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8コア16スレッドのCore i9 9900KなどIntel第9世代CoffeeLake Refresh-Sに対応するZ390チップセット搭載マザーボードとしてASUSからリリースされたゲーマー&OCer向けブランド”ROG MAXIMUS”シリーズのエントリーモデル「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」をレビューします。ROG MAXIMUSシリーズの中でも価格と性能のバランスが取れた万人受けするオールラウンダーという性質が強い「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」の実力を徹底検証していきます。
製品公式ページ:https://www.asus.com/jp/Motherboards/ROG-MAXIMUS-XI-HERO-WI-FI/
マニュアル:https://dlcdnets.asus.com/pub/ASUS/mb/LGA1151/ROG_MAXIMUS_XI_HERO_WIFI/J14393_ROG_MAXIMUS_XI_HERO_WI-FI_UM_WEB.pdf
【注意事項】
検証中のトラブルなども記事内で記載していますが、Intel CoffeeLake Refresh-S CPU自体が発売されたばかりなので、OSの問題なのか、マザーボードBIOSの問題なのか原因の切り分けが現状でできないものも少なくありません。今後ドライバやBIOSなどソフトウェアの更新でパフォーマンスや安定性が向上することは期待できると思うので、その辺りも念頭に置いて読んでもらえるとありがたいです。
同検証は18年12月上旬に行っており「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」のBIOS:0602を使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:https://www.asus.com/jp/Motherboards/ROG-MAXIMUS-XI-HERO-WI-FI/HelpDesk_BIOS/
【18年12月19日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:0602で検証
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI) レビュー目次
1.ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)の外観・付属品
2.ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)の基板上コンポーネント詳細
3.ASUSマザボのCPUインストレーションツールが便利
4.ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)の検証機材セットアップ
5.ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)のBIOSについて
6.イルミネーション操作機能「ASUS AURA Sync」について
7.ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)のOC設定について
8.ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)の動作検証・OC耐性
9.ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)のレビューまとめ
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)の外観・付属品
まず最初にASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)の外観と付属品をチェックしていきます。ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)のパッケージはマザーボードの箱としては独特な上開き化粧箱になっていました。開閉しやすく高級感もあります。
外パッケージの蓋を開くと上段にはマザーボード本体が収められており、下段には各種付属品が収められた小分けパッケージが入っていました。
マニュアルなど冊子類で必要なものが一通り揃っています。その他にもコースター、ステッカー、CableMod製のスリーブケーブル購入時の割引クーポンなどが付属します。ドライバ類についてはそろそろUSBメモリに移行して欲しいところ。ASUS製のマザーボードなので定評のある詳細日本語マニュアルも付属します
組み立てに関連する付属品としては、WiFiアンテナ、SATAケーブル4本、RGB対応汎用4PIN LEDテープ接続ケーブル、アドレッサブルRGB対応3PIN LEDテープ接続ケーブル、SLI HBブリッジ、M.2 SSD固定用スペーサー&スクリュー、Q-Connectorとなっています。
パワースイッチやストレージLEDなど細かいPINをまとめてマザーボードに接続可能な便利なコネクタです。「Q-Connector」は組み立て時にあると便利ですがASUSマザーボードの中でも付属しないモデルもあるので事前にチェックがおすすめです。
「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」にはNVIDIA GTX 10XXシリーズGPU搭載グラフィックボードでマルチGPUを構築するためのSLIブリッジとして広帯域SLI接続に対応した1スロットスペース型のSLI HBブリッジが付属しています。RTX 20XXシリーズからサポートが開始されたNVLink Bridgeはまだ付属していません。
「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」はASUS AURA Syncによるライティング制御に対応したLEDヘッダーの延長ケーブルとしてRGB対応汎用4PINヘッダー用とアドレッサブル対応VG-D型3PINヘッダー用の2種類が付属します。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)にはアドレス指定対応LEDテープ用のVD-G型3PINヘッダーがマザーボード上に実装されていますが、それをロック付き3PINコネクタに変換する延長ケーブルが付属します。
マザーボード全体像は次のようになっています。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)はATXフォームファクタのマザーボードです。黒色のPCB基板には電子回路をイメージさせるイラストがプリントされています。
「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」のマザーボード右下に設置されたチップセット用ヒートシンクについてはZ370チップセット採用のASUS ROG MAXIMUS Xシリーズ同様にASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)も電子回路をイメージさせるデザインになっています。チップセット下のM.2スロットに新たに増設されたM.2ヒートシンクと一体感のあるデザインです。
CPUソケットの上と左には独立したVRM電源クーラーヒートシンクが設置されています。VRM電源クーラーはチップセット同様に電子回路をイメージしたイラストが描かれ、リアI/Oカバーとも一体間のあるデザインです。リアI/Oカバーにはブランドネーム「MAXIMUS」の名が刻印されています。MAXIMUS X HEROはNVIDIA GeForce GTX10シリーズをどことなく意識したポリゴン調な外形でしたが、「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」は角ばった重厚なデザインに変わりました。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)には10フェーズのVRM電源が実装されています。VRM電源には一般的なMOSFETの半分のサイズで90%の優れた効率を実現した「NexFET Power Block MOSFET」を使用し、チョークコイルには低損失で低発熱な「MicroFine Alloy Chokes」を使用。コンデンサには-75℃~+125℃での動作に対応し、一般的なコンデンサの5倍の寿命を持つ「10K Black Metallic Capacitors」が使用されています。
前世代では押し出し加工なアルミニウム塊型ヒートシンクでしたが、「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」ではフィンカットのアルミニウム塊型ヒートシンクをヒートパイプで連結する構造の高性能なVRM電源クーラーが採用されているところも注目ポイントです。
「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」のEPS端子は、8コア16スレッドのCore i9 9900Kのオーバークロックを行っても安定してCPUへ電力供給を行えるように8+4PINのEPS端子が設置されています。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)にはマザーボード一体型リアI/Oバックパネル「プリマウントI/Oシールド」も採用されています。PCケースにパネルを装着する作業は固くて装着し難かったり、忘れてしまうこともあるのでマザーボードに統合されているのは嬉しい機能です。
リアI/Oには最新のUSB3.1 Gen2規格に対応したUSB端子として3基のType-Aと1基のType-Cの計4つの赤色端子が設置されています。そのほかのUSB端子については2基のUSB2.0端子と2基のUSB3.0端子が搭載されています。マウス・キーボードなどの周辺機器を多数繋いでいても、HTC ViveやOculus Rift CV1のようなVR HMDに十分対応可能です。USB3.0/3.1は無線マウスと電波干渉を起こすことがあるのでUSB2.0端子が少し離れた場所に設置されているところは地味に嬉しいポイントです。
ビデオ出力にはHDMIとDisplayPortが設置されていますが、HDMI端子については4K・60FPSに非対応で4K・30FPSが上限となるver1.4対応でした。Z390マザーボードでは4K・60FPSに対応したHDMI2.0を搭載するものは非常に少ないので外部GPU(グラフィックボード)を使用しないユーザーは注意が必要です。
ネットワーク関連では低CPU負荷、高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーが採用された有線LAN端子が設置されています。ASUS ROG MAXIMUS XI HEROには無線LANありとなしの2モデルがラインナップされていますが今回レビューする「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」はIntel製無線LANモジュールを標準搭載しており、Wi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac、2.4/5GHzデュアルバンド、Bluetooth 5.0にも対応しています。リアI/Oには無線モジュールのアンテナ端子が設置されているので付属のアンテナを接続できます。
またリアI/Oには「USB BIOS FlashBack」ボタンが設置されており所定のUSB端子にBIOSファイルの入ったUSBメモリを接続してボタンを押すと「USB BIOS FlashBack」機能によってCPUやメモリなしの状態でもBIOSの修復・アップデートが可能です。
重量計を使用して重さを測定してみたところ、ASUS ROG MAXIMUS X HERO (WI-FI AC)は1091g、同じくATXサイズでZ270マザーボードとしては重い部類のASRock Z270 SuperCarrierは1092gに対して、ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)は1151gでした。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)の基板上コンポーネント詳細
続いて「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。システムメモリ用のDDR4メモリスロットはCPUソケット右側に4基のスロットが設置されています。
固定時のツメはマザーボード上側の片側ラッチとなっています。グラフィックカードのあるPCI-Eスロット側はラッチがないので干渉の心配もありません。
グラフィックボードなどを設置するPCI-Eスロットは上から[x1、x16、N/A、x1、x16、x1、x16]サイズが設置されています。上段のプライマリグラフィックボード用スロットを2段目に配置することで、大型ハイエンド空冷CPUクーラーとグラフィックボードの干渉を回避しています。最下段のx16サイズスロットはx4帯域となっておりNVMe SSDなどに使用できますが、SATA_5/6と帯域が共有されており同SATAポートを使用する場合はx2帯域となります。
グラフィックボード向けのx16スロットは2段目、5段目に配置されており、現在主流な2スロット占有グラフィックボードを使用しても下位グラフィックボードが上位グラフィックボードのエアフローを妨げないよう配慮されています。付属の1スロットスペース型SLI HBブリッジを使用すればGTX 1080 TiやGTX 1070 Tiを使用したマルチGPU SLI環境を構築可能です。
別売りオプションパーツのNVLink SLI Bridgeが必要ですが、3スロットのNVLink SLI BridgeがあればNVIDIAの最新GPUであるRTX 2080 TiやRTX 2080でもマルチGPU環境を構築可能です。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)にも最近のトレンドとしてx16サイズスロットには1Kgを超える重量級グラボの重さに耐えるように、従来のプラスチックスロットよりも垂直方向の力に対して1.6倍、水平方向の力に対して1.8倍も強靭になった補強用メタルアーマー搭載スロット「SafeSlot」が採用されています。
1/4/6段目に設置されたx1サイズのPCI-Eスロットはいずれも右端には切り込みが入れられているので、通信速度がPCI-E3.0x1で問題なければx1サイズより大きい拡張カードも使用可能です。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)にはSATAストレージ用の端子は6基搭載されています。SATA_1~6の6基はIntel Z390チップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/5/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。SATA_5とSATA_6のいずれかを使用する場合、最下段のx16サイズPCIEスロットの帯域がPCIE3.0x4からPCIE3.0x2に排他利用となります。
高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットはCPUソケット下とチップセット下の計2基が設置されています。M2_1はNVMeとSATAの両方に対応していますが、SATA接続の場合はSATA_2端子と排他利用です。M2_2はNVMeのみに対応しています。M2_1とM2_2はいずれもチップセット経由の接続です。
「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」のM.2スロットにはいずれもプレートカバー型の放熱ヒートシンクが装着されており、M.2 SSDのサーマルスロットリング発生を抑制する効果が期待できます。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)に関して、PCI-Eスロットや各種ストレージ端子の排他利用についてまとめると次のようになっています。
- GPU用の2段目と5段目のPCI-Eスロットは[x16, N/A]or[x8, x8]帯域
- 最下段x16スロットはSATA_5/6ポートと一部帯域共有なので[x4] or [x2]
- M2_1でSATA接続のM.2 SSDを使用する場合とSATA6G_2は使用不可
M.2 SSD4枚刺しに対応した拡張ボード「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」については個別に詳細なレビュー記事を公開しているのでこちらを参考にしてください。
・「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」をレビュー
CPUとチップセット間はIntel Z390シリーズチップセットではX99から更新されたDMI 3.0で接続されており、この帯域が非公式ながらNVMe M.2 SSDの接続規格であるPCI-E3.0x4とほぼ同じ帯域です。
Z390チップセット搭載マザーボードのM.2スロットのうちチップセットを経由して接続されているストレージへ個別にアクセスがある場合は最新の3.0GB/s越えの高速SSDでもフルスペック動作が可能になっていますが、この帯域がボトルネックになるため複数のM.2スロットで一度にアクセスが発生すると合計で4GB/s程度がボトルネックになります。現状ではランダム性能への影響は軽微で主にシーケンシャル性能に制限がかかります。
M.2スロットのPCI-Eレーンがどこに繋がっているかで簡単に次のようなメリットとデメリットがあります。
CPU直結の場合 | チップセット接続の場合 | |
長所 | 複数のM.2 SSD(PCH側*1含む)の 同時アクセスでもフルスペック動作 |
IRSTによるハードウェアRAIDで 性能を上げることができる |
短所 | IRSTによるハードウェアRAID が構築できない (Intel製SSDではVROCで ソフトウェアRAIDが構築可能) |
複数のM.2 SSDから同時にアクセス がある場合、ストライプRAIDの場合 4GB/s程度がボトルネックになる |
ATX 24PIN端子のすぐ隣には最新USB3.1対応内部ヘッダーとUSB3.0端子が設置されています。
マザーボード下側には内部USB3.0ヘッダーが1基と内部USB2.0ヘッダーが2基設置されています。CorsairLinkやNZXT CAM対応製品など使用する周辺機器も増えているなか、17年頃にASUSからリリースされていた上位マザーボードでは内部USB2.0ヘッダーを1基しか備えていないモデルが多かったですが、ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)では2基に増えておりこれらの機器も安心して使用できます。内部USB2.0が2基でも不足する場合はUSB2.0ヘッダー増設ハブ「NZXT INTERNAL USB HUB」がおすすめです。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)は上位ゲーミングマザーボードということで高音質オンボードサウンド機能を従来機種よりもさらに強化した「SupremeFX」も採用されています。デジタル部とアナログ部の基板分離などヘッドホン・スピーカー出力の高音質化にも注力しており、光学デジタルによるデジタル音声出力もあるので高級なヘッドホンアンプユーザーにも満足のいく構成です。最近のゲーミングマザボはサウンドボード要らずです。
有線LANには低CPU負荷、高スループットで定評のあるIntel純正のLANコントローラーが採用されており、加えて有線LANの信号特性を改善する独自機能「LANGuard」も搭載し、オンライン通信対戦ゲームユーザーの快適なプレイをバックアップします。
マザーボード基板上にはOCerのみならず一般自作erにとっても組み立て中の動作確認に便利なオンボードのスタートスイッチとリセットスイッチが実装されています。リアI/OにはCMOSクリアのハードウェアスイッチも設置されているのでOC設定をミスっても簡単に初期化が可能です。マザーボード基板右上にはPOSTエラーのチェックができるDebug LEDが設置されています。
冷却ファンや簡易水冷クーラーポンプの接続用ファン端子はマザーボード上の各場所に計9個設置されています。水冷ポンプ用ファン端子「W_PUMP+」や高電流ファン端子「H_AMP_FAN」は36W(3A)の高出力に対応しており、簡易水冷の水冷ポンプや本格水冷用のD5/DDCポンプなどにも電力供給できます。
マザーボード上には本格水冷PCユーザーには嬉しい外部温度センサーの接続端子が水路IN/OUT用を含めて4基設置されています。ASUSのファンコントロール機能は外部センサーをソースにした水温依存のファンコントロールが可能なので管理人は以前から水冷ユーザーにお勧めしています。(関連記事)
加えて右下写真の3PINファン用端子と同じ構造の端子は水冷の流量検出端子となっており、フローインジケーター&メーターを接続することで流量の検出が可能です。ASUSマザボさえあれば水冷環境の構築は全て大丈夫と言っても過言ではなくなってきています。
内部USB3.0ヘッダーの隣にあるEXT_FAN端子には別売りオプションパーツの冷却ファン&サーモセンサー拡張ボード「ASUS FAN EXTENSION CARD」を装着してマザーボードのファンコン機能によって操作可能なファン端子やコントロールソース温度となる温度センサーを拡張できます。
ASUSマザボのCPUインストレーションツールが便利
ASUS製マザーボードの一部で対応するCPUインストレーションツールが非常に便利なので紹介します。日本国内ではマニュアルやBIOSメニューのローカライズ品質やユーザー数の多さからASUS製マザーボードが初心者におすすめなマザーボードとしては鉄板として紹介されることが多いです。とはいえ最近のマザーボードは不具合や相性問題も少ないので、ASRock、GIGABYTE、MSIなどASUSを含めた主要4社のマザーボードであれば特に問題はなくなっています。
しかしながら管理人的にはASUSマザーボードの独自の機能であるCPUインストレーションツールの存在が理由で初心者にはこの機能に対応したマザーボードをお勧めしています。
ただし「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」にはCPUインストレーションツールが残念ながら付属しません。ただし「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」のCPUソケット自体はCPUインストレーションツールに対応しているのでebay等でCPU installation tool(型番:13010-01860100)を買えば使えます。
初心者、経験者ともに自作PCでパーツをダメにする可能性のトップに入るであろう項目にCPU着脱時のマザーボードのCPUソケットのピン折れがありますが、CPUインストレーションツールを使えばCPUの着脱が格段に簡単になるのでその心配はほぼなくなります。
CPUインストレーションツールは下の写真のようなプラスチックのパーツです。
CPUインストレーションツールはCPUの上から嵌める枠のような構造です。
CPUインストレーションツールに装着することによってCPUを指で持ち上げやすくなります。
CPU単体では指を引っかける部分に乏しいのでCPUソケットの直上でポロッと落としてしまわないか物凄く気を使いますが、CPUインストレーションツールを装着すると持ちやすさが格段に改善されます。
第9世代CoffeeLake Refresh-S CPUは第8世代よりもPCB基板が厚くなっているのでCPUインストレーションツールがCPUに装着できるかが若干不安でしたが、問題なく装着できました。
「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」のCPUソケット自体は、CPUインストレーションツールに対応した旧製品と同じものが実装されているので、CPUインストレーションツールを装着した第9世代CoffeeLake Refresh-S CPUを設置して、CPUソケットに問題なく固定できました。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)の検証機材
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)を使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 9900K 8コア16スレッド (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) |
CPUベンチ用 ビデオカード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
レビュー後半のOC検証で使用するCPUにはZ390マザーボードで使用可能なIntel第9世代CoffeeLake Refresh-S CPUの最上位モデルとなる8コア16スレッドの「Intel Core i9 9900K」を使用しています。検証機材のCore i9 9900KはCPUダイとヒートスプレッダ間のグリスを液体金属グリスに塗り替え、ヒートスプレッダもRockit Cool製のオリジナル銅製IHSに交換しているので通常よりも低い温度で動作しています。
・Core i9 9900Kの殻割りクマメタル化&銅製IHSの冷却性能を検証
「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」が対応するCore i9 9900KやCore i7 9700Kは手動OCすると発熱がかなり大きくなるので大型簡易水冷CPUクーラーが推奨されますが、360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、メインストリーム向けでもハイパフォーマンスな環境を目指すのであれば、システムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
以上で検証機材のセットアップが完了となります。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)のBIOSについて
「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」を使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付が変になっているかもしれませんが無視してください。また内容的に差異のないものは過去のスクリーンショットを流用しています。)
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)のBIOSに最初にアクセスするとEZモードというグラフィカルな画面が表示されます。パッと見の見栄えは良いのですが詳細モードでないと詳細設定ができないので「F7」キーを押してサクッと「アドバンスドモード(Advanced Mode)」へ移るのがおすすめです。
「F7」キーを押すとアドバンスドモードという従来通りの文字ベースのBIOSメニューが表示されます。「Main」タブの「System language」-「English」と表記された項目のプルダウンメニューから言語設定が可能で日本語UIを選択できます。ASUSマザーボードは競合他社と比較してもBIOSメニューの日本語ローカライズの充実と正確さが魅力です。
次回起動時に初回から詳細モードを起動する場合は、「起動-ブート設定」にある「セットアップモード」の項目をアドバンスドモードに変更してください。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)のBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出はトップメニュータブ最右端の「終了」から行えます。その他の設定を行っていても左右カーソルキーですぐに退出可能です。
特定のブートデバイスを指定してBIOSから退出するBoot Override機能は「起動」タブメニューの最下段「起動デバイス選択」に配置されています。
12月16日現在、ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)のサポートページで公開されている最新版は「0602」だったのでBIOSの更新を行いました。
BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルをダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://www.asus.com/jp/Motherboards/ROG-MAXIMUS-XI-HERO-WI-FI/HelpDesk_BIOS/
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、アドバンスドモードの「ツール-ASUS EZ Flash 3 Utility」でストレージデバイスからのアップデートでBIOSファイルを選択します。あとはガイドに従ってクリックしていけばOKです。
ブートとOSインストール周りについて紹介します。とはいってもASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)のブート回りは下画像のように非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。
OSのインストールも「Boot Option #1」に「UEFI:〇〇」というOSインストールメディアを設定して保存&退出でOKです。「Boot Option #1」の下にスクロールしていくとブートデバイスを個別に指定して再起動できる「Boot override」もあるのでこちらから、同様に「UEFI:〇〇」というOSインストールメディアを選択してもOKです。
ちなみにWindows10の製品パッケージに付属するUSBメモリではUEFIで認識できないトラブルが発生することがあるようなので、そういうときはこちらの記事に従ってMS公式ツールを使用して適当なUSBメモリでOSインストールメディアを作成すると上手くいきます。
BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)のBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。
オンボードデバイス設定構成からはM2_1スロットの動作モード(NVMe or SATA)やPCIE4_3(7段目のx16サイズスロット)のPCIE帯域など、他のインターフェースと排他利用があるインターフェースについて動作モードの設定が可能です。
マザーボード上のコンポーネント詳細でも紹介した外部温度センサーについてはBIOS上からも温度をモニタリングできます。簡易水冷(AIO水冷)ポンプ専用の項目も用意されており、ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)であれば冷却機能周りは空冷・水冷ともにほぼ全てBIOS上でコントロール可能です。
BIOS上のファンコントロール機能についてですが、CPUファン端子とCPU OPT端子はCPU温度依存のファンコントロールしかできませんが、その他のケースファン端子については、外部温度センサーなどの各種温度ソースからファンコントロールが可能です。
ファン操作モードはPWM速度調整とDC(電圧)速度調整の2種類が用意されていますが、DC速度調整の場合は制御プロファイルを手動にすると、下限温度以下で冷却ファンを停止させる所謂セミファンレス機能を実現する「Allow Fan Stop」の設定が表示されます。
またASUSマザーボードにもグラフィカルUIによるファンコントールの設定機能として「Q-Fan Control」が用意されています。設定可能な内容はは上で紹介したコンソールのファンコンと同じですが、グラフィカルUIでわかりやすく設定できるよ、という機能です。直感的にわかりますし直打ちが苦手な人にはありがたい機能だと思います。
イルミネーション操作機能「ASUS AURA Sync」について
「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」はマザーボード備え付けのLEDイルミネーションやRGB対応汎用4PIN/アドレッサブルRGB対応汎用3PINイルミネーション機器を操作可能なライティング制御機能「ASUS AURA Sync」に対応しています。「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」ではリアI/Oカバーとチップセットクーラーの2か所にLEDイルミネーションが実装されています。
ASUSのLEDイルミネーション同期調整機能「ASUS AURA Sync」による操作に対応したRGB対応汎用4PIN LEDヘッダーがマザーボードの右上と左下の2か所に設置されています。当サイトでもレビュー記事を掲載しているLEDテープ「SilverStone SST-LS02」やLEDファングリル「Phanteks Halos Lux RGB Fan Frames」などが接続可能です。
またアドレッサブルLED機器を接続可能なARGB対応VD-G型3PIN LEDヘッダーも2基が実装されています。使用可能なアドレッサブルLEDテープについては国内で発売済みの「BitFenix Alchemy 3.0 Addressable RGB LED Strip」やASUS ROG純正品の「ASUS ROG ADDRESSABLE LED STRIP-60CM」が動作することが確認できています。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)に搭載されたLEDイルミネーションや汎用ヘッダーに接続されたイルミネーション機器は発光カラーや発光パターンを専用アプリのAURA Syncから同期操作可能になっています。AURA Syncは公式ホームページやマザーボードのサポートページから最新版をダウンロードできます。
AURA公式DL:https://www.asus.com/campaign/aura/jp/download.html
専用アプリである「AURA Sync」を使用することで、色を指定した固定色発光、カラーサイクル等の発光パターンプリセット、温度や音楽に合わせた発光変化など自由度の高いイルミネーション設定が可能です。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)のマザーボード備え付けLEDイルミネーションはソフトウェア上から各エリアに対して個別に発光カラーを設定できます。
設定メニューでは汎用LEDヘッダーに関する設定が行えます。
マザーボード備え付けおよび汎用ヘッダーで増設したLEDイルミネーションについてはデフォルトではOSのシャットダウンやスリープ時もLEDが点灯しますが、「When system is in sleep, hibernate and soft off states」の項目をOFFにすることでスリープ時やシャットダウン時のみLEDイルミネーションをOFFにすることができます。
なおシャットダウン・スリープ時のLEDの点灯・消灯設定はWindows上の「AURA Sync」からも設定が可能になっており、BIOS設定よりもアプリからの操作が優先されます。ASUS Aura Syncソフトウェアの「Power Off」タブがスリープやシャットダウン時のLEDイルミネーションの設定になっています。ここから設定を行うことでASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)でもシャットダウン・スリープ時のLEDイルミネーションの消灯が可能です。AURA Syncについて詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
当サイトでレビュー記事を公開中のG.Skill製DDR4 OCメモリ「G.Skill Trident Z RGB」もASUS Aura Syncによるイルミネーション同期設定に対応しています。
・「G.Skill Trident Z RGB F4-3200C14Q-32GTZRX」をレビュー
下は「ASUS ROG ZENITH EXTREME」で「G.Skill Trident Z RGB」を使用した例ですが、ASUS AURA Syncのウィンドウ上側にDRAMの項目が表示されて「G.Skill Trident Z RGB」も同期操作が可能になります。ColorCycleのような全体同期型の発光パターン以外にも、「G.Skill Trident Z RGB」は各DRAM毎に4分割アドレッサブルLEDが実装されているので個別制御も可能です。
ASUSのLEDイルミネーション機能「AURA Sync」については汎用イルミネーション機器の使用方法や導入例などを下の記事でも紹介しているので、詳しくはこちらを参照してください。
・ASUS製のLEDイルミネーション操作機能「AURA Sync」の使い方
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)のOC設定について
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)を使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」のオーバークロック設定は「Extreme Tweaker」というトップメニューのタブページにCPUコアクロック、メモリ、電圧など各種設定項目が集約されています。「Extreme Tweaker」ページをスクロールしていくとCPUコアクロック、メモリ、電圧などの各種設定項目が表示されるので設定しやすいUIです。設定値を直接入力する項目でデフォルトの「Auto」に戻す場合は「a」キーを入力すればOKです。
「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」のオーバークロック設定項目の最初にある「AI Overclock Tweaker」ではプルダウンメニューから「Auto」「Manual」「XMP」の3つの設定モードが選択できます。Autoモードは基本的な設定項目に関する自動or手動設定が可能な一般ユーザー向けの設定モードとなっています。ManualモードはBCLK等の詳細なOC設定項目が解放される上級者向けの設定モードです。XMPモードはManualモードベースですが、OCメモリに収録されたXMPプロファイルを適用できる設定モードになっています。
OC初心者はXMPを使用しないならAutoモード、XMPを使用するならXPMモードを使用すればOKです。
CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
コアクロックはコア数に対して各コアに最大動作クロック(BCLKに対する倍率)を指定できます。「コア0:コア1:コア2:コア3」を倍率として、例えば「45:43:43:42」のようにバラバラに指定した場合、4つのコアのうち1つに負荷が掛かる場合は4コアのうち1つが45倍動作、2つと3つの場合は43、4つの場合は42となります。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)ではCPU内部クロック倍率の設定モードとして、マザーボードのお任せとなる「Auto」、全コアの倍率を同じに設定する「Sync All Cores」、負荷のかかっているコア数によって最大動作倍率を設定する「Per Core」、自動的にOC設定を最適化してくれる「AI Optimized」の4つのモードが存在します。
「Per Core」モードでは負荷がかかっているコア数に対して最大動作倍率を設定可能です。
一般ユーザーがCPUのOCを行う場合は通常、全コアの最大倍率を一致させると思いますが、同マザーボードの場合は「Sync All Cores」モードを選択して「1コアの倍率制限値: 50」と設定することでデフォルトのBCLK(ベースクロック)が100MHzなのでその50倍の5.0GHzで全てのコアが動作します。
「AI Overclock Tweaker」から「Manual」モードもしくは「XMP」モードを選択するとベースクロック(BCLK)の設定項目が表示されます。デフォルトのAutoでは100MHzに固定されていますが、設定値の直打ち、もしくはプラスマイナスキーで操作することによって40~1000MHzの範囲内で設定できます。CPUコアクロックはBCLKに対する動作倍率で設定されるのでBCLK110MHz、動作倍率45倍の場合はコアクロック4.95GHz動作となります。ただしBCLKを使用したOCはかなり上級者向けなので通常はAutoか100MHzが推奨です。
キャッシュ動作倍率は「CPUキャッシュ最大動作倍率(Max CPU Cache Ratio)」から変更可能です。CPUコアクロック同様にベースクロックに対する動作倍率でキャッシュの動作周波数を設定できます。
続いてコア電圧の調整を行います。
Intel第8/9世代CPUではCPUコアとキャッシュへの電圧は共通なので、CPUコアクロックやキャッシュクロックのOCに関連する電圧設定としては、ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)では「CPUコア/キャッシュ電圧(CPU Core/Cache Voltage)」の項目を変更します。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)ではCPUコア電圧をマニュアルの設定値に固定する「Manual」モード、CPUに設定された比例値にオフセットかける「Offset」モード、ターボブースト時にのみ昇圧を行う「Adaptive」モードの3種類が使用できます。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)でCPUコア/キャッシュクロックのOCを行う場合、CPUコア電圧の設定については設定が簡単で安定しやすいので固定値を指定するManualモードがおすすめです。8コア16スレッドCore i9 9900KをOCする場合、CPUコア電圧の目安としては最大で1.300~1.350V程度が上限になると思います。
CPUコア電圧モードについて簡単に説明すると、オフセットモードやアダプティブモードはCPU負荷に比例して電圧が設定されており、低負荷時は電圧が下がるので省電力に優れるのですが、OCをする場合はマザーボードによって挙動に差があり安定する設定を見極めるのが難しいので、個人的にはオフセットやアダプティブは定格向け、OCには固定値適用の固定モードを推奨しています。
仮にOCでオフセットやアダプティブを使う場合も最初はコアクロックに対して安定する電圧を見極める必要があるので、まずは固定モードを使用します。
ちなみにマザーボードにより対応しているモードは異なりますが、CPUのオーバークロックに付随するコア電圧のモードの概略図は次のようになっています。
またCPUのOC/DCに関連する電力設定としてASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)ではコアクロックと電圧の設定項目の中間あたりに「External Digi+ Power Control」と「CPU電力詳細設定」の2つがあります。
コアクロックを高く設定する時に追加で変更するといい項目として「External Digi+ Power Control」の「ロードラインキャリブレーション」があります。ロードラインキャリブレーションはCPU負荷時の電圧降下を補正してOCを安定させる機能となっており、補正の強度としてLevel 1~Level 8の8段階になっており、Levelが大きくなるほど電圧降下の補正は強くなりOCは安定しやすくなりますが発熱も大きくなります。
「External Digi+ Power Control」ではその他にも「CPU VRM スイッチング周波数」「CPU VRM スペクトラム拡散」「CPU VRM 可動フェーズ設定」などCPUのオーバークロック時にマザーボードVRMからの電力供給を安定させる設定項目が用意されています。
その他にもCPUコアクロックをOCする場合は「CPU SVID)」や「C State」を無効化すると、OC時の動作が安定しやすくなるようです。
また「CPU電力詳細設定」には「瞬間許容電力制限値(Short Duration Power Limit)」「許容電力上限値(Long Duration Power Limit)」という2つの電力制限機能があり、電力制限がかかる閾値(単位はW)と電力制限がかかるまでの時間を設定できます。
電力制限がかかるとその指定電力内に収まるようにコアクロックに制限がかかります。デフォルトの状態では「Auto」になっていますが、ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)では手動でコアクロックのOCを行った場合はパワーリミットが掛からないように勝手に設定してくれるので放置でも問題ありません。基本的に一定消費電力以内に収めるための省電力機能(+若干のシステム保護機能)と考えてください。
メモリのオーバークロックについても簡単に紹介しておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
一方でXMPによるメモリOCは上の手順によるOCをメーカー側がすでに行い動作確認をしているので、メーカーが動作確認を行ったOCプロファイルを適用するだけで簡単にメモリをオーバークロックできます。
メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」では正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動で2133MHzのような緩い設定で起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)では「AI Overclock Tweaker」からXMPモードを選択するとに設定することでOCメモリに収録されたXMPプロファイルによるメモリのオーバークロックが可能です。
「AI Overclock Tweaker」のAutoモードやManualモードにおいて「DRAM Frequency」の設定値がAutoになっている場合は、使用するメモリにSPD情報として収録されている動作クロック2133~2666MHzなど周波数およびタイミングによる定格動作となります。
手動でメモリ周波数を設定する場合は「DRAM Frequency」の項目でプルダウンメニューから最大8533MHzまでの動作クロック(倍率)設定が可能です。G.SkillやCorsairのOCメモリでも18年後半現在XMP4600MHzが最高なのでまだまだ道のりは長いですが。
メモリ周波数もBCLKに対する倍率で動作周波数が決まっているので、BCLKを標準値の100MHzから120MHzに上げると、44倍設定時の動作周波数は4000MHzから5280MHzに上がります。
メモリタイミングの個別打ち込み設定も可能です。メモリタイミングを手動で設定する場合は基本的には「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS (tRCD)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な3タイミングと、加えて「Refresh Cycle Time (tRFC)」と「Command Rate:1 or 2」の6つ以外はAutoのままでいいと思います。
主要なタイミング設定値から「RAS Precharge (tRP)」の項目がなくなっているのがメモリOC耐性的にどのような影響があるのか気になるところです。
DDR4メモリの周波数OCを行う際は「DRAM Voltage(DRAM電圧)」の項目を、3000MHz以上にOCする場合は1.300~1.350V、3800MHz以上にOCする場合は1.370~1.400Vに上げる必要があります。メモリをOCする場合は最初から1.350V以上にDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。
1,2世代前の過去のIntel CPUではメモリ周波数を3200MHz以上にOCする場合は「VCCSA(CPU SA Voltage)」を盛ると動作がメモリOCが安定したのですが、Intel第8/9世代CPU環境における「VCCSA」の影響は今のところよくわかりません。Auto設定で安定しない場合は昇圧を試してみても良いかもしれません。
また今のところZ390環境では不具合を確認できていませんでしたが、メモリのオーバークロックでPCI-E拡張カードの検出不可やオンボードUSB端子の干渉などが発生する場合は「電圧設定」にある「VCCIO(CPU VCCIO Voltage)」や「チップセット電圧(PCH Core Voltage)」を盛ると安定するかもしれません。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)の動作検証・OC耐性
BIOS周りの管理人的に気になるところの紹介はこのあたりにしてASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)を使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。まずはFast Bootを無効にしてOSの起動時間を測定したところ、「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」の起動時間は24秒ほどした。メインストリーム向けとはいえ多機能なハイエンドマザーボードなので起動には少し時間がかかっています。
「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」にCore i9 9900Kを組み込んだ場合のBIOS標準設定における動作についてですが、CPU動作倍率は1~8コア負荷順で[50, 50, 49, 48 , 48, 47, 47, 47]でIntel公式の定格動作倍率設定よりも若干引き上げられています。電力制限については長期間電力制限と短期間電力制限の両方が標準では無効化されています。ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)にCore i9 9900Kを組み込むと、Intel公式の仕様値であるTDP95Wを大きく上回る消費電力で動作します。
「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」のBIOS標準設定はTDP95Wを超過する動作になりますが、下のようなBIOS設定によってPerCore最大動作倍率および電力制限を適切に設定すれば、Intelの仕様に通りの定格動作で運用することは可能です。
続いてASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)を使用した場合のCPUとメモリのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
Core i9 9900KのOC設定は「CPUクロック倍率:51」「CPUキャッシュ倍率:47」「CPUコア/キャッシュ電圧:1.300V(固定モード)」「ロードラインキャリブレーション: Level 7」「SVIDサポート: Disabled」「C State: Disabled」「メモリ周波数:4000MHz」「メモリ電圧:1.400V」「メモリタイミング:17-17-17-37-CR2」としています。
上の設定を適用したところ問題なくOSを起動させることができました。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)の環境(BIOS:0602)において、検証機材メモリのG.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKKを使用して、メモリ周波数4000MHz メモリタイミング:17-17-17-37-CR2で安定動作が確認できました。
ちなみに検証機材メモリG.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKKに収録されたXMP4400MHzプロファイルはZ370マザーボードでも一部のOC特化マザーボードでしか動作しないのですが、第9世代CPU&Z390マザーボードの「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」環境でもやはり正常にPOSTクリアすらできませんでした。第8世代から第9世代で4000MHz以上のメモリ周波数においてOC耐性が大幅に向上したということは特になさそうです。
8コア16スレッド「Intel Core i9 9900K」のコア5.1GHz/キャッシュ4.7GHz、メモリ周波数4000MHz、メモリタイミング17-17-17-37-CR2でCinebenchも問題なくクリアできました。
続いてこのOC設定を使用してストレステストを実行しました。
検証方法については、FF14ベンチマークの動画(再生時間8分、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)でAviutl+x264を使ってエンコードを行いました。エンコード時間はCore i9 9900K 定格の場合20分ほどなので同じ動画のエンコードを2つ並列して実行しています。テスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
ストレステスト中のCPU温度とCPU使用率のログは次のようになりました。マザーボードにASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)を使用して「Intel Core i9 9900K」をコア/キャッシュクロック5.1/4.7GHz、メモリ周波数4000MHzにOCしてストレステストをクリアできました。CPUクーラーのファン回転数は1600RPMで固定しています。
スマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE Pro」(レビュー)を使用してASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)のVRM電源温度をチェックしてみました。
Core i9 9900Kを上記のBIOS設定でOCした時の負荷テスト中のVRM電源温度をチェックしていきます。ちなみに「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」環境でCore i9 9900Kを全コア5.1GHzまでOC、かつメモリも4000MHzにOCするとシステム全体(マイナス20~30WでほぼCPU)の消費電力が280Wに達します。
VRM電源周りに風の直接当たらない簡易水冷CPUクーラーの環境において、Core i9 9900Kを全コア5.1GHzにOCしてVRM電源温度をサーモグラフィーで確認したところ、ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)のVRM電源周りの温度は90度前後まで達しました。「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」はもともとVRM電源フェーズが10フェーズと少なめで、熱分布をみる限りでは実際にCPUコアへの電力供給を主に行っているのはCPUソケット左の6フェーズのようです。
さらに上と同じ設定で、今度は120mm角の冷却ファンをスポットクーラーとして使用しました。スポットクーラーのファン回転数は1200RPMで固定しています。
スポットクーラーのないパッシブ空冷の状態ではVRM電源温度が90度前後に達しましたが、スポットクーラーを使用して適切に冷やしてやれば、VRM電源温度を70度以下に下げることができました。パッシブ空冷でも100度の大台には達していないものの、Core i9 9900Kを大幅にOCするのであればスポットクーラーを使用した方がよさそうです。
「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」環境においてCore i9 9900Kで全コア5.0GHzオーバーの大幅なオーバークロックをする場合、スポットクーラーを使用するのであれば、可変アルミニウム製ファンフレームでVRM電源を狙って設置が容易な「IN WIN MARS」がおすすめです。
・可変アルミフレーム搭載ファン「IN WIN MARS」をレビュー
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)のレビューまとめ
最後に「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- ROG MAXMUSシリーズらしいブラック一色のクールなデザイン
- マザーボード上に設置されたLEDイルミネーションが綺麗
- Core i9 9900K 5.1GHz、メモリクロック4000MHz OCで安定動作
- マザーボード一体型リアI/Oパネル「プリマウントI/Oシールド」搭載
- 重量級グラボにも耐えるメタルアーマー採用PCI-Eスロット「SafeSlot」
- 動作検証に便利なオンボードスタートスイッチ
- 外部センサーと搭載で水温ソースのファンコンも可能なので水冷PCにも最適
- 独自のSSDヒートシンク付き1基を含めてNVMe対応M.2スロットが2基設置されている
- Core i9 9900Kを5.0GHz以上にOC時はスポットクーラーの併用を推奨
- HDMI端子はver1.4で4K・30FPSが上限
- CPUインストレーションツールに非対応
Intel第9世代CoffeeLake Refresh-S CPU対応Z390マザーボード「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」は、ASUSのゲーマー&オーバークロッカー向けブランド”ROG MAXIMUS”シリーズの中では最も安価なエントリーモデルという位置付けですが、ROG MAXIMUSシリーズのデザインを踏襲したスタイリッシュな外見、Core i9 9900Kの5GHzを超えるOCにも耐えるVRM電源、Intel製有線LAN&無線LAN搭載などゲーマーとOCer向けに必要な機能を手堅く備えています。
エントリー向けという位置づけながら、上位モデルのCODE、FORMULA、EXTREMEなどよりも安価でありながら、付加価値性の高いものだけ省略して必要十分な機能が備えたオールラウンダーな構成になっており、ROG MAMIMUSシリーズの中でも個人的には最もお勧めな製品です。
Intel LGA115X系CPUについてはCPUをCPUソケットから着脱する際にピン折れ事故が起こりやすいので、安全かつ簡単にCPUが着脱できる独自機能「CPUインストレーションツール」が採用されているASUS製マザーボードを以前からお勧めしていたのですが、「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」には同ツールが付属しないところは残念でした。第9世代CPUでも問題なく使え、ソケット自体も対応ソケットなのになぜ付属しないのか……。
ASUS製マザーボードではお馴染みですがBIOSやマニュアルの日本語ローカライズ品質は主要4社の中でも随一となっており、BIOSのテキストベースUIの使い勝手も良好です。加えてASUSマザーボードの独自機能「CPUインストレーションツール」があればCPUの着脱時のピン折れの心配は皆無と言っても過言ではないくらい安心感のあります。ROG MAXIMUSと言うと高価で上級者向け製品のイメージが強いかもしれませんが、これらを備えた「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」は初心者にも優しいマザーボードだと思います。
「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」にCore i9 9900Kを組み合わせて使用した場合、デフォルト設定による運用では定格の電力制限が無効化されるため全コア4.7GHzという高いコアクロックで動作しますが、それでもVRM電源温度はサーモグラフィーでせいぜい70度前後なので、同マザーボードの標準設定で運用するのであれば、Intel第9世代CoffeeLake Refresh-S CPUの各種においてVRM電源はパッシブ空冷の冷却でも問題ないと思います。
ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)を使用した検証機では8コア16スレッドのCore i9 9900Kを全コア5.1GHz、キャッシュ4.7GHzに、メモリ周波数も4000MHzにオーバークロックして負荷テストをクリアすることができました。
8コア16スレッドの最上位モデルCore i9 9900Kを5.1GHzにOCして長時間の負荷をかけた場合、VRM電源温度は90度前後に達しました。VRM電源クーラーは前世代よりも大型化され、熱拡散を高めるヒートパイプも増設されましたが、CPU消費電力250Wに達するCore i9 9900Kの大幅なOCはやはりVRM電源への負荷も大きいようです。100度の大台には辛うじて達していないもののPCケースに組み込む実用環境においてCore i9 9900Kを5.0GHz以上にOCする場合はやはりVRM電源の冷却用にスポットクーラーを使用した方がいいと思います。
メモリOCについては周波数と主要タイミングのみの簡単なOC設定で、メモリ周波数4000MHzにおいてメモリタイミング17-17-17-37-CR2まで詰めることができたのでメモリOC耐性(BIOS自動設定)も余裕で及第点をクリアしていると思います。
以上、「ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)」のレビューでした。
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