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PCIE5.0x4接続NVMe M.2 SSD×4枚を搭載可能なPCIE5.0x16接続のPCIE拡張カード「ASRock Blazing Quad M.2 Card」をレビューします。
製品公式ページ:https://www.asrock.com/mb/spec/product.asp?Model=Blazing Quad M.2 Card
ASRock Blazing Quad M.2 Card レビュー目次
1.ASRock Blazing Quad M.2 Cardの外観・付属品
2.ASRock Blazing Quad M.2 Cardの検証機材
3.ASRock Blazing Quad M.2 Cardの基本的な使い方
・Intel VROCと基本的な使い方について
・Intel VROCのRAIDボリューム構築について
・Intel VROCのシステムストレージ構築について
4.ASRock Blazing Quad M.2 CardのRAID0でベンチマーク測定
・ASRock Blazing Quad M.2 CardとPCIEスロットの接続帯域について
5.ASRock Blazing Quad M.2 CardとSLCキャッシュについて
6.ASRock Blazing Quad M.2 Cardのレビューまとめ
【機材協力:ASRock Japan】
ASRock Blazing Quad M.2 Cardの外観・付属品
まず簡単に「ASRock Blazing Quad M.2 Card」の外観や付属品についてチェックしていきます。製品パッケージを開くと静電防止ビニールで保護された製品本体が収められていました。付属品はM.2 SSD固定ネジ×4と簡易マニュアルのみです。
「ASRock Blazing Quad M.2 Card」の拡張カード本体をチェックしていきます。
「ASRock Blazing Quad M.2 Card」はPCIEスロットを1スロット占有するPCIE拡張カードです。PCIE5.0x4帯域のM.2 SSDを4枚増設でき、PCIE5.0x16帯域を使用するのでPCIE端子もx16サイズです。
バックプレート等は装着されておらず、黒色のPCB基板が剥き出しです。
「ASRock Blazing Quad M.2 Card」の全長は244mm程度、ミドルクラスグラフィックカードを1スロット厚に収めたようなサイズ感のPCIE拡張カードです。
「ASRock Blazing Quad M.2 Card」はPCIE-M.2変換カードとしては全長も大きいですが、高さ方向についても基板とクーラーがPCIEブラケットから20mm程度はみ出しています。右端にはPCIE補助電源もあるので、補助電源コネクタ&ケーブルのクリアランスも必要になります。
「ASRock Blazing Quad M.2 Card」の電力源はPCIEスロットだけではなく、外部電源としてPCIE補助電源 6PINも実装されています。拡張カード上のM2_2、M2_4を使用する時は補助電源の接続は必須です。
PCIEスロットからは最大75Wの電力が供給可能なのでPCIE補助電源 6PINは必要ないようにも思いますが(PCIE5.0x4接続M.2 SSDは最大消費電力が12W程度なので、4枚でも50Wかせいぜい60W以下)、拡張カード上のM2_2、M2_4の少なくとも一方を使用する場合は、補助電源を接続するように指示があり、実際に補助電源を接続せずに当該M.2スロットを使用しているとPOSTでハングしました。
同社のPCIE4.0に対応するHyper Quad M2 Cardは小径ファンが1基だけでしたが、「ASRock Blazing Quad M.2 Card」のM.2 SSDヒートシンクには50mm径のウィングブレードファンが2基搭載されています。
「ASRock Blazing Quad M.2 Card」のM.2 SSDヒートシンクに搭載された2基の冷却ファンは1つのPWM対応4PINファン端子によって動作します。自作PC用ファンと同じ規格なので、マザーボード上ファン端子でファン速度を制御できます。
同社製品に限って言えば、専用ソフトウェアを使用せずに、マザーボードのファン制御機能で速度調整できるので扱いやすくなり、改良と言えるポイントです。
一方、マザーボード側で制御する以上、拡張カードに搭載されたM.2 SSDや拡張カード上の温度センサーをソースにしてファン制御できるわけではないので、ファン制御用に温度センサーを搭載しているような一部他社製品と比較すると一長一短な感じです。
ちなみにファン速度は最大6200RPM程度から、PWM速度調整でファン速度デューティ比を20%にすると1800RPM程度まで下げることができました。
イラストの描かれたヘアライン仕上げアルミニウム製カバーが装着されていますが、その下には全体がフィンカットされたアルミニウム製ヒートシンクになっており、2台のアクティブ冷却ファンによって効率的に放熱できる設計です。
「ASRock Blazing Quad M.2 Card」のヒートシンクは拡張カード背面のプラスネジ6カ所で固定されており、ヒートシンクの着脱は容易です。
「ASRock Blazing Quad M.2 Card」の基板上には4基のM.2スロットが実装されています。PCIEブラケット寄りから順番にM2_1~M2_4の割り当てです。M.2端子は配線距離を最短にするため、PCIE端子に対して斜め45度の向きです。
M.2スロットは現在主流なM.2 2280フォームファクタだけでなく、全長120mmのM.2 22120フォームファクタにも対応しています。(シールやサーマルパッドで隠れていますが22120用のスペーサー固定ネジ穴があります)
ヒートシンクと基板の両面にM.2 SSDと接触して放熱するためのサーマルパッドが標準で貼り付けられています。PCIE5.0x4接続のM.2 SSDは今のところ両面実装の製品が多いので、背面チップの冷却についても安心です。
ASRock Blazing Quad M.2 Cardの検証機材
「ASRock Blazing Quad M.2 Card」の検証機材として、Intel Xeon W-2400X/3400X&W790マザーボードで構成される環境を使用しました。検証機材の詳細は下のテーブルの通りです。
テストベンチ機の構成 | |
OS | Windows11 Home 64bit |
CPU | Intel Xeon w9-3495X (レビュー) |
マザーボード | ASRock W790 WS (レビュー) |
CPUクーラー | SilverStone XE360-4677 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) Noctua NH-U14S DX-4677 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Zeta R5 DDR5 R-DIMM F5-6000R3039G16GQ4-ZR5K 16GB×4=64GB (レビュー) |
ビデオカード | MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 990 PRO 1TB (レビュー) |
電源ユニット | Corsair HX1500i 2022 (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
Intel Xeon W-2400X/3400XシリーズCPUの検証機ではシステムメモリとして、DDR5 R-DIMMながらIntel XMP3.0によるメモリOCに対応した「G.Skill Zeta R5 DDR5 R-DIMM(型番:F5-6000R3039G16GQ4-ZR5K)」を使用しています。
サーバー・WS向けプラットフォームなのでOCに躊躇する人もいると思いますが、Xeon W-2400X/3400XをCore-Xの後継、ゲームもクリエイティブタスクもこなせる超高性能なハイエンドデスクトップとして運用したい人には、6000MHz超のメモリOCに対応したG.Skill Zeta R5 DDR5 R-DIMMシリーズはオススメです。
・「G.Skill Zeta R5 DDR5 R-DIMM」をレビュー。6000MHz/CL30のOCを試す!
「ASRock Blazing Quad M.2 Card」はPCIE5.0x4接続のNVMe M.2 SSDを4枚増設可能なRAIDカードなので、今回は組み込む検証機材SSDとして、Crucialから発売中のPCIE5.0対応NVMe M.2 SSD「Crucial T700 2TB」を使用しています。
・「Crucial T700 2TB」をレビュー。PCIE5.0対応で連続性能の最速を更新!
ASRock Blazing Quad M.2 Cardの基本的な使い方
ASRock Blazing Quad M.2 Cardのソフト面での使い方について簡単に紹介します。「ASRock Blazing Quad M.2 Card」には外部電源としてPCIE補助電源 6PINも実装されており、SSDを3枚以上、M2_2とM2_4を使用する時は補助電源の接続は必須です。
実際に補助電源を接続せずに当該M.2スロットを使用しているとPOSTでハングしたので注意してください。
近年のマザーボードではPCIEスロットの接続モードとしてx8やx16帯域のスロットで帯域をx4x4やx4x4x4x4などに分割する接続モードが用意されています。
「ASRock Blazing Quad M.2 Card」を使用する場合、通常モード(x16モード)のままだとM2_1スロットに設置したSSDしか認識されないので、マザーボードBIOS設定から設置しているPCIEスロットを分割モードに変更してください。
ASRock W790 WSの場合はAdvancedタブのIIO Configuration内に下スクリーンショットのようなPCIE帯域分割の設定項目が配置されています。
マザーボードBIOSで設置したPCIEスロットが分割モードに変更できていれば、「ASRock Blazing Quad M.2 Card」に搭載した複数枚のNVMe M.2 SSDは通常のPCIE-M.2変換カード同様にWindows OS上で認識されます。
追加のソフトウェアは必要なく、標準ドライバのみで動作します。あとはコントロールパネルからボリュームの作成を行えばOKと、導入は非常に簡単です。
スパン(JBOD)、ストライプ(RAID0)、ミラーリング(RAID1)については、Windowsのディスク管理からソフトウェアRAIDで構築が可能です。
Windows上でRAIDを構築するので、当然、OSをインストールするシステムストレージにはできませんが、データストレージとしては問題なく使用できます。
Intel VROCと基本的な使い方について
今回検証に使用しているIntel Xeon W-2400X/3400X&W790プラットフォームはIntel VROC(Virtual RAID on CPU)という仮想RAID機能がサポートされており、CPU直結PCIEレーンに接続されたNVMe SSDでもハードウェアRAIDが構築可能です。上で紹介しているWindowsのソフトウェアRAIDと比較して、Intel VROCには『RAIDボリュームにOSをインストールできる(Bootable RAID)』、『ホットスワップやRAIDを構成するストレージの追加・削除に対応』、『RAID10やRAID5に対応』などのメリットがあります。
なお、RAIDロジックの計算にCPUも使用するというソフトウェアRAID的な性質もあるため、Intel公式FAQではハイブリッドRAIDソリューションと呼ばれています。
ただし一部を除く一般的なNVMe SSDを使用して、VROCでRAIDを構築するにはIntel VROC Upgrade Keyと呼ばれるライセンス認証ドングルが必要です。
ちなみにRAIDボリュームを作る時にUpgrade Keyが必要ですが、一度構築したRAIDボリュームはUpgrade Keyがなくなってもそのまま正常に動作します。サードパーティ製SSDを使用していても。誤ってUpgrade Keyを外してしまっても、RAIDボリュームや内部データが破損することはありません。
Intel VROCを使用するため、まずはBIOS設定でIntel VMD(Volume Management Device)を有効化します。VMDはCPUに内蔵されたNVMe SSD/RAIDコントローラーです。
ASRock W790 WSの場合は、AdvancedタブのStorage Configuration - Intel VMD Technologyの順番にアクセスするとVMDの設定が表示されます。
今回検証に使用しているIntel Xeon W-2400/3400&W790環境の場合、CPU直結PCIEレーンはx16レーンずつ個別にVMD Domain(VMD Controller)が割り当てられており、それぞれ有効/無効を指定できます。
加えて、各VMD Domain内の個別のNVMe SSD(M.2スロット)に対してもVMDの有効/無効を指定できます。
「ASRock Blazing Quad M.2 Card」で4枚のSSDを使用する場合は、VMD自体の有効化に加えて、VMD Port A~Hを全て有効にしてください。
「ASRock Blazing Quad M.2 Card」の4基のM.2スロットとVMD Port A~Hとの対応関係はいまいちよく分からないのですが、全て有効にすることで、4基のSSDがVMD Controllerに接続されたSSDとして認識されました。
最初に注記しておくと、VMDによって管理されるNVMe SSDはWindowsの標準ドライバでは動作しません。(2023年5月配信のWindows 11 22H2 クリーンインストールでも非対応)
そのため、Intel Z690環境において一部マザーボードで機能が標準で有効になっており、非VMDでOSがインストールされたシステムストレージを使用するとBSODが発生すると話題になりました。
Intelのメインストリーム向け環境ではVMDの有効/無効はシステムに接続されたストレージに一括して適用されますが(NVMeとSATAは個別に切り替え可能)、Intel Xeon W-2400/3400&W790環境の場合はNVMe SSD毎にVMDの有効/無効を切り替えることが可能です。
非VMDのシステムストレージにおいて、VMDが必要なVROCによるRAIDボリュームをデータストレージとして追加で導入する、というようなVMDと非VMDが混在する状態でも問題なく運用できます。
話をVMDのドライバに戻しますが、
Intel VROCによるRAIDボリュームを含め、VMD Controllerに接続されたストレージをWindowsで使用するには専用ドライバをインストールする必要があります。
後述のVROCによるRAIDボリュームをデータストレージに使用する、もしくはOSをインストールする際にもVMDドライバは必要になるので、マザーボードのサポートページから事前にダウンロードしておいてください。
ASRock W790 WSの場合はサポートページの「RSTe SATA Floppy Image」からダウンロードできます。
ASRock W790 WSではVMDドライバのみが収録されていますが、同じくW790マザーボード ASUS Pro WS W790-ACEのサポートページで配布されているIntel Virtual RAID on CPU Driverは、ドライバに加えて、Intel VROCの管理ソフトウェア(Intel Virtual RAID on CPU Storage Management Application)も収録されており、exe形式のインストーラーもあります。ASRock W790 WSの環境でも特に問題なく使用できました。
Intel VROCのRAIDボリューム構築について
ASRock W790 WSを例にして、Intel VROCでRAIDボリュームを構築する手順について紹介していきます。上で紹介したようにBIOSメニューからIntel VMDを有効にすると、Advancedタブの設定項目の一番下にIntel Virtual RAID on CPUの項目が表示されます。(Intel VMD Controllerが1つも有効になっていないと表示されません)
Intel Virtual RAID on CPUを選択すると、現在使用しているIntel VROC Upgrade Keyや構築済みのRAIDボリュームが表示されます。
今回の検証ではサードパーティ製SSDのCrucial T700 2TBを使用してRAIDボリュームを構築するので、Intel VROC Upgrade KeyとしてStandard Keyを使用しています。
Upgrade Keyを使用していない場合はVROC in Pass-thru modeと表示されます。Upgrade Keyを使用していてもPass-thru modeと表示される場合はUpgrade Keyがしっかりと挿入できていないので挿し直してみてください。
上のスクリーンショットで一番下に表示されているAll Intel VMD Controllerを選択すると、VMD Controllerに接続されている(VMDを有効化してある)ストレージの一覧が表示されます。
各ストレージの1行下にある文字列のうち”VMD〇”という表記に注目して欲しいのですが、これが示しているのが、CPU直結PCIEレーンをx16レーンずつで分けているVMD Domainです。
異なるVMD Domainのストレージを含むRAIDボリュームは構築でき、データストレージとして使用できますが、OSのインストール先に指定できません。(Bootable RAIDに非対応)
VMD設定で見た通り、VMD Domainは物理PCIEスロットやM.2スロットにまとまっているので基本的には気にする必要はありません。5つ以上のストレージでRAIDボリュームを構築するとOSのインストール先にできない、くらいの認識でOKです。
RAIDボリュームの構築に話を戻しますが、All Intel VMD ControllerのCreate RAID Volumeを選択すると、RAIDボリューム構築画面が表示されます。
RAIDボリューム名、RAIDレベル(RAID0/1/10/5)、RAIDボリュームに使用するストレージ選択などUIはシンプルで分かり易く、特に難しいことはないと思います。
「ASRock Blazing Quad M.2 Card」に設置した4枚のSSDでRAID0を構築するのは下のスクリーンショットのように構成するストレージをチェックして、Create Volumeを選択するだけです。
Strip Sizeは基本的に標準設定の128KBでいいですし、総容量(Capacity)もRAID0の場合は自動的に最大値になります。
構築したRAIDボリュームを解除する場合は、Intel Virtual RAID on CPUの一番最初に戻ると構築済みRAIDボリューム一覧が表示されるので、解除したいRAIDボリュームを選び、Deleteを選択すればOKです。
なお、上で説明した通り、異なるVMD Domainのストレージを含むRAIDボリュームはOSインストール先に設定できない、という制限があるので、標準ではあるVMDのストレージを要素として選ぶと、異なるVMDのストレージはグレーアウトして選択できなくなります。
異なるVMD Domainのストレージを選択したい場合は、RAID Levelの下にある”Enable RAID Spanned over VMD Controllers”にチェックを入れてください。
以上のようにして、VROCでRAIDボリュームを構築したらBIOSメニューを退出してWindowsを起動します。
Intel Xeon W-2400/3400&W790環境の場合はNVMe SSD毎にVMDの有効/無効を切り替えることが可能なので、データストレージとしてVROCのRAIDボリュームを追加するだけなら、OSのクリーンインストールは必要ありません。
ただしVMDドライバがインストールされていない場合はRAIDボリュームがディスクドライブとしてWindows OSから認識されないので、上で紹介したように使用しているマザーボードのサポートページからドライバをダウンロードし、インストールしてください。
ちなみに今回はBIOS上からIntel VROCのRAIDボリュームを構築する手順について紹介しましたが、同様の作業はWindows上アプリケーション Intel Virtual RAID on CPU Storage Management Applicationからも行うことが可能です。
各SSD(PCIEスロットやM.2スロット)のVMD Controllerの有効化はBIOS上から行う必要がありますが、VMD Controllerが有効化済みであれば、RAIDボリュームの構築・解除などの操作は全てWindows上で行っても問題ありません。
Intel VROCのシステムストレージ構築について
VMDによって管理されるNVMe SSDはWindowsの標準ドライバでは動作しません。そのため、VMDを有効化したNVMe SSDや、VMDが必要なVROCによるRAIDボリュームにWindows OSをインストールする場合は、上で紹介したドライバをインストールする必要があります。
OSのクリーンインストールについて基本的な流れは通常と同じなので割愛します。ブートプライオリティでもオーバーライドでもいいので、インストールメディアを起動してください。
OSインストール先の選択において、Windows 11 22H2の標準ドライバはVMDによるストレージをサポートしていないので、VMDストレージしかない場合、インストール先のストレージが一切表示されません。
ストレージ一覧の下にある”ドライバーの読み込み”を選択します。ダイヤログが表示されるので、参照のアイコンを選択します。エクスプローラー形式の参照メニューが表示されるので、USBメモリ等にコピーしておいたドライバフォルダを選択します。
VMDドライバが表示されるので次へを選択してインストールします。
一度ではVMDストレージが一覧に表示されないので、”ドライバーの読み込み”からの作業を2回繰り返して下さい。
”ドライバーの読み込み”からのインストール作業を2回繰り返すと、VROCのRAIDボリュームを含めVMDストレージがインストール先の一覧に表示されます。ここからはまた、通常のOSインストールと同じ流れです。
ASRock Blazing Quad M.2 CardのRAID0でベンチマーク測定
「ASRock Blazing Quad M.2 Card」に設置した4枚のPCIE5.0対応SSDによるRAID0の連続性能がどれくらいに達するかベンチマーク測定してみました。「ASRock Blazing Quad M.2 Card」は最大接続帯域としてPCIE5.0x16に対応しています。つまりPCIE5.0x4接続のM.2 SSDを4枚設置して全てのSSDを最大スペックで同時に使用できるはずです。
実際にPCIE5.0x4接続のCrucial T700 2TBを4枚使用し、RAIDを構築せずに個別ボリュームとして扱い、4枚のSSDに対して同時に読み出しアクセスを行うと各SSDは12GB/sの読み出し速度を発揮しました、合計のアクセススピードは47~48GB/sに達しています。
ちなみに「ASRock Blazing Quad M.2 Card」のファン速度を3400RPMに固定で、上と同じように4枚のSSDへ同時に連続読み出しをかけ続けたところ、30分以上が経過してもSSD温度は60度台に収まり、サーマルスロットリングによる速度低下もありませんでした。
「ASRock Blazing Quad M.2 Card」のファン速度を3400RPMにすると50cmくらい離れた位置で測定したノイズレベルが38dBくらいとなっており、PCケースに入れるとファン動作は認識できるが、煩くは感じない程度のファンノイズです。
なお連続アクセスが数十分も続くような負荷はベンチマークソフトを使用して意図的に発生させたワーストケースです。実用的にはもっと低い発熱なので、2000~3000RPM程度で十分に冷やすことができ、ノイズレベルも35dB未満に収まるので、PCケースに入れてしまえば、ファンノイズが気になることはないはずです。
いきなりRAIDを構築すると何がボトルネックになるか分からないので、まずは各SSD/単独ボリュームでテストしてみましたが、上手く各SSDで理想的なアクセススピードを発揮できることが確認できました。
続いて本題、Crucial T700 2TB×4枚によるRAID0ボリュームで最大アクセススピードがどこまで伸びるかチェックしていきます。
いきなり結論から言ってしまうと、Intel VROCでRAID0ボリュームを構築することで、連続読み出し48GB/sを達成できました! 連続書き込みも多少スコアが落ちますが、44.5GB/sをマークしています。
ただし、この数字が現実に意味があるかというと、ぶっちゃけCDMベンチ番長なスコアです。(特定用途を除いて)
48GB/sのベンチマークスコアの裏側を解説すると、上のスクリーンショットでも併記されているように、CrystalDiskMarkのベンチマーク設定をデータサイズ 8GiB、連続アクセス、ブロックサイズ 128KiB、Queue深度 32まではそれほど変な設定ではありませんが、スレッド数を13にしています。
Intel VROCでRAID0ボリュームを作成した場合(RAID Stripe Size 128KB、アロケーションユニットサイズ 4KB)、CrystalDiskMarkでブロックサイズが128KiBの時はQ32T13(もしくはQ16T13)、256KiBの時はQ16T14、512KiBの時はQ8T15、1MiBの時はQ4T16でベンチマークスコアが最大になりました。
今回、最大速度の48GB/sに到達できたブロックサイズ 128KiBについてQueue深度を8/16/32/64、スレッド数を2/4/8/16で変えてみるとアクセススピードは下のように変化しました。Queue深度も影響がないわけではありませんが、より影響が大きいのはスレッド数のほうです。
一方でCrystalDiskMarkの標準の連続アクセス設定である、1MiB Q8T1でテストを行うと、アクセススピードは20GB/s程度で頭打ちになります。(あとVROCでRAID0ボリュームを作成すると4Kランダム性能Q1T1が比較的に大きく下がります)
CrystalDiskMarkでSSD実用性能に対して特に影響の大きい数字は4Kランダム性能(Q1T1)と言われるように、一般的なWindows上アプリケーションは複数スレッドでSSDにアクセスすることはありません。
複数のアプリケーションが同時にSSDにアクセスすれば複数スレッドになりますが、個人のPC使用でスレッド数が4~8を大きく超えることは基本的にないと思うので、例外的に影響があるとすれば、サーバー・ワークステーションでしょうか。
ともあれ、なぜ上のように1MiB Q8T1でテストすると20GB/s程度で頭打ちになるのか、探ってみたのですが、VROCにせよWindowsソフトウェアRAIDにせよ、ブロックサイズではなくStripe Size、つまり128KBでアクセスが発生するのが原因ではないかと思います。
下のスクリーンショットは「ASRock Blazing Quad M.2 Card」に設置したCrucial T700 2TBに個別ボリュームを作成し、1台だけのSSDでベンチを走らせた時(4つのうち1つを代表させていますが単独実行なら誤差だけでほぼ同じスコア)と、4台同時にベンチを走らせた時の結果です。
ブロックサイズが1MiBや512KiBの場合はスレッド数が1のままでも、1台だけベンチを実行した時と、4台同時に実行した時とでベンチマークスコアがほぼ同じです。
一方で、ブロックサイズを256KiBや128KiBよりも小さく設定すると、1台だけベンチを実行した時に比べて、4台同時にベンチを実行した時のスコアは大幅に低下しました。
特に注目したいのが128KiBの時の結果です。単独であれば8~12GB/sの速度が出ているのに対して、4台同時では個々のスコアは5GB/s程度、つまり合計のアクセススピードが20GB/s程度で頭打ちになっています。
そして、ブロックサイズが128KiBであってもスレッド数を1から8に増やすと、4台同時でも個々のスコアは理想的な12GB/s程度となります。
RAIDボリューム構築時にスレッド数1でアクセススピードが15~20GB程度で頭打ちになる現象は、Intel VROC(VMD)でもWindowsソフトウェアRAID(非VMD)でも発生していました。
ストレージへのアクセスはブロックサイズ 128KBで実行されているため、スレッド数が小さいとトータルスピードが頭打ちになっている、と考えると単独ボリュームの検証結果に一致します。おそらくWindows OSかCPUのストレージアクセス命令の取り扱いでボトルネックが生じているのではないかと思います。
Intel VROC使用時よりも多少スコアが下がりますが、Windows OSのディスク管理からソフトウェアRAIDでストライプボリューム(RAID0)を作成しても、スレッド数が適度に大きければ最大で40GB/sを大幅に上回るアクセススピードを発揮できます。下のスクリーンショットにおいてQueue深度やスレッド数はIntel VROCの時の最適値です。
ソフトウェアRAIDの場合は、スレッド数やQueue深度を最適値に調整してもブロックサイズを128KiBや256KiBにした時のアクセススピードは30GB/s程度でした。
なおVROCでRAID0ボリュームを作成すると、4Kランダム性能(Q1T1)が単独ボリュームよりも比較的大きく下がったのですが、ソフトウェアRAIDのほうは単独ボリュームからの低下もほとんどありませんでした。
Intel VROCには『RAIDボリュームにOSをインストールできる(Bootable RAID)』、『ホットスワップやRAIDを構成するストレージの追加・削除に対応』、『RAID10やRAID5に対応』などのメリットがありますが、いずれもサーバー・ワークステーション向けなので、個人のPCでRAID0かRAID1を作るならソフトウェアRAIDでいいと思います。
実用的には意味は薄い数字ですが、連続性能48GB/s越えのセンセーショナルなベンチマーク結果が無事に確認できてよかったです。
実用面に関して言えば一番最初に検証した通り、個別ボリュームで同時に理想的な性能を発揮し、冷却性能と静音性にも問題なかったので、「ASRock Blazing Quad M.2 Card」の性能評価(PCIE5.0対応SSD 4枚を安定して運用できるかどうか)としては十分な結果だと思います。
ASRock Blazing Quad M.2 CardとPCIEスロットの接続帯域について
「ASRock Blazing Quad M.2 Card」はPCIEスイッチチップを搭載していないタイプの複数M.2 SSDを増設可能なPCIE-M.2変換カードなので、2~4枚のM.2 SSDを使用するには組み合わせるマザーボードがPCIE帯域分割(PCIE Bifurcation)に対応している必要があります。例えばPCIE5.0x16スロットであればBIOS設定から4つのPCIE5.0x4帯域に分割することで「ASRock Blazing Quad M.2 Card」を使用して4枚のNVMe M.2 SSDを接続でき、PCIE5.0x8スロットであれば2枚のNVMe M.2 SSDを接続できます。
「ASRock Blazing Quad M.2 Card」はPCIEスイッチを搭載せずBIOS設定によってマザーボード側のPCIE帯域を分割して複数枚のM.2 SSDに対応しているので、PCIEスイッチ搭載型が数万円から高いものだと10万円を超えて非常に高価なのに対し、高価なPCIEスイッチを省略しているので安い物なら1万円以下で購入できるコストパフォーマンスの高さが魅力です。
一方でデメリットとして、組み合わせるマザーボードがPCIE帯域分割機能に対応している(BIOS上に帯域分割の設定がある)必要があること、そして増設可能な枚数が大元のPCIE帯域に依存する(x16なら4枚、x8なら2枚)、といった制限があります。
一方、市販製品ではHighPoint製RAIDカードが有名ですが、PCIEスイッチを搭載した複数M.2 SSDの増設が可能なPCIE-M.2変換カードでは、複数のM.2 SSDがPCIE5.0x16からは1つのデバイスであるように見せることで1つのPCIEスロットで複数のNVMe SSDを動作させています。(Windows OSからは個別のSSDを認識できる)
PCIE5.0x16よりもリンク帯域の低いPCIE5.0x4やPCIE5.0x8のPCIEスロットに設置しても、拡張カード上に設置されたストレージ自体は全て正常に認識され、RAIDボリュームの構築など基本的な機能も問題なく使用できます。
ASRock Blazing Quad M.2 CardとSLCキャッシュについて
20223年現在主流のTLC型NANDや一部製品で採用されているQLC型NANDを採用するSSDでは、メモリ領域の一部を高速なSLC NANDとして使用することで書き込み性能を改善する機能 SLCキャッシュが基本的にほぼ全ての製品で採用されています。ASRock Blazing Quad M.2 Cardでそういった所謂、TLC型SSDを用いた場合のRAIDボリュームの動作についても簡単に紹介しておきます。
この検証ではHD Tune Proというベンチマークソフトを使用して、100GBの大容量な連続書き込みによる書き込み速度の低下をチェックしていきます。
WD Red SN700 NVMe SSD 1TBのシングルボリュームに対して100GBサイズの連続書き込みを行った結果が次のようになっています。(SLCキャッシュの割り当てが空き容量に依存せず静的で分かり易いのでWD Red SN700を例にしています)
WD Red SN700 NVMe SSD 1TBのシングルボリュームでは書き込みサイズが13GB前後に達すると書き込み総量がSLCキャッシュを超過し、書き込み速度が3000MB/sから1500MB/sへとステップ状に下がっているのが確認できます。
WD Red SN700 NVMe SSD 1TBを4枚使用したRAID0ボリュームの構築でこのSLCキャッシュ機能がどうなるか見ていきます。
100GBサイズの連続書き込みを行ったところ、まず分かりやすいところで、書き込み性能が1枚の時と比較して約4倍にスケーリングされています。
さらに4枚のRAID0ボリュームではSLCキャッシュ容量が4倍の50GB程度に増量しているような動作となり、SLCキャッシュ超過後の書き込み速度も1500MB/sの4倍の6000MB/s程度となっています。
SSDのRAID0ボリュームは、CrystalDiskMark等で確認できる連続性能のスケーリングは目覚ましいものの、ランダム性能が改善しないので実用的にはあまり恩恵がないというのが実状です。
(ベンチマーク上のランダム性能は下がる傾向はあるものの、逆にRAID0を構築することで実用的に性能が下がるということもありませんが)
TLC型SSDやQLC型SSDはRAID0の構築によってSLCキャッシュ容量の合算が可能であり、かつ超過後の書き込み速度も枚数に応じて倍増します。
大容量データを頻繁に読み書きするクリエーター向けPCであれば「ASRock Blazing Quad M.2 Card」に搭載した複数のSSDでRAIDボリュームを構築するメリットはあると思います。
ASRock Blazing Quad M.2 Cardのレビューまとめ
最後に「ASRock Blazing Quad M.2 Card」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- NVMe M.2 SSDを4枚刺し可能なPCIE拡張カード
- 最大リンク帯域はPCIE5.0x16
- PCIE5.0対応SSDの単独ボリューム×4の同時アクセスで合計47~48GB/s
- PCIE5.0対応SSD 4枚のRAID0構築で連続性能は最大48GB/s
(連続読み出しが12.4GB/sのCrucial T700 2TBを使用時) - RAID0構築で枚数に応じてSLCキャッシュ容量や超過後の書き込み速度が倍増
- 4枚のPCIE5.0対応SSDを冷やす大型ヒートシンク&冷却ファンを搭載
- 冷却ファンは自作PCで一般的なPWM対応4PINファン端子で給電・制御が可能
- マザーボードがPCIE帯域分割(PCIE Bifurcation)に対応している必要あり
元のPCIE帯域によって接続可能なM.2 SSDの枚数が制限される - 3~4枚のM.2 SSDを使用する場合、PCIE補助電源の接続が必須
- SSD温度をソースにしたファン制御には非対応
「ASRock Blazing Quad M.2 Card」は、PCIE5.0x4接続で連続読み書き12GB/sのSSDを4枚使用し、Intel VROCのRAID0ボリュームを作成することで、最大48GB/sというセンセーショナルなベンチマークスコアを叩き出すことができました。
実用面でも、個別ボリュームで合計の同時アクセススピードとして47~48GB/sなど理想的な性能を発揮し、数十分の負荷に対してもサーマルスロットリングによる速度低下を起こすことなく、静音性も十分でした。PCIE5.0x4接続NVMe M.2 SSD×4枚を搭載可能なPCIE5.0x16接続のPCIE拡張カードとしては文句のない結果です。
RAID0ボリュームについてはIntel VROCでもソフトウェアRAIDでも、少スレッド数のアクセスではOSもしくはCPUのボトルネックで連続性能は15~20GB/s程度で頭打ちになってしまいます。
とはいえ、単純に1枚のSSDでは不可能な大容量ボリュームを作成できることに加えて、TLC型SSDやQLC型SSDではRAID0の構築によってSLCキャッシュ容量の合算が可能であり、かつ超過後の書き込み速度も枚数に応じて倍増するので、そういった足回り的にはRAID0にもメリットがあります。
RAID0のデメリットとして挙げられることのあるランダム性能低下も影響は軽微ですし。
HighPoint製品のようなPCIEスイッチを搭載した複数NVMe M2 SSDの拡張カードは比較的に安価なものでも5万円以上と非常に高額です。
一方、「ASRock Blazing Quad M.2 Card」はマザーボード側でPCIE帯域分割に対応している必要があるなど一定の制限はあるもののPCIE5.0x4接続のM.2 SSDを最大で4つも増設できて1.6万円程度なので価格面での導入のハードルが非常に低いところは魅力です。
以上、「ASRock Blazing Quad M.2 Card」のレビューでした。
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PCIE5.0x4接続NVMe M.2 SSD×4枚を搭載可能なPCIE拡張カード「ASRock Blazing Quad M.2 Card」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) September 3, 2023
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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