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DELLのハイエンドゲーミングブランド Alienwareから発売された、有機ELパネルに量子ドット技術を組み合わせたQD-OLEDパネルを採用する、4K解像度かつ240Hzリフレッシュレートの32インチ湾曲ゲーミングモニタ「Alienware AW3225QF」をレビューします。
Alienware AW3225QF レビュー目次
1.Alienware AW3225QFの概要
2.Alienware AW3225QFの開封・付属品
3.Alienware AW3225QFのモニタ本体
4.Alienware AW3225QFのOSD操作・設定
・有機ELパネルの焼き付き防止機能について
・PIP/PBP機能について
・AlienVisionとAlienFXについて
5.Alienware AW3225QFの発色・輝度・視野角
6.Alienware AW3225QFの色精度・ガンマ・色温度
7.Alienware AW3225QFのリフレッシュレート
8.Alienware AW3225QFの応答速度・表示遅延
9.Alienware AW3225QFの可変リフレッシュレート同期
10.ALIENWARE AW3225QFのHDR表示やCSゲーム機対応
11.ALIENWARE AW3225QFのHDR性能やローカルディミング
12.Alienware AW3225QFのレビューまとめ
【2024年2月23日】 初稿、ファームウェア M2B102で検証
【2024年10月4日】 ファームウェア M2B105で検証
製品公式ページ:https://www.dell.com/ja-jp/shop/cty/apd/210-blny
Alienware AW3225QFの概要
Alienware AW3225QFの開封・付属品
まずは「Alienware AW3225QF」を開封していきます。「Alienware AW3225QF」のパッケージサイズは幅85cm×厚さ28cm×高さ52cmとなっており、32インチモニタが入っている箱としては若干大きめで、重量は14kg程度です。天面には持ち手が付いているので成人男性なら持ち運べると思います。
「Alienware AW3225QF」はN式箱という構造になっておりスペーサーを外パッケージから引っ張り出す手間がないのが特徴的です。
パッケージを開くとモニタ本体や付属品が収められたパルプモールド製のスペーサーが現れます。スペーサーは2段になっており、上の段にはモニタスタンドやケーブルなどの付属品が、下の段にはモニタ本体が収められています。
「Alienware AW3225QF」は製品出荷前にsRGBとDCI-P3の色精度がΔE<2となるようにファクトリーキャリブレーションが行われており、カラーキャリブレーションレポートが同封されていました。
「Alienware AW3225QF」の付属品を簡単にチェックしておくと、DisplayPortケーブル、HDMIケーブル、USBアップストリームケーブル、ACケーブル、クリーニングクロス、マニュアル冊子類が付属します。加えて後ほど説明しますが、IOポートカバーも付属しています。
「Alienware AW3225QF」のHDMIビデオ入力は4K/240FPSの映像伝送が可能なHDMI2.1に対応しおり、付属HDMIケーブルはHDMI協会がHDMI2.1互換を証明するUltra High Speed HDMIケーブル認証を取得していました。
各種ケーブルを個別に購入する場合のオススメ製品も紹介しておきます。
視覚損失のない非可逆圧縮機能DSCによって4K/240Hz(DSC)/HDR 10bit RGBに対応するDisplayPort1.4ケーブルなら「サンワサプライ KC-DP14シリーズ」を推奨しています。
標準で付属するケーブルよりもケーブル径が細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。「Alienware AW3225QF」で正常動作も確認済みです。
HDMI2.1ケーブルについては「エレコム ウルトラハイスピードHDMIケーブル スリム CAC-HD21ESシリーズ」がおすすめです。標準で付属するケーブルよりもケーブル径が細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。
同製品は4.5mm径のスリムケーブルながら、HDMI2.1の正常動作を証明するUltra High Speed HDMIケーブル認証を取得しており、安心して使用できます。
当サイトでもGeForce RTX 40シリーズGPU搭載PC、PlayStation 5、Xbox Series X|Sで正常動作を確認しています。
その他にもケーブル径5.0mm以下でスリムな48Gbps対応HDMI2.1ケーブルについてまとめた記事も公開しているので、こちらも参考にしてみてください。
長さ5m以上でも安定した動作が期待できる光ファイバー式HDMI2.1ケーブルでイチオシは、「Cable Matters Active 8K HDMI Fiber Optic Cable」です。
「Cable Matters Active 8K HDMI Fiber Optic Cable」は、HDMI協会の公式認証であるUltra High Speed HDMI認証を取得、さらにXbox Series X|S互換製品認証も取得しており、ケーブル性能の保証としては隙の無いカンペキな製品です。
5mが7000円、10mが10000円で光ファイバー式HDMIケーブルとしては標準的なお値段で、 信頼性の高さも考慮したらかなりリーズナブルだと思います。
当サイトでもGeForce RTX 40シリーズGPU搭載PC、PlayStation 5、Xbox Series X|Sで正常動作を確認しています。
モニタスタンド装着に当たって、「Alienware AW3225QF」のモニタ本体はディスプレイパネルが湾曲しているので破損を防止するため、保護シートに記載されているように梱包スペーサーに置いたまま作業してください。
「Alienware AW3225QF」に付属するモニタスタンドはフレームとフットプレートの2つの部品で構成されています。
フットプレートをフレームに差し込んで底面のネジを締めるだけで簡単にモニタスタンドを組み立てられます。ネジにレバーが付いているのでドライバー不要で組み立てが可能です。
モニタスタンドを組み立てたら、「Alienware AW3225QF」のモニタ本体背面の溝に斜め下の方向からモニタスタンドを差し込めば取り付け完了です。
モニタスタンドの取り外しは、根本の下にあるスイッチでロックを外して、装着した時と逆に動かして引き出すだけです。
Alienware AW3225QFのモニタ本体
続いて「Alienware AW3225QF」のモニタ本体をチェックしていきます。「Alienware AW3225QF」はフレームレス構造ですが、2mm程度の外枠を含めて、パネル上には上側に6mm程度、左右に10mm程度の非表示領域があります。下にはベゼルというか薄いフレームが貼り付けられており、非表示領域は18mm程度です。加えて表示領域にはピクセルシフトの余剰ピクセルもあります。
下フレームの中央には銀色文字でAlienwareテキストロゴが刻印されています。Alienwareのロゴはシンプルで主張は強くなくて良い感じです。
「Alienware AW3225QF」の液晶パネルは32インチサイズですが、1700Rの曲率で強く湾曲しています。
「Alienware AW3225QF」の背面に注目するとモニタ本体およびモニタスタンドは、Alienware公式が”レジェンド”と呼ぶ流線形の造形、カーブ要素の強くなった2022~2023年の新デザインコンセプトです。
同時に発売されたAlienware AW2725DFはダークサイドオブザムーンと呼ばれる光沢のあるブラックカラーですが、「Alienware AW3225QF」はホワイト寄りのグレーを基調としたルナライトと呼ばれる、Alienwareブランドでは初期から採用されている馴染み深いカラーリングです。
「Alienware AW3225QF」ではモニタ背面のAlienwareロゴ、”32”インチサイズロゴ、電源ボタンの3カ所にAlienFXと呼ばれるRGB LEDイルミネーションが内蔵されています。
3つLEDイルミネーションは個別に発光カラーを設定できます。LEDイルミネーションの発光パターンはOSDメニューから、特定の発光カラーに固定するモード(全20色)と、七色に変化しているスペクトラムモードの2種類から選択できます。
背面の白い外装カバーの周りには黒色プラスチックで4辺にエアスリットが設けられており、内蔵冷却ファンと合わせて有機ELディスプレイパネルの発熱を効率的に放熱する設計です。
モニタスタンドの支柱部分は従来よりカーブ感の強いデザインになっています。27インチサイズ以下では六角形でデスク上のキーボード等と干渉し難いコンパクトサイズのフットプレートに変わっていますが、「Alienware AW3225QF」は大型サイズなので安定性を重視してV字形状が引き続き採用されています。
「Alienware AW3225QF」のモニタスタンドにはケーブルホールがあるので、各種ケーブルをまとめることができます。
またI/Oポートは外装パネルを大きく切り開く形で配置されていますが、付属のI/Oポートカバーによって背面から見てもスタイリッシュに仕上がります。I/Oポートカバーはプラスチックのツメでツールレスに簡単に着脱できます。
「Alienware AW3225QF」のモニタ本体の厚さは中央の最厚部で70mmほどと最近のモニタとしては厚みが大きいですが、両端の最薄部は10mm弱なので体感としては薄めに感じます。
モニタ本体重量は6.0kg程度なのでモニターアームを組み合わせる時は耐荷重に注意が必要ですが、32インチサイズとしては軽量な部類です。
モニタ本体背面には3カ所に分かれて全て下向きに各種I/OやAC端子が配置されています。
「Alienware AW3225QF」のビデオ入力は背面右側にあります。左から順に、2基のHDMI2.1ビデオ入力、1基のDisplayPort1.4ビデオ入力が設置されています。
下向きのIOポートは背面カバーから埋まった場所にあり、端子から向かい側までのクリアランスが80~90mm程度しかありません。コネクタが大きく、ケーブルが太くて曲げ難いビデオケーブルだとスペースに収まらない可能性があります。
特に光ファイバー式ケーブルはコネクタが大きく、ケーブルの曲げ径に制限があるので注意が必要です。上で紹介したCable Matters製の光ファイバー式HDMI2.1ケーブルはスペースに収まり、4K/240Hzで正常に動作を確認しています。
「Alienware AW3225QF」は3.5mmステレオやビルトインスピーカー等の音声出力を搭載していませんが、代わりにPC向けモニタとしては非常に珍しく、HDMI eARC音声出力に対応しています。
2基実装されているHDMI2.1の一方はeARCによる音声出力ポートとして使用できます。HDMI eARC音声入力のスピーカーやサウンドバーに接続でき、Dolby Atmosのサラウンドにも対応しています。
HDMI eARC音声出力を使用するにはOSD設定メニューでHDMI CECを有効にする必要があります。
背面の右側にはUSB3.0アップストリーム端子と2基のUSB3.0ダウンストリーム端子、さらにモニタ底面に2基のUSB3.0ダウンストリーム端子が設置されており、PCとアップストリーム端子を接続することによって、4基のUSBハブ端子として使用できます。
モニタ底面のUSBポートの片方はUSB Type-Cになっており、BC1.2規格で15Wの給電に対応します。
「Alienware AW3225QF」はACアダプタをモニタ本体に内蔵しており、C13コネクタ(自作PC電源ユニットと同じ)のACケーブルを使用します。付属品があるので各自で用意する必要はありませんが、市販ケーブルも使用できます。
「Alienware AW3225QF」の付属モニタスタンドは左右スイーベルに対応し、可動域は左右20度(40度)です。
「Alienware AW3225QF」の付属モニタスタンドは上下チルトに対応し、可動域は仕様通り下に5度、上に21度です。
モニターの高さはモニター本体とスタンドの付け根部分が上下に動く構造になっており、モニタパネルの頂点で390mm~500mm、110mmの範囲内で調整できます。モニタスタンドの付け根部分には高さ調整に便利な目盛りがあります。
「Alienware AW3225QF」はVESA100x100規格のVESAマウントに対応しておりサードパーティ製のモニターアームを使用できます。モニタ単体の重量も6.0kgほどなのでモニターアームを問題なく利用可能です。
「Alienware AW3225QF」のVESAネジ穴は背面外装から、15mm弱ほど窪んだ場所にあります、クイックリリースでスライドさせるタイプのモニターアームを使用する場合は、M4ネジのスタンドオフを各自で用意してください。
オススメのモニターアームや調整機能が豊富なVESA汎用モニタースタンド、VESAマウントの干渉を避ける方法についてはこちらの記事で詳細に解説しているので、導入を検討している人は参考にしてください。
Alienware AW3225QFのOSD操作・設定
「Alienware AW3225QF」のOSD操作は底面中央に設置されている操作スティックを使用します。操作スティックは上下左右と押下の5つの操作が可能で、操作ボタン各種の応答も良好でした。また電源ボタンがOSD操作用ボタンと離れた場所に設置されていて誤押下の心配がないところも小さな評価ポイントです。
電源ボタンには電源ON時にLEDが内蔵されていますが、背面LEDイルミネーションと同様にOSD設定メニューのAlienFXから発光カラーの変更や消灯が可能です。
「Alienware AW3225QF」は操作スティックを押下(もしくは上下左右のうちAlienVisionの切り替え機能を割り当てていない操作)するとランチャーと呼ばれるショートカットメニューが画面中央下端に表示されます。
ランチャーやOSDメニュー表示中は画面上に現在のOSD設定の一部が確認できるOSDステータスバーも表示されます。
ランチャーの中央には5つのショートカット設定アイコンが表示され、スティックを左右に操作することでアイコンを切り替え、押下するとそのショートカット設定が表示されます。
ランチャーに表示される5つのショートカット設定アイコンに割り当てる機能はOSD詳細設定メニューの「カスタマイズ」から任意に変更することができ、各自で変更頻度の高いものに切り替えておくと便利です。
ランチャーを表示した状態で操作スティックを上に操作する(ディスプレイの奥方向へ倒す)とOSD詳細設定メニューが表示されます。
「Alienware AW3225QF」のOSD表示領域は32インチ画面の12分の1ほどなので、UIスケールは大きくはありませんが(若干文字は小さい気も)、操作スティックに手が届く範囲なら問題なく読めると思います。
「Alienware AW3225QF」は購入直後の初回起動時に言語選択メニューが表示されます。
誤って日本語以外を選択してしまった場合は下記の手順で日本語に変更が可能です。
「Alienware AW3225QF」のOSDメニューには大きく分けて、「ゲーム」「輝度/コントラスト」「入力信号」「AlienFX照明」「ディスプレイ」「PIP/PBP」「メニュー」「カスタマイズ」「その他」の9種の項目が用意されています。
「Alienware AW3225QF」の画質モードはゲームの項目にあるプリセットモードから選択できます。標準設定の「標準」に加えて、「FPS」「MOBA/RTS」「RPG」「SPORTS」などゲームジャンルやコンテンツ別プリセットに加えて、ゲーム別に各自で設定可能な「ゲーム 1~3」、色温度別で「暖色」「寒色」、sRGBもしくはDCI-P3の色空間に制限する「クリエイター(作成者)」、任意に色温度(RGB強度)を調整できる「ユーザーカラー」など多くの画質モードが用意されています。
HDMIビデオ入力時に限定されますがコンソールモードという画質モードもあります。
ゲーム関連の表示設定はトップメニューで一番上の「ゲーム」に配置されています。
黒の強弱を調節して暗がりの視認性を高める機能「暗さスタビライザー」も用意されており、補正強度はレベル0~3の4段階で設定が可能です。標準設定ではレベル0(機能OFFの状態)が設定されており、レベルを上げるほど明るく(白く)なります。
有機ELパネルの焼き付き防止機能について
「Alienware AW3225QF」には有機ELテレビと同様に、有機ELパネルの焼き付き防止機能がいくつか用意されています。”スクリーンセーバー(静止画輝度制限)”は画面表示の内容に変化がない(変化が小さい)場合に、ディスプレイ輝度を自動的に下げる機能です。PlayStation 5で操作がないと画面が暗くなるのと同じような動作を、有機ELパネルの焼き付き防止のためにモニタが行います。
”スクリーンセーバー”はAverage Picture Levelによって動作するので、画面が暗くなるとマウスカーソルのような小さな変化では輝度制限が解除されません。
”ロゴ輝度制限”は体力ケージやミニマップのようにゲーム画面で常に表示され、大きな変化がない部分の輝度を下げる機能です。
スクリーンセーバーやロゴ輝度制限は有機EL保護としては一般的な機能なので、「Alienware AW3225QF」も対応していると思いますが、OSD設定メニューからオン/オフを切り替える等の設定はできません。
「Alienware AW3225QF」は、LG製有機ELテレビなら”スクリーンシフト”(Samsung製有機ELテレビならピクセルシフト)と呼ばれる有機ELパネルの焼き付き防止機能に対応しています。
「Alienware AW3225QF」においてスクリーンシフトは既定動作となっており、OSD設定メニューからオン/オフを切り替える等の設定はできません。
従来のスクリーンシフトは表示内容を数ピクセルだけ上下左右に動かすので端の数ピクセルが見切れていたのですが、「Alienware AW3225QF」では4K解像度(3840x2160)に加えて外周部に縦横20ピクセル程度の余剰画素があり、余剰画素も使用して画面が上下左右にシフトするので端が見切れることはありません。
ピクセルリフレッシュやパネルリフレッシュと呼ばれる軽度の焼き付きを復元する機能として、「Alienware AW3225QF」には”ピクセルを最新の状態に更新(Pixel Refresh)”と”パネルを最新の状態に更新(Panel Refresh)”の2種類が用意されています。どちらも時間経過で自動実行されるので、ユーザーは気にする必要はありません。
”ピクセルを最新の状態に更新”(数分で完了する)は数時間ディスプレイを使用したら実行することが推奨されており、前回の実行から累積使用時間が4時間を超えると、スタンバイモードに入った時、もしくは電源ボタンを切った時に自動的に実行されます。
一方で”ピクセルを最新の状態に更新”(約1時間かかる)は使用を始めてから7000時間を超えた時に自動的に実行されます。
ピクセルリフレッシュやパネルリフレッシュを行う必要があるかどうかは、OSDランチャーメニューを開いた時に画面上部に表示されるパネルケアのインジケーターで分かります。緑色は正常で、黄色や赤色になると実行する時期です。
その他に、「Alienware AW3225QF」では”マルチ ロゴ”と呼ばれると呼ばれる有機ELパネルの焼き付きを防止する保護機能が、ほぼ全てのプリセットモードにおいて既定で有効になっています。(クリエイターモードのみ既定で無効)
詳細は画質に関する章で説明していますが、実際のSDR表示において白色輝度が少々奇妙な挙動を示します。
PIP/PBP機能について
「Alienware AW3225QF」は2つのビデオ入力を画面上に同時に表示する「PIP/PBP」にも対応しています。「Alienware AW3225QF」はPIP/PBPにおいて4K/120Hzに対応しています。(VRRは排他利用)
ネイティブ解像度の4K/240Hzには対応していないものの、映像ソースとして4K/60Hzに制限される製品も少なくないので、4K/120Hzに対応するだけでも大きな魅力です。
またHDR表示もPIP/PBPと併用可能です。HDR表示については主画面と副画面で個別にHDRの有効・無効を設定でき、SDRとHDRの混在だけでなく、HDR10とDolby Visionの混在もできます。
通常のビデオ入力選択を主画面として、副画面はPIP設定内の項目から選びます。副画面は残り2つのビデオ入力から自由に選択できます。ビデオ入れ替えを選択すると主副が入れ替わります。
PIPでは副画面の表示位置を右上/右下/左上/左下の4ヶ所から選択できます。副画面のサイズには小/大の2つの選択肢があり、32インチモニタ上でそれぞれ1/9、1/4程度の小窓として表示されます。
「Alienware AW3225QF」のPIPモードは主画面と副画面共に4K/120Hz/HDRに対応しています。(副画面は当然、表示サイズにスケーリングされますが)
PBPには、4K画面が1920×2160で左右に2等分される”50% - 50%”、1440×2160と2400×2160で不均等に分割される”33% - 67%”と”67% - 33%”、960×2160と2880×2160で不均等に分割される”25% - 75%”と”75% - 25%”の5種類の表示モードが用意されています。
通常のビデオ入力選択を主画面として、副画面はPIP設定内の項目から選びます。副画面は残り2つのビデオ入力から自由に選択できます。ビデオ入れ替えを選択すると主副が入れ替わります。
PBPモードにおいてPCのビデオ出力は1920×2160、1440×2160、960×2160等の特殊解像度もネイティブ解像度として認識され、ストレッチされることなくドットバイドットで表示できました。HDR表示にも対応しています。
なお非16:9アスペクト比のネイティブ解像度をドットバイドットで表示できるリフレッシュレートは60Hzに制限されます。NVIDIA環境の場合、120Hzも表示されますが、16:9アスペクト比に収まるようにネイティブ解像度がスケーリングされてしまいます。
一方で、PlayStation 5やXbox Series X|S等のゲーム機については、縦長にストレッチされることなく、アスペクト比16:9を維持して縮小表示されました。
AlienVisionとAlienFXについて
「Alienware AW3225QF」ではFPSゲーム等に便利な視覚補助機能 AlienVisionがOSD機能として搭載されています。AlienVisionには、暗所の視認性を改善する「ナイト」、低解像やボヤけた表示にシャープネスをかける「クリア」、画面中央の拡大小窓を表示する「ビノ」、ヒートマップフィルタをかける「クロマ」、照準点をオーバーレイ表示する「十字線」の5つの機能があります。
ナイト、クリア、クロマの3つは画面中央にフィルターをかける範囲の小窓が表示されます。ビノも同様に小窓が表示されますが、中央を拡大する小窓が右上に表示されます。十字線はシンプルに中央に照準がオーバーレイされます。
ナイトやクロマは黒潰れして対象を視認し難いような暗いシーンに便利な機能です。
クリアはシャープネス処理がかかるので、小さい対象やボヤけた視界に効きます。
ビノも中央の小さい対象を視認するのに便利な機能、という位置づけですが、拡大率が1.1倍くらいしかありません。後述のAlienFXで小窓サイズを調整できますが、拡大倍率はそのままで表示範囲が広くなるだけでした。1.2~1.5倍くらいに調整できればよかったのですが。
AlienVisionにはトグル機能があり、OSD詳細設定メニューやランチャーが表示されていない状態で、操作スティックを上下左右に操作することで、特定フィルターのON/OFFや順次切り替え(プリセットを切り替える)を設定できます。トグル機能を割り当てなかった(”ー”を設定した)キーを操作した場合はランチャーが表示されます。
順次切り替えについてはトグルリストから切り替えるフィルタを選択できます。
あとAlienVisionではありませんが、ゲーム向上モードという設定項目からは、リアルタイムの画面リフレッシュレートを表示する「フレームレート」(可変リフレッシュレートが有効な場合、OSD表示がリアルタイムで変化する)、カウントダウンを表示する「タイマー」があります。
AlienVisionはOSD機能だけだと5つの視覚補助機能を切り替えるだけですが、PCとモニタをUSB接続した時に使用できるAlienware Command Centerアプリケーションに含まれるAlienFXディスプレイからさらに詳細設定が可能です。残念ながらDDC/CIによるDisplayPort経由ではAlienFXを利用できません。
Alienware Command Centerアプリケーションは公式サポートページからインストーラーをダウンロードし、ポチポチとクリックするだけで簡単にインストールできます。
アプリをインストールしたらAlienware Command Centerアプリケーションを起動し、左上タブメニューのFXを選択します。
AlienFXではテーマと呼ばれる設定プロファイルを作成でき、Alienware Command Centerアプリケーションに登録したゲーム(ライブラリ)と関連付けすることでゲーム起動時にテーマを自動で切り替える、という使い方が可能です。
テーマの編集アイコン(鉛筆マーク)やアクティブなデフォルトテーマの編集アイコンを選択すると、「Alienware AW3225QF」を含めたAlienwareエコシステムの対応機器に関する各種設定が表示されます。
「Alienware AW3225QF」の場合はディスプレイ輝度、プリセットモード、暗さスタビライザーなどOSD設定の一部も表示され、Windows上で調整できます。
OSD機能だけだとAlienVisionは5つの視覚補助機能を切り替えるだけでしたが、AlienFXではフィルタ小窓のサイズ、シャープネス補正強度の調整、視覚効果とOSDクロスヘアの併用など任意に様々な設定ができます。
AlienFX内で行ったナイト、クリア、ビノ、クロマ、十字線の設定はモニタ側に記録されるので、USB接続を外しても最後に適用したカスタム設定がそのまま残ります。
Alienware AW3225QFの発色・輝度・視野角
「Alienware AW3225QF」の発色・輝度・視野角など画質についてチェックしていきます。「Alienware AW3225QF」の製品スペックでは『モニター画面コーティング:反射防止(Anti-Reflection)』との記載がありますが、PC向け液晶モニタで一般的なアンチグレア処理ではなく、どちらかというとグレア寄りの表面処理になっています。
あとRTINGS.comのレビュー、Redditポストでいくつか報告がある通り、Alienware AW3225QFのコーティングには傷というか、細かい気泡のような跡が筆者の個体にも画面右上にありました。
ただ、跡はあるにはあるものの(写真は照明の当て具合とかかなり調整して見やすくしています)、画面を正面から見た時にはほとんど視認できず、跡のある部分に強く照明を当てて気付く感じなので、筆者の個体については今のところ交換が必要とまでは思わないレベルです。
薄いフレームのある下側には見受けられず、筆者の個体も含めて上端に報告が多いので、梱包の影響で輸送時に擦れて付いているのではないかと。
「Alienware AW3225QF」の梱包自体は一般的な包装シートに加えて、パネル表面にエアパッキンのクッションシートも貼った状態なので決して不十分というわけではありません。
ディスプレイ本体を固定するスポンジスペーサーが外周だけで保持する構造なので上端に跡が付きやすいのだと思うのですが、かといって中央にも支えになるスペーサーを配置すればいいかというと、中央に跡が付く可能性もあり、難しいところ。
なお2024年3月以降の発送については画面保護フィルムが追加される形で梱包は改良されているようです。
AW3225QF買いました
— NekoLove(本店) (@NekoLoveJP) March 8, 2024
画面のフィルムが新しくなった
旧来はプチプチと不織布の保護材のみで、これが輸送中に擦れてQD-OLEDの画面に傷が付く事例が多発していたのだ、、、
なのでその下にプラスチックのフィルムが追加された pic.twitter.com/a8EypdSBRN
PC向けディスプレイパネルには、LEDバックライトを必要とする液晶パネルと、画素そのものが自発光する有機EL(OLED)パネルの2種類があります。さらに、PCモニタで一般的な液晶パネルはIPS液晶パネルとVA液晶パネルとTN液晶パネルの3種類に大別されます。
各ディスプレイパネルの特性を簡単にまとめると次の表のようになります。
ディスプレイパネルの簡易比較表 | ||||
パネルタイプ | 有機EL | 液晶 | ||
IPS液晶 | VA液晶 | TN液晶 | ||
色域 (高彩度の発色) |
〇〇 | 〇 量子ドットなら〇〇 |
△ | |
コントラスト (黒レベルの低さ) |
〇〇 | △ | 〇 | △ |
視野角 | 〇 | 〇 | 〇 | △ |
応答速度 | コンマms級 | 〇 (遅いものもある) |
△ |
〇 |
大型テレビ | 40~80インチ超まで幅広く採用 |
近年は 採用なし |
||
最大輝度 | △ |
〇〇 高輝度FALDなら1000nits超も |
- |
|
ハロー現象 Backlight Blooming |
発生しない |
FALDでは発生 |
- |
|
焼付の可能性 | あり |
発生しない | ||
価格 (高リフレッシュレート) |
× |
△ (×) |
△ | 〇 |
液晶パネルの種類による性能・特性の違いについてはこちらの記事も参照してみてください。
サブピクセル構造についてチェックしていきます。
まず予備知識として、一般的な液晶パネルは下の写真のように1:2程度で縦長なRGBサブピクセルが1ピクセルを構成しています。WindowsのClearTypeはこのサブピクセル構造に最適化して、フォントが綺麗に見えるようになっています。
有機ELパネルというとLG製パネルが有名、というか2021年以前はLG製パネルしかなかったのですが、「Alienware AW3225QF」にはSamsung製の有機ELパネルが採用されています。
サブピクセル構造は液晶パネルでよく見る横並びのRGB配列ではなく、緑ドットを頂点に左下に赤ドット、右下に青ドットで三角形を描く少々特殊な配列ではあるものの、RGBWでもペンタイルでもなく1:1対応のフルRGBなサブピクセルです。
「Alienware AW3225QF」のサブピクセル構造は特殊なので一定条件で色滲みが生じます。映画視聴やゲーミングであれば問題ないのですが、PCのデスクトップ作業では文字や境界線で色滲みが気になるかもしれません。
滲みの程度は軽微なので、PCデスクトップ作業でも特別に支障があるわけではありませんが、一般的なRGB横並びの配列とは傾向が異なるので一応注意してください。
サブピクセルの三角配列による色滲みはサブピクセルを拡大すると分かりやすいですが、
- 上が白色寄りで下が黒色寄りの境界線が赤色(赤強めのマゼンタ色)に滲む
- 上が黒色寄りで下が白色寄りの境界線が緑色に滲む
- 右が白色寄りで左が黒色寄りの境界線が黄色に滲む
- 右が黒色寄りで左が白色寄りの境界線が青色に滲む
「Alienware AW3225QF」は色再現性とコントラストに優れた有機ELディスプレイパネルなので、上下左右どこから見ても色の破綻はなく視野角も良好です。
Samsung製 量子ドット有機ELパネルは初期から一貫した特長ですが、白色単色のような悪条件で見ても視野角による色遷移がほとんどないところも魅力です。
80度とかほぼ真横くらいの確度から見て、やっと黄色~黄緑色かかるかな?という感じです。写真だと分かり易く写るのですが、肉眼では暗くなったと思っても色変化に気付くのは難しいレベルです
ちなみにLG製有機ELパネルについては最新技術であるMLA(マイクロレンズアレイ)が採用されているものは視野角による色遷移がほぼありません。
ここからはカラーキャリブレータを使用して、色域・輝度・コントラスト・均一性など画質に直結するモニタの性能について詳細な検証結果を見ていきます。なおこれらのモニタ性能(特に輝度の均一性)については同じ製品であっても個体差が大きいのでご注意ください。
検証にはカラーフィルター式(色差式)のCalibrite Display Plus HLとDatacolor Spyder X2 Ultra、そして分光式(スペクトロメーター)のX-Rite i1 Basic Pro 3を使用しています。
「Alienware AW3225QF」のディスプレイ輝度について白色点の輝度をOSD設定別で測定しました。OSD上の輝度設定10%刻みで0%~100%の輝度変化は次のようになっています。
「Alienware AW3225QF」において、一般に見やすい明るさと言われる120cd/m^2は輝度45%前後、室内照明に依りますが個人的に見やすいと感じる明るさの180~200cd/m^2は輝度80%前後です。
全白で240cd/m^2程度となっており、液晶モニタと比べると暗めという評価になりますが、有機ELパネルを採用するPCモニタとしてなら「Alienware AW3225QF」はトップクラスの明るさです。
有機ELパネルを採用するモニタ/テレビは一般に、SDR表示であっても映像ソースの平均的な明るさに応じて画面の輝度レベルが制御(APL:Average Picture level)されます。
また、APLによる輝度制御を無効化する機能に対応する製品もあり、ASUS製の有機ELモニタの場合、”均一輝度(Uniform Brightness)”としてアピールされています。
「Alienware AW3225QF」についてはAPLによる輝度制御は無効化されていますが、実際にはSDR表示の白色輝度は後述の通り、少々奇妙な挙動を示します。
DELL公式サポートに確認したところ、”マルチ ロゴ(ロゴ輝度制限)”と呼ばれる有機ELパネルの焼き付きを防止する保護機能が、ほぼ全てのプリセットモードにおいて既定で有効になっているためです。(クリエイターモードのみ無効)
任意に無効化できるファームウェアアップデートの配布予定があるかについても問い合わせましたが、現時点で回答は難しい、とのことでした。
RGB:255の白色ウィンドウは背景のグレーレベルがRGB:15以下もしくはRGB:240以上であれば、輝度設定100%に対してAverage Picture levelに依らず安定して250cd/m^2以上の輝度を発揮できます。
しかしながら、背景のグレーレベルがRGB:16からRGB:239の範囲内かつ、Average Picture levelが5%以上だと200cd/m^2以下に輝度が制限されました。
クリエイターモード以外の画質モードではこのような輝度制限が機能してしまうため、カラーメーターを使用した測色結果は、テストパターンの表示がフルスクリーンオーバーレイの場合とそうでない場合とで”想定外の”齟齬が生じる可能性があります。
後述の検証結果、特に色精度関連に影響している可能性もあるので注意して下さい。
「Alienware AW3225QF」のディスプレイ輝度の均一性(Uniformity)を検証しました。画面中央の輝度が約120cd/m^2になるOSD設定において、画面を横7×縦5の35分割として各位置の白色点の輝度を測定し、中央輝度を基準にしたパーセンテージで等高線マップにしています。
「Alienware AW3225QF」は35カ所の測定点のうち、差分5%を超えるポイントがないという非常に優秀な均一性を発揮しました。
有機ELモニタでは焼き付き防止や、中央部の高輝度化を目的として”CBC (Convex Brightness Control)”と呼ばれる、ディスプレイ輝度を画面全体で一定にせず、中央凸な輝度分布にする輝度制御機能が有効になっていることがありますが、「Alienware AW3225QF」は上に掲載した輝度分布グラフの通り、CBCは既定で使用されていません。
液晶モニタにおいて輝度の低下が特に大きい四隅&四辺は、上のような領域分割測定では見落とされてしまうので、同様に中央120cd/m^2を基準にして個別に測定したところ次のようになりました。
バックライト式の液晶ディスプレイはどうしても四辺&四隅の輝度低下は大きくなりがちですが、有機ELディスプレイは「Alienware AW3225QF」はそこも5%以内の差分に収まっています。
参考までに輝度と色温度による色差の分布です。左上だけ中央と比べて若干暖色に寄っていますが、「Alienware AW3225QF」は輝度だけでなく、色温度も含めた色差で評価しても白色の均一性は非常に優秀です。
「Alienware AW3225QF」の有機ELパネルはピクセルレベルで輝度を調整できるので、グローバルディミングはもちろん、比較対象がフルアレイ型ローカルディミングでも100分割程度であれば、圧倒的に優れた黒色表現、明暗の分離が可能です。
下の写真では有機ELパネルの「Alienware AW3225QF」と、96分割フルアレイ型ローカルディミングに対応した液晶パネルのSONY INZONE M9を比較しています。
「Alienware AW3225QF」はsRGBだけでなく、DCI-P3 99%とAdobe RGB 95%をカバーするという極めて広い色域を実現しています。
HDR表示の色域のスタンダードであるRec.2020もカバー率が78%となっており、「Alienware AW3225QF」は2024年のPCディスプレイとして最高峰の性能です。
色域のカバー率については、量子ドット技術を採用する液晶/有機ELでもRec.2020の色域をフルにカバーする製品は存在しないので、Rec.2020のカバー率はそのまま高彩度な色の発色性能と考えられます。
また、2024年現在ではDCI-P3(CIE1931)を85%以上カバーすれば広色域モニタの入門レベル、95%以上なら高彩度の色性能が非常に高いモニタと考えてOKです。
分光型測色計で白色点のカラースペクトラムを測定しました。
「Alienware AW3225QF」はRGB 1:1対応のサブピクセルな有機ELパネルに、量子ドット技術(Quantum Dot Technology)が採用されており、赤緑青の分離は良好かつ、それぞれのピークも鋭く尖っています。
量子ドット技術採用パネルは液晶パネルでも非常に高価になる傾向ですが、発色や色再現性では頭1つ飛び抜けた性能です。
ただし、2022年モデルですがSamsung S95Bに採用されているテレビ向けのSamsung製 量子ドット有機ELパネルと比較すると、ピークの急峻さは同程度である一方、中間の分離は「Alienware AW3225QF」の方が弱めです。
参考までに、「ASUS ROG Swift OLED PG27AQDM」など、LG製有機ELパネルを採用する製品は、青色ピークは急峻ですが、新型のWBEと旧型のWBCパネルで程度の差こそあれ、赤色と緑色のピークの立ち上がりは弱く、ピークの分離も弱いので、鮮やかな赤色や緑色の表現は弱点です。
Alienware AW3225QFの色精度・ガンマ・色温度
続いて「Alienware AW3225QF」の色精度やガンマ・色温度に関する検証結果です。前章が高輝度、高コントラスト、高彩度といった画質の綺麗さに影響する特性を調べているのに対して、クリエイターやWebデザイナーといった”色の正確性が求められる用途(SDRコンテンツ)で使用できるかどうか”を評価する章になっています。
有機ELモニタはSDR表示でもAPLによって色(輝度)が変化してしまうため、色精度が求められる用途には不向きという前提はあるものの、一応、メーカーによる出荷前校正の精度を確認するため、一般的にAPLによる輝度制御を受けにくいAPL 10%で検証してみました。(テストパターンの表示ウィンドウサイズが全体の10%、かつ背景は完全な黒色 RGB値0)
標準設定そのままの色の正確性や特性について
まずは「Alienware AW3225QF」で標準設定そのままの色の正確性やガンマ・ホワイトポイントなど特性について検証していきます。モニタのOSD設定はプリセットモードの中で色温度がD65に最も近い”標準”とし、ディスプレイ輝度は120cd/m^2になるように調整しています。
SDR 8bitで0~255のグレーを32分割にして測定し、ガンマ値やRGBバランス、色温度を確認してみました。
下のグラフはプリセットモード”標準”時のガンマカーブです。実測で固定値2.2の安定したガンマになっています。
HDMIビデオ入力で接続時に限定されますが、「Alienware AW3225QF」はコンソールモードという画質モードを選択することで、ネイティブ色域においてガンマの設定も可能になります。標準の2.2に加えて、1.8/2.0/2.4/2.6の5段階で調整できます。
コンソールモードで設定値を2.2にした時のガンマは、標準/ユーザーカラー等のプリセットモードや、後述のsRGBエミュレートとも微妙に異なり、sRGBカーブをベースにして、RGB値 50未満では山なりにガンマが浮く(sRGBよりも暗くなる)ような軌跡を描きます。
その他の設定値については、1.8/2.0/2.4は2.2を0.2ずつオフセットするようなガンマになっていますが、2.6だけは2.6にピッタリ張り付いて、RGB値 50未満ではガンマが沈むという感じに少々異なる軌跡を描きました。
ネイティブ色域に対する色校正も良くできていたので、綺麗な固定値やsRGBカーブではありませんが、ネイティブ色域かつOSD側でガンマを設定して色校正を行いたい場合は、コンソールモードを使えばOKです。
「Alienware AW3225QF」の色温度について、アウトボックス状態で初期設定の画質モードである”標準”は6500Kくらいの色温度に調整されています。
色温度を指定する画質モードは他に”暖色”と”寒色”の2種類がありますが、これらを切り替えても発色に違和感がある場合は、ユーザーカラーなどマニュアル設定でRGBのバランスを好みに合わせて整えてください。
画質モードのユーザーカラーを選択すると利得(Gain)、オフセット、6軸色相、6軸彩度の4つの発色設定を調整できます。
白色の色温度を調整したい場合は利得を調整すればOKです。黄色がかった暖色を中間色にしたい場合は赤と緑の強度を数%下げる調整をしてみてください。
プリセットモード”標準”の話に戻りますが、同じくSDR 8bitで0~255のグレーを32分割にして測定した各点のRGBバランスと色温度です。
OSDの色温度設定はプリセットの中からD65に最も近かった”標準”としていますが、i1Pro3で測定した色温度は6500~6600K程度でした。
ユーザーカラーモードやコンソールモードにおいて色温度(カスタム設定の利得)の設定値を、初期値でもありますが、RGB値3種を全て100にするとプリセットモード”標準”と全く同じ色温度になります。
広色域技術が採用されたディスプレイはメタメリック障害と呼ばれる現象が理由で、スペクトロメーターであってもi1Pro3程度の性能だと正確には白色の色温度やRGBバランスを評価できない(体感と一致しない)ことがあります。
そういう前提はあるものの、今回はRGBバランスの測定結果は若干赤色成分が強いものの、体感的にはD65として違和感のない色味でした。D65として使用しても特に問題ないレベルで良く校正されていると思います。
RGBバランスは完全には均等(0%付近に収束)ではありませんが、色付きに見えることのある100~255のレベルで概ね平行に推移しているので、測定ホワイトポイントを基準にしてブラックからホワイトは色付きやバンディングのない綺麗なグラデーションです。
カラーチェッカーやマクベスチャートと呼ばれる24色のカラーパッチを使って色の正確性を確認していきます。
まずはICC等のカラーマネジメントの影響を受けず単純に特定のRGB値のカラーパッチを表示して、その色度を測定しました。
Windows OSや一般的なWebコンテンツはsRGBの色規格で表示・作成されているので、sRGB色規格内でそのRGB値を表示した時の色度をリファレンスとして、測定値との色差を出しています。
高性能(広色域)なモニタほど彩度が強調されるので、色差が大きくなります。一応測定していますが、この段階での色差(色の正確性)にはあまり意味がありません。
「Alienware AW3225QF」はAdobe RGBとDCI-P3を95%以上、Rec.2020すら80%近くもカバーする非常に色域の広いモニタなので、ICCによるカラーマネジメントを行わない場合、一般的なSDR(sRGB)コンテンツは上のxy色度図の通り彩度が強調されます。
WindowsでプレイするPCゲームはもちろん、PlayStation 5やXbox Series X|Sといったコンソールゲーム機もディスプレイ色域がsRGB(BT.709)のつもりでRGB値をそのまま出力するので、同様に想定される色(リファレンス)よりも彩度は強調されます。
続いてモニタのネイティブ色域を基準にRGB値から算出した色度をリファレンスにした場合の色差が次の通りです。広色域モニタでも良く出荷前校正された製品ならネイティブ色域をリファレンスにすれば色は概ね一致します。
「Alienware AW3225QF」はネイティブ色域かつ固定値2.2のガンマをリファレンスにすれば、ΔE(00)が平均1.0未満で色が一致するので、メーカーによって良く出荷前校正されたモニタと評価していいと思います。
後述のカラーキャリブレーション後の色精度検証にはプリセットモードの標準モードではなく,色温度を調整でききるユーザーカラーモードを使用します。
ユーザーカラーモードで各種調整機能は初期値のまま、ディスプレイ輝度のみ120cd/m^2程度になるように調整した測定結果は次のようになっています。
色温度設定のRGB値3種が全て100のように初期値のままであれば、ユーザーカラーモードの特性は標準モードと全く同じです。
色域エミュレートモードの色の正確性について
sRGBやAdobeRGBなど代表的な色規格通りの色域、場合によってはホワイトポイントやガンマを再現するエミュレートモードにおける色の正確性を検証していきます。「Alienware AW3225QF」は、ほぼ全てのプリセットモードにおいてディスプレイパネルの性能を最大限に発揮し、上のような非常に広い色域で動作しますが、クリエイター(作成者)モードのsRGBもしくはDCI-P3を選択することで、各色規格の色域に制限することが可能です。
クリエイター(作成者)モードについては2024年8月現在、最新ファームウェアのM2B105において輝度に関するバグを1件確認しています。
モニタ電源のON/OFF、スタンバイからの復帰(Windowsの再起動含む)、ビデオ入力の切り替えによって輝度設定が初期値、sRGBなら75%、DCI-P3なら15%に戻ります。輝度設定自体は最後に設定した数値が表示されますが、初期値の明るさで動作してしまいます。輝度設定を1%でも上下に操作することで、設定値の明るさに直ります。
sRGBもしくはDCI-P3の規格通りに動作するモードなので、RGBゲイン、彩度、色相といった発色調整はできませんが、ガンマカーブの変更には対応して、標準の2.2に加えて、1.8/2.0/2.4/2.6の5段階で調整できます。
「Alienware AW3225QF」のsRGBモード(sRGBエミュレート)については、色域だけでなく、色温度もカラーモードによる自動制御になります。ガンマは前述の通り、標準の2.2に加えて、1.8/2.0/2.4/2.6の5段階で調整できます。
sRGBモードにおいてガンマの設定値を”2.2”にすると、RGB値で100前後で若干浮くものの、概ねsRGBカーブに一致する軌跡を描きます。
ちなみにその他のガンマ設定値である1.8/2.0/2.4/2.6については、設定値2.2のsRGBカーブが上下に0.2ずつオフセットするのではなく、固定値をターゲットにしたようなガンマになります。固定値ターゲットではあるものの、標準モード等の綺麗な固定値に比べると若干乱れがあります。
sRGB色規格のホワイトポイントはD65ですが、sRGBモードの色温度はi1Pro3による測定では6500K程度、色度もD65とほぼ一致しています。
メタメリック障害もあるので厳密な評価は難しいのですが、RGBバランスでは少し赤と青の成分が強いですが、筆者としてはD65として実用的には全く問題のない、良く校正された色だと思いました。
色付きに見えることのある100~255のレベルで概ね平行に推移しているので、測定ホワイトポイントを基準にしてブラックからホワイトは色付きやバンディングのない綺麗なグラデーションです。
sRGBモードにするとネイティブではAdobeRGBやDCI-P3を軽くオーバーしていた色域がsRGBピッタリに制限されます。
「Alienware AW3225QF」のsRGBモードはsRGB色規格をリファレンスにすると色差は平均ΔE(00)が1.4程度とやや大きくなります。有色パッチの色差は平均ΔE(00)が1.1程度ですし、計算上、白色の色差が大きいものの、D65として違和感のない色味なので、実用的には許容範囲内です。
sRGBモードの実測色域からリファレンスの色度を出すと平均ΔE(00)は0.88程度になるので、sRGBエミュレートの色精度は良好と評価しても良いと思います。
「Alienware AW3225QF」のDCI-P3モード(DCI-P3エミュレート)については、色域だけでなく、色温度もカラーモードによる自動制御になります。ガンマは前述の通り、標準の2.2に加えて、1.8/2.0/2.4/2.6の5段階で調整できます。
DCI-P3にはDisplay P3など似た名前の派生系がいくつかありますが、「Alienware AW3225QF」のDCI-P3モードはホワイトポイントが6300K程度、Cinema/Theater向けとされる最も標準的な規格をターゲットに調整されています。
ちなみにDCI-P3のホワイトポイントは黒体軌跡で6300K程度と近似して語られますが、正確にはxy色度が[x:0.314, y:0.351]なので少し緑色かかった白色です。
「Alienware AW3225QF」のDCI-P3モードは色温度が6300K程度で固定されていてCinema/Theater向けの色規格をターゲットにしているようなので、ガンマの設定値は”2.6”で検証していきます。
DCI-P3モードでガンマの設定値を”2.6”にすると概ね綺麗に固定値2.6の軌跡を描きます。
ちなみにその他のガンマ設定値である1.8/2.0/2.2/2.4については、設定値2.6のガンマが上下に0.2ずつオフセットするという分かり易い挙動です。固定値ターゲットではあるものの、標準モード等の綺麗な固定値に比べると若干乱れがあります。
DCI-P3モードの色温度はi1Pro3による測定では6200~6300K程度でした。xy色度もCinema/Theater向けDCI-P3の基準値である[x:0.314, y:0.351]に概ね一致しており、DCI-P3のホワイトポイントとして違和感のない色味だと思います。
D65基準でRGB値に換算しているので中央からズレていますが、色付きに見えることのある100~255のレベルで概ね平行に推移しているので、測定ホワイトポイントを基準にしてブラックからホワイトは色付きやバンディングのない綺麗なグラデーションです。
DCI-P3モードにするとネイティブではAdobeRGBやDCI-P3を軽くオーバーしていた色域がDCI-P3ピッタリに制限されます。
「Alienware AW3225QF」のDCI-P3モードはDCI-P3色規格をリファレンスにすると色差は平均ΔE(00)が1.5程度とやや大きくなります。
有色パッチの色差は平均ΔE(00)が1.1程度ですし、計算上、白色の色差が大きいものの、DCI-P3の標準ホワイト[x:0.314, y:0.351]として違和感のない色味なので、実用的には許容範囲内です。
DCI-P3モードの実測色域からリファレンスの色度を出すと上ではズレの大きかった白色も含め、平均ΔE(00)は1.1程度になるので、DCI-P3エミュレートの色精度は及第点には十分達していると思います。
カラーキャリブレーション後の色の正確性について
最後にカラーキャリブレータを使用して色校正を行うことで、「Alienware AW3225QF」は正確な色を出すことができるのか検証していきます。有機ELモニタはSDR表示でもAPLによって色(輝度)が変化してしまうため、標準設定や各種エミュレートモードに関するこれまでの検証では、一般的にAPLによる輝度制御を受けにくいAPL 10%で測定していました。
ただ、市販のカラーキャリブレーションツールとして一般的なCalibriteやDatacolorの専用ソフトウェアによるキャリブレーションは全画面のテストパターン表示で色校正が行われるので、校正後の色精度については全画面のテストパターンで測定しています。
カラーキャリブレーションはX-Rite i1 Basic Pro 3と純正ソフトi1Profilerを使用して行いました。
キャリブレーション設定はホワイトポイントがD65、白色輝度が120cd/m^2、ガンマは固定値2.2としています。キャリブレーションのカラーパッチ数は中(211)です。
「Alienware AW3225QF」のOSD設定についてはカスタムモードで各種補正機能はオフ、ガンマは固定値2.2に一番近かったのでOffとしています。
色温度設定はプリセットの中では”標準”が最もD65に近いですが、i1Profilerの初期設定においてホワイトポイントがD65からズレていて、RGBの強さに差が大きいとアラートが出たので、手動で調整できるユーザー設定モードでR(赤)=98, G(緑)=100, B(青)=100としてキャリブレーションを行いました。
「Alienware AW3225QF」では標準モードにするとRGBの強さに差が大きいとアラートが出たので、手動で調整できるユーザーカラーモードでRゲイン(赤)=98, Gゲイン(緑)=100, Bゲイン(青)=100としてキャリブレーションを行いました。
X-Rite i1 Basic Pro 3によってカラーキャリブレーションで作成したICCファイルを適用し、同じくi1Profilerのディスプレイ品質検証(色の正確性の検証)機能で測定した色精度は次のようになっています。
カラーキャリブレーション後にi1Pro3で測定した「Alienware AW3225QF」の色の正確性はΔE 0.9でした。
一般的にはAPLによる輝度制御で色・輝度が変わる有機ELモニタは色精度が求められる用途には不向きですが、「Alienware AW3225QF」についてはそういった特殊な挙動やサブピクセル構造などが許容できるのであれば、正しい色を表示できるので、クリエイターやWebデザイナーも使用できる製品だと思います。
なおX-Riteが公開している色差に関するブログポストによると、によると『ΔE=1程度で2つの色を横にくっつけて見比べた時に違いが判別できるレベル』とのこと。
補足としてi1Pro3で行ったカラーキャリブレーションの結果についてもう少し詳しく見ていきます。
まずは単純に0~255を32分割したRGB値のテストパターンをそのまま表示してガンマを確認しました。ガンマ2.2になるようにキャリブレーションしたので、校正モニタプロファイルを適用した「Alienware AW3225QF」は固定値2.2のガンマで綺麗に安定しています。色温度もD65(6500K)前後、RGBバランスも安定しており全く問題ありません。
sRGB、AdobeRGB、DCI-P3 D65のICCプロファイルを埋め込んだpng画像をテストパターンにして測定したガンマ値は次のようになっています。
sRGBはsRGBカーブ、AdobeRGBは固定値2.2、DCI-P3 D65は固定値2.6のようにICCプロファイルで指定されるガンマへ綺麗に変換されています。
(ICCなし画像はRGB値がそのまま出力される場合とsRGB扱いで変換になる場合に分かれ、ソフトやモニタICCプロファイルによって挙動が変わります)
カラーキャリブレーションで作成したICCをモニタプロファイルとして適用すれば、sRGB/AdobeRGB/DCI-P3 D65のICCが埋め込まれたpng画像をテストパターンとしてi1Pro3で測定した色度は、各色規格から算出したリファレンスに概ね一致するはずです。
「Alienware AW3225QF」はネイティブ色域に対して良く出荷前校正されているので、市販カラーキャリブレータによる一般的なキャリブレーション(モニタICCプロファイルの作成)だけで、sRGB/AdobeRGB/DCI-P3 D65などの色を正確に表示できます。
Alienware AW3225QFのリフレッシュレートについて
「Alienware AW3225QF」のリフレッシュレートについてチェックしていきます。120Hzや144Hzなどリフレッシュレートについて、その意味自体は特に説明せずとも多くの読者はご存知だと思いますが、一般的な60Hzリフレッシュレートの液晶モニタが1秒間に60回の画面更新を行うのに対して、144Hzリフレッシュレートであれば標準的な60Hzの2.4倍となる1秒間に144回の画面更新を行います。
最近では競技ゲーマー向け製品で240Hzの超高速リフレッシュレートなゲーミングモニタも普及しつつあり、さらには、それを上回る360Hzや540Hzの超々高速なリフレッシュレート対応製品も各社から販売されています。
120Hz+の高リフレッシュレートなゲーミングモニタを使用する3大メリット『滑らかさ』『低遅延』『明瞭さ』についてはこちらの記事で概要を解説しているので、高リフレッシュレートなゲーミングモニタ選びの参考にしてみてください。
「Alienware AW3225QF」ではNVIDIA GeForce RTX 40/30シリーズやAMD Radeon RX 7000/6000シリーズなど最新グラフィックボードのDisplayPort1.4のビデオ出力に接続することによって、モニタリフレッシュレートを240Hzなどに自由に設定できます。
ゲーミングPCとゲーミングモニタの接続にはDisplayPortを使用するのが現在の主流ですが、「Alienware AW3225QF」にはサブ入力としてHDMIも搭載されています。
NVIDIA GeForce RTX 40/30シリーズやAMD Radeon RX 7000/6000シリーズなど最新グラフィックボードのHDMI2.1ビデオ出力と接続した場合、「Alienware AW3225QF」は4K/240Hzの表示に対応します。
HDMI接続の場合、コンソールモードでレガシーデバイスを選択すると、4K/240Hzの解像度・リフレッシュレートが無効化され、古いビデオ出力機器との互換性が上がります。標準モードやコンソールモードで接続して上手く動作しない場合はレガシーデバイスモードを試してみてください。
モニタリフレッシュレートの設定は、NVIDIA製GPUの場合は上のスクリーンショットのようにNVIDIAコントロールパネルから、AMD製GPUの場合はWindowsのディスプレイ設定から行います。
高性能なゲーミングモニタには高性能なGPUが必要
なお、ゲーミングモニタのリフレッシュレート(と解像度/フレームレート)と対になって重要なのが、PCのグラフィック性能を左右するGPU、グラフィックボードです。ハイフレームレートはヌルヌル、サクサクと表現できるような快適なゲーミングを実現するだけでなく、上で説明したように競技系ゲームを有利に運ぶ意味でも重要ですが、ゲーミングモニタがハイリフレッシュレートに対応していても、PCのグラフィック性能が不足していて大元の映像データが60FPS前後しか出ていなければ宝の持ち腐れになってしまいます。
当サイトでは240Hz+の競技ゲーマー向けモニタや4K/120Hz+のラグジュアリーな画質重視モニタを検証するにあたりモニタ性能を最大限に発揮できるよう、2023年最新にして最速のウルトラハイエンドGPUを搭載したグラフィックボード「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN」を使用しています。
PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8は、ベイパーチャンバー構造のベースコアや、厚みのあるファンブレードをバリヤーリングで結合した重厚な冷却ファンを採用する4スロット占有大型GPUクーラーにより、各社AIBモデルの中でもトップクラスの静音性を実現しています。
メーカーのPNYは2022年に株式会社アスクが販売代理店契約を結んだばかりの新参なので国内での知名度は高くありませんが、北米など海外市場では30年以上に渡りコンシューマーならびにビジネス向けで電子機器の製造・販売を行う大手メーカーです。
国内正規品なら代理店を介してPNY公式のグローバル保証と同じ3年間の長期保証が受けられるところも魅力です。
・「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8」をレビュー
「Alienware AW3225QF」のポテンシャルを最大限に引き出すには、元から軽めのPCゲームや画質設定を下げた最新PCゲームであってもグラフィックボードのGPU性能はかなり高い水準で要求されます。
ゲーミングモニタとして「Alienware AW3225QF」を使用するのであれば2023年最新GPUであるNVIDIA GeForce RTX 4080/4090やAMD Radeon RX 7900 XT/XTXがおすすめです。
・GeForce RTX 40シリーズのレビュー記事一覧へ
・Radeon RX 7000シリーズのレビュー記事一覧へ
Alienware AW3225QFの応答速度・表示遅延
次にゲーミングモニタのハードウェア性能として特に重要な、「Alienware AW3225QF」の応答速度や表示遅延についてチェックしていきます。まずは「Alienware AW3225QF」の応答速度について検証していきます。
「Alienware AW3225QF」では関係しませんが、液晶パネルのゲーミングモニタを選ぶ、もしくはモニタの応答速度や残像を評価する上で重要な予備知識である『液晶モニタの応答速度とオーバードライブ機能』についてはこちらの記事で簡単に紹介しているので、よくわからないという人は先に確認してみてください。
応答速度の確認には「UFO Test: Ghosting」を使用します。同テストではUFOが移動する背景カラーを選択できますが、今回の検証ではブラック/グレー/ホワイトの3色を選択しています。
背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
まずは簡単にシャッタースピードを十分に速くして「UFO Test: Ghosting」の様子を写真撮影してみました。
有機ELパネルが採用されている「Alienware AW3225QF」を最大リフレッシュレートの240Hzで動作させ、十分に早いシャッタースピードで撮影しましたが、応答速度の遅さによって複数のフレームが写し込むことはほぼありませんでした。
静止状態の写真と比較しても見た目に差はありません。
液晶パネルなら適当に手動で連写していれば1ms GTGを謳う製品でも2フレームが映った遷移途中を撮影できますが、「Alienware AW3225QF」の有機ELパネルは応答速度が非常に速いので、ランダムな連写では遷移の瞬間をとらえるのが難しいレベルです。
さらに「Alienware AW3225QF」のリフレッシュレートを変えてみたり、他の液晶モニタを比較対象にしたりしながら、「UFO Test: Ghosting」の様子を「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、比較してみます。
まずは「Alienware AW3225QF」のリフレッシュレートを60Hzと120Hzと240Hzに変えてUFO Test: Ghostingの様子を比較してみました。見ての通りリフレッシュレートによらず残像感は全く感じません。
ここからはSONY DSC-RX100M5の960FPS(16倍速)よりもさらに高速な5760FPS(96倍速)のスーパースローモーションカメラを使用して「Alienware AW3225QF」の応答速度を比較検証していきます。
まずは先ほどのおさらいになりますが、5760FPSのスーパースローで確認してみても、「Alienware AW3225QF」は一瞬で画面更新が完了しています。
2022年モデルですが、Samsung製 量子ドット有機ELパネルを採用するテレビ Samsung S95Bでは白色背景など一部条件で有機EL保護機能の影響なのか、前フレームの残像が残ることがありましたが、「Alienware AW3225QF」にはそういった挙動もありません。
下は「Alienware AW3225QF」の240Hzについて、グレー背景における画面更新のフレームを切り出して並べたものですが、5760FPSで撮影した時、各ピクセルは1フレーム以内に画面更新が完了しています。応答速度はコンマms単位で、有機ELモニタの公称応答速度としてよく挙げられる0.5ms~1msは余裕でクリアしています。
ちなみに、旧世代の有機ELパネルを採用するASUS ROG Swift OLED PG42UQやLG OLED CX 48インチも応答速度はほぼ同じで、一瞬で表示が切り替わります。
ここ数年の有機ELパネルは120Hz前後において理想的なスイッチ特性なので差はありませんでしたが、新たに登場した240Hz~360Hzでも理想的なスイッチ特性です。
有機ELパネルに限定すると対応リフレッシュレートに差があれど、応答速度自体はどれもほぼ理想的なスイッチ特性で大差ありませんが、比較対象が液晶パネルなら応答速度には大きな差があります。
有機ELパネルの「Alienware AW3225QF」に、液晶モニタの「ASUS ROG Swift 360Hz PG27AQN」と「ZOWIE XL2566K」を加えて応答速度を比較してみました。
ASUS ROG Swift 360Hz PG27AQNとZOWIE XL2566Kは最大360Hzリフレッシュレートに対応しており、現在販売されている液晶モニタでは最速クラスの応答速度ですが、それでも有機ELの「Alienware AW3225QF」と比較すると残像があるのがハッキリわかります。
高精度な機械式スライダーを使用した撮影で、「Alienware AW3225QF」の240Hzについて実際に体感する明瞭さを再現してみました。
「Alienware AW3225QF」の応答速度はほぼ理想的なスイッチ特性なので、過渡応答やオーバーシュートが生じる液晶と比較すると1.5倍以上の明瞭さを発揮します。
同じリフレッシュレートなら有機ELのほうが明瞭なのはもちろん、液晶の360Hzに対して有機ELの240Hzは同等以上の明瞭さです。(モニタ左端から右端まで1.5秒のスライド速度)
続いてスーパースローモーション動画ではなく、オシロスコープ&光プローブのような光センサーを利用した定量的な測定で応答速度についてチェックしていきます。
ここで確認するのは製品スペックに置いて『〇〇s (GTG)』などと表記される性能そのものです。統計的な扱いや解析には差があるかもしれませんが。
「Alienware AW3225QF」の最大リフレッシュレートで最適OD設定を適用した時の応答速度とオーバーシュートエラーのヒートマップは次のようになっています。
ゲーム機や動画視聴において一般的な60Hzリフレッシュレートにおいて、「Alienware AW3225QF」に最適OD設定を適用した時の応答速度とオーバーシュートエラーのヒートマップは次のようになっています。
ゲーミングPCだけでなくPlayStation 5やXbox Series X|Sといった最新ゲーム機も対応する120Hzの高速リフレッシュレートにおいて、「Alienware AW3225QF」に最適OD設定を適用した時の応答速度とオーバーシュートエラーのヒートマップは次のようになっています。
最後に「Alienware AW3225QF」の表示遅延(内部遅延)について測定を行いました。
モニタにはGPUのビデオ出力が送られてきてから実際にモニタに表示されるまで遅延が存在し、この遅延が大きいと例えば、FPSゲームでゲームパッドのトリガーやマウスのクリックによる操作からワンテンポ遅れて、マズルフラッシュが表示される、といった現象が発生します。
人間は当然目で見てから操作するので、格闘ゲームやFPSゲームなど1,2フレームを争うような競技性の高いゲームにおいてはモニタの表示遅延が可能な限り小さいことが望まれます。
システム表示遅延やディスプレイ表示遅延の測定には、フォトセンサーを使用した特殊な測定機器「PC Gaming Latency Tester」を使用しています。当サイトのレビュー用に特注した機器なので、詳細についてはこちらの記事を参照してください。
「Alienware AW3225QF」やその他の比較モニタのディスプレイ表示遅延の測定結果は次のようになりました。測定方法的に遅延が2ms以下であればディスプレイ内部の表示遅延は誤差の範囲内で十分に小さいと考えてOKです。
「Alienware AW3225QF」は240Hzでは理想的なディスプレイ表示遅延を示すのですが、60Hzでは+5ms程度、120Hzでも僅かながら+1~2ms程度の余分な遅延が生じています。操作にラグを感じるほどではありませんが。
「Alienware AW3225QF」やその他の比較モニタのシステム表示遅延の測定結果は次のようになりました。この測定値は一般的なPCゲームにおける操作から画面表示の変化までの遅延に一致します。
グラフの通りリフレッシュレートを上げると応答速度だけでなく表示遅延も改善するのでゲーマーにとってハイリフレッシュレートなゲーミングモニタを選択するメリットは大きいということが分かると思います。
Alienware AW3225QFの可変リフレッシュレート同期について
続いて「Alienware AW3225QF」が対応する可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible(VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」についてチェックしていきます。モニタの画面更新(リフレッシュ)に関する基本的な予備知識や、「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」と「NVIDIA G-Sync Compatible」の関係についてはこちらの記事を参考にしてください。
・ゲーミングモニタの選び方[3] FreeSyncとG-Sync Compatibleについて
「Alienware AW3225QF」はAMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)など可変リフレッシュレート同期に対応しています。
2024年2月現在、GeForce Driver 551.23でG-Sync Compatible認証も取得済みでした。
従来のNVIDIA製GPUではHDMI経由でG-Sync Compatibleは利用できないケースが多かったのですが、HDMI2.1では伝送技術の規格の一部としてVRR同期が内包されているので、「Alienware AW3225QF」ではHDMI経由でもG-Sync Compatibleを利用できます。
ただしGeForce Driver 551.23ではHDMI接続の場合、G-Sync Compatible認証は未取得と表示されます。
当然、AMD製GPU環境でもDisplayPortとHDMIの両方でVRRを利用できます。
「Alienware AW3225QF」は標準でVRRが有効になっていて、OSD設定上にもVRRを有効/無効を切り替える項目はありません。モニタ側の設定は必要なく、ビデオ出力機器側でVRRを有効にすれば機能します。
可変リフレッシュレート同期機能が正常に動作してリフレッシュレートが可変になると、「Alienware AW3225QF」のOSDメニューから確認できるリフレッシュレートがフレームレートに合わせて変動するようになるので、機能が正しく動作しているかどうかはここを見て確認してください。
Alienware AW3225QFのHDR表示やCSゲーム機対応について
「Alienware AW3225QF」のHDR表示やCSゲーム機の対応(4Kエミュレートなど)についてチェックしていきます。HDR表示やCSゲーム機対応について | |
HDMI ver, ポート数 |
HDMI2.1×2 (48Gbps, DSC1.2a対応) |
HDR表示 | 対応 |
VRR同期 | 対応 |
カラーフォーマット DP1.4 |
4K/240Hz/10bit RGB |
カラーフォーマット HDMI2.1 |
4K/240Hz/10bit RGB |
ピーク輝度(実測) | HDR Peak 1000 : 1002 cd/m^2 (3% APL) その他 : ~450 cd/m^2 (10% APL) |
輝度認証 | VESA DisplayHDR 400 True Black |
ローカルディミング | 対応、ピクセルレベル |
4Kエミュレート | 4Kネイティブ |
PlayStation 5 | 4K/120FPS対応(HDR:YUV422) |
Xbox Series X|S | 4K/120FPS対応 |
VESA DisplayHDR Compliance Testsから、Alienware AW3225QF」のEDIDに収録されているHDRスペックが確認できます。
「Alienware AW3225QF」にはいくつかHDRモードがありますが、HDR Peak 1000に切り替えると、VESA DisplayHDR Compliance Testsで表示されるHDR輝度情報が変わりました。
HDR表示モードやOSD設定について
「Alienware AW3225QF」でHDR映像ソースを正常に表示するには、ディスプレイ設定の小項目として配置されている”Smart HDR”をオフ以外に切り替える必要があります。初期設定でデスクトップが選択されているので特に操作しなくてもPCやゲーム機からHDR映像に対応したディスプレイとして認識されますが、認識されない場合はオフになっていないか確認してください。
Smart HDRをいずれかのHDR表示モードに設定した状態でHDR映像ソースが認識されると、自動的にHDR表示モードに切り替わり、OSD詳細設定メニューの右上に”HDR+”アイコンが表示されます。
「Alienware AW3225QF」はHDR表示をコンテンツに最適化するSmart HDRという機能を搭載しており、デスクトップ、ムービーHDR、ゲームHDR、カスタムカラーHDR、DisplayHDR True Black、HDR Peak 1000の6種類のプリセットから選択できます。
SDR表示のプリセットモードやディスプレイ輝度はビデオ入力別に設定できますが、HDR表示中のHDR表示モードの設定は全てのビデオ入力で共有することになります。
「Alienware AW3225QF」はHDR規格の1つであるDolby Visionにも対応しています。
モニタと映像出力機器(Windows PCやXbox Series X|Sなど)だけでなく、HDRコンテンツ(動画やゲーム)自体もDolby Visionに対応したものである必要があります。Dolby VisionモードでもHDR10など他規格のHDRコンテンツを再生できますが、Dolby Vision対応コンテンツでなければ、「Alienware AW3225QF」のHDRモードはSmartHDRが推奨です。
2月28日にリリースされたM2B103以降の最新ファームウェアではDolby Visionを明示的に無効化・有効化する設定が追加されています。
SmartHDRの項目同様に、Dolby Visionの設定項目もSDR表示中に変更できます。オフにしておけばWindows PC環境でもHDR有効時に自動的にモニタがDolby Visionモードにならず、Smart HDRモードで動作します。
Dolby Visionの設定項目においてブライト、ダーク、ゲームの3種類のプリセットのいずれかを選択し、なおかつWindows PCやXbox Series X|SなどDolby Visionに対応したHDR出力機器でHDR表示を行うと、「Alienware AW3225QF」のHDR表示はDolby Visionに切り替わります。
Dolby VisionモードではSmartHDRの設定項目はグレーアウトし、OSDメニュー右上に”HDR+”ではなく、”Dolby Vision”のロゴが表示されます。
以下、「Alienware AW3225QF」のレビュー記事内では、SDR/HDR表示の区別として『HDRモード』、一般的なHDR10で画面右上にHDR+アイコンが表示されている状態を『Smart HDRモード』、画面右上にDolby Visionアイコンが表示されている状態を『Dolby Visionモード』と区別することにします。
HDRモードではディスプレイ輝度など一部のOSD設定がグレーアウトして調整できなくなります。画質モード(プリセットモード)は切り替えできますが、HDRモード中の表示には影響しません。
PC向けゲーミングモニタのHDR表示は発色・輝度などが完全に自動制御になるか、数種類のプリセットを切り替える程度しか設定がないことが多いのですが、「Alienware AW3225QF」はSmart HDRの中に”カスタムカラーHDR”という設定が用意されており、コントラスト、色相、彩度を任意に調整できます。
コントラストはEOTFを左右にシフトさせることで、画面を明るく/暗く調整できます。有色なら色相で寒色(青色)寄りにシフトさせたり、彩度でSDR表示同様に過飽和気味に高彩度な表示にチューニングすることも可能です。ただしホワイトポイント(色温度)はHDR標準のD65から変更できません。
なお、HDR表示のON/OFF切替やモニタ電源のON/OFFによってカスタムカラーHDRのコントラスト設定がリセットされるバグを確認しています。
設定値は最後に設定したまま維持されますが、実際の表示が初期値”75”のものになります。色相や彩度の設定は正常に反映されます。2024年8月現在の最新ファームウェア M2B105でも同バグを確認しています。
HDMIビデオ入力で接続時に限定されますが、プリセットモードと違ってコンソールモードはHDR表示中にもオン/オフの切り替えが可能です。
「Alienware AW3225QF」にはHDRメタデータのMaxML/MaxCLLによってトーンマップ(EOTF)を変更する機能が内蔵されていますが、コンソールモードでソーストーンマップをオンにすると同機能を完全に無効化できます。
また、ソーストーンマップの設定値がオンの場合、VRRやALLMのようにHDMI2.1規格で追加された新機能 HDMI Source-Based Tone Mapping (SBTM)を使っていいと映像ソース機器に伝える役割もあるかもです。
「Alienware AW3225QF」はPS5など一部機器からHDR出力を行う場合に、コンソールモードを有効にしないと、輝度の低下や彩度のウォッシュアウトといった表示バグが発生します。
具体的にはHDRメタデータのMaxML/CLLが未定義の0値の場合に、MaxML/CLLが2000のEOTFが適用されるというバグです。
2024年8月現在の最新ファームウェア M2B105でも同バグを確認しています。
「Alienware AW3225QF」にPlayStation 5やXbox Series X|Sなど、Windows11 PC以外を接続する場合はコンソールモードを有効にしてください。
もう1点補足として、2024年8月現在の最新ファームウェア M2B105において、各HDRモードのホワイトポイントはほぼ同じですが、HDR有効の状態でSmart HDRを他のモードからGame HDRに切り替えた場合だけ、なぜか色温度が暖色寄りにシフトしました。
『SDR表示中にGame HDRにしてからソース機器のHDRを有効にする』、『HDRのオン/オフを切り替えて再びHDRオンにする』の操作を行うとGame HDRでも他のHDRモードと同じ色温度になったのでファームウェアバグのように思います。
PC接続時の解像度やカラーフォーマットについて
「Alienware AW3225QF」はDisplayPort1.4ビデオ入力でPCと接続した場合、4K/240HzのHDR表示において、RGB 10bitのカラーフォーマットに対応します。また「Alienware AW3225QF」のHDMI2.1ビデオ入力はHDMI2.1規格のフルスペックである最大48Gbpsのデータレートで映像データの伝送が可能であり、視覚損失のない非可逆圧縮機能 Display Stream Compression (DSC) 1.2aにも対応しています。
最新グラフィックボードと接続した場合、4K/240HzのHDR表示においてRGB 10bitのカラーフォーマットに対応します。G-Sync Compatibleなど可変リフレッシュレート同期機能も併用が可能です。
CSゲーム機接続時の4KエミュレートやHDCP対応について
「Alienware AW3225QF」に搭載された2基のHDMIビデオ入力はHDMI2.1に対応しているので、PlayStation 5やXbox Series X|Sを組み合わせた場合、4K/120Hzの表示が可能です。PlayStation 5やXbox Series X|Sのようにゲーム機が対応していればVRR同期機能を利用できます。
Xbox Series X|SはWindows PC同様にDolby Visionをサポートしているので、ビデオモードの詳細設定で機能を有効にするとHDR対応ゲームにおいてDolby Visionも利用できました。
「Alienware AW3225QF」はPS5など一部機器からHDR出力を行う場合に、コンソールモードを有効にしないと、輝度の低下(トーンマップ異常)や彩度のウォッシュアウトといった表示バグが発生します。
具体的にはHDRメタデータのMaxML/CLLが未定義の0値の場合に、MaxML/CLLが2000のEOTFが適用されるというファームウェアバグです。
2024年8月現在の最新ファームウェア M2B105でも同バグを確認しています。
「Alienware AW3225QF」にPlayStation 5やXbox Series X|Sなど、Windows11 PC以外を接続する場合はコンソールモードを有効にしてください。
HDMIに接続時にPlayStation 5やXbox Series X|SでWQHD解像度を選択できないバグについては2024年8月現在の最新ファームウェア M2B105で修正済みです。
現在のファームウェア M2B102ではWQHDサポートに若干の問題があるので一応注意してください。
Alienware AW3225QFのHDR性能やローカルディミングについて
最後に「Alienware AW3225QF」のHDR表示における輝度性能、ローカルディミング対応、色性能をチェックしていきます。HDR表示における輝度性能について
HDR対応モニタ/テレビのHDRモードにおけるディスプレイ輝度は、高輝度領域の広さ(APL: Average Picture Level)や高輝度表示の継続時間に依存するので、Calibrite Display Plus HLを使用してHDR時の最大輝度を条件別で測定してみました。VESA DisplayHDR Compliance Tests以外の測定はdogegenというWindows上でRGB 10bitのHDRカラーをそのまま表示できるテストパターンジェネレーターを使用しています。
最初に「Alienware AW3225QF」で選択できる6種類+αのHDR画質モードについてまとめておきます。
- DisplayHDR True Black【推奨】: VESA認証の動作
- HDR Peak 1000:APL 3%など低APLで最大1000nitsの高輝度を発揮、ベースは暗くなる
- Game、Desktop:輝度も彩度マップもTrueBlackとほぼ同じ
- Movie:人肌がナチュラルになるよう?、赤色の彩度が控えめ、他は同上
- CustomColor【推奨】: コントラスト・彩度・色相調整に対応、初期状態はTrueBlackと同じ
- Dolby Vision: Dolby Vision対応コンテンツ専用(PCゲームでは通常使用しない)
「Alienware AW3225QF」はVESA DisplayHDR Compliance Testsで確認すると、Smart HDRのDisplayHDR True Blackモードにおいて、10%部分で440cd/m^2、画面全体では250cd/m^2程度の輝度を発揮しました。同製品が取得するVESA DisplayHDR 400 True Blackの認定基準はクリアしています。
いずれも数秒しかキープできない短時間のピーク輝度ではなく、少なくとも十数秒では輝度が落ちずにこの高輝度を維持していました。
最大1000cd/m^2を発揮できるHDR Peak 1000モードについても、ウィンドウサイズ 10%や全画面の最大輝度はDisplayHDR True Blackモードとほぼ同じです。
PC向けモニタのHDR輝度評価(輝度を含めたHDR性能認証)として一般的なVESA DisplayHDRは輝度性能評価でAPL 10%とAPL 100%を測定するのに対し、「Alienware AW3225QF」でマーケティングスペックとしてアピールされる最大1000cd/m^2の高輝度はAPL 3%以下において発揮できる数値です。
高輝度領域に対するHDR輝度を確認すると、確かにHDR Peak 1000モードではウィンドウサイズ 3%以下において1000cd/m^2程度の高輝度を発揮できました。ウィンドウサイズ 5%は740cd/m^2程度です。
DisplayHDR True BlackやGame HDRなどHDR Peak 1000モード以外ではウィンドウサイズ 10%未満でも最大輝度はウィンドウサイズ 10%と同じ440~450cd/m^2程度で頭打ちになります。
一方、HDR Peak 1000モードを含めSmart HDRモードの各種プリセットでは、高輝度領域が広くなると、20%部分で370cd/m^2程度、50%部分で300cd/m^2程度のように徐々に輝度が下がります。
2023年モデルですがMLA技術も使用されているLG製有機ELパネルを採用するASUS ROG Swift OLED PG27AQDM、その他の有機ELモニタやFALDに対応する液晶モニタとウィンドウサイズに対するHDR最大輝度を比較すると次のようになります。
ウィンドウサイズ 50%以上では250~300cd/m2を発揮できる「Alienware AW3225QF」の方が高輝度ですが、筆者の経験上、一般的なゲームシーンでの画面の明るさに影響が大きいと思われるウィンドウサイズ 10~30%はLG製有機ELパネルが上回っています。
実は、この輝度分布は同社AW3423DWなどSamsungが第1世代とよぶ量子ドット有機ELパネル採用製品とほぼ同じです。詳しいレビューをググれば似たようなグラフが見つかります。
HDR的な高輝度を体験する上ではせめてウィンドウサイズ 10~20%で600cd/m^2以上の高輝度は欲しいので(ウィンドウサイズ 3%以下の高輝度よりも)、第3世代を謳う最新パネルで輝度性能の向上がなかったのは正直に言うと残念でした。
「Alienware AW3225QF」のウィンドウサイズに対するHDR最大輝度を、その他の有機ELモニタやFALDに対応する液晶モニタと比較すると下のようになります。
超簡単にHDR表示性能の特長が分かるFALD対応液晶と有機ELの比較、低APL編。 pic.twitter.com/2QXuOlR4M2
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) August 26, 2024
超簡単にHDR表示性能の特長が分かるFALD対応液晶と有機ELの比較、高APL編。 pic.twitter.com/jcgQGwurJl
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) August 26, 2024
有機ELパネルはピクセルレベルで輝度を調整できるので、後述のローカルディミングのように完全な黒や明暗の分離(ハローやチラつきがない)といった表現は得意としますが、上の比較グラフの通り、ウィンドウサイズ 50~100%、画面全体が白色/高輝度になるような映像では輝度が大きく下がるという弱点があります。
画面全体が点灯する爆炎のような表示では250cd/m^2程度のディスプレイ輝度しか発揮できず、また画面全体に白色が分布すると、輝度が下がり本来、白色で表示すべき部分がグレーっぽくなってしまいます。
「Alienware AW3225QF」は最新のSamsung製QD-OLEDパネルによって輝度性能がかなり改善しているとはいえ、画面全体が高輝度で発光する爆炎のような表示にはやはり弱いのですが、下のように比較的広く標準的な白色が分布する映像に対しては高輝度な液晶モニタと遜色ない表示が可能でした。
「Alienware AW3225QF」はHDR True Blackプリセットを使用すれば比較的に明るいシーンでもFALD対応液晶ディスプレイ同様に映像ソースが指定するベース輝度を再現できるのですが、最大輝度は450cd/m^2程度でトーンマップもそこでクリップされるため、高輝度部分の階調表現は微妙です。
VESA DisplayHDR 600のSONY INZONE M9と比較するとベース輝度は同等で暗さを感じませんが、ピーク輝度となる太陽の部分は階調表現が狭く(カメラ露出ではなくHDRトーンマップの白飛びで太陽の半径が大きい)、ピーク輝度自体も低いのが分かります。
全体的に暗くて有機ELには有利な条件でも似たようなピーク輝度やハイライトの階調表現です。
Samsung製QD-OLEDの最大輝度1000cd/m^2の注意点
通常は上くらいの検証で大雑把な輝度性能は把握できるのですが、「Alienware AW3225QF」を含めSamsung製QD-OLEDパネルの2024年版を採用するモニタの最大輝度1000cd/m^2を発揮できる動作モードは少々奇妙な挙動なので少し掘り下げて解説していきます。APL制御による輝度制限が大きい有機ELモニタは、黒背景の中央に測定窓という一般的なテストパターンでは実際のHDR映像に対して発揮できる輝度性能を推し量ることが困難です。
そこで筆者の経験からHDR入門の水準にできる6種類のテストシーンを選抜し、実際のHDRゲーム映像の中央に2%サイズの測定窓を重ねる形でリアルなHDR輝度性能を検証しています。
実際のゲーム映像によってAPLを概ね固定し、測定窓に表示した特定RGB値の輝度を測定すると、DisplayHDR True Blackモードでは次のようになります。
テストシーンの中でAPLが小さいLowでは320cd/m^2までリファレンスと同等の輝度を発揮できますが、Middle~HighへAPLが増大するにしたがってEOTFは下方向へオフセットしていきます。APLが最大のFlash以外はリファレンスに対して75~100%の輝度を維持できているので、一応、及第点の輝度性能です。
一方で、HDR Peak 1000モードについては映像データにおいて450cd/m^2を超える高輝度を指定する部分でも白飛びせず輝度階調が表現され、十分に低いAPLなら最大1000cd/m^2を発揮できますが、画面全体の輝度はDisplayHDR True Blackモードなど他のHDRモードと比べてかなり下がります。
同様に実際のゲーム映像によってAPLを概ね固定し、測定窓に表示した特定RGB値の輝度を測定すると、HDR Peak 1000モードでは次のようになります。
今回選抜した中では低APLなシーンですら、100~250cd/m^2のベース輝度部分はリファレンスを下回りますし、標準的な明るさのMiddle以上のAPLではリファレンスの半分も輝度を発揮できません。
この測定方法とグラフなら黒背景の中央に測定窓という一般的なテストパターンでは見落としてしまう、ベース輝度部分が十分な明るさになっているかどうかが一目で分かり、現実的にどれくらいの高輝度を発揮できるのかも同時に確認できます。
筆者は全画面で1000cd/m^2以上を発揮できるFALD液晶モニタも検証したことがあり、経験的に言って輝度性能が高ければ高いほど、リアルさの再現性や迫力が増すことは間違いありません。
同時にHDRの魅力の1つである高輝度表現(ダイナミックレンジの広さ)を正しく体験する水準について言うなら、Samsung S95BやSONY INZONE M9程度の輝度性能が必要と感じています。
具体的には、Flashを除く5種類のテストシーンにおいて最大輝度で600cd/m^2以上、50%のベース輝度で70~80cd/m^2以上をキープできるくらいの輝度性能がないと、高輝度やダイナミックレンジという意味でのHDR体験には不十分だと思います。
HDR Peak 1000モードについて写真でも確認しておきます。
上記測定結果の通り、HDR Peak 1000モードはベース輝度が大幅に下がるので、白色が広く分布するようなシーンで画面が暗くなります。
400cd/m^2程度で階調がクリップされるDisplayHDR True Blackモードと違って、HDR Peak 1000モードでは高輝度の階調は表現されますが、下写真のような条件だとピーク輝度はSONY INZONE M9が600cd/m^2程度出るのに対して300cd/m^2程度です。
高輝度領域の階調(下の写真でいうと太陽の周辺)が表現されるだけで、太陽中央部分の最大輝度については結局、APLやベース輝度による制限が強いので、DisplayHDR True Blackモードと大差ありません。
下写真程度の全体的に暗い有利な条件でも、ハイライトの階調は表現できているものの、火花の中央は400cd/m^2も発揮できていません。
HDR対応モニタの評価用にPS5でサンプルスクショをいくつか用意しているのですが、「Alienware AW3225QF」で最大輝度を確認できたのは下写真の爆炎部分でした。これくらい理想的な状態でもピーク輝度は600~700cd/m^2程度でした。
APL 3%のテストパターンは完全な黒色背景ですが、現実のHDR映像は高輝度でない部分にも当然輝度があるので1000cd/m^2を発揮する高輝度領域はせいぜい1~2%以下になります。高輝度部分以外の97~98%部分をAPL 1~2%に収まる明るさで描くとなるとかなり暗いシーンに限定されます。そうなると高輝度部分も結局はCalibrite Display Plus HLの受光部である直径25mmを下回るようなサイズの輝点しか描けず、下スクショのような小さい点状の高輝度部分を強く発光させる程度にしか使えません。
「Alienware AW3225QF」において”最大輝度 1000cd/m^2”という数字にマーケティングスペックやキャッチコピー以上の意味があるかというと微妙です。
ローカルディミング対応について
「Alienware AW3225QF」は有機ELディスプレイなのでピクセルレベルでローカルディミングに対応しています。現在10万円程度で販売されている4K/144Hz対応ゲーミングモニタの多くは、ローカルディミングに対応していても短冊状の1D型かつ分割数が10~20程度なので、輝点に対してかなりの広範囲でバックライトが点灯してしまいます。
同社の4K/144Hz対応ゲーミングモニタ ASUS TUF Gaming VG28UQL1Aと比較していますが、「Alienware AW3225QF」はピクセルレベルで輝度を調整でき、”ハローがない”という意味では理想的な構造なのでその差は一目瞭然です。
続いて比較するSONY INZONE M9は、直下型バックライトかつフルアレイ型ローカルディミングの4K/144Hz対応ゲーミングモニタとしては比較的に安価な製品です。(とはいえ13~15万円と高価ですが)
1D型との比較では完全に上位互換な表現力を発揮していた96分割FALDと比較してみても、やはりピクセルレベルで制御する有機ELの方が圧倒的にコントラストに優れます。
そもそも輝点を見た時に周辺がモヤッとするのは人の目の構造的な現象でもあるので、数十万円もする高級品になりますが、Mini LEDバックライトで500以上の分割数にもなると、輝点に対する周辺へのバックライト漏れは体感的に有機ELと大差なくなります。
ただし、高速に動く輝点に対してバックライトが上手く追従できるか、またバックライトの追従によるチラつき(バックライトの明滅)といった現象もあります。そういった問題を無視できるところも有機ELの魅力です。
HDR表示における輝度性能(EOTF)や色性能について
この章の最後に、「Alienware AW3225QF」のHDR表示における輝度性能(EOTF)や色性能についてもう少しだけ深堀りしていきます。カラーキャリブレータとしてX-Rite i1 Basic Pro 3やCalibrite Display Plus HLを使い分けています。
一桁cd/m^2以下の低輝度の検出が安定しているので輝度の絶対値については比色計のCalibrite Display Plus HLの測定データを使用しています。彩度マップやRGBバランスなどある程度明るく、色精度が重要な項目はスペクトロメーターのX-Rite i1 Basic Pro 3で測定しています。
ソフトウェアはdogegenというWindows上でRGB 10bitのHDRカラーをそのまま表示できるテストパターンジェネレーターを使用しています。
この章の測定ではパネルタイプに応じて理想的な性能を確認できるように、特別に設定について補足がない場合、液晶パネルの場合は50%部分/背景カラー20%グレー、有機ELパネルの場合は10%部分/背景カラー0%ブラックとしています。
まずは輝度性能について、HDR10など一般的なHDRコンテンツで採用され、PQ EOTFとも呼ばれるHDRガンマ曲線(SMPTE ST 2084)に対して、実際のディスプレイ輝度を測定しました。
「Alienware AW3225QF」をDisplayHDR True Blackモードで使用した場合、VESA DisplayHDR 400 True Blackの認証取得動作となり、最大で440cd/m^2程度の輝度を発揮できます。
リファレンスに対しては450cd/m^2に達する65%ホワイトまで綺麗に追従します。リファレンスに追従したまま最大輝度になってそれ以降はクリップされるというシンプルな挙動です。
ちなみに後述するHDR Peak 1000以外のSmartHDRプリセットはどれもDisplayHDR True Blackモードとほぼ同じEOTFになります。
SmartHDRをHDR Peak 1000モードに切り替えると、ウィンドウサイズ 10%ではDisplayHDR True Blackモードと同じく最大輝度は440~450cd^m2でほぼ同じですが、リファレンスが300cd^m2程度に達するRGBレベル 63%付近でリファレンスカーブから外れて、リファレンスが1000cd/m^2のRGBレベル 75%まで比例直線で輝度が上昇していき、その後クリップされます。
10%未満のウィンドウサイズにおいては最大輝度が最大で1000cd/m^2程度まで上昇します。
ウィンドウサイズ 10%同様に最大輝度手前のどこかでリファレンスカーブから外れて比例直線で輝度が上昇し、その後クリップという動作です。
ウィンドウサイズ別のEOTF測定結果だけ見るとHDR Peak 1000モードは良さげに思えますが、標準的な明るさのシーンでもベース輝度がかなり下がるので、実用性は微妙というには先に解説した通りです。
0%~30%の暗い色についてはDisplayHDR True BlackモードもHDR Peak 1000モードも基本的にリファレンスカーブに綺麗に追従して変化します。
両者の違いは輝度値が0になる(Calibrite Display Plus HLで検出できなくなる)黒色のRGBレベルの違いだけです。またどちらもRGBレベル 20~50%まではリファレンスよりも少し下回りますが目視で体感するほどではありません。
続いてHDR表示における色性能(色域、色精度)をチェックするため彩度マップ、CIE Diagramを作成しました。【HDR規格に良く校正された例】
彩度の強調や不足の参考になるようにSaturation Shifts/Luminanceのグラフも作成しています。なお、Saturation Shiftsはuv色空間(CIE1976)を参考に重み付けをしています。Saturation Luminanceは白色輝度がリファレンスに一致するものとして正規化しています。
Alienware AW3225QFはDisplayHDR True Blackモードにおいて、各ポイントの相対的な位置は均等かつリファレンスともほぼ一致する色度です。追従できる部分はもちろん、その外側についても均等に彩度は推移しており、良く出荷前校正されています。
テレビで言うところの”フィルムメーカーモード”的にリファレンスに準拠して、ネイティブ色域の範囲内でRec.2020を上手に表現しており、バンディングや色調の破綻はありません。
Rec.2020やDCI-P3(D65)を想定して作成されてHDRコンテンツも、彩度・色相については概ねメーカーの想定通りの表示になると思います。
量子ドットのような広色域ディスプレイではメタメリック障害もあるので厳密な評価は難しいのですが、i1Pro3の測定値上、「Alienware AW3225QF」のホワイトポイントはD65でほぼズレなくチューニングされており、輝度別に見ても各RGBレベルで乱れることなく安定しています。
DisplayHDR True Blackモードだけでなく、HDR Peak 1000、GameHDRなどその他のHDR画質モードのいずれもD65相当の色温度でチューニングされており、各自で色温度を変更することはできません。
メタメリック障害と呼ばれますが、最新の広色域モニタの場合、カラーキャリブレーターの測定値から算出した色温度が実際に視覚で体感するものに一致しないことがあります。
そこで正確に測色できる低色域モニタでD65[xy:0.3127, 0.3290]の白色を表示し、それを基準に目視で確認する、という手順でも検証しています。低色域モニタの測色はX-Rite i1 Basic Pro 3を使用しています。
「Alienware AW3225QF」のホワイトポイントはi1Pro3の測定結果の通り、RGBバランスで赤色と青色の成分が僅かに強いので厳密には少しピンク色がかった感じでした。
とはいえ非常に微妙な違いなのでD65ピッタリの白色と横並びで見比べなければ、D65として違和感はありません。複数モニタを並べるような使い方でなければD65と見なして全く問題ない色味です。
続いて、その他のHDRモードについて説明していきます。
HDR輝度性能の最初に説明した通り、SmartHDRの各種HDRモードについては
- DisplayHDR True Black【推奨】: VESA認証の動作
- HDR Peak 1000:APL 3%など低APLで最大1000nitsの高輝度を発揮、ベースは暗くなる
- Game、Desktop:輝度も彩度マップもTrueBlackとほぼ同じ
- Movie:人肌がナチュラルになるよう?、赤色の彩度が控えめ、他は同上
- CustomColor【推奨】: コントラスト・彩度・色相調整に対応、初期状態はTrueBlackと同じ
- Dolby Vision: Dolby Vision対応コンテンツ専用(PCゲームでは通常使用しない)
HDR Peak 1000はEOTFが異なり、CustomColor HDRは手動調整に対応しているからいいとして、DesktopとGame HDRのHDRモードはDisplayHDR True Blackと同じ動作です。
ちなみにWQHD/360HzのAlienware AW2725DFではDesktopとGame HDRは用途に合わせて彩度の調整やシャープネス補正が行われていました。
「Alienware AW3225QF」は、発売直後だけならまだしも発売から半年たった今でも最新ファームウェアのM2B105で同じものをコピペしただけの状態になっているのは手抜きを感じます。
Movie HDRモードだけは赤色の彩度が弱くなるチューニングでした。
人肌が高彩度に色付きしないように調整しているか、ホワイトポイントこそHDR標準のD65ですが、少し緑色・シアン色がかったDCI-P3(デジタルシネマ)を意識したチューニングのように思います。ただ上述の通り、WQHD/360HzのAlienware AW2725DFのMovie HDRモードに比べると中途半端なチューニングです。
「Alienware AW3225QF」のHDR画質モードはほぼ全て自動制御のプリセットモードですが、”カスタムカラーHDR”はコントラスト、色相、彩度の3項目を調整できます。
カスタムカラーHDRモードも設定値が初期値のままであれば、EOTFや彩度マップはDisplayHDR True Blackモードと全く同じです。
RGBCMYの6軸で色相と彩度を調整する機能はHDR表示でもやることはSDR表示と同じです。
例えば赤色で色相の設定値を増減させると、赤系統の色がイエローもしくはマゼンタに寄った色味になり、彩度は設定値を増やせば強調、減らせば低減です。
コントラストはSDR表示では通常触らない設定になっているので少々取っつきにくいですが、HDRにおけるコントラストは一般にEOTFを左右にシフトさせることで、画面を明るく/暗く調整できます。
「Alienware AW3225QF」のカスタムカラーHDRにおけるコントラスト調整は初期値の75から最大値の100にしてもRGBレベルで+2%~3%なのであまり差はありません。下げる方向についてはEOTFの左シフトだけでなく最大輝度も下がってしまいます。
コントラストを上げることでSDR輝度域のRGBレベル(Code Value)に対して割り当てられる実動輝度は引き上がり、パネル輝度性能が十分なSDR輝度域はシンプルに明るくなります。PS5のメニューのような暗い画面を見やすくするときに便利です。
一方で有機ELの場合、APLによる輝度制限が強いので高APLの映像だと逆に見栄えが悪くなることもあります。SDRで輝度設定を上げるのとは少々異なるので注意が必要です。
もう1点、HDR表示のON/OFF切替やモニタ電源のON/OFFによってカスタムカラーHDRのコントラスト設定がリセットされるバグを確認しています。
設定値は最後に設定したまま維持されますが、実際の表示が初期値”75”のものになります。色相や彩度の設定は正常に反映されます。2024年8月現在の最新ファームウェア M2B105でも同バグを確認しています。
Dolby Visionについて
Windows PCやXbox Series X|Sは対応しているものの、HDRコンテンツ側の対応も必要であり、PlayStation 5のように非対応の機器も多いのでDolby Visionについては別枠で解説していきます。「Alienware AW3225QF」のDolby Visionモードについてはブライト、ダーク、ゲームの3種類のプリセットがあります。
Dolby Visionについてはモニタと映像出力機器だけでなくコンテンツ(ゲームや映像)も同HDR規格に対応している必要があります。
現状、Windows11で10bit RGBのHDRテストパターンを使用したHDR検証しかできず、また特に重要なDolby Visionの特長である動的メタデータがどのように働くのか分かっていません。
一応、SmartHDRモード同様に検証結果を載せて解説していますが、参考程度に留めてください。
Alienware AW3225QFのレビューまとめ
最後に「Alienware AW3225QF」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 画面サイズ31.6インチで机に置く4Kゲーミングモニタとしてはちょうどいいサイズ
- 発色、視野角、コントラスト、応答速度などオールラウンドで画質に優れた有機ELパネル
- 独自の反射防止コーティング(ディスプレイ表面はアンチグレアではなくグレア寄り)
- 99% DCI-P3、94% Adobe RGB、さらにRec2020もカバー率が80%
- SDR表示において240cd/m^2以上を安定して発揮できる均一輝度動作 (*1)
- コンマms級の圧倒的な応答速度
- ビデオ入力はDisplayPort1.4とHDMI2.1×2の計3系統
- DP1.4とHDMI2.1は4K/240Hz VRR/HDR 10bit RGBに完全対応
- 可変リフレッシュレート同期機能に対応、PS5でも使用可能
- PS5やXbox Series X/Sの接続時は4K/120FPSの入力、HDCP2.3に対応
- HDR規格のDolby Visionに対応
- HDMI eARCによる音声出力に対応
- PIP/PBPで4K/120HzやHDRを併用可能
- モニタ本体重量6.2kgかつVESAマウント対応でモニターアームを使用可能
- 黒色表示におけるピンクティントが気になるかも(部屋の明るさにも依る)
- 三角配列サブピクセルは色滲みが生じる、Windowsデスクトップ利用には不向きかも
- 一般的なAPL制御と別に有機EL保護機能でSDR表示の白色輝度は変動 (← *1)
- HDR表示においてAPLによる輝度制限が強い(有機EL一般の特性)
- PS5接続時はコンソールモードを有効にしないとHDR表示に不具合 【FW:M2B105】
- 税込み16万円ほどと非常に高価 (セールなら10万円台前半も)
「Alienware AW3225QF」は、最新のSamsung製 量子ドット有機ELパネルが採用されており、4Kの高解像度に加えて、コンマmsの応答速度によって高リフレッシュレートなゲーミングモニタとして定番になりつつあるIPS液晶パネル搭載製品を軽々と上回る明瞭さを実現しています。
有機ELパネルというとこれまでは60~120Hzの製品しかなく(しかも主に大画面テレビ向け)、どちらかというと高画質系ゲームをメインにするゲーマー向けの製品でしたが、「Alienware AW3225QF」はネイティブ240Hzリフレッシュレートに対応するのでE-Sports系タイトルをメインにプレイするゲーマーにもマッチします。
PlayStation 5も対応して認知度が高まっていますが、「Alienware AW3225QF」はVRRと呼ばれる可変リフレッシュレート同期機能にも対応しています。
最大240FPSの幅広いフレームレートをカバーしており、60FPS前後しか維持できない最新の高画質な重いゲームから、100FPS以上を維持できる競技性の高い軽めなゲームまで、テアリングやスタッターのないクリアで滑らかな表示を実現します。
「Alienware AW3225QF」のHDR性能について一言でまとめるなら、”綺麗だけどHDRならではの迫力については物足りない”になると思います。
単に”HDR”とひとくくりでまとめられることが多いですが、HDRには大きく分けて3つ、『高輝度(と黒表現)』、『広色域(Rec2020)』、『滑らかな階調表現(10bit/12bit)』という特長があります。
「Alienware AW3225QF」は量子ドット技術も採用する有機ELパネルによって、色域の広さと階調表現の滑らかさの2つについてはHDR対応ディスプレイの中でもトップクラスであることは間違いありません。
一方で『高輝度(と黒表現)』はHDR体験として十分な性能かというと、高輝度性能が足りないというのが率直な感想です。ピクセルレベルで輝度を調整でき、完全な黒色を表現できる有機ELパネルなので相対的なコントラスト表現は綺麗ですが、やはり絶対値としての高輝度が足りないのでHDRならではの迫力ある映像は体験できないと思います。同じくSamsung製 量子ドット有機ELパネル採用するSONY A95LやSHARP QD-OLED GS1などテレビ製品と比較してもPC向けパネルの輝度性能は劣るようなのでこの点は注意が必要です。
HDR対応モニタ目線で検証すると高輝度性能は切り離せないので少々辛口な評価になりましたが、普通の液晶モニタから「Alienware AW3225QF」に買い替えた場合、ゲーム映像が劇的に綺麗になるというのも事実です。それについてはこちらの記事で紹介しているので、参照してみてください。
以上、「Alienware AW3225QF」のレビューでした。
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QD-OLEDパネルを採用、4K/240Hzの32インチ湾曲ゲーミングモニタ「Alienware AW3225QF」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) February 23, 2024
2024年最強の4Kゲーミングモニタなのか、応答速度・表示遅延やHDR表示性能を徹底検証https://t.co/Ekdb3Oz0QM
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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