのOCを行う場合は通常、全コアの最大倍率を一致させると思いますが、同マザーボードの場合は「すべてのコア(Sync All Cores)」を選択して、「All Core: 50」と設定することでデフォルトのBCLK(ベースクロック)が100MHzなのでその50倍の5.0GHzで動作します。
「コア毎(Per Core)」モードでは負荷がかかっているコア数に対して最大動作倍率を設定可能です。
「Specific Per Core」モードでは各コアに対して個別に指定して最大動作倍率を設定できます。
Intel第10世代CPUは、従来ではオフセットやアダプティブのような大雑把な調整しか不可能だったV/Fカーブ(動作周波数と動作電圧の関係)を細かく調整できるようになっています。ASRock Z490 Taichiでは電圧設定の項目の中に「V/F Point Offset」の名前で同設定が配置されています。
現時点では既定の8点の周波数に対して設定されたCPU個体毎のストック電圧に対して、+/-のオフセット電圧を設定できます。Core i9 10900Kの場合は800MHz、2500MHz、3500MHz、4300MHz、4800MHz、5100MHz、5200MHz、5300MHzに対してmV単位でコア電圧オフセット値を指定できます。
キャッシュ動作倍率は「CPUキャッシュレシオ(CPU Cache Ratio)」から変更可能です。CPUコアクロック同様にベースクロックに対する動作倍率でキャッシュの動作周波数を設定できます。
ASRock Z490 Taichiは外部ベースクロックジェネレータ「Hyper BCLK Engine III」が搭載されており、ベースクロック(BCLK)を90MHz~1000MHzの範囲内で変更可能です。
続いてコア電圧の調整を行います。
Intel第10世代CPUではCPUコアとキャッシュへの電圧は共通なので、CPUコアクロックやキャッシュクロックのOCに関連する電圧設定としては、ASRock Z490 Taichiでは「CPUコア/キャッシュ電圧(CPU Core/Cache Voltage)」の項目を変更します。
ASRock Z490 TaichiではCPUコア電圧の設定モードとして、自動設定の「自動(Auto)」、CPUに設定された比例値にオフセットかける「オフセット」モード、マニュアルの設定値に固定する「固定」モード、の3種類が使用できます。
ASRock Z490 TaichiでCPUコア/キャッシュクロックのOCを行う場合、CPUコア電圧の設定については設定が簡単で安定しやすいので固定値を指定する固定モードがおすすめです。10コア20スレッドCore i9 10900KをOCする場合、CPUコア電圧の目安としては最大で1.300~1.350V程度が上限になると思います。
CPUコア電圧モードについて簡単に説明すると、オフセットモードやアダプティブモードはCPU負荷に比例して電圧が設定されており、低負荷時は電圧が下がるので省電力に優れるのですが、OCをする場合はマザーボードによって挙動に差があり安定する設定を見極めるのが難しいので、個人的にはオフセットやアダプティブは定格向け、OCには固定値適用の固定モードを推奨しています。
仮にOCでオフセットやアダプティブを使う場合も最初はコアクロックに対して安定する電圧を見極める必要があるので、まずは固定モードを使用します。
ちなみにマザーボードにより対応しているモードは異なりますが、CPUのオーバークロックに付随するコア電圧のモードの概略図は次のようになっています。
またコアクロックを高く設定する時に追加で変更するといい項目として「ロードラインキャリブレーション」があります。ロードラインキャリブレーションはCPU負荷時の電圧降下を補正してOCを安定させる機能です。「ASRock Z490 Taichi」では補正の強度として自動およびレベル1~レベル5の6段階が用意されており、レベル1が補正最大で、レベルの添え字が小さいほど電圧降下の補正は強くなりOCは安定しやすくなりますが発熱も大きくなります。レベル2かレベル3あたりから最初に使っておいて、ストレステストのCPU温度をチェックしながら補正を調整していくのがおすすめです。
またCPU設定の下の方には「短時間電力制限」「長時間電力制限」という2つの電力制限機能があり、電力制限がかかる閾値(単位はW)と電力制限がかかるまでの時間を設定できます。電力制限がかかるとその指定電力内に収まるようにコアクロックに制限がかかります。
デフォルトの状態では「Auto」になっていますが、ASRock Z490 Taichiでは手動OCを行う場合、パワーリミットが掛からないように勝手に設定してくれるので放置でも問題ありません。基本的に一定消費電力以内に収めるための省電力機能(+若干のシステム保護機能)と考えてください。
メモリのオーバークロックについても簡単に紹介しておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
一方でXMPによるメモリOCは上の手順によるOCをメーカー側がすでに行い動作確認をしているので、メーカーが動作確認を行ったOCプロファイルを適用するだけで簡単にメモリをオーバークロックできます。
メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、ASRock Z490 Taichiでは正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動で2133MHzや2400MHzなど定格となるSPDプロファイルの緩い設定で再起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。
ASRock Z490 Taichiではから「XMP設定の読み込み」からXMPモードを選択することでOCメモリに収録されたXMPプロファイルによるメモリのオーバークロックが可能です。
「XMP設定の読み込み」の設定値が自動(Auto)になっている場合は、使用するメモリにSPD情報として収録されている動作クロック2133~2666MHzなどのメモリ周波数およびタイミングによる定格動作となります。
手動でメモリ周波数を設定する場合は「DRAM周波数(DRAM Frequency)」の項目でプルダウンメニューから最大8400MHzまでの動作クロック(倍率)設定が可能です。
メモリ周波数もBCLKに対する倍率で動作周波数が決まっているので、BCLKを標準値の100MHzから120MHzに上げると、44倍設定時の動作周波数は4000MHzから5280MHzに上がります。
メモリタイミングの個別打ち込み設定も可能です。メモリタイミングを手動で設定する場合は基本的には「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS / RAS Precharge (tRCD / tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な3タイミングと、加えて「Refresh Cycle Time (tRFC)」と「Command Rate:1 or 2」の5つ以外はAutoのままでいいと思います。
DDR4メモリについては3000MHz以上にOCする場合は1.300~1.350V、3800MHz以上にOCする場合は1.370~1.400Vに上げる必要があります。メモリをOCする場合は最初から1.350V以上にDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。
1,2世代前の過去のIntel CPUではメモリ周波数を3200MHz以上にOCする場合は「VCCSA(CPU SA Voltage)」を盛るとメモリOCが安定したのですが、Intel第10世代CPU環境における「VCCSA」の影響は今のところよくわかりません。Auto設定で安定しない場合は昇圧を試してみても良いかもしれません。
また今のところZ490環境では現象を確認できていませんでしたが、メモリのオーバークロックでPCI-E拡張カードの検出不可やオンボードUSB端子同士の干渉などが発生する場合は「電圧設定」にある「VCCIO(CPU VCCIO Voltage)」や「チップセット電圧(PCH Core Voltage)」を盛ると安定するかもしれません。
ASRock Z490 Taichiの動作検証・OC耐性
BIOS周りの管理人的に気になるところの紹介はこのあたりにしてASRock Z490 Taichiを使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。まずはFast Bootとフルスクリーンロゴを無効にしてOSの起動時間を測定したところ、ASRock Z490 Taichiの起動時間は16秒ほどした。多機能なハイエンドマザーボードはPOSTやWindowsのブートに時間がかかる傾向がありますが、ASRock Z490 Taichiは起動が非常に高速です。
「ASRock Z490 Taichi」にCore i9 10900Kを組み込んだ場合のBIOS標準設定における動作についてですが、Intel Extreme Tuning Utilityから確認したところ、2コアまでは53倍、全10コアで49倍の動作倍率になっており、CPUコア動作倍率は仕様値通りです。しかしながら電力制限については無効化されていたので、BIOS標準設定ではCore i9 10900Kは全コア4.9GHz、CPU消費電力200Wオーバーで動作します。
TDPに対して全コア最大動作倍率が高く設定されているCPUに電力制限を適用してIntelの公式仕様通りに使用したい場合、例えばCore i9 10900Kでは長期間電力制限を125W、短期間電力制限時間を58sに設定してください。
続いてASRock Z490 Taichiを使用した場合のCPUとメモリのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
Core i9 10900KのOC設定は「CPUクロック倍率:52」「キャッシュ倍率:47」「CPUコア電圧:1.370V」「ロードラインキャリブレーション: レベル1」、メモリのOC設定はG.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVKのOCプロファイルを適用し、「メモリ周波数:4000MHz」「メモリ電圧:1.500V」「メモリタイミング:15-16-16-36-CR2」としています。
上の設定を適用したところ問題なくOSを起動させることができました。
ASRock Z490 Taichiの環境(BIOS:1.30)においてメモリのオーバークロックを行ったところ、G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVKのOCプロファイルによる、メモリ周波数を4000MHz、メモリタイミング:15-16-16-36-CR2の超低レイテンシで安定動作を確認できました。「ASRock Z490 Taichi」はセカンド・サードタイミングのオートフィルの精度が非常に優秀です。
G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVKのOCプロファイルはすでに検証済みの他社製Z490マザーボードでは起動までは安定するものの、ストレステストをクリアできなかったのですが、「ASRock Z490 Taichi」ではそのOC設定がすんなりと動作しました。
また同メモリキットを使用してBIOSから『メモリ周波数4000MHz、メモリタイミング16-16-16-36-CR2、メモリ電圧1.450V』のようにメモリ周波数と主要タイミングのみのカジュアル設定で4000MHz/CL16のOCを適用したところ、こちらも無事に安定動作を確認できました。
10コア20スレッド「Intel i9 10900K」のコア5.2GHz/キャッシュ4.7GHz、メモリ周波数4000MHz、メモリタイミング15-16-16-36-CR2でCinebench R20も問題なくクリアできました。
続いてこのOC設定を使用してストレステストを実行しました。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間7分、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)をソースとしてAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。Core i9 10900Kは10コア20スレッドのCPUなので、同じ動画のエンコードを2つ並列して実行し、30分程度負荷をかけ続けます。ストレステスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
ストレステスト中のCPU温度とCPU使用率のログは次のようになりました。マザーボードにASRock Z490 Taichiを使用することでCore i9 10900Kを全コア同時5.2GHz、キャッシュ4.7GHz、メモリ4000MHzにOCしてストレステストをクリアできました。CPUクーラーのファン回転数は1200RPMで固定しています。
スマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE Pro」(レビュー)を使用してASRock Z490 TaichiのVRM電源温度をチェックしてみました。
最初からCore i9 10900Kを上記のBIOS設定でOCした時の負荷テスト中の温度をチェックしていきます。ASRock Z490 Taichi環境でCore i9 10900Kを全コア5.2GHzまでOC、かつメモリも4000MHzにOCするとシステム全体(ほぼCPU)の消費電力が330Wに達します。
Core i9 10900Kを全コア5.2GHzにOCするとEPS電源経由の消費電力は300Wに達し、エンスージアスト向けCore-Xもかくや、というくらい非常に大きいCPU消費電力が発生します。
そんなCPU消費電力300W級のVRM電源負荷に対して、「ASRock Z490 Taichi」は50A対応Dr. MOSで構成される超堅牢な15フェーズVRM電源回路と、3基のアクティブ冷却ファンを内蔵するヒートパイプで連結されたVRM電源クーラーのみで、VRM電源温度はソフトウェアモニタリングで55度前後、サーモグラフィーのホットスポットでも60度未満に収めることができました。
「ASRock Z490 Taichi」であれば、市販CPUクーラーで最高性能な360サイズ簡易水冷はもちろん、DIY水冷も含めて、Core i9 10900Kの常用OCに標準装備のみで十分に対応が可能です。
「ASRock Z490 Taichi」はVRM電源クーラーに標準で3基の冷却ファンを搭載しているので、これの冷却性能やファンノイズについて解説していきます。
上に掲載した負荷テスト中の温度グラフに併記していますが、アイドル時などVRM電源温度が十分に低い時、標準設定では左側VRM電源冷却ファン(MOS Fan 1)が3000RPM弱、上側VRM電源冷却ファン(MOS Fan 2)が2000RPM弱で動作します。回転数は高いですがファンが小径なので、アイドル時のノイズレベルは35dBを下回っており、PCケースに入れてしまえばまず聞こえません。
一方でストレステスト中はVRM電源温度の上昇に合わせてVRM電源冷却ファンの速度も上昇していき、BIOS標準設定では左側VRM電源冷却ファンが4700RPM前後、上側VRM電源冷却ファンが3000RPM前後に達します。特に前者のファンノイズが非常に大きいためノイズレベルは45dB前後に達します。ファン回転数が高いこともあって周波数的にかなり耳障りなファンノイズが発生ます。300Wクラスの負荷に対してVRM電源温度が60度未満に収まるとはいえ、標準設定におけるVRM電源冷却ファンの煩さはデメリットの方が大きく感じました。
そこでBIOSからVRM電源ファンのファン速度を手動設定で固定しました。左側VRM電源冷却ファンが2700RPM前後、上側VRM電源冷却ファンが3800RPM前後に設定しています。
今回の検証では簡単にVRM電源温度が80度以下でこの回転数になるよう固定しましたが、一般にはVRM電源温度60~70度で左側VRM電源冷却ファンが3000RPM未満、上側VRM電源冷却ファンが4000RPM未満になるように、それ以下でお好みのファンカーブを設定すると冷却性能と静音性が両立出来て良いと思います。
左側VRM電源冷却ファンが2700RPM前後、上側VRM電源冷却ファンが3800RPM前後にファン速度を固定するとノイズレベルは35dB前後になるので、PCケースに入れてしまえばまず聞こえません。
VRM電源冷却ファンのファン速度を手動設定で下げると、肝心のVRM電源温度がどうなるのか、同様の負荷テストで検証してみました。結果は下のサーモグラフィーの通り、ファン速度を落としてもVRM電源のホットスポットは60度半ばに収まっています。VRM電源冷却ファンを標準設定で高速回転させると60度未満に収まるので、それに比べると温度は上昇していますが、ノイズレベル35dB前後のという静音性との兼ね合いを考えれば極めて優秀な冷え具合だと思います。
「ASRock Z490 Taichi」では標準設定のままVRM電源に大きな負荷がかかるとVRM電源冷却ファンが非常に煩くなりますが、ファン速度を落としても十分な冷却性能は得られるはずなので、是非、BIOSから手動設定で調整してみてください。
ASRock Z490 Taichiのレビューまとめ
最後に「ASRock Z490 Taichi」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 歯車仕掛けのTaichiデザインにマシーン感が加わったSFチックな外観
- 50A対応Dr. MOSで構成される15フェーズの超堅牢なVRM電源回路
- 「Hyper BCLK Engine III」で高精度なBCLKの調整が可能
- フィンアレイ型ヒートシンクと3基の冷却ファンで構成されるVRM電源クーラー
- 10コアCore i9 10900K 5.2GHz、メモリ周波数4000MHz/CL15で安定動作
- 4000MHz/CL16がカジュアル設定で安定動作、タイミングのオートフィル精度が優秀
- 10900Kの全コア5.2GHz OCでもVRM電源温度は60度台に収まる
- 重量級グラボにも耐えるメタルアーマー採用PCIEスロット「STEEL SLOT Gen4」
- ヒートシンク付きのNVMe対応M.2スロットを3基搭載
- WiFi6、最大通信速度2400Mbps、Bluetooth5.0に対応した無線LAN搭載
- USB3.2 Gen2x2対応Type-C端子をリアI/Oに標準搭載
- Realtek製2.5Gbイーサ「Dragon 2.5 Gigabit LAN(RTL8125BG)」をリアI/Oに標準搭載
- ESS製DACを採用したハイエンドオーディオクラスのオンボードオーディオ
- スタート・リセットスイッチなど動作検証に便利なオンボードスイッチ
- 製品価格が5万円ほどと高価
- BIOS標準設定ではCore i9 10900KのPL1:125Wの電力制限が無効化されている
- 標準設定ではVRM電源冷却ファンが煩いのでBIOSから手動設定を推奨
(ファン速度を落としても冷却性能は十分確保できる)
10コア20スレッド「Core i9 10900K」など第10世代Comet Lake-S CPUに対応するZ490チップセット搭載マザーボードとしてリリースされた「ASRock Z490 Taichi」は、50A対応Dr. MOSで構成される15フェーズの超堅牢なVRM電源回路、USB3.2 Gen2x2やRealtek製2.5Gb LANやWiFi6といった最新の高速コネクティビティ、ESS製DACを採用したハイレゾクラスのオンボードオーディオなど、ゲーマーからクリエイターまであらゆるユーザーに対応できるハイエンドマザーボードに仕上がっています。
Z390のTaichiでは細かいパーツで構成されて今にも歯車が動き出しそうなギミック感があるチップセットクーラーが万人受けとTaichiらしいユニークさを見事に両立していましたが、「ASRock Z490 Taichi」はその独自のギミック感溢れるディティールはそのままに、黄金カラーの歯車やアドレッサブルLEDイルミネーションによって豪奢な外観へと新生しています。Taichiシリーズの16代目となるZ490 Taichiには最小サイズレーザーによって歯車に「TAICHI XVI」と刻印されているところにもこだわりを感じます。
「ASRock Z490 Taichi」のBIOSではクラシカルなUIが採用されており、OSインストールのブート設定からオーバークロックまで多方面に使いやすいUIだと思います。管理人個人的にも好みです。余談で、過去の製品では長らく日本語ローカライズが一部怪しかったのですが、「ASRock Z490 Taichi」では正しく修正されたところが地味に注目ポイントでした。
「ASRock Z490 Taichi」のBIOS標準設定でCore i9 10900Kを動作させるとTDP125W制限が無効化されます。BIOSから手動設定を行えばIntel公式仕様値通りに動作させることが可能ですが、電力制限無効化の場合、CPUクーラーは240サイズ以上の簡易水冷CPUクーラーが推奨されるくらいの発熱が生じるので注意が必要です。
ASRock Z490 Taichiを使用した検証機では10コア20スレッドのIntel Core i9 10900Kを全コア5.2GHzに、メモリ周波数も4000MHzにオーバークロックして負荷テストをクリアすることができました。
マザーボードのOC耐性を評価する上で重要なファクターになるVRM電源について、「ASRock Z490 Taichi」は抜群の冷え具合を発揮しました。「ASRock Z490 Taichi」であれば市販の簡易水冷やDIY水冷など環境を選ばず、VRM電源周りは標準装備のままでCore i9 10900KをガンガンOCできます。
10コア20スレッドのCore i9 10900Kを常用限界までOCすると、EPS電源経由のCPU消費電力が300Wを超えますが、「ASRock Z490 Taichi」ではその強烈なVRM電源負荷に対しても、50A対応Dr. MOSなどで構成される15フェーズの超堅牢なVRM電源回路が適切に熱を分散します。
他社がハイエンド製品に90A対応Dr. MOSを採用する中、Mini-ITXなどフェーズ数が制限される製品以外は50A対応Dr. MOSを採用しつつも十分な性能を実現しているところに、ASRock製品がコストパフォーマンスを評価されることへの裏付けと、同社のVRM電源回路の設計技術の高さを感じます。
VRM電源負荷が特に大きい左側に熱容量が大きくバッファとして優れるアルミニウム塊型ヒートシンクを搭載し、ヒートパイプによる連結で上側に放熱面積を大きくできるフィンアレイ型ヒートシンクを拡張、さらにアクティブ冷却ファンでVRM電源回路を含めたCPUソケット周りの通気性も確保するという綿密なVRM電源クーラー設計によって、標準装備のみでファン速度を十分に落としてもVRM電源温度を60度半ばに収めることに成功しています。
VRM電源冷却ファンが標準設定のままだと煩いというのは玉に瑕であるものの、手動設定で調整してやれば十分な冷却性能を維持しつつ、静音性も確保できます。
メモリOCについては、メモリ周波数と主要タイミングのみを指定するカジュアルOC設定で、デュアルチャンネル4枚刺しのメモリ周波数4000MHzにおいてメモリタイミング16-16-16-36-CR2まで詰めることができ、さらに「G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK」に収録されたメモリ周波数4000MHz/メモリタイミングCL15の超低レイテンシなXMPプロファイルも安定動作しました。
他社のZ490マザーボードでもなかなか安定動作しないOCプロファイルだったので、「ASRock Z490 Taichi」はBIOSにお任せになることの多いセカンド・サードタイミングのオートフィルの精度も優秀なのだと思います。
以上、「ASRock Z490 Taichi」のレビューでした。
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「ASRock Z490 Taichi」 レビュー
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) May 31, 2020
良い
✅50A対応Dr. MOSによる15フェーズVRM電源
✅10900K 5.2GHz OCでもVRM電源温度は60度台
✅メモリ4000MHz/CL15で安定動作(2nd/3rdオートフィル精度が優秀)
悪いor注意
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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