AMD RyzenはPCゲームのプレイ&配信が苦手?


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【快適配信】シリーズは、Youtube LiveやTwitchなどリアルタイム配信(ライブストリーミング)サービスで、PS4/Xbox/Switch等のコンシューマーゲーム機やPCゲームのプレイ動画・ゲーム実況を快適に配信するのに役立つ予備知識を紹介していくコーナーです。

【快適配信】シリーズの第3弾ではPCゲームのプレイとOBSのx264エンコーダによるフルHD解像度の高画質な配信を”PC1台で”同時に行うのに必要なCPU性能についてIntel製CPUを例にして解説しましたが、第4弾では同じ用途においてAMD Ryzen CPUの性能を検証したのでその結果を紹介していきます。

第2弾で検証したビデオキャプチャを使用した配信性能においては2万円の6コア12スレッドCPUであるRyzen 5 2600Xがみごとにx264 mediumに対応する性能を発揮し、圧巻のコストパフォーマンスによってIntel製CPUとの差を見せてくれたので、前回の検証を踏まえると8コア16スレッドのRyzen 7 2700XはPCゲームプレイ&配信における救世主になるのでは?と期待させられるのですが、プレイ&配信を行うケースでは事情が異なるようなので詳しくチェックしてきましょう。

国内サイトで唯一(たぶん)、録画動画のフレームレートを厳密に数値化して各種CPUのリアルタイム配信性能をベンチマーク測定することに成功、その結果を元に比較しています!




検証システムと設定について

PC1台でPCゲームをプレイしながらCPUリソースのx264エンコーダによってフルHDの高画質な配信をするのに必要なCPU性能を検証するシステムや設定について最初にまとめておきます。
まず比較サンプルとして前回はIntel製CPUでコアクロックを3.8GHzに固定し、6コア6スレッド、6コア12スレッド、8コア8スレッド、8コア16スレッドの4種類を検証しましたが、今回はAMD製CPUから6コア12スレッドのRyzen 5 2600Xと8コア16スレッドのRyzen 7 2700Xを選んで、Intel製CPUと同じくコアクロックを3.8GHzに固定して検証を行いました。
DSC05304_DxO

検証に用いるPCゲームとして、Middle-Earth: Shadow of War(フルHD解像度、ウルトラ-画質プリセット)、Shadow of the Tomb Raider(フルHD解像度、最高-画質プリセット、DirectX12)、Far Cry New Dawn(フルHD解像度、最高-画質プリセット)、The Division 2(フルHD解像度、ウルトラ-画質プリセット、DirectX12)の4種類でゲーム内ベンチマークを使用しています。
PC Game_Streaming Test
検証内容はシンプルに、フルHD/60FPSでPCゲームをプレイしながらフレーム落ちなくフルHD/60FPSで録画配信することができるCPU性能を調べます。PCゲームの録画配信はフルHD/60FPSで行うので、簡単のためPCゲームのプレイ解像度もフルHDとしています。またフレームレートについては60FPSを超過する状態でプレイするとPCゲームプレイ側にCPUリソースが余分に奪われるので、RivaTunerのFramerate Limitを使用して60FPSロックをかけています。
PUBGやフォートナイトなどバトルロイヤル系ゲームでは100FPS以上のハイリフレッシュレート(ハイフレームレート)でプレイしながら、フルHD/60FPSのゲーム実況が行われていますが、そのケースについては別記事で取り扱うことにします。
PC Game_Streaming Test_60FPS Lock

「OBS(Open Broadcaster Software)」を使用してプレイ動画の配信を行う場合、エンコーダとしてはCPUを使用するx264のソフトウェアエンコーダと、NVEncのようにNVIDIA/AMD製GPUを使用するハードウェアエンコーダがあります。フルHD解像度ならGeForce GTX 1660やRadeon RX 580のようなミドルクラスGPUで十分な画質とフレームレートが得られたコストパフォーマンス的にGPUエンコーダのほうがオススメという本音もあるのですが、今回は画質の高さで定評のあるx264エンコードについて紹介します。
NVIDIAによると、旧NVEnc(GTX 10XXシリーズ以前)、x264のFastプリセット、新NVEnc(RTX 20XX/GTX 16XXシリーズ)、x264のMediumプリセットの順番に高画質になるとのことなので、FastプリセットとMediumプリセットで快適に配信できるCPUを調べてみました。
geforce-rtx-streaming-encoder-improves-image-quality
エンコード設定としては上述の通りエンコーダはCPUを使用するソフトウェアエンコーダのx264、CPU使用のプリセット(画質に影響)はFastとMedium、ビットレート制御はCBRでビットレートはフルHD解像度の配信で主流な6Mbpsです。ちなみにYoutube LiveはフルHD解像度で12Mbpsに対応していますが、6Mbpsと12Mbpsを比べると12MbpsのほうがCPU性能を要求される傾向にあります。(ビットレートが高くするとCPU性能の要求が上がる)
OBS_x264_Fast_CBR_6MbpsOBS_x264_medium_CBR_6Mbps

プレイ動画の配信検証記事では実際に録画した動画の画面を見せてコマ落ちを読み手に確認させる形態が多いですが、当記事の特長として録画した動画のフレーム落ちを厳密に測定して、その推移や平均フレームレートから定量的に比較しています。おそらく国内でこの比較ができているのは当サイトだけ!

『60FPS>PCゲームプレイのフレームレート>録画動画のフレームレート』という関係は自明なので、録画動画のフレームレートの推移だけを確認しておけば、PCゲームのプレイと録画が60FPSで安定しているかどうかの両方を検証できます。



AMD Ryzen CPUのPCゲームプレイ&配信性能 - x264 Fastプリセット

まずはPC1台でPCゲームをプレイしながら、x264エンコーダのFastプリセットによってフルHDの高画質な配信をする場合のAMD Ryzen CPUのパフォーマンスをチェックしていきます。
今回は6コア12スレッドのRyzen 5 2600Xと8コア16スレッドのRyzen 7 2700Xを全コア3.8GHzに固定して検証しているので、下のグラフにはIntel製CPUの6コア12スレッドと8コア16スレッドのパフォーマンスも併記しました。

Middle-Earth: Shadow of War(フルHD解像度、ウルトラ-画質プリセット)について、x264エンコーダのFastプリセット、CBR 6Mbpsで録画した時の各CPUのフレームレート推移は次のグラフのようになっています。
Ryzen_OBS_x264_Fast_SoW_1

Shadow of the Tomb Raider(フルHD解像度、最高-画質プリセット、DirectX12)について、x264エンコーダのFastプリセット、CBR 6Mbpsで録画した時の各CPUのフレームレート推移は次のグラフのようになっています。
Ryzen_OBS_x264_Fast_SOTTR_1

Far Cry New Dawn(フルHD解像度、最高-画質プリセット)について、x264エンコーダのFastプリセット、CBR 6Mbpsで録画した時の各CPUのフレームレート推移は次のグラフのようになっています。
Ryzen_OBS_x264_Fast_FCND_1

The Division 2(フルHD解像度、ウルトラ-画質プリセット、DirectX12)について、x264エンコーダのFastプリセット、CBR 6Mbpsで録画した時の各CPUのフレームレート推移は次のグラフのようになっています。
Ryzen_OBS_x264_Fast_Div2_1


CPUが録画配信のみを行う『ビデオキャプチャを使用した配信性能』においてはCPU価格2万円でx264 Mediumに対応できる6コア12スレッドCPUとして圧倒的なコストパフォーマンスを見せたRyzen 5 2600Xですが、PCゲームのプレイと配信を同時に行うケースは残念ながら、x264エンコードにおいて高画質とされるFastプリセットとMediumプリセットの2種類のうち軽い方のFastプリセットの時点ですでにフレーム落ちが目立ち、CPU負荷の重いゲームでは紙芝居状態になってしまいました。

安価な8コア16スレッドCPUとして期待の高かったRyzen 7 2700XもFastプリセットの時点ですでにフレーム落ちが目立ちます。CPU負荷の軽いゲームであればx264 Fastで視聴に耐える配信は行えそうですが、同じコアクロックにそろえたIntel製CPUの8コア16スレッドが万全なパフォーマンスであるのと比較すると、やはり見劣りする結果です。



AMD Ryzen CPUのPCゲームプレイ&配信性能 - x264  Mediumプリセット

Fastプリセットの時点で厳しかったので結果が見えている感もありますが、PC1台でPCゲームをプレイしながら、x264エンコーダのMediumプリセットによってフルHDの高画質な配信をする場合のAMD Ryzen CPUのパフォーマンスをチェックしていきます。

Middle-Earth: Shadow of War(フルHD解像度、ウルトラ-画質プリセット)について、x264エンコーダのMediumプリセット、CBR 6Mbpsで録画した時の各CPUのフレームレート推移は次のグラフのようになっています。
Ryzen_OBS_x264_Medium_SoW_1

Shadow of the Tomb Raider(フルHD解像度、最高-画質プリセット、DirectX12)について、x264エンコーダのMediumプリセット、CBR 6Mbpsで録画した時の各CPUのフレームレート推移は次のグラフのようになっています。
Ryzen_OBS_x264_Medium_SoTTR_1

Far Cry New Dawn(フルHD解像度、最高-画質プリセット)について、x264エンコーダのMediumプリセット、CBR 6Mbpsで録画した時の各CPUのフレームレート推移は次のグラフのようになっています。
Ryzen_OBS_x264_Medium_FCND_1

The Division 2(フルHD解像度、ウルトラ-画質プリセット、DirectX12)について、x264エンコーダのMediumプリセット、CBR 6Mbpsで録画した時の各CPUのフレームレート推移は次のグラフのようになっています。
Ryzen_OBS_x264_Medium_Div2_1


MediumプリセットはFastプリセットよりも重いので当然の結果ですが、6コア12スレッドのRyzen 5 2600Xは言わずもがな、Fastプリセットでゲームによってはギリギリで対応できそうなフレームレート推移を見せた8コア16スレッドのRyzen 7 2700XもMediumプリセットでは大幅にフレーム落ちが発生しています。

x264 MediumプリセットでPCゲームのプレイ&配信をPC1台で実行しようと思うと、最低でも8コア16スレッドのCPUが要求されるというのが前回の検証の結論でしたが、2019年現在、メインストリーム向けCPUでこのユースに耐えるCPUはIntel Core i9 9900Kしかないようです。



製品レベルのコアクロックでAMD製CPUとIntel製CPUを比較すると

ここまでは同一コアクロックに固定して検証してきましたが、次は製品レベルのコアクロック設定においてAMD製CPUとIntel製CPUの動画配信性能を比較していきます。

以上の検証においては簡単のためコアクロックを3.8GHzに固定していたので、動画配信性能は概ね、『AMD製6コア12スレッド<Intel製6コア12スレッド<AMD製8コア16スレッド<Intel製8コア16スレッド』の順になりました。

しかしながら実際の製品レベルで見ると、Intel製CPUのうち6コア12スレッドのCore i7 8700Kや8コア8スレッドのCore i7 9700KなどK付きの倍率アンロックなIntel製CPUは、定格(TDO95W)でも4.3~4.5GHzで動作しますし、4GHz後半への手動オーバークロックで安定動作させることも難しくありません。またAMD製CPUについても冷却が十分ならXFRによる自動OC機能でRyzen 5 2600XとRyzen 7 2700Xはともに全コア4.0GHz前後で動作します。

そこでXFRによるターボが十分に効いた状態のRyzen 5 2600XとRyzen 7 2700X、全コア4.6GHzにしたIntel製6コア12スレッドCPUのCore i7 8700Kの3種類で動画配信性能を比較してみました。

x264エンコーダのFastプリセット、CBR 6Mbpsで録画した時の各CPUのフレームレート推移は次のグラフのようになっています。
Ryzen_OBS_x264_Fast_SoW_2Ryzen_OBS_x264_Fast_SOTTR_2
Ryzen_OBS_x264_Fast_FCND_2Ryzen_OBS_x264_Fast_Div2_2

x264エンコーダのMediumプリセット、CBR 6Mbpsで録画した時の各CPUのフレームレート推移は次のグラフのようになっています。
Ryzen_OBS_x264_Medium_SoW_2Ryzen_OBS_x264_Medium_SoTTR_2
Ryzen_OBS_x264_Medium_FCND_2Ryzen_OBS_x264_Medium_Div2_2


製品レベルのコアクロックでAMD製CPUとIntel製CPUの動画配信性能を比較すると、PCゲームやx264プリセットの種類によって若干バラつきはあるのですが、大まかな傾向として、8コア16スレッドのRyzen 7 700Xと6コア12スレッドのCore i7 8700Kがほぼ同性能という結果になりました。

AMD製8コア16スレッドとIntel製6コア12スレッドが同性能という点で「AMD RyzenはPCゲームのプレイ&配信が苦手である」という結論は正しいと言えば正しいのですが、『価格ベースで比較すれば、Intel製6コア6スレッドがRyzen 7 2700Xの比較対象になる』という反論もあり得ます。ただし結局のところ『そもそもこのユースに耐えるCPUが6万円以上のCore i9 9900Kしかなく』、『x264のFasterやVeryFastにプリセットを下げるくらいならGPUエンコーダのほうが高コスパ』という事実を考えると厳密さを求めていくのは詮無い感が否めません。

とりあえず今回の検証結果で押さえておくべき事実は『PCゲームプレイ&配信というユースにおいて、Intel製CPUのコアスレッド数を基準にしたとき、Ryzen 7 2700Xは8コア16スレッドCPUという額面通りのパフォーマンスは期待できない』ということです。



まとめ:AMD RyzenはPCゲームのプレイ&配信が苦手?

以上、PC1台でPCゲームをプレイしながらOBSでx264エンコーダによってフルHD解像度の高画質動画を配信するケースについて、AMD Ryzen CPUのパフォーマンスを確認しましたが、端的に言ってAMD Ryzen CPUでは高画質の基準となるx264のFastプリセットもしくはMediumプリセットで安定した配信を行うのは無理というのが結論です。AMD Ryzen CPUをCPUエンコーダとして使用する場合はビデオキャプチャを使用した動画配信に限定するのがオススメです。
【快適配信:2】AMD RyzenはTVゲーム配信で高コスパなCPU
快適配信-Ryzen

第3弾の結論の通りPC1台でPCゲームプレイ&配信というユースにおいて、どうしてもCPUエンコーダを使用したいならIntel Core i9 9900Kもしくは10コア以上のIntel Core-X CPUを選択する必要がありますし、プリセットをFaster以下に下げるくらいならTuring世代NVEncなどGPUエンコーダに頼るのが経済的です。





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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)



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