Addlink S91 2TB


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PCIE4.0x4接続により連続読み出し5000MB/sに達する、M.2 2230サイズでASUS ROG AllyやSteam DeckのSSD換装にも使用可能なNVMe M.2 SSD「Addlink S91 2TB(型番:aJP2TBS91M2P)」をレビューします。

DSC01532_DxO


製品公式ページ:https://www.addlink.com.tw/pcie-s91?lang=ja





目次


1.Addlink S91について
2.Addlink S91 2TBの外観


3.Addlink S91 2TBの検証機材と基本仕様

4.Addlink S91 2TBのベンチマーク比較
5.Addlink S91 2TBの連続書き込みについて
6.Addlink S91 2TBの消費電力と温度


7.Addlink S91 2TBのレビューまとめ



【機材協力:Addlink】



Addlink S91について

「Addlink S91」は、メモリコントローラーにPCIE4.0x4帯域のNVMe接続に対応するPhison PS5021-E21Tコントローラー、メモリチップにMicron製のQLC型 176層3D NANDが採用された、NVMe(PCIE4.0x4)接続でM.2 2230フォームファクタのM.2 SSDです。

「Addlink S91」はM.2 SSDとして一般的な2280サイズではなく、長さ30mmの2230サイズとなっており、Surface Pro 9/8、ASUS ROG AllyやSteam DeckのSSD換装に対応します。(注:SSD換装後の製品保証の継続はPC次第です)


「Addlink S91」にはSSD容量として1TB(型番:aJP1TBS91M2P)、2TB(型番:aJP2TBS91M2P)の2モデルがラインナップされています。

「Addlink S91」のアクセススピードは容量によって若干異なりますが、最大でシーケンシャル読出5,000MB/s、シーケンシャル書込3,200MB/s、ランダム読出570,000IOPS、ランダム書込750,000IOPSの超高速アクセスを実現しています。

「Addlink S91」のMTBF(平均故障間隔)は150万時間、書込耐性は1TBが250TBW、2TBが450TBWとなっており、メーカーによる製品保証期間は5年間です。



Addlink S91 スペック一覧
容量 1TB
 aJP1TBS91M2P
2TB
 aJP2TBS91M2P
インターフェース
M.2, NVMe (PCIE4.0x4)
コントローラー
Phison PS5021-E21T
メモリー Micron製 QLC型 176層3D NAND
DRAMキャッシュ -
連続読出 4,900MB/s 5,000MB/s
連続書込 3,200MB/s 3,200MB/s
4Kランダム読出 570,000 IOPS 480,000 IOPS
4Kランダム書込 750,000 IOPS 750,000 IOPS
動作温度範囲 0~70 ℃
MTTF 150万時間
耐久性評価 250TBW 450TBW
保証期間 メーカー5年



Addlink S91の外観

まず最初に「Addlink S91」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。
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紙製のパッケージを開くとSSD本体はプラスチックのスペーサーに収められていました。
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「Addlink S91」のSSD本体の外観は次のようになっています。基板はM.2 2230サイズ、M-Key型のM.2 SSDです。PCB基板は黒色です。
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「Addlink S91」の裏面については最大容量の2TBモデルも含めて素子の実装はなく、いずれも片面実装のSSDです。
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「Addlink S91」の表面にはM.2端子を右にして右端にメモリコントローラー、その左隣にメモリチップが実装されています。
DSC01542_DxO
「Addlink S91」では同じくDRAMキャッシュレスのPhison製メモリコントローラー PS5021-E21Tが採用されています。メモリチップは全容量で基板左側の1枚のみ、MicronのQLC型 176層3D NANDが採用されています。
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「Addlink S91」はSSD上に実装されたDRAMキャッシュの代わりに、PCIE3.0/4.0の高速帯域を介してシステムメモリの一部をキャッシュとして使用するHMB(Host Memory Buffer)に対応しています。
HMB(Host Memory Buffer)_architecture

自作PC向けなどで市販されているM.2 SSDは基本的に長さ80mmのM.2 2280サイズですが、「Addlink S91」には長さ30mmの2230サイズです。
M.2 2230サイズの「Addlink S91」はASUS ROG AllyやSteam DeckのハンドヘルドゲーミングPCやSurface Pro 9/8のSSD換装に対応します。
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Addlink S91 2TBの検証機材と基本仕様

「Addlink S91 2TB」の各種検証を行う環境としては、PCIE4.0/5.0に対応するAMD Ryzen 9 7950X&GIGABYTE X670E AORUS MASTERなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。
テストベンチ機の構成
CPU AMD Ryzen 9 7950X (レビュー
CPUクーラー Fractal Design Celsius S36 (レビュー
Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー
メインメモリ G.Skill Trident Z5 Neo
F5-6000J3038F16GX2-TZ5N
DDR5 16GB×2=32GB (レビュー
マザーボード
GIGABYTE X670E AORUS MASTER
レビュー
ビデオカード PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8
Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN
レビュー
システムストレージ
Samsung SSD 990 PRO 1TB (レビュー
OS Windows 11 Pro 64bit 22H2
電源ユニット Corsair HX1500i 2022 (レビュー
ベンチ板 STREACOM BC1 (レビュー

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システムメモリの検証機材には、Ryzen 7000用OCメモリのスイートスポットとアピールされているメモリ周波数6000MHz/CL30の低レイテンシなメモリOCに対応した「G.Skill Trident Z5 Neo(型番:F5-6000J3038F16GX2-TZ5N)」を使用しています。
G.Skill Trident Z5 NeoシリーズはAMD EXPOのOCプロファイルに対応した製品なので、AMD Ryzen 7000シリーズCPUで高性能なPCを構築するお供としてオススメのOCメモリです。ARGB LEDイルミネーションを搭載したバリエーションモデル G.Skill Trident Z5 Neo RGBもラインナップされています。
「G.Skill Trident Z5 Neo」をレビュー。EXPOで6000MHz/CL30のOCを試す!
G.Skill Trident Z5 Neo

2023年最新のSSDレビューでは高度に圧縮されたゲームデータをグラフィックボードのVRAMへ直接取り込んで、GPUによって高速に展開するDirectX 12のDirectStorageのようなAPIに対応したPCゲームも検証しています。
その時にSSDの理想的な性能を検証できるように、最新のウルトラハイエンドGPUを搭載したグラフィックボード「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN」を使用しています。

PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8は、ベイパーチャンバー構造のベースコアや、厚みのあるファンブレードをバリヤーリングで結合した重厚な冷却ファンを採用する4スロット占有大型GPUクーラーにより、各社AIBモデルの中でもトップクラスの静音性を実現しています。
メーカーのPNYは2022年に株式会社アスクが販売代理店契約を結んだばかりの新参なので国内での知名度は高くありませんが、北米など海外市場では30年以上に渡りコンシューマーならびにビジネス向けで電子機器の製造・販売を行う大手メーカーです。
国内正規品なら代理店を介してPNY公式のグローバル保証と同じ3年間の長期保証が受けられるところも魅力です。
「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8」をレビュー
PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN


検証環境については上述の通り、AMD Ryzen 9 7950XやGIGABYTE X670E AORUS MASTERで構成されるテストベンチ機を使用していますが、検証するNVMe M.2 SSDはマザーボード上のCPUソケット直下に配置されている、CPU直結PCIE5.0x4レーン接続のM.2スロットに設置しています。
またサーマルスロットリングによる性能低下の可能性を排除するため、JIUSHARK M2-THREEという60mm角ファンでアクティブ冷却できるM.2 SSDヒートシンクを組み合わせた状態で設置しています。
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GIGABYTE X670E AORUS MASTERにM.2 SSDを設置する場合、M.2-PCIE変換ボードも使用するなら、計5つの候補があり、どこに接続するかでベンチマーク結果が大きく変わります。
Ryzen 7000シリーズCPU&X670Eマザーボードの環境においてCPU直結PCIEレーンは、主にグラフィックボードで使用するPCIE5.0x16レーンに加えて、NVMe M.2 SSD用のPCIE5.0x4レーンが2つがあり、実のところNVMe M.2 SSDを使用するなら、このNVMe M.2 SSD用のCPU直結PCIE5.0x4レーンが最速となります。
Storage Test System_202308
AMD X670E and X670_Diagram


「Addlink S91 2TB」のボリュームをWindows 11上で作成したところ、空きスペースは1.86TBでした。
Addlink S91 2TB_CDMI

「Addlink S91」はSSD上に実装されたDRAMキャッシュの代わりに、PCIE3.0/4.0の高速帯域を介してシステムメモリの一部をキャッシュとして使用するHMB(Host Memory Buffer)に対応しています。 「Addlink S91」の2TBモデルは、SSDが指定する最適バッファサイズは64MBで、実際に確保されるバッファサイズも64MBでした。
Addlink S91 2TB_HMB



Addlink S91 2TBのベンチマーク比較

「Addlink S91 2TB」の性能を測るためストレージに関する基本的なベンチマークソフトを使用して測定を行います。

まずはCrystalDiskMark8.0.4 (1GiB, +Mix)について、「Addlink S91 2TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
「Addlink S91 2TB」のベンチマークススコアは連続読み出しが5.1GB/s、連続書き込みが3.8GB/s前後に達しており、製品スペックを若干上回る性能を発揮しました。実用性能への影響の大きい4Kランダム読み出し(Q1T1)は68MB/s程度です。
Addlink S91 2TB_CDM8m_1GiB

ASUS ROG Allyに採用されているMicron 2400の2TB版(標準搭載は512GB版)のCrystalDiskMarkスコアは次のようになっています。
Micron 2400 2TB_CDM8m_1GiB

以下、各種比較対象SSDのCrystalDiskMark8 ベンチマークスコアになっています。

AS SSD Benchmark v2.0.6821.41776 (1GB)について、「Addlink S91 2TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
Addlink S91 2TB_AS_1GB

以下、各種比較対象SSDのAS SSD Benchmark ベンチマークスコアになっています。


Anvil’s Storage Utilities v1.1.0 (1GB)について、「Addlink S91 2TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
Addlink S91 2TB_Anvil
Addlink S91 2TB_Anvil_4K-IOPS

以下、各種比較対象SSDのAnvil’s Storage Utilities ベンチマークスコアになっています。



Addlink S91 2TBの連続書き込みについて

「Addlink S91 2TB」に連続書き込みを行った場合の動作についてチェックします。

TLC型やQLC型と呼ばれる3bit以上のマルチレベルセルで動作するNANDが採用されているSSDでは、マルチレベルセル化によって遅くなる書き込み速度の底上げのため、NANDメモリの一部を高速キャッシュ領域とする機能が実装されています。
2022年現在、TLCやQLCの記憶領域を動的にSLC化する製品が多いので、この高速キャッシュ領域のことをSLCキャッシュと呼ぶことにします。(可能性としてTLC型SSDやQLC型SSDがMLCで高速キャッシュを構築することもありうる)

このようなSLCキャッシュを有するSSDにおいては、連続した大容量の書き込みによって書き込み総量がSLCキャッシュを超過した場合、書き込み速度がステップ状にガクッと下がります。
例えば600MB/sが理論的な上限速度となるSATA SSDの場合は、動画ファイルなど数十GB以上の単一ファイルの連続書き込みが発生すると、SLCキャッシュ超過後はCrystalDiskMarkなどベンチマークソフトで表示される500MB/s程度の連続書き込み速度を維持できず、100~200MB/sまで書き込み速度が低下する可能性があります。


最新のQLC型NANDをメモリチップに採用する「Addlink S91 2TB」がどのような挙動を見せるのか確認してみました。
「Addlink S91 2TB」は空き容量が400~500GB以上あり、SLCキャッシュが十分に開放された状態であれば、100GBの書き込みを行っても、製品仕様でも紹介されているように書き込み開始から一貫して3.5GB/s以上の書き込みスピードを発揮できました。
Addlink S91 2TB_SLC Cache_500GB-Free
フォーマット直後の状態からボリューム全域に書き込みを行った時の書き込み速度の推移が下のようになっています。実用的にはあまり意味のない評価方法ですが、SLCキャッシュの挙動を把握する上では役立つこともあるので。
4GB/s近い書き込み速度を発揮する高速なSLCキャッシュは空き容量が100%の状態なら460GB程度を使用でき、超過後は書き込み速度が100MB/s程度へと大幅に低下しています。
Addlink S91 2TB_SLC Cache_writing-all
「Addlink S91 2TB」のSLCキャッシュ容量は空き容量に対して可変となっており、未使用状態の460GB程度を上限として、最大で空き容量の15%~20%程度をSLCキャッシュとして使用できます。QLC型SSDは空き容量の4分の1、つまり25%がSLCキャッシュとして確保できる最大容量なので、ほぼ理想的な容量設定です。
Addlink S91 2TB_SLC Cache_GB-Free

上記グラフの通り、空き容量に対して20%程度のSLCキャッシュ容量の確保を確認はしたものの、実はSLCキャッシュの開放条件に癖があるというか、「Addlink S91 2TB」は書き込み終了後、積極的にSLCキャッシュを開放しません。
書き込み直後のデータをすぐに使用する(読み出す)ことを想定して、高速なSLCキャッシュ上に残す動作仕様になっているのか、後述の消費電力に関する検証の通り、今回のテスト環境では非ASPMだと上手くアイドル状態に移行していないようなので、それが原因かもしれません。

空き容量を埋めるデータとして10GBの動画ファイルを含む計100GBのフォルダを順次書き込んでいるのですが、1つのファイルサイズが10GBだからなのか、書き込みが完了した状態で十分な時間放置してもSLCキャッシュは10GB+α程度しか解放されませんでした。
その後、40GBを書き込んで削除すると40GB、100GBを書き込んで削除すると100GBのように、書き込み後に一定時間放置することでSLCキャッシュは開放されました。(もちろん空き容量で決まる上限の範囲内で)
Addlink S91 2TB_SLC Cache_500GB-Free_x

上記の手順で空き容量に対するSLCキャッシュ容量を確認したものの、実用的に本当に上記容量を使用できるのかどうかは筆者も半信半疑です。裏技的にSLCキャッシュを開放した可能性もあり、通常の使用方法というか本来のSLCキャッシュ開放トリガーで動作させた場合にどの程度のSLCキャッシュが確保できるのかよく分かりません。

少なくとも10GB程度は常にSLCキャッシュが確保されるとは思いますが、どちらにせよSLCキャッシュを積極的に開放しない(開放するトリガーの発動が遅い)のは間違いないので、大容量な書き込みを頻繁に行う用途には不向きです。



Addlink S91 2TBの消費電力と温度

「Addlink S91 2TB」の消費電力についてチェックしていきます。
NVMe M.2 SSDの消費電力測定には、当サイトの検証に使用するためワンオフで特注した測定ツール GPU Power Testerを使用しています。
GPU Power Tester_SSD_1



GPU Power Testerはその名の通り、PCIEスロット経由とPCIE補助電源の消費電力を直接に測定しグラフィックボードの消費電力を検証する機器ですが、M.2延長カードを改造した増設ユニットを使用することでNVMe M.2 SSDの消費電力を測定できます。
グラフィックボードの消費電力測定に使用するようなライザーケーブル/ライザーカードから、さらにM.2-PCIE変換ボードを中継すると、機器の組み合わせやPCIE5.0等の高速接続規格によってはSSDの動作が不安定になることがありますが、この方法ならマザーボードのM.2スロットにM.2 SSDを直結した時と同等の性能で安定して消費電力を測定できます。
GPU Power Tester_SSD_2

まずはSSDの消費電力の傾向を把握するため、CrystalDiskMark8.0.4 (1GiB, +Mix)を測定負荷としてアクセスタイプ別に消費電力がどうなるのかチェックしていきます。
CrystalDiskMarkの設定は各アクセスタイプで測定時間20秒/測定回数1回、測定インターバル10秒に変更しています。12種類のアクセスタイプの負荷に加えて、テスト終了後のアイドル状態の消費電力も測定しています。
CrystalDiskMarkを測定負荷とした時に連続読み出し/連続書き込みのアクセスタイプは、消費電力が最も大きくなる、ワーストケースに近い負荷となります。
GPU-Power-Test_app_1


CrystalDiskMarkで負荷をかけた時の「Addlink S91 2TB」の消費電力の推移は次のようになっています。

「Addlink S91 2TB」の消費電力は最大値でも4Wを下回ります。最大アクセススピードが控えめ(帯域的に上限が7GB/sのPCIE4.0対応としては)、メモリチップが1枚だけ、DRAMキャッシュレスなどの要因が重なって、かなり省電力なSSDです。
実用性能への影響が大きく、PCゲーミングの実消費電力に近い数値となる4Kランダム(Q1T1)も1.3~1.5Wとなっており、やはりPCIE4.0対応SSDとしてはトップクラスの省電力性能です。
Addlink S91 2TB_Power

一方でアイドル状態の消費電力が若干高く、瞬間的に下がっている数値を見ると本来のアイドル状態の消費電力は0.70W前後っぽいのですが、そこまで消費電力が下がらずに4Kランダム時相当、1.40W弱の消費電力が発生しています。検証環境との相性が悪かったのか、Phison PS5021-E21T特有の挙動なのか。

Surface ProやハンドヘルドゲーミングPCを含め近年のモバイルPCはバッテリー持続時間を少しでも伸ばすため、ASPM(Active-State Power Management)が基本的に標準で有効になっています。
デスクトップPC環境ではASPMは通常、使用されませんが、機能自体はBIOS設定とWindows設定を変更することで有効化できるので、ASPM時のアイドル電力も測定してみたところ、0.10Wまでアイドル時の消費電力が下がりました。
Addlink S91 2TB_aspm


消費電力が特に大きくなりやすい連続読み出し/連続書き込み(SEQ 1M Q8T1)について、「Addlink S91 2TB」と各種ストレージを比較すると次のようになります。
Addlink S91 2TB_Power_1_Read_1
Addlink S91 2TB_Power_5_Write_1

実用性能に影響の大きいランダム読み出し/ランダム書き込み(RND 4K Q1T1)について、「Addlink S91 2TB」と各種ストレージを比較すると次のようになります。
Addlink S91 2TB_Power_4_Read_4
Addlink S91 2TB_Power_8_Write_4

PC電源ONでSSDに対して読み書きアクセスがないアイドル状態の消費電力について、「Addlink S91 2TB」と各種ストレージを比較すると次のようになります。
Addlink S91 2TB_Power_13_Idle
Addlink S91 2TB_Power_14_Idle_aspm


続いて、実用シーンのSSD消費電力として当サイト的に重要なPCゲームのプレイシーンをチェックしていきます。
使用しているタイトルは、DirectStorageに対応するPCゲームとしてラチェット&クランク パラレル・トラブル(Ratchet & Clank: Rift Apart)とFORSPOKEN、ストレージへのAPIが従来式の高画質PCゲームとしてMarvel’s Spider-Man RemasteredとForza Horizon 5となっており、いずれも4K解像度でグラフィック設定は基本的に各設定項目が最高設定です。以上4種類のゲームを使用して120秒間の5つのシーンについてSSDの消費電力を測定しており、具体的には次の動画の通りです。


「Addlink S91 2TB」のDirectStorage対応を含む4種類のPCゲーム、5つのシーンにおけるSSD消費電力の推移は次のようになっています。
グラフ中には上で行ったCrystalDiskMarkによる消費電力測定の結果のうち、連続読み出し(SEQ 1M Q8T1)、ランダム読み出し(RND 4K Q1T1)、アイドルの3種類の消費電力も横線で併記しています。
2023年最新水準の高画質タイトルを使用して検証していますが、PCゲームシーンだとDirectStorage対応と従来式のどちらであっても、SSD消費電力の平均値は、CDMのランダム読み出しとアイドルの消費電力の中間に収まります。
DirectStorage対応PCゲーム、ラチェット&クランクのワープやFORSPOKENのロード・ファストトラベルでは連続アクセス的な大きい消費電力も発生しますが、いずれも1~2秒あるかどうかという瞬間的なものです。

「Addlink S91 2TB」を含めた各種ストレージについてゲームシーンの平均消費電力を比較すると次のようになっています。(最大値も併記していますが、上の推移グラフを見ての通り瞬間的なピーク値となっており測定毎に振れ幅があるので参考程度に考えてください。)
現状ではPCゲームプレイ中のSSD消費電力は、データの読み出しが多いタイトルでもCDMの4Kランダム読み出しと同程度、そうでなければアイドル状態をベースにして4Kランダム読み出し的な消費電力のアクセスがぽつぽつと発生する感じなので、製品別に見てもSSD消費電力の傾向はCDMの4Kランダム読み出しかアイドルに一致します。
Addlink S91 2TB_Power_Game_1_RaC_1
Addlink S91 2TB_Power_Game_2_RaC_2
Addlink S91 2TB_Power_Game_3_Forspoken
Addlink S91 2TB_Power_Game_4_Spider
Addlink S91 2TB_Power_Game_5_FH5


「Addlink S91 2TB」の温度についての検証は省略します。
近年ではマザーボードM.2スロットに十分な性能のM.2 SSDヒートシンク搭載が標準化しており、市販M.2 SSDヒートシンクも安価で高性能なものが簡単に見つかるようになっています。
PCIE4.0/5.0対応でドンドン高速化していく中、NVMe M.2 SSDをヒートシンクなしで温度測定や耐久テストを行うのは時勢に合わない、上記の通りヒートシンクも多様化しているので一例を示してもあまり参考にならない、と思ったというのも1つ理由です。
どうしてもヒートシンクなし、もしくは冷却が限定される環境での運用を検討する必要があるのであれば、上記の消費電力測定で消費電力が小さいSSDを選ぶ、というのが正解ですし。

またゲームシーンの消費電力検証で見た通り、実用シーンでCrystalDiskMarkの連続アクセスのようなPCIE4.0なら7GB/s前後、PCIE5.0なら10GB/sを超える高速アクセスが長時間に渡って発生するのかは疑わしく、比較的に理想的な連続アクセスが生じる動画ファイルのコピーでも、100GBの読み書きは5GB/sなら20秒、長く見積もっても30秒前後で済むので、それ以上のストレステストに意味があるのか疑問です。
またCrystalDiskMark自体はストレージベンチとして非常に有用ですが、SSDの温度検証という観点でいうとテストの3/4で連続アクセス的な消費電力が発生するCrystalDiskMarkを測定負荷に採用するのはあまり意味がないと感じています。


延長カード型でPCIE5.0にも対応するM.2 SSD消費電力測定モジュールも無事に完成したので、PCゲーム以外の実用シーンについてもSSD消費電力を調査しつつ、SSD温度検証の在り方について調べるのが今後の課題だと思っていますが、今回は省略ということで。



Addlink S91 2TBのレビューまとめ

最後に「Addlink S91 2TB」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ
  • ASUS ROG AllyやSteam Deck、Surface ProのSSD換装が可能なM.2 2230サイズ
  • 最大性能で連続読み出し5000MB/s、連続書き込み3200MB/s
  • SLCキャッシュは100GB以上を使用できる(480GB程度を上限に空き容量の15~20%)
  • 最大容量2TBモデルがラインナップ
  • メーカー正規保証期間が5年間
悪いところor注意点
  • DRAMキャッシュレス、HMB(Host Memory Buffer)対応
  • TLC型なのでSLCキャッシュ超過後に速度低下が発生する
    キャッシュ容量は空き容量依存(詳細)で、超過後の書き込み速度は100MB/s程度


「Addlink S91」は最新デスクトップPC向けSSDとしてはエントリー~ミドルクラスくらいの性能ですがハンドヘルドゲーミングPCやSurface Pro 8/9などCPU・GPU性能が限られるモバイル端末用としては必要十分な性能となっており、1TBや2TBの大容量にアップグレードできるだけでも十分に魅力的な製品です。

M.2 2230サイズのSSDは選択肢が限られていて、少し前まではOEM向け横流し品?を使う必要があったのですが、台湾の有名メーカー Addlink製かつ正規の市販品を選べるのは信頼性や製品保証の面でも嬉しいところ。

「Addlink S91」にはQLCタイプ3D NANDメモリが採用されているので、多くのTLC/QLC型SSDと同様の特徴が大容量書き込み時にでており、容量可変のSLCキャッシュを超過すると、理想値3800MB/s程度から100MB/s程度へと書き込み速度が大幅に低下します。
SLCキャッシュ超過時の速度低下はかなり大きく、空き容量依存の可変容量でSLCキャッシュ容量自体は大きめですが、使用済みSLCキャッシュの開放は遅い(開放トリガーがよく分からない)ので、読み出しアクセスがメインになるハンドヘルドゲーミングPCなら問題になりませんが、大容量な書き込みを頻繁に行う用途には不向きです。

消費電力を見ると、「Addlink S91」もトップクラスに省電力ではあるものの、Micron 2400には一歩及びませんでしたが、SoCの消費電力が10~20W程度なので、せいぜい1~2W程度(ASPM有効なモバイル端末ではゲームによっては1W未満になることも)のSSD消費電力はバッテリー持ちの観点では誤差とも言えます。
すると容量単価や保証期間、保証条件の1つである書き込み耐性なども含めて総合的に考えてお好みで選べばいいので、その点で言うと容量単価はほぼ同じですが、5年間で保証期間が長い「Addlink S91」を選ぶのもアリだと思います。


以上、「Addlink S91 2TB」のレビューでした。
Addlink S91 2TB




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