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H710iやH510 EliteなどNZXT New HシリーズPCケースへ自然に溶け込むフラットな外観や、NZXT CAMに対応したGRID+ V3とHUE 2がマザーボード上に統合されシステム的にも同社製品と高い親和性を備えたIntel Z490マザーボード「NZXT N7 Z490 Matte Black(型番:N7-Z49XT-B1)」をレビューします。
見た目に大きく影響するPCパーツをオールNZXTで揃えるための最後の1ピースとなるマザーボードが、NZXT CAMによってどんなカスタマイズ・ライトアップを可能にするのか、そして現在マザーボード市場を占める主要4社の製品並みにCore i9 10900Kを運用できるのか徹底検証します。
製品公式ページ:https://www.nzxt.com/products/n7-z490-matte-black
マニュアル:https://nzxt-site-media.s3-us-west-2.amazonaws.com/uploads/download/attachment/877/N7_Z490_Manual_100820-V13-web.pdf
NZXT N7 Z490 レビュー目次
1.NZXT N7 Z490の外観・付属品
2.NZXT N7 Z490の基板上コンポーネント詳細
3.NZXT N7 Z490の検証機材
4.NZXT N7 Z490のBIOSについて
5.NZXT N7 Z490のOC設定について
6.NZXT CAMのセットアップ方法と基本的な使い方
7.NZXT CAMのファンコントロール機能について
8.NZXT CAMのイルミネーション制御機能について
9.NZXT N7 Z490の動作検証・OC耐性
10.NZXT N7 Z490のレビューまとめ
【機材協力:株式会社タイムリー】
【注意事項】
同検証は2020年12月上旬に行っておりNZXT N7 Z490のBIOSはver1.10を使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:https://www.nzxt.com/products/n7-z490-matte-black
【2020年12月19日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:1.10で検証
NZXT N7 Z490の外観・付属品
まず最初にNZXT N7 Z490の外観と付属品をチェックしていきます。NZXT N7 Z490のパッケージはキャラメル箱型の外スリーブに茶箱の内箱というマザーボードの梱包としては珍しい形式です。
茶色の内パッケージの蓋を開くと、透明プラスチックスペーサーに安置されたマザーボードが現れます。マザーボードの下方向(下写真の左側)のスペースには付属品が収められています。
「NZXT N7 Z490」の付属品はSATAケーブル4本、WiFiアンテナ、M.2 SSD固定ネジ、マニュアルです。
マザーボード全体像は次のようになっています。
NZXT N7 Z490はATXフォームファクタのマザーボードで、マットブラックのPCB基板を背景にしてブラックもしくはホワイトのアーマーが搭載されています。
「NZXT N7 Z490」には今回レビューするマットブラックモデル(型番:N7-Z49XT-B1)に加えて、メタルアーマーが白色を基調としたマットホワイトモデル(型番:N7-Z49XT-W1)もラインナップされています。
「NZXT N7 Z490」にはマザーボード下側全体を覆う金属製カバーが搭載されています。金属製カバーの塗装はNZXT製PCケースNew Hシリーズの外装を想起させるマットで高品位な質感です。
「NZXT N7 Z490」のブラックモデルではリアI/OカバーとVRM電源クーラーもやはりNew Hシリーズを彷彿とさせるマットブラック一色の外観です。VRM電源クーラーのアルミニウム製ヒートシンクには水玉スリットの金属製プレートが装着されていることを除けば装飾もなくシンプルなデザインです。
前モデルN7 Z390ではカバー下のヒートシンクは非常に簡素でしたが、「NZXT N7 Z490」もヒートパイプは内蔵されていないものの、重厚かつ大型なアルミニウム塊型ヒートシンクがVRM電源クーラーとして採用されています。
「NZXT N7 Z490」にはCPUコア向け8フェーズ、iGPU向け2フェーズの10(8+2)フェーズVRM電源回路が実装されています。
「NZXT N7 Z490」はOEM元がASRock製であることが話題になっていますが、ASRock製マザーボードの中ではZ490 Steel LegendやZ490 Extreme 4と同等のVRM電源回路です。
対応CPUで最上位となる10コア20スレッドCore i9 10900Kの定格動作のみならず、電力制限無効化などオーバークロックを行っても安定した電力供給が可能かどうか、レビュー後半のOC検証で詳しくチェックしていきます。
「NZXT N7 Z490」では、PWMコントローラーとして最大12フェーズ対応のIntersil製「ISL69269」が使用されています。MOS-FETにはハイサイド/ローサイドMOS-FETとドライバICをワンパッケージし、低発熱で定評のあるDr. MOSで、50A対応に対応するVishay Siliconix製「SIC654A」が使用されています。
定格でもTDP125W、短期間電力制限では200WクラスのCPU消費電力が発生するCore i9 10900Kにも対応すべく、「NZXT N7 Z490」のEPS電源端子は8PIN+4PINが実装されています。
「NZXT N7 Z490」には一体型リアI/Oバックパネルも採用されています。PCケースにパネルを装着する作業は固くて装着し難かったり、忘れてしまうこともあるのでマザーボードに統合されているのは嬉しい機能です。
リアI/Oには最新のUSB3.1 Gen2規格に対応したUSB端子としてType-A端子とType-C端子の2基が設置されています。そのほかのUSB端子については2基のUSB3.0端子と2基のUSB2.0端子が搭載されています。
ネットワーク関連では、ASRock製ゲーミングマザーボードでも採用されている、一般的なギガビットイーサの2.5倍の帯域幅を実現するRealtek製2.5Gbイーサ(RTL8125BG)を搭載しています。
さらに次世代規格WiFi6に対応した無線LAN(Intel AX200)も搭載しています。接続規格としてはWi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac/ax、2.4/5GHzデュアルバンド、最大通信速度2400Mbps、Bluetooth 5.1に対応しています。リアI/Oには無線モジュールのアンテナ端子が設置されているので付属のアンテナを接続できます。
NZXT N7 Z490の基板上コンポーネント詳細
続いて「NZXT N7 Z490」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。システムメモリ用のDDR4メモリスロットはCPUソケット右側に4基のスロットが設置されています。固定時のツメはマザーボード上側(上写真の右側)の片側ラッチとなっています。グラフィックカードのあるPCIEスロット側はラッチがないので干渉の心配もありません。
ATX24PIN周りで「NZXT N7 Z490」の外装と電源コネクタの干渉に若干注意が必要です。電源コネクタの20PINと4PINを結合する部分(ロックピンなど)の出っ張り部分が干渉する可能性があります。Corsair HX1200iなどCorsair製電源ユニットの多くで干渉が発生するとのこと。
干渉が発生する場合は、AINEXやSilverStoneから発売されているATX24PIN電源延長ケーブルを使用することで干渉を回避できます。
グラフィックボードなどを設置するPCIEスロットは上から順に[x1、x16、N/A、N/A、x16、x1、x1]サイズのスロットが設置されています。上段のプライマリグラフィックボードを2段目のスロットに配置することで、大型ハイエンド空冷CPUクーラーとグラフィックボードの干渉を回避しています。
5段目に設置されたセカンダリのx16サイズスロットはPCH(チップセット)に接続されておりPCIE3.0x4帯域として使用できます。3基のx1サイズスロットはPCIE3.0x1です。PCIEスロットには排他利用はありません。
NZXT N7 Z490にはSATAストレージ用の端子はSATA3_1~4の4基が搭載されています。SATA3_1~4はIntel Z490チップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/5/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。
高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットは、PCIEスロット間に計2基が設置されています。上側M.2スロットのM2_1はNVMe(PCIE3.0x4)接続とSATA接続のM.2 SSD両方に対応していますが、下側M.2スロットのM2_2はNVMe(PCIE3.0x4)接続のM.2 SSDのみに対応します。いずれも排他利用はありません。
「NZXT N7 Z490」のM.2スロット上にはカバーが装着されていますが、表面は金属製なものの、背面はプラスチック製となっておりM.2 SSD用ヒートシンクとしては機能しません。ここはSSDヒートシンクになるように設計しておいて欲しかったところ。
マザーボードの右端には、内部USB3.1 Gen2ヘッダーと内部USB3.0ヘッダーが実装されています。内部USB3.0ヘッダーはマザーボード基板に平行な端子になっています。
「NZXT N7 Z490」のマザーボード下端には内部USB2.0ヘッダーが3基も設置されていました。NZXT CAM対応製品には「NZXT GRID+ V3」、「NZXT Hi スマートデバイス」、「NZXT Hue 2」など内部USB2.0ヘッダーで接続する機器が多いですが、内部USB2.0ヘッダーが3基もある「NZXT N7 Z490」なら余裕で対応できます。それでも不足する場合はUSB2.0ヘッダー増設ハブの「NZXT INTERNAL USB HUB」や「Thermaltake H200 PLUS」がおすすめです。
「NZXT N7 Z490」はオンボードサウンドには、ハイエンドゲーミングマザーボードで幅広く採用されている高音質オーディオ「Realtek ALC1220」が採用されていました。既存のゲーミングマザーボードと同様に「NZXT N7 Z490」もサウンドボード要らずで高音質なサウンドが楽しめると思います。
マザーボード基板上にはOCerのみならず一般自作erにとっても組み立て中の動作確認に便利なオンボードのスタートスイッチとリセットスイッチが実装されています。またリアパネルにはCMOSクリアのハードウェアスイッチ実装されておりOC設定に失敗してもPCケースを開くことなくBIOSの設定をクリアできるので手動でOCを行うユーザーにとても便利です。
「NZXT N7 Z490」では冷却ファンを接続するためのファン端子として、PWM対応4PINファンコネクタがマザーボード上に計8基設置されています。7基のファン端子はCPUファン端子とウォーターポンプ(AIO_PUMP)ファン端子、その他のケースファン(SYS_FAN)端子5基に分かれています。
NZXT N7 Z490の検証機材
NZXT N7 Z490を使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。NZXT N7 Z490以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 10900K (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ |
G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) |
CPUベンチ用 ビデオカード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 980 PRO 500GB (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 980 PRO 500GB」を使用しています。Samsung SSD 980 PROは、PCIE4.0対応によって連続アクセススピードを最大で2倍に飛躍させただけでなく、ランダム性能の向上によってSSD実用性能においても前世代970 PROから大幅な向上を果たし、PCIE4.0アーリーアダプターなPhison PS5016-E16採用リファレンスSSDよりも高速なので、これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
・「Samsung SSD 980 PRO 1TB」をレビュー。堂々の最速更新
システムメモリの検証機材には、XMP OCプロファイルによるメモリ周波数4000MHzかつメモリタイミングCL15の超低レイテンシなオーバークロックに対応する8GB×4=32GBのメモリキット「G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK」を使用しています。かなりピーキーなOC設定なので一般にはオススメし難い製品ですが。
・「G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK」をレビュー
高級感のあるヒートシンクや8分割ARGB LEDを搭載してデザイン面でも優れる「G.Skill Trident Z Neo」シリーズは当サイトでも特にオススメしているDDR4メモリです。第3世代Ryzen向けにリリースされた製品ですが、3200MHz/CL14や3600MHz/CL16といった定番スペックがラインナップされていて、Intel第10世代Comet Lake-S CPU&Z490マザーボード環境でも高いパフォーマンスを発揮できるので、選んで間違いのないオススメなOCメモリです。
・「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」をレビュー
360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
・「Thermal Grizzly Carbonaut」はCore i9 9900Kを冷やせるか!?
以上で検証機材のセットアップが完了となります。
NZXT N7 Z490のBIOSについて
NZXT N7 Z490を使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。「NZXT N7 Z490」はASRock製マザーボードというだけあって、デザインはNZXT風にアレンジされていますが、BIOSメニューのレイアウトはASRock製品と完全に同じでした。
BIOSに最初にアクセスすると「NZXT N7 Z490」ではイージーモードというグラフィカルな画面が表示されます。パッと見の見栄えは良いのですが詳細モードのほうが結局のところ使いやすいので「F6」キーを押してサクッと詳細モード移るのがおすすめです。
次回起動以降に詳細モードを最初から表示する場合は、「アドバンスド - UEFI設定スタイル」の項目で起動時のモードは指定できます。
NZXT N7 Z490のBIOSの詳細モードは、従来通りの文字ベースBIOSメニューになっています。画面上に表示されている「メイン」「OCツール」「詳細」などメニュータブから左右カーソルキーで各設定ページが表示できます。画面右下の「English」と表記されたボタンから言語設定が可能です。
NZXT N7 B550のBIOSは日本語に対応しており、OEM元であるASRock製の最新モデル同様に、翻訳は正確です。
NZXT N7 Z490のBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出はトップメニュータブ最右端の「出口」から行えます。特定のブートデバイスを指定してBIOSから退出するBoot Override機能もあります。
BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルを公式DLページからダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://www.nzxt.com/products/n7-z490-matte-black
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、トップメニュータブ「ツール」の「Instant FLASH」を選択します。「Instant FLASH」を選択すると自動でUSBメモリ内から総当たりでアップデートファイルを探索してくれます。自動探索は便利なのですが、反面、探索方法は総当たりなのでファイルが多いと時間がかかるため、アップデート時はファイルの少ないUSBメモリを使用するのがおすすめです。
USBメモリからアップデートファイルが見つかると更新するかどうか尋ねられるので、更新を選択すればあとは自動でBIOSがアップデートされます。
ブートとOSインストール周りについて紹介します。とはいってもNZXT N7 Z490のブート回りは下画像のように非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。
OSのインストールも「起動順序 #1」に「UEFI 〇〇」というOSインストールメディアを設定して保存&退出でOKです。出口(Exit)のメニューから「UEFI 〇〇」をブートオーバーライドで指定して起動しても同様にOSのインストールデバイスから起動可能です。
ちなみにWindows10の製品パッケージに付属するUSBメモリではUEFIで認識できないトラブルが発生することがあるようなのでそういうときはこちらの記事に従ってMS公式ツールを使用して適当なUSBメモリでOSインストールメディアを作成すると上手くいきます。
BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、NZXT N7 Z490のBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。
「NZXT N7 Z490」のファンコントロール機能について紹介します。
NZXT N7 Z490のファンコントロール機能ではマザーボード上に設置されている各ファン端子について個別に設定が可能です。
「標準/サイレント/パフォーマンス/最大速度」の4種類のプリセット設定に加えて、個別に温度・ファン速度の比例カーブを指定できる「カスタマイズ」の5つのモードを使用できます。
「カスタマイズ」モードでは比例カーブを決める温度とファン速度を4つ指定できます。CPUファンはCPUソースで固定ですが、ケースファン端子はソースとなるセンサーにCPU温度とマザーボード温度の2つから選択できます。外部温度センサーには非対応です。
またカスタマイズモードでは、下限温度以下で冷却ファンを停止させる所謂セミファンレス機能を実現する「Allow Fan Stop」の設定が表示されます。
「ファン Step Up/Down」はソース温度の変化に対するファン速度変化の遅延について設定できます。CPU温度等の瞬間的な乱高下でファン速度が変化しないように調整することが可能です。
NZXT N7 Z490のOC設定について
NZXT N7 Z490を使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
NZXT N7 Z490などASRock製Z490マザーボードのオーバークロック設定はOCツールというトップメニューの項目にまとめられ、下位グループとして「CPU設定」「DRAM設定」「電圧設定」の3種類が用意されています。
CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
コアクロックはコア数に対して各コアに最大動作クロック(BCLKに対する倍率)を指定できます。「コア0:コア1:コア2:コア3」を倍率として、例えば「45:43:43:42」のようにバラバラに指定した場合、4つのコアのうち1つに負荷が掛かる場合は4コアのうち1つが45倍動作、2つと3つの場合は43、4つの場合は42となります。
NZXT N7 Z490ではCPUクロック動作倍率の設定モードとして、マザーボードのお任せとなる「自動(Auto)」、全コアの倍率を同じに設定する「すべてのコア(Sync All Cores)」、負荷のかかっているコア数によって最大動作倍率を設定する「コア毎(Per Core)」、CPUコア1つ1つに個別に最大動作倍率を指定する「Specific Per Core」の4つのモードが存在します。
ユーザーがCPUのOCを行う場合は通常、全コアの最大倍率を一致させると思いますが、同マザーボードの場合は「すべてのコア(Sync All Cores)」を選択して、「All Core: 50」と設定することでデフォルトのBCLK(ベースクロック)が100MHzなのでその50倍の5.0GHzで動作します。
「コア毎(Per Core)」モードでは負荷がかかっているコア数に対して最大動作倍率を設定可能です。
「Specific Per Core」モードでは各コアに対して個別に指定して最大動作倍率を設定できます。
Intel第10世代CPUは、従来ではオフセットやアダプティブのような大雑把な調整しか不可能だったV/Fカーブ(動作周波数と動作電圧の関係)を細かく調整できるようになっています。NZXT N7 Z490では電圧設定の項目の中に「V/F Point Offset」の名前で同設定が配置されています。
現時点では既定の8点の周波数に対して設定されたCPU個体毎のストック電圧に対して、+/-のオフセット電圧を設定できます。設定可能なポイントはCPU毎に異なりますが、Core i9 10850Kの場合は800MHz、2500MHz、3500MHz、4300MHz、4800MHz、5100MHz、5200MHz、5300MHzに対してmV単位でコア電圧オフセット値を指定できます。
キャッシュ動作倍率は「CPUキャッシュレシオ(CPU Cache Ratio)」から変更可能です。CPUコアクロック同様にベースクロックに対する動作倍率でキャッシュの動作周波数を設定できます。
NZXT N7 Z490はベースクロック(BCLK)を90MHz~1000MHzの範囲内で変更可能です。
続いてコア電圧の調整を行います。
Intel第10世代CPUではCPUコアとキャッシュへの電圧は共通なので、CPUコアクロックやキャッシュクロックのOCに関連する電圧設定としては、NZXT N7 Z490では「CPUコア/キャッシュ電圧(CPU Core/Cache Voltage)」の項目を変更します。
NZXT N7 Z490ではCPUコア電圧の設定モードとして、自動設定の「自動(Auto)」、CPUに設定された比例値にオフセットかける「オフセット」モード、マニュアルの設定値に固定する「固定」モード、の3種類が使用できます。
NZXT N7 Z490でCPUコア/キャッシュクロックのOCを行う場合、CPUコア電圧の設定については設定が簡単で安定しやすいので固定値を指定する固定モードがおすすめです。10コア20スレッドのCore i9 10900KやCore i9 10850KをOCする場合、CPUコア電圧の目安としては最大で1.300~1.350V程度が上限になると思います。
CPUコア電圧モードについて簡単に説明すると、オフセットモードやアダプティブモードはCPU負荷に比例して電圧が設定されており、低負荷時は電圧が下がるので省電力に優れるのですが、OCをする場合はマザーボードによって挙動に差があり安定する設定を見極めるのが難しいので、個人的にはオフセットやアダプティブは定格向け、OCには固定値適用の固定モードを推奨しています。
仮にOCでオフセットやアダプティブを使う場合も最初はコアクロックに対して安定する電圧を見極める必要があるので、まずは固定モードを使用します。
ちなみにマザーボードにより対応しているモードは異なりますが、CPUのオーバークロックに付随するコア電圧のモードの概略図は次のようになっています。
またコアクロックを高く設定する時に追加で変更するといい項目として「ロードラインキャリブレーション」があります。ロードラインキャリブレーションはCPU負荷時の電圧降下を補正してOCを安定させる機能です。「NZXT N7 Z490」では補正の強度として自動およびレベル1~レベル5の6段階が用意されており、レベル1が補正最大で、レベルの添え字が小さいほど電圧降下の補正は強くなりOCは安定しやすくなりますが発熱も大きくなります。レベル2かレベル3あたりから最初に使っておいて、ストレステストのCPU温度をチェックしながら補正を調整していくのがおすすめです。
またCPU設定の下の方には「短時間電力制限」「長時間電力制限」という2つの電力制限機能があり、電力制限がかかる閾値(単位はW)と電力制限がかかるまでの時間を設定できます。電力制限がかかるとその指定電力内に収まるようにコアクロックに制限がかかります。
デフォルトの状態では「Auto」になっていますが、NZXT N7 Z490では手動OCを行う場合、パワーリミットが掛からないように勝手に設定してくれるので放置でも問題ありません。基本的に一定消費電力以内に収めるための省電力機能(+若干のシステム保護機能)と考えてください。
メモリのオーバークロックについても簡単に紹介しておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
一方でXMPによるメモリOCは上の手順によるOCをメーカー側がすでに行い動作確認をしているので、メーカーが動作確認を行ったOCプロファイルを適用するだけで簡単にメモリをオーバークロックできます。
メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、NZXT N7 Z490では正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動で2133MHzや2400MHzなど定格となるSPDプロファイルの緩い設定で再起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。
NZXT N7 Z490ではから「XMP設定の読み込み」からXMPモードを選択することでOCメモリに収録されたXMPプロファイルによるメモリのオーバークロックが可能です。
「XMP設定の読み込み」の設定値が自動(Auto)になっている場合は、使用するメモリにSPD情報として収録されている動作クロック2133~2666MHzなどのメモリ周波数およびタイミングによる定格動作となります。
手動でメモリ周波数を設定する場合は「DRAM周波数(DRAM Frequency)」の項目でプルダウンメニューから最大8400MHzまでの動作クロック(倍率)設定が可能です。
メモリ周波数もBCLKに対する倍率で動作周波数が決まっているので、BCLKを標準値の100MHzから120MHzに上げると、44倍設定時の動作周波数は4000MHzから5280MHzに上がります。
メモリタイミングの個別打ち込み設定も可能です。メモリタイミングを手動で設定する場合は基本的には「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS / RAS Precharge (tRCD / tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な3タイミングと、加えて「Refresh Cycle Time (tRFC)」と「Command Rate:1 or 2」の5つ以外はAutoのままでいいと思います。
DDR4メモリについては3000MHz以上にOCする場合は1.300~1.350V、3800MHz以上にOCする場合は1.370~1.400Vに上げる必要があります。メモリをOCする場合は最初から1.350V以上にDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。
数世代前の過去のIntel CPUではメモリ周波数を3200MHz以上にOCする場合は「VCCSA(CPU SA Voltage)」を盛るとメモリOCが安定したのですが、Intel第10世代CPU環境における「VCCSA」の影響は今のところよくわかりません。Auto設定で安定しない場合は昇圧を試してみても良いかもしれません。
また今のところZ490環境では現象を確認できていませんでしたが、メモリのオーバークロックでPCIE拡張カードの検出不可やオンボードUSB端子同士の干渉などが発生する場合は「電圧設定」にある「VCCIO(CPU VCCIO Voltage)」や「チップセット電圧(PCH Core Voltage)」を盛ると安定するかもしれません。
NZXT CAMのセットアップ方法と基本的な使い方
「NZXT N7 Z490」はNZXT製品の統合ソフトウェア「CAM」から様々な操作を行えます。「CAM」は公式サポートページからダウンロードできます。CAMのリニューアルの関連で2020年12月現在はまだダウンロードページが日本語ローカライズされていませんが、下のリンク先から「Free Download」を選択すれば簡単にソフトウェアインストーラーのダウンロードが可能です
NZXT CAMダウンロード:https://www.nzxt.com/camapp
上のページからダウンロードしたインストーラーを起動すれば後は自動で最新版の「NZXT CAM」をダウンロードし、PCへインストールしてくれます。
インストールが完了したら「CAM」を起動します。初回起動時はアカウントへのログインウィンドウが表示されますが、アカウントがない場合は小さく書かれているゲストアカウントでの使用を選択すればアカウント登録せずに使用することもできます。2020年12月現在、アカウントを使用することで解放される機能等はないので、ゲストアカウントでいいと思います。
「NZXT CAM」はKraken X2シリーズ登場時の第1世代から複数のメジャーアップデートを経て、2020年現在では第4世代になりUIがよりシンプルで使いやすく、動作も軽快になっています。基本的なデザインはパステルカラーなフラットデザインが踏襲されていますが、カラーリングがメーカーカラーのホワイト&パープルのツートンカラーになっています。
NZXT CAMの左側にはタブメニューが表示されており、「PC Monitoring」「システム仕様」「ゲーム」「照明」「オーバークロック」「冷却」「電力」「オーディオ」「設定」の9個のページが用意されています。 「照明」「冷却」「電力」「オーディオ」の4項目については対応機器が接続されている場合に、各種設定やモニタリングを行うことができます。
「NZXT CAM」は日本語UIに対応しています。もしも自動で日本語にならない場合は、設定ページから言語を変更できます。
「CAM」のUIカラーについては標準のホワイト&パープルに加えて、設定画面からDark Modeを選択することによってブラック&パープルに切り替えることができます。
「CAM」はMSI AfterBurner&RivaTunerなどで有名なゲーム中のオーバーレイモニタリング機能にも対応しており、設定ページの「オーバーレイ」タブで設定ができます。
NZXT CAMのファンコントロール機能について
NZXT CAMからは今回レビューしている「NZXT N7 Z490」のファン端子以外にも、簡易水冷CPUクーラーKRAKEN Z3シリーズ、ファンコントローラーNZXT GRID+ V3などシステムに接続されているファン・ポンプを制御できます。「NZXT N7 Z490」ではマザーボード上に7基のファン端子が実装されており、7チャンネルのファン制御アイコンが表示されています。
BIOS上にもファン制御機能がありますが、7基のファンはいずれもBIOSとNZXT CAMの制御に対応しており、NZXT CAMのWindowsアプリケーション起動中はCAMによる制御が優先される仕様です。
「NZXT CAM」でファン・ポンプを制御するには、左側タブの「冷却」を選択して設定画面を開きます。
「NZXT CAM」のファン制御ページを開くと、トップにマスタープロファイル(各ファン端子の制御プロファイルの組み合わせ)を選択、保存するメニュー、システムに接続されたファンの速度やシステムの温度やノイズレベルを表示するタイル、個別のファン設定が順番に表示されます。
システムに接続されたファン制御を静音もしくはパフォーマンスのプリセットで統一したり、固定デューティ比を指定する既定のマスタープロファイル、各自で設定したカスタムのマスタープロファイルはプルダウンメニューから簡単に切り替えることができます。
ファン毎に任意のファン制御設定を適用した場合、「名前を付けて保存」からカスタムのマスタープロファイルを作成できます。
NZXT CAMに対応した各種ファン・ポンプ端子は、「静音」と「パフォーマンス」の2つの既定プリセット、ファン速度デューティ比を指定する「固定」、任意のファンカーブを設定する「カスタム」の4つのモードで制御できます。
ファン制御が温度に依存するファンカーブの場合、ファン制御ソースとしてCPU温度とGPU温度の2種類を選ぶことできます。簡易水冷CPUクーラーNZXT KRAKEN Z3/X3シリーズのファン・ポンプを制御する場合はソース温度に水温も加わります。
「静音」と「パフォーマンス」の2つの既定プリセットのファンカーブ設定は次のようになっています。
「固定」では温度に依らずファンを一定速度で回すことができます。
「カスタム」ではソース温度に対して20度から95度までを5度刻みにして、16頂点のファンカーブを任意に設定できます。
「NZXT N7 Z490」はセミファンレス機能にも対応しており、カスタムモードにおいてファン速度を0%にすると、ファン速度0%に指定されている最大温度よりもソース温度が低い時にファンを完全に停止させることができます。
NZXT CAMのイルミネーション制御機能について
「NZXT N7 Z490」にはNZXT HUE 2と同等の機能を備えたライティングコントローラーが内蔵されており、専用ソフトウェアNZXT CAMから、NZXT Aer RGB 2やNZXT HUE 2 LED StripsなどNZXU HUE2対応LED機器のライティング制御を行うことができます。NZXT N7 Z490ではマザーボード備え付けLEDイルミネーションは搭載されていませんが、NZXT Aer RGB 2やNZXT HUE 2 LED Stripに対応した独自規格のLEDヘッダーが2基実装されています。
HUE 2やNZXT N7 Z490では1チャンネル当たりにデイジーチェーン接続可能な機器の制限は「合計LED球数が40以下」のみとなっており、Aer RGB 2やHUE 2 LED Stripsを1つのチャンネルに混在させることができます。
なお同コントローラー(第2世代)は第1世代のNZXT製LED機器にも対応していますが、第1世代のLED機器は1チャンネルに異なる種類の機器を混在させることはできません。
「NZXT N7 Z490」に搭載された独自LED端子には、「NZXT Aer RGB 2 120/140」、「NZXT HUE 2 LED Strips」、「HUE 2 Cable Comb」などHUE2互換LED機器を接続できます。
HUE 2互換LED機器について詳しくはこちらの記事で紹介しています。NZXT Aer RGB 2 120/140やNZXT HUE 2 LED Stripsなど個別機器について詳細が気になる方はこちらを参照してください。
加えて主要4社のマザーボードにも採用されているRGB対応4PIN汎用LEDヘッダーやアドレッサブルRGB対応VD-G型3PIN汎用LEDヘッダーが実装されています。
NZXT N7 Z490に実装されたこれら4基のLEDヘッダーは、2基の汎用LEDヘッダーも含めて、全てNZXT CAMからライティング制御が可能です。
「NZXT CAM」でHUE 2対応機器のライティング制御を行うには、トップメニューの「照明」を選択して設定画面を開きます。
画面右上の「テーマパックを選択する」を選ぶと、テーマパックと呼ばれる既定プリセットによって、システムに接続された全てのLEDチャンネルを同期設定させることができます。
なお「NZXT N7 Z490」のLED端子に接続されたLED機器はPCに通電後、NZXT CAMを起動するまでは、全LEDが白色に発光するNZXT Whiteのテーマパックが適用されます。過去に設定した任意のライティング制御を適用するためには、システム起動後に1度は必ずNZXT CAMを起動する必要があります。
テーマパックは既定の10種類に加えて、ユーザーが任意のカスタムテーマパックを作成することができます。LEDチャンネルに対して個別に設定を行い、「テーマパックを選択する」を選ぶとテーマパックの保存に関して表示されます。ユーザー作成したテーマパックは各LEDチャンネルに対して任意に設定した内容をまとめた発光パターンのカスタムプロファイル的なものになります。
現在テーマパックを表示するサンプルイメージの下には、システムに接続されたLEDチャンネルの一覧が表示されます。各LEDチャンネルに対して個別に任意のライティング設定を適用できます。
LEDチャンネルをクリックすると、そのチャンネルに関する発光カラーや変化スピード等の詳細設定メニューが展開されます。
上のスクリーンショットを見てわかるように「NZXT N7 Z490」や「NZXT HUE 2」など第2世代コントローラーでは1つのLEDチャンネル内にAer RGB 2やHUE 2 LED StripsといったHUE2対応LED機器を複数種類混在させることができます。
下は第1世代コントローラーのHUE+ですが、Aer RGB初期モデルなど第1世代のLED製品は1つのチャンネルに1種類の機器しか接続できませんでした。これだけでもHUE 2対応機器は配線やライティング制御の自由度が広がっていることがわかります。
LEDチャンネルの右側にあるプルダウンメニューから、そのLEDチャンネルに適用する発光パターンが選択できます。選択可能な発光パターンは、固定発光のような一般的なものから、マーキーやスーパーレインボーのようなアドレッサブルタイプ、CPU温度やGPU温度に比例して変化、音声出力に依存など20種類以上もあり非常に豊富です。
固定、呼吸、フェージングなど発光カラーを任意に設定できるものについては、「LED色をカスタマイズ」のスライドスイッチをONにすると、個別LEDアドレスに対して発光カラーを完全に任意の設定が行えます。
参考までに、「NZXT N7 Z490」と同じくNZXT HUE2互換のLEDコントローラーNZXT RGB & Fan Controllerで過去に作成したビルド写真を掲載しておきます。NZXT HUE 2互換機器のアドレッサブルRGB LEDイルミネーションを使用すると自作PCをこんな感じでライトアップできます。
NZXT N7 Z490の動作検証・OC耐性
BIOS周りの管理人的に気になるところの紹介はこのあたりにしてNZXT N7 Z490を使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。「NZXT N7 Z490」にCore i9 10900Kを組み込んだ場合のBIOS標準設定における動作について、CPU動作倍率は1~8コア負荷順で[53, 51, 51, 50 , 50, 49, 49, 49]でIntel公式の定格動作倍率ですが、電力制限については長期間電力制限と短期間電力制限の両方が標準では無効化されています。NZXT N7 Z490にCore i9 10900Kを組み込むと、Intel公式の仕様値であるTDP125Wを大きく上回る消費電力で動作します。
「NZXT N7 Z490」のBIOS標準設定ではCore i9 10900KはTDP125Wを超過する動作になりますが、下のようなBIOS設定を行えば、長期間電力制限95Wを適用できるので、TDP125WのCPUとして運用が可能になります。
続いてNZXT N7 Z490を使用した場合のCPUとメモリのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
Core i9 10900KのOC設定は細かい手動設定を行わず単純に電力制限を無効化、またメモリOCについては「メモリ周波数:3600MHz」「メモリ電圧:1.350V」「メモリタイミング:16-16-16-36-CR2」としています。
「NZXT N7 Z490」の環境(BIOS:ver1.10)において、メモリ周波数とメモリタイミングのみのカジュアル設定でメモリ周波数3600MHz、メモリタイミング:16-16-16-36-CR2で安定動作が確認できました。
メモリ自体のOC耐性が十分であれば、3200MHz/CL14や3600MHz/CL16などハイパフォーマンスOCメモリの代表的な速度はXMPプロファイルはもちろんユーザーによるカジュアル設定でも安定動作する程度に、「NZXT N7 Z490」のセカンド・サードタイミングのオートフィル精度は優秀です。
従来モデルではカジュアル設定で3200MHzや3600MHzの起動すら難しかったので、メモリOC面で近年の主要4社に並んだのは「NZXT N7 Z490」を評価する上で特に大きいポイントだと思います。
今回のOC検証ではメモリの検証機材として、XMP OCプロファイルによるメモリ周波数4000MHzかつメモリタイミングCL15の超低レイテンシなオーバークロックに対応する8GB×4=32GBのメモリキット「G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK」を使用しています。
「NZXT N7 Z490」では、4000MHz/CL15のXMPプロファイルを適用、もしくはメモリ周波数とメモリタイミングのみのカジュアル設定で4000MHz/CL17にOCしてもPOSTエラーとなりBIOS設定が自動的にクリアされて再起動でした。
「NZXT N7 Z490」のOEM元であるASRock製品も含めて、一部のZ490マザーボードでは同OCプロファイルやメモリ周波数4000MHzの正常動作を確認しているので、今後のBIOSアップデートで上手く対応して欲しいところです。
続いてスマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE Pro」(レビュー)を使用してNZXT N7 Z490のVRM電源温度をチェックしていきます。
CPUへ電力供給を行うVRM電源に負荷をかけるためCPUに対してストレステストを実行しますが、その検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間7分、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)でAviutl+x264を使って2並列のエンコードを行い、30分以上に渡って負荷をかけ続けました。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
Intel Core i9 10900Kの電力制限無効化について確認する前に「NZXT N7 Z490」の標準設定で動作させて負荷をかけたところ、簡易水冷CPUクーラーでVRM電源周りがパッシブ空冷の状態でもVRM電源温度は80度未満に収まりました。
NZXT N7 Z490では標準動作の時点で定格よりも電力制限が若干解除されてPL1:150Wに設定されているものの、VRM電源温度はパッシブ空冷でも十分に温度が低く、安心して運用できると思います。
10コア20スレッド「Intel Core i9 10900K」で電力制限無効化による全コア4.9GHz、メモリ周波数3600MHz/CL16にOCすると、Cinebench R23のスコアは程度に達します。Cinebench R23や動画のエンコードによってCPUにフル負荷をかけると、NZXT N7 Z490環境ではシステム全体の消費電力(50~60W差分くらいでCPU消費電力)が250W前後に達します。
Core i9 10900Kを電力制限無効化によって全コア4.9GHzにクロックアップするとCPU消費電力は200W超に達するので、ソフトウェアモニタリング上では「NZXT N7 Z490」のVRM電源温度は最大で90度超に達しています。VRM電源温度は高温ですが、VRM電源温度を原因としてコアクロックのスロットリングは発生しておらず、全コア4.9GHzで安定動作しています。
VRM電源周りに風の直接当たらない簡易水冷CPUクーラーの環境において、Core i9 10900Kを電力制限無効化で全コア4.9Hzにクロックアップして負荷をかけ、VRM電源温度をサーモグラフィーで確認したところ、NZXT N7 Z490のVRM電源周りの温度は最大で100度近くに達しました。
VRM電源温度が100度を超えると破損するというわけではありませんが、かなり高温であることも間違いないので、「NZXT N7 Z490」でCore i9 10900Kなど第10世代Core i9を200WクラスのCPU消費電力が生じる設定で運用する場合は、スポットクーラー等を使用して冷却補助を推奨します。
ちなみに電源回路的に同等のASRock Z490 Steel Legendでは同等の負荷をかけると10分程度でVRM電源がオーバーヒートしてコアクロックが強制的に低下させられる現象、通称”ファントムスロットリング”の発生していました。
「NZXT N7 Z490」についても同様の現象が発生するのでは、と心配していたのですが、VRM電源温度によってスロットリングが発生する閾値が上がっているのか、もしくは大型のVRM電源クーラーのおかげで多少の余裕が生まれているようです。
「NZXT N7 Z490」環境においてCore i9 10900Kで電力制限無効化による全コア4.9GHzのクロックアップや、手動設定による5.0GHzオーバーの大幅なオーバークロックをする場合、スポットクーラーを使用するのであれば、フレキシブルファンアーム「サイズ 弥七」や、可変アルミニウム製ファンフレームでVRM電源を狙って設置が容易な「IN WIN MARS」がオススメです。
・マザーボードVRM電源クーラーのレビュー記事一覧へ
NZXT N7 Z490のレビューまとめ
最後に「NZXT N7 Z490(型番:N7-Z49XT-B1)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- NZXT製PCケース New HX10シリーズとも親和性の高いフラットな外観
- Core i9 10900Kの電力制限無効化による4.9GHzへのクロックアップが安定動作
- メモリ周波数&主要タイミングのカジュアル設定で3600MHz/CL16が安定動作
- 高速NVMe接続対応のM.2スロットが2基設置
- 動作検証に便利なオンボードスタートスイッチ、CMOSクリアスイッチを搭載
- NZXT CAMに対応したGRID+ V3と同等のファンコントロール機能が統合されている
- NZXT CAMに対応したHUE 2と同等のライティング制御機能が統合されている
- 内部USB2.0ヘッダーを3基も搭載している
- Core i9 10900Kを5.0GHz超にOCなど200W以上の負荷時はスポットクーラーの併用を推奨
- オーバークロック耐性は主要4社の上位製品と比較すると一段劣る
- M.2スロットにはカバーがあるがヒートシンクとしての機能がない
- 一部の電源ではATX24PINコネクタがアーマーと干渉する可能性あり
「NZXT N7 Z490」は、同社製PCケースのH710iやH510 EliteなどNew H10シリーズへ自然に溶け込むフラットな金属製カバーを搭載する外観がまず目につく特長となっており、加えてその見た目だけでなくNZXT CAMに対応したGRID+ V3と同等のファンコントロール機能およびHUE 2と同等のライティング制御機能がマザーボード上に統合されているので、システム的にもその他のNZXT製品と高い親和性を備えます。
”オールNZXT”なオシャレ自作PCを実現する上で見た目に大きく影響する部品、PCケース、CPUクーラー、ケースファン、GPUクーラーと続く最後の1ピースです。マザーボード単体で見るとフラットでシンプルな外観ながら、CAMによるライティング制御の幅広さによってユーザーに合わせた個性あるライトアップを可能にしてくれます。
NZXT N7 Z490はASRock製だけあってBIOSではクラシカルなUIが採用されており、OSインストールのブート設定からオーバークロックまで多方面に使いやすいUIだと思います。管理人個人的にも好みです。日本語ローカライズもしっかりしています。
「NZXT N7 Z490」にCore i9 10900Kを組み合わせて使用した場合、デフォルト設定による運用ではPL1:150Wに電力制限が無効化されるため、TDP150W相当のCPUとして動作しますが、標準設定の範囲内であればCore i9 10900Kを含めたIntel第10世代Core-S CPUの各種においてVRM電源はパッシブ空冷の冷却でも問題ないと思います。
マザーボードのOC耐性を評価する上で重要なファクターになるVRM電源について、「NZXT N7 Z490」はOEM元のASRock製品で言うとZ490 Steel LegendやZ490 Extreme 4に相当する回路が実装されており、上述の通りCPU消費電力150W相当の負荷であれば十分に冷え、パッシブ空冷でも問題なく運用が可能です。
一方でCore i9 10900Kの電力制限無効化による全コア4.9GHzクロックアップなどCPU Package Powerが200Wを超過するような負荷が発生すると、VRM電源温度を原因としたCPUコアクロックのスロットリングこそ発生しないものの、簡易水冷CPUクーラーでVRM電源周りがパッシブ空冷だと90~100度と高温に達します。
VRM電源周りがパッシブ空冷になる簡易水冷CPUクーラー環境で200Wクラスの発熱が生じるクロックアップやOCを行う場合はVRM電源周りを冷やすためスポットクーラーの増設を推奨します。
「NZXT N7 Z490」はメモリOC回りについてもメモリ周波数と主要タイミングのみのカジュアル設定で3600MHz/CL16が安定動作するなど、セカンド・サードタイミングのオートフィル精度が主要4社製マザーボード相当に改善しています。
旧モデルでは適切なXMPプロファイルが収録されていればメモリOCも安定動作する程度にメモリ回路自体の品質は良かったものの、プロファイルなしの手動設定ではセカンド・サードタイミングの設定が難しく、メモリOCのハードルが高いところが難点でしたが、そこが解消されたので自作PC初心者にもオススメしやすい製品になったと思います。
NZXT New H10シリーズPCケースへ自然に溶け込むフラットな外観や、NZXT CAMに対応したGRID+ V3と同等のファンコントロール機能およびHUE 2と同等のライティング制御機能がマザーボード上に統合されシステム的にも高い親和性を備えた「NZXT N7 Z490」は”オールNZXT”で個性的な自作PCを組みたいユーザーにはオススメできる製品だと思います。
以上、「NZXT N7 Z490」のレビューでした。
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NZXT製Intel Z490マザーボード「NZXT N7 Z490」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) December 19, 2020
HシリーズPCケースへ自然に溶け込むフラットな外観や、NZXT CAMに対応したGRID+ V3とHUE 2がマザーボード上に統合されシステム的にも同社製品と高い親和性を備えた新モデルを徹底検証https://t.co/AXADnRsPHK pic.twitter.com/sceqIJtONe
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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