AMD Ryzen 7 5800X


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単一8コアCCXのZen 3アーキテクチャを採用するAMD Ryzen 5000シリーズCPUから、8コア16スレッドのアッパーミドルモデル「AMD Ryzen 7 5800X(型番:100-100000063WOF)」をレビューします。


製品公式ページ:https://www.amd.com/ja/products/cpu/amd-ryzen-7-5800x





AMD Ryzen 7 5800X レビュー目次


1.AMD Ryzen 7 5800Xの外観・付属品・概要
2.AMD Ryzen 7 5800Xの検証機材・動作設定


3.AMD Ryzen 7 5800Xの動作クロック・消費電力・温度

4.AMD Ryzen 7 5800Xの基礎ベンチマーク

5.AMD Ryzen 7 5800Xのクリエイティブ性能
  ・3Dレンダリング性能
  ・動画編集・エンコード性能
  ・RAW現像・写真リタッチ性能
  ・PCゲーム/スマホアプリのビルド性能
  ・AIアップスケール・自動分類性能

6.AMD Ryzen 7 5800Xのゲーミング性能
  ・4K解像度/60FPSターゲット
  ・フルHD解像度/ハイフレームレート

7.CPUエンコーダとリアルタイム配信について

8.AMD Ryzen 7 5800Xのレビューまとめ
  ・温度・消費電力について
  ・クリエイティブ性能について
  ・ゲーム性能について
  ・総評



【注意】
「AMD Ryzen 7 5800X」など2020年11月に発売されたRyzen 5000シリーズCPUの初期モデルについて、Ryzen 7000シリーズの発売前に、その性能を振り返る意味でレビュー記事を作成しています。

そのため、この記事を執筆している2022年8月現在に発売済みのIntel第12世代CPUを比較に加えず、Ryzen 3000シリーズやIntel第10/11世代CPUと性能を比較し、記事のまとめは”Intel第12世代CPUの発売以前”という体で書いています。


AMD Ryzen 5000シリーズCPUとIntel第12世代CPUのどちらを購入しようか迷っていて、性能比較を見たいという人は、Intel第12世代CPUのレビュー記事のほうで比較やまとめを執筆しているのでこちらを参照してください。




AMD Ryzen 7 5800Xの外観・付属品・概要

「AMD Ryzen 7 5800X」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。またこの章では「AMD Ryzen 7 5800X」の仕様等について簡単に触れておきたい概要もあれば紹介します。
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「AMD Ryzen 7 5800X」を含めてRyzen 5000シリーズは初代から一貫してAM4ソケットに対応するCPUなので、CPUの形状には変化はありません。裏面のCPUソケット側はLGAタイプのCPUソケットを採用するIntel製CPUと違って剣山状の金属端子が生えています。
DSC06324_DxO


AMD公式に発表されている基本スペックを確認すると、
AMD Ryzen 5000シリーズのアッパーミドルモデル「AMD Ryzen 7 5800X」は前世代の3800Xと同じく、8コア16スレッドのCPUです。
Ryzen 7シリーズ上位モデルに当たる「Ryzen 7 5800X」はベースクロック3.8GHz/単コア最大ブーストクロック4.7GHzでTDPは105Wです。大容量な36MBのL2+L3キャッシュを備えています。

「AMD Ryzen 7 5800X」は同価格帯の競合製品Intel Core i7 10700K(409ドル)と比較して、シングルスレッド性能で9%、マルチスレッド性能で11%高い性能を発揮し、フルHDのハイフレームレートなPCゲーミングおいて同等の性能を発揮するとのこと。
AMD Ryzen 7 5800X_perfomance_vs-10700K


AMD Ryzen 5000シリーズに採用されるZen 3アーキテクチャの特長として、『4コア×2から8コア×1になったCCX』、『1コアが直接アクセスできるL3キャッシュ容量が2倍に』、『前世代と比較して19%も向上したIPC(シングルスレッド性能)』の3つが特に挙げられています。
AMD Ryzen 5000_Zen 3_3-top-Features
初代から前世代Ryzen 3000シリーズまではCPUコア本体であるCCD(CPU Complex Die)はCCX(CPU Complex)と呼ばれる4コアCPUを2基並べる形で構成されており、CCX間はInfinity Fabricで接続されているものの、このCCX間のレイテンシがPCゲーミングなど一部のタスクで性能上のボトルネックになっていました。
Ryzen 5000シリーズに採用されるZen 3アーキテクチャではCCXが単一の8コアCPU「Unified 8-Core Complex (CCX)」になったことで、従来存在したCCX間の遅延が解消されています。
2つ目の特長も直接これに絡んでいて、ZEN2アーキテクチャでは8個(4×2個)のCPUコア1つ1つが直接にアクセスできるL3キャッシュは16MBでしたが、Ryzen 5000シリーズのZen 3アーキテクチャではCPUコア1つ1つが直接にアクセスできるL3キャッシュが32MBに倍増しているのが分かります。
AMD Ryzen 5000_Zen 3_8-Core-CCX
この8コア単一CCX化による遅延の低減、ダイレクトアクセス可能なL3キャッシュの倍増に、その他多くの改良も積み重ねることによって、Zen 3アーキテクチャのIPCは前世代と比較して19%も高速化を果たしています。
AMD Ryzen 5000_Zen 3_IPC-19per-higher_1
AMD Ryzen 5000_Zen 3_IPC-19per-higher
Cinebench R20のシングルスレッドスコアでは、現在最速のCore i9 10900Kを上回るだけでなく、スコア600台の壁も打ち破り、Ryzen 9 5900Xは631をマークしています。
AMD Ryzen 7 5800X_CinebenchR20
電力効率は第1世代Ryzenの8コア16スレッドモデルRyzen 7 1800Xと比較して、Ryzen 9 3900XTで2倍、Zen 3アーキテクチャを採用するRyzen 5000シリーズのRyzen 9では2.4倍にまで向上しているとのこと。ちなみにCore i9 10900Kと比較して2.8倍も省電力だそうな。
AMD Ryzen 5000_Zen 3_Power-Efficiency


AMD Ryzen 5000シリーズ対応マザーボードについてですが、X570やB550など500シリーズチップセットを搭載したマザーボードが初期対応ラインナップでしたが、2022年8月現在はB450など400シリーズチップセットを搭載したAM4マザーボードも対応しています。
具体的には、AGESA1.0.8.0よりも新しいコードを含むBIOSではPOST/BOOTが可能となっており、Windows OSにおける安定動作には2021年11月5日に公開のAGESA1.1.0.0より新しいAGESAコードを含むBIOSへアップデートが要求されています。
AMD Ryzen 5000_MB-Compatiblity

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Ryzen CPUは、『Infinity FabricというCPU内外のコンポーネントを相互接続するインターコネクトの動作周波数がメモリ周波数に同期する』という構造上、メモリ周波数がエンコードや3Dゲームを含めた総合的なパフォーマンスに大きく影響することが知られています。
Ryzen CPUでハイパフォーマンスな環境を構築する上ではメモリ周波数3200MHzでの安定動作が1つの指標になっています。

第1世代Ryzenではメモリ相性問題が話題に上ることも多く、発売初期には定格の2666MHzも難しいケースがしばしば見受けられましたが、第2世代Ryzen以降はメモリ互換性も大きく向上し、Ryzen 3000以降になるとXMP3200MHzに対応していればメモリ周波数3200MHzの安定動作も難しくないくらいに互換性が改善されていました。

Ryzen 3000シリーズではメモリ周波数3600MHz、メモリタイミングCL16が性能とコストのスイートスポットになるとAMD公式から発表されており、今回レビューする「AMD Ryzen 7 5800X」を含めRyzen 5000シリーズでも依然としてコスパのスイートスポットです。
一方でRyzen 5000シリーズのIFはOC耐性が向上しており、特性の良い個体であればメモリ周波数4000MHzにおいて、メモリ周波数とIF周波数の1:1同期が可能になっています。
AMD Ryzen 5000_memory_overclocking

Ryzen CPUでオススメなDDR4メモリやメモリの基礎知識等についてはこちらの記事で詳しく解説しているので気になる人は参照してみてください。



オーバークロック関連では、Ryzen 5000シリーズCPUは電力制限の解除によるオーバークロック機能Precision Boost Overdriveを強化し、V-Fカーブによる低電圧化でマルチスレッド性能だけでなくシングルスレッド性能も向上する「AMD Precision Boost Overdrive 2」に対応しています。
基本機能は従来のPBOと共通ですが、AMD Precision Boost Overdrive 2で新たに盛り込まれた大きな特長は『シングルスレッド性能の向上も可能であること』、『V-Fカーブの調整による低電圧化に対応したこと』の2つです。(正確には低電圧化によってシングル性能も向上する)
AMD Precision Boost Overdrive 2_feature (2)
AMD Precision Boost Overdrive 2はCurve Optimizerと呼ばれるV-Fカーブの調整機能に対応しており、一般的なオフセット電圧設定による低電圧化と異なり、CPUコアの電圧特性に応じた柔軟な低電圧化が可能です。
Curve Optimizerは各コアに対して個別に低電圧化設定が行うことが可能です。特性の悪いコアに足を引っ張られることなく、電圧特性に優れたファースト・セカンドコアに大きい低電圧化を施すことが可能なので、シングルスレッド性能が向上します。
AMD Precision Boost Overdrive 2_v-f-curve (2)



AMD Ryzen 7 5800Xの検証機材・動作設定

以下、「AMD Ryzen 7 5800X」の各種検証を行うベンチ機、および比較対象となる各CPUのベンチ機の詳細となります。
AMD AM4(X570)環境 テストベンチ機の構成
CPU 【Ryzen 5000シリーズCPU】
AMD Ryzen 9 5950X (レビュー
AMD Ryzen 9 5900X (レビュー
AMD Ryzen 7 5800X3D (レビュー
AMD Ryzen 7 5800X (レビュー
AMD Ryzen 5 5600X (レビュー
マザーボード ASUS ROG Crosshair VIII Dark Hero
レビュー
CPUクーラー Corsair H150i PRO RGB (レビュー
Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー
CPUクーラー
(温度制限検証時)
AMD Wraith Prism (レビュー
メインメモリ DDR4
G.Skill Trident Z Neo
F4-3600C16Q-64GTZN
DDR4 16GB×2=32GB (レビュー
3600MHz, CL16-16-16-36
ビデオカード(共通) ZOTAC RTX 3090 AMP Extreme Holo
レビュー
システムストレージ(共通) Samsung SSD 980 PRO 500GB
レビュー
OS(共通) Windows 11 Home 64bit
電源ユニット(共通) Corsair HX1200i (レビュー
ベンチ板 STREACOM BC1 (レビュー

AMD X570_Test-System

比較に使用しているその他のテストシステムについてはこちらを参照してください。



AMD AM4(X570)環境では検証機材マザーボードとして「ASUS ROG Crosshair VIII Dark Hero」を使用しています。


ASUS ROG Crosshair VIII Dark HeroでCPU動作設定を標準設定のAutoとした場合、各CPUは仕様通りの定格動作で問題なく動作するので、測定に当たってソフトウェア的には特に個別の設定は行っていません。
ただしAMD Ryzen CPUではCPUクーラーの冷却性能が十分であれば電力制限を解除して自動的に動作クロックを引き上げる機能「XFR (Extended Frequency Range)」が効くため、電力制限の閾値となるPPTが仕様値のTDPよりも高く設定されています。例えばRyzen 9 3900XではTDP105Wを上回って仕様上の上限値となるPPT 142W以下で動作します。
AMD-Ryzen-9-3900X_TDP-PPT

Ryzen CPUの仕様値TDPと標準PPT

仕様値TDP 標準PPT
Ryzen
5000
Ryzen 9 5950X 105W 142W
Ryzen 9 5900X 105W 142W
Ryzen 7 5800X(3D) 105W 142W
Ryzen 5 5600X 65W 76W
Ryzen
3000
Ryzen 9 3950X 105W 142W
Ryzen 9 3900X(T) 105W 142W
Ryzen 7 3800X(T) 105W 142W
Ryzen 7 3700X
65W 88W
Ryzen 5 3600X(T) 95W 128W
Ryzen 5 3600, 3500X
65W 88W
Ryzen 3 3300X 65W 88W

AMD製CPUにおいてCPU Package Power(CPU消費電力)がTDPを上回るPPTの範囲内で制限されるという動作が、Intel製CPUのPL1/PL2とどのように異なり、またCPU比較において影響を与えるかについてはこちらの記事で解説しているので参考にしてください。


ディスクリートGPU、グラフィックボードがゲーミング性能において重要なのは言うまでもありませんが、近年ではクリエイティブタスクでもGPU支援による性能向上が主流になっているので、CPU性能比較の統一検証機材として、2022年最新のウルトラハイエンドGPUを搭載したグラフィックボード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 3090 AMP Extreme Holo」を使用しています。
CPU Test System
ZOTAC GAMING GeForce RTX 3090 AMP Extreme Holoは、NVIDIA GeForce RTX 30のAIBパートナーの中でも屈指のOCチューニング力を誇るZOTACによって良質なGPUコアが選別され、リファレンスよりも大幅に高いブーストクロック、さらにTGPを400W超に引き上げるという、RTX 3090グラフィックボードで最速を狙えるファクトリーOCが施されています。
加えて、ZOTACを高品質メーカーとして一躍ブランド力を押し上げたAMP Extremeシリーズの代名詞とも言える3スロットを占有する超弩級な大型GPUクーラーが採用されています。
「ZOTAC GAMING GeForce RTX 3090 AMP Extreme Holo」をレビュー
DSC05462_DxO

ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 980 PRO 500GB」を使用しています。
Samsung SSD 980 PROは、PCIE4.0対応によって連続アクセススピードを最大で2倍に飛躍させただけでなく、ランダム性能の向上によってSSD実用性能においても前世代970 PROから大幅な向上を果たし、PCIE4.0アーリーアダプターなPhison PS5016-E16採用リファレンスSSDよりも高速なので、これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
「Samsung SSD 980 PRO 1TB」をレビュー。堂々の最速更新
Samsung SSD 980 PRO 1TB

システムメモリの検証機材のうちDDR4メモリに対応するシステムでは、高級感のあるヒートシンクや8分割ARGB LEDを搭載してデザイン面でも優れ、16GB×4枚組み64GBの大容量で3600MHz/CL16という高性能PCで定番スペックのメモリOCに対応した「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C16Q-64GTZN」を使用しています。
G.Skill Trident Z Neoシリーズは当初Ryzen向けにリリースされた製品ですが、2枚組み16GB容量から最大256GBまで、メモリOCについても3200MHz/CL14や3600MHz/CL16といった定番スペックがラインナップされていて、最新のAMD環境だけでなく、最新のIntel環境でも高いパフォーマンスを発揮できるので、選んで間違いのないオススメなOCメモリです。
「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C16Q-64GTZN」をレビュー
G.Skill Trident Z Neo F4-3600C16Q-64GTZN

360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。
「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
Noctua NF-A12x25 PWM x3


CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。


グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。Thermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスで適量が塗布されていれば、CPUクーラー固定時の圧着でヒートスプレッダ全体へ自然に伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
Thermal Grizzly Kryonaut_app

サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。




AMD Ryzen 7 5800Xの動作クロック・消費電力・温度

「AMD Ryzen 7 5800X」に関する検証のはじめに、「AMD Ryzen 7 5800X」の動作クロック、消費電力、温度など同CPUの基本的な動作についてチェックしていきます。
「AMD Ryzen 7 5800X」は8コア16スレッドのCPUで、AMD公式の仕様ではベースクロック3.8GHz、単コア最大ブーストクロック4.7GHzとなっています。
AMD Ryzen 7 5800X_CPU-Z
参考までに、「AMD Ryzen 7 5800X」のコアtoコア遅延は次のようになっています。
「AMD Ryzen 7 5800X」は上位モデルRyzen 9とは異なり1つのCCDだけで構成されているので、コアtoコア遅延は全て20ns以下に収まります。
Ryzen 5000シリーズCPUが採用するZen 3アーキテクチャ、CCXが単一8コアCPUのUnified 8-Core Complexという最大の特長の通りです。
AMD Ryzen 7 5800X_latency-heatmap
ちなみに前世代Ryzen 3000シリーズの8コアモデル、Ryzen 7 3800XTはCCXがIF接続の4コア×2構成なので、CCD 1つだけの構成であっても4コアを跨ぐアクセスは80ns以下になっています。
あとIFを跨がないアクセスの遅延について、Ryzen 7 3800XTは30ns前後ですが、「AMD Ryzen 7 5800X」は20ns以下に高速化しています。
AMD Ryzen 7 3800X_latency-heatmap


HWiNFOから「AMD Ryzen 7 5800X」のコアクロックの挙動を確認したところ、負荷の軽い場面では仕様値の最大4.70GHzを上回る4.85GHz程度で動作するコアがありました。
AMD Ryzen 7 5800X_Clock_Single
また全コア最大動作倍率は特にゲーム性能で重要になりますが、今回レビューしている「AMD Ryzen 7 5800X」を含めAMD Ryzen 5000シリーズCPUについてはIntel製CPUと異なり、電力制限内で動作可能な全コア最大動作倍率は公表されていません。
実動で確認してみたところ、「AMD Ryzen 7 5800X」はゲームのような負荷の軽いシーンであれば全コア4.7GHz前後で動作可能でした。
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「AMD Ryzen 7 5800X」をX570マザーボード ASUS ROG Crosshair VIII Dark Heroと組み合わせてCPU動作をBIOS標準設定とし、Cinebenchやx264動画エンコードを実行したところ、いずれのケースにおいても全8コアへ同時に大きな負荷がかかった時の動作クロックは平均4.5~4.6GHz程度でした。
EDC/TDCがボトルネックになることもあるので常に上限で張り付いているわけではありませんが、CPU Package Powerは概ね142W前後で推移しています。
AMD Ryzen 7 5800X_Clock_Multi
「AMD Ryzen 7 5800X」のAMD公称仕様値としてはTDP105WのCPUですが、実際の内部設定としてはPPT142Wが許容されています。
「AMD Ryzen 7 5800X」はCPUクーラーによるCPUの冷却が十分であれば(CPU温度が閾値95度以下であれば)、PPT142Wの制限下で動作しXFRによって仕様値ベースクロックよりも高い動作クロックへ引き上げられます。
AMD Ryzen 7 5800X_Ryzen Master


続いてCPU消費電力やCPU温度の検証結果をチェックしていきます。
当サイトのCPUレビューでは主として”CPU温度への影響要因”という意味においてCPU消費電力を評価しているので、動画のエンコードによって長期間電力制限が効いている状態の平均的な消費電力をCPU消費電力として比較します。

個人的な意見としては短期間電力制限は短期間かつCPU温度によっても制御されるのでCPU温度への影響要因として比重は小さく、また瞬間ピーク電力はせいぜいがTDP+100W程度なので、マザーボードVRM電源の破損を心配するほどではなく、その程度の電力超過は電源ユニットで十分吸収できるので、評価対象としてあまり意味がないと思っています。
またCPU製品仕様のTDPについては、定義がIntel/AMDで厳密には異なり、各社の具体的な測定・算出方法も不明なので、CPU動作クロックを含めて総合的に判断する必要があるものの、基本的には長期間電力制限時の消費電力がTDP仕様値とほぼ一致、もしくはTDP仕様値を下回れば正常であると評価します。
当レビュー記事では簡単のため割愛しますが、CPUの消費電力に関する評価基準の補足として下記の記事も参考にしてください。


CPUの消費電力測定には、当サイトの検証に使用するためワンオフで特注した測定ツール「CPU Power Tester」を使用しています。
CPU Power TesterはEPS電源端子、ATX24PIN電源、PCIEスロット経由の各消費電力を直接測定できるツールです。5分間程度の負荷に対して、1ms間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。


消費電力の測定にあたってCPU負荷には、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、HandBrakeによるx264動画エンコードを使用しています。
メニーコアになるほど単独のエンコードではCPUが遊ぶので、CPU使用率が100%前後に張り付くように、動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列、16コア以上は3並列のように適宜調整しています。
Power-Consumption-Test
注:CPUのストレステストについてはOCCTやPrimeなど専用負荷ソフトを使用しているレビューもありますが、管理人の私見としてはCPU負荷が非現実的なので、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースを想定した場合、ほぼ最大のCPU負荷となるx264による動画エンコードとストレステストに採用しています。


定格仕様や検証用設定で指定する電力制限を適用した状態で動画エンコードによるフル負荷をかけると、「AMD Ryzen 7 5800X」など各CPUについてCPU Package Powerは次のようになりました。 全CPU比較データ
CPU Package PowerはIntelのPL1/PL2、AMDのPPTといったパラメーターによる電力制限の制御ソースとなる数値です。メーカー純正ソフトウェアのIntel Extreme Tuning Utility (XTU)やAMD Ryzen Master、サードパーティー製ソフトHWiNFOなどでソフトウェアモニタリングが可能です。
AMD Ryzen 7 5800X_power_3_cpp

続いてCPU Power Testerを使用して実際の消費電力をチェックしていきますが、注意点として、マザーボード独自のコア電圧調整によってCPU消費電力は変化します。Intel/AMDともに現状ではCPU動作のリファレンスになるようなマザーボードがないので、あくまで今回のレビューに使用している検証機材マザーボードを組み合わせた場合の数値となります。
また組み合わせるマザーボードによってはCPU Package Powerにマイナスオフセットをかけて事実上の電力制限解除が行われる場合があります。管理人の判断で定格っぽい動作のものを選んでいますが、こういった事情も念頭に置いて検証結果をご確認ください。

定格仕様や検証用設定で指定する電力制限を適用した状態で動画エンコードによるフル負荷をかけると、「AMD Ryzen 7 5800X」など各CPUについてEPS 8PIN電源の消費電力は次のようになりました。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_power_1_eps

定格仕様や検証用設定で指定する電力制限を適用した状態で動画エンコードによるフル負荷をかけると、「AMD Ryzen 7 5800X」など各CPUについてEPS 8PIN電源&ATX 24PIN電源の消費電力は次のようになりました。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_power_2_eps+arx

Cinebench R23とEPS消費電力の関係、ワットパフォーマンスを確認してみると、「AMD Ryzen 7 5800X」の電力効率は上位モデルのRyzen 9 5950XやRyzen 9 5900Xにこそ及ばないものの、Intel製CPUで最も電圧特性の良い最上位モデルCore i9 11900K/10900Kを上回っています。
AMD Ryzen 7 5800X_Performance_per-Wtt

また下のグラフは電力制限を調整した時のCPU Package Powerに対するマルチスレッド性能の比率です。
Cinebench R23 マルチスレッドスコアから各CPUの定格設定を基準に、電力制限解除で定格の全コア最大動作倍率に張り付いた状態を上限として性能比率を算出しています。

加えて3つの縦線は、Tom Clancy's Rainbow Six Extraction (フルHD/360FPS)、Cyberpunk 2077 (4K/60FPS)、Marvel’s Spider-Man Remastered (4K DLSS&RayTracing)のPCゲームをプレイした時のCPU Package Powerの平均値です。
ゲームシーンで理想的な性能を発揮できるように、電力制限を解除してコアクロックが全コア最大動作倍率に張り付くために必要なCPU Package Powerを見ています。

「AMD Ryzen 7 5800X」はProcessor Base Power/TDPの105Wに電力制限を適用すると消費電力は30~40W下がりますが、実質的にPPT:142Wの定格運用と比較してマルチスレッド性能の低下は5%程度に収まります。
またPCゲームプレイ中に「AMD Ryzen 7 5800X」のコアクロックが全コア最大動作倍率に張り付くのに必要な電力制限の下限は80~90W程度です。実際の負荷はゲームや設定に依って変わりますが、「AMD Ryzen 7 5800X」は定格設定のPPT:142Wであれば理想的なゲーミング性能を発揮できます。
「AMD Ryzen 7 5800X」は定格設定だとCCD 1つだけで140Wの発熱が生じるので、実は上位モデルRyzen 9よりもCPU温度的には高温になり、冷却が難しかったりするのですが、PPT:100W程度に調整すれば、ゲーム性能を損なうことなく省電力化が可能です。
AMD Ryzen 7 5800X_Performance_per-and-game


この章の最後に、「AMD Ryzen 7 5800X」を空冷CPUクーラーやAIO水冷CPUクーラーで運用する時のCPU温度についてです。

「AMD Ryzen 7 5800X」に動画エンコード等でフル負荷がかかった時の消費電力は上位モデルRyzen 9 5950X/5900Xと同じ140W程度ですが、Ryzen 9が2つのCPUダイで分散されるのに対し、「AMD Ryzen 7 5800X」は1つのCPUダイだけで140Wの発熱が生じます。
そういった事情もあって定格のまま運用すると「AMD Ryzen 7 5800X」は上位モデルRyzen 9よりもCPU温度が高く、冷やしにくい傾向で、十分に冷やそうとするとマルチファンの大型IOS水冷クーラーが推奨されます。

PPT/EDC/TDCのRyzen CPUの電力制限パラメーターはPBO(Precision Boost Override)内で管理されています。PBOは一般には電力制限を引き上げたりクロックアップしたりする一種のOC機能ですが、PPT/EDC/TDCを調整することで省電力化にも活用できます。
下はASUS製マザーボードの設定例ですが、ASRock/GIGABYTE/MSIなど主要メーカーのAM4マザーボードなら同様の設定項目が用意されており、同様に設定が可能です。またWindows上アプリケーションのRyzen MasterでもPBOによるPPT/EDC/TDCの調整は可能です。
Ryzen 5000_BIOS_PBO-PPT

「AMD Ryzen 7 5800X」は上の電力効率で見たようにゲーム性能が低下する可能性のある閾値はCPU Package Powerで90W前後となっており、PPT:100W程度に電力制限を課してもマルチスレッド性能の低下は5%程度に収まります。
定格のままだとマルチファンの大型IOS水冷クーラーが推奨されますが、PPT:100W前後に電力制限を調整してやれば、120サイズの空冷CPUクーラーやAIO水冷クーラーでも問題なく運用できるはずです。


「AMD Ryzen 7 5800X」を含めRyzen CPU各種のCPU温度については、”冷えた方が性能が上がる”という点を除けば、運用上、ユーザーが気にする必要はありません。
Ryzen CPUでは、数百個のセンサーによってモニタリングしたデータをRyzen独自のインターコネクタ Infinity Fabricを介してフィードバックし、Pure PowerやPrecision Boostでパフォーマンス向上を図る、というループ制御をリアルタイムで行っています。
Pure Powerはパフォーマンスを維持しつつ消費電力を最小限に抑える機能です。一方でPrecision BoostはPure Powerと相互連携して動作しており、同じ電力内で最大のパフォーマンスを発揮できるように、25MHz単位でCPU動作クロックを上下させる機能になっています。
SenseMI Technology_Cotrol
Pure PowerPrecision Boost

「Precision Boost Overdrive」を徹底解説
precision-boost-overdrive

このような電力制御によって一定のCPU温度を閾値としてCPUクーラーの性能に応じたCPU消費電力に漸近し、その範囲内で最大のパフォーマンスを発揮してくれるのがRyzen CPUです。(下のグラフはRyzen 5 3600と付属CPUクーラーの例)
高冷却性能なCPUクーラーへアップグレードした分だけパフォーマンスは伸びますが、一部モデルに付属するCPUクーラーや120サイズの小型CPUクーラーでもRyzen CPUの独自機能がCPU温度やCPU消費電力を適切に調整してくれます。
CPU_Boost_Model_2



AMD Ryzen 7 5800Xの基礎ベンチマーク

AMD Ryzen 7 5800Xの基本的なCPU性能を専用ベンチマークソフトで検証しました。
この章ではULMarkからリリースされているPCMark 10という総合ベンチマークソフトを使用していますが、デスクトップ向けの高性能CPUの性能比較ベンチマークとしては頭打ちな傾向があります。レビュー項目の1つとして参考までにスコア比較していますが、より実用的なCPU性能については後半の個別性能比較を参考にしてください。

「PCMark 10 Extended」のベンチマーク結果をチェックしていきます。
「PCMark 10」は動画再生能力、DirectX11のグラフィック性能、Webブラウジング、ビデオチャットなど一般ユースにおけるPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトです。
AMD Ryzen 7 5800X_PCMark10

「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各CPU環境について、PCMark 10ベンチマークの総合スコアを比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_bench_PCM10_1

「PCMark 10 Extended」にはPCの基本性能を測る「Essentials」、ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」、クリエイティブ性能を測る Digital Content Creation」、ゲーム性能を測る「Gaming」の大きく分けて4つのテストグループがあるので、個別にベンチマークスコアを比較してみました。

PCの基本性能を測る「Essentials」は、アプリケーションの起動に要する時間を測る「App Start-up」、 ウェブブラウジングの性能を測る「Web Browsing」、1対1または多対多のビデオ会議をシミュレートする「Video Conferencing」の3つのワークロードで構成されています。
モバイル版向けCPUのCore i7 1165G7を搭載するSurface Pro 7+との比較でわかりますが、一般的なPC利用において大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Essentials」について「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_bench_PCM10_2

ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」は、ワープロソフト(マイクロソフトWordなど)の処理性能をシミュレートする「Writing」、表計算ソフト(マイクロソフトExcelなど)の処理性能をシミュレートする「Spreadsheets」の2つのワークロードで構成されています。
モバイル版向けCPUのCore i7 1165G7を搭載するSurface Pro 7+との比較でわかりますが、一般的なオフィスワークにおいて大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Productivity」について「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_bench_PCM10_3

クリエイティブ性能を測る「Digital Content Creation」は、写真に対するフィルタリング処理の性能をシミュレートする「Photo Editing」、動画編集の性能をシミュレートするワークロード「Video Editing」、レイトレーシングによる3Dグラフィクス制作(3Dレンダリング)をシミュレーションする「Rendering and Visualization」の3つのワークロードで構成されています。
「Digital Content Creation」について「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_bench_PCM10_4

ゲーム性能を測る「Gaming」は、グラフィックボードの性能測定で幅広く活用されているベンチマークソフト「3DMark」に収録された「Fire Strike」と同じベンチマークテストを実行するワークロードです。
「Gaming」について「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_bench_PCM10_5



AMD Ryzen 7 5800Xのクリエイティブ性能

AMD Ryzen 7 5800Xについて3Dレンダリング、動画編集・エンコード、RAW現像・写真リタッチ、PCゲーム/スマホアプリのビルド、AI機能による超解像・写真分類などクリエイティブ作業に関する性能を各種ベンチマークソフトや実際のアプリケーションで検証しました。

AMD Ryzen 7 5800Xの3Dレンダリング性能

まずは「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUの3Dレンダリング性能を比較していきます。
CPUのマルチスレッド性能を比較するベンチマークソフトとして国内外で最も知られているCinebenchの2021年リリース最新バージョン「Cinebench R23」、オープンソース3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトの4種類を使用してベンチマーク測定を行いました。

Cinebench R23は3Dレンダリング性能を測定するベンチマークソフトになっており、マルチスレッド性能を測定するテストとシングルスレッド性能を測定するテストの2種類を実行しています。
AMD Ryzen 7 5800X_Cinebench R23

Cinebench R23 マルチスレッド性能テストについて「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_rendering_1_cine_r23_multi

Cinebench R23 シングルスレッド性能テストについて「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_rendering_1_cine_r23_single

3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト(ver3.2.1)
について「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Blender Benchmark 3.0ではmonster/junkshop/classroomの3つのレンダリングが実行され、それぞれ分間サンプル数がベンチマークスコアとして表示されます。Core i5 10400を基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、3つのスコアについて性能比率を算出し、その平均値をグラフ化しています。
AMD Ryzen 7 5800X_rendering_2_blender

3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフト(ver5.2.0)について「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
V-Rayのベンチマークソフトのレンダリングサンプル数が結果として表示されますが、性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 10400を基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しています、
AMD Ryzen 7 5800X_rendering_3_vray


AMD Ryzen 7 5800Xの動画エンコード・動画編集性能

続いて「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUの動画編集や動画エンコードの性能を比較していきます。
検証には、無料で利用できる動画編集ソフトとして国内外で多数のユーザーがいる「Aviutl」、大量の動画ファイルを一括エンコードする時に便利なフリーソフト「HandBrake」を使用しています。
またアマチュアからプロまで動画編集ソフトとして幅広く使用されている「Adobe Premiere Pro」の実用性能を検証するベンチマークとしてULMarkのUL Procyon Video Editing Benchmarkも測定しています。


まずは単純に動画ファイルをそのまま圧縮するエンコード作業の性能比較として、HandBrakeを使用したエンコード性能をチェックします。
HandBrakeは、現在主流なH.264 (MPEG-4 AVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x264」エンコーダ、そしてH.264より高圧縮・高画質で次世代規格として期待されているH.265(HEVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x265」エンコーダが使用できるので、CPUをリソースとして各エンコーダで共通の動画ファイルのエンコードを行いました。
エンコードを行う動画ファイルについては、Tom Clancy's Ghost Recon Wildlandsのゲーム内ベンチマーク(60秒ほど)をNVIDIA ShadowPlayで録画したものを使用しています。1920×1080/60FPS/50Mbpsと3840×2160/60FPS/120Mbpsの2種類の動画ファイルを作成し、それぞれ解像度はそのままにCRF値指定でエンコードを行っています。
HandBrake_test
比較グラフのx2/x3/x4のバーについては同じエンコードを添え字の数だけ並列実行した時の合計変換フレームレートを示しています。
ソースファイルやエンコード設定にも依りますが、フルHD解像度では8コア16スレッド程度、4K解像度では16コア32スレッド程度でマルチスレッド分散がボトルネックになり始め、単独エンコードではCPUが遊び始めます。
20コアオーバーのウルトラメニーコアCPUでマルチスレッド性能をフルに活用しようと思うと、8K解像度のような超高解像度のエンコード、もしくは複数並列エンコードを行う必要があるので注意してください。

x264エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_encode_1_handbrake_x264_1920-1920

x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_encode_2_handbrake_x264_3840-3840

x265エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_encode_3_handbrake_x265_1920-1920

x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_encode_4_handbrake_x265_3840-3840

続いてAviutlで編集した動画プロジェクトのエンコード速度について、「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUの性能を比較していきます
編集プロジェクト自体は単純で、4K解像度とフルHD解像度(4K解像度に拡大)の2つの動画ファイルを使用し、それぞれの動画を左右にフェードイン/アウト、後は画面上にテキストをオーバーレイさせているだけです。YouTubeにアップしている下の動画が完成物となっており、冒頭1分間部分のエンコード速度を測定しています。


Aviutlで作成した3840×2160解像度の4K動画プロジェクトをH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
動画編集ソフトにも依りますが、Aviutlの場合、動画開始直後のように単独の4K映像に文字をオーバーレイするだけでもエンコード出力のCPU使用効率が下がります。
カット編集だけならAviutlもHandBrakeも大差ありませんが、編集したプロジェクト1つをエンコード出力した場合、上で見たHandBrakeによる単純エンコードと比較してマルチスレッド性能に比例したスケーリングは鈍り、シングルスレッド性能で差が出る傾向が強まります。
AMD Ryzen 7 5800X_encode_5_aviutl_x264_3840-Project

続いてAdobe Premiere Proの実用性能を検証するベンチマークソフト、UL Procyon Video Editing Benchmarkのベンチマーク結果から、「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUの動画編集性能を比較していきます
UL Procyon Video Editing BenchmarkにはフルHD解像度と4K解像度の2種類のプロジェクトがあり、それぞれにおいてCPUのみを使用するテストとGPU支援を有効にするテストを行い、トータルのベンチマークスコアを算出しています。

Adobe Premiere Proの実用性能を検証するベンチマークソフト、UL Procyon Video Editing Benchmarkについて、「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ:Total Score / FHD(CPU) / FHD(CPU&GPU) / 4K(CPU) / 4K(CPU&GPU)
AMD Ryzen 7 5800X_encode_6_ul-procyon_1

この章の最後に、映画/ポストプロダクション/放送業界に向けて世界最高品質の製品を開発しているBlackmagic Design社製の動画編集ソフト DaVinci Resolveの実用性能について、Puget Systemsから配布されているベンチマークソフト PugetBench for DaVinci Resolveを使用して、「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUの動画編集性能を比較していきます。
DaVinci Resolveは有償版のDaVinci Resolve Studio(ver17.4.6)を使用し、PugetBench for DaVinci ResolveのExtended Testを実行しています。
PugetBench for DaVinci Resolve Extended Testには4K Media、8K Media、GPU Effect、Fusionの4つのテストが実行され、それぞれのサブスコアからトータルのベンチマークスコアが算出されます。

DaVinci Resolveの実用性能を検証するベンチマークソフト PugetBench for DaVinci Resolveについて、「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ:Total Score / 4K Media / 8K Media / GPU Effect / Fusion
AMD Ryzen 7 5800X_encode_7_davinci-resolve_1


AMD Ryzen 7 5800XのRAW現像・写真リタッチ性能

続いて「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのRAW現像や写真リタッチの性能を比較していきます。
検証には、強力なノイズ除去機能PRIMEや最新版DeepPRIMEで評判の写真編集ソフトDxO PhotoLab 5によるRAW現像に加えて、アマチュアからプロまで動画編集ソフトとして幅広く使用されている「Adobe Lightroom Classic」と「Adobe Photoshop」の実用性能を検証するベンチマークとしてULMarkのUL Procyon Photo Editing Benchmarkも測定しています。

まずはDxO PhotoLab 5によるRAW現像について、「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUの性能を比較していきます
ミラーレス一眼カメラSONY α1で撮影した8640×5760解像度のRAW画像ファイル 100枚に対して、DxO PhotoLab 5の画質プリセット「DxO 標準」をベースにノイズ除去をPRIMEに変更したプリセットを適用し、RAW現像を行いました。
なおDxO PhotoLab 5によるRAW現像は並列処理数を設定できますが、CPUコア数の半分前後の並列処理で最速になるようです。
DxO Photolab_test

DxO PhotoLab 5によるRAW現像速度について、「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_photo_1_DxO


続いてAdobe Lightroom ClassicとAdobe Photoshopの実用性能を検証するベンチマークソフト、UL Procyon Photo Editing Benchmarkのベンチマーク結果から、「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのRAW現像と写真リタッチの性能を比較していきます
UL Procyon Photo Editing BenchmarkにはAdobe Lightroom Classicを使用したバッチ処理テスト(Batch Processing test)に加えて、Adobe Lightroom Classicで簡易処理を施した写真セットをAdobe Photoshopで編集するテスト(Image Retouching test)の2種類を行い、トータルスコアが算出されます。

Adobe Lightroom ClassicとAdobe Photoshopの実用性能を検証するベンチマークソフト、UL Procyon Photo Editing Benchmarkについて、「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ:Total Score / Retouch / Batch
AMD Ryzen 7 5800X_photo_2_ul-procyon_1


AMD Ryzen 7 5800XのPCゲーム/スマホアプリのビルド性能

最後に「Unreal Engine 4/5」や「Unity」などフリーウェアながら高画質なPCゲームやスマホゲームを製作可能なゲームエンジンを使用したゲーム制作におけるCPU性能の検証として、Unreal Engine 4で「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。
Epic Games Storeで無料配布されているUnreal Engine 4のデモプロジェクト Infiltratorを使用したビルド時間の比較を行います。検証設定としてリアルタイム表示はオフ、ライティングの品質をプロダクションとしています。Unreal Engine 4のバージョンは4.27.2で統一しています。
Unreal Engine 4_Infiltrator_test

「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間について、「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 10400を基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、各種CPUのビルド速度を性能比としてグラフ化しています、
AMD Ryzen 7 5800X_dev_Unreal-Engine


AMD Ryzen 7 5800XのAI性能

ディープラーニングや人工知能(AI:Artificial Intelligence)の流行に合わせて、近年の最新CPUではAI支援機能の実装も目玉の1つになっているので、一般ユースに近い活用方法として、AIによる写真の超解像化や写真の自動分類で「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。

まずはAIによって低解像度の写真を高精細な高解像度にアップスケールできる「Topaz Gigapixel AI」を使用して、「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。
500×500解像度前後の写真を50枚用意し、AIモデルStandardによって4倍の解像度にアップスケールするのにかかる時間を測定しました。
Topaz Gigapixel AIはOpenVINOツールキットにより、第10世代以降のIntel Core CPUで採用されているDL Boostと呼ばれるディープラーニングを支援する新しい命令に対応していますが、CPUのマルチスレッド性能でゴリ押しも効くアプリです。

Topaz Gigapixel AIのAIアップスケール速度について、「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
処理時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 10400を基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、各種CPUのAIアップスケール速度を性能比としてグラフ化しています、
AMD Ryzen 7 5800X_ai_1_topaz-gigapixel-ai

続いてAIによって写真の被写体(人物、犬猫、自動車など)を自動で分類できる「Nero AI Photo Tagger」を使用して、「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。
500×500解像度前後の写真を計1300枚(犬、猫、自動車の3種類)用意し、AI認識によって自動分類するのにかかる時間を測定しました。
Nero AI Photo TaggerはOpenVINOツールキットにより、第10世代以降のIntel Core CPUで採用されているDL Boostと呼ばれるディープラーニングを支援する新しい命令に対応しています。
CPUのAI支援機能が効果を発揮するのはもちろん、AVX512命令でも大幅に性能が向上する用途です。

Nero AI Photo TaggerのAI自動分類速度について、「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
処理時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 10400を基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、各種CPUのAI自動分類速度を性能比としてグラフ化しています、
AMD Ryzen 7 5800X_ai_2_nero_ai_photo_tagger



AMD Ryzen 7 5800Xのゲーミング性能

「AMD Ryzen 7 5800X」のPCゲームに関する性能を実ゲームを用いたベンチマーク測定で検証しました。
なお章タイトルではゲーミング性能と表記してはいますが、近年発売された4コア4スレッド以上のCPUであればフルHD解像度~4K解像度の60FPSターゲットにおいてCPUボトルネックが発生するケースは多くありません。そのためCPUゲーム性能比較の具体的な内容は”高フレームレートにおけるCPUボトルネック比較”と表現するのが実状に即しています。
ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するなら、Intel Core i5 12400(F)やAMD Ryzen 5 5500など6コア12スレッド以上のCPUを当サイトでは推奨しています。


各CPUのゲーミング性能を測定するため統一検証機材として、2022年最新のウルトラハイエンドGPUを搭載したグラフィックボード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 3090 AMP Extreme Holo」を使用しています。
CPU Test System




CPU別ゲーミング性能の比較には近年の高画質PCゲームから、Assassin’s Creed Valhalla、Cyberpunk 2077、F1 2022、Far Cry 6、Marvel’s Guardians of the Galaxy、Shadow of the Tomb Raider、Tom Clancy's Rainbow Six Extraction、Forza Horizon 5、MONSTER HUNTER RISE : SUNBREAK、Marvel’s Spider-Man Remasteredの10タイトルを使用しています。
前述の通り、CPUがゲーム性能に与える影響の多くは100FPS以上の高フレームレートにおけるボトルネックの解消なので、フルHD(1920×1080)解像度/高画質設定について、各ゲームで平均フレームレートと1% Lowフレームレートを測定しました。
また参考としてAssassin’s Creed Valhalla、Cyberpunk 2077、Shadow of the Tomb Raider、Marvel’s Spider-Man Remasteredの4種類については4K解像度/60FPSをターゲットとしたベンチマーク測定も行っています。
CPU-Review_Game-Bench_2022

ゲームタイトルにもよりますがPCゲームにおけるCPU負荷であれば、CPU Package PowerはIntelのPBPやAMDのTDPよりも十分に低い数値に収まることが多く、CPUコアクロックは全コア最大動作倍率に張り付きます。
フレームレートに対するCPUボトルネックの緩和においては、この全コア最大動作倍率の高さが重要になり、クリエイティブタスクと違って電力制限は支配的ではなくなります。(PCゲームではIntel製CPUのPL1、AMD製CPUのPPTは影響をほとんど及ぼさなくなる)

Intel Core i9 12900やAMD Ryzen 7 5700Xのように定格の電力制限に対して全コア動作倍率の高いCPUの場合、PCゲームにおいてもCPU使用率が高くなるハイフレームレートでCPU消費電力がPBPやTDPを超過するタイミングもありますが、短期間電力制限PL2によるターボブーストやTDPよりも余裕をもって設定されたPPTによって高いコアクロックを維持し続けることができるので、影響は軽微です。
クリエイティブタスクの検証において複数の電力制限で測定していたCPUもPCゲームでは極端に大きい消費電力になることはないので、電力制限が緩い方を代表として測定しています。


AMD Ryzen 7 5800Xのゲーム性能 - 4K解像度/60FPSターゲット

まずは60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度のゲーミング性能について「AMD Ryzen 7 5800X」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。
上述の通り4K高解像度の60FPSターゲットでは基本的にCPUボトルネックは発生しません。グラフの掲載順は平均フレームレートによる昇順ですが、4コア8スレッドや6コア6スレッドよりもコアスレッド数が多いCPUについては、ほぼ測定誤差の範囲内です。

Assassin's Creed Valhara(4K解像度、画質プリセット:高)に関する「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_game_1_3840_1_acv

Cyberpunk 2077(4K解像度、画質プリセット:高)に関する「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_game_1_3840_2_cyber

Shadow of the Tomb Raider(4K解像度、DirectX12、画質プリセット:最高、アンチエイリアス:オフ)に関する「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_game_1_3840_3_sottr

Marvel’s Spider-Man Remastered(4K解像度、DLSS:品質、画質プリセット:非常に高い、レイトレーシング:高/高/6)に関する「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Marvel’s Spider-Man Remasteredは非常にCPUボトルネックが強いタイトルです。4K解像度かつレイトレーシング表現有効でもCPU性能に応じてフレームレートが大きく変わります。
AMD Ryzen 7 5800X_game_1_3840_4_spider


AMD Ryzen 7 5800Xのゲーム性能 - フルHD解像度/ハイフレームレート

続いて100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/高画質設定のゲーミング性能について「AMD Ryzen 7 5800X」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。

Assassin's Creed Valhara(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Assassin’s Creed ValhallaはNVIDIA GeForce RTX 30シリーズGPUのハードウェア/ドライバがボトルネックになっており、AMD Radeon RX 6000シリーズGPUよりも性能が伸びません。今回の統一検証機材グラフィックボードの場合、平均フレームレート130FPS前後であれば測定誤差の範囲内です。
AMD Ryzen 7 5800X_game_2_1920_01_acv

Cyberpunk 2077(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_game_2_1920_02_cyber

F1 2022(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_game_2_1920_03_f1

Far Cry 6(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_game_2_1920_04_fc6

Marvel's Guardians of the Galaxy(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_game_2_1920_05_goh

Shadow of the Tomb Raider(フルHD解像度、DirectX12、画質プリセット:高、アンチエイリアス:オフ)に関する「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_game_2_1920_06_sottr

Tom Clancy's Rainbow Six Extraction(フルHD解像度、画質プリセット:高、レンダースケール:固定100%)に関する「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_game_2_1920_07_rse

Forza Horizon 5(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_game_2_1920_08_fh5

MONSTER HUNTER RISE(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_game_2_1920_09_mhr

Marvel’s Spider-Man Remastered(フルHD解像、アンチエイリアス:オフ、画質プリセット:高い、レイトレーシング:オフ)に関する「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_game_2_1920_10_spider


最後に、今回検証した10種類のゲームについて各タイトルについて平均FPSと1% Low FPSでそれぞれ、Core i5 10400を基準にした性能比率を算出し、さらに平均値としてグラフにまとめました。(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)
フルHD解像度/ハイフレームレートの相対的なPCゲーミング性能に関する「AMD Ryzen 7 5800X」を含めた各種CPUの比較結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen 7 5800X_game_3_1920_relative



CPUエンコーダとリアルタイム配信について

ゲーム実況やライブ配信と呼ばれるPCゲームのリアルタイム配信について、現在ではNVIDIA GeForce RTX 3050やAMD Radeon RX 6600などハードウェアエンコード機能を使用できるエントリー~ミドルクラスのGPUを使用することでフルHD解像度で必要十分な画質とフレームレートが得られます。

GPUエンコーダは動作自体も軽いので、これらGPUエンコーダの登場によってリアルタイム配信やプレイ動画の録画におけるCPUエンコーダの役目は終わったというのが一時期の私見でしたが、メインストリーム向けCPUのコアスレッド数の増加に伴い、x264 Mediumのような高画質プリセットのプレイ&録画が一般ユーザー的にも現実的になってきています。

Youtube LiveやTwitchなどリアルタイム配信(ライブストリーミング)サービスで、PlayStation 5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch等のコンシューマーゲーム機や、PCゲームのプレイ動画・ゲーム実況を快適に配信するのに必要なCPU性能については、現在、連載を続けている【快適配信】シリーズで詳細に解説しています
一口にゲーム実況と言っても、『1.ビデオキャプチャを使用してPCは録画配信作業のみを行う』、『2.PC1台で同時にゲームプレイと録画配信を行う』の2つのケースに大別され、どちらで使用するのかで要求されるCPU性能やCPUメーカー毎の得手不得手など事情が変わってくるので注意してください。

ざっくりと現状でCPUを使用したリアルタイム配信・ゲーム実況に要求されるCPU性能だけ述べておくと、『ビデオキャプチャを使用した配信の最低水準は6コア12スレッドのCPU』、『ゲームをプレイしながら配信の最低水準は8コア16スレッドのCPU』です。


【快適配信】シリーズの記事一覧へ
【快適配信】シリーズの記事一覧へ


画質と快適性を求めるなら録画・配信専用マシンもオススメ

ビデオキャプチャ業界の進歩も目覚ましく、2018年に発売された「AVerMedia Live Gamer Ultra」を皮切りに、各社から4K/60FPS/HDRやフルHD/240FPSの映像ソースを無遅延なパススルー表示しつつ、フルHD/60FPSのプレイ動画として録画・配信できるUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャが各社から発売されています。


前述の通りフルHD/60FPSの録画・配信であれば、GPUのハードウェアエンコーダを利用することで必要十分な画質が得られて動作も軽いので、録画配信のために高性能な反面、非常に高額なCPUに投資するよりも、多少コストがかかっても「AVerMedia Live Gamer Ultra」などのビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するほうが、録画・配信の手法としてはわかりやすくてハードルが低いと思います。
AMD Ryzen 7 5800X review_00899







AMD Ryzen 7 5800Xのレビューまとめ

「AMD Ryzen 7 5800X」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ or 概要
  • 8コア16スレッドのCPU
  • 定格のPPT:142W制限下において全コアが実動平均で4.50GHz程度
  • PPT:105W制限でも性能低下は5%程度
  • Ryzen 3000シリーズCPUと比較して15~20%も高速なシングルスレッド性能
  • ハイフレームレートなPCゲーミングでIntel第11/10世代CPUを上回る
  • 8コア16スレッドCPUで4.5万円程度(2022年8月現在)
悪いところ or 注意点
  • 定格ではCCD 1つで140Wなので120サイズCPUクーラーだと冷やしにくい
  • ピーク負荷が大きいのでVRM電源が弱いB450マザーボードでの運用は非推奨
  • 20年11月の発売当初は8コア16スレッドで5.8万円と割高だった

温度・消費電力について

「AMD Ryzen 7 5800X」はXFR等による自動OC機能によってCPUクーラーの性能が十分(CPU温度が閾値以下)であれば、公称仕様値のTDP105Wを上回るPPT:142Wまでの動作に対応しているため、検証環境によってはCPU温度が高い、消費電力が大きいと評価されることもあります。
CPU消費電力が105W前後となるPPT:105Wに制限したとしても、影響の大きいクリエイティブタスクにおいて性能低下は5%程度です。
CCD 1つだけで140Wを消費する「AMD Ryzen 7 5800X」はCCD 2つに分散する上位モデルRyzen 9よりも冷やしにくい傾向ですが、ゲームシーンにおいて理想的な性能を発揮するのに必要なCPU Package Powerは90W程度なので、CPU温度を下げたい、120サイズCPUクーラーで運用したいということであれば、PPT:100W前後に各自で調整するのがオススメです。
AMD Ryzen 7 5800X_Performance_per-and-game

AMD Ryzen 5000シリーズCPUは、デフォルト設定で95度の閾値温度に達した時点でCPUクーラーの対応可能なCPU消費電力へ漸近していき、その範囲内で最大のパフォーマンスが発揮できるように調停するPrecision Boost 2 / Pure Power 2が機能として組み込まれているので、CPU温度的にも安心かつ手軽に運用できます。


クリエイティブ性能について

「AMD Ryzen 7 5800X」のクリエイティブ性能について、8コア16スレッドでコアクロックは全コア4.5GHz程度なのでスペック的には競合メーカーIntelのメインストリーム向け最上位、8コア16スレッドで全コア4.8GHzのCore i9 11900Kや、10コア20スレッドで全コア4.9GHzのCore i9 10900Kに及びませんが、従来比で最大20%もIPCが向上するZen 3アーキテクチャを採用していることもあって、Core i9 11900K/10900Kと同等以上の性能を発揮します。
「AMD Ryzen 7 5800X」はクリエイティブタスクにおいてIntel第10/11世代の最上位モデルと同等以上の性能なので、同価格帯になる下位モデルのCore i7 11700KやCore i7 10700Kに対しては当然、性能で完全に上回ります。
AMD Ryzen 7 5800X_Performance_vs

単純にマルチスレッド性能だけを見ると前世代の同コア数モデルとの差は10~20%程度ですが、「AMD Ryzen 7 5800X」は単一8コアCCDによる遅延解消を始めとしてシングルスレッド性能でRyzen 3000を大幅に上回っています。
そのためAviutlで編集した動画プロジェクトのエンコード速度やUL ProcyonによるAdobe CCアプリの実用性能ベンチを見ての通り、アプリ操作のレスポンスやシングルスレッド性能がボトルネックになるシーンで「AMD Ryzen 7 5800X」の利便性は大きく向上していると感じるはずです。

Ryzen 3000シリーズCPUでは4コアx2のCCX構造ゆえに、Intel第10世代CPUと比較して実作業でレスポンスが悪いシーンがあると指摘されることもありましたが、「AMD Ryzen 7 5800X」など単一8コアCCXになったRyzen 5000シリーズCPUはそういったマイナーな問題も解消されています。


ゲーム性能について

ゲーム性能検証の冒頭でも述べたようにフルHD~4K解像度の60FPSターゲットであれば4コア4スレッド以上の最新CPUであればどれを使用しても大差はありません。
Ryzen 2000/3000の頃だとゲーム側の最適化の問題で60FPSターゲットであってもCPUによって差が出るケースも散見され、ゲーム用ならどちらかというとIntelという感じでしたが、Ryzen 5000以降ではこの差もほぼ無視できるレベルだと思います。
ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するなら、2万円台半ばから購入できることもありIntel Core i5 12400(F)やAMD Ryzen 5 5500など6コア12スレッド以上のCPUを当サイトでは推奨しています。

AMD Ryzenが台頭する一方で、競合Intelは第9世代と第10世代でCore i9を旗頭にしてゲーマー向け最速CPUを擁し、ゲーマーに最適なCPUであるとアピールし続けていました。当サイトでもRyzen 3000の頃は、マルチスレッド性能のコスパに優れるAMD Ryzen、ゲーム性能や信頼性が高いIntel Coreのように一長一短あるという評価でした。

「AMD Ryzen 7 5800X」は、長らくゲーマー向け最速としてアピールし続けてきたIntelの最上位CPU Core i9 11900K/10900Kを上回るゲーム性能を実現しています。
タイトル毎に得手不得手があるので平均の取り方で多少前後する可能性もあるとはいえ、5900Xを頂点に5950Xと5800XのRyzen 5000シリーズ3モデルは、Core i9 11900K/10900Kと同等以上の性能があるという評価に間違いはなく、”ゲームに強いIntel製CPU”の牙城さえも崩したのは衝撃的です。

AMD Ryzen 7 5800X_game_3_1920_relative

ゲーム用CPUの推奨は6コア12スレッド以上というのは上記の通りですが、ゲーム性能ベンチマークで見たように例えばMarvel’s Spider-Man Remasteredの4K解像度/最高画質&レイトレーシングは60~120HzでもCPUボトルネックが発生します。
競技系ではない、画質重視なPCゲームでもメニーコアCPUが力を発揮することはあるので、GPU優先が定石ではあるものの、「AMD Ryzen 7 5800X」はMarvel’s Spider-Man RemasteredやFINAL FANTASY VII REMAKEのような高画質アクション/RPGゲームを好むPCゲーマーにとっても魅力のある製品です。

またプレイ動画の配信についてはNVIDIA GeForceグラフィックボードで使用可能なハードウェアエンコーダNVEncの動作が軽快で、画質もRTX20/GTX16世代以降ではCPUによるx264の実用プリセットに迫る品質に改良されているので主流になりつつあります。
この分野ではCPUの存在感は薄まりつつありますが、プレイ動画の作成や編集においては依然として動画のエンコード性能しかりCPUの性能が重要であることは間違いないので、プレイ動画の作成という面もゲーム性能と捉えるなら、その意味でも「AMD Ryzen 7 5800X」は優れたゲーミングCPUです。


総評 - 高性能だがコスパが理由で評価は低め?

「AMD Ryzen 7 5800X」は8コア16スレッドでRyzen 5000シリーズの中ではアッパーミドルクラスの製品ですが、競合Intelの第11/10世代CPU最上位モデル、8コア16スレッドのCore i9 11900Kや10コア20スレッドのCore i9 10900Kと同等以上の性能をクリエイティブタスクにおいて発揮します。
さらに単一8コアCCDをはじめとした特長を備えるZen 3アーキテクチャの採用によってPCゲームでもIntel第11/10世代CPUを上回る性能を実現しました。

Ryzen 3000シリーズでは上位モデルのRyzen 7やRyzen 9でさえ、PCゲームでは第10世代Core i5程度の性能しかなかったことを考えると、「AMD Ryzen 7 5800X」などRyzen 5000シリーズのゲーム性能向上は目覚ましい飛躍です。

ただし、「AMD Ryzen 7 5800X」は発売当初、8コア16スレッドで税込み5.8万円という割高な価格設定でした。
12コア24スレッドの上位モデルRyzen 9 5900Xが7.2万だったので人気が高く、相対的にもコストパフォーマンスが微妙に見えました。AMD Ryzenと言えばコストパフォーマンスが魅力というのがこれまでの評価だったので、その反動も大きかったかなと。

2022年8月現在は税込み4.5万円程度ですが、大きく値下がりしたのはIntel第12世代CPU登場以降であり、より安価なCore i5 12600K(F)のほうが高性能ということもあって、Ryzen 5000シリーズCPUの中では発売から現在に至るまでコストパフォーマンスが理由で一番評価されなかったCPUのように思います。


2020年11月の発売から2021年中を振り返ると、単純なCPU性能的にはRyzen 5000シリーズの独壇場だったと言っても過言ではありません。
一方で5950Xと5900Xは前世代よりも若干値上がりし、8コアRyzen 7と6コアRyzen 5は5800Xと5600Xの上位モデルしかラインナップされず、Ryzen 3000も併売されていたので、価格競争力の強いAMD製CPUという魅力が薄れていたのは少し残念でした。
”性能が高く、同時に価格も安い”というユーザーメリット的には、やはりどちらかが一方的に上回る状況よりも、IntelとAMDが拮抗する状況のほうが好ましいのだと再認識させられた感があります。


AMD Ryzen 5000の発売が2020年11月だったので、もう少しすれば発売から2年が経ってしまうという、大遅刻な詳細レビューになってしまいました。
2022年9月には競合AMDから次世代CPUであるRyzen 7000シリーズが登場予定であり、さらに2022年内にIntelからもRaptor Lakeこと第13世代CPUの登場が噂されています。
Ryzen 7000は単コア最大ブーストがRyzen 5000と比較して1GHz前後伸び、シングルスレッド性能は15%も向上するとアピールされています。一方でRaptor Lakeこと第13世代CPUは噂レベルですが、P-Coreがさらにハイクロックに、E-Coreは最大16コア16スレッドになりマルチスレッド性能も大幅に向上するとのこと。
Intel第10世代vsAMD Ryzen 3000の時のような拮抗した戦いが見られそうで管理人も非常に楽しみにしています。


「AMD Ryzen 7 5800X」など2020年11月に発売されたRyzen 5000シリーズCPUの初期モデルについて、Ryzen 7000シリーズの発売前に、その性能を振り返る意味でレビュー記事を作成しています。
AMD Ryzen 5000シリーズCPUとIntel第12世代CPUのどちらを購入しようか迷っていて、性能比較を見たいという人は、Intel第12世代CPUのレビュー記事のほうで比較やまとめを執筆しているのでこちらを参照してください。



以上、「AMD Ryzen 7 5800X」のレビューでした。
AMD Ryzen 7 5800X



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