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Western Digital&東芝連合製TLC型64層3D NANDメモリチップ「BiCS3」とWestern Digitalが独自開発したメモリコントローラーを採用することによって前モデル「WD Black NVMe SSD」と比較してアクセススピードの飛躍的な高速化を実現した最新NVMe M.2 SSD「WD Black 3D NVMe SSD」シリーズから容量1TBモデル「WD Black 3D NVMe SSD 1TB (型番:WDS100T2X0C)」を購入したのでレビューしていきます。NVMe M.2 SSDというと熱くてサーマルスロットリングが発生するというイメージが強いですが、「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」はWestern Digitalが独自開発した「Data Path engines」を搭載する新型メモリコントローラーによって低発熱を実現しており動作温度が低く、アクセススピードも現行製品中最速クラスな新定番NVMe M.2 SSDとなっています。
製品公式ページ:https://www.wdc.com/products/internal-ssd/wd-black-nvme-ssd.html
データシート:https://www.wdc.com/content/~/eng/spec_data_sheet/2879-810008.pdf
WD Black 3D NVMe SSD 1TB レビュー目次
1.WD Black 3D NVMe SSDについて
2.WD Black 3D NVMe SSD 1TBの外観
3.WD Black 3D NVMe SSD 1TBの検証機材と基本仕様
4.WD Black 3D NVMe SSD 1TBのベンチマーク比較
5.WD Black 3D NVMe SSD 1TBの連続書き込みについて
6.WD Black 3D NVMe SSD 1TBの温度とサーマルスロットリングについて
7.WD Black 3D NVMe SSD 1TBの実用性能比較
8.WD Black 3D NVMe SSD 1TBのレビューまとめ
WD Black 3D NVMe SSDについて
「WD Black 3D NVMe SSD」シリーズはWestern Digital&東芝連合製TLC型64層3D NANDメモリチップ「BiCS3」とWestern Digitalが独自開発したメモリコントローラーを採用することによって前モデル「WD Black NVMe SSD」と比較してアクセススピードの飛躍的な高速化を実現した最新NVMe M.2 SSDです。「WD Black 3D NVMe SSD」は容量別で256GB/512GB/1TBの3モデルがラインナップされています。「WD Blue 3D NAND SATA SSD」と同時に発表されたSanDiskの「SanDisk Extreme PRO M.2 NVMe 3D SSD」については、SATA SSDの「SanDisk SSD Ultra 3D」と「WD Blue 3D NAND SATA SSD」の関係同様にブランディングのみの違いで同容量については同じ製品となっています。
HDD製品の信頼から自作PCユーザーに人気のあるWestern Digital、SDカードの信頼からカメラユーザーなどフォトグラファーに人気のあるSanDiskと特定のブランドを指名買いするユーザーも少なくないため、両ブランドから並行して販売されているようです。
「WD Black 3D NVMe SSD」シリーズはメモリチップにWestern Digital&東芝連合製64層3D NAND「BiCS3」、メモリコントローラーにWestern Digitalが独自開発したコントローラーが採用された、M.2 2280フォームファクタのNVMe(PCI-E3.0x4)接続M.2 SSDです。
「WD Black 3D NVMe SSD」シリーズのアクセススピードは容量によって若干異なりますが、最大でシーケンシャル読出3400MB/s、シーケンシャル書込2800MB/s、ランダム(4KB, QD32, 8thread)読出500,000 IOPS、ランダム(4KB, QD32, 8thread)書込400,000 IOPSの高速アクセスを実現しています。
「WD Black 3D NVMe SSD」シリーズのMTBF(平均故障時間)は175万時間、書込耐性は250GBが200TBW、500GBが300TBW、1TBが600TBWとなっており、メーカーによる製品保証期間は5年間です。
「WD Black 3D NVMe SSD」は近年主流なTLC型SSDとなっており、TLC型の例にもれずNANDメモリの一部を高速なSLCキャッシュとして使用する高速化技術が採用されています。従来のTLC型SSDではこのSLCキャッシュが飽和した後の書き込みでもSLCキャッシュを必ず通す仕様があるためアクセス遅延が発生しました。一例として競合製品のSamsung 970 EVOでは数十GBの大容量SLCキャッシュを確保することでこの対策としています。
「WD Black 3D NVMe SSD」の大きな特徴の1つとして、Western Digitalが独自開発した新型メモリコントローラー内にCPUとは別に「Data Path engines」が用意されていることが挙げられます。
「WD Black 3D NVMe SSD」は近年主流なTLC型SSDとなっておりTLC型の例にもれずNANDメモリの一部を高速なSLCキャッシュとして使用する高速化技術が採用されています。従来のTLC型SSDではこのSLCキャッシュが飽和した後の書き込みでもSLCキャッシュを必ず通す仕様があるためアクセス遅延が発生しました。
「WD Black 3D NVMe SSD」ではこの対策として、SLCキャッシュの飽和後にSLCキャッシュを介さずに直接NANDメモリに書き込みを行うバイパス経路「Data path」およびData path制御用コントローラー「Data Path engines」が用意されています。SLCキャッシュ超過後に「Data path」から直接TLC NAND領域に書き込みアクセスを行うことで、アクセス遅延の回避に加えて、CPUのクロックサイクルを消費しないため消費電力および発熱を大幅に引き下げを実現しています。
実際に「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」の実機で管理人が検証してみたところ、3GB/s前後のシーケンシャル性能を発揮する18年最新のNVMe M.2 SSDの多くが連続した負荷に対してメモリコントローラー温度が90度から100度に達するのに対して、「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」は70度後半に収まるという優秀な結果でした。
WD Black 3D NVMe SSD スペック一覧 |
|||
容量 | 250GB (型番:WDS250G2X0C) |
500GB (型番:WDS500G2X0C) |
1TB (型番:WDS100T2X0C) |
メモリー | Western Digital&東芝連合製 TLCタイプ 64層3D NAND | ||
連続読出 | 3000MB/s | 3400MB/s | |
連続書込 | 1600MB/s | 2500MB/s | 2800MB/s |
4Kランダム読出 | 220,000 IOPS | 410,000 IOPS | 500,000 IOPS |
4Kランダム書込 | 170,000 IOPS | 330,000 IOPS | 400,000 IOPS |
消費電力 | 70mW(アイドル) / 110mW(アクティブ) |
100mW(アイドル) / 140mW(アクティブ) |
|
動作温度範囲 | 0°C~70°C | ||
MTBF | 175万時間 | ||
耐久性評価 | 200TBW | 300TBW | 600TBW |
保証期間 | メーカー5年 |
WD Black 3D NVMe SSD 1TBの外観
まず最初にWD Black 3D NVMe SSD 1TBの外観や付属品について簡単にチェックしておきます。紙製のパッケージを開くとSSD本体はダンボールに挟まれて、プラスチックのスペーサーに収められていました。付属品は仕様書のみとなっています。
「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」のSSD本体デザインについては普通にM.2 2280サイズ、M-Key型のM.2 SSDです。PCB基板は黒色になっています。シールの下には中央にメモリコントローラー、メモリコントローラーの左隣にDRAMキャッシュ、両端には1枚ずつメモリチップが実装されています。
最大容量の1TBモデルでもメモリコントローラーやメモリチップが表面のみに実装される片面実装です
WD Black 3D NVMe SSD 1TBの検証機材と基本仕様
WD Black 3D NVMe SSD 1TBの各種検証を行う環境としては、ASRock Z270 SuperCarrierなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i7 7700K 殻割り&クマメタル化(レビュー) Core:5.0GHz, Cache:4.8GHz |
CPUクーラー | Intel TS15A |
メインメモリ | Corsair Dominator Platinum Special Edition DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) 3200MHz, 14-16-16-36-CR2 |
マザーボード |
ASRock Z270 SuperCarrier (レビュー) |
ビデオカード | 【基礎性能検証用】 MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC (レビュー) 【PCゲームロード時間検証用】 EVGA GTX 1080 Ti SC2 iCX (レビュー) |
システムストレージ |
Crucial MX300 SATA M.2 SSD 1TBCT1050MX300SSD4 |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」のボリュームをWindows10上で作成したところ空きスペースは931GBでした。
Western DigitalのSSD管理ソフト「Western Digital SSD Dashboard」から「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」のファームウェアを確認したところ購入時点で最新ファームウェアが当てられていました。
WD Black 3D NVMe SSD 1TBのベンチマーク比較
「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」の性能を測るためストレージに関する基本的なベンチマークソフトを使用して測定を行います。比較対象として同じくNVMe M.2 SSDの「Samsung 960 PRO 512GB」と「Intel SSD 760p 512GB(レビュー)」、およびSATA SSDの「SanDisk SSD Ultra 3D 2TB(レビュー)」と「WD Blue 3D NAND SATA SSD 500GB(レビュー)」でも同様の測定を行いました。まずはCrystalDiskMark6.0.0(QD32, 8GiB)のベンチマーク結果です。「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」やその他の比較対象ストレージでは次のようになっています。
「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」のベンチマークススコアは連続読み出し3400MB/s、連続書き込み2800MB/sとなりました。連続読み出し3000MB/s越えの製品はそれなりに出てきていますが、2800MB/sという連続書き込み速度は18年現在文句なしに最速の製品です。
ATTO Disk Benchmark(512B-64MB, 256MB, QD4)の結果は次のようになっています。「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」やその他の比較対象ストレージでは次のようになっています。
ATTO Disk Benchmarkはブロックサイズ別のランダム性能を主にチェックするベンチマークなので4KB~1MBを抜粋してリード/ライト性能をグラフにして比較しました。
「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」を同じくNVMe M.2 SSDの「Samsung 960 PRO 512GB」や「Intel SSD 760p 512GB」と比較してみると、書き込み性能は2800MB/sという連続書き込み速度の圧倒的な高さを反映してブロックサイズ別でも優秀な結果になっていますが、128KB以下の小ブロックサイズの読み出しは競合製品に比べて振るわない結果になりました。
AS SSD Benchmark(5GB)の結果は次のようになっています。「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」やその他の比較対象ストレージでは次のようになっています。
PCMark8 ストレージテストのベンチマーク結果は次のようになっています。「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」やその他の比較対象ストレージでは次のようになっています。
「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」の基本的な性能を主要な各種ベンチマークで比較検証してみたところ、やはり仕様値でもわかっていたところですが、2800MB/sという頭一つ抜けた圧倒的な連続書き込み速度が目に留まります。ATTO Disk Benchmarkにおいて小ブロックサイズの読み出し速度が競合製品に比べて低かったところは若干気になりますが、その他のベンチマークでは現行最速かつ鉄板なNVMe M.2 SSDといっても過言ではないSamsung 960 PROと比較しても遜色ない結果になっており、実アプリケーションを使用したストレージベンチマークであるPCMark8 ストレージテストでもSamsung 960 PROに迫る総合スコアを実現しています。
WD Black 3D NVMe SSD 1TBの連続書き込みについて
「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」に連続書き込みを行った場合の動作についてチェックします。TLC型SSDの多くは書き込み速度の底上げのためSLCキャッシュを使用しているので、キャッシュ容量を超える大容量の書き込みが発生した場合、書き込み速度が階段的にガクッと下がる仕様になっています。例えば600MB/sが理論的な上限速度となるSATA SSDの場合は、動画ファイルなど数十GB以上の単一ファイルの連続書き込みが発生すると、CrystalDiskMarkなどで表示される400~500MB/sの連続書き込み速度を維持できず100~200MB/sまで書き込み速度が下がります。
2.5インチSATA SSDの「Samsung 850 PRO 2TB」やNVMe M.2 SSDの「Samsung 960 PRO 512GB」はMLC型なのでHD Tune Proを使用して100GB以上の大容量な連続書き込みを行っても書き込み速度が下がることはなく、いずれも理想的な書き込み速度を維持しています。
一方でもう1つの比較用SSDであるSATA SSDの「PNY CS1311 960GB」はSLCキャッシュによる書き込み速度の底上げを行っている典型的なTLC型SSDとなっており、書き込み開始直後は500MB/sの書き込み速度をマークしているものの、全容量960GBに対して1.5%程度の13~15GBを書き込んだ後は300~350MB/sまで書き込み速度が低下します。
またTLC型の書き込み速度の低下はNVMe SSDでも発生することがあり「Samsung 960 EVO」は3bit-MLC NANDの一部を高速なSLC NANDとして用いて書き込み時にそこを優先的に使用する高速化技術「Intelligent TurboWrite」が使用されているので、SLCキャッシュ容量を超える書き込みが発生するとライト速度が低下します。
Western Digital&東芝連合製TLC型64層3D NANDメモリチップ「BiCS3」をメモリチップに採用する「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」はどのような挙動を見せるのか確認してみたところ、書き込み開始直後は2800MB/s程度の書き込みスピードを維持していますが、書き込み総量が12GB程度を超えるとSLCキャッシュを上回るため書き込み速度は1400MB/s前後まで減少しました。書き込み速度はキャッシュを超過すると低下するとはいえ、低下後ですら1400MB/sという十分な速さを実現しており、理想500MB/sなSATA3.0 SSDよりは3倍近く高速で、比較対象をNVMe M.2 SSDに限定してもSamsung 960 PROを除けば匹敵する製品はほぼ存在しないという実状を考えると十分な性能だと思います。
おそらく1400MB/sよりかはいくぶん遅くなると思いますが、容量下位の500GBや250GBモデルのキャッシュ超過後の書き込み速度が気になるところです。
WD Black 3D NVMe SSD 1TBの温度とサーマルスロットリングについて
NVMe M.2 SSDでは重要になる項目として「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」の温度とサーマルスロットリングについてチェックしていきます。アクセススピードが数GB/sに及ぶ高速NVMe接続に対応したM.2 SSDでは、そのコンパクトさゆえに放熱性能には表面積的な限界があり、連続したアクセスが発生するとメモリチップやメモリコントローラーが高温になって速度制限がかかるサーマルスロットリングが発生する可能性があることが知られているので、「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」について、連続した高速アクセス発生時の温度やサーマルスロットリング発生の有無をモニタリングソフトとサーモグラフィーを使用して検証します。
WD Black 3D NVMe SSD 1TBのSSD温度の測定やサーマルスロットリング発生の有無の確認については、ヒートシンクがないPCIE-M.2アダプタ拡張ボードにSSDを装着して検証を行います、
測定時の検証負荷としては上で行ったベンチマーク測定同様にCrystalDiskMark6.0.0(QD32, 8GiB)を使用して間を置かず複数回ベンチマークをループさせ、その間のSSD温度や読み出し・書き込み速度のモニタリング値をHWinfoを使用してログ取得します。
WD Black 3D NVMe SSD 1TBの検証結果を確認する前に、NVMe M.2 SSDとしてはおそらく最高性能で認知度が高く普及しているであろう「Samsung 960 PRO 512GB」を比較参考のサンプルとして上記の負荷テストを実行した結果を確認しておきます。
Samsung 960 PRO 512GBで負荷テストを実行した場合のSSD温度とアクセススピードの推移は下のようになっています。Samsung 960 PRO 512GBにはメモリチップとメモリコントローラーの2か所に温度センサーが実装されています。ベンチ2周目でメモコン温度は最大温度の100度、メモリ温度も最大温度に近い60度超をマークします。この状態で複数回ベンチマークを実行しても速度低下は発生せずサーマルスロットリングは発生しません。
サーモグラフィーによって負荷テスト終盤におけるSamsung 960 PRO 512GBのM.2 SSD上の温度を確認してみると、ソフトウェアモニタリング同様に右端に配置されたメモリコントローラーは93度、左半分に配置されたメモリチップは60~70度となっています。
本題のWD Black 3D NVMe SSD 1TBの温度やサーマルスロットリングの有無についてチェックしていきます。
まずソフトウェアモニタリングによるWD Black 3D NVMe SSD 1TBのSSD温度とアクセススピードの推移は下のようになっています。WD Black 3D NVMe SSD 1TBに関してソフトウェアモニタリングが可能な温度はメモリコントローラーの温度になっているようです。ベンチマークを複数回繰り返してもサーマルスロットリングが全く発生しておらず、アクセススピードは終始安定しています。
負荷テスト終盤におけるWD Black 3D NVMe SSD 1TBのサーモグラフィーは下のようになっています。ソフトウェアモニタリングでは最大70度程度でしたが、「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」の中央にあるメモリコントローラー温度は70度後半程度に収まっており、競合のSamsung 960 PROやIntel 760pが90度を超えるのと比較すると十分に低温で、Western Digitalが独自開発した「Data Path engines」を搭載する新型メモリコントローラーの高アクセススピードかつ低発熱な優秀さがうかがえる結果になっています。
既存のNVMe M.2 SSDと比較すると抜群のアクセススピードを発揮しつつ、比較的低い動作温度が実現されていますが、連続した後負荷時の温度は高くなるので長期運用における温度原因の故障リスクを最小限にするため、可能であれば、M.2 SSDヒートシンクやヒートシンク付きPCIE拡張ボードの利用をおすすめします。
・「AquaComputer kryoM.2 evo/micro」をレビュー
・「SilverStone SST-TP02-M2」をレビュー
SilverStone M.2 SSD専用放熱ヒートシンク/パッドセット SST-TP02-M2
SilverStone
WD Black 3D NVMe SSD 1TBの実用性能比較
続いて「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」で大容量・多数データのコピーやPCゲームのロード時間など実際の使用について性能比較をしてみました。ベンチマークソフトによる基礎検証同様に比較対象として同じくNVMe M.2 SSDの「Samsung 960 PRO 512GB」と「Intel SSD 760p 512GB(レビュー)」、およびSATA SSDの「SanDisk SSD Ultra 3D 2TB(レビュー)」と「WD Blue 3D NAND SATA SSD 500GB(レビュー)」でも同様の測定を行いました。まずはファイルのコピーに関する実性能比較となります。検証に使用するデータとしては次のような80GBで多数のファイルが入ったゲームのフォルダ(The Witcher 3とRise of the tomb Raiderなどのゲームフォルダ)と50GBの動画ファイルの2種類を使用しています。
データのコピーにおいては当然ですが、元データのあるストレージの読み出し性能とコピー先の書き込み性能の両方が重要になります。測定においては書き込み先/読み出し元の対象となるストレージが必要になるため、各ストレージのコピー相手にはM.2-PCIE変換アダプタ「Aquacomputer kryoM.2」に設置したSamsung 960 PRO 512GBを使用しています。
コピーテストにおいて検証ストレージがコピー相手「Samsung 960 PRO 512GB」と同じくNVMe SSDの場合は、ASRock Z270 SuperCarrierの1段目PCI-Eスロットにグラフィックボード、3段目PCI-Eスロットにコピー相手「Samsung 960 PRO 512GB」、5段目PCI-Eスロットに検証ストレージを装着しています。
Z270プラットフォームではCPU-チップセット間のDIMM3.0の帯域がボトルネックになって複数のNVMe SSDへ同時にアクセスが発生するとトータルのアクセススピードが4GB/s程度に制限される場合がありますが、ASRock Z270 SuperCarrierではPLXスイッチチップを介するもののCPU直結PCI-Eレーンに接続されているので、この問題は発生しません。
「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」など各種検証ストレージとSamsung 960 PRO 512GBとの間で50GBの動画ファイルおよび80GBのゲームフォルダをコピーした時間の比較結果は次のようになりました。
まずは50GBの動画ファイルのコピーについてですが、動画ファイルは単一の大容量ファイルなので実際のコピーではベンチマークのシーケンシャルリード・ライト性能が重要になってきます。
WD Black 3D NVMe SSD 1TBは動画ファイルのコピー読み出しにおいてSamsung 960 PRO 512GBとほぼ同じ所要時間で27秒となっています。WD Black 3D NVMe SSD 1TBはPCI-E3.0x4帯域のNVMe接続に対応した高速SSDなので、SATA3.0接続のSSDと比較すると3倍以上高速な読み出し速度を実現しており、読み出し速度は1800MB/s程度となっています。
動画ファイルのコピー書き込みについてチェックしてみると、同じくNVMe接続SSDのSamsung 960 PRO 512GBの27秒というコピー時間に少し遅れて、「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」のコピー書き込み時間は33秒ほどとなりました。序盤こそSamsung 960 PRO 512GBと同等の書き込み速度なのですが、12GB程度のSLCキャッシュを超過した後は書き込み速度が1400MB/sまで下がるのでこのような結果になっています。とはいえ同じくTLC型メモリを採用するIntel 760pや規格的な理想書き込み速度が500MB/s程度のSATA3.0 SSDと比較すると、「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」の書き込み速度は3倍近く高速です。
続いてゲームフォルダのコピーについてですが、ゲームフォルダは大小様々なファイルを含むので、実際のコピーではベンチマークの連続性能だけでなく、ランダム性能も重要になってきます。
WD Black 3D NVMe SSD 1TBはゲームフォルダのコピー読み出しにおいてSamsung 960 PRO 512GBよりも2秒ほどですが遅い結果になりました。若干ランダム性能が効いてくるワークロードなのでATTOベンチマークに出ていた小ブロックサイズ時の転送の遅さが表れているのかもしれません。とはいえ動画ファイルのコピー読み出し同様にSATA3.0 SSDよりも3倍高速な読み出し速度となっています。
WD Black 3D NVMe SSD 1TBのゲームフォルダのコピー書き込み速度についても動画ファイルのコピー書き込みに準ずるような結果になっており、WD Black 3D NVMe SSD 1TBは最速のSamsung 960 PROに少し遅れて68秒でコピーが完了しました。
続いて実際にPCゲームのロード時間も比較してみました。
The Witcher 3ではグラフィック設定をフルHD解像度・最高設定としてノヴィグラドの広場からトゥサンのコルヴォ・ビアンコブドウ園までのファストトラベル時のロード時間を比較しています。
Rise of the Tomb RaiderではフルHD解像度においてグラフィック設定をDirectX12で個別に最高設定として製鋼所の空き地までのファストトラベル時のロード時間を比較しています。
以上の条件で「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」など各ストレージについてゲームのロード時間比較を行った結果は次のようになりました。
ロード時間を測定して比較してみたところコンマ秒で差がある可能性はあるものの「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」含めて各SSDでは大きな差は確認できませんでした。
WD Black 3D NVMe SSD 1TBのレビューまとめ
最後にWestern Digital&東芝連合製TLC型64層3D NANDメモリチップ「BiCS3」を採用するNVMe M.2 SSD「WD Black 3D NVMe SSD 1TB(型番:WDS100T2X0C)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- NVMe規格として理想的な連続リード3400MB/sと現行製品最速の連続ライト2800MB/s
- 連続負荷でもメモコン温度70度程度でサーマルスロットリングが発生が発生しにくい
- 1TBモデルは大容量書き込みで速度低下しても1400MB/sの書き込み速度で高速
- TLC型なので高速NVMe M.2 SSDとしては安価な価格帯
- メーカー正規保証期間が5年間
- TLC型なので大容量の連続書き込みでは速度低下が発生する
「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」を検証してみたところ、基礎的な各種ベンチマークの多くではNVMe M.2 SSDとしては最速クラスかつ鉄板モデルの1つであるSamsung 960 PROに近い性能であり、とりわけ2800MB/sをマークする連続書き込み性能は文句なしに現行最速です。そんな抜群のアクセススピードを発揮しながら、Western Digitalが独自開発した「Data Path engines」を搭載する新型メモリコントローラーによって、既存の製品と比較して低発熱になっているところも魅力です。
WD Black 3D NVMe SSDシリーズのメモリチップにはTLCタイプのものが採用されているので、18年5月に発売予定の廉価モデルのSamsung SSD 970 EVOシリーズが競合製品になりそうです。
WD Black 3D NVMe SSD 1TBにはTLCタイプのSanDisk製3D NANDメモリが採用されているので、多くのTLC型SSDと同様の特徴が大容量書き込み時にでており、1TBモデルでは12GB程度のSLCキャッシュを超える書き込みアクセスでは理想値2800MB/sから1400MB/sまで書き込み速度が低下します。とはいえ速度低下時ですらSATA3.0規格の理想書き込み速度である500MB/sの3倍近くをマークしており、NVMe SSDと比較してもSamsung 960 PROを除けば上回る性能を持つ製品は存在しないという実情もあります。
近日発売のSamsung 970 PRO/EVOを含めて考えると、仕様値になりますが、MLCメモリチップ採用で速度低下が発生しないSamsung 970 PROの500GBが2300MB/s、1TBが2700MB/sと比較すると若干分が悪くなっています。一方でSamsung SSD 970 EVOシリーズは1TBや2TBがキャッシュ超過後は1200MB/sとなっており、WD Black 3D NVMe SSDシリーズとSamsung SSD 970 EVOシリーズは容量単価が同じなので、両者は競合製品として十分成立しています。前世代の「WD Black NVMe SSD」とSamsung 960 EVOの関係を考えると、970 EVOの競合として余裕で通用しそうな「WD Black 3D NVMe SSD」シリーズはよくぞここまで進化した、と驚きを禁じ得ないレベルです。
「WD Black 3D NVMe SSD」シリーズは価格面でも250GBが119ドル、500GBが229ドル、1TBが449ドルとTLC型SSDらしい安価な設定になっており、メインストリーム向けNVMe M.2 SSDとしての魅力を損ないません。
シーケンシャルリード3400MB/sかつシーケンシャルライト2800MB/sの高速アクセススピードを発揮し、サーマルスロットリングが発生しない低発熱であり、TLC型NVMe M.2 SSDらしい安価な価格帯で提供される「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」は、メインストリーム向けNVMe M.2 SSDとしておすすめの製品です。
以上、「WD Black 3D NVMe SSD 1TB」のレビューでした。
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・「Intel SSD 760p 512GB」をレビュー
・「Samsung SSD 970 EVO 1TB」をレビュー
・「Samsung 960 PRO 512GB/1TB/2TB」をレビュー
・大容量の書込でも遅くならない「SanDisk SSD Ultra 3D 2TB」をレビュー
・「WD Blue 3D NAND SATA SSD 500GB」をレビュー
(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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