OSのインストールやら検証ソフトウェアのセットアップやらでAMD Ryzen Threadripper関連の検証機材の準備が概ね整ったので簡単にAMD Ryzen Threadripper 1950Xを4.0GHzにオーバークロックしてみました。
検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | AMD Ryzen ThreadRipper 1950X 16コア32スレッド 定格全コア同時3.6GHz |
CPUクーラー | NZXT KRAKEN X62 280サイズ簡易水冷 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z RGB F4-3866C18Q-32GTZR DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) |
マザーボード | ASRock X399 Taichi (レビュー予定) |
ビデオカード | MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ | Samsung 850 PRO 256GB (レビュー) |
OS | Windows10 64bit Home |
電源ユニット | Corsair RM650i (レビュー) |
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
マザーボード別のOC設定についてはX399 Taichiを見た限りでは、基本的にRyzenに対応したAM4マザーボードと設定項目は同じです。AMD Ryzen ThreadripperのBIOS OC設定は使用するマザーボードベンダー毎にひとまずAM4マザーボードレビューのOC設定に関する解説を読んでもらえればわかると思います。
・AMD Ryzen対応AM4マザーボードレビュー記事一覧
AMD Ryzen ThreadripperでコアクロックのOCを行う場合の設定項目は、基本的にコアクロック(動作倍率)、コア電圧、ロードラインキャリブレーションの3つでOKです。目安としてはコア電圧1.300~1.350Vでコアクロック4.0GHzくらいと考えて下さい。
検証機材のマザーボードとしてASRock X399 Taichiを使用していますが、下のスクリーンショットのように「コアクロック(動作倍率):4000MHz」「コア電圧:1.350V」「ロードラインキャリブレーション:Level2」と設定しました。今回は簡単のためメモリは触っていません。
上の設定で無事にOSも起動してCinebenchもクリアできました。Ryzen Threadripper 1950Xは定格で全コア平均3.6GHz程度になるので4.0GHzにOCするとCinebenchのスコアも1割ほど伸びて3300を超えてきます。
続いてこのOC設定を使用してストレステストを実行しました。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はRyzen Threadripper 1950Xの場合10分ほどなので同じ動画のエンコードを2つ並列して2周実行しています。テスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
ストレステスト中のCPU温度とCPU使用率のログは次のようになりました。CPU温度は-27度の補正済みです。AMD Ryzen Threadripper 1950Xを全コア同時4.0GHzにOCしてストレステストをクリアできました。CPUクーラーのファン回転数は1500RPMで固定しています。
280サイズラジエーター簡易水冷のNZXT KRAKEN X62を使ってファン回転数1500RPMで平均72.7度、最高76.9度なので簡易水冷環境ではこの辺りが温度的に安心できるOC限界のような気がします。ひとまず1.350Vで4.0GHz回っているのでこの石はそこそこ良さげなOC耐性でしょうか。ハズレ石ではないと思うのですが。
ちなみにこのストレステストのエンコード時間ですが、1950Xの4.0GHz(mem2133)が30分ほど、7900Xの4.6GHz(mem3200)が33分ほどでした。2個並列でエンコードを行っていますが、cinebenchスコアほど綺麗にスケーリングしないようです。シングルスレッドが効いているのか、スリッパがまだ最適化不足なのか。
システム全体への入力電力(変換損なし)ですが、動画のエンコード時でCPU別の消費電力比較は次のようになっています。Ryzen Threadripper 1950Xの4.0GHz、1.35Vが、Core i9 7900Xの4.6GHz、1.200Vと同程度の消費電力となります。(i9 7900Xはメモリを3200MHzにしているので2133に揃えると10~20Wほど下がります。)
Ryzen Threadripper 1950XもCore i9 7900XもオーバークロックするとCPUへ電力供給を行うEPS端子だけでも20A以上の出力を要求するので、OCで運用を狙う場合はシングルレーンで大出力が可能な電源ユニットを選ぶ必要があります。下のスクリーンショットではRM650iにEPS電源のみを接続してi9 7900X 4.6GHz OC時の+12Vの電流値をチェックしています。
【ここから、12日に追記】
今回の個体が4.0GHz回せる電圧の下限をチェックしてみたところBIOS設定値で1.275Vがストレステストをクリアできる下限でした。1.2V台で4.0GHzはCinebenchの一発芸で実際は1.3V以上必要だと思っていたのでこの結果はかなり意外でした。さすがの上位5%選別。Ryzen 7 1800Xで4GHzに四苦八苦していたのが悲しくなるレベルです。
CPUクーラーのファンとポンプの設定は同じでVRMの冷却にスポットクーラーを追加しているので環境は全く同じではありませんが、コア電圧を下げた分でやはりCPU温度も下がっています。70度以下なので安心できる温度です。
あとVRM電源については4.0GHzにOCするならスポットクーラー推奨。X299に比べてヒートシンクが大きいので、だいぶんましですがそれでもやはり温度は高めになります。下はスポットクーラーなしで4.0GHz、1.275VにOCした時の温度。CPUソケット周辺が密集していてサーモ撮りにくいのでVRMを挟んでソケットの逆から撮っています。
ちなみにBIOS設定値の1.250VでもCinebenchの一発芸であれば4.0GHzでクリアできました。
4.1GHzについてですが、これもCinebenchの一発芸であればBIOS設定値1.350Vでクリアできました。ただしストレステストは1.400V盛ってもクリアできなかったので、Threadripper 1950Xでは4.1GHzの常用は壁がありそうです。簡易水冷ではCPU温度が80度を超えてくるという問題もあります。
【ここから、16日に追記】
コメント欄からの情報もあって、個人的にも先行レビューのOC耐性情報の件は気になっていたので、ASUS ROG ZENITH EXTREME環境でも簡単に1950XのOC耐性をチェックしてみました。使っている石は上と同じです。というか板以外同じ。
BIOS設定値で簡単に箇条書きすると次のようになりました。
4.0GHz、1.300V、LLC:Level5 → Cineクリア、エンコードでフリーズ
4.0GHz、1.33V、LLC:Level5 → エンコードをクリア
4.0GHz、mem3200MHz(タイミングAuto)、1.350V、LLC:Level5 → エンコードをクリア
先行レビューの相場ではASUS ROG ZENITH EXTREME環境でメモリ周波数3200MHzだと(メモリをOCするとコア電圧の要求値が上がる傾向あり)、コアクロック3.90~4.0GHzに対してコア電圧1.350~1.400V当たりだったので、管理人の検証結果も似たような数字に収まった感じです。
mem2133の4.0GHzで比較するとASUS ROG ZENITH EXTREMEはASRock X399 Taichiよりも電圧を要求してる感じがします。Ryzen 7 1800Xの4.0GHz OCでも板毎にコア電圧は結構差があったので、1950Xで4.0GHz狙う場合は板も重要かも。
以上、ざっくりとAMD Ryzen Threadripper 1950Xを4.0GHzへオーバークロックしてみた結果でした。
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AMD Ryzen Threadripper対応CPUクーラーについてはAsetek OEMの簡易水冷CPUクーラーはリテンションキットがCPUのリテールボックスには付属します。当サイトでレビュー記事を公開しているものでは「Fractal Design Celsius S24 / S36」や「NZXT KRAKEN X42 / X52 / X62」などがおすすめです。
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