Radeon RX 6800 XT Reference


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新ゲーミングアーキテクチャ「RDNA2」を採用するAMDの次世代ハイエンドGPU”Big Navi”ことRadeon RX 6800シリーズ上位モデル「AMD Radeon RX 6800 XT」を搭載したAMD純正リファレンスグラフィックボードをレビューしていきます。
待望のAMD製次世代ハイエンドGPU上位モデル「Radeon RX 6800 XT」が、同社前ハイエンドのRadeon VIIや競合NVIDIAの前世代最上位GeForce RTX 2080 Tiをどの程度上回り、また最新ハイエンドGeForce RTX 3080と真っ向から戦えるのか、実ゲームベンチマークでグラフィック性能を徹底比較します。



製品公式ページ:https://www.amd.com/ja/products/graphics/amd-radeon-rx-6800-xt
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AMD Radeon RX 6800 XT レビュー目次


1.AMD Radeon RX 6800 XTの外観
2.AMD Radeon RX 6800 XTの分解
3.AMD Radeon RX 6800 XTの検証機材・GPU概要


4.AMD Radeon RX 6800 XTのゲーム性能

5.AMD Radeon RX 6800 XTの温度・消費電力・ファンノイズ

6.AMD Radeon RX 6800 XTのレビューまとめ




AMD Radeon RX 6800 XTの外観

早速、AMD Radeon RX 6800 XTを開封していきます。
「Radeon RX 6800 XT」のリファレンスモデルはいくつかのベンダーからリリースされていていますが、基本的にAMD純正のリファレンスモデルを箱詰めしただけ、+αでファン中央に各社のロゴシールが貼られている、PCIE端子やビデオ出力ポートにカバーが付いているくらいの違いなので、どのベンダーの製品を買っても大差ありません。
SAPPHIRE、ASRock、Power Colorなど一部メーカー製品は他社の1年よりも長い2年保証になっているので、ここだけは気にしてもいいかもしれません。
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「AMD Radeon RX 6800 XT」のグラフィックボード本体を見ていきます。

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「AMD Radeon RX 6800 XT」のリファレンスモデルはシルバーとブラックのツートンカラーな金属製外装を採用しています。比較的シンプルなデザインが多かったRadeonのリファレンスグラフィックボードと比較してゲーミング風なデザインに生まれ変わっています。
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グラフィックボード側面にはRadeonのブランドロゴがあり、側面縁のラインはAMDのブランドカラーでもある赤色で着色されています。
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リファレンスモデルというとGPUリリースの最初に投入される廉価モデルというか、高性能オリファンモデルの当て馬な印象が強いですが、「Radeon RX 6800 XT」ではGPUクーラーからPCB基板までこだわり抜いた設計であることがAMD公式からもアピールされています。
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競合NVIDIAの準リファレンスモデルなFounders Editionが全長300mmクラスに巨大化したのに対して、ワットパフォーマンスで上回ることをアピールするRadeon RX 6000シリーズということもあり、「AMD Radeon RX 6800 XT」のリファレンスモデルの全長は267mm、従来の一般的なフルサイズグラフィックボードと同じサイズです。
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「AMD Radeon RX 6800 XT」は全長も最新ハイエンドGPUとしては短めであるのに加えて、PCIEブラケットからはみ出す高さ方向も+15mm以下に収まっており、PCケースサイドパネルとの干渉についても基本的に大丈夫だと思います。
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AMD Radeonシリーズのリファレンスモデルというと直近最後のハイエンドGPUであるRadeon VIIが内排気クーラーを採用していたものの、Radeon RX 5700 XTなど5000シリーズでは外排気ブロアーファン型でしたが、「AMD Radeon RX 6800 XT」のリファレンスモデルは80mmサイズファンを3基搭載する内排気クーラーが採用されています。
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3基の冷却ファンにはファンノイズを抑えつつ高い静圧&風量を得ることが可能なバリアーリング搭載冷却ファンを採用しており、2020年最新トレンドもしっかりと組み込まれています。
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「AMD Radeon RX 6800 XT」のリファレンスモデルはTGP300W超の発熱に対応するため、大型放熱フィンを採用したヒートシンクが搭載されており、PCIEスロットを3スロット占有します。
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「AMD Radeon RX 6800 XT」のリファレンスモデルの補助電源数はPCIE 8PIN×2です。
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今回購入したAMD Radeon RX 6800 XTリファレンスモデルのSAPPHIRE箱詰め品には付属しませんが、ASRockやMSIなど一部メーカーの箱詰め品では、PCIE端子と各種ビデオ出力に黒色の保護カバーが装着されています。
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「AMD Radeon RX 6800 XT」のビデオ出力はHDMI2.1×1、DisplayPort1.4×2、USB Type-Cの4基が実装されています。USB Type-Cポートは通常のUSBポートとしても使用できますが、DisplayPort Alternate ModeによってDisplayPort1.4互換なビデオ出力として使用できます。
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NVIDIAがVR機器接続用次世代規格Virtual Link対応としてRTX 20シリーズにUSB Type-Cを採用したものの、対応VR HMDが1台も登場しないままVirtual Link公式サイトが閉鎖されたのは記憶に新しいですが、「Radeon RX 6800 XT」のUSB Type-Cビデオ出力についてはThunderbolt3対応モニタなどクリエイター向け機器への対応を重視した結果ではないかと思います。

「AMD Radeon RX 6800 XT」にはGPUクーラーと同様にブラック&シルバーでツートンカラーな金属製バックプレートが装着されています。基板の反りや破損を防止する保護プレートとしての役割を果たしますが、VRM電源回路やVRAMチップとの間にはサーマルパッドが貼られていないので冷却補助の機能はありません。
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グラフィックボードの重量はAMD Radeon RX 6800が1386g、AMD Radeon VIIが1283g、に対して、AMD Radeon RX 6800 XTは1513gでした。
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バックプレート等で基板の反りは防止されていますが、重量は1kgを軽く超過しているのでPCIEスロットへの負荷を考えるとVGAサポートステイなどで垂れ下がりを防止したほうがいいかもしれません。




AMD Radeon RX 6800 XTの分解

「AMD Radeon RX 6800 XT」を分解してGPUクーラーやグラフィックボード基板についてチェックしていきます。

なお今回は自己責任で(もしくはレビュー用サンプル貸出先の協力のもと特別に許可を頂いて)分解を行っています。GPUクーラーの取り外し(分解行為)は、一部を除いて多くのメーカーではグラフィックボードの正規保証の対象外になる行為です。今回はレビューのために分解していますが、繰り返しますが保証対象外になるので基本的には非推奨の行為なのでご注意下さい。

「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」のGPUクーラーの分解手順として、まずはバックプレート上の2カ所の計8個のネジを外します。
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バックプレート上の8カ所のネジを解除すると、グラフィックボード基板からバックプレートを取り外すことができます。「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」のバックプレートは金属製ですが、基板とバックプレートの間にはサーマルパッドがないので、冷却補助の役割はありません。
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バックプレートを外したらグラフィックボード基板背面から見えるネジ全て、およびPCIEブラケット側の3カ所のネジを取り外します。
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これらのネジを解除すると、グラフィックボード基板からGPUクーラー本体を取り外すことができます。
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「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」にはAMD公式が設計したリファレンス基板が採用されています。
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Radeon RX 6800 XTのGPUコアにはNavi 21と呼ばれる520mm^2のGPUダイが使用されています。(NVIDIA製GPUと違ってGPUコア天面に刻印がない)
Radeon RX 6800 XTのVRAMはGDDR6となっており、GDDR6メモリチップはMicron、Samsung、SK Hynixが製造していますが、今回入手した「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」にはSamsung製の16GbのGDDR6メモリチップが8枚搭載されています。
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「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」のVRM電源回路はGPUコアの左側に9フェーズおよび右側に6フェーズで、計15フェーズが実装されています。このうち12フェーズがGPUコア向け、残り3フェーズがVRAM向けです。
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「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」のGPUクーラー本体をチェックすると、GPUコアと接する部分は銅製かつベイパーチャンバー構造のベースプレートが採用され、直接にろう付けする形でアルミニウム製放熱フィンが3スロットスペース内いっぱいに展開されています。
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「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」のGPUクーラーにおいて、GPUコアと接する部分は銅製かつベイパーチャンバー構造のベースプレートが採用されています。またGPUコアとベースプレート間のTIMには一般的なシリコングリスではなく、カーボン製サーマルパッドが使用されていました。
GPUクーラーを取り外すとカーボン製サーマルパッドは破れてしまうので、再利用は難しいと思います。ちなみにカーボン製サーマルパッドの厚みは0.1mm程度でした。
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一見して一体型に思えますが、GPUコアと接するベースプレートの周辺にある、VRAMチップやVRM電源経路とサーマルパッドを介して接するアルミニウム製プレートは、GPUクーラー本体とは別になっており、このセカンダリヒートシンクもサーマルパッドを介してGPUクーラー本体と接しています。
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「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」は3スロットのスペースを最大限活用して放熱フィンが展開されています。
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AMD Radeon RX 6800 XTの検証機材・GPU概要

外観やハードのチェックはこのあたりにして早速、「AMD Radeon RX 6800 XT」を検証用の機材に組み込みました。テストベンチ機の構成は次のようになっています。
テストベンチ機の構成

ベンチ機1(温度・消費電力)
ベンチ機2(ゲーム性能)
OS Windows10 Home 64bit (1909)

CPU

Intel Core i9 9900K
レビュー
Core/Cache:5.1/4.7GHz
Intel Core i9 10900K
レビュー
Core/Cache:5.2/4.7GHz
M/B ASUS WS Z390 PRO
レビュー
ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME
 (レビュー
メインメモリ G.Skill Trident Z Black
F4-4400C19D-16GTZKK
DDR4 8GB*2=16GB (レビュー
4000MHz, 17-17-17-37-CR2
G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK
DDR4 8GB*4=32GB (レビュー
4000MHz, 15-16-16-36-CR2
システム
ストレージ
Samsung 860 EVO M.2 1TB
レビュー
Samsung 860 PRO 256GB
レビュー
データ
ストレージ
Samsung 860 QVO 4TB (レビュー

CPUクーラー

Fractal Design Celsius S36(レビュー
Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー
電源
ユニット
Corsair HX1200i (レビュー
PCケース/
ベンチ板
STREACOM BC1 (レビュー

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AMD Radeon RX 6800リファレンスモデルグラフィックボード側面にはRadeonのブランドロゴがありLEDイルミネーションが内蔵されています。側面縁のラインと同じく、AMDのブランドカラーでもある赤色で発光します。
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AMD Radeon RX 6800 XTのGPU概要

AMD Radeon RX 6800 XTに搭載されているGPU「Radeon RX 6800 XT」のスペックについて簡単に確認しておきます。
「AMD Radeon RX 6800 XT」のスペックは、コンピュートユニット数が72、シェーダー数が4608、コアクロックはゲームクロック2015MHz、最大ブーストクロック2250MHzです。

VRAMには速度16GbpsのGDDR6メモリを容量16GB搭載し、RDNA2アーキテクチャの特長である超高速キャッシュInfinity Cacheを128MB搭載しています。消費電力の指標となるTBPは300Wです。
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今回レビューするのは「AMD Radeon RX 6800 XT」のリファレンスモデルなので、AMD公式のリファレンス仕様通り、コアクロックはゲームクロック2015MHz、最大ブーストクロック2250MHzです。公式仕様では公開されていないベースクロックについてはGPU-Zを参照すると1825MHzとのこと。
またGPU-ZからはRadeon RX 6000シリーズの電力制限値そのものは確認できないのですが、AMD Radeon RX 6800 XTリファレンスモデルにおいて電力制限の基準値の調整可能幅は-6%~+15%でした。
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ちなみに海外ユーザーによって作成されたAMD製GPU向けチューニングソフト(vBIOS編集ソフト)からRadeon RX 6800 XTリファレンスモデルの仕様を探ってみると、Radeon RX 6800 XTのグラフィックボード全体の消費電力の指標値であるTBP(NVIDIA仕様でいうTGPのこと)は300Wと公表されていますが、GPUコア単体の電力制限は255Wに設定されていました。
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AMD Radeon RX 6900/6800シリーズ スペック一覧

RX 6900 XT
RX 6800 XT
RX 6800 Radeon VII
GPUコア Navi 21 XTX
Navi 21 XT
Navi 21 XL Vega
製造プロセス 7nm FinFET 7nm FinFET 7nm FinFET 7nm FinFET
Compute Unit数
80
72
60 60
シェーダー数 5120
4608 3840
3840
ベースクロック - MHz - MHz - MHz 1450 MHz
ゲームクロック 2015 MHz 2015 MHz 1815 MHz - MHz
ブーストクロック 2250 MHz 2250 MHz 2105 MHz 1800 MHz
単精度性能 23.07 TFLOPs 20.74 TFLOPs 16.17 TFLOPs 13.8 TFLOPs
Infinity Cache
128MB 128MB 128MB -
VRAM 16 GB GDDR6 16 GB GDDR6 16 GB GDDR6 16 GB HBM2
バス幅 256-bit 256-bit 256-bit 4096-bit
メモリクロック 16.0 GHz 16.0 GHz 16.0 GHz 2.0 GHz
メモリ帯域 512 GB/s 512 GB/s 512 GB/s 1000 GB/s
補助電源 8PIN×2~ 8PIN×2~ 8PIN×2~ 8PIN×2~
TBP 300 W 300W 250W 250W
発売日 2020年12月8日 2020年11月18日 2020年11月18日 2019年2月
希望小売価格 999ドル~ 649ドル~ 579ドル~
699ドル


Radeon設定によるRX 6800 XTのチューニングについて

Radeon RX 6000シリーズでも、デスクトップ右クリックメニューからアクセスできるRadeon設定の「パフォーマンスタブ - チューニング」の順にアクセスすると、前世代同様にコアクロック・メモリクロックやファン制御に関する設定が表示されます。
Radeon RX 6800 XT_Radeon-Setting_1
チューニングを開くとまず、GPU動作プロファイルの選択が表示されます。Radeon 6800 XTやRadeon RX 6900XTの上位モデルでは自動OCによって性能が向上するレイジモードが用意されています。
Radeon RX 6800 XT_Radeon-Setting_2

チューニングコントロールで「手動」を選択すると、大別してGPUコアクロック、VRAMコアクロック、ファン制御、電力制限の4種類の設定が表示されます。
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GPUチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると最小周波数、最大周波数、GPUコア電圧(Voltage)の3種類の設定スライダーが表示されます。
高度な制御のスライドスイッチをONにすると設定値が%単位からMHzやmVといった実際の物理単位に変わります。Radeon RX 6800 XTリファレンスモデルでは最大周波数を2800MHzまで引き上げることが可能です。
Radeon VIIやRX 5000シリーズでは低電圧化耐性の指標になったもののRX 6000シリーズではどうなのかわかりませんが、とりあえず今回管理人が入手した個体については標準の最大周波数が2404MHz、GPUコア電圧が1150mVでした。
Radeon RX 6800 XT_Radeon-Setting_4_GPU-Clock
VRAMチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えるとVRAM周波数(最大周波数)の設定スライダーが表示されます。
高度な制御のスライドスイッチをONにすると設定値が%単位からMHzの物理単位に変わります。Radeon RX 6800 XTリファレンスモデルでは定格の2000MHzから最大周波数を2150MHzまで引き上げることが可能です。
Radeon RX 6800 XT_Radeon-Setting_5_VRAM-Clock
電源チューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると電力制限の設定スライダーが表示されます。
電力制限の設定は各GPUの標準GPUコア電力制限に対するパーセンテージのオフセットですが、Radeon RX 6800 XTリファレンスモデルでは255Wを基準にして最大で+15%まで電力制限の引き上げが可能です。
Radeon RX 6800 XT_Radeon-Setting_6_Power

ファンチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると、ゼロRPM(セミファンレス機能)の切り替えスイッチ、最大ファン速度の設定スライダーが表示されます。
Radeon RX 6800 XT_Radeon-Setting_7-1_Fan
また高度な制御のスライドスイッチをONにするとファン制御カーブの手動設定が表示されます。Radeon RX 6000シリーズにはGPU温度とジャンクション温度(複数あるGPUダイ上の温度センサーの最大値)の2種類の温度があり、ファン制御カーブはジャンクション温度を参照するようです。
温度とファン速度について5つの頂点を任意に指定してファン速度を制御できます。上述のセミファンレス機能との併用や、セミファンレス機能の無効化も可能です。
Radeon RX 6800 XT_Radeon-Setting_7-2_Fan


新アーキテクチャRDNA2で特に重要な2つの特長

AMD Radeon RX 6000に採用されている新アーキテクチャ「RDNA2」について、様々な特長が公式に発表されていますが、エンドユーザーが特に押さえておくべきポイントはVRAMフルアクセス機能「AMD Smart Access Memory」と、レイトレーシング表現対応(ハードウェアアクセラレーター搭載)の2点です。
Infinity Cacheを始め、レビューや解説記事としてRadeon RX 6000シリーズやそのアーキテクチャであるRDNA2について掘り下げられるポイントは非常に多いのですが、実性能と価格に加えて消費者目線で最低限抑えておくべきポイントを挙げるとすればこの2つになると思います。

まず1つ目の大きな特徴は「AMD Smart Access Memory」です。Radeon RX 6000シリーズを同社の次世代CPUであるRyzen 5000シリーズと組み合わせることで使用可能な(AMD公式にサポートされる)ビデオメモリアクセスを改善し性能を向上させる機能です。
AMD Smart Access Memory_Platform Synergy
従来のプラットフォームでは32bit命令の名残でCPUとグラフィックボードVRAM間では最大でも256MB単位でしかデータのやり取りができませんでした。
AMD Smart Access Memoryでは10GBを超える大容量VRAMに対してCPUからサイズ制限なく一度にフルアクセスが可能になり、なおかつ第3世代Ryzen&X570でAMDがいち早くサポートを始めたPCIE4.0の従来比2倍な高速帯域を用いることで、VRAMアクセスによって生じるボトルネックが解消されます。
AMD Smart Access memory_explained
ハイエンドGPUではVRAM容量が10GBを超えるのが当たり前になったので、CPU-VRAM間でフルアクセス機能を実現するためにはより高速な帯域(PCIE4.0対応)が必要になります。1年前、第3世代Ryzen&X570など早期にPCIE4.0の普及を目指したのは、 同機能でCPU・MB・GPUのプラットフォーム単位で優位性を示すための布石だった、と考えるといろいろと納得がいきます。(そうでないとPCIE4.0アーリーアダプターな某SSDはIOベンチ以外に魅力がなく、微妙過ぎました…)
AMD Smart Access memory
AMD公式のベンチマークによると「AMD Smart Access Memory」を使用することで最大10%程度もパフォーマンスが改善するとのこと。
AMD Smart Access memory_peformance-gain

AMD Smart Access Memoryの名前の方が有名ですが、実のところ、これはPCIE規格で策定されている「Re-Size BAR (Base Address Register)」と同等の機能です。参考資料
現状でAMDが公式にサポートを公表しているのがRadeon RX 6000シリーズとRyzen 5000シリーズ、およびグラフィックボードをPCIE4.0で接続可能なAMD X570/B550チップセット搭載マザーボードの組み合わせであるというだけで、すでに一部のIntel Z490マザーボードにおいてベータBIOSという形ですが、Re-Size BARを有効にできるBIOSが一部メーカーから配信されています。
Re-Size BAR_Intel Z490
AMDと競合するGPUメーカーのNVIDIAも2021年の2月~3月にかけて同社最新GPUであるGeForce RTX 30シリーズ(Ampere世代)においてRe-Size BARのサポートを順次開始していくことが正式に発表されています。


CPUとGPUをコンシューマー向けに展開しているAMDだからこそいち早く、Re-Size BARの土壌としてPCIE4.0を普及させ、次世代GPUのRadeon RX 6000シリーズでサポートさせることができた、こと自体は評価に値すると言って間違いありません。
一方でAMD Smart Access Memory = Re-Size BARなので、「VRAMフルアクセス機能Re-Size BARによる性能向上は”将来的には”AMDオンリープラットフォームに限定されるユニークなアドバンテージではない」、その点は留意しておいてください。
AMD_PCIE4

次に2つ目の大きな特徴がレイトレーシング表現への対応です。Radeon RX 6000シリーズが採用するRDNA2アーキテクチャでは一般的にコア数としてカウントされるシェーダーコアをひとまとめにしたCU(Compute Unite)に対して1基のレイトレーシング処理支援ハードウェア「Ray Accelerator」を搭載しています。Ray Acceleratorはレイトレーシング処理においてCPUによる演算よりも10倍も高速とのこと。
AMD RDNA2_Raytracing_Ray Accelerator
余談ですが、以下のような事情もあって当サイトでは”レイトレーシング表現”と呼んでいます。
レイトレーシングというのはそもそもレンダリング手法の1つであって、現在主流なレンダリング手法のラスタライゼーション(ラスタライズ)と、ある種の対になる言葉です。
AMD RDNA2_Raytracing_vs-rasterization
PCゲームにおいては負荷的な問題で全てをレイトレーシングでレンダリングするのではなく、「ラスタライゼーションをベースにレイトレーシングはアクセント」という形で併用するのが主流です。
またPCゲームにおいてレイトレーシングというとDirectX12がサポートするDXR(DirectX Raytracing)が有名、というか現状でレイトレーシングをサポートするPCゲームはほぼコレですが、Vulkanなどその他のAPIもレイトレーシングを続々とサポートし始めています。
AMD RDNA2_Raytracing_Hybrd Rendering

下はNVIDIAによるデモですが、レイトレーシング表現では、照明(エリアライト)や太陽光(グローバルイルミネーション)の影響を厳密に再現し、光の反射やガラス面の透過なども現実に即して忠実に描写されます。レイトレーシングを採用したわかりやすい例としては鏡に映る反射など、視覚(視点から見た)の外にある物体もリアルに描画することができます。
RayTracing Sample (1)
RayTracing Sample (2)
RayTracing Sample (3)
なお、NVIDIA GeForce RTX 30シリーズが対応するDLSSのように超解像技術によって低負荷に4K~8Kの高解像度を実現する機能がAMD Radeon RX 6000シリーズでは実装されていないので、レイトレーシング表現と4K解像度の組み合わせは現時点では難しいようです。
一方で「FidelityFX Super Resolution」と呼ばれる超解像機能を開発中とのことなので将来的にはレイトレーシング表現と4K解像度の組み合わせにも対応が可能になると思います。
AMD FidelityFX Super Resolution



AMD Radeon RX 6800 XTのゲーム性能

「AMD Radeon RX 6800 XT」の性能を測るべく各種ベンチマークを実行しました。性能比較には「Radeon RX 6800」、「GeForce RTX 3080」、「GeForce RTX 2080 Ti Founders Edition」、「Radeon VII」を使用しています。


「AMD Radeon RX 6800 XT」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkで現在主流なDirectX11のベンチマーク「FireStrike」による比較になります。
Radeon RX 6800 XT Reference_bench_fs

FireStrike Extreme Ultra
RX 6800 XT
51159 25012 12412
RX 6800
43285 21544 10579
RTX 3080
41710 20733 10553
RTX 2080 Ti FE
34955 16797 8179
Radeon VII
28115 13455 6863


「AMD Radeon RX 6800 XT」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkのDirectX12ベンチマーク「TimeSpy」、およびレイトレーシング対応ベンチマーク「Port Royal」による性能比較となります。
Radeon RX 6800 XT Reference_bench_ts-pr

TimeSpy Extreme Port Royal
RX 6800 XT
17462 8401 8938
RX 6800 15034 7156 7599
RTX 3080 17407 8674 11163
RTX 2080 Ti FE
14309 6813 8839
Radeon VII
8974 4364 -


「AMD Radeon RX 6800 XT」を含めた各グラフィックボードについて、近年普及しつつあるHTC VIVEやOculus RiftなどVR HMDを使用したVRゲームに関する性能を測定する最新ベンチマーク「VRMark」による性能比較となります。
Radeon RX 6800 XT Reference_bench_vr

Orange Room
Cyan Room
Blue Room
RX 6800 XT
14472 18942 5354
RX 6800 14813 16368 4494
RTX 3080 16244 15724 5241
RTX 2080 Ti FE
15938 12955 4553
Radeon VII
14256 10462 2705



続いて2020年最新のPCゲームを実際に用いたベンチマークになります。同一のグラフィック設定で同一のシーンについてフルHD(1920×1080)とWQHD(2560×1440)と4K(3840×2160)の3種類の解像度で平均FPSを比較しました。

ベンチマーク測定を行ったゲームタイトルは、Anthem(ウルトラ設定プリセット)、Assassin's Creed Odyssey(最高設定プリセット)、Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12)、CONTROL(高設定プリセット, DirectX12, AMD製GPUはDirectX11)、DEATH STRANDING(最高設定プリセット, TAA)、The Division 2(ウルトラ設定プリセット, DirectX11)、Final Fantasy XV(最高設定プリセット, NVIDIA GameWorksはVXAOを除き有効)、Gears 5(最高設定プリセット)、Ghost Recon Breakpoint(ウルトラ設定プリセット)、Horizon Zero Dawn(最高画質設定プリセット)、Marvel's Avengers(最高設定プリセット, TAA)、Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット, DirectX12)、MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット, DirectX12)、Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット, TAA, DirectX12)、Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)以上の15タイトルです。
game_benchmark_202009


Anthem(ウルトラ設定プリセット)に関する「AMD Radeon RX 6800 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Radeon RX 6800 XT Reference_game_ant

Assassin's Creed Odyssey(最高設定プリセット)に関する「AMD Radeon RX 6800 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Radeon RX 6800 XT Reference_game_aod

Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「AMD Radeon RX 6800 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Radeon RX 6800 XT Reference_game_bfv

CONTROL(高設定プリセット, DirectX12, AMD製GPUはDirectX11)に関する「AMD Radeon RX 6800 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Radeon RX 6800 XT Reference_game_cont

DEATH STRANDING(最高設定プリセット, TAA)に関する「AMD Radeon RX 6800 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Radeon RX 6800 XT Reference_game_deathST

The Division 2(ウルトラ設定プリセット, DirectX11)に関する「AMD Radeon RX 6800 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Radeon RX 6800 XT Reference_game_div2

Final Fantasy XV(最高設定プリセット、NVIDIA GameWorksはVXAOを除き有効)に関する「AMD Radeon RX 6800 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Radeon RX 6800 XT Reference_game_ff15

Gears 5(最高設定プリセット)に関する「AMD Radeon RX 6800 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Radeon RX 6800 XT Reference_game_gears5

Ghost Recon Breakpoint(ウルトラ設定プリセット)に関する「AMD Radeon RX 6800 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Radeon RX 6800 XT Reference_game_ghostBP

Horizon Zero Dawn(最高設定プリセット)に関する「AMD Radeon RX 6800 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Radeon RX 6800 XT Reference_game_horizon

Marvel's Avengers(最高画質設定プリセット, TAA)に関する「AMD Radeon RX 6800 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Radeon RX 6800 XT Reference_game_marvel

Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット, DirectX12)に関する「AMD Radeon RX 6800 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Radeon RX 6800 XT Reference_game_metro

MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「AMD Radeon RX 6800 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Radeon RX 6800 XT Reference_game_mhw

Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット, TAA, DirectX12)に関する「AMD Radeon RX 6800 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Radeon RX 6800 XT Reference_game_sottr

Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)に関する「AMD Radeon RX 6800 XT」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Radeon RX 6800 XT Reference_game_sow


AMD Radeon RX 6800 XTなど5種類のGPUについて実ゲーム性能の比率の平均を出してみたところ、AMD Radeon RX 6800 XTは、2年遡って最後に同社から発売されたハイエンドGPUのRadeon VIIを平均で60%以上、ベストケースでは80%を超える性能向上を実現しており、AMDが”4Kゲーミングに最適(Ultra 4K Gaming)”と謳うのも納得の高性能です。
7nm改良版とはいえVegaからRDNAを飛ばしてRDAN2へと最新アーキテクチャにアップグレードされているため、Radeon VIIと比較してフルHDのハイフレームレートなPCゲーミングでも順当に60%程度の性能向上を果たしているところも注目ポイントです。
Radeon RX 6800 XT Reference_pefsum


一方で「Radeon RX 6800 XT」のグラフィック性能をNVIDIA製GPUと比較すると、前世代最上位のGeForce RTX 2080 Tiを平均で20%程度上回り、NVIDIAの次世代ハイエンドGPUであるRTX 3080とほぼ同等の性能でした。
発売前にAMDから公表された10種の実ゲームによる公式ベンチマークでは、RX 6800 XTはRTX 2080と比較してWQHD解像度で37%程度、4K解像度で35%程度も上回るとのことでしたが、Smart Access Memoryが有効であることを加味しても、ベストケースに近い性能が出るタイトルを集めたのだと思います。
NVIDIAでも公式ベンチに比べて10%弱の差が出るのは通例なので(近年では対AMDではなく同社の旧世代との比較ですが)、特に公式ベンチを批判する意図はなく、管理人としてはそういった事情も織り込み済みで妥当な結果が出たと思ったので、そういう意味での補足です。

個別に見ていくとRTX 3080を比較対象としたRX 6800 XTの性能スケーリングはやや複雑、ゲームタイトルに依るところが大きく、±10%程度でそれぞれ優劣が入れ替わったり、または同等の性能を発揮しています。
また解像度別では、4K高解像度ではRTX 3080が強く、WQHD以下の低解像度ではRX 6800 XTが強い傾向が見え、GDDR6Xによる定量かつ広帯域なVRAMメモリ、2GHz超コアクロックとキャッシュ&VRAM構造という両者のアーキテクチャの特長が反映された結果だと思います。
各サイトレビューにおいてベンチマーク比較で抜粋されるタイトルによってRX 6800 XTの性能に対する印象は大きく変わるので注意が必要なところですが、『RX 6800 XTはRTX 3080と同等』というのがざっくりとした管理人の感想です。

性能スケーリングが複雑になる原因について、ゲームタイトルがAMD製GPUとNVIDIA製GPUに対してどれくらい最適化されているかというのも影響しているのですが、加えて、RX 6800 XTではフルHD解像度やWQHD解像度に対して4K解像度での性能スケーリングが鈍化する傾向があるゲームタイトルの存在を見ると、RDNA2アーキテクチャの高性能を支える大容量キャッシュInfinity Cacheという構造が大きく影響しているように思います。
公式スライドの示す通り、キャッシュ容量128MB辺りでフルHD・WQHDにおけるヒット率は頭打ちになり始めますが4K解像度ではまだリニアに上昇しているようなので、シンプルに高速なVRAM帯域を実現するNVIDIAのアプローチに対して、キャッシュを組み合わせるAMDのアプローチはまだ万能というわけではなさそうです。
AMD Infinity Cache_Hit-Rate


ここまでは一般的なPCゲーミングシーンにおける「AMD Radeon RX 6800 XT」の性能を比較検証してきましたが、ここからはRadeon RX 6000シリーズの大きな特徴、AMD製GPUではRDNA2アーキテクチャで初めてサポートされたレイトレーシング表現の性能をチェックしていきます。
AMD RDNA2_Raytracing
いち早くレイトレーシング表現をサポートした競合NVIDIAの前世代最上位GeForce RTX 2080 Tiや、2021年最新ハイエンドGPUのGeForce RTX 3080とGeForce RTX 3070を比較対象にして、「Radeon RX 6800 XT」のレイトレーシング性能を検証しました。
解像度は4K(3840×2160)とし、検証するゲームはBattlefield V (最高設定プリセット、RTX:ON)、Control(高設定プリセット、RTX:High)、Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット、RTX:Ultra)、Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット、RTX:Max)の4種類です。
なおドライバ2020.12.1においてRX 6800ではMetro Exodusでレイトレーシング表現を有効にするとほぼ確実にロード後にクラッシュし、上位モデルのRX 6800 XTでも何割かの確率でクラッシュしました。

まず純粋な性能として「Radeon RX 6800 XT」はレイトレーシング表現を有効にすると4K解像度では30FPSをギリギリキープできるかどうか、WQHDで何とか60FPSに達するという具合でした。NVIDIA製GPUでもそうですが、レイトレーシング表現を4Kネイティブ解像度で実行するのは現在のGPU性能ではやはり難しく、DLSSのような超解像技術がAMD製GPUにも求められます。
上で検証した一般的なゲーミングシーンにおいてRadeon RX 6800 XTはGeForce RTX 3080と同等の性能を発揮したのですが、レイトレーシング表現を有効にするとRX 6800はRTX 3080と比較して40%程度も劣る結果となりました。レイトレーシング表現を支援する専用ハードウェアの性能差が如実に現れています。
Radeon RX 6800 XT Reference_RayTracing
GeForce RTX 3080の場合はDLSSを併用すればレイトレーシング表現を有効にしても4K解像度で60FPS程度をキープできることも考えると、PCゲーミングにおけるレイトレーシング表現の性能に関してRX 6800 XTがRTX 3080の後塵を拝しているのは否定できません。
AMD Radeon RX 6800 XT_Perfsum_RayTracing&DLSS

ただAMDにとってRDNA2アーキテクチャのレイトレーシング表現サポートは、第1に次世代コンソールゲーム機とそのソフトウェアデベロッパー、次に3Dレンダリングなどのクリエイターを主要なターゲットとしており、PCゲーミングについてはオマケ程度の意味合いが強い気がします。
PS5やXbox Series Xの場合は、各ゲーム機固有のハードウェアクセラレーター性能によって実現できる範囲内でレイトレーシング表現を実行するだけなので競争力は求められず、近年のコンソールゲームはUnityやUnreal Engineといったゲームエンジンを使用して汎用PC環境で作成されています。
コンソールゲーム機なら実動環境を1,2種類に特定でき(デバッグが容易になる)、また実動環境に近似したハードウェアでゲーム開発ができるので、デベロッパーがレイトレーシング表現について学習しやすくなったことに一番の意義があるのだと思います。RTX 20シリーズの登場から2年たってもメジャーなレイトレーシング表現のサポートタイトルが10にも満たないのを見るとなおさら、そう感じます。
AMD Empowers Developers



AMD Radeon RX 6800 XTの温度・消費電力・ファンノイズ

「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」の負荷時のGPU温度やファンノイズや消費電力についてチェックしていきます。
「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」にはRadeon設定から選択が可能なコアクロックや電力制限が変化する複数のモードが用意されていますが、標準モードで測定しました。

「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」のGPU温度とファンノイズの検証負荷としては約20分間に渡たり連続してGPUに100%近い負荷をかける3DMark TimeSpy Stress Testを使用しています。
Radeon RX 6800 XT Reference_TimeSpy Stress Test
「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」のテスト終盤におけるGPU温度は最大81度、ファン回転数は最大1200RPM未満に収まっています。
GPU温度は高めですが流石にリファレンスモデルでチューニングミスということもないはずですし、実際に安定動作もしているので、RX 6800無印と違ってRX 6800 XTのリファレンスモデルは超静音性重視な動作設定になっているようです。
Radeon RX 6800 XT Reference_temp-gpu
GPUに搭載された複数の温度センサーのうち、最大温度を示すジャンクション温度の推移は下のようになりました。Radeon RX 6000シリーズはジャンクション温度をファン制御のソース温度とし、負荷がかかるといったん上限速度まで上昇、徐々に収束していく方式が採用されていることが多いですが、「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」でも一度、1200RPM程度に達してから、ジャンクション温度の変動に応じて1000~1200RPMの範囲内でファン速度が緩やかに波打ちます。
Radeon RX 6800 XT Reference_temp-junction
また「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」はアイドル時にファンが停止するセミファンレス機能に対応しており、ジャンクション温度を制御ソースとして始動閾値は70度前後、停止閾値は55度前後でヒステリシスも採用されています。製品によっては回転数が上下してふらつくことの多い始動や停止の直前も、閾値を跨いだ瞬間にピタッと切り替わります。

「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」ではGDDR6メモリやVRM電源回路の温度もモニタリングが可能であり、ストレステスト中の推移は下のようになりました。
「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」は超静音性重視でファン速度が非常に低速なので、GDDR6メモリやVRM電源回路の温度も90度前後とかなり高くなります。温度が気になる人はRadeon設定のファン制御から煩く感じない範囲内でファン速度を引き上げてみてください。
Radeon RX 6800 XT Reference_temp-vram
Radeon RX 6800 XT Reference_temp-vrm

GPUコアクロックについて、「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」はゲームクロック2015MHz、ブーストクロック2250MHzに設定されていますが、負荷テスト中の実動平均は2203MHzでした。
仕様上は下位モデルのRX 6800と比較して200MHz近く高い数値が設定されていますが、負荷テスト中の実動平均を見ると意外にも数十MHz程度の差しかありませんでした。
Radeon RX 6800 XT Reference_clock

また実用条件に近い冷却性能の検証として、実際にPCケースへ「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」を組み込み、Time Spy Extreme グラフィックテスト1を1時間に渡ってループさせてGPU温度やファン回転数がどうなるかを確認してみました。
Radeon RX 6800 XT Reference review_07380_DxO
検証機材のPCケースには「Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t」を使用しています。CPUクーラーは120サイズ簡易水冷でラジエーターを天面前方に設置、またPCケースのフロントに吸気ファンとして2基とリアに排気ファンとして1基の140mm角ケースファンをそれぞれ設置し、ファン回転数は1000RPMに固定しています。
GPU-CaseIn-Test
PCケースに入れた状態で長時間負荷をかけると「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」のGPU温度は最大79度、ジャンクション温度は最大96度に達し、ファン回転数は1400RPM以下に収まり、ベンチ板測定時と比較して+100~200RPM程度でした。
PCケース組み込み時でもファンノイズは非常に静かで、TGP300WのハイエンドGPUにフル負荷をかけているとは思えない非常に優れた静音性でした。競合NVIDIAのRTX 3080で言うとASUS TUF GAMINGやMSI GAMING X TRIOといった静音性に定評のあるモデル並みです。
Radeon RX 6800 XT Reference_stress


加えて1時間のストレステスト終盤にスマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE Pro」(レビュー)を使用してゲーム負荷時のグラフィックボード上の各所の温度をチェックしました。
「AMD Radeon RX 6800 XTリファレンスモデル」は、バックプレート表面や、背面や側面の隙間から確認できるPCB基板上のVRM電源回路やPCIE補助電源コネクタの付近の温度がホットスポットの最大値でも80度以下に収まっていました
GPUクーラーやバックプレートでほぼ完全に覆われているので内部温度をサーモグラフィで正確に測ることはできないのですが、RX 6000シリーズに搭載されているVRAMやVRM電源回路の温度センサーによると最大で90度前後に達している部分もあるようなので、気になる人は煩く感じない範囲内でファン速度を引き上げてみてください。
Radeon RX 6800 XT Reference_FLIR (1)
Radeon RX 6800 XT Reference_FLIR (2)
Radeon RX 6800 XT Reference_FLIR (3)
Radeon RX 6800 XT Reference_FLIR (4)


「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」を含めていくつかのグラフィックボードについてサウンドレベルメーターを利用してゲーム負荷時のノイズレベルを測定・比較しました。
検証機材はベンチ台の上に平置きにしているので、サウンドレベルメーターをスタンドで垂直上方向に50cm程度離して騒音値を測定しています。
GPU-Noise-Test
この測定方法において電源OFF時の騒音値は30dB未満です。目安として騒音値が35dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになりますが、35~38dB以下であればPCケースに入れてしまえばファンノイズが気になることはそうそうないと思います。40dB前後になるとベンチ台上で煩く感じ始め、45dBを超えるとヘッドホンをしていてもはっきり聞き取れるくらいになります。
A特性で測定しているのである程度は騒音値にも反映されていますが、同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質(細かい乱高下の有無や軸ブレ)にもよるので注意してください。

ノイズレベルの測定結果は次のようになっています。
「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」のファンノイズは1200~1400RPMというファン回転数(テストベンチ上でもPCケース内でも)の通りノイズレベルは32dB以下で、抜群の静音性を発揮しています。リファレンスモデルでこれだけ冷えて静かなら静音性においてオリファンモデルを求める必要はない、と断言できるレベルです。

「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」に採用されているバリアーリング付きファンはノイズレベルだけでなく体感的にもファンノイズを煩く感じにくい特長があり、ノイズレベルの通りPCケースに入れてしまえばまず煩く感じることのない程度のファンノイズです。
Radeon RX 6800 XT Reference_noise


AMD Radeon RX 6800 XTの消費電力と瞬間的な最大電源負荷を測定しました。
測定負荷には上で行った温度検証と同様に3DMark TimeSpy ストレステストを使用しています。テスト全体から1秒間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので、電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。
消費電力の測定は電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの入力ではなく変換ロスを差し引いたシステムへの出力電力をチェックしています。また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。
この方法であれば、CPU(後述のiGPUも)に負荷をかけても、CPUによる消費電力の変動はメイン電源ユニットCorsair HX 1200iの測定値には影響しません。しかしながら、測定値にはまだATX24PIN経由で供給されるマザーボードやDDR4メモリの電力が含まれるので、iGPUを使用した時の3DMark TimeSpy ストレステスト中の消費電力と最大電源負荷を同様に測定し、各種グラフィックボード使用時と差分を取る形でグラフィックボード単体の消費電力と最大電源負荷を算出します。
GPU-Power-Test

AMD Radeon RX 6800 XTの消費電力は305W、最大瞬間負荷は390Wでした。AMD Radeon RX 6800 XTは公式仕様でグラフィックボード全体の消費電力の指標値が300Wと公表されており、概ね仕様値通りの消費電力になっていると思います。
ここ数年のAMD製GPUはNVIDIA製GPUと比較してワットパフォーマンスで劣る傾向があり、前世代RX 5000シリーズでギリギリRTX 20シリーズのワットパフォーマンスに追いついたかどうかという具合でしたが、「Radeon RX 6800 XT」は2021年最新ハイエンド帯で同等の性能を発揮するRTX 3080よりも低い消費電力となっており、AMD公式がアピールする通り、優れたワットパフォーマンスを実現しています。最新RDNA2アーキテクチャのワットパフォーマンスの高さを再認識できる結果です。
Radeon RX 6800 XT Reference_power



AMD Radeon RX 6800 XT レビューまとめ

最後に「AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスモデル」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ
  • 4K/120FPSゲーミングにも対応可能、4KゲーミングモンスターなGPU
  • Radeon VIIを実ゲームで60%以上も上回るグラフィック性能
  • NVIDIAの最新ハイエンドGPU RTX 3080とほぼ同等のグラフィック性能
  • 649ドルからなので奮発すれば手を出せるハイエンドGPU
  • 全長267mm&3スロット占有で、従来の一般的なフルサイズグラボに近いサイズ
  • TGP300Wの発熱を騒音値33dB以下で冷やしきる抜群の静音性
  • USB Type-C (DP Alt Mode) ビデオ出力を搭載
悪いところor注意点
  • 2021年1月現在、入手性が極めて悪い(NVIDIA RTX 30と比較してもなお悪い)
  • リファレンスモデルは限定数量生産のようなのですでに終売かも
  • 希望小売価格に反して、オリファンモデル同士ではRTX 3080よりも高価

2年越し1世代飛ばしで登場した待望のAMD次世代ハイエンドGPU「Radeon RX 6800 XT」は、同社から最後にリリースされた前ハイエンドGPUのRadeon VIIを60%以上も上回り、NVIDIAの最新ハイエンドGPUであるGeForce RTX 3080と正面から殴り合える同等のグラフィック性能を実現しており、AMDが”4Kゲーミングに最適(Ultra 4K Gaming)”と謳うのも納得です。
2020年最新の超高画質なPCゲームですら素の最高画質設定で4K/60FPSをキープでき、高画質設定のまま4K/120FPSのハイフレームレートで快適なプレイも難しくなく、4Kゲーミングモンスターの登場といっても過言ではありません。
Radeon RX 6800 XT Reference_pefsum

4K解像度の60FPS~120FPSに対応可能なRadeon RX 6800 XTを使用するのであれば、4K/144Hzゲーミング液晶モニタ「LG 27GN950-B」、4K/120Hz有機ELの「Alienware 55 AW5520QF」や「LG OLED TV 48CXPJA」など4K解像度&ハイリフレッシュレートなディスプレイと組み合わせてラグジュアリーなゲーミング環境を構築したいところです。
4K_120Hz+_Gaming Monitor
その他にもバトルロイヤル系ゲームに最適な240Hzオーバーの超高速ゲーミングモニタと組み合わせてガチで勝利を狙うゲーマーにもフルHDで高FPSを稼げるRadeon RX 6800 XTはオススメです。
240Hz+の超ハイリフレッシュレートなゲーミングモニタのレビュー記事一覧へ
240Hz+_GamingMonitor_2021


「AMD Radeon RX 6800 XT」のリファレンスモデルについてやはり特筆すべきは、パートナー各社ハイエンドモデル級どころか、それらを上回るかというレベルの抜群の静音性を発揮するGPUクーラーです。
リファレンスモデルのGPUクーラーがここまで完成度が高いと、静音性を求めてパートナー各社のオリファンモデルを選ぶ必要がなく、近年のGPUではファクトリーOCの影響も小さいので、価格も安価なリファレンスモデルがRX 6800 XTの鉄板モデルと言っても過言ではないと思いました。

Radeon RX 6000シリーズは競合NVIDIAのRTX 30シリーズに対してワットパフォーマンスの高さ、それに付随してグラフィックボードサイズをコンパクトにできることを公式スライドでも売りにしているのに、パートナー各社オリファンモデルに目を向けると、RTX 30シリーズと同様に全長300mmかつ3スロット占有といった超大型モデルばかりです。
そんな中でRX 6800 XTのリファレンスモデルは厚みこそ3スロット占有でやや大きいものの、従来のフルサイズグラフィックボード標準な全長267mmでTGP300WのハイエンドGPUとしてはコンパクトサイズに収まっているところも見逃せません。
AMD RDNA2_Perf-per-Watt_vs-RTX30


以上、「AMD Radeon RX 6800 XT」のレビューでした。
Radeon RX 6800 XT Reference


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