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Core i9 11900Kなど第11世代Rocket Lake-S CPUに対応するZ590チップセット搭載マザーボードとしてASUSのゲーマー向けブランド ROG STRIXからリリースされた、Mini-ITXサイズながら10フェーズの堅牢なVRM電源を搭載し、リアI/OのUSB Type-CポートはThunderbolt4に対応するMini-ITXマザーボード「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」をレビューします。
VRM電源クーラーとしてリアI/Oカバーと一体化した超大型アルミニウム製ヒートシンクに加え、冷却ファンを内蔵するアクティブ冷却構造を採用した同マザーボードが、Core i9 11900に対応できるか、徹底検証していきます。

製品公式ページ:https://rog.asus.com/jp/motherboards/rog-strix/rog-strix-z590-i-gaming-wifi-model/
マニュアル:https://dlcdnets.asus.com/pub/ASUS/mb/LGA1200/ROG_STRIX_Z490-I_GAMING/J18142_ROG_STRIX_Z590-I_GAMING_UM_V2_WEB.pdf
ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI レビュー目次
1.ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIの外観・付属品
2.ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIの基板上コンポーネント詳細
3.ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIの検証機材
4.ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIのBIOSについて
5.イルミネーション操作機能「ASUS AURA Sync」について
6.ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIのOC設定について
7.ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIの動作検証・OC耐性
8.ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIのレビューまとめ
【注意事項】
同検証は2021年4月上旬に行っておりASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIのBIOSは0704を使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:https://rog.asus.com/jp/motherboards/rog-strix/rog-strix-z590-i-gaming-wifi-model/helpdesk_bios
【2021年5月27日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:0704で検証
【機材協力:ASUS Japan】
ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIの外観・付属品
まず最初にASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIの外観と付属品をチェックしていきます。外パッケージの蓋を開くと上段にはマザーボード本体が収められており、下段には各種付属品が入っていました。

マニュアルなど冊子類で必要なものが一通り揃っています。ASUS製のマザーボードなので定評のある詳細日本語マニュアルも付属します。その他にもコースター、ステッカーなどが付属します。ドライバ類についてはそろそろUSBメモリに移行して欲しいところ。

組み立てに関連する付属品としては、SATAケーブル4本、WiFiアンテナ、M.2 SSD固定用スペーサー&スクリュー*2セット、フロントI/Oケーブル、ROG USB2.0スプリッターケーブルとなっています。

ASUSマザーボードの一部に付属する「Q-Connector」はパワースイッチやパワーLEDなどフロントI/Oの細かい端子を丸ごとマザーボードに装着できるので組み立て時にあると便利な付属品ですが、「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」にはフロントパネルケーブルという名前の機能的には同等品が付属します。

マザーボード全体像は次のようになっています。
ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIはMini-ITXフォームファクタのマザーボードです。

マザーボード右下のチップセット用ヒートシンクはM.2 SSD用ヒートシンクと重なって同じ場所に設置されていますが、従来よりも1層増えたトリプルデッカーデザイン(Triple-decker Design)と呼ばれる三層構造型ヒートシンクにより、2基のM.2スロットおよびM.2 SSDヒートシンクはPCHヒートシンクから分離され、PCHとM.2の排熱が互いに影響を及ぼすことを防止しています。

三層構造型ヒートシンクは高さが30mm強あるので、トップフロー型空冷CPUクーラーを使用する人は干渉に注意してください。

ROG STRIXシリーズというと、日本語、英語、中国語など複数の言語によるサイバーテキストパターンが人を選ぶデザインでしたが、「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」では同デザインが無くなり、シンプルかつスタイリッシュなデザインに変わりました。
リアI/Oカバーを装飾するトッププレートは2019年後半頃から採用が始まった、マザーボードを斜めにカットするレインフォールパターンが設けられており、内蔵冷却ファンの吸気エアスリットとしての役割も果たします。

「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」はMini-ITXマザーボードながら、アルミニウム製でVRM電源クーラーヒートシンクも兼ねる大型リアI/Oカバーが装着されています。リアI/Oカバー天面を支える側面こそネジ止めの2ピース構造ですが、VRM電源ヒートシンクからリアI/Oカバーの天面まではモノブロック構造で超巨大なVRM電源クーラーとなっています。またCPUソケットの上側と左側のヒートシンクはヒートパイプによって連結されています。

「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」のリアI/Oカバーには、VRM電源ヒートシンクの放熱を補助する冷却ファンが内蔵されており、リアI/Oカバー天面の通気口から吸気するアクティブ冷却が採用されています。冷却ファンには独自にカスタマイズされ6万時間の長寿命を実現するDELTA製ファンが採用されています。

「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」のVRM電源冷却ファンはBIOSメニュー上で「VRMヒートシンク ファン」として登録されており、VRM電源温度をソースにしたファン制御カーブの設定が可能です。標準設定のファン動作プロファイルは”標準”となっており、VRM電源温度が十分に低ければファンが完全に停止するセミファンレス動作にも対応しています。

ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIはスペースの限られるMini-ITXサイズながら、Intel第11世代CPU上位モデルにも対応できるよう、8+2フェーズの堅牢なVRM電源回路が実装されています。
CPUコア向け8フェーズには90A対応Dr. MOS、iGPU向け2フェーズには70A対応Dr. MOSが採用され、ごく高温にも耐久性を発揮するフェライトチョークコイルとコンデンサ、VRM電源回路の発熱を効率的に拡散する10層PCB基板など構成素子や回路設計も高品質です。

8コア16スレッド倍率アンロックのCore i9 11900Kに対応とするZ590チップセット搭載の上位マザーボードではCPU電源としてEPS 8PIN+4PINや8PIN*2を要求するものも少なくありませんが、「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」はMini-ITXフォームファクタということもあり要求されるのはEPSコネクタは8PINが1つです。
また「ProCool II」と呼ばれる設計のEPS電源コネクタは、低インピーダンスなソリッドピンによってホットスポットの発生を抑制し、金属アーマーはコネクタの補強とともに熱拡散も補助します。

ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIには、マザーボード一体型リアI/Oバックパネル「プリマウントI/Oシールド」が採用されています。PCケースにパネルを装着する作業は固くて装着し難かったり、忘れてしまうこともあるのでマザーボードに統合されているのは嬉しい機能です。

以下USB規格に関する説明がありますが『USB3.2 Gen2 = USB3.1 Gen2』、『USB3.2 Gen1 = USB3.1 Gen1 = USB3.0』と考えて基本的に問題ありません。
「ASUS ROG MAXIMUS XIII HERO」のリアI/Oに実装された2基のUSB Type-Cポートのうち、右側の1基は次世代規格Thunderbolt4に対応しています。DisplayPort Alternate Modeによるビデオ出力に対応し(映像ソースはiGPU)、USB Power Delivery規格によって15W(5V/3A)の電力供給も可能です。
また左側のもう1基のUSB Type-Cポートは、20Gbpsの高速通信が可能な最新規格USB3.2 Gen2x2に対応しています。

その他にも、USB3.1 Gen2規格に対応したType-A端子(赤色)、USB3.1 Gen1規格に対応したType-A端子(青色)、4基のUSB2.0端子が搭載されています。マウス・キーボードなどの周辺機器を多数繋いでいてもVR HMDに余裕で対応可能です。USB3.Xは無線マウスと電波干渉を起こすことがあるので、USB2.0が少し離れた場所に設置されているのは地味に嬉しいポイントです。

iGPU用のビデオ出力として、HDMI 2.0×1、Thunderbolt4対応USB Type-C×1(DisplayPort1.4 Alternate Mode)の2系統を搭載しています。2021年最新500シリーズマザーボードでもHDMI1.4が混在しているので、HDMI2.0搭載のMini-ITXサイズZ590マザーボードを探しているなら要チェックです。
有線LANには一般的なギガビットイーサの2.5倍の帯域幅を実現するIntel製LANコントローラー I225-V(Foxville)による2.5Gb LANが搭載されています。
さらに従来の2.4GHz帯と5GHz帯に加えて、グローバルに免許不要で使用可能な6GHz帯もサポートするWiFi 6E&Bluetooth5.2に対応した無線LAN(Intel AX210)も搭載しています。(注:2021年4月現在、日本国内では法令に基づく規制のため6GHz帯は使用不可。将来的に使用できるようになる予定)
接続規格としてはWi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac/ax、2.4/5GHz/6GHzトライバンド、最大通信速度2400Mbps、Bluetooth 5.2に対応しています。リアI/Oには無線モジュールのアンテナ端子が設置されているので付属のアンテナを接続できます。

Intel I225-V(Foxville)、Intel AX210など「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」に搭載されているネットワーク機器はWindows10(20H2)の標準ドライバでは動作しません。またドライバメディアもUSBメモリではなく、光学ディスクです。
『USB外付けやSATA接続の光学ドライブでドライバをインストール』、『スマホ等のインターネットに接続可能な機器からUSBメモリ等へドライバをコピー』、『Windows10標準ドライバで動作するUSB接続LANアダプタを使用』など代替手段はいくつかありますが、事前にこれらのようなネットワーク機器接続の準備ができていない場合、インターネットに接続できない状態になるので注意してください。今時はほぼ全ての人がスマホを持っていると思うので、最終手段ではスマホからドライバをダウンロードして、USB接続でスマホからPCへドライバインストーラーを転送するという手もあります。

「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」は「USB BIOS FlashBack」に対応しています。所定のUSB端子にBIOSファイルの入ったUSBメモリを接続して、オンボードボタンを押すと「USB BIOS FlashBack」機能によってCPUやメモリなしの状態でもBIOSの修復・アップデートが可能です。

ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIの基板上コンポーネント詳細
続いて「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。システムメモリ用のDDR4メモリスロットはCPUソケット右側に2基のスロットが設置されています。固定時のツメはマザーボード上側の片側ラッチとなっています。グラフィックカードのあるPCIEスロット側はラッチがないので干渉の心配もありません。

PCIEスロットはグラフィックボードなどを設置するためのx16サイズスロットが1基のみ実装されています。帯域はCPU直結のPCIE4.0x16で排他利用はありません。

ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIにも最近のトレンドとしてx16サイズスロットには1kgを超える重量級グラボの重さに耐えるように、従来のプラスチックスロットよりも垂直方向の力に対して1.6倍、水平方向の力に対して1.8倍も強靭になった補強用メタルアーマー搭載スロット「SAFESLOT」が採用されています。

AMD Radeon RX 6000シリーズGPUとAMD Ryzen 5000シリーズCPUの組み合わせがサポートするAMD Smart Access Memoryの名前の方が有名ですが、PCIE規格で策定されているVRAMフルアクセス機能「Re-Size BAR (Base Address Register)」にもASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIは対応しています。

ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIにはSATAストレージ用の端子は4基搭載されています。SATA_1~4の4基はIntel Z590チップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/5/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。

外観の章で簡単に触れたように、「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」のPCH部にはトリプルデッカーデザイン(Triple-decker Design)と呼ばれる三層構造型ヒートシンクが採用されていて、NVMe M.2 SSDに対応したM.2スロットは専用のM.2カード上に実装されています。このM.2カードにはファン端子、内部USB2.0、HDフロントオーディオなど各種ヘッダーも実装されています。

表面は上写真のようにヒートシンクを取り外すだけでSSDを装着できますが、専用M.2カードの背面にあるM.2スロットにM.2 SSDを装着するには、専用M.2カードを1度取り外す必要があります。
取り外しの手順としては、右端にあるBTOBケーブルと呼ばれるリボンケーブルを外し、その後で垂直に専用M.2カードを引き上げます。


BTOBケーブルのコネクタが硬かったり、リアI/Oカバーの内側にもマザーボードと直接に接続するBTOBコネクタがあったりと、マザーボードに触り慣れていないと困惑する、なかなか複雑な構造です。

「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」では、高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットは専用M.2カードの表面と背面の2か所に計2基が設置されています。
M2_1は第11世代CPUで新たに追加されたCPU直結PCIE4.0x4レーンに接続されており、PCIE4.0x4接続のNVMe接続M.2 SSDに対応しています。
M2_2はチップセット経由PCIEレーンに接続されており、NVMe(PCIE3.0x4)接続とSATA接続のM.2 SSD両方に対応をサポートし、排他利用はありません。

・PCIE4.0対応NVMe M.2 SSDのレビュー記事一覧へ

「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」のM.2スロットには表面と裏面ともにM.2 SSDヒートシンクが装着されており、M.2 SSDのサーマルスロットリング発生を抑制する効果が期待できます。
発熱が大きいPCIE4.0に対応する表側M.2スロットについては、両面ヒートシンク設計を採用しており、背面金属プレートも表面同様にサーマルパッドを介してM.2 SSDと接します。


マザーボード右端には最新接続規格USB3.2 Gen2に対応する内部USB Type-Cヘッダーと、内部USB3.0ヘッダーが実装されています。

Mini-ITXマザーボードの多くに言える見落としの多いポイントですが、CRYORIG C1などの大型トップフロークーラーと組み合わせる場合はメモリだけでなくUSB3.0ケーブルが干渉する場合もあるので注意が必要です。

M.2スロットボード上に内部USB2.0ヘッダーが1基だけ設置されています。Corsair iCUEやNZXT CAM対応製品など内部USB2.0を使用する機器も増えているので、内部USB2.0が2基でも不足する場合はUSB2.0ヘッダー増設ハブの「NZXT INTERNAL USB HUB (Gen3)」や「Thermaltake H200 PLUS」がおすすめです。

「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」にはROG USB2.0スプリッターケーブルという内部USB2.0の分岐ケーブルが付属します。

ROG USB2.0スプリッターケーブルを使用すれば2基の内部USB2.0ヘッダーが使用できるように思えますが、「NZXT INTERNAL USB HUB (Gen3)」や「Thermaltake H200 PLUS」とは異なり、ROG USB2.0スプリッターケーブルは下の図のようにピンを延長分岐しているだけなので、実際には使い勝手の悪い分岐ケーブルです。ユーザーに対して誤解を招くという意味で、ない方がマシな付属品というのが正直なところ。

ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIはMini-ITXマザーボードながら、ALC4080やSavitech SV3H712によって、高音質オンボードサウンド機能を従来機種よりもさらに強化した「SupremeFX」も採用されています。
ALC4080は従来のハイレゾオーディオ(HDA)インターフェイスの代わりにUSBインターフェイスを使用し、192〜384kHzのオーディオ解像度に対応します。ヘッドホンアンプにはSavitech社SV3H712を採用することで、THD+N性能が従来の-72dBから-83dBへと大幅に向上し、より低ノイズで微妙なニュアンスを再現可能になっています。
デジタル部とアナログ部の基板分離、ニチコン製オーディオクラスコンデンサの採用などヘッドホン・スピーカー出力の高音質化にも注力しており、最近のゲーミングマザボはサウンドボード要らずです。

冷却ファンや簡易水冷クーラーのポンプの接続用の端子はマザーボード上端とM.2カード上に計3基が設置されています。Mini-ITXマザーボードはファン端子が2基しかないものも多いので冷却を重視するユーザーには嬉しい数です。CPUファンとAIOファン端子は最大出力1.0A(12W)なので水冷ポンプにも対応した端子です。

「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」にはCMOSクリアのためのオンボードボタンは実装されておらず、マザーボード右下のジャンパーピンを使用してCMOSクリアを行います。
短絡用ジャンパは付属しておらず、グラフィックボードやメモリを組み込んでしまうと、短絡するのがかなり難しい位置になっているので、ケーブルの長い2PINスイッチをあらかじめ装着しておいた方がよさそうです。同社の他製品のようにリアI/OにCMOSクリア用スイッチを設置して欲しかったところ。

また、DIY水冷PCユーザーには嬉しい外部温度センサーの接続端子が設置されています。Mini-ITXで外部温度センサーに対応したモデルは少ないのでこれは魅力です。ASUSのファンコントロール機能は外部センサーをソースにした水温依存のファンコントロールが可能なので管理人は以前から水冷ユーザーにお勧めしています。
「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」のリセットスイッチはFlexkeyと名付けられており、BIOS上から、「リセット」「AURA オン/オフ」、「DirectKey(起動してBIOSメニューを表示)」など押下時の機能を切り替えることができます。

ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIの検証機材
ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIを使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 11900K (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Neo F4-4000C17D-32GTZNB DDR4 16GB*2=32GB (レビュー) |
CPUベンチ用 ビデオカード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 980 PRO 500GB(レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
システムメモリの検証機材には、XMP OCプロファイルによるメモリ周波数4000MHzでメモリタイミングCL17の高速かつ低レイテンシなオーバークロックに対応する16GB×2=32GBのメモリキット「G.Skill Trident Z Neo F4-4000C17D-32GTZNB」を使用しています。かなりピーキーなOC設定なので一般にはオススメし難い製品ですが。
高級感のあるヒートシンクや8分割ARGB LEDを搭載してデザイン面でも優れる「G.Skill Trident Z Neo」シリーズは当サイトでも特にオススメしているDDR4メモリです。第3世代Ryzen向けにリリースされた製品ですが、3200MHz/CL14や3600MHz/CL16といった定番スペックがラインナップされていて、Intel第11世代Rocket Lake-S CPU&Z590マザーボード環境でも高いパフォーマンスを発揮できるので、選んで間違いのないオススメなOCメモリです。
・「G.Skill Trident Z Neo F4-4000C17D-32GTZNB」をレビュー

360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む

ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 980 PRO 500GB」を使用しています。Samsung SSD 980 PROは、PCIE4.0対応によって連続アクセススピードを最大で2倍に飛躍させただけでなく、ランダム性能の向上によってSSD実用性能においても前世代970 PROから大幅な向上を果たし、PCIE4.0アーリーアダプターなPhison PS5016-E16採用リファレンスSSDよりも高速なので、これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
・「Samsung SSD 980 PRO 1TB」をレビュー。堂々の最速更新

CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。

サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
・「Thermal Grizzly Carbonaut」はCore i9 9900Kを冷やせるか!?

以上で検証機材のセットアップが完了となります。

ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIのBIOSについて
ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIを使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付がおかしいですが無視してください。また内容的に差異のないものは過去の同社製マザーボードのBIOSスクリーンショットを流用しています。)
ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIのBIOSに最初にアクセスするとEZモードというグラフィカルな画面が表示されます。パッと見の見栄えは良いのですが詳細モードでないと詳細設定ができないので「F7」キーを押してサクッと「アドバンスドモード(Advanced Mode)」へ移るのがおすすめです。

「F7」キーを押すとアドバンスドモードという従来通りの文字ベースのBIOSメニューが表示されます。「Main」タブの「System language」-「English」と表記された項目のプルダウンメニューから言語設定が可能で日本語UIを選択できます。ASUSマザーボードは競合他社と比較してもBIOSメニューの日本語ローカライズの充実と正確さが魅力です。

次回起動時に初回から詳細モードを起動する場合は、「起動-ブート設定」にある「セットアップモード」の項目をアドバンスドモードに変更してください。

ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIのBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出はトップメニュータブ最右端の「終了」から行えます。その他の設定を行っていても左右カーソルキーですぐに退出可能です。

特定のブートデバイスを指定してBIOSから退出するBoot Override機能は「起動」タブメニューの最下段「起動デバイス選択」に配置されています。

BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルをダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://rog.asus.com/jp/motherboards/rog-strix/rog-strix-z590-i-gaming-wifi-model/helpdesk_bios
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、アドバンスドモードの「ツール-ASUS EZ Flash 3 Utility」でストレージデバイスからのアップデートでBIOSファイルを選択します。あとはガイドに従ってクリックしていけばOKです。


ブートとOSインストール周りについて紹介します。とはいってもASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIのブート回りは下画像のように非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。
OSのインストールも「Boot Option #1」に「UEFI:〇〇」というOSインストールメディアを設定して保存&退出でOKです。「Boot Option #1」の下にスクロールしていくとブートデバイスを個別に指定して再起動できる「Boot override」もあるのでこちらから、同様に「UEFI:〇〇」というOSインストールメディアを選択してもOKです。

ちなみにWindows10の製品パッケージに付属するUSBメモリではUEFIで認識できないトラブルが発生することがあるようなので、そういうときはこちらの記事に従ってMS公式ツールを使用して適当なUSBメモリでOSインストールメディアを作成すると上手くいきます。
BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIのBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。
「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」のリセットスイッチはFlexkeyと名付けられており、BIOS上から、「リセット」「AURA オン/オフ」、「DirectKey(起動してBIOSメニューを表示)」など押下時の機能を切り替えることができます。

「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」のx16サイズPCIEスロットはCPU直結のPCIE4.0x16レーンをグラフィックボード用の単一x16レーンとして使用するだけでなく、PCIE Bifurcation Riser Cableを併用することで2基のPCIEスロットを使用できる「Riser Card(x8/x8)」や、NVMe M.2 SSDを4基増設できるHyper M.2 Cardを使用できる「PCIE RAID Mode(x4/x4/x4/x4)」が使用できます。

従来のASUS製マザーボードでは「モニタ(Monitor)」のタブページを開くと、温度・電圧モニタリングやファン制御設定が一気に列挙されていたのですが、「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」を含め最新のIntel 500シリーズマザーボードでは、温度モニター、ファン回転数モニター、電圧・電流モニター、Q-Fan設定の4つの小項目に分けられ、より扱いやすくなっています。

マザーボード上のコンポーネント詳細でも紹介した外部温度センサーについてはBIOS上からも温度をモニタリングできます。簡易水冷(AIO水冷)ポンプ専用の項目も用意されており、ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIであれば冷却機能周りは空冷・水冷ともにほぼ全てBIOS上でコントロール可能です。



モニタ - Q-Fan設定の順にアクセスするとファン制御設定ページが表示されます。

BIOS上のファンコントロール機能についてですが、CPUファン端子とCPU OPT端子はCPU温度依存のファンコントロールしかできませんが、その他のケースファン端子については、外部温度センサーなどの各種温度ソースからファンコントロールが可能です。

ファン制御モードはPWM速度調整とDC(電圧)速度調整の2種類が用意されていますが、DC速度調整の場合は制御プロファイルを手動にすると、下限温度以下で冷却ファンを停止させる所謂セミファンレス機能を実現する「Allow Fan Stop」の設定が表示されます。

ASUSマザーボードにもグラフィカルUIによるファンコントールの設定機能「Q-Fan Control」があります。機能的には上で紹介したコンソールのファンコンと同じですが、グラフィカルUIでわかりやすく設定できるよという機能になっています。直感的にわかりますし直打ちが苦手な人にはありがたい機能だと思います。

「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」のVRM電源クーラーに内蔵された冷却ファンはBIOSメニュー上で「VRMヒートシンク ファン」として登録されており、VRM電源温度をソースにしたファン制御カーブの設定が可能です。
標準設定のファン動作プロファイルは”標準”となっており、VRM電源温度が十分に低ければファンが完全に停止するセミファンレス動作にも対応しています。

標準以外にも、サイレント、ターボなどのファン制御プロファイルを選択でき、手動では任意のファン制御設定が可能です。VRM電源冷却ファンもその他のファン端子と同様にファンを制御できます。

手動モードにおいて、最小デューティサイクルを0にすると、VRM電源温度が下限温度以下の時にVRM電源冷却ファンを停止するので、セミファンレス動作のような設定も可能です。

イルミネーション操作機能「ASUS AURA Sync」について
「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」はマザーボード備え付けのLEDイルミネーションやRGB対応汎用4PIN/アドレッサブルRGB対応汎用3PINイルミネーション機器を操作可能なライティング制御機能「ASUS AURA Sync」に対応しています。「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」にはマザーボード備え付けのLEDイルミネーションとして、M.2 SSDヒートシンクのROG STRIXロゴにアドレッサブルLEDイルミネーションが搭載されています。オーロラライクなアドレッサブル発光パターンだけでなく、各アドレスに対して静的に発光カラーを指定することも可能です。

「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」のマザーボード上にはRGB対応汎用4PIN LEDヘッダーが1基実装されており、当サイトでもレビュー記事を掲載しているLEDテープ「SilverStone SST-LS02」やLEDファングリル「Phanteks Halos Lux RGB Fan Frames」など汎用LED機器によるLEDイルミネーションの拡張も可能です。またマザーボード下端にはアドレッサブルLEDテープに対応したVD-G型の3PINヘッダーも実装されています。

アドレッサブルLED機器を接続可能なARGB対応VD-G型3PIN LEDヘッダーも1基実装されています。使用可能なアドレッサブルLEDテープについては国内で発売済みの「BitFenix Alchemy 3.0 Addressable RGB LED Strip」やASUS ROG純正品の「ASUS ROG ADDRESSABLE LED STRIP-60CM」や「AINEX アドレサブルLEDストリップライト」が動作することが確認できています。

ちなみに近日発売が予定されている第2世代のアドレッサブルRGB対応LEDテープでは、これまで手動で設定していたLED球数を、デバイス毎に自動検出できるようになっており、「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」も第2世代に対応したARGB対応LEDヘッダーが実装されています。

「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」に搭載されたLEDイルミネーションや汎用ヘッダーに接続されたイルミネーション機器は発光カラーや発光パターンを専用アプリのAURA Syncから同期操作可能になっています。AURA Syncは公式ホームページやマザーボードのサポートページから最新版をダウンロードできます。
AURA公式DL:https://www.asus.com/campaign/aura/jp/download.html
専用アプリである「AURA Sync」を使用することで、色を指定した固定色発光、カラーサイクル等の発光パターンプリセット、温度や音楽に合わせた発光変化など自由度の高いイルミネーション設定が可能です。




マザーボード備え付けLEDイルミネーションがアドレス指定操作に対応している場合、ソフトウェア上から各LED素子に対して個別に発光カラーを設定できます

マザーボード備え付けや汎用ヘッダー以外に、ASUS AURA Syncに対応したLEDイルミネーション機器が接続されている場合、ウィンドウ左上にその項目が表示されてマザーボードと同期操作が可能になります。

当サイトでレビュー記事を公開中のG.Skill製DDR4メモリの「G.Skill Trident Z Neo」や「G.Skill Trident Z RGB」や「G.Skill Trident Z Royal」もASUS Aura Syncによるイルミネーション同期設定に対応しています。
・「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」をレビュー

ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIの備え付けおよび増設のLEDイルミネーションは、デフォルトではOSのシャットダウンやスリープ時もLEDが点灯しますが、「システム停止中(S3/S4/S5)のLED設定」の項目をOFFにすることでスリープ時やシャットダウン時のみLEDイルミネーションをOFFにすることができます。

なおシャットダウン・スリープ時のLEDの点灯・消灯設定はWindows上アプリの「AURA Sync」からも設定が可能で、アプリからの操作が優先されます。ASUS Aura Syncソフトウェアの「Power Off」タブがスリープやシャットダウン時のLEDイルミネーションの設定になっています。ここから設定を行うことでASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIでもシャットダウン・スリープ時のLEDイルミネーションの消灯が可能です。

また総合管理ソフトウェア「Armoury Crate」からも、「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」のマザーボード備え付けLEDイルミネーションや汎用LEDヘッダー接続機器を含めたASUS AURA Sync対応機器のライティングを一括制御できます。(下はASUS ROG CROSSHAIR FORMULAの例)



ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIのOC設定について
ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIを使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」のオーバークロック設定は「Ai Tweaker」というトップメニューのタブページにCPUコアクロック、メモリ、電圧など各種設定項目が集約されています。「Ai Tweaker」ページをスクロールしていくとCPUコアクロック、メモリ、電圧などの各種設定項目が表示されるので設定しやすいUIです。設定値を直接入力する項目でデフォルトの「Auto」に戻す場合は「a」キーを入力すればOKです。

「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」のオーバークロック設定項目の最初にある「AI Overclock Tweaker」ではプルダウンメニューから「Auto」「Manual」「XMP」の3つの設定モードが選択できます。Autoモードは基本的な設定項目に関する自動or手動設定が可能な一般ユーザー向けの設定モードとなっています。ManualモードはBCLK等の詳細なOC設定項目が解放される上級者向けの設定モードです。XMPモードはManualモードベースですが、OCメモリに収録されたXMPプロファイルを適用できる設定モードになっています。
OC初心者はXMPを使用しないならAutoモード、XMPを使用するならXPMモードを使用すればOKです。

CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
コアクロックはコア数に対して各コアに最大動作クロック(BCLKに対する倍率)を指定できます。「コア0:コア1:コア2:コア3」を倍率として、例えば「45:43:43:42」のようにバラバラに指定した場合、4つのコアのうち1つに負荷が掛かる場合は4コアのうち1つが45倍動作、2つと3つの場合は43、4つの場合は42となります。
ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIではCPU内部クロック倍率の設定モードとして、マザーボードのお任せとなる「Auto」、全コアの倍率を同じに設定する「Sync All Cores」、負荷のかかっているコア数によって最大動作倍率を設定する「By Core Usage」、コア毎に最大動作倍率を設定できる「Specific Core」、自動的にOC設定を最適化してくれる「AI Optimized」の4つのモードが存在します。

一般ユーザーがCPUのOCを行う場合は通常、全コアの最大倍率を一致させると思いますが、同マザーボードの場合は「Sync All Cores」モードを選択して「1コアの倍率制限値: 50」と設定することでデフォルトのBCLK(ベースクロック)が100MHzなのでその50倍の5.0GHzで全てのコアが動作します。

「By Core Usage」モードでは負荷がかかっているコア数に対して最大動作倍率を設定可能です。

「Specific Core」モードではコア毎に最大動作倍率を設定できます。

Intel第10/11世代CPUは、従来ではオフセットやアダプティブのような大雑把な調整しか不可能だったV/Fカーブ(動作周波数と動作電圧の関係)を細かく調整できるようになっています。ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIでは「V/F Point Offset」の名前で同設定が配置されています。

現時点では既定の8点の周波数に対して設定されたCPU個体毎のストック電圧に対して、+/-のオフセット電圧を設定できます。Core i9 11900Kの場合は800MHz、2500MHz、3500MHz、4300MHz、4800MHz、5100MHz、5200MHz、5300MHzに対してコア電圧オフセット値を指定できます。

Intel第11世代CPUの新たな特長の1つとして、マルチコア負荷時のCPU動作倍率を2~3倍も引き上げ、さらに温度制限がかかる臨界温度をThermal Velocity Boostの70度から100度へと大幅に解除する新たなターボブースト機能「Intel Adaptive Boost Technology」があります。

「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」ではBIOSバージョン0704からAdaptive Boost Technologyをサポートしており、BIOS設定メニューから有効化が可能です。

Intel第11世代CPUでは新たにAVX-512命令が追加されましたが、CPUコアクロックをOCする上でボトルネックになることもあるため、BIOS設定からAVX-512命令のみ、もしくは全てのAVX系命令を無効化できます。AVX2/512実行時の発熱を低減する方法として、従来の倍率動作オフセットに加えて、Voltage Guardband Scaleと呼ばれる電力制限に近い機能も追加されています。


「AI Overclock Tweaker」から「Manual」モードもしくは「XMP」モードを選択するとベースクロック(BCLK)の設定項目が表示されます。デフォルトのAutoでは100MHzに固定されていますが、設定値の直打ち、もしくはプラスマイナスキーで操作することによって40~1000MHzの範囲内で設定できます。CPUコアクロックはBCLKに対する動作倍率で設定されるのでBCLK110MHz、動作倍率45倍の場合はコアクロック4.95GHz動作となります。ただしBCLKを使用したOCはかなり上級者向けなので通常はAutoか100MHzが推奨です。

キャッシュ動作倍率は「CPUキャッシュ最大動作倍率(Max CPU Cache Ratio)」から変更可能です。CPUコアクロック同様にベースクロックに対する動作倍率でキャッシュの動作周波数を設定できます。

続いてコア電圧の調整を行います。
Intel第11代CPUではCPUコアとキャッシュへの電圧は共通なので、CPUコアクロックやキャッシュクロックのOCに関連する電圧設定として、ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIでは「CPUコア/キャッシュ電圧(CPU Core/Cache Voltage)」の項目を変更します。
ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIではCPUコア電圧をマニュアルの設定値に固定する「Manual」モード、CPUに設定された比例値にオフセットかける「Offset」モード、ターボブースト時にのみ昇圧を行う「Adaptive」モードの3種類が使用できます。

ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIでCPUコア/キャッシュクロックのOCを行う場合、CPUコア電圧の設定については設定が簡単で安定しやすいので固定値を指定するManualモードがおすすめです。8コア16スレッドCore i9 11900KをOCする場合、CPUコア電圧の目安としては最大で1.300~1.350V程度が上限になると思います。

CPUコア電圧モードについて簡単に説明すると、オフセットモードやアダプティブモードはCPU負荷に比例して電圧が設定されており、低負荷時は電圧が下がるので省電力に優れるのですが、OCをする場合はマザーボードによって挙動に差があり安定する設定を見極めるのが難しいので、個人的にはオフセットやアダプティブは定格向け、OCには固定値適用の固定モードを推奨しています。
仮にOCでオフセットやアダプティブを使う場合も最初はコアクロックに対して安定する電圧を見極める必要があるので、まずは固定モードを使用します。
ちなみにマザーボードにより対応しているモードは異なりますが、CPUのオーバークロックに付随するコア電圧のモードの概略図は次のようになっています。

またCPUのOC/DCに関連する電力設定としてASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIではコアクロックと電圧の設定項目の中間あたりに「Digi+ VRM」と「CPU電力詳細設定」の2つがあります。

コアクロックを高く設定する時に追加で変更するといい項目として「Digi+ VRM - ロードラインキャリブレーション」があります。ロードラインキャリブレーションはCPU負荷時の電圧降下を補正してOCを安定させる機能となっており、補正の強度としてLevel 1~Level 8の8段階になっており、Levelが大きくなるほど電圧降下の補正は強くなりOCは安定しやすくなりますが発熱も大きくなります。

「External Digi+ Power Control」ではその他にも「CPU VRM スイッチング周波数」「CPU VRM スペクトラム拡散」「CPU VRM 可動フェーズ設定」などCPUのオーバークロック時にマザーボードVRMからの電力供給を安定させる設定項目が用意されています。

その他にもCPUコアクロックをOCする場合は「CPU SVID」や「C-State」を無効化すると、OC時の動作が安定しやすくなるようです。

また「CPU電力詳細設定」には「瞬間許容電力制限値(Short Duration Power Limit)」「許容電力上限値(Long Duration Power Limit)」という2つの電力制限機能があり、電力制限がかかる閾値(単位はW)と電力制限がかかるまでの時間を設定できます。
電力制限がかかるとその指定電力内に収まるようにコアクロックに制限がかかります。デフォルトの状態では「Auto」になっていますが、ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIでは手動でコアクロックのOCを行った場合はパワーリミットが掛からないように勝手に設定してくれるので放置でも問題ありません。基本的に一定消費電力以内に収めるための省電力機能(+若干のシステム保護機能)と考えてください。

メモリのオーバークロックについても簡単に紹介しておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
一方でXMPによるメモリOCは上の手順によるOCをメーカー側がすでに行い動作確認をしているので、メーカーが動作確認を行ったOCプロファイルを適用するだけで簡単にメモリをオーバークロックできます。
メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」では正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動で2133MHzのような緩い設定で起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。
ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIでは「AI Overclock Tweaker」からXMPモードを選択することでOCメモリに収録されたXMPプロファイルによるメモリのオーバークロックが可能です。

「AI Overclock Tweaker」のAutoモードやManualモードにおいて「DRAM Frequency」の設定値がAutoになっている場合は、使用するメモリにSPD情報として収録されている動作クロック2133~2666MHzなどのメモリ周波数およびタイミングによる定格動作となります。
手動でメモリ周波数を設定する場合は「DRAM Frequency」の項目でプルダウンメニューから最大8400MHzまでの動作クロック(倍率)設定が可能です。
メモリ周波数もBCLKに対する倍率で動作周波数が決まっているので、BCLKを標準値の100MHzから120MHzに上げると、44倍設定時の動作周波数は4000MHzから5280MHzに上がります。

メモリタイミングの個別打ち込み設定も可能です。

メモリタイミングを手動で設定する場合は基本的には「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS (tRCD)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な3タイミングと、加えて「Refresh Cycle Time (tRFC)」と「Command Rate:1 or 2」の6つ以外はAutoのままでいいと思います。

DDR4メモリの周波数OCを行う際は「DRAM Voltage(DRAM電圧)」の項目を、3000MHz以上にOCする場合は1.300~1.350V、3800MHz以上にOCする場合は1.370~1.400Vに上げる必要があります。メモリをOCする場合は最初から1.350V以上にDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。

Intel第11世代CPUではメモリコントローラー周波数について、メモリ周波数に対して1:1対応のGear1(メモリ周波数が3200MHzならメモコンも3200MHz)と、1:2対応のGear2(メモコンが1600MHz)という2つの動作モードがあります。
Intel第11世代CPUのうち定格メモリ周波数3200MHzでGear1に対応するのはCore i9 11900K(F)のみですが、「CPU IMC : DRAM Clock」の項目からGear1/2を手動設定で切り替えが可能です。なお「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」では自動設定でもメモリ周波数3600MHzまではGear1動作です。

IMC周波数はリファレンスクロック(100MHz or 133MHz)に対する動作倍率で決まるため、3600MHzの場合はリファレンスクロック133MHzでIMC倍率が27倍となります。
単純にメモリ周波数を3800MHzや4000MHzにするとリファレンスクロック100MHzでIMC倍率が38倍や40倍となってしまい現実的に動作は不可能なのですが、リファレンスクロック133MHzでIMC倍率が28倍の3733MHzや、IMC倍率が29倍の3866MHzであれば、IMCのOC耐性次第では安定動作する可能性があります。
なおIMC周波数を定格(Core i9 11900K/11900KFでは3200MHz、その他は2933MHz)よりも高い値でGear1の1:1同期にする場合は、VCCSA(CPU SA Voltage)、VCCIO(CPU IO Voltage)、VCCIO Memory(CPU IO 2 Voltage)を調整してみてください。
VCCSAが一番重要な気がしますが、一応3つの代表的な設定値として順番に1.350V、1.050V、1.250V程度に設定すると3600MHzでGear1が安定動作するはずです。
参考までに、3733MHzでGear1を狙う場合、VCCSAは1.400~1.450V程度が要求されます。3866MHzになるとさらに高くなり1.550~1.600Vが必要で、実際に動作するかはIMCのOC耐性次第になります。

ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIの動作検証・OC耐性
BIOS周りの管理人的に気になるところの紹介はこのあたりにしてASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIを使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」にCore i9 11900Kを組み込んだ場合のBIOS標準設定における動作についてですが、2コアまでは53倍、全10コアで48倍の動作倍率になっており、CPUコア動作倍率は仕様値通りです。しかしながら電力制限については無効化されていました。
BIOS標準設定ではCore i9 11900Kは全コア4.8GHzに貼りついて動作するため、CPU消費電力は200Wオーバー、AVX512を使用するタスクでは300Wに迫ります。

TDPに対して全コア最大動作倍率が高く設定されているCPUに電力制限を適用してIntelの公式仕様通りに使用したい場合、例えばCore i9 11900Kでは長期間電力制限を125W、短期間電力制限時間を56sに設定してください。

なおASUS Multicore Enhancementを「Disabled - Enforce All limits」にしても、Intel公式仕様通りの電力制限が適用されます。(Multicore Enhancementについては、単コア最大動作倍率を全コア最大動作倍率に適用、というのが従来の機能でしたが)

電力制限以外にもCPU動作に大きく影響する項目についてまとめました。
Turbo Boost Max 3.0はアクティブなタスクに対して単コア最大動作倍率など最も高速に動作している(電圧特性に優れた)コアを割り当てる機能です。
Thermal Velocity Boostは閾値温度70度以下においてブーストクロックを引き上げる機能と説明されていますが、機能の実装としてはThermal Velocity Boost有効時の仕様値がBy Core Usage倍率として適用されており、TVB Ratio Clippingという設定によってCPU温度が閾値以上の時に動作倍率を-1倍に(正確にはCPU毎に設定された倍率に)引き下げるという形になっています。
AVX512 Voltage Guardband ScaleはAVX 512実行時のコア電圧を調整する機能です。0~255の整数値で設定し、定格設定は128です。128以下では低電圧化、128以上では高電圧化します。低電圧化というよりもAVX512実行時の電力制限(AVX512限定のPL1)に近い動作なので、Scale=1でもクラッシュすることはありませんが、性能は低下するものと思われます。
ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI (BIOS:0704) Core i9 11900Kの標準動作設定 |
||
標準設定 | 定格 | |
単コア最大倍率 | 53 | 53 |
全コア最大倍率 | 48 | 48 |
Turbo Boost Max 3.0 | On | On |
TVB Ratio Clipping (70度以上で-1倍) |
Off | On |
PL1, PL2, Tau | No, No, - |
125W, 250W, 56s |
AVX512 Offset | 0 | -3 |
AVX512 Voltage Guardband | 128 (設定値は0~199で100) |
128 |
備考 |
CPU Package Powerの検出値が -10W程度で調整されているかも? |
続いてASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIを使用した場合のCPUとメモリのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
Core i9 11900KのマニュアルOCについては市販CPUクーラーで最高性能の360サイズ簡易水冷でもCPU消費電力300W程度がCPU温度を80~90度に収めることができる上限となっており、CPUコア電圧で1.300~1.350V程度になります。
この電圧に対してはCPU個体差にもよりますが、安定動作が可能なコアクロックは5.0~5.1GHz程度なので、全コア動作倍率の設定を行うと、標準動作の単コア5.3GHzブーストによるシングルスレッド性能が損なわれてしまいます。
全コア動作倍率設定&CPUコア電圧Overrideはやはり設定の手軽さが魅力ですが、単コア5.3GHzの性能をキープしたいのであれば、Adaptive Boost TechnologyやBy Core Usage設定で多コア負荷時の動作倍率を5.0~5.1GHzへ引き上げて、V-Fカーブ設定で51倍動作時の電圧をマイナスオフセットするのがオススメです。
またCore i9 11900Kの場合、全コア4.8GHzでもAVX512を有効にすると、AVX512を使用するタスクではCPU消費電力が300Wに達してしまいます。手動OCを行う場合は、AVX512を完全に無効化するか、AVX512の動作周波数が4.8GHz以下になるようにオフセット設定、AVX512 Voltage Guardbandによる電力制限を行ってください。
今回の検証において、Core i9 11900KのOC設定はCore i9 11900KのOC設定は「Per Core: 1-2c x53, 3-8c x51」「CPUコア電圧:V-F Curve, Ratio x51 -60mV」「AVX512:無効化」としています。
メモリのOC設定は「メモリ周波数:3600MHz」「メモリ電圧:1.450V」「メモリタイミング:14-15-15-35-CR2」としています。メモリOC関連の電圧については3600MHz/Gear1なら特に手を加えなくても問題ありませんが、「VCCSA:1.350V」「VCCIO Mem:1.200V」と指定しています。





上の設定を適用したところ問題なくOSを起動させることができました。


ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIの環境(BIOS:0704)においてメモリのオーバークロックを行ったところ、メモリ周波数とメモリタイミングだけのカジュアル設定で、メモリ周波数を3600MHz、メモリタイミング:14-15-15-35-CR2の高速周波数&低レイテンシで安定動作を確認できました。1枚当たり16GB容量のメモリモジュールでもしっかりと安定しました。
Intel第11世代CPUではIMC(メモリコントローラー)周波数がメモリ周波数と1:1動作のGear1で安定するのは3600MHz辺りが限界のようなので、常用のメモリOC設定として3600MHz/CL14は最速クラスの設定です。

今回のOC検証ではメモリの検証機材として、XMP OCプロファイルによるメモリ周波数4000MHzかつメモリタイミングCL17の高速・低レイテンシなオーバークロックに対応する16GB×2=32GBのメモリキット「G.Skill Trident Z Neo F4-4000C17D-32GTZNB」を使用しているので、さらに1ランク上のOCも実践してみました。
IMC周波数はリファレンスクロック(100MHz or 133MHz)に対する動作倍率で決まるため、3600MHzの場合はリファレンスクロック133MHzでIMC倍率が27倍となります。 単純にメモリ周波数を3800MHzや4000MHzにするとリファレンスクロック100MHzでIMC倍率が38倍や40倍となってしまい現実的に動作は不可能なのですが、リファレンスクロック133MHzでIMC倍率が28倍の3733MHzや、IMC倍率が29倍の3866MHzであれば、IMCのOC耐性次第では安定動作する可能性があります。
Intel Core i9 11900KとASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI(BIOS:0704)の環境において、メモリ周波数とメモリタイミングだけのカジュアル設定で、メモリ周波数を3866MHz、メモリタイミング:16-17-17-37-CR2の高速周波数&低レイテンシで安定動作を確認できました。
3866MHzのGear1が起動し、なおかつ安定動作するかどうかはCPUのIMC耐性次第ですが、IMCの特性が良いCPUであれば、「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」で実用最速クラスな3866MHz/CL16/Gear1も狙えます。1枚当たり16GBの大容量メモリモジュールでこの速度が安定するのは意外でした。

8コア16スレッド「Intel i9 11900K」をAdaptive Boost TechnologyやBy Core Usageで単コア5.3GHzの高速動作を維持しつつ、全コア動作周波数を5.1GHzへOCし、3600MHz/CL14のメモリOCも適用していますが、Cinebench R23による30分ストレステストも問題なくクリアできました。ちなみにこのOC設定を適用した時のCore i9 11900KのCinebench R23スコアは16500程度です。

続いてこのOC設定を使用してストレステストを実行しました。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間7分、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)をソースとしてAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。Core i9 11900Kは8コア16スレッドのCPUなので、同じ動画のエンコードを2つ並列して実行し、30分程度負荷をかけ続けます。ストレステスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。

ストレステスト中のCPU温度とCPU使用率のログは次のようになりました。マザーボードにASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIを使用することでCore i9 11900Kを全コア同時5.1Hz(V-Fカーブ設定で51倍動作時について低電圧化かつAVX512は無効化)、メモリ3600MHzにOCしてストレステストをクリアできました。
CPUクーラーにはFractal Design Celsius S36を使用し、冷却ファンNoctua NF-A12x25 PWのファン回転数は1500RPMで固定しています。

サーモグラフィカメラ搭載スマートフォン「CAT S62 PRO」を使用してASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIのVRM電源温度をチェックしてみました。
上記BIOS設定を適用する前に、まずCore i9 11900Kを定格動作倍率かつ電力制限無効化にして、x264動画エンコード(AVX512無効)で長時間負荷をかけた時のVRM電源温度をチェックしてみました。
定格動作倍率かつ電力制限無効化でフル負荷をかけると全コア4.8GHz動作になりますが、AVX512を使用しない場合のCPU消費電力は200W程度に達します。
Mini-ITXマザーボードの場合、実際にPCケース内で組み合わせて使用されるCPUクーラーは240サイズ簡易水冷が冷却性能の上限になるはずなので、CPUクーラーの冷却性能的に200Wクラスの負荷でVRM電源が冷えていれば十分と評価できます。

CPU消費電力200Wという負荷に対して、「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」は90A対応Dr. MOSで構成される超堅牢な10フェーズVRM電源回路とアクティブ冷却式VRM電源クーラーという標準装備によって、VRM電源温度はソフトウェアモニタリングと、サーモグラフィーのホットスポットの両方で70度以下に収めることができました。
「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」はMini-ITXマザーボードながらCore i9 11900Kを運用する上で、VRM電源の冷え具合がボトルネックになることはない、十分な冷え具合を実現しています。


続いて、Core i9 11900Kを上記のBIOS設定でOCした時の負荷テスト中の温度をチェックしていきます。Mini-ITXマザーボードと組み合わせが可能なCPUクーラーの性能から言うと余談的な検証になりますが。
ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI環境でCore i9 11900Kを全コア5.1GHzまでOC、かつメモリも3600MHz/CL14/Gear1にOCするとシステム全体(ほぼCPU)の消費電力が330Wに達します。
ちなみに定格動作倍率かつ電力制限無効化の全コア4.8GHz(正確にはAVX512では-3倍オフセットがありますが)でAVX512有効なx264動画エンコードを行うと同程度のCPU消費電力になります。
Core i9 11900Kを全コア5.1GHzにOCするとEPS電源経由の消費電力は300Wに達し、エンスージアスト向けCore-Xもかくや、というくらい非常に大きいCPU消費電力が発生します。

そんなCPU消費電力300W級のVRM電源負荷に対して、「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」は90A対応Dr. MOSで構成される超堅牢な10フェーズVRM電源回路とアクティブ冷却式VRM電源クーラーという標準装備だけで、VRM電源温度はソフトウェアモニタリングとサーモグラフィーの両方で80度前半に収めることができました。
「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」であれば、市販CPUクーラーで最高性能な360サイズ簡易水冷はもちろん、DIY水冷も含めて、Core i9 11900Kの常用OCに標準装備のみで十分に対応が可能です。

なお、「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」のVRM電源クーラーには冷却ファンが内蔵されており、標準ファン制御に任せた場合、200Wクラスの負荷では2800RPM程度、300Wクラスの負荷では6500RPM程度とかなり高いファン速度で動作しますが、前者だと水冷ポンプのノイズにかき消される程度、後者でも30cm以内に耳を近づけてCPUクーラー冷却ファンのファンノイズと聞き分けられる程度でした。
最大速度の6500RPMでもシンプルに風切り音的なファンノイズは小さく、また、キュイーンというような高周波ノイズも聞こえないので、VRM電源冷却ファンの騒音については心配する必要はないと思います。

ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIのレビューまとめ
最後に「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- ROG STRIXシリーズらしいブラック一色のクールなデザイン
- Mini-ITXながら90A対応Dr. MOSで構成される10フェーズVRM電源を搭載
- VRM電源クーラーはリアI/Oカバー一体型の超大型かつファン内蔵のアクティブ冷却構造
- Core i9 11900K 5.1GHz(AVX512:Off)、メモリ3600MHz/CL14で安定動作
- 11900Kの全コア5.1GHz OCでもVRM電源温度は80度台に収まる
(Mini-ITXの自作PCで実用的な200Wクラス負荷なら70度以下) - メモリ3866MHz/CL16/Gear1のメモリOCが安定動作
- 外部センサー搭載で水温ソースのファンコンも可能なので水冷PCにも最適
- 重量級グラボにも耐えるメタルアーマー採用PCIEスロット「SAFESLOT」
- ヒートシンク付きのNVMe対応M.2スロットを2基搭載
- M.2スロットのうち1基はPCIE4.0x4接続に対応
- Thunrderbolt4対応Type-C端子をリアI/Oに標準搭載(iGPU経由でビデオ出力も可能)
- Intel製2.5Gbイーサ(Intel I225-V)をリアI/Oに標準搭載
- WiFi 6E&Bluetooth5.2対応無線LAN(Intel AX210)を標準搭載
- ALC4080やSavitech SV3H712による高音質オンボードサウンドSupremeFX
- Windows10(20H2)の標準ドライバで動作するネットワーク機器がない
- CMOSクリア用のスイッチがない(2PINヘッダーを短絡してリセットする)
- ROG USB2.0スプリッターケーブルは実用的に微妙
「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」はMini-ITXのコンパクトサイズながら90A対応Dr. MOSなどで構成される超堅牢な10フェーズVRM電源回路を実装し、VRM電源クーラーにはリアI/Oカバー一体の超大型ヒートシンクに冷却ファンを内蔵するアクティブ冷却構造を採用し、最上位モデルCore i9 11900Kでもフルポテンシャルを引き出すことが可能です。
また一般的なギガビットイーサの2.5倍の帯域幅を実現するIntel製2.5Gbイーサ、次世代規格WiFi 6Eに対応したIntel AX210無線LAN、40Gbpsの高速帯域でeGPUや4Kビデオ出力にも対応するThunderbolt4、ALC4080やSavitech SV3H712による高音質オンボードサウンドSupremeFXなどを搭載し、ハイエンドATXマザーボードに引けを取らないほど高性能な各種コンポーネントをコンパクト基板へてんこ盛りに詰め込んだ製品に仕上がっています。
ASUS製マザーボードではお馴染みですがBIOSやマニュアルの日本語ローカライズ品質は主要4社の中でも随一となっており、BIOSのテキストベースUIの使い勝手も良好です。上位ゲーマー向けROG STRIXシリーズと言うと高価で上級者向け製品のイメージが強いかもしれませんが、「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」は初心者にも優しいマザーボードだと思います。
「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」のBIOS標準設定でCore i9 11900Kを動作させるとTDP125W制限が無効化されます。BIOSから手動設定を行えばIntel公式仕様値通りに動作させることが可能ですが、電力制限無効化の場合、CPUクーラーは240サイズ以上の簡易水冷CPUクーラーが推奨されるくらいの発熱が生じるので注意が必要です。
ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFIを使用した検証機では8コア16スレッドのIntel Core i9 11900Kを全コア5.1GHzに、メモリ周波数も3600MHz/CL14/Gear1にオーバークロックして負荷テストをクリアすることができました。
マザーボードのOC耐性を評価する上で重要なファクターになるVRM電源について、「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」は非常に優秀な性能を発揮しました。「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」であればCore i9 11900Kを運用する上で、電力制限無効化でも手動OCでもVRM電源の冷え具合がボトルネックになることはないはずです。
Core i9 11900Kを常用限界までOCするとEPS電源経由のCPU消費電力が300Wを超えますが、「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」ではその強烈なVRM電源負荷に対しても、90A対応Dr. MOSなどで構成される10フェーズの超堅牢なVRM電源回路が適切に熱を分散します。
リアIOに覆い被さる超大型VRM電源ヒートシンク、CPUソケット上左のアルミニウム塊型ヒートシンクを連結するヒートパイプなどVRM電源クーラーの設計も工夫され、さらに標準で冷却ファンを内蔵するアクティブ冷却構造によって、標準装備だけでVRM電源温度を80度台に収めることができました。
また小径ファンが高速回転するものの最大速度でも風切り音的なファンノイズは小さく、耳障りな高周波ノイズも特に聞こえないので、冷却ファン内蔵によるデメリットも特に感じません。
メモリOCについてはメモリ周波数と主要タイミングのみを指定するカジュアルOC設定で、大容量16GBメモリモジュールのデュアルチャンネル2枚刺し、メモリ周波数3600MHzにおいてメモリタイミング16-16-16-36-CR2が安定動作しました。Intel第11世代CPUではCPU個体差に依存せず、IMC周波数が1:1動作になるGear1で安定する限界は3600MHzくらいなので、3600MHz/CL16は実用的な高パフォーマンス設定としてスイートスポットです。
一方、CPU個体差にも依存しますが、検証機材として使用している「G.Skill Trident Z Neo F4-4000C17D-32GTZNB」においては、IMC周波数が1:1動作となるGear1のまま、メモリ周波数3866MHz/CL16も安定動作を確認できました。3600MHz/CL16のような定番設定だけでなく、3800~4000MHz以上の高メモリ周波数にも対応できる、高品質なメモリ回路が実装されていると考えていいと思います。
以上、「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」のレビューでした。

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Thunderbolt4対応USB Type-C搭載のMini-ITXマザーボード「ASUS ROG STRIX Z590-I GAMING WIFI」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) May 27, 2021
Mini-ITXながら10フェーズの超堅牢VRM電源で300Wクラスの負荷にも対応!https://t.co/YQ71g7bHJX pic.twitter.com/de3diUspvU
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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