スポンサードリンク
Broadcom PEX89048スイッチチップによって最大でPCIE5.0x16帯域のPCIEスロットに、PCIE5.0x4対応NVMe M.2 SSDを8枚増設可能なPCIE拡張カード「HighPoint Rocket 1608A」をレビューします。
PCIE4.0x4接続のSamsung SSD 990 PROでも8枚によるRAID0で連続56GB/sの超高速を達成できるか検証してみました。
製品公式ページ:https://www.highpoint-tech.com/nvme-switch-aic/gen5/rocket-1608a
HighPoint Rocket 1608A レビュー目次
1.HighPoint Rocket 1608Aの外観・付属品
2.HighPoint Rocket 1608Aの検証機材
3.HighPoint Rocket 1608Aの基本的な使い方
4.HighPoint Rocket 1608AのRAID0でベンチマーク測定
・PCIEスロットの接続帯域について
5.HighPoint Rocket 1608AとSLCキャッシュについて
6.HighPoint Rocket 1608Aのレビューまとめ
【機材協力:日本サムスン 国内正規代理店 ITGマーケティング】
HighPoint Rocket 1608Aの外観・付属品
まず簡単に「HighPoint Rocket 1608A」の外観や付属品についてチェックしていきます。「HighPoint Rocket 1608A」はメーカーロゴがプリントされたグレーのパッケージに梱包されています。
HighPoint製品の国内正規代理店であるディラック取り扱い品の場合は製品パッケージのどこかに、下のような正規取扱品証明シールが貼られています。製品保証にはこのシールも必要なので開封後も捨てずに保管しておいてください。
製品パッケージを開くと白色のスポンジスペーサーの中央に静電防止ビニールで保護された製品本体が収められていました。
付属品はサーマルパッド 3種類×2枚セット、M.2 SSD固定ラバーラッチ(スペア用)、簡易マニュアルです。
「HighPoint Rocket 1608A」の拡張カード本体をチェックしていきます。
「HighPoint Rocket 1608A」はPCIEスロットを1スロット占有するPCIE拡張カードとなっており、最大でPCIE5.0x16帯域で接続可能です。
PCIE5.0x16帯域に対応した拡張ボードなのでPCIE端子もx16のフルサイズが実装されています。
なお最大通信速度が帯域に制限されますが、x16サイズが物理的に設置できるのであれば、PCIE5.0x8やPCIE4.0x16など低レーン数、低リンクスピードのマザーボードPCIEスロットでも使用できます。
「HighPoint Rocket 1608A」のボード長は284mmです。M.2 SSD 4枚に対応した従来モデルよりも大幅に長くなっています。
またボード右端にはオプションとしてPCIE補助電源 6PINコネクタが実装されています。補助電源を使用する場合は上記の全長284mmに加えて補助電源コネクタ&ケーブルのクリアランスも必要になります。
最近のハイエンドグラフィックボードは300mm前後のモデルも多く、オープンレイアウトなPCケースなら問題ないと思いますが、従来のフルサイズである275mm程度のグラフィックボードにしか対応しないPCケースは干渉する可能性があります。
「HighPoint Rocket 1608A」はボード右端に補助電源として、グラフィックボードと共通規格のPCIE 6PIN補助電源を搭載しています。公式には接続が推奨されていますが、一応、接続しなくても動作します。
「HighPoint Rocket 1608A」の拡張ボード自体や増設されたSSDへの電力供給はPCIEスロット経由とPCIE補助電源経由で常時分散するものと予想していたのですが、実際に試してみたものの『990 PRO×8』、『T705×4』、『T705×8』の組み合わせで連続読み出しの負荷をかけてもPCIE補助電源から電力を吸う様子は確認できませんでした。
メーカーによると『PCIEスロット経由の消費電力が75Wを超えると状態をトリガーとして、PCIE補助電源から電力を吸う』とのことです。
ちなみにPCIEスイッチチップなど拡張ボード自体の消費電力はPCIE4.0リンク時で20~25W程度、PCIE5.0リンク時で25~30W程度の消費電力になるようです。(SSD搭載数でも変わるので8枚搭載の場合)
消費電力測定ツールのPCIEライザーケーブルがPCIE4.0x16までしか対応できないので、そのリンク時の検証結果となりますが、Samsung SSD 990 PRO×8枚で連続読み出しをかけてPCIEスロット経由の消費電力は56W程度に達し、補助電源からは全く電力を吸っていません。
「HighPoint Rocket 1608A」は75Wの限界までマザーボードPCIEスロット経由で電力を吸うので、マザーボードの品質によっては動作不安定になる可能性もあります。一応、注意してください。
拡張カード本体にはM.2 SSDヒートシンクを兼ねたアルミニウム製ヒートシンクが基板全体を覆うように装着されています。厚みは1スロット占有です。
同社従来製品は小型ブロアーファンや50mm径のウィングブレードファン×2を搭載していましたが、「HighPoint Rocket 1608A」は80mm径の大型ウィングブレードファンをヒートシンク中央に1基だけ搭載しています。
基本的には内排気タイプの冷却構造ですがPCIEブラケットには六角形ベントが設けられており、狭い空間でも効率的に排気できる設計です。
「HighPoint Rocket 1608A」は専用ソフトウェアに非対応なので、冷却ファンのファン速度はボード上温度センサーを制御ソースとした自動制御となります。
サーバー・ワークステーション向け製品なのでファンノイズの大きさは特に問題にならないのかもしれませんが、個人ユーザーが自作PCに組み込むPCIE AICカードとしてはかなりファンノイズが大きい(50cm程度の距離で47~48dB程度)ので注意してください。
ちなみに過去にレビューした7140Aなど同社のNVMe RAIDシリーズ製品の一部では、専用ソフトウェア HighPoint NVMe RAID Managerからファン動作設定を変更可能でした。
「HighPoint Rocket 1608A」にはバックプレート等は装着されておらず、青色のPCB基板が剥き出しです。
「HighPoint Rocket 1608A」のヒートシンクは拡張カード背面のプラスネジ6カ所で固定されており、ヒートシンクの着脱は容易です。
ヒートシンクにはM.2 SSDとの接触のための大判のサーマルパッドが左右に1枚ずつ、加えて拡張カードに実装されたPCIEスイッチチップを冷却するためのサーマルパッド1枚が標準で貼りつけられています。
冷却ファンはPWM対応4PINタイプですが、接点によって通電する仕組みになっており、基板とヒートシンクの間にはケーブルがありません。この種の部品に不慣れな人でもヒートシンク着脱時にコネクタやケーブルを破損する心配がなくユーザビリティーに優れた設計です。
「HighPoint Rocket 1608A」には8基のM.2スロットがあり、各スロットにはM.2 SSDを固定するラバーラッチ用の穴が各スロットに3カ所ずつ設けられ、2242、2260、2280の3種類のM.2規格(サイズ)に対応しています。M.2 22110には非対応です。
この種のM.2 SSD増設PCIE拡張カードではスペーサー&スクリューで固定する構造が多いですが、「HighPoint Rocket 1608A」はラバーラッチを固定構造として採用しており、SSD自体はツールレスで着脱できます。
「HighPoint Rocket 1608A」はPCIE5.0x16帯域を動的分配するRAIDカードなので、各M.2スロットの最大帯域はPCIE5.0x4接続ですが、NVMe M.2 SSD側に下方互換があるのでPCIE4.0/3.0接続の製品も使用できます。一例として今回レビューに使用するPCIE4.0接続SSDのSamsung SSD 990 PROも使用でき、公式の互換性リストにも掲載されています。
「HighPoint Rocket 1608A」には基板側に貼り付けるサーマルパッドも付属しており、片面実装SSD用の厚み1.5mmと、両面実装SSD用の厚み0.75mmの2種類があります。厚み1.00mmのサーマルパッドはヒートシンク側のスペアです。
最後に「HighPoint Rocket 1608A」の拡張カード基板について軽くチェックしておきます。
「HighPoint Rocket 1608A」にはPCIE5.0x16帯域を8基のPCIE5.0x4接続M.2スロットに動的分配するため、スイッチチップに「Broadcom PEX89048」、PCIEクロックバッファに「Renesas Electronics 9ZXL1251E」などが実装されていました。
「HighPoint Rocket 1608A」のボード上には各M.2スロットの右隣に”P10~P17”のポート番号が記載されています。
Windows OSから認識される順番もボード上に記載されたポート番号と一致していました。過去にレビューした同社製品の一部でボード上の記載とOSからの認識が一致しないことがあったのですが、「HighPoint Rocket 1608A」はその点問題なく、簡単・安心です。
HighPoint Rocket 1608Aの検証機材
「HighPoint Rocket 1608A」の検証を行う環境として、AMD Ryzen 9 7950X&X670EマザーボードやIntel Core i9 14900K&Z790マザーボードで構成される検証機を用意しました。テストベンチ機の構成 | ||
CPU |
AMD Ryzen 9 7950X (レビュー) |
Intel Core i9 14900K (レビュー) |
M/B | ASUS ROG CROSSHAIR X670E HERO (レビュー) GIGABYTE X670E AORUS MASTER (レビュー) |
ASUS ROG MAXIMUS Z790 HERO (レビュー) |
システムメモリ |
G.Skill Trident Z5 Neo F5-6000J3038F16GX2-TZ5N DDR5 16GB×2=32GB (レビュー) |
|
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
|
グラフィックボード |
PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 (レビュー) MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
|
システム ストレージ |
Samsung SSD 990 PRO 1TB (レビュー) | |
OS | Windows 11 Home 64bit | |
電源ユニット |
Corsair HX1500i 2022 (レビュー) | |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
「HighPoint Rocket 1608A」はPCIE5.0x16帯域によってNVMe M.2 SSDを8枚増設可能なRAIDカードなので、今回は組み込む検証機材SSDとして、Samsungから発売中のハイエンドNVMe M.2 SSD「Samsung SSD 990 PRO 2TB」を使用しています。
Samsung SSD 990 PROは、PCIE4.0対応SSDで最速クラスの性能を発揮し、なおかつ電力効率は前モデル980 PRO比で最大50%も向上しており、7GB/s超の高速アクセスでも低発熱なところも魅力な高性能SSDです。 これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
・「Samsung SSD 990 PRO 1TB」をレビュー。性能も電力効率もトップクラス!
HighPoint Rocket 1608Aの基本的な使い方
「HighPoint Rocket 1608A」のソフト面での使い方について簡単に紹介します。近年のマザーボードではPCIEスロットの接続モードとしてx8やx16帯域のスロットで帯域をx4x4やx4x4x4x4などに分割する接続モード(PCIE Bifurcationと呼ばれる機能)が用意されています。
まず最初の注意事項として、「HighPoint Rocket 1608A」を使用する場合、PCIE分割モードではなく通常モード(x16モードやx8モード)に予め設定しておいてください。
誤って分割モードに設定したままでそのスロットに「HighPoint Rocket 1608A」を設置しているとPOSTで止まる可能性があります。
「HighPoint Rocket 1608A」は最大でPCIE5.0x16帯域による接続に対応したPCIE拡張カードですが、実際に動作しているPCIEリンクスピードとレーン数はHWiNFOというモニタリングソフト(個人ユーザーならフリー)から確認できます。
PCIE5.0でリンクしていればCurrent Link Speedが32GT/s、PCIE4.0なら16GT/sと表示されます。レーン数はCurrent Link Widthに表示されます。
PCIE5.0やPCIE4.0に対応したCPU&マザーボードの環境で、リンクスピードが最大速度にならない場合はマザーボードBIOS内のリンクモードの設定をAutoから変更してみてください。
「HighPoint Rocket 1608A」の場合だとASUS製Z790マザーボード(MAXIMUS Z790 HEROのBIOS:2202など)では下記のリンクスピード設定を行ってもPCIE4.0でリンクされてしまうように、設定を変更してもMB側の問題でダメなことはありますが。
HighPoint Rocket 1608Aの使い方について、同拡張カードはWindows 11/10環境であれば標準ドライバで正常に動作するので、ユーザーによるドライバ・ソフトウェアのインストールは必要ありません。
単純にNVMe M.2 SSDを最大8枚まで設置したPCIE拡張カードとマザーボードに装着するだけで、システムにSSDを増設できます。
M.2 SSDを最大8枚まで装着したHighPoint Rocket 1608Aをマザーボードに設置すれば、各M.2 SSDはマザーボード上のM.2スロットに増設したのと同じように普通にNVMe SSDとして認識してくれるので、あとはコントロールパネルからボリュームの作成を行えばOKと、導入は非常に簡単です。
スパン(JBOD)、ストライプ(RAID0)、ミラーリング(RAID1)については、Windowsのディスク管理からソフトウェアRAIDで構築が可能です。
Windows上でRAIDを構築するので、当然、OSをインストールするシステムストレージにはできませんが、データストレージとしては問題なく使用できます。
あと、HighPoint Rocket 1608A」上のSSDは、マザーボードUEFIからもマザーボード上M.2スロットに設置したNVMe M.2 SSD同様に認識されるので、Windows 11/10などNVMe汎用ドライバがプリインストールされたOSならブータブルなシステムストレージとして使用できます。
Rocket 7608Aは独自RAID機能に対応したバージョン
HighPointからは今回レビューしている「Rocket 1608A」と類似した仕様の製品「Rocket 7608A」も発売されています。「Rocket 1608A」と「Rocket 7608A」の違いは、HighPoint独自設計のソフトウェアRAID機能対応の有無です。
以前はHABカードとRAIDカードのように違いが分かり難い名称で分類されていたのですが、現在ではNVMe SwitchシリーズとNVMe RAIDシリーズのように機能の違いが一目でわかるようになっています。
PCIE拡張ボード自体の実装は1608Aと同じですが、おそらくファームウェア等に違いがあり、「Rocket 7608A」はHighPoint独自設計のドライバ&ソフトウェアによるRAID 0/1/10のソフトウェアRAIDの構築に対応しています。
Rocket 7608AなどHighPoint製NVMe RAIDカードを使用する上で追加のソフトウェア(ドライバとRAIDマネージャー)が必要になるのは専用RAIDマネジメントソフトウェア HighPoint NVMe RAID ManagerによるRAID構築を行う場合です。
「Driver for Windows 10/11」と「WebGUI - NVMe Manager」という2つのソフトをインストールすることになりますが、1.ドライバから2.RAIDマネージャーの順番でインストールしてください。インストール作業自体はインストーラーからポチポチクリックしていくだけなので難しいことはありません。
2つのソフトウェアをインストールするとHighPoint NVMe RAID ManagerのショートカットアイコンがデスクトップにできるのでそこからRAIDマネージャーを起動します。Microsoft Edge等を使用したWebGUIで次のような画面が起動します。
Logicalのタブでは現在、NVMe RAIDカードに搭載されているストレージ、およびボリューム作成状態の一覧が表示されます。RAIDボリュームの作成もこのページで行います。PhysicalのタブではNVMe RAIDカードのPCIE接続についてリンクスピードやリンク帯域を確認できます。
HighPoint Rocket 1608AのRAID0でベンチマーク測定
「HighPoint Rocket 1608A」に設置した8枚のPCIE4.0対応SSDによるRAID0の連続性能がどれくらいに達するかベンチマーク測定してみました。「HighPoint Rocket 1608A」は最大接続帯域としてPCIE5.0x16に対応し、PCIEスイッチチップでPCIE5.0x4接続のNVMe M.2 SSDへ動的にアクセスを配分できます。
つまり単体のアクセススピードが半分であるPCIE4.0x4接続のNVMe M.2 SSDでも最大数の8枚設置すればPCIE5.0x16の帯域を最大限に活用できるはずです。厳密ではありませんが、PCIE5.0x2接続のSSDを8枚使用してx16に束ねるようなイメージです。
実際にPCIE4.0x4接続のSamsung SSD 990 PRO 2TBを8枚使用し、RAIDを構築せずに個別ボリュームとして扱い、8枚のSSDに対して同時に読み出しアクセスを行うと各SSDはPCIE4.0x4接続として理想的な7GB/s程度の読み出し速度を発揮し、合計のアクセススピードは56~57GB/sに達しました。
上と同じように8枚のSSDへ同時に連続読み出しをかけ続けたところ、30分以上が経過して、Samsung SSD 990 PROでは最も高温になるメモコン付近の温度センサーの数字を見ても、SSD温度は80度未満に収まり、サーマルスロットリングによる速度低下もありませんでした。
「HighPoint Rocket 1608A」のファンは完全に自動制御で50cmの距離でもノイズレベル47~50dBとかなり大きいのですが、その代わりに8枚のPCIE4.0対応NVMe M.2 SSDがフルスピードを出し続けても問題なく冷やせる設計です。
いきなりRAIDを構築すると何がボトルネックになるか分からないので、まずは各SSD/単独ボリュームでテストしてみましたが、上手く各SSDで理想的なアクセススピードを発揮できることが確認できました。
続いて本題、Samsung SSD 990 PRO 2TB×8枚によるRAID0ボリュームで最大アクセススピードがどこまで伸びるかチェックしていきます。
いきなり結論から言ってしまうと、OS機能によってRAID0ボリュームを構築することで、連続読み出し56GB/sを達成できました! 連続書き込みも多少スコアが落ちますが、44GB/sをマークしています。
ただし、この数字が現実に意味があるかというと、ぶっちゃけCDMベンチ番長なスコアです。(特定用途を除いて)
56GB/sのベンチマークスコアの裏側を解説すると、上のスクリーンショットでも併記されているように、CrystalDiskMarkのベンチマーク設定をデータサイズ 1GiB、連続アクセス、ブロックサイズ 512KiB、Queue深度 8まではそれほど変な設定ではありませんが、スレッド数を12にしています。
Windows OSのソフトウェアRAID機能でRAID0、ストライプボリュームを作成した場合、CrystalDiskMarkでブロックサイズが512KiBかつスレッド数が10~16程度で読み出しのベンチマークスコアが最大になりました。
今回の検証環境(Ryzen 9 7950XとASUS ROG CROSSHAIR X670E HERO)においては確実に56GB/sのスコアがCDMで出せるわけではなく、Samsung 990 PRO 2TB×8枚でRAID0を構築し、スレッド数12などベストな設定を適用していても、50~56GB/sでスコアが変動しました。
単独ボリューム×8ではそれぞれ読み出し7GB/s程度(×8で56GB/s)で30分程度に渡り安定していたので、サーマルスロットリングではないはずです。
ソフトウェアRAIDはRAIDロジックの計算がCPU依存になるため、単コア最大ブーストクロックの高いCPUコアの割り当てが影響しているのかと思ったのですが、別のPCIE5.0 SSD x8枚だとスコアは安定したので、ちょっと原因は分かりません。
ともあれ、そういう事情なので以下、テストパターン別の測定結果を掲載していきますが、各条件で2回ずつベンチマークを行っています。
あとフォーマット時のアロケーションユニットサイズは標準の4KBに加えて128KBと512KBも試しました。全くではありませんが、あまり差は出ない感じです。
参考にCrystalDiskMarkのNVMe SSD用デフォルト設定によるベンチマーク結果です。
まずはRAIO0の連続性能に対して影響が大きいことが知られるスレッド数についてです。
今回の検証ではブロックサイズ512KiB、Queue深度 16(もしくは8)と十分に大きいスレッド数の組み合わせで56GB/sの連続読み出しを発揮できたので、ブロックサイズとQueue深度はこれに固定して、スレッド数を1/4/8/12に変えてみました。
スレッド数は4スレッドもあれば連続読み出しで50GB/s以上を発揮できます。8、12とスレッド数を増やすごとに読み出し56GB/sのような理想値が出る確率が上がる感じでした。
スレッド数を10/12/14/16に変えてみたものの、やはり50GB/s以上は確率次第な感じです。運がいいと?、連続読み出し56GB/s超のスコアが出ます。感覚的には12スレッドが一番出やすい気がしました。
続いてブロックサイズを128KiB、256KiB、512KiB、1MiBに変えてベンチマークを実行してみました。Queue深度を16、スレッド数を12に固定しています。
ブロックサイズは128KiB、256KiB、512KiBの順に読み出し速度が高速になっていきます。
1MiBにすると連続読み出し速度は若干低下しますが、連続読み出しで理想的な56GB/sを出すことのある512KiBよりも連続書き込みは高速になります。連続書き込みについては1MiB、2MiBのようにブロックサイズを大きくする方がいいようです。
最後にQueue深度を変えた検証です。ブロックサイズを512KiB、スレッド数を12に固定しています。
Queue深度についてはベンチマークスコア的には8か16が良さそう(56GB/sになる確率が)という程度で、2や4に減らしても結果はあまり変わりません。
CrystalDiskMarkでSSD実用性能に対して特に影響の大きい数字は4Kランダム性能(Q1T1)とよく言われるように、一般的なWindows上アプリケーションは複数スレッドでSSDにアクセスすることはありません。
複数のアプリケーションが同時にSSDにアクセスすれば複数スレッドになりますが、個人のPC使用でスレッド数が4~8を大きく超えることは基本的にないと思うので、例外的に影響がある(多スレッド数のベンチマーク結果に意味がある)とすれば、サーバー・ワークステーションで使用する場合でしょうか。
HighPoint Rocket 1608AとPCIEスロットの接続帯域について
「HighPoint Rocket 1608A」をPCIE5.0x16よりもリンクスピード/レーン数の低いPCIE5.0x8やPCIE4.0x16のPCIEスロットに設置しても、拡張カード上に設置された最大8基のストレージ自体は全て正常に認識されます。Rocket 7608AなどRAIDコントローラー搭載製品ならRAIDアレイの構築など基本的な機能も問題なく使用できます。
同製品に搭載されているBroadcom PEX89048などPCIEスイッチチップによって1つのPCIEスロットに複数のNVMe M.2 SSDを増設可能な拡張カードに共通する特長です。
「HighPoint Rocket 1608A」は、x16サイズスロットや右端に切り込みのあるx4サイズスロットへ物理的に設置さえできれば、内部帯域がPCIE5.0x8やPCIE4.0x16であっても使用できます。
トータルアクセススピードには実帯域依存で制限がかかるものの、最低限PCIE5.0x4帯域があれば非同時の個別アクセスでは各SSDをPCIE5.0x4対応NVMe M.2 SSDとして仕様値通りに動作させることが可能なので、空きPCIEスロットを利用したストレージ増設ソリューションとしては非常に有用な拡張カードだと思います。
「HighPoint Rocket 1608A」を使用するPCIEスロットのリンク帯域がPCIE5.0x16より低い場合のデメリットは、下のように複数のストレージへ同時アクセスが発生した時にトータルアクセススピードがPCIE5.0x8やPCIE4.0x4なら28GB/s程度、PCIE4.0x4なら7GB/s程度へ制限されるだけです。
例えばPCIE4.0x4において8つの個別ボリュームへ同時に読み込みアクセスが発生した場合、各ストレージへのアクセス速度はリンク帯域で決まる最大速度を分散させる形になります。
特定のタイミングでどれか1つのボリュームだけにアクセスが発生する場合は通常のPCIE4.0x4帯域のM.2スロットへ接続したNVMe M.2 SSDとして動作するので、PCIE4.0x4接続NVMe M.2 SSDの仕様値通りのパフォーマンスを発揮することが可能です。
(連続性能がPCIE4.0x4の7.0GB/s程度ではなく、6.5GB/s程度になっているのはX670Eマザーボードの数珠繋ぎなPCIEレーン構造の影響です)
一方、「ASRock Blazing Quad M.2 Card」、「ASUS Hyper M.2 x16 Gen5 Card」や「GIGABYTE AORUS Gen5 AIC Adaptor」のようにマザーボードのPCIE帯域分割機能(PCIE Bifurcation)によって1つのPCIEスロットに複数のNVMe M.2 SSDを増設する拡張カードも存在します。
スイッチチップ搭載型が数万円から高いものだと10万円以上と非常に高価なのに対し、マザーボードのPCIE帯域分割機能によって複数のNVMe M.2 SSDを増設するタイプの拡張カードは、高価なスイッチチップを省略しているので1万円程度で購入できるコストパフォーマンスの高さが魅力です。
ただし、PCIE帯域分割機能を利用する拡張カードのデメリットとして、組み合わせるマザーボードがPCIE帯域分割機能に対応している(BIOS上に帯域分割の設定がある)必要があること、そして増設可能な枚数が大元のPCIE帯域に依存する、といった制限があります。
PCIE帯域分割型の拡張カードでは、x16レーンのPCIEスロットであればBIOS設定から4つのPCIEx4帯域に分割することで4枚のNVMe M.2 SSDを増設できますが、x8レーンのPCIEスロットの場合は2枚のNVMe M.2 SSDしか増設できません。x4レーンのPCIEスロットとなるとただのPCIE to M.2変換ボードになってしまいます。
HighPoint Rocket 1608AとSLCキャッシュについて
2024年現在主流のTLC型NANDや一部製品で採用されているQLC型NANDを採用するSSDでは、メモリ領域の一部を高速なSLC NANDとして使用することで書き込み性能を改善する機能 SLCキャッシュが基本的にほぼ全ての製品で採用されています。「HighPoint Rocket 1608A」でそういった所謂、TLC型SSDを用いた場合のRAIDアレイの動作についても簡単に紹介しておきます。
この検証ではHD Tune Proというベンチマークソフトを使用して、100GBの大容量な連続書き込みによる書き込み速度の低下をチェックしていきます。
SLCキャッシュ容量が大きいと実証画面の作成が難しくなるので、上の性能検証で使用しているSSDとは別の、少し古い製品ですがSamsung SSD 960 EVO 250GBを例に説明していきます。
Samsung SSD 960 EVO 250GBに20GBサイズの連続書き込みを行った結果が次のようになっています。
Samsung SSD 960 EVO 250GBでは書き込みサイズが13GBに達すると書き込み総量がSLCキャッシュを超過し、書き込み速度が1500MB/sから300MB/sへとステップ状に下がっているのが確認できます。
シングルボリュームの結果を念頭に、Samsung SSD 960 EVO 250GBを4枚使用したRAID0ボリュームでこのSLCキャッシュ機能がどうなるか見ていきます。
同様に100GBサイズの連続書き込みを行ったところ、書き込み性能が1枚の時と比較して約4倍にスケーリングされているのに加えて、SLCキャッシュの容量も4倍の50GB超に増加しているかのような動作になっていることがわかります。
さらにSLCキャッシュ超過後の書き込み速度も300MB/sの4倍の1200MB/s程度となっています。
今回、性能検証の機材として使用しているSamsung SSD 990 PROも3bit-MLC NAND(所謂、TLC型NAND)の一部を高速なSLC NANDとして用いて書き込み時にそこを優先的に使用する高速化技術 Intelligent TurboWrite 2.0が使用されているので、SLCキャッシュ容量を超える書き込みが発生すると書き込み速度が低下します。
Samsung SSD 990 PROの場合は1TBモデルなら最大114GB、2TBモデルなら最大226GBをSLCキャッシュとして使用できます。(空き容量に応じて可変の最大値)
TLC型SSDやQLC型SSDはRAID0の構築によってSLCキャッシュ容量の合算が可能であり、かつ超過後の書き込み速度も枚数に応じて倍増します。
大容量データを頻繁に読み書きするクリエーター向けPCやサーバー・ワークステーションであれば「HighPoint Rocket 1608A」に搭載した複数のSSDでRAIDボリュームを構築するメリットはあると思います。
HighPoint Rocket 1608Aのレビューまとめ
最後に「HighPoint Rocket 1608A」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- NVMe M.2 SSDを8枚刺し可能なPCIE拡張カード
- マザーボードとの最大PCIEリンク帯域はPCIE5.0x16
トータルアクセスに制限はあるがPCIE5.0x8やPCIE4.0x16など低帯域でも使用可能 - 各M.2スロットはPCIE5.0x4接続に対応
- Windows 11/10環境なら汎用ドライバで動作
- PCIE4.0 SSDでも8枚のRAID0構築で連続性能では最高56GB/sを達成可能
- RAID0構築で枚数に応じてSLCキャッシュ容量や超過後の書き込み速度が倍増
- スイッチチップと8枚のSSDを冷やす大型ヒートシンク&冷却ファンを搭載
- 片面実装と両面実装に対応したサーマルパッドが標準で付属
- ボード長285mmに加えて補助電源で、長さ方向のスペース要求が大きい
- 冷却ファンは完全に自動制御で、ファンノイズはかなり大きい
- 一部MBではPCIE4.0x16の拡張カードとして認識される(おそらくMB側の問題)
- 非常に高価(北米価格で1499ドル)
「HighPoint Rocket 1608A」は、PCIE5.0x16接続の拡張ボード上に連続7GB/sのPCIE4.0 SSDを8枚使用し、RAID0ボリュームを作成することで、最大56GB/sというセンセーショナルなベンチマークスコアを叩き出すことができました。
実用面でも、個別ボリュームで合計の同時アクセススピードとして56GB/sなど理想的な性能を発揮し、数十分の負荷に対してもサーマルスロットリングによる速度低下を起こすことなく安定動作が可能でした。
NVMe M.2 SSD×8枚を搭載可能なPCIE5.0x16接続のPCIE拡張カードとしては文句のない結果です。
ただしRAID0の特性としては既知な事実ですがランダム性能は改善しない(若干低下する傾向あり)ので、ベンチマークスコアのような性能向上が体感できる用途は比較的限られています。
とはいえ、単純に1枚のSSDでは不可能な大容量ボリュームを作成できることに加えて、TLC型SSDやQLC型SSDではRAID0の構築によってSLCキャッシュ容量の合算が可能であり、かつ超過後の書き込み速度も枚数に応じて倍増するので、そういった足回り的にはRAID0にもメリットがあります。
RAID0のデメリットとして挙げられることのあるランダム性能低下も影響は軽微ですし。
個人的には高速かつコンパクトなNVMe M.2 SSDをPCIEスロット1つという限られたスペースに8つも増設できるという機能それ自体に「HighPoint Rocket 1608A」の価値を見出しています。
2.5インチSATA SSDのようにマザーボードと接続する通信ケーブルと電源ケーブルを個別に必要とするという配線上の手間も排除できるので、省スペースで高速かつ大容量なストレージを手軽に(価格は除く)増設できるところはやはり魅力です。
拡張カードにスイッチチップが実装されているためトータルアクセススピードがPCIEの実際の接続帯域を上限として制限がかかるということに目をつぶれば、PCIE3.0/4.0の低リンクスピードやx4など低レーン数のPCIEスロットに設置してもNVMe M.2 SSDの8枚刺しが可能です。
Intel第14世代CoreやAMD Ryzen 7000の環境においてグラフィックボードでCPU直結PCIE5.0x16レーンを使用したとしても、同CPU対応の上位マザーボードはチップセット経由でPCIE4.0x4帯域のPCIEスロットをサブに備えていることは多いので、「HighPoint Rocket 1608A」はM.2 SSDを8枚増設できるマザーボードとして使用できます。そういったメインストリーム向けプラットフォームで活用できる汎用性もまた魅力だと思います。
以上、「HighPoint Rocket 1608A」のレビューでした。
記事が参考になったと思ったら、ツイートの共有(リツイートやいいね)をお願いします。
PCIE5.0x16帯域のPCIEスロットに、PCIE5.0x4対応NVMe M.2 SSDを8枚増設可能なPCIE拡張カード「HighPoint Rocket 1608A」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) May 30, 2024
PCIE4.0のSamsung 990 PRO×8枚でも56GB/sを達成できるか徹底検証。https://t.co/Y6ha9ffA8F
関連記事
・おすすめSSDまとめ。QLC/TLCやPCIE4.0/5.0など最新SSD事情を解説・SSDレビュー記事の一覧へ <NVMe SSD><M.2 SSD><SATA SSD>
・PS5増設にオススメなM.2 SSDを解説。ヒートシンク搭載モデルも!
・「WD Blue SN580 NVMe SSD 1TB / 2TB」をレビュー
・「Crucial T500 1TB / 2TB」をレビュー
・「Nextorage NE1N 8TB」をレビュー。PS5にも使える超大容量M.2 SSDを徹底検証
・「WD_BLACK SN770 NVMe SSD 1TB」をレビュー
・「Crucial T705 2TB」をレビュー。PCIE5.0x4理想スペックなSSDを徹底検証
・「Solidigm P44 Pro 1TB」をレビュー。完全版SK Hynix Platinum P41か!?
・「Samsung SSD 990 PRO 1TB」をレビュー。性能も電力効率もトップクラス!
・「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 1TB / 2TB」をレビュー
・【4TBで5万円台】 Crucial P3 PlusでPS5のロード時間を比較してみた
・「ASRock Blazing Quad M.2 Card」をレビュー。連続40GB/s越えなるか!?
(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
スポンサードリンク