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DELLのハイエンドゲーミングブランド Alienwareから発売された、有機ELパネルに量子ドット技術を組み合わせたQD-OLEDパネルを採用する、WQHD解像度かつ360Hzリフレッシュレートの27インチゲーミングモニタ「Alienware AW2725DF」をレビューします。
製品公式ページ:https://www.dell.com/ja-jp/shop/cty/apd/210-blqj
Alienware AW2725DF レビュー目次
1.Alienware AW2725DFの概要
2.Alienware AW2725DFの開封・付属品
3.Alienware AW2725DFのモニタ本体
4.Alienware AW2725DFのOSD操作・設定
・有機ELパネルの焼き付き防止機能について
・PIP/PBP機能について
・AlienVisionとAlienFXについて
5.Alienware AW2725DFの発色・輝度・視野角
6.Alienware AW2725DFのリフレッシュレートについて
7.Alienware AW2725DFの応答速度・表示遅延
8.Alienware AW2725DFの可変リフレッシュレート同期について
9.ALIENWARE AW2725DFのHDR表示やCSゲーム機対応について
10.ALIENWARE AW2725DFのHDR性能やローカルディミングについて
11.Alienware AW2725DFのレビューまとめ
*ファームウェア M3B102で検証
【機材協力:DELL】
Alienware AW2725DFの概要
「Alienware AW2725DF」は解像度が2560×1440のWQHD解像度、画面サイズが27インチ(正確には26.7インチ)のモニタです。ディスプレイパネルには自発光素子の有機ELに、発色を向上させる量子ドット技術(Quantum Dot Technology)を組み合わせたSamsung製QD-OLEDパネルが採用されています。
「Alienware AW2725DF」は99.3% DCI-P3という非常に広い色域をカバーし、コントラスト比は最大1,500,000:1、応答速度は0.03ms(GTG)です。
「Alienware AW2725DF」はHDR表示に対応し、自発光素子の有機ELパネルを採用しているので黒色は完全な黒、一方でHDR表示においてピーク値で1000cd/m^2(3% APL)の高輝度を発揮できます。VESAがPCモニター向けに展開している輝度認証のVESA DisplayHDR 400 True Blackを取得しています。
「Alienware AW2725DF」は2560×1440のWQHDという高解像度ながら、ネイティブ360Hzの超高速リフレッシュレートに対応しています。
360Hzの高リフレッシュレートによって応答速度が高速になるのでブレや残像がなくなってクッキリとした滑らかな表示です。60FPSでは識別の難しいゲーム内遠方で動くエネミーやオブジェクトの発見などが容易になるので、オンライン対戦FPSゲームなど競技性の高いPCゲームにおいて対戦相手よりも優位に立つことができます。
60FPSでは識別の難しいゲーム内遠方で動くエネミーやオブジェクトの発見などが容易になるので、オンライン対戦FPSゲームなど競技性の高いPCゲームにおいて対戦相手よりも優位に立つことができます。NVIDIAによると240Hz/FPSと比較して360Hz/FPSではさらに4%程度のエイム精度が向上するとのこと。
「Alienware AW2725DF」はゲーミングPCやコンソールゲーム機のPlayStation 5やXbox Series X/Sを組み合わせることで利用可能な可変リフレッシュレート同期機能 AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)にも対応しています。
VRR同期機能によりティアリングがなくスタッタリングを抑えた快適で鮮明なゲーミング環境を実現できます。NVIDIA製GPUとの互換性を証明するG-Sync Compatible認証の取得は未定です。
「Alienware AW2725DF」に搭載されたビデオ入力はDisplayPort1.4×2、HDMI2.1(FRL非対応なのでHDMI2.0相当)×1の3系統です。DisplayPort1.4はWQHD/360Hzに対応しますが、HDMIはWQHD/144Hzが上限となります。
USBハブとして周辺機器を接続するためのダウンストリームUSB3.0 Type-A端子が3基、ダウンストリームUSB3.0 Type-C端子が1基搭載されており、USB3.0 Type-Bアップストリームケーブルで接続している機器のUSBハブとして使用できます。
「Alienware AW2725DF」の寸法はモニタスタンド込みで幅610mm x 高さ406~516mm x 奥行243mm(モニタ本体の奥行は68mm)です。
付属モニタスタンドの機能は『上下チルト:上21度から下5度、左右首振りスイーベル:左右20度、昇降高さ調整:110mm、90度回転ピボット:左右回転対応』となっています。
モニタスタンドを含めた本体重量は6.7kg、モニタ単体重量は4.3kg前後です。100mm x 100mmのVESAマウントにも対応しており重量的にもモニターアームが使用可能です。
Alienware AW2725DFの開封・付属品
まずは「Alienware AW2725DF」を開封していきます。「Alienware AW2725DF」のパッケージサイズは幅74cm×厚さ25cm×高さ48cmとなっており、27インチモニタが入っている箱としては若干大きめで、重量は10kg程度です。天面には持ち手が付いているので成人男性なら持ち運べると思います。
「Alienware AW2725DF」はN式箱という構造になっておりスペーサーを外パッケージから引っ張り出す手間がないのが特徴的です。
パッケージを開くとモニタ本体や付属品が収められたパルプモールド製のスペーサーが現れます。スペーサーは2段になっており、上の段にはモニタスタンドやケーブルなどの付属品が、下の段にはモニタ本体が収められています。
「Alienware AW2725DF」は製品出荷前にsRGBとDCI-P3の色精度がΔE<2となるようにファクトリーキャリブレーションが行われており、カラーキャリブレーションレポートが同封されていました。
「Alienware AW2725DF」の付属品を簡単にチェックしておくと、DisplayPortケーブル、USB Type-C to DisplayPortケーブル、USBアップストリームケーブル、ACケーブル、クリーニングクロス、マニュアル冊子類が付属します。加えて後ほど説明しますが、IOポートカバーも付属しています。
今回のメーカーからお借りしたサンプル機は付属ACケーブルが海外仕様なのでアース付き3PINですが、国内正規販売品には国内コンセントで一般的な2PINタイプのACケーブルが付属します。
DisplayPortケーブルはソース側が標準コネクタのケーブルだけでなく、USB Type-Cのケーブルの2種類が付属するのが特徴的です。ゲーミングモバイルPCとの接続を意識したのだと思います。
各種ケーブルを個別に購入するのであれば、WQHD/360Hz対応のDisplayPort1.4ケーブルなら「サンワサプライ KC-DP14シリーズ」、HDMI2.0ケーブルなら「エレコム Premium HDMIケーブル スリムタイプ DH-HDP14ESBKシリーズ」がおすすめです。
いずれも標準で付属するケーブルよりもケーブル径が細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 1.0m
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 1.5m
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 2.0m
エレコム
Amazon.co.jpで詳細情報を見るモニタスタンド装着に当たって、「Alienware AW2725DF」には液晶よりも破損しやすい有機ELディスプレイパネルが採用されているので、保護シートに記載されているように梱包スペーサーに置いたまま作業してください。
「Alienware AW2725DF」に付属するモニタスタンドはフレームとフットプレートの2つの部品で構成されています。
フットプレートをフレームに差し込んで底面のネジを締めるだけで簡単にモニタスタンドを組み立てられます。ネジにレバーが付いているのでドライバー不要で組み立てが可能です。
モニタスタンドを組み立てたら、「Alienware AW2725DF」のモニタ本体背面の溝に斜め下の方向からモニタスタンドを差し込めば取り付け完了です。
モニタスタンドの取り外しは、根本の下にあるスイッチでロックを外して、装着した時と逆に動かして引き出すだけです。
Alienware AW2725DFのモニタ本体
続いて「Alienware AW2725DF」のモニタ本体をチェックしていきます。「Alienware AW2725DF」はフレームレス構造ですが、2mm程度の外枠を含めて、パネル上には上側に6mm程度、左右に10mm程度の非表示領域があります。下にはベゼルというか薄いフレームが貼り付けられており、非表示領域は18mm程度です。加えて表示領域にはピクセルシフトの余剰ピクセルもあります。
下フレームの中央には銀色文字でAlienwareテキストロゴが刻印されています。Alienwareのロゴはシンプルで主張は強くなくて良い感じです。
「Alienware AW2725DF」の背面に注目するとモニタ本体およびモニタスタンドは、Alienware公式が”レジェンド”と呼ぶ流線形の造形、カーブ要素の強くなった2022~2023年の新デザインコンセプトです。
同時に発売されたAW3225QFのようにルナライトと呼ばれるホワイト寄りのグレーを基調としたカラーリングの製品もラインナップされていますが、「Alienware AW2524HF」はダークサイドオブザムーンと呼ばれる光沢のあるブラックカラーです。
Alienwareのブランド的にはルナライトの印象の方が強いですが、流線形の造形と光沢のあるブラックの組み合わせで、ダークサイドオブザムーンのカラーリングはよりいっそう”エイリアン”感があります。
「Alienware AW2725DF」ではモニタ背面のAlienwareロゴ、”32”インチサイズロゴ、電源ボタンの3カ所にAlienFXと呼ばれるRGB LEDイルミネーションが内蔵されています。
3つLEDイルミネーションは個別に発光カラーを設定できます。LEDイルミネーションの発光パターンはOSDメニューから、特定の発光カラーに固定するモード(全20色)と、七色に変化しているスペクトラムモードの2種類から選択できます。
背面の白い外装カバーの周りには黒色プラスチックで4辺にエアスリットが設けられており、内蔵冷却ファンと合わせて有機ELディスプレイパネルの発熱を効率的に放熱する設計です。
モニタスタンドはよりカーブ感の強いデザインになり、フットプレートは2020~2021年頃のV字形状から、六角形でデスク上のキーボード等と干渉し難いコンパクトサイズに変わっています。
「Alienware AW2725DF」のモニタスタンドにはケーブルホールがあるので、各種ケーブルをまとめることができます。
またI/Oポートは外装パネルを大きく切り開く形で配置されていますが、付属のI/Oポートカバーによって背面から見てもスタイリッシュに仕上がります。I/Oポートカバーはプラスチックのツメでツールレスに簡単に着脱できます。
「Alienware AW2725DF」のモニタ本体の厚さは中央の最厚部で70mmほどと最近のモニタとしては厚みが大きいですが、両端の最薄部は10mm弱なので体感としては薄めに感じます。
モニタ本体重量は4.2kg程度なので一般的なモニターアームと組み合わせて問題なく使用できます。
モニタ本体背面には3カ所に分かれて全て下向きに各種I/OやAC端子が配置されています。
「Alienware AW2725DF」のビデオ入力は背面右側にあります。左から順に、1基のHDMI2.0ビデオ入力、2基のDisplayPort1.4ビデオ入力が設置されています。
3.5mmステレオやビルトインスピーカー等の音声出力を搭載していないので、USB DACなど音声出力機器は各自で別途用意する必要があります。
背面の左側にはUSB3.0アップストリーム端子と2基のUSB3.0ダウンストリーム端子、さらにモニタ底面に2基のUSB3.0ダウンストリーム端子が設置されており、PCとアップストリーム端子を接続することによって、4基のUSBハブ端子として使用できます。
モニタ底面のUSBポートの片方はUSB Type-Cになっており、BC1.2規格で15Wの給電に対応します。
「Alienware AW2725DF」はACアダプタをモニタ本体に内蔵しており、C13コネクタ(自作PC電源ユニットと同じ)のACケーブルを使用します。付属品があるので各自で用意する必要はありませんが、市販ケーブルも使用できます。
「Alienware AW2725DF」の付属モニタスタンドは左右スイーベルに対応し、可動域は左右20度(40度)です。
「Alienware AW2725DF」の付属モニタスタンドは上下チルトに対応し、可動域は仕様通り下に5度、上に21度です。
モニターの高さはモニター本体とスタンドの付け根部分が上下に動く構造になっており、モニタパネルの頂点で406mm~516mm、110mmの範囲内で調整できます。モニタスタンドの付け根部分には高さ調整に便利な目盛りがあります。
「Alienware AW2725DF」の付属モニタスタンドはピボットに対応しており、縦向きにして使用できます。付属スタンドは時計回りと反時計回りのどちらにも回転可能です。
「Alienware AW2725DF」はVESA100x100規格のVESAマウントに対応しておりサードパーティ製のモニターアームを使用できます。モニタ単体の重量も4.2kgほどなのでモニターアームを問題なく利用可能です。
「Alienware AW2725DF」のVESAネジ穴は背面外装から、15mm弱ほど窪んだ場所にあります、クイックリリースでスライドさせるタイプのモニターアームを使用する場合は、M4ネジのスタンドオフを各自で用意してください。
オススメのモニターアームや調整機能が豊富なVESA汎用モニタースタンド、VESAマウントの干渉を避ける方法についてはこちらの記事で詳細に解説しているので、導入を検討している人は参考にしてください。
Alienware AW2725DFのOSD操作・設定
「Alienware AW2725DF」のOSD操作は底面中央に設置されている操作スティックを使用します。操作スティックは上下左右と押下の5つの操作が可能で、操作ボタン各種の応答も良好でした。また電源ボタンがOSD操作用ボタンと離れた場所に設置されていて誤押下の心配がないところも小さな評価ポイントです。
電源ボタンには電源ON時にLEDが内蔵されていますが、背面LEDイルミネーションと同様にOSD設定メニューのAlienFXから発光カラーの変更や消灯が可能です。
「Alienware AW2725DF」は操作スティックを押下(もしくは上下左右のうちAlienVisionの切り替え機能を割り当てていない操作)するとランチャーと呼ばれるショートカットメニューが画面中央下端に表示されます。
ランチャーやOSDメニュー表示中は画面上に現在のOSD設定の一部が確認できるOSDステータスバーも表示されます。
ランチャーの中央には5つのショートカット設定アイコンが表示され、スティックを左右に操作することでアイコンを切り替え、押下するとそのショートカット設定が表示されます。
ランチャーに表示される5つのショートカット設定アイコンに割り当てる機能はOSD詳細設定メニューの「カスタマイズ」から任意に変更することができ、各自で変更頻度の高いものに切り替えておくと便利です。
ランチャーを表示した状態で操作スティックを上に操作する(ディスプレイの奥方向へ倒す)とOSD詳細設定メニューが表示されます。
「Alienware AW2725DF」のOSD表示領域は27インチ画面の9分の1程度で文字のサイズ感も程よく、操作スティックに手が届く範囲なら問題なく読めると思います。
「Alienware AW2725DF」は購入直後の初回起動時に言語選択メニューが表示されます。誤って日本語以外を選択してしまった場合は下記の手順で日本語に変更が可能です。
「Alienware AW2725DF」のOSDメニューには大きく分けて、「ゲーム」「輝度/コントラスト」「入力信号」「AlienFX照明」「ディスプレイ」「PIP/PBP」「メニュー」「カスタマイズ」「その他」の9種の項目が用意されています。
「Alienware AW2725DF」の画質モードはゲームの項目にあるプリセットモードから選択できます。標準設定の「標準」に加えて、「FPS」「MOBA/RTS」「RPG」「SPORTS」などゲームジャンルやコンテンツ別プリセットに加えて、ゲーム別に各自で設定可能な「ゲーム 1~3」、色温度別で「暖色」「寒色」、sRGBもしくはDCI-P3の色空間に制限する「クリエイター(作成者)」、任意に色温度(RGB強度)を調整できる「ユーザーカラー」など多くの画質モードが用意されています。
HDMIビデオ入力時に限定されますがコンソールモードという画質モードもあります。
ゲーム関連の表示設定はトップメニューで一番上の「ゲーム」に配置されています。
黒の強弱を調節して暗がりの視認性を高める機能「暗さスタビライザー」も用意されており、補正強度はレベル0~3の4段階で設定が可能です。標準設定ではレベル0(機能OFFの状態)が設定されており、レベルを上げるほど明るく(白く)なります。
有機ELパネルの焼き付き防止機能について
「Alienware AW2725DF」には有機ELテレビと同様に、有機ELパネルの焼き付き防止機能がいくつか用意されています。”スクリーンセーバー(静止画輝度制限)”は画面表示の内容に変化がない(変化が小さい)場合に、ディスプレイ輝度を自動的に下げる機能です。PlayStation 5で操作がないと画面が暗くなるのと同じような動作を、有機ELパネルの焼き付き防止のためにモニタが行います。
”スクリーンセーバー”はAverage Picture Levelによって動作するので、画面が暗くなるとマウスカーソルのような小さな変化では輝度制限が解除されません。
”ロゴ輝度制限”は体力ケージやミニマップのようにゲーム画面で常に表示され、大きな変化がない部分の輝度を下げる機能です。
スクリーンセーバーやロゴ輝度制限は有機EL保護としては一般的な機能なので、「Alienware AW2725DF」も対応していると思いますが、OSD設定メニューからオン/オフを切り替える等の設定はできません。
「Alienware AW2725DF」は、LG製有機ELテレビならスクリーンシフト(Samsung製有機ELテレビならピクセルシフト)と呼ばれる有機ELパネルの焼き付き防止機能に対応しています。
「Alienware AW2725DF」においてスクリーンシフトは既定動作となっており、OSD設定メニューからオン/オフを切り替える等の設定はできません。
従来のスクリーンシフトは表示内容を数ピクセルだけ上下左右に動かすので端の数ピクセルが見切れていたのですが、「Alienware AW2725DF」ではWQHD解像度(2560x1440)に加えて外周部に縦横20ピクセル程度の余剰画素があり、余剰画素も使用して画面が上下左右にシフトするので端が見切れることはありません。
ピクセルリフレッシュやパネルリフレッシュと呼ばれる軽度の焼き付きを復元する機能として、「Alienware AW2725DF」には”ピクセルを最新の状態に更新(Pixel Refresh)”と”パネルを最新の状態に更新(Panel Refresh)”の2種類が用意されています。どちらも時間経過で自動実行されるので、ユーザーは気にする必要はありません。
”ピクセルを最新の状態に更新”(数分で完了する)は数時間ディスプレイを使用したら実行することが推奨されており、前回の実行から累積使用時間が4時間を超えると、スタンバイモードに入った時、もしくは電源ボタンを切った時に自動的に実行されます。
一方で”ピクセルを最新の状態に更新”(約1時間かかる)は使用を始めてから7000時間を超えた時に自動的に実行されます。
ピクセルリフレッシュやパネルリフレッシュを行う必要があるかどうかは、OSDランチャーメニューを開いた時に画面上部に表示されるパネルケアのインジケーターで分かります。緑色は正常で、黄色や赤色になると実行する時期です。
その他に、「Alienware AW2725DF」では”マルチ ロゴ”と呼ばれると呼ばれる有機ELパネルの焼き付きを防止する保護機能が、ほぼ全てのプリセットモードにおいて既定で有効になっています。
詳細は画質に関する章で説明していますが、実際のSDR表示において白色輝度が少々奇妙な挙動を示します。(FW ver:M3B102で検証、クリエイターモードのみ既定で無効)
PIP/PBP機能について
「Alienware AW2725DF」は2つのビデオ入力を画面上に同時に表示する「PIP/PBP」にも対応しています。「Alienware AW2725DF」はPIP/PBPにおいてメインウィンドウがWQHD/60Hz、サブウィンドウは動作モードによって対応解像が変わり、フルHD/60HzもしくはHD/60Hzが最大解像度になります。
HDRやVRRはPIP/PBPと排他利用になっており、PIP/PBPを有効にするとSmart HDRの項目はグレーアウトします。
通常のビデオ入力選択を主画面として、副画面はPIP設定内の項目から選びます。副画面は残り2つのビデオ入力から自由に選択できます。ビデオ入れ替えを選択すると主副が入れ替わります。
PIPでは副画面の表示位置を右上/右下/左上/左下の4ヶ所から選択できます。副画面のサイズには小/大の2つの選択肢があり、32インチモニタ上でそれぞれ1/9、1/4程度の小窓として表示されます。
「Alienware AW2725DF」のPIPモードは主画面がWQHD/60Hz、副画面がフルHD/60Hzに対応しています。(副画面は当然、表示サイズにスケーリングされますが)
PBPにはWQHD画面が1280×1440で左右に2等分される”50% - 50%”、960×1440と1600×1440で不均等に分割される”33% - 67% (67% - 33%)”、640×1440と1920×2160で不均等に分割される”25% - 75% (75% - 25%)”の5種類の表示モードが用意されています。
通常のビデオ入力選択を主画面として、副画面はPIP設定内の項目から選びます。副画面は残り2つのビデオ入力から自由に選択できます。ビデオ入れ替えを選択すると主副が入れ替わります。
PBPモードにおいてPCのビデオ出力は1920×1440、1280×1440、960×1440等の特殊解像度もネイティブ解像度として認識され、ストレッチされることなくドットバイドットで表示できました。
一方で、PlayStation 5やXbox Series X|S等のゲーム機については、縦長にストレッチされることなく、アスペクト比16:9を維持して縮小表示されました。
AlienVisionとAlienFXについて
「Alienware AW2725DF」ではFPSゲーム等に便利な視覚補助機能 AlienVisionがOSD機能として搭載されています。AlienVisionには、暗所の視認性を改善する「ナイト」、低解像やボヤけた表示にシャープネスをかける「クリア」、画面中央の拡大小窓を表示する「ビノ」、ヒートマップフィルタをかける「クロマ」、照準点をオーバーレイ表示する「十字線」の5つの機能があります。
ナイト、クリア、クロマの3つは画面中央にフィルターをかける範囲の小窓が表示されます。ビノも同様に小窓が表示されますが、中央を拡大する小窓が右上に表示されます。十字線はシンプルに中央に照準がオーバーレイされます。
ナイトやクロマは黒潰れして対象を視認し難いような暗いシーンに便利な機能です。
クリアはシャープネス処理がかかるので、小さい対象やボヤけた視界に効きます。
ビノも中央の小さい対象を視認するのに便利な機能、という位置づけですが、拡大率が1.1倍くらいしかありません。後述のAlienFXで小窓サイズを調整できますが、拡大倍率はそのままで表示範囲が広くなるだけでした。1.2~1.5倍くらいに調整できればよかったのですが。
AlienVisionにはトグル機能があり、OSD詳細設定メニューやランチャーが表示されていない状態で、操作スティックを上下左右に操作することで、特定フィルターのON/OFFや順次切り替え(プリセットを切り替える)を設定できます。トグル機能を割り当てなかった(”ー”を設定した)キーを操作した場合はランチャーが表示されます。
順次切り替えについてはトグルリストから切り替えるフィルタを選択できます。
あとAlienVisionではありませんが、ゲーム向上モードという設定項目からは、リアルタイムの画面リフレッシュレートを表示する「フレームレート」(可変リフレッシュレートが有効な場合、OSD表示がリアルタイムで変化する)、カウントダウンを表示する「タイマー」があります。
AlienVisionはOSD機能だけだと5つの視覚補助機能を切り替えるだけですが、PCとモニタをUSB接続した時に使用できるAlienware Command Centerアプリケーションに含まれるAlienFXディスプレイからさらに詳細設定が可能です。残念ながらDDC/CIによるDisplayPort経由ではAlienFXを利用できません。
Alienware Command Centerアプリケーションは公式サポートページからインストーラーをダウンロードし、ポチポチとクリックするだけで簡単にインストールできます。
アプリをインストールしたらAlienware Command Centerアプリケーションを起動し、左上タブメニューのFXを選択します。
AlienFXではテーマと呼ばれる設定プロファイルを作成でき、Alienware Command Centerアプリケーションに登録したゲーム(ライブラリ)と関連付けすることでゲーム起動時にテーマを自動で切り替える、という使い方が可能です。
テーマの編集アイコン(鉛筆マーク)やアクティブなデフォルトテーマの編集アイコンを選択すると、「Alienware AW2725DF」を含めたAlienwareエコシステムの対応機器に関する各種設定が表示されます。
「Alienware AW2725DF」の場合はディスプレイ輝度、プリセットモード、暗さスタビライザーなどOSD設定の一部も表示され、Windows上で調整できます。
OSD機能だけだとAlienVisionは5つの視覚補助機能を切り替えるだけでしたが、AlienFXではフィルタ小窓のサイズ、シャープネス補正強度の調整、視覚効果とOSDクロスヘアの併用など任意に様々な設定ができます。
AlienFX内で行ったナイト、クリア、ビノ、クロマ、十字線の設定はモニタ側に記録されるので、USB接続を外しても最後に適用したカスタム設定がそのまま残ります。
Alienware AW2725DFの発色・輝度・視野角
「Alienware AW2725DF」の発色・輝度・視野角など画質についてチェックしていきます。「Alienware AW2725DF」の製品スペックでは『モニター画面コーティング:反射防止』との記載がありますが、PC向け液晶モニタで一般的なアンチグレア処理ではなく、どちらかというとグレア寄りの表面処理になっています。
上の写真もグレアであることを示すために対象をかなり近づけているので写り込みがありますが、反射(写り込み)防止処理がかなり優秀なので、照明など自発光するものや照明の光を強く反射する鏡面状のものがディスプレイパネルと繋いだ視線上にあるような極端なワーストケースでなければ、写り込みは気になりません。
下の写真では同じ構図でかなり露出を上げて写り込んだ像を捉えようとしていますが、少し距離を離すだけでこんな感じにぼやけてしまいます。
付け加えると、写り込みを示す写真は写り込む物体がカメラを遮らないよう、モニタに対して斜めから角度を付けて撮影されることが多いですが、実のところ「Alienware AW2725DF」など2024年登場のSamsung製QD-OLEDパネルでは、ディスプレイパネルに対して角度が垂直に近づくほど反射防止処理は効果を発揮し、映り込みは軽減されます。
正面にいる自分の顔も中央の大部分は黒落ちして輪郭が分かる程度になるので、やはり写り込みは気にならないと思います。
反射防止処理が良く、対面にあるものの映り込みは軽微ですが、Samsung製QD-OLEDパネル一般に室内照明が明るい場合、黒色がピンク色がかって、ブラックレベルが悪くなる傾向があります。
室内照明を暗くしていくと、「Alienware AW2725DF」はピンク色がかることがなくなり、単純に写り込みの少ない非常に良質な黒色を発揮します。真っ暗にする必要はありませんが、薄暗いくらいの室内照明でベストな性能を発揮できます。
あと視線とディスプレイパネルを結んだ先にある壁等の物体が白色(明るい色)なのか、黒色(暗い色)なのかに依ってもパネルタイプ毎のブラックレベルは変わります。
「Alienware AW2725DF」は室内照明を薄暗くすれば良好なブラックレベル発揮でき、正面にいる自分自身の映り込みはアンチグレア仕様の液晶モニタ含め、一般的なモニタよりも軽微です。
ブラックレベル(ピンクティント)についてはこの記事の素材も含めてですが、写真撮影やYouTube撮影でかなり明るい照明を付けている状態で見るのと、自宅の室内照明を調整して見るのとではかなり差が出ます。
Samsung製 量子ドット有機ELパネルはPC向けゲーミングモニタだけでなく、同社製テレビ S95B/S95Cにも採用されています。国内ではSamsung製テレビは販売されていませんが、SONY A95K(第1.5世代のパネル)やSHARP QD-OLED FS1(第2世代のパネル)に採用されています。
反射防止処理(層)の影響なのか、筆者が私室のゲーミングモニタ代わりに使用しているSamsung S95Bと比較して、PC向け第3世代QD-OLEDパネルはピンクティントが強く、ブラックレベルが高めでした。(下写真はAW2725DFではなくAW3225QFですが傾向は同じ)
テレビ向けのSamsung製 量子ドット有機ELパネルを基準にピンクティントやブラックレベルの傾向を考えると、「Alienware AW2725DF」などPC向けパネルでは印象が大分違うので注意してください。
あとRtingsのレビューとかRedditポストでいくつか報告がある通り、Alienware AW2725DFのコーティングに傷というか、細かい気泡のような跡が筆者の個体にも画面右上にありました。
ただ、跡はあるにはあるものの(写真は照明の当て具合とかかなり調整して見やすくしています)、画面を正面から見た時にはほとんど視認できず、跡のある部分に強く照明を当てて気付く感じなので、筆者の個体については今のところ交換が必要とまでは思わないレベルです。
薄いフレームのある下側には見受けられず、筆者の個体も含めて上端に報告が多いので、梱包の影響で輸送時に擦れて付いているのではないかと。
「Alienware AW2725DF」の梱包自体は一般的な包装シートに加えて、パネル表面にエアパッキンのクッションシートも貼った状態なので決して不十分というわけではありません。
ディスプレイ本体を固定するスポンジスペーサーが外周だけで保持する構造なので上端に跡が付きやすいのだと思うのですが、かといって中央にも支えになるスペーサーを配置すればいいかというと、中央に跡が付く可能性もあり、難しいところ。
なお2024年3月以降の発送については画面保護フィルムが追加される形で梱包は改良されているようです。
AW3225QF買いました
— NekoLove(本店) (@NekoLoveJP) March 8, 2024
画面のフィルムが新しくなった
旧来はプチプチと不織布の保護材のみで、これが輸送中に擦れてQD-OLEDの画面に傷が付く事例が多発していたのだ、、、
なのでその下にプラスチックのフィルムが追加された pic.twitter.com/a8EypdSBRN
「Alienware AW2725DF」はディスプレイパネルに有機ELパネルを採用していますが、PCモニタで一般的な液晶パネルには大きく分けてIPS液晶パネルとVA液晶パネルとTN液晶パネルの3種類があります。各社個別の製品によって個体差はあるものの、これらのパネルの特性を簡単にまとめると次のテーブルのようになります。
「Alienware AW2725DF」に採用されている有機ELパネルは、色再現性、コントラスト、応答速度など一般に画質に影響するほぼ全ての要素で液晶パネルを上回ります。特にコントラストや応答速度については”桁違い”な性能です。
反面、液晶パネルの中でも高価とされるIPS液晶パネルよりも輪をかけてさらに高価であり、また同じ表示が続いた時に、パネルがその残像を永続的に残してしまう”焼き付き”と呼ばれる症状があったりと独自のデメリットもあります。
ディスプレイパネルの簡易比較表 | ||||
有機EL | IPS液晶 | VA液晶 | TN液晶 | |
色再現性 | ◎ | ◎ | 〇 | △ |
コントラスト (黒レベルの低さ) |
◎◎◎ | 〇 | ◎ | △ |
視野角 | 〇 | 〇 | 〇 | △ |
応答速度 | ◎◎◎ コンマms級 |
〇 | △ |
◎ |
大型テレビ | 40~80インチ超まで幅広く採用 |
近年は採用なし |
||
最大輝度 | △ |
◎ バックライト次第で1000nits超も |
- |
|
ハロー現象 | 発生しない |
部分駆動では 発生する可能性あり |
- |
|
価格 (高RR) |
×× |
△ (×) |
△ | 〇 |
液晶パネルの種類による性能の違いについてはこちらの記事も参照してみてください。
・IPS/VA/TN液晶パネルを比較解説 - ゲーミングモニタの選び方[4]
サブピクセル構造についてチェックしていきます。
まず予備知識として、一般的な液晶パネルは下の写真のように1:2程度で縦長なRGBサブピクセルが1ピクセルを構成しています。WindowsのClearTypeはこのサブピクセル構造に最適化して、フォントが綺麗に見えるようになっています。
有機ELパネルというとLG製パネルが有名、というか2021年以前はLG製パネルしかなかったのですが、「Alienware AW2725DF」にはSamsung製の有機ELパネルが採用されています。
サブピクセル構造は液晶パネルでよく見る横並びのRGB配列ではなく、緑ドットを頂点に左下に赤ドット、右下に青ドットで三角形を描く少々特殊な配列ではあるものの、RGBWでもペンタイルでもなく1:1対応のフルRGBなサブピクセルです。
「Alienware AW2725DF」のサブピクセル構造は特殊なので一定条件で色滲みが生じます。映画視聴やゲーミングであれば問題ないのですが、PCのデスクトップ作業では文字や境界線で色滲みが気になるかもしれません。
滲みの程度は軽微なので、PCデスクトップ作業でも特別に支障があるわけではありませんが、一般的なRGB横並びの配列とは傾向が異なるので一応注意してください。
サブピクセルの三角配列による色滲みはサブピクセルを拡大すると分かりやすいですが、
- 上が白色寄りで下が黒色寄りの境界線が赤色(赤強めのマゼンタ色)に滲む
- 上が黒色寄りで下が白色寄りの境界線が緑色に滲む
- 右が白色寄りで左が黒色寄りの境界線が黄色に滲む
- 右が黒色寄りで左が白色寄りの境界線が青色に滲む
「Alienware AW2725DF」は色再現性とコントラストに優れた有機ELディスプレイパネルなので、上下左右どこから見ても色の破綻はなく視野角も良好です。
Samsung製 量子ドット有機ELパネルは初期から一貫した特長ですが、白色単色のような悪条件で見ても視野角による色遷移がほとんどないところも魅力です。
80度とかほぼ真横くらいの確度から見て、やっと黄色~黄緑色かかるかな?という感じです。写真だと分かり易く写るのですが、肉眼では暗くなったと思っても色変化に気付くのは難しいレベルです
ちなみにLG製有機ELパネルについては最新技術であるMLA(マイクロレンズアレイ)が採用されているものは視野角による色遷移がほぼありません。
「Alienware AW2725DF」の発色について、標準の画質モードである”標準”は6500Kくらいの色温度に調整されており、白色が極端に黄色や青色がかって見えることはないものの、少し黄色寄りな色味です。
色温度を指定する画質モードは”暖色”と”寒色”の2種類がありますが、これらを切り替えても発色に違和感がある場合は、ユーザーカラーなどマニュアル設定でRGBのバランスを好みに合わせて整えてください。
画質モードのユーザーカラーを選択すると利得(Gain)、オフセット、6軸色相、6軸彩度の4つの発色設定を調整できます。
白色色温度を調整したい場合は利得を調整すればOKです。黄色がかった暖色を中間色にしたい場合は赤と緑の強度を数%下げる調整をしてみてください。
ちなみにゲーム1~3のユーザープロファイルでもユーザーカラー同様に4種類の発色設定を調整できます。
加えて暗さスタビライザーの設定はゲーム設定の項目で変更すると各画質モードで共有されますが、ゲーム1~3のユーザープロファイルでは個別に切り替わるように設定できます。
「FPS」「MOBA/RTS」「RPG」「SPORTS」などゲームジャンル別モードについては色相と彩度を0~100%の簡易的なスライダーで調整できます。
「クリエイター(作成者)」モードではsRGBもしくはDCI-P3の色空間に制限でき、製品に添付されているキャリブレーションレポートの通り、ファクトリーキャリブレーションによって色精度がΔE<2に保証されています。
sRGBもしくはDCI-P3の規格通りに動作するモードなので、RGBゲイン、彩度、色相といった発色調整はできませんが、ガンマカーブの変更には対応しています。
HDMIビデオ入力で接続時に限定されますが、「Alienware AW2725DF」にはコンソールモードという画質モードもあります。
コンソールモードではRGB強度を調整する”色(上記でいう利得)”に加えてガンマの設定も可能です。標準の2.2に加えて、1.8/2.0/2.4/2.6の5段階で調整できます。
ここからはカラーキャリブレータを使用して、色域・色再現性・輝度・コントラスト・均一性など画質に直結するモニタの性能について詳細な検証結果を見ていきます。なおこれらのモニタ性能(特に輝度の均一性)については同じ製品であっても個体差が大きいのでご注意ください。
検証にはカラーフィルター式(色差式)のCalibrite Display Plus HLとDatacolor Spyder X2 Ultra、そして分光式(スペクトロメーター)のX-Rite i1 Basic Pro 3を使用しています。
「Alienware AW2725DF」のディスプレイ輝度について白色点の輝度をOSD設定別で測定しました。OSD上の輝度設定10%刻みで0%~100%の輝度変化は次のようになっています。
「Alienware AW2725DF」において、一般に見やすい明るさと言われる120cd/m^2は輝度50%前後、室内照明に依りますが個人的に見やすいと感じる明るさの180~200cd/m^2は輝度80%前後です。
全白で250cd/m^2程度となっており、液晶モニタと比べると暗めという評価になりますが、有機ELパネルを採用するPCモニタとしてなら「Alienware AW2725DF」はトップクラスの明るさです。
有機ELパネルを採用するモニタ/テレビは一般に、SDR表示であっても映像ソースの平均的な明るさに応じて画面の輝度レベルが制御(APL:Average Picture level)されます。
また、APLによる輝度制御を無効化する機能に対応する製品もあり、ASUS製の有機ELモニタの場合、”均一輝度(Uniform Brightness)”としてアピールされています。
「Alienware AW2725DF」についてはAPLによる輝度制御は無効化されていますが、実際にはSDR表示の白色輝度は後述の通り、少々奇妙な挙動を示します。(FW ver:M3B102で検証)
DELL公式サポートに確認したところ、”マルチ ロゴ”と呼ばれる有機ELパネルの焼き付きを防止する保護機能が、ほぼ全てのプリセットモードにおいて既定で有効になっているためです。(クリエイターモードのみ無効)
任意に無効化できるファームウェアアップデートの配布予定があるかについても問い合わせましたが、現時点で回答は難しい、とのことでした。
RGB:255の白色ウィンドウは背景のグレーレベルがRGB:15以下もしくはRGB:240以上であれば、輝度設定100%に対してAverage Picture levelに依らず安定して250cd/m^2以上の輝度を発揮できます。
しかしながら、背景のグレーレベルがRGB:16からRGB:239の範囲内かつ、Average Picture levelが5%以上だと200cd/m^2以下に輝度が制限されました。
クリエイターモード以外の画質モードではこのような不可思議な輝度制限が機能してしまうため、カラーメーターを使用した測色結果は、テストパターンの表示がフルスクリーンオーバーレイの場合とそうでない場合とで”想定外の”齟齬が生じる可能性があります。
後述の検証結果、特に色精度関連に影響している可能性もあるので注意して下さい。
データ数が多いとグラフが見難いので下グラフでは背景グレーが0、239、240の3種類を抜粋しています。
背景グレーが完全な黒色(一般的な測定方法)の場合に比べて、背景グレーがRGB:240のケースは、多少輝度は下がる傾向はあるものの、APLによる輝度制御無効の動作といっても差し支えないレベルです。
一方で、背景グレーがRGB:239に1つ下げただけで、APL 5%~APL 75%の範囲内では輝度制限が機能し、測定対象の白色ウィンドウの輝度が220cd/m^2以下に下がります。
同じような挙動は背景グレーが黒色寄りのRGB:15とRGB:16の間でも確認できます。
またRGB:16など一部の背景グレーレベルとAPL:35%~APL:75%の組み合わせでは、時間経過で190cd/m^2まで徐々に輝度が下がる挙動も見られました。
この輝度低下についてはAL:100%の状態で10数秒放置してからAPL:75%に切り替えても発生せず、APL:2%から5%、10%と順番に上げていくと発生し、数秒の間だけAL:100%にしてからAPL:75%に戻すとやはり発生したりと、トリガーがやや複雑です。
上記の検証結果は画質モードのうち、標準モードで検証したものですが、ユーザーカラーモードや各種ゲーム用プリセットを含め、クリエイター(作成者)モード以外はほぼ同じ挙動でした。
一方で、クリエイター(作成者)モードで同様に検証を行うと、一部の背景グレーレベルとAPLの組み合わせで若干の輝度低下は見られたものの、APLによる輝度制御が無効な動作といってよい挙動でした。(sRGBモードで白色輝度が250cd/m^2を少し下回りまるのはホワイトバランス調整の影響なので正常)
「Alienware AW2725DF」のディスプレイ輝度の均一性(Uniformity)を検証しました。画面中央の輝度が約120cd/m^2になるOSD設定において、画面を横7×縦5の35分割として各位置の白色点の輝度を測定し、中央輝度を基準にしたパーセンテージで等高線マップにしています。
「Alienware AW2725DF」は35カ所の測定点のうち、差分5%を超えるポイントがないという非常に優秀な均一性を発揮しました。
液晶モニタにおいて輝度の低下が特に大きい四隅&四辺は、上のような領域分割測定では見落とされてしまうので、同様に中央120cd/m^2を基準にして個別に測定したところ次のようになりました。
バックライト式の液晶ディスプレイはどうしても四辺&四隅の輝度低下は大きくなりがちですが、有機ELディスプレイは「Alienware AW2725DF」はそこも5%以内の差分に収まっています。
参考までに輝度と色温度による色差の分布です。右端が中央と比べて若干暖色に寄っていますが、「Alienware AW2725DF」は輝度だけでなく、色温度も含めた色差で評価しても白色の均一性は非常に優秀です。
「Alienware AW2725DF」の有機ELパネルはピクセルレベルで輝度を調整できるので、グローバルディミングはもちろん、比較対象がフルアレイ型ローカルディミングでも100分割程度であれば、圧倒的に優れた黒色表現、明暗の分離が可能です。
下の写真では有機ELパネルの「Alienware AW2725DF」と、96分割フルアレイ型ローカルディミングに対応した液晶パネルのSONY INZONE M9を比較しています。
続いて「Alienware AW2725DF」の色域と色の正確性を検証してみました。
まずはモニタのOSD設定を標準設定にして(ディスプレイ輝度のみ120cd/m^2になるように調整)、任意のカラープロファイルを適用しない場合、次のようになりました。
「Alienware AW2725DF」は100% sRGBに加えて、99% DCI-P3、94% Adobe RGBという広い色域をカバーしています。HDR表示の色域のスタンダードであるRec2020もカバー率が81%です。
色域の広さはPC向けモニタとしてトップクラスではあるものの、Samsung S95Bなどテレビ向けの量子ドット有機ELパネルや、量子ドットIPS液晶を採用する液晶ディスプレイの中にはDCI-P3やAdobe RGBをフルカバーし、Rec2020も85%~90%弱までカバーできる製品もあるのでそれに比べると色域はやや狭めです。
色の正確性も平均ΔEが1.18となっており、標準設定のままでも非常に優秀です。X-Riteによると『ΔE=1程度で2つの色を横にくっつけて見比べた時に違いが判別できるレベル』とのこと。
ただし色調応答(ガンマカーブ)を見ると、60%~100%の区間でガンマ2.2に対してS字に上下するような曲線を描き、綺麗にガンマ2.2に追従していません。
標準モードだけでなく、ユーザーカラーモード等でも同じ傾向ですが、後述のクリエイター(作成者)モードではOSD設定で指定するガンマカーブに綺麗に一致しました。
「Alienware AW2725DF」は標準モードだとディスプレイパネルの性能を最大限に発揮し、上のような非常に広い色域で動作しますが、クリエイター(作成者)モードのsRGBもしくはDCI-P3を選択することで、色域(ホワイトバランスなど色規格も含め)に一致するエミュレート動作も可能です。
次にX-Rite i1 Basic Pro 3を使用してカラーキャリブレーションを行いました。キャリブレーション設定は下のスクリーンショットの通りですが、i1 Profilerの標準設定をそのまま採用しています。
「Alienware AW2725DF」では標準モードにするとRGBの強さに差が大きいとアラートが出たので、手動で調整できるユーザーカラーモードでRゲイン(赤)=99, Gゲイン(緑)=100, Bゲイン(青)=100としてキャリブレーションを行いました。
X-Rite i1 Basic Pro 3によってカラーキャリブレーションで作成したICCファイルを適用し、同じくX-Rite i1 Basic Pro 3で行った品質検証(色の正確性の検証)の結果は次のようになっています。X-Rite i1 Basic Pro 3は分光式(スペクトロメーター)のカラーキャリブレータなので、測定精度はこちらの方が高いはずです。
上の測定結果ではカラーキャリブレーション前の色の正確性はΔE 1.19でしたが、カラーキャリブレーション後にX-Rite i1 Basic Pro 3で測定した色の正確性はΔE 0.5とさらに優秀な数値です。
なお、上で説明した変な輝度制御の影響でX-Rite i1 Basic Pro 3とi1profilerによるキャリブレーションと色精度測定が完全には上手く動作していないかもしれません。
また分光型測色計(スペクトロメーター)で測定した輝度120cd/m^2における白色点のカラースペクトラムが次のようになっています。
カラースペクトラムから発色の良いモニタを見分けるざっくりとしたポイントは『RGB各色のピークが鋭く立ち上がり、かつ高さが同程度であること』です。一般的な液晶モニタは白色LEDバックライト(青色LEDを光源として赤緑(≒黄)蛍光体を組み合わせて白色を生成する)を採用しているので青色のピークが高くかつ鋭くなります。白色を基準として測定した場合、緑と赤のピークの高さは色温度のOSD設定で若干上下します。以上から簡単化すると『緑と赤のピークが鋭くなっているかどうか』をチェックすればカラースペクトラムの良し悪しがざっくりと判定できます。
一般的な液晶パネル(IPS/VA/TNに依らず)であれば下画像の左側のように青のピークだけが強く、残りの分離が弱い波形になりますが、LG製Nano-IPSで有名なKSF蛍光体や、Quantum Dot(量子ドット)といった最新技術が採用された液晶パネルは各色の分離が良く、ピークも急峻になります。
「Alienware AW2725DF」はRGB 1:1対応のサブピクセルな有機ELパネルに、量子ドット技術(Quantum Dot Technology)が採用されており、赤緑青の分離は良好かつ、それぞれのピークも鋭く尖っています。
ただし、2022年モデルですがSamsung S95Bに採用されているテレビ向けのSamsung製 量子ドット有機ELパネルと比較すると、ピークの急峻さは同程度である一方、中間の分離は「Alienware AW2725DF」の方が弱めです。
参考までに、「ASUS ROG Swift OLED PG27AQDM」など、LG製有機ELパネルを採用する製品は、青色ピークは急峻ですが、新型のWBEと旧型のWBCパネルで程度の差こそあれ、赤色と緑色のピークの立ち上がりは弱く、ピークの分離も弱いので、鮮やかな赤色や緑色の表現は弱点です。
Alienware AW2725DFのリフレッシュレートについて
「Alienware AW2725DF」の最大の特徴の1つである360Hzリフレッシュレートについてチェックしていきます。まずは「Alienware AW2725DF」の特徴の1つである”360Hzリフレッシュレート”について、その意味自体は特に説明せずとも読者はご存知だと思いますが、一般的な60Hzリフレッシュレートのモニタが1秒間に60回の画面更新を行うのに対して、144Hzリフレッシュレートであれば標準的な60Hzの2.4倍となる1秒間に144回の画面更新を行います。
最近では競技ゲーマー向け製品で240Hzの超高速リフレッシュレートなゲーミングモニタも普及しつつあり、さらには、それを1.5倍に上回る360Hzの超々高速なリフレッシュレート対応製品も各社から販売されています。
1秒間に360回の画面更新を行う360Hzリフレッシュレートの物理的なメリットとしては、単純に秒間コマ数が増えるので映像がより滑らかになります。
上の章で詳しく検証したようにリフレッシュレートが上がると応答速度も上がって細部がクッキリとしたシャープな映像に見えやすくなり、加えて画面更新間隔が短くなるので表示遅延が小さくなり、一般的な60Hz環境よりもスピーディーなプレイで他者を圧倒しやすくなります。
「Alienware AW2725DF」ではNVIDIA GeForce RTX 40/30シリーズやAMD Radeon RX 7000/6000シリーズなど最新グラフィックボードのDisplayPort1.4のビデオ出力に接続することによって、モニタリフレッシュレートを360Hzなどに自由に設定できます。
ゲーミングPCとゲーミングモニタの接続にはDisplayPortを使用するのが現在の主流ですが、「Alienware AW2725DF」にはサブ入力としてHDMIも搭載されています。
HDMIビデオ入力は最新のHDMI2.1ではなくHDMI2.0(VRR等の一部のHDMI2.1機能をサポート)なので、NVIDIA GeForce RTX 40/30シリーズやAMD Radeon RX 7000/6000シリーズなど最新グラフィックボードと接続しても、WQHD解像度において最大リフレッシュレートは144Hzになります。
HDMI接続の場合、コンソールモードを選択すると、WQHD解像度の最大リフレッシュレートが120Hzに下がる代わりに、4Kエミュレートが有効になり、4K/60Hzを選択できるようになります。
モニタリフレッシュレートの設定は、NVIDIA製GPUの場合は上のスクリーンショットのようにNVIDIAコントロールパネルから、AMD製GPUの場合はWindowsのディスプレイ設定から行います。
オンライン対戦FPSなど競技性の高いゲームにおいて144Hzや240Hzなど高リフレッシュレートのモニタを使用した時の実用的なアドバンテージとして、ゲーム内視線を左右に振った時の視認性が上がるという例は直感的にもわかりやすいメリットですが、その他にもゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性が上がるというメリットも存在します。
下の比較動画では4分割して映像を並べていますが、右下以外の3つは右下画面の緑枠部分を拡大するよう接写して、「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影したものになっています。リフレッシュレート別で左上は60Hz、右上は120Hz、左下は240Hzとなっていますが、赤枠で囲った建物の出入り口付近で左方向に移動する敵の動きはリフレッシュレートが上がるほど視認しやすくなるのがわかると思います。
またハイリフレッシュレートなゲーミングモニタでは表示遅延も小さくなります。
表示遅延が小さいメリットとしては、視認と操作の繰り返し応答が良くなることに加えて、例えば下の動画のように壁に隠れたターゲットが壁から出てきた時、画面に表示されるのが実際に速くなります。
240~360Hz・FPSでシステム遅延が小さい環境の攻撃側に敵(守備側)が見えているのに対して、一般的な60Hz・FPSでシステム遅延が大きい環境の守備側は敵(攻撃側)が見えていない様子がハッキリと映っています。
主観の画面表示を基準にしてみると、クロスヘア中央にターゲットをエイムしてから撃ち始めた場合、240Hzのほうが60Hzより先に着弾します。ターゲットが逃げる場合は50ms程度の差で撃ち漏らす場合もあります。
技術云々ではなく、単純に、クロスヘア中央にエイムするという同じタイミングで撃ちあっていたら、リフレッシュレートが高いモニタを使っている方が勝ちます。加えて操作と画面表示の繰り返し応答も早いので、当然、リフレッシュレートが高い方がエイムもスムーズになります。
高性能なゲーミングモニタには高性能なGPUが必要
なお、ゲーミングモニタのリフレッシュレート(と解像度/フレームレート)と対になって重要なのが、PCのグラフィック性能を左右するGPU、グラフィックボードです。ハイフレームレートはヌルヌル、サクサクと表現できるような快適なゲーミングを実現するだけでなく、上で説明したように競技系ゲームを有利に運ぶ意味でも重要ですが、ゲーミングモニタがハイリフレッシュレートに対応していても、PCのグラフィック性能が不足していて大元の映像データが60FPS前後しか出ていなければ宝の持ち腐れになってしまいます。
当サイトでは240Hz+の競技ゲーマー向けモニタや4K/120Hz+のラグジュアリーな画質重視モニタを検証するにあたりモニタ性能を最大限に発揮できるよう、2023年最新にして最速のウルトラハイエンドGPUを搭載したグラフィックボード「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN」を使用しています。
PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8は、ベイパーチャンバー構造のベースコアや、厚みのあるファンブレードをバリヤーリングで結合した重厚な冷却ファンを採用する4スロット占有大型GPUクーラーにより、各社AIBモデルの中でもトップクラスの静音性を実現しています。
メーカーのPNYは2022年に株式会社アスクが販売代理店契約を結んだばかりの新参なので国内での知名度は高くありませんが、北米など海外市場では30年以上に渡りコンシューマーならびにビジネス向けで電子機器の製造・販売を行う大手メーカーです。
国内正規品なら代理店を介してPNY公式のグローバル保証と同じ3年間の長期保証が受けられるところも魅力です。
・「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8」をレビュー
「Alienware AW2725DF」のポテンシャルを最大限に引き出すには、元から軽めのPCゲームや画質設定を下げた最新PCゲームであってもグラフィックボードのGPU性能はかなり高い水準で要求されます。
ゲーミングモニタとして「Alienware AW2725DF」を使用するのであれば2023年最新GPUであるNVIDIA GeForce RTX 4080/4090やAMD Radeon RX 7900 XT/XTXがおすすめです。
・GeForce RTX 40シリーズのレビュー記事一覧へ
・GeForce RTX 30シリーズのレビュー記事一覧へ
・Radeon RX 7000シリーズのレビュー記事一覧へ
非可逆圧縮伝送機能「Display stream compression (DSC)」について
視覚損失のない非可逆圧縮伝送機能「Display stream compression (DSC)」について説明しておきます。Alienware AW2725DFの応答速度・表示遅延
次にゲーミングモニタのハードウェア性能として特に重要な、「Alienware AW2725DF」の応答速度や表示遅延についてチェックしていきます。まずは「Alienware AW2725DF」の応答速度について検証していきます。
「Alienware AW2725DF」では関係しませんが、液晶パネルのゲーミングモニタを選ぶ、もしくはモニタの応答速度や残像を評価する上で重要な予備知識である『液晶モニタの応答速度とオーバードライブ機能』についてはこちらの記事で簡単に紹介しているので、よくわからないという人は先に確認してみてください。
応答速度の確認には「UFO Test: Ghosting」を使用します。同テストではUFOが移動する背景カラーを選択できますが、今回の検証ではブラック/グレー/ホワイトの3色を選択しています。
背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
まずは簡単にシャッタースピードを十分に速くして「UFO Test: Ghosting」の様子を写真撮影してみました。
有機ELパネルが採用されている「Alienware AW2725DF」を最大リフレッシュレートの360Hzで動作させ、十分に早いシャッタースピードで撮影しましたが、応答速度の遅さによって複数のフレームが写し込むことはほぼありませんでした。
静止状態の写真と比較しても見た目に差はありません。
液晶パネルなら適当に手動で連写していれば1ms GTGを謳う製品でも2フレームが映った遷移途中を撮影できますが、「Alienware AW2725DF」の有機ELパネルは応答速度が非常に速いので、ランダムな連写では遷移の瞬間をとらえるのが難しいレベルです。
さらに「Alienware AW2725DF」のリフレッシュレートを変えてみたり、他のモニタを比較対象にしたりしながら、「UFO Test: Ghosting」の様子を「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、比較してみます。
まずは「Alienware AW2725DF」のリフレッシュレートを60Hz~360Hzに変えてUFO Test: Ghostingの様子を比較してみました。見ての通りリフレッシュレートによらず残像感は全く感じません。
ここからはSONY DSC-RX100M5の960FPS(16倍速)よりもさらに高速な5760FPS(96倍速)のスーパースローモーションカメラを使用して「Alienware AW2725DF」の応答速度を比較検証していきます。
まずは先ほどのおさらいになりますが、5760FPSのスーパースローで確認してみても、「Alienware AW2725DF」は一瞬で画面更新が完了しています。
2022年モデルですが、Samsung製 量子ドット有機ELパネルを採用するテレビ Samsung S95Bでは白色背景など一部条件で有機EL保護機能の影響なのか、前フレームの残像が残ることがありましたが、「Alienware AW2725DF」にはそういった挙動もありません。
下は「Alienware AW2725DF」の360Hzについて、グレー背景における画面更新のフレームを切り出して並べたものですが、5760FPSで撮影した時、各ピクセルは1フレーム以内に画面更新が完了しています。応答速度はコンマms単位で、有機ELモニタの公称応答速度としてよく挙げられる0.5ms~1msは余裕でクリアしています。
有機ELパネルに限定すると対応リフレッシュレートに差があれど、応答速度自体はどれもほぼ理想的なスイッチ特性で大差ありませんが、比較対象が液晶パネルなら応答速度には大きな差があります。
有機ELパネルの「Alienware AW2725DF」に、液晶モニタの「ASUS ROG Swift 360Hz PG27AQN」と「ZOWIE XL2566K」を加えて応答速度を比較してみました。
ASUS ROG Swift 360Hz PG27AQNとZOWIE XL2566Kも360Hzリフレッシュレートに対応しており、現在販売されている液晶モニタでは最速クラスの応答速度ですが、それでも有機ELの「Alienware AW2725DF」と比較すると残像があるのがハッキリわかります。
高精度な機械式スライダーを使用した撮影で、「Alienware AW2725DF」の240Hzや360Hzについて実際に体感する明瞭さを再現してみました。
「Alienware AW2725DF」の応答速度はほぼ理想的なスイッチ特性なので、過渡応答やオーバーシュートが生じる液晶と比較すると1.5倍以上の明瞭さを発揮します。
有機EL同士で比較すると360Hzと240Hzでは360Hzのほうが明瞭なのはもちろん、液晶の360Hzに対して有機ELの240Hzは同等以上の明瞭さです。(モニタ左端から右端まで1秒のスライド速度)
続いてスーパースローモーション動画ではなく、オシロスコープ&光プローブのような光センサーを利用した定量的な測定で応答速度についてチェックしていきます。
ここで確認するのは製品スペックに置いて『〇〇s (GTG)』などと表記される性能そのものです。統計的な扱いや解析には差があるかもしれませんが。
「Alienware AW2725DF」の最大リフレッシュレートで最適OD設定を適用した時の応答速度とオーバーシュートエラーのヒートマップは次のようになっています。
ゲーム機や動画視聴において一般的な60Hzリフレッシュレートにおいて、「Alienware AW2725DF」に最適OD設定を適用した時の応答速度とオーバーシュートエラーのヒートマップは次のようになっています。
ゲーミングPCだけでなくPlayStation 5やXbox Series X/Sといった最新ゲーム機も対応する120Hzの高速リフレッシュレートにおいて、「Alienware AW2725DF」に最適OD設定を適用した時の応答速度とオーバーシュートエラーのヒートマップは次のようになっています。
最後に「Alienware AW2725DF」の表示遅延(内部遅延)について測定を行いました。
モニタにはGPUのビデオ出力が送られてきてから実際にモニタに表示されるまで遅延が存在し、この遅延が大きいと例えば、FPSゲームでゲームパッドのトリガーやマウスのクリックによる操作からワンテンポ遅れて、マズルフラッシュが表示される、といった現象が発生します。人間は当然目で見てから操作するので、格闘ゲームやFPSゲームなど1,2フレームを争うような競技性の高いゲームにおいてはモニタの表示遅延が可能な限り小さいことが望まれます。
システム表示遅延やディスプレイ表示遅延の測定には、フォトセンサーを使用した特殊な測定機器「PC Gaming Latency Tester」を使用しています。当サイトのレビュー用に特注した機器なので、詳細についてはこちらの記事を参照してください。
「Alienware AW2725DF」やその他の比較モニタのディスプレイ表示遅延の測定結果は次のようになりました。測定方法的に遅延が2ms以下であればディスプレイ内部の表示遅延は誤差の範囲内で十分に小さいと考えてOKです。
「Alienware AW2725DF」は240Hzや360Hzでは理想的なディスプレイ表示遅延を示すのですが、60Hzでは7ms程度、120Hzでも僅かながら1.0~2.0ms程度の余分な遅延が生じています。操作にラグを感じるほどではありませんが。
「Alienware AW2725DF」やその他の比較モニタのシステム表示遅延の測定結果は次のようになりました。この測定値は一般的なPCゲームにおける操作から画面表示の変化までの遅延に一致します。
グラフの通りリフレッシュレートを上げると応答速度だけでなく表示遅延も改善するのでゲーマーにとってハイリフレッシュレートなゲーミングモニタを選択するメリットは大きいということが分かると思います。
Alienware AW2725DFの可変リフレッシュレート同期について
続いて「Alienware AW2725DF」が対応する可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible(VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」についてチェックしていきます。モニタの画面更新(リフレッシュ)に関する基本的な予備知識や、「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」と「NVIDIA G-Sync Compatible」の関係についてはこちらの記事を参考にしてください。
・ゲーミングモニタの選び方[3] FreeSyncとG-Sync Compatibleについて
なお当サイトのレビューではNVIDIA環境について、G-Syncモジュールが搭載されたモニタにおける可変リフレッシュレート同期機能を単純にG-Syncと呼び、AMD FreeSync(VESA Adaptive-Sync)に対応したモニタにおける可変リフレッシュレート同期機能はG-Sync CompatibleもしくはAdaptive-Syncと呼びます。またドライバでそのモニタが正式にサポートされている場合はG-Sync Compatible認証取得済みと補足します。
「Alienware AW2725DF」は48Hz~360Hzの範囲内で「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」など可変リフレッシュレート同期に対応しています。
2024年2月現在、GeForce Driver 551.52でG-Sync Compatible認証は未取得でした。
従来のNVIDIA製GPUではHDMI経由でG-Sync Compatibleは利用できないケースが多かったのですが、「Alienware AW2725DF」ではHDMI経由でもG-Sync Compatibleを利用できます。
当然、AMD製GPU環境でもAMD FreeSyncを有効化できます。可変リフレッシュレート同期機能の対応フレームレートは48Hz~360Hzの範囲内です。
可変リフレッシュレート同期機能が正常に動作してリフレッシュレートが可変になると、「Alienware AW2725DF」のOSDメニューから確認できるリフレッシュレートがフレームレートに合わせて変動するようになるので、機能が正しく動作しているかどうかはここを見て確認してください。
なお、「Alienware AW2725DF」は標準でVRRが有効になっていて、OSD設定上にもVRRを有効/無効を切り替える項目はありません。モニタ側の設定は必要なく、ビデオ出力機器側でVRRを有効にすれば機能します。
Alienware AW2725DFのHDR表示やCSゲーム機対応について
「Alienware AW2725DF」のHDR表示やCSゲーム機の対応(4Kエミュレートなど)についてチェックしていきます。HDR表示やCSゲーム機対応について | |
HDMI ver, ポート数 |
HDMI2.0×1 |
HDR表示 | 対応 |
VRR同期 | 対応 |
カラーフォーマット DP1.4 |
WQHD/360Hz/10bit RGB |
カラーフォーマット HDMI2.0 |
WQHD/144Hz/10bit YUV422 4K/60Hz/10bit YUV422 |
ピーク輝度(実測) | HDR Peak 1000 : 1010 cd/m^2 (3% APL) その他 : ~450 cd/m^2 (10% APL) |
輝度認証 | VESA DisplayHDR 400 True Black |
ローカルディミング | 対応、ピクセルレベル |
4Kエミュレート | 4Kエミュレート対応 |
PlayStation 5 | WQHD/120FPS (HDR:YUV422) 4K/60Hz (HDR:YUV422) |
Xbox Series X/S | WQHD/120Hz 4K/60Hz |
VESAがMicrosoft Store上で無料アプリとして公開しているVESA DisplayHDR Compliance Testsから、「Alienware AW2725DF」のディスプレイ輝度の扱いが確認できました。(データの読み方については管理人も怪しいので参考までに)
なお「Alienware AW2725DF」にはいくつかHDRモードがありますが、HDR Peak 1000に切り替えると、VESA DisplayHDR Compliance Testsで表示されるHDR輝度情報が変わりました。
HDR表示モードやOSD設定について
「Alienware AW2725DF」でHDR映像ソースを正常に表示するには、ディスプレイ設定の小項目として配置されている”Smart HDR”をオフ以外に切り替える必要があります。初期設定でデスクトップが選択されているので特に操作しなくてもPCやゲーム機からHDR映像に対応したディスプレイとして認識されますが、認識されない場合はオフになっていないか確認してください。
HDR設定を有効にした状態でHDR映像ソースが認識されると、自動的にHDR表示モードに切り替わり、OSD詳細設定メニューの右上に”HDR+”のHDRアイコンが表示されます。
「Alienware AW2725DF」はHDR表示をコンテンツに最適化するSmart HDRという機能を搭載しており、デスクトップ、ムービーHDR、ゲームHDR、カスタムカラーHDR、DisplayHDR True Black、HDR Peak 1000の6種類のプリセットから選択できます。
HDRモードではディスプレイ輝度など一部のOSD設定がグレーアウトして調整できなくなります。画質モード(プリセットモード)は切り替えできますが、HDRモード中の表示には影響しません。
PC向けゲーミングモニタのHDR表示は発色・輝度などが完全に自動制御になるか、数種類のプリセットを切り替える程度しか設定がないことが多いのですが、「Alienware AW2725DF」はSmart HDRの中に”カスタムカラーHDR”という設定が用意されており、コントラスト、色相、彩度を任意に調整できます。
有色なら色相で寒色(青色)寄りにシフトさせたり、彩度でSDR表示同様に過飽和気味に高彩度な表示にチューニングすることも可能です。ただしホワイトポイント(色温度)はHDR標準のD65から変更できません。
あとHDMIビデオ入力で接続時に限定されますが、プリセットモードと違ってコンソールモードはHDR表示中にもオン/オフの切り替えが可能であり、HDRモード中にはソーストーンマップという項目が現れます。
これはVRRやALLMのようにHDMI2.1規格で追加された新機能 HDMI Source-Based Tone Mapping (SBTM)を有効にする設定のようです。
SBTMではHDRトーンマップを自分で行うソース機器に対して色域や輝度といったディスプレイ性能を伝えることで、ディスプレイ性能に合わせたトーンマップを実現できます。
PC接続時の解像度やカラーフォーマットについて
「Alienware AW2725DF」はDisplayPort1.4ビデオ入力でPCと接続した場合、WQHD/360HzのHDR表示において、RGB 10bitのカラーフォーマットに対応します。また「Alienware AW2725DF」のHDMIビデオ入力のバージョンはHDMI2.0となっており、WQHD/144HzでHDRを有効化しても、標準のカラーフォーマットは8bit RGBになりました。手動設定でYUVにすれば10bitに切り替えが可能です。
コンソールモードで4Kエミュレートを有効にすると4K/60Hz/HDR YUV422 10bitにも対応します。
CSゲーム機接続時の4KエミュレートやHDCP対応について
「Alienware AW2725DF」のサブ入力として設置されているHDMI端子のバージョンはHDMI2.0です。(通信規格がHDMI2.0相当のTMDSで、VRR等の一部HDMI2.1機能をサポート)モニタの物理的な解像度がWQHDなので実際の表示自体は当然WQHDにダウンスケールされますが、PlayStation 5やXbox Series X/Sに接続した場合、4K/60FPS対応モニタとして認識され、4K解像度のビデオ出力(4Kエミュレート)が可能です。
4Kエミュレートを利用するにはOSD設定のコンソールモードを有効にする必要があります。
あと、同時発売のAW3225QF(FW:M2B102)ではPS5接続時にコンソールモードをオフにしてHDR表示を行うと、輝度低下(トーンマップ異常)や彩度のウォッシュアウトといった不具合が発生しました。
「Alienware AW2725DF」はコンソールモードをオフにしていても問題はなさそうでしたが、HDR表示に異常を感じたら試してみてください。
PlayStation 5やXbox Series X/Sのようにゲーム機が対応していればVRR同期機能を利用できます。
PlayStation 5もWQHD解像度に対応したので、現在はWQHD/120HzでHDR表示やVRRも併用できます。
Alienware AW2725DFのHDR性能やローカルディミングについて
最後に「Alienware AW2725DF」のHDR表示における輝度性能、ローカルディミング対応、色性能をチェックしていきます。HDR表示における輝度性能について
HDR対応モニタ/テレビのHDRモードにおけるディスプレイ輝度は、高輝度領域の広さ(APL:Average Picture Level)や高輝度表示の継続時間に依存するので、Calibrite Display Plus HLを使用してHDR時の最大輝度を条件別で測定してみました。VESA DisplayHDR Compliance Tests以外の測定はHCFRを使用しています。HCFRの測定ではパネルタイプに応じて理想的な性能を確認できるように背景カラーを、液晶パネルの場合は20%グレー、有機ELパネルの場合は0%ブラックとしています。
「Alienware AW2725DF」はVESA DisplayHDR Compliance Testsで確認すると、10%部分に450cd/m^2を発揮するのに対し、画面全体の白色表示になると輝度は250cd/m^2程度に下がります。同製品が取得するVESA DisplayHDR 400 True Blackの認定基準はクリアしています。
いずれも数秒しかキープできない短時間のピーク輝度ではなく、少なくとも十数秒では輝度が落ちずにこの高輝度を維持していました。
今回はSmart HDRモードのうちHDR Peak 1000モードの検証結果を挙げていますが、APL 10%やAPL 100%の最大輝度は他のモードでもほぼ同じです。
PC向けモニタのHDR輝度評価(輝度認証)として一般的なVESA DisplayHDRはAPL 10%とAPL 100%を測定するのに対し、「Alienware AW2725DF」でマーケティングスペックとしてアピールされる最大1000cd/m^2の高輝度はAPL 3%以下において発揮できる数値となります。
高輝度領域に対するHDR輝度(APL:Average Picture Level)を確認すると、確かにHDR Peak 1000モードではAPL 3%以下において1000cd/m^2程度の高輝度を発揮できました。APL 5%は760cd/m^2程度です。
Game HDRやHDR True BlackなどHDR Peak 1000モード以外ではAPL 10%未満でも最大輝度はAPL 10%と同じ450cd/m^2程度で頭打ちになります。
一方、HDR Peak 1000モードを含めSmart HDRモードの各種プリセットでは、各種高輝度領域が広くなると、20%部分で400cd/m^2程度、50%部分で300cd/m^2程度まで輝度が下がります。
2023年モデルですがMLA技術も使用されているLG製有機ELパネルを採用するASUS ROG Swift OLED PG27AQDMとAPLに対するHDR最大輝度を比較すると次のようになります。
APL 50%以上では250~350cd/m2を発揮できる「Alienware AW2725DF」の方が高輝度ですが、筆者の経験上、一般的なゲームシーンでの画面の明るさに影響が大きいと思われるAPL 10~30%はLG製有機ELパネルが上回っています。
実は、この輝度分布は同社AW3423DWなどSamsungが第1世代とよぶ量子ドット有機ELパネル採用製品とほぼ同じです。詳しいレビューをググれば似たようなグラフが見つかります。
HDR的な高輝度を体験する上ではせめてAPL 10~20%で600cd/m^2以上の高輝度は欲しいので(APL 3%以下の高輝度よりも)、第3世代を謳う最新パネルで輝度性能の向上がなかったのは正直に言うと残念でした。
「Alienware AW2725DF」のAPLに対するHDR最大輝度を、その他の有機ELモニタやFALDに対応する液晶モニタと比較すると下のようになります。
有機ELパネルはピクセルレベルで輝度を調整できるので、後述のローカルディミングのように完全な黒や明暗の分離(ハローやチラつきがない)といった表現は得意としますが、上の比較グラフの通り、APL 50~100%、画面全体が白色/高輝度になるような映像では輝度が大きく下がるという弱点があります。
画面全体が点灯する爆炎のような表示では250cd/m^2以下のディスプレイ輝度しか発揮できず、また画面全体に白色が分布すると、輝度が下がり本来、白色で表示すべき部分がグレーっぽくなってしまいます。
「Alienware AW2725DF」は最新のQD-OLEDパネルによって輝度性能がかなり改善しているとはいえ、画面全体が高輝度で発光する爆炎のような表示にはやはり弱いのですが、下のように比較的広く標準的な白色が分布する映像に対しては高輝度な液晶モニタと遜色ない表示が可能でした。
「Alienware AW2725DF」はHDR True Blackプリセットを使用すれば比較的に明るいシーンでもFALD対応液晶ディスプレイ同様に映像ソースが指定するベース輝度を再現できるのですが、最大輝度は450cd/m^2程度でトーンマップもそこでクリップされるため、高輝度部分の階調表現は微妙です。
VESA DisplayHDR 600のSONY INZONE M9と比較するとベース輝度は同等で暗さを感じませんが、ピーク輝度となる太陽の部分は階調表現が狭く(白飛びで太陽の半径が大きい)、ピーク輝度自体も低いのが分かります。
通常は上くらいの検証で大雑把な輝度性能は把握できるのですが、「Alienware AW2725DF」は少々奇妙な挙動だったので少し掘り下げて解説していきます。
HDR Peak 1000モードについては最大1000cd/m^2を発揮でき、450cd/m^2を超える高輝度(映像データが)部分でも白飛びせず輝度階調が表現されますが、画面全体の輝度はHDR True Blackモードなど他のHDRモードと比べてかなり下がります。
簡単な例としてAPL 10%の高輝度ウィンドウに対して、背景を黒色(0%ホワイト)ではなくリファレンスで100cd/m^2前後の輝度である50%ホワイトに固定し、高輝度ウィンドウと背景の輝度をそれぞれ測定したのが次のグラフです。
HDR Peak 1000モードは高輝度ウィンドウの輝度がHDR True Blackモードより低い上に、ベース輝度になる背景もリファレンスの半分以下しか輝度が出ません。輝度性能の弱い有機ELとはいえ、この動作は実用するには致命的だと思います。
背景を50%ホワイトにした時のAPLに対する最大輝度と背景輝度の関係を個別製品でまとめたのが次のグラフです。
筆者はAPL 100%で1000cd/m^2以上を発揮できるFALD液晶モニタも検証したことがあり、経験的に輝度性能が高いほどリアルさの再現性や迫力は増すことは間違いありません。
同時にHDRの魅力の1つである高輝度表現(ダイナミックレンジの広さ)を正しく体験する水準について言うなら、Samsung S95BやSONY INZONE M9程度の輝度性能が必要というのが率直な意見です。
最大輝度で600cd/m^2以上、ベース輝度で70~80cd/m^2以上をキープできるくらいの輝度性能がないと、高輝度やダイナミックレンジという意味でのHDR体験には不十分だと思います。
以上を踏まえて、最大1000cd/m^2のピーク輝度に対応するHDR Peak 1000プリセットについてですが、上記測定結果の通り、ベース輝度が大幅に下がるので、白色が広く分布するようなシーンで画面が暗くなります。
また最大輝度についてもAPLやベース輝度に対する制限が強いので、下写真のような条件だとハイライトの階調は表現されますが、ピーク輝度はSONY INZONE M9が600cd/m^2程度出るのに対して300cd/m^2程度です。
HDR対応モニタの評価用にPS5でサンプルスクショをいくつか用意しているのですが、「Alienware AW2725DF」で最大輝度を確認できたのは下写真の爆炎部分でした。これくらい理想的な状態でもピーク輝度は600~700cd/m^2程度です。
「Alienware AW2725DF」において”最大輝度 1000cd/m^2”という数字にマーケティングスペックやキャッチコピー以上の意味があるかというと微妙です。
ローカルディミング対応について
「Alienware AW2725DF」は有機ELディスプレイなのでピクセルレベルでローカルディミングに対応しています。現在10万円程度で販売されている4K/144Hz対応ゲーミングモニタの多くは、ローカルディミングに対応していても短冊状の1D型かつ分割数が10~20程度なので、輝点に対してかなりの広範囲でバックライトが点灯してしまいます。
4K/144Hz対応ゲーミングモニタ ASUS TUF Gaming VG28UQL1Aと比較していますが、「Alienware AW2725DF」はピクセルレベルで輝度を調整でき、”ハローがない”という意味では理想的な構造なのでその差は一目瞭然です。
続いて比較するSONY INZONE M9は、直下型バックライトかつフルアレイ型ローカルディミングの4K/144Hz対応ゲーミングモニタとしては比較的に安価な製品です。(とはいえ13~15万円と高価ですが)
1D型との比較では完全に上位互換な表現力を発揮していた96分割FALDと比較してみても、やはりピクセルレベルで制御する有機ELの方が圧倒的にコントラストに優れます。
そもそも輝点を見た時に周辺がモヤッとするのは人の目の構造的な現象でもあるので、数十万円もする高級品になりますが、Mini LEDバックライトで500以上の分割数にもなると、輝点に対する周辺へのバックライト漏れは体感的に有機ELと大差なくなります。
ただし、高速に動く輝点に対してバックライトが上手く追従できるか、またバックライトの追従によるチラつき(バックライトの明滅)といった現象もあります。そういった問題を無視できるところも有機ELの魅力です。
HDR表示における輝度性能(EOTF)や色性能について
この章の最後に、「Alienware AW2725DF」のHDR表示における輝度性能(EOTF)や色性能についてもう少しだけ深堀りしていきます。性能の検証にはカラーキャリブレータとしてX-Rite i1Basic Pro 3やCalibrite Display Plus HLを、ソフトウェアはHCFR Colormeterを使用しています。
HCFRの測定ではパネルタイプに応じて理想的な性能を確認できるよう、特に補足がなければ、液晶パネルの場合は50%部分/背景カラー20%グレー、有機ELパネルの場合は10%部分/背景カラー0%ブラックとしています。
まずは輝度性能について、標準白100nits/最大白10000nitsのガンマ曲線(SMPTE 2084)に対して、実際のディスプレイ輝度(EOTF)は次のようになりました。
「Alienware AW2725DF」をHDR True Blackで使用した場合、最大で450cd/m^2程度の輝度を発揮できます。
リファレンスに対しては15~65%のホワイトでは綺麗に追従します。リファレンスに追従したまま最大輝度になってそれ以降はクリップされます。
逆に15%~20%以下のブラックについては、視認性を重視しているのかリファレンスよりも若干輝度が持ち上がっています。
APL 10%(背景 0%ホワイト)で測定した場合、Game HDRなどのHDR Peak 1000モード以外のEOTFはほぼ同じですが、背景輝度を50%ホワイトにするなど簡単な操作でも実際の表示輝度は変わります。
筆者の経験的にリアルなゲームシーンにおける輝度性能は下記の測定結果が概ねマッチすると思います。後述の通り、色調・彩度・ホワイトバランス等の挙動も異なることがありますが、輝度性能で言うならHDR True Blackモードがベストだと思います。
HDR映像ソースに対してフィルムメーカーモード的に比較的忠実に再現するSONY INZONE M9と横並びで比較してみました。
写真映りだと「Alienware AW2725DF」が少し暗い印象ですが、実際の体感では、彩度の強さこそ感じても、画面表示の暗さは感じません。(厳密に輝度を測定すると少し低いですが体感としてはほぼ気にならないか、気付くのが難しいレベル)
一方で、Smart HDRをHDR Peak 1000モードに切り替えると、APL 10%ではHDR True Blackモードなど他のHDRモードと最大輝度は450cd^m2でほぼ同じですが、リファレンスが300cd^m2に達する60%ホワイト付近でリファレンスカーブから外れて、リファレンスが1000cd/m^2の75%ホワイトまで比例直線で輝度が上昇していき、その後クリップされます。
10%以下のAPLにおいてはAPLに応じて最大輝度が最大で1000cd/m^2程度まで上昇します。APL 10%同様に最大輝度より150cd/m^2低いリファレンスポイントでリファレンスカーブから外れて比例直線で輝度が上昇し、その後クリップという動作です。
15%~20%以下のブラックについては、やはり他のHDRモード同様に視認性を重視しているのかリファレンスよりも若干輝度が持ち上がっています。APL 2%~5%でも共通です。
ただし、輝度が強制的に0に落ちるポイントが他のHDRモードでは2%ホワイトでしたが、HDR Peak 1000モードでは3%ホワイトに変わっていました。
EOTFだけ見るとHDR Peak 1000モードは良さげに思えますが、標準的な明るさのシーンでもベース輝度がかなり下がるので、実用性は微妙です。
続いてHDR表示における色性能(色域、色精度)をチェックするためCIE Diagramを作成しました。
「Alienware AW2725DF」はHDR True Blackモードにおいて、赤と緑が特に分かり易いですが、Rec2020のリファレンスに対して各彩度が低く表示されています。青色も高彩度なポイントで彩度が低くなっています。各ポイントの相対的な位置は均等なので、バンディングや色調の破綻はありません。
とはいえ、彩度が過飽和なSDRコンテンツを見慣れているというのが現状ではリファレンス通りでも色味が薄く感じるので、「Alienware AW2725DF」の場合は猶更だと思います。
Rec2020/P3も色調は均等ですが、やはりリファレンスよりも彩度が低く推移します。
「Alienware AW2725DF」には後述するようにいくつかのHDR動作モード(プリセット)がありますが、気に入るものがなければ、カスタムカラーHDRに6色彩度の項目があるので各自でお好みに調整してみてください。
その他のHDRモードについて説明していくと、まずHDR Peak 1000モードの彩度マップはHDR True Blackモードとほぼ同じです。ホワイトバランスも同じだったので、単純に輝度特性の違いと考えればOKです。ちなみにHDR Peak 1000モードは1000cd/m^2を発揮するAPL 3%で測定しても彩度マップは同じでした。
Desktopモードは、やはり彩度がリファレンスよりも少し弱いものの、HDR True Blackモードよりも彩度が強くなり、よりリファレンスに近づいています。輝度性能が下がる代わりに色精度が高くなるチューニング?でしょうか。
Movie HDRモードは、赤色の彩度が弱くなり、青色と緑色の彩度が強化されています。特に緑色の彩度強化が強く、リファレンスよりも高い彩度になっています。ホワイトポイントこそHDR標準のD65ですが、少し緑色がかったDCI-P3(デジタルシネマ)を意識したチューニングのように思います。あとシャープネス補正も強くなっていました。
最後にGame HDRモードですが、分かり易く全体的に彩度が強調されています。高彩度の黄色が緑方向へシフトしているのでこの部分の色味は違和感があるかもしれません。あとシャープネス補正も強くなっていました。
広色域モニタの場合、カラーキャリブレーターの測定値から算出した色温度が実際に視覚で体感するものに一致しないことがあるので、正確に測色できる低色域モニタを6500K(D65)にキャリブレーションし、それを基準に目視で色温度を確認、必要に応じて調整するという手法で色温度を評価しています。測色はX-Rite i1 Basic Pro 3を使用しています。
基準モニタ(CCT:6470, x:0.3129, y:0.3319, Y:121.57)と目視で比較したところ、「Alienware AW2725DF」は各種HDRモードで6500Kとして違和感のない色味でした。参考までにHDR Ture Blackモードでホワイトポイントの測定値は『CCT:6364, x:0.3154, y:0.3286, Y:120.66』でした。
「Alienware AW3225QF」は6500Kよりも少しピンクがかった感じでした。とはいえ非常に微妙な違いなので横並びで見比べなければD65として違和感はないと思います。
もう1点補足として、テストパターンで輝度や彩度マップを測定する際に、EOTFが上で示したような形ではなく、下のようなほぼ比例直線のような形になることがありました。その状態だとRec2020/P3において赤、緑、青、シアン、マゼンタ、イエローの基本6色の彩度が通常よりも低く表示されました。(EOTFの測定前に一度、最大輝度を叩いておくと正常になる)
実際のHDR画面表示にどのような影響があるのか十分に確認できていないのですが、HDRデータの扱いに何かしらバグがあるように思います。
Alienware AW2725DFのレビューまとめ
最後に「Alienware AW2725DF」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 画面サイズ27インチでWQHDゲーミングモニタとしてはちょうどいいサイズ
- 発色、視野角、コントラスト、応答速度などオールラウンドで画質に優れた有機ELパネル
- 独自の反射防止コーティング(ディスプレイ表面はアンチグレアではなくグレア寄り)
- APL無効で240~260cd/m^2を安定して発揮できる (*1)
- コンマms級の圧倒的な応答速度
- ビデオ入力はDisplayPort1.4×2とHDMI2.0×1の計3系統
- DP1.4でWQHD/360Hz VRR/HDR 10bit RGBに完全対応
- 可変リフレッシュレート同期機能に対応(48FPS~360FPS)
- PS5やXbox Series X/Sの接続時はWQHD/120FPSの入力、HDCP2.3に対応
- モニタ本体重量4.2kgかつVESAマウント対応でモニターアームを使用可能
- ビルトインスピーカーや3.5mmステレオ等の音声出力を非搭載
- 黒色表示におけるピンクティントが気になるかも(部屋の明るさにも依る)
- 三角配列サブピクセルは色滲みが生じる、Windowsデスクトップ利用には不向きかも
- 一般的なAPL制御と別に有機EL保護機能でSDR表示の白色輝度は変動 (← *1)
- HDR表示においてAPLによる輝度制限が強い(有機EL一般の特性)
- 税込み12万円ほどと非常に高価(2024年3月現在)
有機ELパネルを採用する「Alienware AW2725DF」は、コンマmsの応答速度によって高リフレッシュレートなゲーミングモニタとして定番になりつつあるIPS液晶パネル搭載製品を軽々と上回る明瞭さを実現しています。
有機ELパネルというとこれまでは60~120Hzの製品しかなく、どちらかというと高画質系ゲームをメインにするゲーマー向けの製品でしたが、「Alienware AW2725DF」はWQHD解像度かつネイティブ360Hzリフレッシュレートに対応するのでE-Sports系タイトルをメインにプレイするゲーマーにもマッチします。
PlayStation 5も対応して認知度が高まっていますが、「Alienware AW2725DF」は可変リフレッシュレート同期機能にも対応しています。
VRR同期対応フレームレートとして48FPS~120FPS/360FPSの幅広いフレームレートをカバーしており、60FPS前後しか維持できない最新の高画質な重いゲームから、100FPS以上を維持できる競技性の高い軽めなゲームまで、テアリングやスタッターのないクリアで滑らかな表示を実現します。
VRR同期対応フレームレートとして48FPS~120FPS/360FPSの幅広いフレームレートをカバーしており、60FPS前後しか維持できない最新の高画質な重いゲームから、100FPS以上を維持できる競技性の高い軽めなゲームまで、テアリングやスタッターのないクリアで滑らかな表示を実現します。
「Alienware AW2725DF」のHDR性能について一言でまとめるなら、”綺麗だけどHDRならではの迫力については物足りない”になると思います。
単に”HDR”とひとくくりでまとめられることが多いですが、HDRには大きく分けて3つ、『高輝度(と黒表現)』、『広色域(Rec2020)』、『滑らかな階調表現(10bit/12bit)』という特長があります。「Alienware AW2725DF」は量子ドット技術も採用する有機ELパネルによって、色域の広さと階調表現の滑らかさの2つについてはHDR対応ディスプレイの中でもトップクラスであることは間違いありません。
一方で『高輝度(と黒表現)』はHDR体験として十分な性能かというと、高輝度性能が足りないというのが率直な感想です。ピクセルレベルで輝度を調整でき、完全な黒色を表現できる有機ELパネルなので相対的なコントラスト表現は綺麗ですが、やはり絶対値としての高輝度が足りないのでHDRならではの迫力ある映像は体験できないと思います。同じくSamsung製 量子ドット有機ELパネル採用するSONY A95KやSHARP QD-OLED FS1などテレビ製品と比較してもPC向けパネルの輝度性能は劣るようなのでこの点は注意してください。
HDR対応モニタ目線で検証すると高輝度性能は切り離せないので少々辛口な評価になりましたが、普通の液晶モニタから「Alienware AW2725DF」に買い替えた場合、ゲーム映像が劇的に綺麗になるというのも事実です。それについてはこちらの記事で紹介しているので、参照してみてください。
もう1つ、今回検証に使用したファームウェア M3B102ではHDR True BlackなどいくつかのHDRモードで彩度がリファレンスよりも低いという測定結果でした。彩度過飽和なSDRコンテンツに見慣れていて、SDRの色域がそのまま表示されるHDRがさらに低彩度に感じてしまいます。
Game HDRやMovie HDRは彩度を強調するようなチューニングになっており、カスタムカラーHDRなら任意に彩度を補正(強調)できるので、低彩度が気に入らない人はこの辺りを試してみてください。
以上、「Alienware AW2725DF」のレビューでした。
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QD-OLEDパネルを採用、WQHD/360Hzの27インチゲーミングモニタ「Alienware AW2725DF」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) March 13, 2024
応答速度・表示遅延やHDR表示性能を徹底検証https://t.co/dqMOgODpDP
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