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Ryzen Threadripperの超巨大なCPUヒートスプレッダをカバーする面積68mm×46mmのニッケルメッキ処理済み大型銅製ベースプレートと左右12本の銅製6mm径ヒートパイプで構成されたヒートシンクを採用し、クールなガンメタルカラーのアルミニウム製外装とアドレッサブルLEDイルミネーションで装飾されたAMD Ryzen ThreadripperのTR4プラットフォーム対応CPUクーラー「Deepcool GAMER STORM Fryzen(型番:DP-GS-MCH6N-FZN-A)」を国内発売に先駆けて入手したのでレビューしていきます。
製品公式ページ:http://www.gamerstorm.com/product/CPUAIRCOOLER/2018-04/1287_7921.shtml
マニュアル:http://www.gamerstorm.com/download/pdf/FRYZEN_EN_PDF.pdf
Deepcool Fryzen(DP-GS-MCH6N-FZN-A)
Deepcool
<代理店公式>
レビュー目次
1.Deepcool Fryzenの外観・付属品
2.Deepcool Fryzenの検証機材・セットアップ
3.Deepcool Fryzenの各種クリアランス
4.Deepcool FryzenのLEDイルミネーション
5.Deepcool Fryzenの冷却性能
6.Deepcool FryzenでThreadripper 2990WXを冷やす
7.Deepcool Fryzenのレビューまとめ
補足.空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて
Deepcool Fryzenの外観・付属品
まずは「Deepcool Fryzen」の外観や付属品をチェックしていきます。「Deepcool Fryzen」のパッケージはお菓子の箱を開ける感じの外装になっていました。
紙製の外パッケージを開くと中にはさらに化粧箱があり、化粧箱の蓋を外すと組み立て済みのCPUクーラー本体と各種付属品が収められた小分けパッケージが収められていました。
「Deepcool Fryzen」のマウント関連の付属品は、AM4プラットフォーム用バックプレート、AM4プラットフォーム用ナット*4、AM4プラットフォーム用スクリューボルト*4、AM4プラットフォーム用マウンティングブラケット、TR4プラットフォーム用スタンドオフ*4、TR44プラットフォーム用マウンティングブラケット、マウンティングブラケット固定用ハンドスクリューナット*4、六角レンチ、熱伝導グリスとなっています。
LEDイルミネーション関連の付属品は、専用コントローラー(アドレッサブル端子2分岐&SATA電源端子)、アドレッサブル端子4分岐ケーブル、アドレッサブル端子-VG-D型3PIN端子変換ケーブル、アドレッサブル端子-等間隔3PIN端子変換ケーブルの4種類です。
続いてCPUクーラー本体を簡単にチェックしておきます。
Deepcool Fryzenはガンメタルカラーのアルミニウム製フレームがヒートシンク外装として装着されており、空冷CPUクーラーらしい武骨さがなく非常にクールなデザインです。
天面にはアルミニウム製フレームの中央に黒色アクリルプレートが設置され、中にはDeepcoolロゴのアドレッサブルLEDイルミネーションが内蔵されています。
Deepcool Fryzenのヒートシンクの放熱フィンは一般的なアルミニウム製ですが光沢のあるニッケルメッキが施されており、見た目に美しいだけでなく、汚れにくく錆びにくいというメリットもあります。
側面プレートは外見がカッコよくなるというデザイン上のメリットに加えて、CPUクーラーを手で持った時にフレームを掴んで支えることができるので、放熱フィンで手を切る恐れがないというメリットもあります。
Deepcool Fryzenに標準で付属する冷却ファンは吸気面にアドレッサブルLEDイルミネーションを内蔵したX字型のアルミニウム製フレームを搭載し、フレーム全体がアルミニウムでできた専用品となっています。ファンブレードも2層構造になっており非常に凝ったデザインです。定格ファン回転数は1800RPMで、PWM速度制御によって500~1800RPMの範囲で制御できます。
「Deepcool Fryzen」のCPUクーラー本体からは冷却ファン用のPWM対応4PINファン端子ケーブル、冷却ファン搭載アドレッサブルLEDイルミネーションケーブル、トッププレート内蔵アドレッサブルLEDイルミネーションケーブルの3本が伸びています。
「Deepcool Fryzen」のアドレッサブルLEDイルミネーションケーブルのコネクタは「ASUS ROG ADDRESSABLE LED STRIP-60CM」などASUS AURA SyncのアドレッサブルLED機器と同じものが採用されています。このコネクタを各社マザーボードに実装されている汎用4PINと同形状のVD-G型3PINに変換するケーブルが付属するので、同じく付属の分岐ケーブルと組み合わせることで、ASUS AURA Sync、ASRock Polychlome RGB Sync、GIGABYTE RGB Fusion、MSI Mystic Lightなどマザーボードのライティング制御にも対応しています。
冷却ファンはプラスチック製クリップでヒートシンクに固定されており、一応取り外しが可能です。標準ファンのフレームでクリップを固定する部分はゴム製になっており、このゴムがクリップの遊びになっているので、クリップ自体は汎用120mmファンのネジ穴に対応した形状ですが、市販の冷却ファンへの換装は難しいと思います。
「Deepcool Fryzen」のヒートシンクは正面から見るとベースコアを中心に左右対称に展開されていますが、側面から見ると後方(CPUソケット左方向)へオフセットされており、ヒートシンクには前後の方向が定まっています。
「Deepcool Fryzen」は標準位置にファンを設置すると、ヒートシンクよりも中央の冷却ファンの方が高い位置にあって、全高は製品仕様通り164mm程でした。厚みも81mm程度とスリムなのでメモリと干渉フリーです。
「Deepcool Fryzen」のベースコアはニッケルメッキの施された銅製ベースコアからは同じくニッケルメッキ銅製の6mm径ヒートパイプが片側6本で計12本も伸びるという豪華な構成です。
Deepcool Fryzenのベースコアプレートはニッケルメッキの銅製でCPUクーラーヒートスプレッダとの接触面積を最大化するために鏡面化(平滑化)されています。ただしNoctuaやThermalrightの製品に比べると鏡面平滑化が若干粗くなっていました。
「Deepcool Fryzen」には既存のCPUと比較して超大型なRyzen Threadripperの68mm×51mmのCPUヒートスプレッダの大部分をカバーすることが可能な68mm×46mmのニッケルメッキ処理済み大型銅製ベースプレートが採用されています。
ベースプレートの左右にはCPUクーラーを固定するためのスプリング付きスクリューが設置されています。スクリューのネジ頭は径の大きい六角になっており付属のレンチで締めることができますが、プラス/マイナスの溝もあるのでドライバーで締めることもできます。ヒートシンク側面にはドライバーの軸を通すための切れ込みもあるので、斜め向きにはなりますがドライバーでも問題なく締めることができます。
ヒートシンクに冷却ファン等を装着した状態で重量を比較してみたところ、Deepcool Fryzenの重量は1040g、Thermalright Silver Arrow TR4の重量は1072g、Noctua NH-U14S TR4-SP3の重量は1028gでした。
Deepcool Fryzenの検証機材・セットアップ
Deepcool Fryzenを検証機材のベンチ機にセットアップします。ベンチ機のシステム構成は次のようになっています。テストベンチ機の構成 | ||
ベンチ機1 |
ベンチ機2 |
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OS | Windows10 Home 64bit | |
CPU |
AMD Ryzen Threadripper 1950X 16コア32スレッド (レビュー) AMD Ryzen Threadripper 2990WX 32コア64スレッド (レビュー) |
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M/B | 【動作検証用】 ・ASRock Fatal1ty X399 Professional Gaming(レビュー) ・MSI MEG X399 CREATION(レビュー) 【各種クリアランス検証用】 ・ASRock X399M Taichi(レビュー) ・ASUS ROG ZENITH EXTREME (レビュー) ・MSI X399 GAMING PRO CARBON AC (レビュー) ・GIGABYTE X399 Designare EX(レビュー) |
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メインメモリ | G.Skill FLARE X for AMD RYZEN TR F4-3200C14Q-32GFX DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) |
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グラフィックボード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
EVGA GTX 1080 SC2 (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 860 PRO 256GB (レビュー) |
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電源ユニット |
Corsair HX1200i (レビュー) |
Thermaltake Toughpower iRGB PLUS 1250W Titanium (レビュー) |
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t (レビュー) NZXT Aer F 140 3基(レビュー) |
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Ryzen Threadripper&X399のようなエンスー環境のシステムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
CPUクーラーの設置方法について、当サイトの評価基準となるチェックポイントは次の3つです。
- LGA115Xの場合、CPU固定バックプレートが単独でマザーボードに固定できるか
- マウントパーツ設置状態でCPUを交換できるか
- 空冷の場合、ネジ止めの場合はマザーボード側から固定できるか
簡易水冷or水冷ブロックの場合、ハンドスクリューなどツールレス固定ができるか
上の3項目を全て満たす例として本格水冷用のCPU水冷ブロックですが「EK-Supremacy EVO」のマウンタ構造は「バックプレートをM/Bに固定可能」「完全ツールレス」「マウンタ設置状態でCPUの交換が可能」なので本格水冷・簡易水冷クーラーの水冷ブロック固定方式としてはベストだと思っています。水冷クーラーメーカーにはどんどん真似してもらいたい理想的な構造です。
「Deepcool Fryzen」ではCPUクーラーをマザーボードに固定するために、最初にマウントパーツを装着します。「Deepcool Fryzen」はRyzen CPUのAM4プラットフォームとRyzen Threadripper CPUのTR4プラットフォームの両方に対応していますが、今回はTR4プラットフォームに的を絞って紹介します。
TR4プラットフォームで使用する部品はTR44プラットフォーム用マウンティングブラケット*2、TR4プラットフォーム用スタンドオフ*4、マウンティングブラケット固定用ハンドスクリューナット*4の3種類です。
まずはTR4プラットフォーム用スタンドオフ*4をCPUソケット四隅のネジ穴に装着します。
続いてスタンドオフにマウンティングブラケットを乗せて、マウンティングブラケット固定用ハンドスクリューナットでマウンティングブラケットを固定します。以上でマウントパーツの設置は完了です。見ての通りマウントパーツを設置するとそのままではCPUは交換できなくなります。
CPUクーラーをマザーボードに固定する準備はこれで完了したので熱伝導グリスをCPUのヒートスプレッダに塗布します。熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
Thermal Grizzly Kryonaut TG-K-001-RS(少量、1g)
Thermal Grizzly Kryonaut TG-K-015-RS(1.5ml)
Thermal Grizzly Kryonaut TG-K-030-RS(3.0ml)
親和産業
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
「Deepcool Fryzen」については製品マニュアルで下の画像のように推奨の塗り方が紹介されています。まず最初に等間隔に9カ所小さめに熱伝導グリスを落として、さらにその間の4か所に少し大きめに熱伝導グリスを塗るという塗り方が推奨されています。
普段は熱伝導グリスを上のようにてきとうに塗っているのですが、推奨の塗り方が紹介されているので今回の検証ではマニュアルにならってみました。
この塗り方だとCPUのヒートスプレッダ全体へ熱伝導グリスが綺麗に伸びます
「Deepcool Fryzen」のベースプレートには透明の保護フィルムが貼られているので、CPUクーラーをマザーボードに設置する前に剥がし忘れないように注意してください。
熱伝導グリスを塗ったらCPUクーラーヒートシンクを乗せて付属の六角レンチもしくはプラスドライバーでネジ止めすればヒートシンクの装着は完了です。
ヒートシンクをマザーボードに固定したら最後にファンクリップでヒートシンクに冷却ファンを装着して、Deepcool Fryzenの設置作業は完了です。
Deepcool Fryzenの各種クリアランス
CPUクーラーの性能検証に入る前に、空冷CPUクーラーにはつきものである最上段PCI-EスロットやVRM電源ヒートシンクやヒートシンクを搭載したシステムメモリとのクリアランス問題についてDeepcool Fryzenの事情をチェックしていきます。クリアランスの検証マザーボードとしては後ほど冷却性能の検証機材としても使用する「ASRock Fatal1ty X399 Professional Gaming(ASRock X399 Taichi)」に加えて、「ASRock X399M Taichi」、「ASUS ROG ZENITH EXTREME」、「GIGABYTE X399 Designare EX(GIGABYTE X399 AORUS Gaming 7)」、「MSI X399 GAMING PRO CARBON AC」、「MSI MEG X399 CREATION」のマザーボード6機種(サイズ共通製品を含めると8機種)についても確認しました。
まず最初にAMD Ryzen Threadripperに対応するX399チップセット搭載TR4 Socketマザーボードと直接的に関係のあるプライマリグラフィックボードを設置する最上段PCI-EスロットおよびVRM電源クーラーとのクリアランスについてチェックします。
「Deepcool Fryzen」についてはTR4ソケットを底面とした直方体上にCPUクーラー本体が収まるような寸法になっているので、今回検証したマザーボードではいずれもプライマリグラフィックボードを設置する最上段のPCIEスロットやVRM電源クーラーとの干渉は発生しませんでした。
なお比較的大型な空冷CPUクーラーの多くに言えることですが、CPUクーラーとグラフィックボードの隙間が狭いので、CPUクーラーの設置自体は問題ないのですが取り外しの際には少し困るかもしれません。取り外しのためには定規などを使用してPCI-Eスロットのグラフィックボード固定爪を解除する必要があります。
取り付けよりも取り外しで困るというのは大型空冷CPUクーラーのあるあるネタなので注意してください。取り外しの際はグラフィックボード固定爪の解除のためにプラスチックの定規など細くて固いものを事前に用意しておくことをお勧めします。
続いて空冷CPUクーラーではヒートシンク付きDDR4メモリとの干渉が起きやすいのでリファレンス機材としてKingstonから提供いただいた「Kingston HyperX Fury DDR4」などを使用してCPUクーラーとメモリの干渉の有無をチェックしていきます。
その他のメモリのクリアランス検証の機材として「Samsung B-Die バルクメモリ(レビュー)」「Kingston HyperX Savage(レビュー)」「Kingston HyperX Predator RGB(レビュー)」「Corsair VENGEANCE LPX(レビュー)」「G.Skill Flare X(レビュー)」「G.Skill Trident Z Red/RGB/Black(レビュー)」「Corsair VENGEANCE RGB PRO(レビュー)」「Corsair Dominator Platinum(レビュー)」も使用します。
AMD Ryzen Threadripperに対応するX399 TR4 Socket環境はクアッドチャンネルで最大8枚のメモリ装着に対応しており、使用するメモリ数に対して通常は次のようなレイアウトが推奨されています。CPUクーラーとメモリの干渉が発生する可能性が高いのは4枚刺し、もしくは8枚刺しを行う場合のCPUソケットに最も近い位置にある左右2つずつの4スロットとなります。
上でも書いたように「Deepcool Fryzen」についてはTR4ソケットを底面とした直方体にCPUクーラー本体が収まるような寸法になっているので、公式ページでもアピールされている通りメモリとの干渉の心配はありません。
ATXフォームファクタの「ASRock Fatal1ty X399 Professional Gaming(ASRock X399 Taichi)」、「GIGABYTE X399 Designare EX(GIGABYTE X399 AORUS Gaming 7)」、「MSI X399 GAMING PRO CARBON AC」およびE-ATXフォームファクタの「MSI MEG X399 CREATION」はCPUソケットと最も隣接するメモリスロットの間隔がX399マザーボードの中では比較的狭く、他社製の空冷CPUクーラーではメモリを8枚刺しすると、冷却ファンやヒートシンクがメモリに干渉してしまうケースが多かったのですが、「Deepcool Fryzen」では問題なくメモリの8枚刺しが可能です。
Deepcool FryzenのLEDイルミネーション
「Deepcool Fryzen」のヒートシンクトッププレートと冷却ファンに搭載されたアドレッサブルLEDイルミネーションのライティングや制御についてチェックしていきます。Deepcool Fryzenのヒートシンクトッププレートおよび冷却ファンにはアドレッサブルLEDイルミネーションが搭載されており、付属コントローラーやマザーボードの制御機能によってライティング制御が可能です。
「Deepcool Fryzen」のCPUクーラー本体からは冷却ファンとトッププレートに搭載されたアドレッサブルLEDイルミネーションに繋がった2本のケーブルが伸びています。一番右側のケーブルは4PINファン端子ケーブルです。
「Deepcool Fryzen」に搭載されたLEDイルミネーションは、標準で付属するコントローラーによって一括で制御することができます。コントローラーの左右にはSATA電源ケーブルと二股のアドレッサブルLEDコネクタが伸びているので、SATA電源を電源供給元として、「Deepcool Fryzen」の冷却ファンとトッププレートのアドレッサブルLEDイルミネーションに電源供給とライティング制御が可能となっています。
コントローラーには[+ , ・ , ー]の3つのボタンがありますが、「+」と「ー」ボタンは発光パターンの変更、「・」ボタンで変化速度が変更できます。
「Deepcool Fryzen」の付属コントローラーによるライティング制御だけでも発光パターンは非常に豊富です。
「Deepcool Fryzen」のアドレッサブルLEDイルミネーションは付属コントローラーだけでなく、RGB対応汎用4PINと同形状のVD-G型3PINヘッダーへの変換アダプタケーブルでマザーボードに接続することによって、ASUS AURA Sync、ASRock Polychlome RGB Sync、GIGABYTE RGB Fusion、MSI Mystic Lightなどのマザーボードに搭載されたライティング制御機能による操作にも対応しています。
「Deepcool Fryzen」のアドレッサブルLEDイルミネーションケーブルのコネクタは「ASUS ROG ADDRESSABLE LED STRIP-60CM」などASUS AURA SyncのアドレッサブルLED機器と同じものが採用されています。このコネクタを右上写真の各社マザーボードに実装されている汎用4PINと同形状のVD-G型3PINに変換するケーブルが付属するので同じく付属の分岐ケーブルを組み合わせることで、アドレッサブルLEDに対応していてばASRock、GIGABYE、MSIなどのマザーボードでも使用することが可能です。
Deepcool Fryzenの冷却性能
本題となるDeepcool Fryzenについてチェックしていきます。検証システムをベンチ板に置いた状態で測定を行っているためCPUクーラーが水冷・空冷によらず基本的にCPUクーラーの理想的な性能をチェックすることになります。
比較対象としてNoctua製のRyzen Threadripper専用空冷CPUクーラーの「Noctua NH-U14S TR4-SP3(レビュー)」、「Noctua NH-U12S TR4-SP3(レビュー)」、「Noctua NH-U9 TR4-SP3(レビュー)」についても同一環境で検証を行いました。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はThreadripper 1950Xの場合10分ほどなので同じ動画のエンコードを2つ並列して2周実行しています。テスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
検証環境にはAMD Ryzen Threadripper 1950XでマザーボードにASRock Fatal1ty X399 Professional Gamingを使用して、CPUコアクロックを全コア3.9GHz、コア電圧1.2375V、LLC:Level2に手動でオーバークロックした時のストレステスト中の温度をチェックしていきます。
この検証システムでRyzen Threadripper 1950Xを定格動作させるとTDP180Wの制限がかかるためシステム全体の消費電力は220W程度となりますが、上のOC設定を適用するとシステム全体の消費電力は80Wほど増えて300W前後となり、TDP換算ではTDP260WのCPUを検証していると考えられます。
「Deepcool Fryzen」のファン回転数を1400RPMEに固定して、Ryzen Threadripper 1950Xの全コア3.9GHz OC(TDP換算値260W)に負荷をかけ続けてみたところ、最大温度81.3度、平均温度77.0度となりました。温度的にはバラック検証環境でギリギリなのでPCケースに入れると厳しい感じですが、「Deepcool Fryzen」の付属ファン定格(最大)ファン回転数は1800RPM(仕様値の誤植なのか実際は2200RPM程度まで動作)なのでまだ余力を残しています。
「Deepcool Fryzen」は比較対象として同様に検証したNoctua製Ryzen Threadripper対応空冷CPUクーラーには残念ながら一歩及ばない結果になりました。とはいえ、今回の検証CPUにはRyzne Threadripper 1950Xを使用していますがTDP換算値260W程度にOCして負荷テストを実施しているので、「Deepcool Fryzen」にはTDP250WのRyzen Threadripper 2990WXにも冷却ファンのファン回転数の調節で対応できる冷却性能はあると思います。
またサウンドレベルメーター(騒音計)を使用してファンノイズをCPUクーラー別で比較しました。騒音計の収音部分とノイズ発生部分との距離が15cm程度になる位置で測定を行っています。簡易水冷の場合はラジエーターとポンプ両方からの距離が15cm程度になるように設置しています。
電源OFF時の騒音値は33~35dBです。目安として40dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになり、45dB前後で煩く感じます。50dBを超えてくるとヘッドホンをしていても煩く感じます。同じ騒音値でも不快に感じたり感じなかったりと音の性質にもよるので注意してください。
Deepcool Fryzenのシングルファン標準構成においてはファン回転数1100RPM以下であれば騒音値も36.0dB程度となり電源OFF時と大差ない騒音値でほぼ無音で動作させることができます。CPUをOCする場合でも1400PRM前後であれば42dB程度なので比較的静音で動作させることが可能です。
Deepcool Fryzenで32コア64スレッドRyzen Threadripper 2990WXを冷やす
Deepcool Fryzenを使用して、8月13日に販売が解禁された32コア64スレッドで一般に販売されるCPUとしては2018年現在、文句なしに最強のマルチスレッド性能を誇るRyzen Threadripper 2990WXを冷やしてみます。Ryzen Threadripper 2990WXを使用した検証ではCPU以外に、マザーボードもMSI MEG X399 CREATIONに切り替えています。19フェーズVRM電源を搭載しておりTDP250WのRyzen Threadripper 2990WXでも定格動作であればVRMはパッシブ空冷のままで運用できるので、2990WXとの組み合わせにおすすめのマザーボードです。
18年8月現在、Ryzen Threadripper 2990WXが発売されたばかりということもあり、定格動作であればある程度は安定しているのですが、マニュアル設定による全コア同時OCや「Precision Boost Overdrive」を使用すると定格よりパフォーマンスが下がるなど上手く動作しないケースが多く、CPUのOC時のストレステストやCPUクーラーの負荷テストとして使用している動画のエンコードも正常に動作しませんでした。
そのため今回はRyzen Threadripper 2990WXの定格を「Deepcool Fryzen」が冷やせるか検証しました。Ryzen Threadripper 2990WXの定格で動画のエンコードによって負荷をかけるとシステム全体の消費電力(ほぼCPUによる消費電力)は300W~330Wで推移します。
検証方法については上と同様に、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、WQHD解像度、60FPS、容量4.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はRyzen Threadripper 2990WXの場合5分ほどなので同じ動画のエンコードを4つ並列して2周実行しています。テスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
「Deepcool Fryzen」のファン回転数を1400RPMに固定して、Ryzen Threadripper 2990WXの定格動作に負荷をかけ続けてみたところ、CPU温度は最大温度68度となりました。
Ryzen Threadripper 2990WXの定格動作においてはCPU温度(T die)に27度加えたコントロール温度(T ctl)が95度以下であれば、Precision Boost&XFRの自動OCによってベースクロック3.0GHzより高いコアクロックで全コアが動作し、コアクロックは実動平均3.2GHz程度となります。
「Deepcool Fryzen」のファン回転数を1400RPMとすると、ちょうどTDP250Wを満たす程度の冷却性能となってCPU温度が上限の68度に達するためPrecision Boost&XFRが効かず、実動コアクロックの平均値はベースクロック3.0GHzに近い値となります。付属冷却ファンの最大ファン回転数は2200RPMでまだ余裕はあるので、全コア3.0GHzであればDeepcool Fryzenでも2990WXを運用できそうです。
Deepcool Fryzenのレビューまとめ
最後にRyzen Threadripper対応ハイエンド空冷CPUクーラー「Deepcool GAMER STORM Fryzen(型番:DP-GS-MCH6N-FZN-A)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- ガンメタルのアルミニウム外装搭載ヒートシンクが美しい
- トッププレートと冷却ファンにアドレッサブルLEDイルミネーションを搭載
- ThreadripperのIHSを完全にカバーする68mm×46mmの超大型ベースプレート
- 左右6本で計12本の6mm径銅製ヒートパイプ
- TR4ソケットを底面にした直方体に収まるサイズ感なのでメモリやグラボとの干渉フリー
- 16コア1950Xの3.9GHz OC(TDP260W相当)も運用可能な冷却性能
- 冷却ファンの形状が特殊なので汎用品は基本的に使用できない
(同一ファンが公式に単品販売されています。) - Noctua製のTR4専用空冷には冷却性能が一歩及ばない
「Deepcool Fryzen」はRyzen Threadripperの超巨大なCPUヒートスプレッダ全体をカバーする面積68mm×46mmのニッケルメッキ処理済み大型銅製ベースプレートと、左右12本のヒートパイプで構成されたシングルタワー型ヒートシンクを採用してRyzen Threadripper専用に最適化されたCPUクーラーだけあって、16コア32スレッド「AMD Ryzen Threadripper 1950X」を静音性を保ったままで十分に冷却できる性能があります。「Deepcool Fryzen」は空冷CPUクーラーながらTDP260W相当となる1950Xの全コア3.9GHzオーバークロックや32コア64スレッドのRyzen Threadripper 2990WXにも対応が可能です。
ただしNoctua製のTR4専用空冷CPUクーラーと比べると冷却性能は一歩及ばないので冷却性能ベースで見ると、販売価格が1.3万円ほどとなる「Deepcool Fryzen」はコストパフォーマンスが少し微妙です。
「Deepcool Fryzen」のヒートシンクと冷却ファンを合わせた寸法は、TR4ソケットを底面とした直方体の中に納まるようなサイズ感となっており、マザーボードのVRM電源クーラーやプライマリグラフィックボードを設置する最上段のPCIEスロットは当然のこと、メモリ8枚刺しにおいてCPUソケットに最も近いメモリスロットとの干渉が一切発生しないところも大きな魅力です。
ただしDeepcool Fryzenに限った話ではありませんが比較的大型な空冷CPUクーラーでは取り付けは比較的簡単ですが大型グラフィックボードと組み合わせた場合に取り外しに難儀するのでその点は事前に押さえておいてください。取り外しの際はグラフィックボード固定爪の解除のために定規など細くて固いものが必要になります。
「Deepcool Fryzen」のヒートシンク本体をドレスアップするガンメタルカラーのアルミニウム製フレームや、トッププレートと冷却ファンに搭載されたアドレッサブルLEDイルミネーションなど、Ryzen Threadripperの大型IHSを完全にカバーできるCPUクーラーの中では現状最もカッコいいCPUクーラーだと思います。
「Deepcool Fryzen」にはTDP250Wクラスの冷却にも対応可能な冷却性能はあるのでThreadripper対応空冷CPUクーラーとしての水準はクリアしています。単純に冷却性能だけを求めるならNoctuaやThermalrightなどコストパフォーマンスも含めて優れた別の選択肢がありますが、外見のカッコよさやメモリ干渉フリーな互換性の高さといった要素に魅力を感じるのであれば十分にお勧めできるThreadripper対応空冷CPUクーラーだと思います。
以上、「Deepcool Fryzen」のレビューでした。
Deepcool Fryzen(DP-GS-MCH6N-FZN-A)
Deepcool
<代理店公式>
補足:空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて
「空冷クーラー」と「水冷クーラー」の2種類ついて同じところと違うところ、また原理的に考えた冷却性能の比較を簡単に補足しておきます。関連記事
・「AMD Ryzen Threadripper 2990WX」を全コア4.0GHzにOCレビュー・ENERMAX LIQTECH TR4シリーズのレビュー記事一覧へ
・「Thermalright Silver Arrow TR4」をレビュー
・Noctua製Ryzen Threadripper対応空冷CPUクーラーのレビュー記事一覧へ
・X399チップセット搭載Socket TR4マザーボードのレビュー記事一覧へ
・「G.Skill FLARE X F4-3200C14Q-32GFX」をレビュー
(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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WraithRipperどうなるかなぁ…