Intel Core i7 10700F


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Intel第10世代Comet Lake-Sシリーズから、8コア16スレッドでTDP65WかつiGPU非搭載な末尾F付きのスタンダードモデル「Intel Core i7 10700F」をレビューします。
Core i7 10700FをIntelの仕様値通りTDP65Wで運用できるのか、さらに前世代最上位で同コアスレッド数のCore i9 9900KやCore i7 9700K、競合製品からは同コアスレッド数のRyzen 7 3700Xと比較して、クリエイティブタスクやPCゲーミングにおいてどれくらい性能を発揮するのか、各種ベンチマーク比較によって徹底検証していきます。



製品公式ページ:https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/products/processors/core/i7-processors/i7-10700.html






Intel Core i7 10700F レビュー目次


1.Intel Core i7 10700Fの外観・付属品・概要
2.Intel Core i7 10700Fの検証機材・動作設定
3.Intel Core i7 10700Fの動作クロック・消費電力・温度


4.Intel Core i7 10700Fの基礎ベンチマーク
5.Intel Core i7 10700Fのクリエイティブ性能

  ・3Dレンダリング性能
  ・動画エンコード性能
  ・RAW現像性能
  ・PCゲーム/スマホアプリのビルド性能
6.Intel Core i7 10700Fのゲーミング性能
  ・4K解像度/60FPSターゲット
  ・フルHD解像度/ハイフレームレート
  ・バトルロイヤル系PCゲーム/240FPSターゲット

7.CPUエンコーダとリアルタイム配信について

8.Intel Core i7 10700Fのレビューまとめ

  ・温度・消費電力について
  ・クリエイティブ性能について
  ・ゲーム性能について
  ・総評 - 4万円のIntel製8C16TはベストオブゲーミングCPU


リンク.Intel第10世代Comet Lake-Sのレビュー記事一覧へ



Intel Core i7 10700Fの外観・付属品・概要

「Intel Core i7 10700F」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。またこの章では「Intel Core i7 10700F」の仕様等について簡単に触れておきたい概要もあれば紹介します。
「Intel Core i7 10700F」の製品パッケージは第8/9世代からイラストデザインは変わっていますがサイズは同じで紙製です。(CPUクーラーが付属するので、比較しているCore i9 9900KFのパッケージより奥行きがあります)
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「Intel Core i7 10700F」にはCPUクーラーが標準で付属します。Intelの付属CPUクーラーには全高の高いモデル低いモデルがありますが、第10世代CPUでは上位のCore i7 10700Fでも全高の低いモデルです。天面に装着された冷却ファンの定格(最大)回転数は3000RPMです。
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Core i5 10400など下位モデルはIntel純正でお馴染みのアルミニウム製ヒートシンクで銅柱なしの廉価なCPUクーラーですが、「Intel Core i7 10700F」など一部の上位モデルではヒートシンクに黒塗装が施された新しいCPUクーラーが付属しており、アルミニウム製フィンの中央には銅柱が埋め込まれています。
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「Intel Core i7 10700F」などIntel第10世代Comet Lake-SはCPUソケットがIntel LGA1200に更新されていますが、CPUのPCB基板サイズなど基本的な形状は従来とほぼ共通です。
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以下、外観は刻印以外共通なのでCore i9 10900Kの写真で紹介していきます。
前世代となる第9世代CoffeeLake Refresh-Sではヒートスプレッダの形状がかなり昔のものに先祖返り?して、CPUクーラーと接する面積が小さくなっていましたが、Core i7 10700FやCore i9 10900KなどIntel第10世代Comet Lake-Sはヒートスプレッダが僅かながら大きくなっているように見受けられます。
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コンマミリ単位で僅かに薄くなっているようにも見えますが、Core i9 10900KとCore i9 9900KのPCB基板の厚みはほぼ同じです。
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重量を比較するとCore i9 10900Kのほうが2g程度重く、ここからもヒートスプレッダの大型化が確認できます。同じ材質なら熱容量はヒートスプレッダの質量にほぼ直結するので、Core i7 10700FやCore i9 10900KなどIntel第10世代Comet Lake-SではCPUの発熱に対するヒートスプレッダのバッファ性能も高まっているはずです。
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第9世代CoffeeLake Refresh-SではCPUダイの厚みが従来よりも増しており、ダイ研磨によって冷却性能が上がるとプロOCerが検証を行ったり、ダイ研磨の専用ツールが発売されるなど話題になりましたが、Intel第10世代Comet Lake-SではCPUダイを薄くすることで温度が下がっているとアピールされています。TIMは前世代に引き続きソルダリング寄りな性能のSTIMが採用されているとのことなので、やはり殻割りクマメタル化が捗りそうです。
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「Intel Core i7 10700F」は8コア16スレッドのCPUで、ベースクロックは2.9GHz、最大シングルブーストクロックは4.8GHz、最大全コアブーストクロックは4.6GHzとなっています。倍率アンロックなK付きCPUは従来のTDP95WからTDP125Wへ引き上げられていますが、「Intel Core i7 10700F」はTDP65Wのままです。
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またIntel第10世代Comet Lake-SのCoreシリーズは、Intel製エンスージアスト向けCPUのCore-Xでいち早く採用された「Turbo Boost Max 3.0 Technology」に対応しています。TBM3.0は、CPUダイ上で最も電圧特性の良いコア(CPU個体ごとに異なる)を自動で選別し、非常に高い単コア最大ブーストクロックで動作させ、アクティブタスクへ優先的に割り当ててくれる機能です。
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「Intel Core i7 10700F」は末尾F付きのCPUなので、CPUパッケージに「Discrete Graphics Required」と製品パッケージに記載されているように、統合グラフィックス(iGPU)が無効化されているので、別途、グラフィックボードも用意する必要があります。
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「Intel Core i7 10700F」を、前世代で同コアスレッド数のCore i9 9900、前世代同クラスのIntel Core i7 9700Fや、競合AMDの同コアスレッド数モデルRyzen 7 3800Xと比較すると次のようになっています。
Intel Core i7 10700F 簡易スペック比較

Core i7 10700F
Core i9 9900
Core i9 9700F Ryzen 7 3700X
コアスレッド 8コア16スレッド 8コア8スレッド 8コア16スレッド
ベースクロック 2.9GHz 3.1GHz 3.6GHz 3.9GHz
単コア最大ブースト 4.8GHz 5.0GHz 4.7GHz 4.5GHz
全コア最大ブースト 4.6GHz 4.5GHz 4.4GHz ~4.2GHz
オーバークロック
X
(Z付マザーボード環境ならメモリはOC可能)
O
L3キャッシュ 16MB 16MB 12MB 32MB
TDP 65W
CPUクーラー 付属 付属
(Wraith Prism)
iGPU
X O X X
おおよその国内価格
(北米希望小売価格)
4.3万円
(298ドル)
なし
4.0万円
(323ドル)
4.0万円
(329ドル)
iGPU搭載モデル
の価格
4.8万円
(323ドル)
5.3万円
(439ドル)
4.0万円
(323ドル)
なし


Intel第10世代Comet Lake-Sのプラットフォーム関連について、まずCore i9とCore i7は定格メモリ周波数が従来の2666MHzから2933MHzへと引き上げられています。Core i5以下の定格メモリ周波数は2666MHzとなり、Core i5は据え置き、Core i3以下は従来モデルから引き上げという形です。
ネットワーク関連では、CPUにIntel AX201というWiFi6対応無線LANコントローラーがチップセットに統合されています。160MHz幅で通信可能にするGig+にも対応し、最大2400Mbpsで通信可能です。またオプショナルな要素として、Intel製2.5Gb LANコントローラー I225-V(Foxville)やThunderbolt3も増設IOとしてサポートします。
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Intel第10世代Comet Lake-Sの対応マザーボードチップセットは新しい400シリーズチップセットとなり、CPUソケットもLGA1200に変わるので、Z390やH370など300シリーズチップセットを搭載するLGA1151ソケットの旧世代マザーボードとは非互換です。
400シリーズチップセットには、すでにマザーボード製品が各社から発表されている最上位「Intel Z490」に加えて、安価な「Intel H470」、「Intel B460」、「Intel H410」などもラインナップされています。
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主要4社Z490マザーボードを徹底比較!第10世代Core-Sにイチオシはどれか?
Intel Z490マザーボード比較



Intel Core i7 10700Fの検証機材・動作設定

以下、「Intel Core i7 10700F」の各種検証を行うベンチ機、および比較対象となる各CPUのベンチ機の詳細となります。
Intel LGA1200(Z490)環境 テストベンチ機の構成
CPU Intel Core i9-10900K(レビュー
Intel Core i9-10900(レビュー
Intel Core i7-10700K(レビュー
Intel Core i7-10700F(レビュー
Intel Core i5-10400(レビュー
Intel Core i3-10100(レビュー
マザーボード ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME
 (レビュー
CPUクーラー Fractal Design Celsius S36 (レビュー
Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー
メインメモリ G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK
DDR4 8GB*4=32GB (レビュー
3600MHz, CL16-16-16-36-CR1
ビデオカード(共通) ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core
レビュー
システムストレージ(共通) Samsung 860 PRO 256GB (レビュー
OS(共通) Windows10 Home 64bit
電源ユニット(共通) Corsair HX1200i (レビュー
ベンチ板 STREACOM BC1 (レビュー

Intel LGA1151(Z490) Test Bench

Intel LGA1200(Z490)環境では検証機材マザーボードとして「ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME」を使用しています。「ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME」でCPU動作設定を標準設定のAutoとした場合、同環境で検証する各CPUのBy Core Usage動作倍率は単コア/全コアは仕様通りで、長時間電力制限PL1による電力制限も正常に適用されます。短時間電力制限PL2や短期間電力制限時間Tauについても以下のテーブルで示すIntel公式仕様の通り設定されていました。
Intel第10世代CPUの電力制限仕様値

TDP PL1 PL2 Tau
Core i9 125W 125W 250W 56s
65W 65W 224W 28s
35W 35W 123W 28s
Core i7 125W 125W 229W 56s
65W 65W 224W 28s
35W 35W 123W 28s
Core i5 125W 125W 182W 56s
65W 65W 134W 28s
35W 35W 92W 28s
Core i3 65W 65W 90W 28s
35W 35W 55W 28s

長時間負荷をかけた時のCPU消費電力(CPU Package Power)がTDPの範囲内に収まるCPUについては特に追加の設定を設けていませんが、Core i9-10900Kのように全コア最大動作倍率においてTDPを大きく上回るCPUに関してはBy Core Usage動作倍率は定格のまま、『PL1=TDP、PL2=(テーブルの仕様値)、Tau=56s(125W) or 28s(65W)』のIntel公式仕様および『PL1/PL2無効化』の2つのケースで測定を行います。
「ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME」の場合、By Core Usage動作倍率および電力制限は下記のような形でBIOS上から設定が可能です。
Intel LGA1200(Z490)_TDP_BIOS (1)Intel LGA1200(Z490)_TDP_BIOS (2)
上の設定はASUS製マザーボードのBIOSメニューから設定した例ですが、ASRock、GIGABYTE、MSIなど主要4社のマザーボードであれば同種の設定項目が用意されているはずなので、同じように電力制限を課すことができます。再起動等で初期化されることもあるので、確実性の高いBIOSからの設定が推奨なのですが、「Intel Extreme Tuning Utility」からも設定が可能です。





ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する2020年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Intel Core-XやAMD Ryzen TRのようなハイエンドデスクトップ環境はもちろん、メインストリーム向けでもハイパフォーマンスな環境を目指すのであれば、システムストレージ用に一押しのSSDです。
「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
Samsung SSD 860 PRO 256GB

CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
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グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。Thermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスで適量が塗布されていれば、CPUクーラー固定時の圧着でヒートスプレッダ全体へ自然に伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
Thermal Grizzly Kryonaut_apprication

サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
「Thermal Grizzly Carbonaut」はCore i9 9900Kを冷やせるか!?
Thermal Grizzly Carbonaut_Core i9 9900K





Intel Core i7 10700Fの動作クロック・消費電力・温度

「Intel Core i7 10700F」に関する検証のはじめに、「Intel Core i7 10700F」の動作クロック、消費電力、温度など同CPUの基本的な動作についてチェックしていきます。

「Intel Core i7 10700F」は8コア16スレッドのCPUであり、定格動作において1コア~8コアまで同時に負荷がかかった時の最大動作倍率はコア数1~8に対して順番に[48, 48, 47, 47, 46, 46, 46, 46]です。全8コアへ同時に負荷がかかっても最大で4.6GHz動作が可能となっています。
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HWiNFOから「Intel Core i7 10700F」のコアクロックの挙動を確認したところ、確かに負荷の軽い場面では最大4.8GHz程度で動作するコアがありました。
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またIntel第10世代Core-S CPUの製品仕様によると、Intel Core i7 10700Fの電力制限は、「Turbo Boost Power Max(長期間電力制限/Power Limit 1)」が65W(=TDP)、「Turbo Boost Short Power Max(短期間電力制限/Power Limit 2)」が224W、「Turbo Boost Power Time Window(短期間電力制限時間/Tau)」が28sになっているはずです。
Intel Package Power Control
Intel 10th-Gen CometLake-S_Package Turbo Specifications_S-series
「Intel Core i7 10700F」をZ490マザーボード「ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME(BIOS:0607)」と組み合わせてCPU動作をBIOS標準設定とすると、PL1:65W、PL2:224W、Tau:28sの電力制限で動作するので、Cinebenchのような短時間のベンチマークや、Aviult&x264エンコードの最初の1分弱など、全8コアへ同時に大きな負荷がかかった時の動作クロックは全コア4.6GHzに張り付きました。このときCPU Package PowerはTDP=PL1=65Wを大幅に超過し、最大で140W程度を示します。
Intel Core i7 10700F_Boost-Clock_multi_PL2
一方で「Intel Core i7 10700F」を仕様通り電力制御(PL1:65W、PL2:224W、Tau:28s)で動作させると、負荷開始からTauで指定される短期間電力制限の期間内ではTDPを大きく上回る消費電力が発生しますが、Tau経過後はTDP(PL1:長時間電力制限)と同じ65WへCPU Package Powerが抑制されます。
「Intel Core i7 10700F」はPL1:65Wの電力制限下において、全コアの実動平均コアクロックは3.7GHz程度となります。
Intel Core i7 10700F_Boost-Clock_multi_PL1
TDP65W動作時のIntel Core i7 10700Fの全コア動作クロックは実動平均で3.7GHz程度になっており、全コア4.6GHzに張り付く電力制限無効化との性能差は概算で25%程度です。ワークロードの重さによっては、これよりも実動コアクロックが低くなる可能性もありますが、ベースクロック仕様値の2.9GHzはTDP65W制限下でもクリアできていると見て問題ないと思います。


続いてCPU消費電力の検証結果をチェックしていきますが、当サイトのCPUレビューでは主として”CPU温度への影響要因”という意味においてCPU消費電力を評価しているので、動画のエンコードによって長期間電力制限が効いている状態の平均的な消費電力をCPU消費電力として比較します。
個人的な意見としては短期間電力制限は短期間かつCPU温度によっても制御されるのでCPU温度への影響要因として比重は小さく、また瞬間ピーク電力はせいぜいがTDP+100W程度なので、マザーボードVRM電源の破損を心配するほどではなく、その程度の電力超過は電源ユニットで十分吸収できるので、評価対象としてあまり意味がないと思っています。
またCPU製品仕様のTDPについては、定義がIntel/AMDで厳密には異なり、各社の具体的な測定・算出方法も不明なので、CPU動作クロックを含めて総合的に判断する必要があるものの、基本的には長期間電力制限時の消費電力がTDP仕様値とほぼ一致、もしくはTDP仕様値を下回れば正常であると評価します。
当レビュー記事では簡単のため割愛しますが、CPUの消費電力に関する評価基準の補足として下記の記事も参考にしてください。
2019年最新CPUの消費電力・発熱・TDP・温度について - 爆熱評価のウソほんと
2019年最新CPUの消費電力・発熱・TDP・温度について

CPU消費電力の測定には電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの出力ではなく変換ロスを差し引いた入力電力をチェックしています。
また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子を除いた、各種電源端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。そのため測定値にはEPS電源端子を経由して供給されるCPU消費電力以外の消費電力は含まれません。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。
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CPUの消費電力や温度の測定を行う負荷テストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、Aviutl&x264を使って動画のエンコードを行います。動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列実行、16コア以上は3並列実行としています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTやPrimeなど専用負荷ソフトを使用しているレビューもありますが、管理人の私見としてはCPU負荷が非現実的なので、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースを想定した場合、ほぼ最大のCPU負荷となるx264による動画エンコードとストレステストに採用しています。
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「Intel Core i7 10700F」と比較対象の各CPUについて、上記負荷テスト中の”平均値を消費電力”、”最大値を瞬間的な最大電源負荷”と表記した場合、消費電力測定結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ

TDP:65Wの添え字があるケースについては『PL1:65W、PL2:224W、Tau:56s』と電力制限を課しているので当然ですが、「Intel Core i7 10700F」のCPU消費電力は93.4W程度となりました。電力制限を解除すると全コア4.6GHz動作となりEPS電源経由の消費電力は170W前後で推移します。
電力制限を無効化し全コア4.7GHzで動作させたCore i7 10700Kのほうが、同じく4.6GHzで動作させたCore i7 10700Fよりも低消費電力なので、やはり倍率アンロックなK付きCPUは電力特性が選別されている(逆に言うと10700や10700Fは選別落ち)ようです。
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Z390環境における第8/9世代CPUのEPS電力と比較して、「Intel Core i7 10700F」など第10世代CPU各種はCPU Package Powerに対するEPS電力の値が15~20W程度大きい(EPS電源経由の消費電力が大きい)という傾向が確認されています。
そこで、いくつかのCPUにおいてシステム消費電力(EPS電源消費電力と同じくCorsair HX1200iの出力電力ログを参照)と、CPU Package Power(HWiNFOによってソフトウェアモニタリング)の2種類についても測定し、『EPS電力とCPU Package Powerの差分』、『システム電力とEPS電力の差分』の2つを下のグラフにまとめました。
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まず前提として、システム電力とEPS電力の差分(青色バー)がミニマックスでも5W程度の差に収まっているので、第10世代CPU&Z490の環境においてATX24PIN電源の消費電力がEPS電源へ転嫁されているというわけではないようです。
次に赤色バーに注目すると、EPS電力とCPU Package Powerの差分には第10世代CPUと第8/9世代CPUとの間にはやはり大きな差が見られます。
原因の1つとして、Z490環境については検証機材であるASUS ROG MAXIMUS XII EXTREMEは16フェーズと規模の大きいVRM電源回路を備えているので、その損失を考えたのですが、9フェーズ回路のASRock Z490 Phantom Gaming ITX/TB3で検証を行っても同じ結果が得られたので、VRM電源の損失という説は違うようです。
10コアダイの10900Kや10700FだけであればCPU Package Powerにマイナスのオフセットがかかっているという可能性も否定できなくはないのですが、第8世代CoffeeLake-Sをそのまま流用しているらしい6コアダイの10400でも同じ傾向になっており、8700Kと比較した時のコアクロックおよび消費電力との整合性を考えると、CPU Package Powerのオフセット説も疑問が残ります。
事実として第10世代CPUのEPS電源経由の消費電力は従来よりも15~20W程度大きいという傾向はあるものの、どうしてそうなるのか具体的な原因がわからないというのが正直なところです。


「Intel Core i7 10700F」を付属CPUクーラーで運用できるかどうかについて、上位モデルCore i9 10900の検証結果を参考に見ていきます。検証負荷には消費電力測定と同様に動画のエンコードを実行しています。
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付属CPUクーラーのファン回転数は2000RPMに固定しています。ファンノイズは40dB前後となっており、PCケースに入れてしまえば、そこまで煩くはありません。最大ファン回転数は3000RPMなのでファンノイズは上がりますが冷却性能的には多少の余力を残しています。
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「Intel Core i9 10900」を付属CPUクーラーで冷やしてみると、仕様値通りにTDP65Wの電力制限が適用されていれば、短期間電力制限のブーストが効く最初の30秒弱でCPU温度が80度を超えますが、それ以降はCPU Package Powerが65Wに制限されるので70度前後に収まります。
PL1:65Wを大幅に超えるような電力制限解除に対応できる余力はありませんが、TDP65Wの仕様値通りであれば付属CPUクーラーで「Intel Core i9 10900」を運用可能です。
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Core i7 10700Fの電力制限解除に対応可能なサードパーティ製CPUクーラーの参考として、PL1=125Wの電力制限を適用した「Intel Core i9 10900K」を120サイズ空冷CPUクーラーで冷やすと、CPU温度は60度前後に収まっています。
Core i7 10700Fの電力制限を無効化するとCPU Package Powerは140W程度に達するので上のケースよりも若干、温度は上がりますが、それでも一般的な120サイズ冷却ファンの空冷CPUクーラーで問題なく運用が可能です。
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Intel Core i7 10700Fの基礎ベンチマーク

Intel Core i7 10700Fの基本的なCPU性能を専用ベンチマークソフトで検証しました。
この章ではPCMark 8とPCMark 10という総合ベンチマークソフトを使用していますが、デスクトップ向けの高性能CPUの性能比較ベンチマークとしては頭打ちな傾向があります。レビュー項目の1つとして参考までにスコア比較していますが、実用的なCPU性能については後半の個別性能比較を参考にしてください。
また同ベンチマークはシングルスレッド性能(動作クロックの高さ)が重要になる傾向も強く、近年のCPUを見ると、Intel第8/9世代Coreに比べて第2世代以前のAMD Ryzen CPUでは低めのスコアが出ていましたが、AMD第3世代RyzenはIntel第8/9世代Coreとそん色ないパフォーマンスを発揮できるようになっています。

まずは「PCMark 8 Creative Test (Run Accelerated)」のベンチマーク結果をチェックしていきます。「PCMark 8」は動画再生能力、DirectX9のグラフィック性能、Webブラウジング、ビデオチャットなど一般ユースにおけるPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトです。
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「Intel Core i7 10700F」を含めた各CPU環境のPCMark 8ベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_bench_PCM8

「PCMark 10 Extended」のベンチマーク結果をチェックしていきます。「PCMark 10」はPCMark 8と同様にPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトですが、DirectX11に対応するなどPCMark 8よりも最近のPCの性能測定に最適化されています。
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「Intel Core i7 10700F」を含めた各CPU環境について、PCMark 10ベンチマークの総合スコアを比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
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「PCMark 10 Extended」にはPCの基本性能を測る「Essentials」、ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」、クリエイティブ性能を測る Digital Content Creation」、ゲーム性能を測る「Gaming」の大きく分けて4つのテストグループがあるので、個別にベンチマークスコアを比較してみました。

PCの基本性能を測る「Essentials」は、アプリケーションの起動に要する時間を測る「App Start-up」、 ウェブブラウジングの性能を測る「Web Browsing」、1対1または多対多のビデオ会議をシミュレートする「Video Conferencing」の3つのワークロードで構成されています。
モバイル版Core i7 1065G7を搭載するSurface Pro 7との比較でわかりますが、一般的なPC利用において大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Essentials」について「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
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ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」は、ワープロソフト(マイクロソフトWordなど)の処理性能をシミュレートする「Writing」、表計算ソフト(マイクロソフトExcelなど)の処理性能をシミュレートする「Spreadsheets」の2つのワークロードで構成されています。
モバイル版Core i7 1065G7を搭載するSurface Pro 7との比較でわかりますが、一般的なオフィスワークにおいて大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Productivity」について「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_bench_PCM10_3

クリエイティブ性能を測る「Digital Content Creation」は、写真に対するフィルタリング処理の性能をシミュレートする「Photo Editing」、動画編集の性能をシミュレートするワークロード「Video Editing」、レイトレーシングによる3Dグラフィクス制作(3Dレンダリング)をシミュレーションする「Rendering and Visualization」の3つのワークロードで構成されています。
「Digital Content Creation」について「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_bench_PCM10_4

ゲーム性能を測る「Gaming」は、グラフィックボードの性能測定で幅広く活用されているベンチマークソフト「3DMark」に収録された「Fire Strike」と同じベンチマークテストを実行するワークロードです。
「Gaming」について「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_bench_PCM10_5



Intel Core i7 10700Fのクリエイティブ性能

Intel Core i7 10700Fについて3Dレンダリング、動画エンコード、RAW現像、PCゲーム/スマホアプリのビルドなどクリエイティブ作業に関する性能を各種ベンチマークソフトや実際のアプリケーションで検証しました。

Intel Core i7 10700Fの3Dレンダリング性能

CPUのマルチスレッド性能を比較するベンチマークソフトとして国内外で最も知られている「Cinebench R15」をはじめとして、Cinebenchの2019年リリースの最新バージョン「Cinebench R20」、オープンソース3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトの4種類を使用して、CPUの3Dレンダリング性能についてベンチマーク測定を行いました。

Cinebench R15は3Dレンダリング性能を測定するベンチマークソフトになっており、マルチスレッド性能を測定するテストとシングルスレッド性能を測定するテストの2種類を実行しています。また2019年リリースの最新バージョンCinebench R20についてはマルチスレッド性能を測定するテストのみを実行しました。
Intel Core i7 10700F_cinebench-R15
Intel Core i7 10700F_cinebench-R20

Cinebench R15 マルチスレッド性能テストについて「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_rendering_1_cine_r15_multi

Cinebench R15 シングルスレッド性能テストについて「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_rendering_1_cine_r15_single

Cinebench R20 マルチスレッド性能テスト
について「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_rendering_1_cine_r20_multi

3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト
について「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_rendering_2_blender_1_time
「Blender」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 9400Fを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_rendering_2_blender_2_pef

3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフトについて「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_rendering_3_corona_1_time
3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 9400Fを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_rendering_3_corona_2_pef

3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトについて「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_rendering_4_v-ray_1_time
3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 9400Fを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_rendering_4_v-ray_2_perf


Intel Core i7 10700Fの動画エンコード性能

続いて無料で利用できる動画編集ソフトとして国内外で多数のユーザーがいる「Aviutl」と、商用動画編集ソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」と「Adobe Premiere Pro(Media Encoder)」を使用して、「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUの動画エンコード性能を比較していきます。

AviutlとTMPGEnc Video Mastering Works 7はいずれも、現在主流なH.264 (MPEG-4 AVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x264」エンコーダ、そしてH.264より高圧縮・高画質で次世代規格として期待されているH.265(HEVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x265」エンコーダが使用できるので、CPUをリソースとして各エンコーダで共通の動画ファイルのエンコードを行いました。
エンコードを行う動画ファイルについては、Tom Clancy's Ghost Recon Wildlandsのゲーム内ベンチマーク(60秒ほど)をNVIDIA ShadowPlayで録画したものを使用しています。1920×1080/60FPS/50Mbpsと3840×2160/60FPS/120Mbpsの2種類の動画ファイルを作成し、「1920×1080 to 1920×1080」、「3840×2160 to 1920×1080」、「3840×2160 to 3840×2160」の3種類のエンコードを行っています。
Aviutlのx264/x265のエンコード設定は次のスクリーンショットのようになっています。TMPGEnc Video Mastering Works 7については固定ビットレートで1920×1080へエンコードする場合は25Mbps、3840×2160へエンコードする場合は60Mbpsに設定しています。
x264_encode_settingx265_encode_setting
エンコーダと解像度設定が同じであればaviutlとTMPGEncのCPU別エンコード速度の傾向は概ね一致するので、aviutlのケースを抜粋してグラフを掲載します。厳密にはソフトウェアによって若干CPUメーカー別で得意不得意もあるので、aviutlとTMPGEncの全CPU比較データはリンクから各自で参照してください。x2/x3/x4のバーについては同じエンコードを添え字の数だけ並列実行した時の合計変換フレームレートを示しています。

なおフルHD解像度では8コア16スレッド程度、4K解像度では16コア32スレッド程度でマルチスレッド分散がボトルネックになり始め、1つのエンコードだけではCPUが遊び始めます。20コアオーバーのウルトラメニーコアCPUでマルチスレッド性能をフル活用しようと思うと、8K解像度のような超高解像度のエンコード、もしくは4K動画の複数並列エンコードを行う必要があるので注意してください。


x264エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)
Intel Core i7 10700F_encode_aviutl_x264_1920-1920

x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)
Intel Core i7 10700F_encode_aviutl_x264_3840-1920

x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)
Intel Core i7 10700F_encode_aviutl_x264_3840-3840

x265エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)
Intel Core i7 10700F_encode_aviutl_x265_1920-1920

x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)
Intel Core i7 10700F_encode_aviutl_x265_3840-1920

x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)
Intel Core i7 10700F_encode_aviutl_x265_3840-3840

加えてAdobe Premiere Pro(Media Encoder)による動画エンコードについても、「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUの動画エンコード性能を比較しました。

Adobe Premiere Proのエンコード設定はCPUリソースのx264エンコードで、1920×1080へエンコードする場合は25Mbps、3840×2160へエンコードする場合は60Mbpsの固定ビットレートです。Media Encoderでは1つのプロジェクトを複数の設定で同時にエンコードできますが、複数のプロジェクトを同時にエンコードすることができないので単一エンコードのみを比較しています。
Adobe Premiere Proによる動画エンコードについてはAMD Ryzen CPUは苦手である評価されていることが多いですが、2020年現在では最適化も進んでおり、コアスレッド数とコアクロックに比例した性能が発揮できるようになっています。
【Adobe Premiere Pro 全CPU比較データ:1920to1920 / 3840to1920 / 3840to3840
Intel Core i7 10700F_encode_ADPP_x264


Intel Core i7 10700FのRAW現像性能

続いてDxO PhotoLabによるRAW現像を行って「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。「SONY DSC-RX100M5」で撮影した5472×3648解像度のRAW画像ファイル 100枚に対して、DxO PhotoLabの画質プリセット「DxO 標準」をベースにノイズ除去を「PRIME」に変更したプリセットを適用し、RAW現像を行いました。なおDxO PhotoLabによるRAW現像は並列処理数を設定できますが、CPUコア数の半分もしくはそれより一つ少ないくらいの並列処理で最速になるようです。
DxO PhotoLab
DxO PhotoLabによるRAW現像速度について「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_DxO


Intel Core i7 10700FのPCゲーム/スマホアプリのビルド性能

最後に「Unreal Engine 4」や「Unity」などフリーウェアながら高画質なPCゲームやスマホゲームを製作可能なゲームエンジンを使用したゲーム制作におけるCPU性能の検証として、「Unreal Engine 4」で「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。
検証にはEpic Games Storeで無料配布されているデモプロジェクト「Infiltrator」を使用したビルド時間の比較を行います。検証設定としてリアルタイム表示はオフ、ライティングの品質をプロダクションとしています。Unreal Engine 4のバージョンは4.22.3、Windows10のバージョンは1903で統一しています。
Unreal Engine 4_Infiltrator_test
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間について「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_ue_1_time
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 9400Fを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのビルド速度を性能比としてグラフ化しました。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_ue_2_perf



Intel Core i7 10700Fのゲーミング性能

Intel Core i7 10700FのPCゲームに関する性能を実ゲームを用いたベンチマーク測定で検証しました。
なお章タイトルではゲーミング性能と表記してはいますが、Intel第7/8/9世代Core-SやAMD第2/3世代Ryzenなどここ数年で発売された4コア4スレッド以上のCPUであればフルHD~4K解像度の60FPSターゲットにおいてCPUボトルネックが発生するケースは多くありません。そのためCPUゲーム性能比較の具体的な内容は”高フレームレートにおけるCPUボトルネック比較”と表現するのが実状に即しています。
ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するCPUとしてIntel Core i5 10400やAMD Ryzen 5 3600など6コア12スレッド以上を個人的に推奨しています。

ゲームタイトルにもよりますがPCゲームにおけるCPU負荷は基本的にTDP内に収まることが多く、CPUコアクロックは全コア最大動作倍率に張り付きます。フレームレートに対するCPUボトルネックの緩和においては、この全コア最大動作倍率の高さが重要になり、クリエイティブタスクと違って電力制限は支配的ではなくなります。(PCゲームではIntel製CPUのPL1、AMD製CPUのPPTは影響をほとんど及ぼさなくなる)
PC-Gaming_CPU-Power
Core i9 9900KやRyzen 7 3700XのようにTDPに対して全コア動作倍率の高いCPUでは、PCゲームにおいてもCPU使用率が高くなるハイフレームレートでCPU消費電力がTDPを超過するタイミングもありますが、TDP内に制限した場合と比較して大きな差は出ません。
そのためクリエイティブタスクなどここまでの検証において複数の電力制限で測定していたCPUも、PCゲームでは簡単のため電力制限が緩い方だけを使用して性能を測定します。
CPU_game_TDP

「Intel Core i7 10700F」の場合は、200~300FPSの超高フレームレートでCPU負荷が比較的大きい状態でもCPU Package PowerはTDP65Wを下回るなら(もしくはTauのリセットが効く範囲内でのブーストが機能するなら)、全コア4.6GHzの高速動作となります。
Intel Core i7 10700F_game-clock_PUBG
ただし「Intel Core i7 10700F」の場合はゲーム負荷時のコアクロックとPL1の関係に注意が必要です。
「Intel Core i7 10700F」は10コア/4.6GHzという多コア高クロックに対してTDP65WとPL1の値が小さいため、ハイフレームレートなPCゲーミングなど一部のCPU負荷の高いゲーミングシーンにおいて、PL1以上のCPU負荷がTauを超過する長時間に渡って発生する可能性があります。
一例としてAssassin's Creed Odysseyでは100FPSを超えるハイフレームレートでCPU負荷をかけるとCPU Package Powerが80W~90Wで推移します。
Intel Core i7 10700F_game-clock_ACOD_PL-No
上のようにPL1を超えるCPU負荷が発生すると、Tauの時間内であれば(リセットが効く限りは繰り返しも可)、全コア4.6GHzで動作しますが、連続してTauの制限時間を超過すると、PL1:65Wの電力制限が発生し、コアクロックが低下します。こうなると当然CPUボトルネックが強まって、全コア4.6GHz動作の時よりもフレームレートが低下する可能性が高くなります。
ゲーム中にPL1:65Wの電力制限が発生した時の実動クロックは、上の章で紹介したクリエイティブタスクで100%負荷がかかった時のように全コア3.3GHzまで下がることは基本的になく、その時のCPU負荷によって前後しますが、現実的には4.3~4.6GHzの範囲内で変動すると思います。
Intel Core i7 10700F_game-clock_ACOD_PL-65W


各CPUのゲーミング性能を測定するため統一検証機材として、2020年最速のGPUである「NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti」を搭載したグラフィックボード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Core」を使用しています。
CPU Bench_Gaming_GPU
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Coreは、RTX 2080 TiのAIBパートナーの中でも屈指のOCチューニング力を誇るZOTACによって良質なGPUコアが選別され、リファレンスよりも200MHz以上も高いブーストクロック、さらにGDDR6メモリのメモリクロックまで引き上げるという、RTX 2080 Tiグラフィックボードで最速を狙えるファクトリーOCが施されています。加えて、ZOTACを高品質メーカーとして一躍ブランド力を押し上げたAMP Extremeシリーズの代名詞とも言える3スロットを占有する超弩級な大型GPUクーラーが採用され、静音性も非常に優れたモデルです。
「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme」をレビュー
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme


CPU別ゲーミング性能の比較には近年の高画質PCゲームから、Assassin's Creed OdysseyTom Clancy's Ghost Recon WildlandsShadow of the Tomb RaiderMiddle-Earth: Shadow of Warの4種類を使用しています。60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度/高画質設定と、100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/中画質設定の2種類について、各ゲームで平均フレームレートと最小フレームレートを測定しました。
Game_Performance
なおCPUボトルネック比較の性質上、平均FPSと最小FPSをある程度の精度で測定する必要があるため、検証ではほぼ同一シーンで測定が可能なゲーム内ベンチマークを使用しています。


Intel Core i7 10700Fのゲーム性能 - 4K解像度/60FPSターゲット

まずは60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度/高画質設定のゲーミング性能について「Intel Core i7 10700F」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。
なお上述の通り60FPSターゲットでは基本的にCPUボトルネックは発生しないので、グラフの掲載順は性能(平均フレームレート)による昇順ではなく、当サイト既定のCPU分類順としています。

Assassin's Creed Odyssey(4K解像度、超高-画質プリセット)に関する「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_game_1_3840_acod

Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands(4K解像度、非常に高い-画質プリセット)に関する「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_game_1_3840_gr

Shadow of the Tomb Raider(4K解像度、DirectX12、最高-画質プリセット)に関する「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_game_1_3840_sottr

Middle-Earth: Shadow of War(4K解像度、ウルトラ-画質プリセット)に関する「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_game_1_3840_sow


Intel Core i7 10700Fのゲーム性能 - フルHD解像度/ハイフレームレート

続いて100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/中画質設定のゲーミング性能について「Intel Core i7 10700F」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。

Assassin's Creed Odyssey(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_game_2_1920_acod

Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_game_2_1920_gr

Shadow of the Tomb Raider(フルHD解像度、DirectX12、中-画質プリセット)に関する「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_game_2_1920_sottr

Middle-Earth: Shadow of War(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 10700F_game_2_1920_sow


Intel Core i7 10700Fのゲーム性能 - バトルロイヤル系PCゲーム

最後に近年流行りのオンライン対戦PCゲームの中でも競技ゲーマーにも愛用される240Hzの超ハイリフレッシュレートなゲーミングモニタのユーザーが多いであろうバトルロイヤル系PCゲームにおけるCPU別ゲーム性能をチェックしていきます。
検証にはバトルロイヤルというジャンルにおける4大タイトルと言っても過言ではない、Apex LegendsCall of Duty: Black Ops 4FortnitePlayerUnknown’s Battlegroundsを使用します。
Game_Performance_br



Apex Legends(フルHD解像度、RTX 2080 Tiの既定プリセット)に関する「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。
一応、平均FPSの昇順で並べましたが、Apex Legendsは240FPSターゲットでもCPUボトルネックの影響が小さいタイトルとなっており、第1/2世代Ryzenが若干劣る程度で、第3世代Ryzenや第9世代Coreなど最新CPUは6コア6スレッド以上ならほぼ横並びです。
Intel Core i7 10700F_game_3_br240hz_al

Call of Duty: Black Ops 4(フルHD解像度、RTX 2080 Tiの既定プリセット)に関する「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。
Intel Core i7 10700F_game_3_br240hz_codbo4

Fortnite(フルHD解像度、高-画質プリセット)に関する「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。
Intel Core i7 10700F_game_3_br240hz_fn

PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「Intel Core i7 10700F」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。
PUBGのベンチマーク測定に使用しているトレーニングモードは他プレイヤーの影響を受けやすく測定精度は他の検証に比べるとやや劣るのですが、今回検証した中ではIntel Core i9 10900KやCore i9 9900Kが頭1つ飛び抜け、第3世代Ryzen各種やCore i7(8C8T, 6T12T)は測定誤差の範囲内でほぼ同性能といった具合でした。それ以下ではCore i5(6C6T)、Core i3(4C4T)、第2世代Ryzenと順に性能がスケーリングしていきます。
Intel Core i7 10700F_game_3_br240hz_pubg



CPUエンコーダとリアルタイム配信について

ゲーム実況やライブ配信と呼ばれるPCゲームのリアルタイム配信について、現在ではNVIDIA GeForce GTX 1660やAMD Radeon RX 580などミドルクラスGPUをエンコーダとすることでフルHD解像度で必要十分な画質とフレームレートが得られます。
GPUエンコーダは動作自体も軽いので、これらGPUエンコーダの登場によってリアルタイム配信やプレイ動画の録画におけるCPUエンコーダの役目は終わったというのが一時期の私見でしたが、メインストリーム向けCPUのコアスレッド数の増加に伴い、x264 Mediumのような高画質プリセットのプレイ&録画が一般ユーザー的にも現実的になってきています。

Youtube LiveやTwitchなどリアルタイム配信(ライブストリーミング)サービスで、PS4/Xbox/Switch等のコンシューマーゲーム機やPCゲームのプレイ動画・ゲーム実況を快適に配信するのに必要なCPU性能については、現在、連載を続けている【快適配信】シリーズで詳細に解説しています
一口にゲーム実況と言っても、『1.ビデオキャプチャを使用してPCは録画配信作業のみを行う』、『2.PC1台で同時にゲームプレイと録画配信を行う』の2つのケースに大別され、どちらで使用するのかで要求されるCPU性能やCPUメーカー毎の得手不得手など事情が変わってくるので注意してください。

ざっくりと現状でCPUを使用したリアルタイム配信・ゲーム実況に要求されるCPU性能だけ述べておくと、『ビデオキャプチャを使用した配信の最低水準は6コア12スレッドのCPU』、『ゲームをプレイしながら配信の最低水準は8コア16スレッドのCPU』です。



【快適配信】シリーズの記事一覧へ
【快適配信】シリーズの記事一覧へ


画質と快適性を求めるなら録画・配信専用マシンもオススメ

ビデオキャプチャ業界の進歩も目覚ましく、2018年に発売された「AVerMedia Live Gamer Ultra」は4K/60FPS/HDRやフルHD/240FPSの映像ソースを無遅延なパススルー表示しつつ、フルHD/60FPSのプレイ動画として録画・配信できるUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャとなっており、プレイ動画の録画・配信に関する多様なニーズを網羅し得る名機です。
4K/HDRや240FPSのパススルー対応「AVerMedia Live Gamer Ultra」をレビュー
AVerMedia Live Gamer ULTRA

前述の通りフルHD/60FPSの録画・配信であればGTX 1060程度の性能のGPUをエンコーダとすることで必要十分な画質が得られて動作も軽いので、録画配信のために高性能な反面、非常に高額なCPUに投資するよりも、多少コストがかかっても「AVerMedia Live Gamer Ultra」などのビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するほうが、録画・配信の手法としてはわかりやすくてハードルが低いと思います。
Intel Core i7 10700F review_00899

AVerMedia製ビデオキャプチャの最新おすすめ機種を機能比較
AVerMedia最新ビデオキャプチャのおすすめ

「AVerMedia Live Gamer Ultra」などUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するのであれば、ASRock Deskmini GTX 1060ベアボーン採用BTO PCの「G-GEAR alpha」や「GALLERIA Mini 1060」がおすすめです。
PCサイズはコンパクトなのでサブ機としてもあまり余分にスペースを占有せず、GPUにはGTX 1060を搭載しておりフルHD/60FPSのGPUエンコードにも余裕で対応できて、CPUには最大で「G-GEAR alpha」ならCore i7 8700、「GALLERIA Mini 1060」ならCore i7 7700を選択可能、2基の2.5インチSATA SSDと3基のM.2 SSDを搭載可能なのでストレージ拡張性も十分です。ASRock Deskmini GTXシリーズについてはレビューも公開しているので参考にしてみてください。
GTX 1060搭載で容積2.7LのスーパーコンパクトPC「GALLERIA Mini 1060」をレビュー
GALLERIA Mini 1060

G-GEAR alphaシリーズの販売ページへ




Intel Core i7 10700Fのレビューまとめ

「Intel Core i7 10700F」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ or 概要
  • Core i7シリーズ初の8コア16スレッドCPU
  • 定格でメモリ周波数2933MHzに対応
  • 全コア4.6GHz張り付きでもCPU Package Powerは140W前後
  • PL1:125W前後の電力制限解除なら120サイズ空冷CPUクーラーで運用可能
  • 前世代Core i7 9700Fよりも20~50%高いクリエイティブタスク性能(電力制限無効化)
  • ハイフレームレートなPCゲーミングでRyzen 7 3700X/3800Xより高性能
  • 4万円で購入可能なIntel初の8コア16スレッドCPU
悪いところ or 注意点
  • TDP65Wの電力制限下において全コアが実動平均で3.7GHz程度
  • iGPU非搭載なのでグラフィックボードが必要

温度・消費電力について

温度・消費電力に関する章や補足記事で解説した通り。Intel Core i9 7900Xの登場以降、Intel CPUは検証機材に使用するマザーボードに依るとはいえ基本的にIntelの仕様を満たす電力制限が無効化されていることが多く、「Intel Core i7 10700F」もまたCPU温度と消費電力が非常に高いと多くのレビューでは評価される可能性が高いと思われます。

しかしながら電力制限をIntelの仕様に合わせて設定すれば当然、Core i7 10700Fは問題なくTDP65WのCPUとして運用することができ、TDP65Wの電力制限を課していれば120サイズの一般的な空冷CPUクーラーはもちろん、付属CPUクーラーでも適切な温度で運用が可能です。
ただし「Intel Core i7 10700F」」の性能を価格相応に魅力のあるレベルで発揮するためには、実際のところ、PL1:95W程度に電力制限を解除する必要があります。

折角、Intelのメインストリーム向け8コア16スレッドCPU「Intel Core i7 10700F」で自作PCを組むのであれば、コストパフォーマンスを重視するにしてもPL1:95WだけでなくCPUの最大性能を引き出す電力制限無効化にも対応可能な120サイズ空冷CPUクーラーを使用するのがオススメです。

TPD65Wの仕様値通りに電力制限を課せば付属の空冷CPUクーラーでも運用可能というのは上位モデルのCore i9 10900でも同じですが、標準設定で電力制限がどうなっているかはマザーボードによるので、電力制限無効化時は簡易水冷CPUクーラーが推奨されるCore i9 10900と違って、その辺りを気にせずに市販の120サイズ空冷CPUクーラーで狙い撃ちできるCore i7 10700Fは自作PC初心者にとってもハードルが低く、導入しやすいCPUだと思います。


クリエイティブ性能について

「Intel Core i7 10700F」のクリエイティブ性能については、8コア16スレッドのCPUが全コア3.7GHz(TDP65W制限)もしくは全コア4.6GHz(電力制限無効化)で動作するという額面通りのパフォーマンスです。
前世代同クラスCPUである8コア8スレッドのCore i7 9700Fと比較して、「Intel Core i7 10700F」はマルチスレッディングに対応したことでアプリケーションにも依りますがクリエイティブタスク性能において20~50%程度の性能向上を果たしています。
電力制限を無効化して全コア4.6GHzで動作させた時の性能は、全コア4.7GHzで動作する上位モデルCore i7 10700Kに対してクリエイティブタスク性能はほぼ同等に迫ります。
単コア最大ブーストクロックが低い、電圧特性の選別の差でワットパフォーマンスが下がるという2点では劣るものの、倍率アンロックによるOCを無視すれば、Core i7 10700FとK付き上位モデルの差はほぼないといっても過言ではありません。
Intel Core i7 10700F_Performance_vs-AMD

一方で「Intel Core i7 10700F」を、同コアスレッド数の競合CPUであるAMD Ryzen 7 3700XやRyzen 7 3800Xと比較すると、”電力制限の設定次第”ではあるものの、クリエイティブタスク性能は基本的に同等と評価でき、電力制限を無効化すればRyzen 7 3700X/3800Xを僅かながら上回る性能を発揮します。
しかしながらCore i7 10700FはTDP65Wの仕様値通りに電力制限を課すと実動コアクロックが3.7GHz前後まで低下するので、全コア4.6GHzと比べて20%程度も性能が下がり、定格PPT:88W設定のRyzen 7 3700Xよりも低性能になってしまいます。
Core i7 10700Fを競合製品と比べた時に8コア16スレッドCPUとしての魅力ある形で運用しようとすると、PL1:95W程度までは少なくとも電力制限を緩める必要があるので、この点は注意が必要です。
Intel-Z490_Power-Limit

またCPU単体で見るとCore i7 10700FとRyzen 7 3700Xはいずれも4万円程度の8コア16スレッドCPUとなっており同等のコストパフォーマンスに見えますが、AMD第3世代Ryzenは1万円前後で購入できる定番B450マザーボードが主要4社から発売されているのに対して、Intel第10世代Core-Sに対応する400シリーズマザーボードはZ490が最安値クラスでも2万円以上、下位チップセットのH470やB460ですら1万円前後のモデルは少なく、しかもメモリOCに非対応という足回りでの欠点があり、プラットフォーム単位で見ると+1万円程度はコスパが下がるという見方になります。

またゲーミングPC1台でPCゲームプレイのプレイとCPUエンコーダによるプレイ動画の録画・配信を行うのに必要なCPU性能について、高画質の基準となるx264のFastプリセットやMediumプリセットでは8コア16スレッド以上が要求されるため、前世代Core i7の8コア8スレッドや6コア12スレッドでは力不足でした。第10世代ではCore i7が8コア16スレッドになったので、「Intel Core i7 10700F」がこの用途に対応できるというのも大きなポイントだと思います。



ゲーム性能について

Intelが第9世代に引き続き第10世代Comet Lake-S、特にCore i9 10900Kの発表スライドで掲げた”世界最速のゲーミングCPU(World's Fastest Gaming processor)”の売り文句の通り、100FPSオーバーのハイフレームレートにおけるCPUボトルネック緩和に関しては、Core i9 10900Kが最速でした。今回レビューした「Intel Core i7 10700F」は10900Kにこそ僅差で及びませんでしたが、前世代最上位のCore i9 9900Kを上回る性能を発揮しています。

100FPSオーバーのハイフレームレートにおけるCPUボトルネック緩和に関してトップランナーはCore i9 10900Kですが電力制限の扱い等で若干初心者にはオススメし難いきらいがある一方、上で紹介したように「Intel Core i7 10700F」は電力制限無効化でも一般的な120サイズの空冷CPUクーラーで運用が可能と導入が容易であり、コストパフォーマンス的にも最適なモデルだと思います。


ただし「Intel Core i7 10700F」の場合はゲーム負荷時のコアクロックとPL1の関係に注意が必要です。
「Intel Core i7 10700F」は8コア/4.6GHzという多コア高クロックに対してTDP65WとPL1の値が小さいため、ハイフレームレートなPCゲーミングなど一部のCPU負荷の高いゲーミングシーンにおいて、PL1以上のCPU負荷がTauを超過する長時間に渡って発生する可能性があります。ゲーム性能の面においても「Intel Core i9 10900」が十全な性能を発揮するにはPL1:95W以上への電力制限の解除が推奨されます。

Intel Core i7 10700F_game-clock_ACOD_PL-65W



ゲーム性能検証の冒頭でも述べたようにフルHD~4K解像度の60FPSターゲットであれば4コア4スレッド以上の最新CPUであればどれを使用しても大差はありません。
ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するCPUとしては、2万円台半ばから購入できることもありCore i5 10400やAMD Ryzen 5 3600など6コア12スレッド以上を個人的に推奨しています。
60FPSターゲットであってもAssassin's Creed OdysseyのようにCPUによって差が出るケースもあるので、PCゲームメーカーの最適化の優先順位まで考慮するとIntelのメインストリーム向け最新CPUのPCゲーミングにおける安定性にはやはり信頼がおけます。

なおIntel第10世代Core-S環境においてゲーム性能を遺憾なく発揮するには3200MHz~3600MHzにメモリ周波数をOCする必要があり、Z490マザーボードとの組み合わせが必須なので注意してください。
下位チップセットのH470やB460マザーボードではメモリ周波数が定格値を上限として制限されるので、メモリOCを行うにはZ490マザーボードを選択しなければなりません。(メモリのOC自体は3200MHz~3600MHzならOCプロファイルで簡単に動くので難しくありません) 【詳しくはCore i5 10400のレビュー記事で
Intel Core i5 10400_mem2666_game_1920
OCメモリの選び方や具体的なオーバークロックの設定方法については、こちらの記事を参考にしてください。
【できる!メモリOC】 OCメモリの選び方から設定まで完全解説
【できる!メモリOC】 OCメモリの選び方から設定まで完全解説


総評 - 4万円のIntel製8C16TはベストオブゲーミングCPU

先日レビューした上位モデルCore i7 10700Kを”ベストオブゲーミングCPUの素質はあるが最大の敵は価格”と評価していましたが、「Intel Core i7 10700F」は待望の4万円で購入できるIntel製8コア16スレッドCPUとなっており、ベストオブゲーミングCPUと言って間違いのない製品だと思います。
最速の座こそ上位モデルCore i9に譲りますが、発熱が比較的に小さいので導入のハードルが低く、ハイフレームレートなPCゲーミングにおけるCPUボトルネックの緩和やゲーム実況におけるクリエイティブタスク性能などPCゲーミングのあらゆるシーンに対応できるバランス感からベストオブゲーミングCPUの称号に相応しいCPUです。

なお「Intel Core i7 10700F」はTPD65WのCPUとして運用できるか、できるできない論で言えば運用できるというのが答えですが、TPD65Wで運用した時に8コア16スレッドCPUとして魅力のある性能が発揮できるか、というと競合製品の手前、”否”が答えになると思います。AMD製CPUのほうが現状ではワットパフォーマンスが優れるので、この点についてはどうしようもありません。CPU消費電力65W前後で8コア以上のマルチスレッド性能を追求していくとIntel製CPUでは厳しいというのが実状です。

とはいえ「Intel Core i7 10700F」をもPL1:95W以上へ電力制限を緩和すれば8コアCPUとして競合と比較しても十分なマルチスレッド性能を発揮でき、メインストリーム向けCPUとしての扱いやすさ(仮に電力制限を完全に無効化しても120サイズ空冷CPUクーラーで十分運用できる)を兼ね備え、なおかつゲーム性能でも競合を上回ります。
ワットパフォーマンスやマザーボードも含めたプラットフォーム単位でのコストパフォーマンスでは第3世代Ryzenの後塵を拝しますが、8コア16スレッドCPUとして独壇場だったRyzen 7 3700Xに対して十分な競争力を持ったCPUであることも間違いありません。

これから8コア16スレッドCPUで自作PCを組もう!と思っている人にとって、『Intel Core i7 10700FかAMD Ryzen 7 3700Xか』というのは悩ましい選択になりそうです。

以上、「Intel Core i7 10700F」のレビューでした。
Intel Core i7 10700F


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