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Core Ultra 9 285KなどIntel Core Ultra 200シリーズCPUに対応するZ890チップセット搭載マザーボードとしてASRockからリリースされた、110A対応SPSで構成される25フェーズの超堅牢VRM電源、PCIE5.0対応を含む5基のNVMe M.2スロットを搭載するゲーミングモデル「ASRock Z890 Nova WiFi」をレビューします。

ASRock Z890 Nova WiFi レビュー目次
1.ASRock Z890 Nova WiFiの外観・付属品
2.ASRock Z890 Nova WiFiの基板上コンポーネント詳細
3.ASRock Z890 Nova WiFiの検証機材
4.ASRock Z890 Nova WiFiのBIOSについて
5.ASRock Z890 Nova WiFiのOC設定について
・By Core Usage倍率によるOCについて
・VFカーブOC電圧設定や電力制限について
・メモリのオーバークロックについて
・その他のOC設定やTipsについて
6.ASRock Z890 Nova WiFiの動作検証・OC耐性
7.ASRock Z890 Nova WiFiのレビューまとめ
【2025年1月15日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:2.20で検証
製品公式ページ:https://pg.asrock.com/mb/Intel/Z890 Nova WiFi/index.jp.asp
【機材協力:ASRock Japan】
ASRock Z890 Nova WiFiの外観・付属品
まず最初にASRock Z890 Nova WiFiの外観と付属品をチェックしていきます。

付属品一覧は次のようになっています。
「ASRock Z890 Nova WiFi」にはクイックインストールガイドの冊子はありますが、従来のような詳細マニュアルは付属せず、QRコードを使用して公式サポートページからダウンロードする形になっています。

組み立て関連の付属品はSATAケーブル4本、ARGB LED 3分岐ケーブル、Wi-Fiアンテナ、M.2 SSD固定ネジ&スペーサーセット×52、PIN温度センサー×3です。

「ASRock Z890 Nova WiFi」にはARGB対応VD-G型汎用3PIN LEDヘッダーがマザーボード上に実装されており、付属の3分岐ケーブルによって1つのLEDヘッダーに3つのLEDイルミネーション機器を接続できます。

「ASRock Z890 Nova WiFi」にはM.2 SSDを4台増設可能なPCIE拡張カード M.2 Expansion Cardも付属しています。使い方や機能についてはマザーボードM.2スロットの説明部分で一緒に解説しています。



マザーボード全体像は次のようになっています。
「ASRock Z890 Nova WiFi」はATXフォームファクタのマザーボードです。

「ASRock Z890 Nova WiFi」にはチップセットとM.2 SSDのヒートシンクを兼ねたマザーボード下側全体を覆う金属製カバーが搭載されています。
深いスリット、サンドブラスト処理、幾何学模様のプリント、鏡面プレートなど質感のパネルが組み合わさっており、見ていて飽きの来ないデザインです。

青色から紫色のグラデーションでホログラム的に輝く斜めラインの装飾は、製品名でもあるNovaらしく、ゲーミングマザーボードとしてカッコよく仕上がっています。


「ASRock Z890 Nova WiFi」はマザーボード備え付けのLEDイルミネーションやRGB対応汎用4PIN/アドレッサブルRGB対応汎用3PINイルミネーション機器を操作可能なライティング制御機能 ASRock Polychlome RGB Syncに対応しています。
「ASRock Z890 Nova WiFi」はリアI/Oカバーと下側M.2 SSDヒートシンクにアドレッサブルLEDイルミネーションを搭載しています。




加えて、「ASRock Z890 Nova WiFi」のマザーボード上にはライティング制御に対応したRGB対応汎用4PIN LEDヘッダーが1基、ARGB対応VD-G型3PIN LEDヘッダーが3基実装されています。

Windows上ソフトウェアからASRock Polychlome RGB Syncのエコスステムに対応する他のイルミネーション機器と同期制御する等の詳細設定も可能ですが、「ASRock Z890 Nova WiFi」はマザーボード上のイルミネーション機器だけならBIOSから簡易的に発光カラーや発光パターンを変更できます。完全に消灯させることも可能です。


「ASRock Z890 Nova WiFi」にはVRM電源クーラーとして、CPUソケットの上側と左側にXXL Aluminum Alloy Heatsinkと呼ばれる2基のフィンカットアルミニウム塊型ヒートシンクが搭載されています。2基のヒートシンクにはクーラー全体で効率的に放熱を行うため熱の拡散を速めるヒートパイプが組み込まれています。左側はリアI/Oに覆い被さる部分も含めて全てアルミニウム製ヒートシンクです。



マザーボード裏面左側には頑丈な金属製バックプレートが装着されています。各種素子の半田の出っ張りで指を切ることがありますが、バックプレートがあればその心配もありません。

バックプレートはVRM電源回路背面とサーマルパッドを介して接しており、放熱プレートとしての役割も果たしています。

「ASRock Z890 Nova WiFi」は25フェーズ(20+1+2+1+1)の超堅牢なVRM電源回路が実装されています。

ハイサイド/ローサイドMOS-FETとドライバICをワンパッケージし、低発熱で定評のあるSmart Power Stage(Dr. MOSの名前で有名)をVRM電源回路に採用するのはハイエンドマザーボードでは定番ですが、「ASRock Z890 Nova WiFi」にはCPUコア向けの23フェーズに110A対応SPSのRenesas R2209004が使用されています。
その他にも、従来比2倍の静電容量 1000uFで高負荷かつ大きな変動に対してより安定した出力電流を維持でき、20,000時間の寿命でより優れた安定性と信頼性を提供する20K ブラックコンデンサ、飽和電流を最大3倍まで効果的に増加させるためマザーボードのVcore電圧を強化する新世代プレミアム60Aパワーチョークコイルなどで堅牢なVRM電源回路が構築されています。



最大で24コアとなるIntel Core Ultra 200SシリーズCPUを組み合わせても安定した大電力の供給が行えるように、「ASRock Z890 Nova WiFi」にはEPS電源端子として8PIN×2が設置されています。
700W以下のメインストリーム電源ユニットではEPS端子が1つしかないものもあるので組み合わせて使用する電源ユニットには注意が必要です。

「ASRock Z890 Nova WiFi」には一体型リアI/Oバックパネルも採用されています。PCケースにパネルを装着する作業は固くて装着し難かったり、忘れてしまうこともあるのでマザーボードに統合されているのは嬉しい機能です。

一体型リアI/Oバックパネルを採用したのは主要4社ではASRockが最後でしたが、同機能をただ搭載するだけに留まらず、上下左右にオフセット可能としてPCケースとの互換性が確保する構造に改良され、Flexible Integrated I/O Shieldと名付けられています。

以下USB規格に関する説明がありますが『USB3.2 Gen2 = USB3.1 Gen2』、『USB3.2 Gen1 = USB3.1 Gen1 = USB3.0』と考えて基本的に問題ありません。
「ASRock Z890 Nova WiFi」のリアI/Oに実装された2基のUSB Type-Cポートは帯域40Gbpsの最新規格 Thunderbolt4に対応しています。
DisplayPort Alternate Modeによるビデオ出力に対応し(映像ソースはiGPU)、USB Power Delivery規格によって15W(5V/3A)の電力供給も可能です。

リアI/Oには帯域10GbpsのUSB3.2 Gen2規格に対応した4基のType-A端子(10Gbpsの記載がある3つとオレンジ色の2つ)が設置されています。そのほかのUSB端子については3基のUSB3.2 Gen1端子と2基のUSB2.0端子が搭載されています。
ポート数は十分以上ですが、USB3.Xは無線マウスと電波干渉を起こすことがあるので、欲を言えばUSB2.0を少し離れた場所に設置しておいて欲しかったところ。

「ASRock Z890 Nova WiFi」のリアI/O実装された複数のUSBポートのうち、マウス用とキーボード用のUSBポートは黄色端子で指定されています。
通常のUSBインターフェースとPCIE to USBブリッジ接続にそれぞれの接続を分けることによって、入力デバイスのトラフィックを安定させるASRock Lightning Gaming Portsが採用されています。
加えて濃紺色のUSB端子はUltra USB Powerという独自機能に対応しています。電源ユニットの+12V電圧からマザーボード回路によって低ノイズな+5V電圧を作り出すことで、USB DACなどバスパワー電源で動くサウンドデバイスの音質を改善します。

有線LANとして近年ではエントリー~ミドルクラスのMBでも普及しつつある2.5Gb LAN(Intel Killer E3100G)に加えて、さらに2倍高速なRealtek製LANコントローラー(RTL8126)による5Gb LANも搭載されています。
LANコントローラー自体はサードパーティー提供の汎用品ですが、LANポートや回路を電磁干渉耐性を備えた設計にすることで信頼性の高い通信品質を実現しています。

さらにWi-Fi 7に対応したIntel BE200コントローラーによる無線LANも搭載しています。
接続規格としてはWi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac/ax/be、2.4/5GHz/6GHzトライバンド、最大通信速度5.8Gbps(6GHz帯の320MHz幅接続時)、Bluetooth 5.4に対応しています。リアI/Oには無線モジュールのアンテナ端子が設置されているので付属のアンテナを接続できます。

ゲーマー向けNICであるIntel Killer製コントローラーは有線・無線ともにIntel Killer Performance Suiteを使用できます。
オンライン対戦PCゲームなど使用頻度の高いアプリケーションに優先順位をつけるだけでなく、ネットワーク品質を最適化するためのアドバイスも表示されます。

「ASRock Z890 Nova WiFi」に搭載されたネットワーク機器のうち2.5Gb有線LAN(Killer E3100G)と5Gb有線LAN(Realtek RTL8126)はWindows 11 24H2の標準ドライバで動作しますが、Wi-Fi 7対応無線LAN(Intel BE200)は標準ドライバでは動作しません。

条件次第では問題になることもあるので詳しくはこちらの記事を参照してください。
ASRock Z890 Nova WiFiの基板上コンポーネント詳細
続いて「ASRock Z890 Nova WiFi」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。「ASRock Z890 Nova WiFi」はIntel Core Ultra 200SシリーズCPUに対応するマザーボードなのでCPUソケットは当然、Intel LGA1851です。
CPUソケットが異なるので第12~14世代Coreの旧CPUは使用できませんが、LGA1851とLGA1700のCPUクーラーマウントは共通なので、LGA1700対応CPUクーラーなら問題なく使用できます。
LGA1700登場から3年も経っているので、新しいCPUクーラーを購入する分には互換性が問題になることはないはずです。

LGA1851と同時にCPU固定用金具には”RL-ILM (Reduced Load-Independent Loading Mechanism)”、その名の通り、リテンション圧を軽減した新たなリテンションブラケットが導入されており、「MSI MPG Z890 CARBON WIFI」にもRL-ILMが採用されています。

所謂、”CPU反り問題”については実害が存在するかというとエビデンスは怪しいです。せいぜい、ヒートスプレッダと接するコールドプレートが中央凸形状でないCPUクーラーで5度程度の差で冷却性能が下がるくらい、というのが筆者の私見です。Asetek OEMのAIO水冷などここ5年くらいの製品でちゃんと設計されたCPUクーラーなら中央凸なコールドプレートになっているはずです。
とはいえCPU形状が縦長になったことで従来よりも第12~14世代Core CPUに反りが生じやすいこと自体は事実なので、ワッシャーMODとかコンタクトフレームなどによるMBの保証が失効するような処置(逆に接触不良による動作不安定、メモリOCエラーといった悪影響も)をユーザーが自己責任でとる必要がなくなったのは素直に喜んでいいと思います。
「ASRock Z890 Nova WiFi」はシステムメモリの最新規格DDR5に対応しています。従来規格のDDR4と下方互換はなく使用できないので注意してください。
システムメモリ用のDDR5メモリスロットはCPUソケット右側に4基のスロットが設置されています。固定時のツメは両側ラッチとなっています。片側ラッチよりも固定が少し面倒ですが、しっかりとDDR5メモリを固定できるので信頼性は高い構造です。

「ASRock Z890 Nova WiFi」など同社製Z890マザーボード全てはメモリOCシールドと呼ばれるEMI保護シールが貼られています。
メモリオーバークロックに影響を与える可能性のある電磁干渉(EMI) を低減するように設計された特許取得の独自機能です。メモリ回路をEMIノイズから保護し、レイアウトを最適化することで、高周波動作時の安定性と信頼性を高め、ユーザーがシステムの潜在能力を最大限に引き出すことを可能にしています。


Intel Core Ultra 200SシリーズCPUとIntel Z890などIntel 800シリーズマザーボードの環境は、従来のUDIMM(Unbuffered DIMM)規格のDDR5メモリに加えて、新規格 CUDIMM(Clocked Unbuffered)にも対応しています。
当然、今回レビューする「ASRock Z890 Nova WiFi」もCUDIMM対応です。
CUDIMMはクロック信号を補正するClocked Driverが追加されており、高速動作の安定性を向上させた新規格です。1.100Vの低電圧でも6400MHzの高速メモリ周波数が安定し、JEDEC準拠のスペックを満たすだけでなく、8000~9000MHz以上のメモリOCで従来のUDIMMよりも安定性を増しています。

グラフィックボードなどを設置するPCIEスロットは上から[N/A、x16、N/A、N/A、N/A、x16、N/A]サイズのスロットが設置されています。上段のプライマリグラフィックボードを2段目のスロットに配置することで、大型ハイエンド空冷CPUクーラーとグラフィックボードの干渉を回避しています。
2段目のx16サイズPCIEスロットはCPU直結PCIE5.0x16レーンに接続されていて、排他利用や帯域共有はなくシンプルにそのまま使用できます。
6段目のx16サイズスロットはチップセットのPCEI4.0x4接続に接続されており、M.2スロット(M2_2)と排他利用です。


「ASRock Z890 Nova WiFi」に実装されたx16サイズスロットには1kgを超える重量級グラフィックボードの重さに耐えるメタルアーマー STEEL SLOTが採用されています。
最新のSTEEL SLOTでは、アンカーポイントを6個に増やすことによって堅牢さをさらに増し、さらにラッチ部分にも補強が加えられてパワーアップしています。

「ASRock Z890 Nova WiFi」はPCIEスロット固定ラッチの解除を簡単にする新機能 グラフィック カード EZリリースに対応しています。
大型空冷CPUクーラーを組み合わせた場合など、グラフィックボードを取り外す際にPCIEスロットの固定ラッチ解除に苦戦した自作erは多いと思いますが、グラフィック カード EZリリースに対応しているマザーボードならPCIEスロット付近にレバーを操作するだけで簡単にPCIEスロットのロックを解除できます。

PCIE固定ラッチの解除を簡単にする機能は最近流行りのMB新機能ですが、ASRockの機能では、スライドスイッチを操作することでPCIEスロット固定ラッチをアンロック状態へ切り替えできるところが他社との大きな違いというか、特長です。ちなみにグラフィックボードの装着時には操作は必要ありません。
『片手でスイッチを操作して、もう片方の手でグラフィックボード(ハイエンドモデルは1kgを超える)を取り出す』という操作ではなく、スライドスイッチでロックを解除した上で、両手でグラフィックボードを取り出せるので、より安全に作業できます。

ASRock Z890 Nova WiFiにはSATAストレージ用の端子は4基搭載されています。いずれもチップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/5/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。

高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットは、CPUソケット下やPCIEスロット間に計6基が設置されています。
M2_1はCPU直結PCIE5.0x4レーンに接続されており、PCIE5.0x4接続のNVMe接続M.2 SSDに対応しています。
M2_2はCPU直結PCIE4.0x4レーンに接続されており、PCIE4.0x4接続のNVMe接続M.2 SSDに対応しています。
M2_3とM2_4とM2_5とM2_6はチップセット経由PCIEレーンに接続されており、NVMe接続(PCIE4.0x4)のM.2 SSDに対応しています。M2_3はSATA接続のM.2 SSDにも対応しています。
6段目のx16サイズPCIEスロットはM2_4とPCIE帯域を共有しており、一方を使用するともう一方は排他利用になります。

「ASRock Z890 Nova WiFi」にはM.2 SSDを4台増設可能なPCIE拡張カード M.2 Expansion Cardが付属しています。


BIOS詳細設定においてPCIE4.0x4帯域を4つのPCIE4.0x1帯域に分割する機能があるので、それを有効にするPCIEスロット1つだけでM.2 SSDを4台も増設できます。
最大連続読み出し・連続書き込みは1.7GB/s程度に制限されますが、4Kランダム性能の低下はないのでゲームインストール用ストレージとして使えますし、プレイ動画のバックアップ等で大容量な記憶領域が欲しい等、ゲーマーに嬉しい機能です。


・PCIE4.0/5.0対応NVMe M.2 SSDのレビュー記事一覧へ

「ASRock Z890 Nova WiFi」のM.2スロットにはM.2 SSD自体の固定にはネジを使用しない、クリップ構造が採用されています。クリップを90度回すだけで簡単にM.2 SSDを固定できるので非常に楽です。


「ASRock Z890 Nova WiFi」はM.2 SSDヒートシンク自体もネジ止めではなく、丸形ボタンによるスライドスイッチ式ロックになっていて完全にツールレスでM.2 SSDを着脱、交換できます。
従来モデルではスイッチをスライドさせる方向が分かり難かったのですが、「ASRock Z890 Nova WiFi」ではマザーボード装飾のデザインに溶け込む形でスライドさせる方向に丸印があります。



「ASRock Z890 Nova WiFi」のマザーボード下側を覆う金属カバーは着脱でき、M.2 SSDの放熱ヒートシンクの役割を果たしています。

「ASRock Z890 Nova WiFi」のM.2 SSDヒートシンクのうち、CPU直結PCIEレーンに接続されているCPUソケット直下のM.2スロットについては、厚みが20mm程度もあり、特に巨大です。
高速な反面、発熱の大きいPCIE5.0対応NVMe M.2 SSDを頻繁にアクセスするシステムストレージに使っても安心して運用できます。


一般的なマザーボード備え付けM.2 SSDヒートシンクは表面のみに金属プレートが実装されていますが、同製品のPCIE5.0x4帯域に対応するM.2スロットでは両面ヒートシンク設計を採用しており、背面金属プレートも表面同様にサーマルパッドを介してM.2 SSDと接します。

マザーボードの右端には最新接続規格USB3.2 Gen2x2に対応する内部USB Type-Cヘッダー(正式名称はFront USB Type-E)と内部USB3.0ヘッダーが実装されています。
内部USB3.0ヘッダーも2基実装されており、一方はマザーボードと平行な向きに実装されています。


マザーボード下側には2基の内部USB2.0ヘッダーが設置されています。
Corsair iCUEやNZXT CAM対応製品などUSB2.0内部ヘッダーを使用する機器も増えていますが、「ASRock Z890 Nova WiFi」であればそれらの機器も問題なく使用可能です。内部USB2.0が2基でも不足する場合はUSB2.0ヘッダー増設ハブの「NZXT INTERNAL USB HUB (Gen3)」や「Thermaltake H200 PLUS」がおすすめです。

「ASRock Z890 Nova WiFi」のオンボードサウンドには7.1チャンネルサラウンドやハイレゾ音源に対応する最新オーディオコーデックRealtek ALC4082が採用されています。リアI/Oにはオーディオ用の外部アンプ等との接続に最適なデジタル出力の光デジタル端子が設置されています。

またマザーボード右下にはOCerのみならず一般自作erにとっても組み立て中の動作確認に便利なオンボードとスタートスイッチとリセットスイッチが実装されています。POSTエラーのチェックができるDebug Code LEDも設置されています。
リアI/OにはCMOSクリアのハードウェアスイッチも設置されているのでオーバークロック設定を失敗しても簡単に初期化が可能です。

冷却ファンを接続するためのコネクタについてはPWM対応4PINファンコネクタがマザーボード上に8基設置されています。マザーボード上部のCPUソケット周辺にCPUファン端子とCPUオプションファン端子(水冷ポンプ対応、3A/36W)、さらにケースファン端子5基(水冷ポンプ対応、2A/24W)とVRM電源ファン端子の計8基です。

「ASRock Z890 Nova WiFi」には外部温度センサー用2PINヘッダーも3基実装されています。付属の温度センサーだけでなく、一般的な2PIN温度センサーを接続可能です。ケースファンの制御ソース温度として選択できます。



「ASRock Z890 Nova WiFi」のリアI/Oに設置されたUSB Type-C端子は標準でThunderbolt4に対応していますが、マザーボード下側にTBT5 Headerが実装されています。
同社からは同ヘッダーに対応したUSB4や次世代規格 Thunderbolt5の増設拡張カードは未発表ですが、ASUS製のUSB4/Thunderbolt5の拡張カードと同じピン配列なので、それが使用できるかも。

ASRock Z890 Nova WiFiの検証機材
「ASRock Z890 Nova WiFi」を使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。マザーボード以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core Ultra 9 285K (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z5 CK F5-8400C4052G24GX2-TZ5CK (レビュー) DDR5 CUDIMM 24GB×2=48GB 8400MHz, CL40-52-52-134 G.Skill Trident Z5 RGB F5-7200J3646F24GX2-TZ5RK (レビュー) DDR5 UDIMM 24GB×2=48GB 7200MHz, CL36-46-46-115 |
ビデオカード | MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 990 PRO 1TB (レビュー) |
OS | Windows 11 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1500i 2022 (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。
「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材 Sterrox LCPの採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・Noctua NF-A12x25シリーズのレビュー記事一覧へ

ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 990 PRO 1TB」を使用しています。
Samsung SSD 990 PROは、PCIE4.0対応SSDで最速クラスの性能を発揮し、なおかつ電力効率は前モデル980 PRO比で最大50%も向上しており、7GB/s超の高速アクセスでも低発熱なところも魅力な高性能SSDです。 これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
・「Samsung SSD 990 PRO 1TB」をレビュー。性能も電力効率もトップクラス!

CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で筆者も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。筆者はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。

以上で検証機材のセットアップが完了となります。
ASRock Z890 Nova WiFiのBIOSについて
ASRock Z890 Nova WiFiを使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付がおかしいですが無視してください。また内容的に差異のないものは過去の同社製マザーボードのBIOSスクリーンショットを流用しています。)
BIOSに最初にアクセスすると「ASRock Z890 Nova WiFi」ではイージーモードというグラフィカルな画面が表示されます。パッと見の見栄えは良いのですが詳細モードのほうが結局のところ使いやすいので「F6」キーを押してサクッと詳細モード移るのがおすすめです。

次回起動以降に詳細モードを最初から表示する場合は、「アドバンスド - UEFI設定スタイル」の項目で起動時のモードは指定できます。

ASRock Z890 Nova WiFiのBIOSの詳細モードは、従来通りの文字ベースBIOSメニューになっています。
画面上に表示されている「メイン」「OCツール」「詳細」などメニュータブから左右カーソルキーで各設定ページが表示できます。画面右下の「English」と表記されたボタンから言語設定が可能です。

ASRock Z890 Nova WiFiのBIOSは日本語に対応しています。ASRockのマザーボードというと「Save Changes and Exit」が「変更がそして退出することを保存します」のように翻訳が怪しい部分がありましたが、ASRock Z890 Nova WiFiなど最新マザーボードでは翻訳が正確になっています。

ASRock Z890 Nova WiFiのBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出はトップメニュータブ最右端の「退出」から行えます。特定のブートデバイスを指定してBIOSから退出するBoot Override機能もあります。

BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルを公式DLページからダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://pg.asrock.com/mb/Intel/Z890 Nova WiFi/index.jp.asp#BIOS
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、トップメニュータブ「ツール」の「Instant FLASH」を選択します。「Instant FLASH」を選択すると自動でUSBメモリ内から総当たりでアップデートファイルを探索してくれます。自動探索は便利なのですが、反面、探索方法は総当たりなのでファイルが多いと時間がかかるため、アップデート時はファイルの少ないUSBメモリを使用するのがおすすめです。

USBメモリからアップデートファイルが見つかると更新するかどうか尋ねられるので、更新を選択すればあとは自動でBIOSがアップデートされます。

ブートとOSインストール周りについて紹介します。とはいってもASRock Z890 Nova WiFiのブート回りは下画像のように非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。

OSのインストールも「起動順序 #1」に「UEFI 〇〇」というOSインストールメディアを設定して保存&退出でOKです。退出のメニューから「UEFI 〇〇」をブートオーバーライドで指定して起動しても同様にOSのインストールデバイスから起動可能です。


BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、「ASRock Z890 Nova WiFi」のBIOS機能で筆者が気になったものをいくつかチェックしていきます。
最近、各社マザーボードに搭載されているOS起動後のドライバ自動ダウンロード機能について、ASRock製マザーボードでは”Auto Driver Installer”という名前で配置されています。

Intel Core Ultra 200SシリーズCPUはThread Directorと呼ばれるスケジューラーによってCPUコアに適切なタスク分けを行いますが、一部のゲームに対しては適切にスケジューリングができないことがあります。
それによる性能低下をWindows上ソフトウェアによって解決するため、第14世代CPUと同時に導入された「Intel APO(Application Optimization)」があり、通常、Intel Core Ultra 200SシリーズCPU環境では標準で有効化されています。

このIntel APOを利用する前提条件として、BIOS設定においてDTT(Dynamic Tuning Technology)と呼ばれる機能を有効にしておく必要があります。
「ASRock Z890 Nova WiFi」などASRock製Intel 800シリーズ マザーボードでは、CPU設定内に”Intel Dynamic Tuning Technology”という設定項目として配置されています。


よく使うBIOS設定をお気に入りリストに登録する機能もあります。
BIOSメニューの個別設定にカーソルを合わせた状態でF5キーを押下すると、その項目がお気に入りリストに登録されます。



「ASRock Z890 Nova WiFi」のファンコントロール機能について紹介します。


ASRock Z890 Nova WiFiのファンコントロール機能ではマザーボード上に設置されている各ファン端子について個別に設定が可能です。
「標準/サイレント/パフォーマンス/最大速度」の4種類のプリセット設定に加えて、個別に温度・ファン速度の比例カーブを指定できる「カスタマイズ」の5つのモードを使用できます。

「カスタマイズ」モードでは比例カーブを決める温度とファン速度を4つ指定できます。CPUファンはCPUソースで固定ですが、ケースファン端子はソースとなるセンサーにCPU温度とマザーボード温度の2つに加えてASRock Z890 Nova WiFi上に実装されて3つの温度センサーも選択できます。


セミファンレス機能に関する記載はありませんが、温度1のファン速度を0%に設定すると、制御ソース温度が設定値以下の時にファンは完全に停止します。

各種モニタリングとファン端子コントロールの間に「Fan Tuning」と「Fan-Tasticチューニング」という項目があります。「Fan Tuning」はワンクリックで自動で接続された冷却ファンの動作を最適化してくれる機能です。「Fan-Tasticチューニング」はグラフィカルUIによるファンコントールの設定機能になっています。

機能的には上で紹介したコンソールのファンコンと同じで、グラフィカルUIでわかりやすく設定できるよという機能になっています。直感的にわかりますし直打ちが苦手な人にはありがたい機能だと思います。マウス操作重視のUIですがキーボードからもカーソルキーでフルコントロール可能です。

ASRock Z890 Nova WiFiのOC設定について
ASRock Z890 Nova WiFiを使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
ASRock Z890 Nova WiFiなどASRock製Z890マザーボードのオーバークロック設定はOCツールというトップメニューの項目にまとめられ、下位グループとして「CPU設定」「DRAM設定」「電圧設定」「FIVR設定」の4種類が用意されています。

ASRock製のIntel 800シリーズ マザーボードではOCツールタブのトップページにPower Delivery Profileという項目からIntel公式仕様通りの動作プロファイル(電力制限、電流制限)を適用するかどうか設定できます。

Intel第13/14世代CPUで話題になった”Baseline”プロファイルとかに関連する設定です。
当サイトではCore-X登場当時、かれこれ7年ほど前からMBの初期設定は公式仕様通りにすべきと主張していたので、やっと時代が追いついた気がして感慨深く、そうなったのは嬉しい変化です。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUはFoverosと呼ばれる3Dパッケージング技術を応用し、ベースダイ上にCompute Tile、SoC Tileなど複数のシリコンタイルを積層する構造が採用されています。
iGPUが実装されているGraphic Tileだけでなく、SoCタイルのD2DやNGUといったインターコネクト(fabric)類もOCの対象になっていて、設定できることも増えてやや複雑になっていますが、とはいえ、メインはやはりCompute Tileです。


Intel Core Ultra 200SシリーズCPUでもOCや電力制限の主な対象となるCompute Tileには前世代同様に高性能コアP-Coreと高効率コアE-Coreがあり、2種類の混成でCPUが構成されています。
またIntel Core Ultra 200SシリーズCPUには省電力性能を高める新機能としてDLVR(Digital Linear Voltage Regulator; デジタルリニア電圧レギュレータ)呼ばれるCPU内蔵VRが搭載されています。
P-CoreとE-Coreには個別に動作倍率を設定するところは従来同様ですが、DLVRが追加されたIntel Core Ultra 200SシリーズCPUでは各P-Coreや各E-Core Clusterに対して個別に電圧、V-Fカーブを設定できるようになっており、より柔軟に低電圧化や、昇圧による単コアブースト引き上げなどOCが可能です。

By Core Usage倍率によるOCについて
By Core Usage倍率によるオーバークロック、V-Fカーブによる低電圧化といった近年のIntel Core CPUのチューニングにオススメな設定について紹介します。近年のIntel製CPUはアクティブコア数(大きい負荷のかかっているコア数)に応じて最大動作倍率が変化するBy Core Usage倍率により、例えばCore Ultra 9 285Kなら最大5.7GHzのような単コア最大動作倍率で動作が可能になっており、高いシングルスレッド性能を発揮します。
優良コアが電圧を盛れば6GHzに迫るような高コアクロックで動作できる一方、同じコアクロックで全コアを稼働させることは相対的な不良コアの電圧特性的にも、CPUパッケージ全体での発熱的にも難しいので、シングルスレッド性能を損なう全コア一律のコアクロックを適用するマニュアルOCはベンチマークスコアを重視したOC競技的な設定となっており、現在の常用OCにおける主流はBy Core Usage倍率とV-Fカーブを組み合わせた手法です。
まずはBy Core Usage倍率によるコアクロックの設定について説明します。
By Core Usage倍率関連の基本的な話は共通なので、旧世代のCore i9 13900Kを例にしますが、13900KのPコアは1~8コアのアクティブコア数に応じて[58, 58, 55, 55, 55, 55, 55, 55]というBy Core Usage倍率が適用されています。(コアクロックはベースクロックBCLK、通常100MHzに対する倍率で決まる)
アクティブコア数が2コアまでであれば、そのアクティブコアは最大5.8GHzで動作します。所謂、単コア最大ブーストクロックのことです。(1コアではなく2コアまでなどの時もありますが、便宜上、単コアと呼びます)

一方、Cinebench R23のマルチスレッドテストやx264動画エンコードのように全コアへ大きな負荷がかかるシーンでは全コアが最大5.5GHzで動作できます。
なぜ”最大”と注釈つくかというと、特にCPU全体の発熱が大きくなる全コア負荷時については、長期間電力制限(Long Duration Package Power Limit; PL1)や臨界温度(Tj Max)、Thermal Velocity Boostによるコアクロック制限が適用されることがあるからです。

ゲーム性能に対しては全コア最大動作倍率が重要であり、逆に電力や温度といったCPU負荷自体は軽いという特長があります。
ゲームシーンで高い性能を実現しつつ、CPU負荷の大きいクリエイティブタスクではCPU Package PowerやCPU温度を制御ソースとして各自冷却環境(CPUクーラー)で冷やせる範囲内で最大の性能を発揮できるようにする、というパフォーマンスデザインです。

By Core Usage倍率とV-Fカーブ、Thermal Velocity Boost等のOC機能を組み合わせると、Cinebench R23のような高負荷なマルチスレッド性能はそのままに低電圧化で消費電力やCPU温度は大幅に下げ、同時にP-Coreの単コア最大ブーストクロックをOCしてシングルスレッド性能を伸ばすことができます。

さらにPCゲームのような軽い負荷であれば、P-Core Allの動作倍率を引き上げることでゲーム性能も向上も狙えます。
例えばBy Core Usage倍率による全コア最大動作倍率を57倍に引き上げ、Thermal Velocity Boostによって8コア負荷時にCPU温度 80度以上でコア倍率 -2倍の制限をかけるとCinebench R23のような高負荷ではP-Core All 5.5GHz動作となりますが、ゲーム中はP-Core All 5.7GHzにするような運用が可能です。

なぜBy Core Usage倍率を使用するのか前置きの説明が長くなりましたが、Core Ultra 200SシリーズCPUとZ890マザーボードにおけるOC設定に話を戻します。
「ASRock Z890 Nova WiFi」の場合は、CPU P-Core Ratioという項目のプルダウンメニューから、P-Core動作倍率の設定としてBy Core Usage(コア毎)を選択できます。
By Core Usage倍率の設定値は[58, 58, 57, 56, 56, 56, 55, 55]のようにバラけさせることも可能ですが後ほど電圧設定が面倒になります。
[58, 58, 56, 56, 56, 56, 56, 56]のように後述のTBM3.0で優先可能な2コアだけ単コア最大ブーストクロックを引き上げ、残りは同じ倍率に揃えるのがオススメです。


Intel Core Ultra 200Sシリーズのうち、Core Ultra 9/7のP-Coreは「Intel Turbo Boost Max 3.0 Technology (TBM3.0)」に対応しています。
TBM3.0は、CPUダイ上で最も電圧特性の良いコア(CPU個体ごとに異なる)を自動で選別し、非常に高い単コア最大ブーストクロックで動作させ、アクティブタスクへ優先的に割り当ててくれる機能です。

電圧特性が優良なコアは、Windows上で使用できるIntel公式のOCツール Extreme Tuning Utility (XTU)から確認が可能です。優良コアには星マーク(☆)が付いています。

P-Core別の最大動作倍率(Performance Core Specific Ratio Limit)は定格では上のXTUのスクリーンショットのように優良コアとその他で分けて設定されています。
TBM3.0によるタスク割り当てに非対応の場合、1~2コアを使用する少アクティブコアなタスクが最大5.8GHzの優良コアに割り当てられるか、最大5.5GHzのその他に割り当てられるかは完全にランダムとなり、性能にブレが生じます。
Intel Core Ultra 200SシリーズのうちCore Ultra 9/7はTBM3.0により少アクティブコアなタスクは優良コアが優先されるので、非優良コアの最大動作倍率(電圧特性)に引っ張られることなく、優良コアへより高い単コア最大ブーストクロックが適用することで、安定して性能を向上させることができます。
また、手動OCによってBy Core Usage倍率で設定する単コア最大ブーストクロックを定格よりも引き上げると、一般的にマザーボードBIOSの多くは全てのP-Coreの最大動作倍率をその値へ一律に引き上げます。
当然、優良コアとその他では安定動作できる最大動作倍率は異なるので、By Core Usage倍率を定格よりも引き上げる場合は、P-Core別の最大動作倍率も適切に設定する必要があります。
P-Core別の最大動作倍率を設定するには、Performance Core Ratioの下にあるSpecific Performance Coreの項目を開きます。
優良コアの最大動作倍率(Performance Core〇 Specific Ratio Limit)だけ単コア最大ブーストクロックに一致させます。
優良コアはWindows OS上のアプリケーション XTUを使用すれば確実に確認できますし、マザーボードメーカーにも依りますが、ASRock製の場合は定格の最大動作倍率が表示されるので、その数値が他よりも高いコアが優良コアです
その他のコアはBy Core Usage倍率のAll Core倍率に一致させればOKです。面倒でなければ、CPU個別のOC耐性に合わせて各自で個別に設定してください。

実のところ、By Core Usage倍率やSpecific Ratio Limitに関する設定は第13/14世代CPUと同じですが、Intel Core Ultra 200Sシリーズで新たに導入された機能「Granular Ratio」があります。
従来のIntel製CPUはベースクロック 100MHzに対して整数倍で、つまり100MHz単位で動作クロックが制御されていましたが、Intel Core Ultra 200Sシリーズでは16.67MHz単位というより細かな制御に対応しています。

16.67MHz単位でコアクロックを制御するGranular Ratioはそれだけ細かい制御を可能とする電力制御による省電力性能の向上だけでなく、性能面やOCにおいてもCPU電圧特性の限界まで高クロックを追求し、CPUのポテンシャルを最大限に発揮できるというメリットがあります。
Granular Ratioは『Specific Ratio Limitによる整数倍の最大コア倍率に対して、16.67MHz単位でさらにネガティブ倍率を加算する』という形で動作します。
例えば、Granular Ratioで57.34GHzに最大動作倍率を設定したい場合、Specific Ratio Limit自体は端数切り上げ58倍として、Granular Ratioの倍率を4倍にします。
後述のAdditional Turbo Mode Voltageの参照値となる最大動作倍率はSpecific Ratio Limitのほうになるので注意してください。

以上が高性能P-Coreの動作倍率設定ですが、高効率E-Coreも動作倍率の設定フォーマット自体は同じです。
Windows OSと協調するIntel Thread Directorで優先すべきタスクはP-Coreに割り当てられ、E-Coreの主な役割は、マルチスレッド性能を引き上げる補助コア、もしくは優先度の低いタスクのバックグラウンド処理用コアです。
E-Coreもアクティブコア数に応じたBy Core Usage倍率は設定が可能ですが、少ないアクティブコア数の時にブーストさせる意味があまりないので、OC設定を簡略化させる意味で、E-CoreはSync All Coreで一律に動作倍率を設定してしまうのがオススメです。

前述の通り、Sync All Coreで一律に設定するのがオススメですが、E-Coreは4コア1組のクラスターとして個別に動作倍率や動作電圧を設定することも可能です。P-Core同様に16.67MHz単位のGranular Ratioにも対応しています。

VFカーブOC電圧設定や電力制限について
続いて電圧設定について説明していきます。CPUには個体差がありますが、電圧特性に応じたCPUコア電圧とコアクロック(周波数)の比例関係を指定するV-Fカーブがそれぞれ収録されています。
CPUコア電圧モードを分類すると、まず定格モードがあり、定格のV-Fカーブに対して、周波数に依らず一定の昇圧or降圧を行うオフセットモード、さらに周波数に依らず一定の電圧を適用するオーバーライド(マニュアル)モードがあります。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUをBy Core Usage倍率でオーバークロックする時に使用するのがアダプティブモードです。
一例としてCore Ultra 9 285Kでは最小動作倍率800MHzから最大動作倍率5700MHz(a頂点)までのV-Fカーブが定格モードとして収録されています。
最大動作倍率を6000MHzにOCした時にV-Fカーブがどうなるかというと、5700MHz~6000MHzの間にはV-Fカーブがないので、Additional Turbo Mode Voltage(Adaptive Voltage Override)という電圧値を設定することで、OC最大倍率に対するb頂点が決まります。a頂点とb頂点の間は自動的に補間されます。

Intel第13/14世代CPUにおいてCPUコア(P-CoreとE-Coreの両方)とキャッシュ(Ring、L3キャッシュ)は全てGlobal Core SVID Voltageによって電力供給され、単一のV-Fカーブで動作していました。
Intel第13/14世代CPUにもSpecific Performance/Efficient Coreの項目から個別に電圧を設定できたので紛らわしかったのですが、この個別コア電圧設定で動作するのは、そのコアだけがアクティブな状態の時に限定されます。

第13/14世代CPUと大きく異なる点として、Intel Core Ultra 200SシリーズCPUにはDLVR(Digital Linear Voltage Regulator; デジタルリニア電圧レギュレータ)呼ばれるCPU内蔵VRが搭載されています。個別P-Core 、個別E-Core Cluster、iGPU、SoCにはそれぞれ専用のDLVRがあります。
Core i9 Ultra 285Kの場合、8個のP-Coreと4個のE-Core Clusterにはそれぞれ専用のDLVRがあり、マザーボードVRMから供給されるVccIA電圧を共通のソースとして、SVIDプロトコルによってリクエストされた電圧を各DLVRが対応するコアへ供給します。

Intel Core Ultra 200SシリーズCPUと800シリーズ マザーボード環境では、DLVR介して各コンポーネントに電圧を供給するRegulation Modeが既定設定です。ASRock製マザーボードの場合は「Global DLVR RFI Mitigation Control」で切り替えが可能です。
DLVRを素通ししてMB VRMから直接電圧供給するPower Gate Modeもありますが、LN2極冷OCのような特殊なOC用なので無視してOKです。

ASRock製マザーボードにおいて、CPU DLVR設定の項目を開いて一番上に表示される”CPUコア/キャッシュ電圧”はMB VRMからDLVRに供給される電圧 VccIAなので、基本的にここも触る必要はありません。

「ASRock Z890 Nova WiFi」ではCore Voltage ModeからAdaptive Modeを選択することで、P-CoreのAdditional Turbo Mode Voltageを設定できます。
Efficient Core、Ringなど各コンポーネントに対してDLVR Voltageの設定項目があり、Intel Core Ultra 200SシリーズCPUでは全てを個別に設定できます。

上のようにAdditional Turbo Mode Voltageを設定すると、全てのP-Coreに対して一律で同じAdditional Turbo Mode Voltageが適用されますが、Core Selection ModeをPer-Coreにすると、各P-Coreに対して異なるAdditional Turbo Mode Voltageを設定することも可能です。
ただし、「ASRock Z890 Nova WiFi」では2025年1月最新のBIOS:2.20において個別コアに対する電圧設定と後述のVFカーブ低電圧化を併用できません。

以上で基準となるV-Fカーブが決まったので、続いてV-Fカーブによる低電圧化を行います。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUではV-Fカーブ(動作周波数と動作電圧の関係)を細かく調整できます。P-Coreだけでなく、E-CoreについてもVFカーブの設定が追加されていますが、「ASRock Z890 Nova WiFi」はBIOS:2.20においてP-Core/E-Coreの個別設定には非対応です。
「ASRock Z890 Nova WiFi」ではV-Fカーブを調整するには、VF Offset Modeを初期設定のLegacyからSlectionに切り替えます。

VF Offset ModeをSlectionに切り替えると、CPU個体毎に異なる各周波数のストック電圧に対して+/-のオフセット電圧を設定できます。
Core Ultra 9 285Kの場合は800MHz、2000MHz、3000MHz、4800MHz、5300MHz、5500MHz、5600MHz、5700MHzに対してmV単位でコア電圧オフセット値を指定できます。
初期状態では非表示ですが、By Core Usage/Specific Ratio Limitで定格よりも高い動作倍率を設定している場合、9番目が追加で表示され、OC最大倍率のV-Fポイントになります。

ASRock製マザーボードでは電力制限や電流制限に関する設定はOCツールタブのCPU設定の中に配置されています。
By Core Usage倍率でオーバークロックを行う場合は、IccMaxを定格設定値よりも引き上げてください。電力制限や臨界温度と同様、高負荷時にコアクロック低下の原因になります。
MB初期設定でIccMaxもCPU定格値を適用する理由にもなった第13/14世代CPUにおける動作不安定性問題はCPUマイクロコードバグによる過剰電圧が原因だったので、Intel Core Ultra 200SシリーズCPUでOCする場合はCPU Core Unlimited Current Limitの設定から無制限にしても特に問題ないと思います。
とはいえ無制限にするのが気になる人は、CPUコア電流制限で特定値を指定できるので、定格設定値と見比べてIccMaxがマルチスレッド負荷時のボトルネックにならない数値を設定してください。

By Core Usage倍率によるオーバークロックで全コア最大動作倍率も引き上げている場合は、電力制限や臨界温度を使用して、高負荷時のCPUコアクロックに制限をかけ、CPU温度や消費電力を下げます。
CPU電力詳細設定には「瞬間許容電力制限値(Short Duration Power Limit、PL2)」、「許容電力上限値(Long Duration Power Limit、PL1)」という2つの電力制限機能があり、電力制限がかかる閾値(単位はW)と電力制限がかかるまでの時間を設定できます。
電力制限がかかるとCPU Package Powerがその指定電力内に収まるようにコアクロックに制限がかかります。


CPU温度が一定以上(臨界温度, Tj Max)に達した時にCPUコアクロックを下げる、所謂、サーマルスロットリングが発生する閾値を指定するのがCPU Tj Maxです。
Tj MaxはIntel Core Ultra 200SシリーズCPUでは一般的に105度に設定されています。基本的には上記のPL1/PL2の電力制限でCPUクーラーの性能に応じたコアクロック制限をかけ、Tj MaxはCPUクーラーに故障が発生した時のセーフティ的な使い方オススメです。

「ASRock Z890 Nova WiFi」はThermal Velocity Boostの設定に対応しています。
Thermal Velocity Boostはコアクロックを上昇させる機能のような名前ですが、実際には、By Core Usage倍率に対して、TVB Ratio Clippingという設定によってCPU温度が閾値以上の時に動作倍率を-1倍など設定値に応じて引き下げます。
一定温度以下であれば非常に高い単コア最大ブーストクロックが動作するコアがある、ゲーム(低温)とクリエイティブタスク(高温)で全コア最大動作倍率をそもそも切り替えたい、という時に使用する機能です。
OC TVBをy有効に変更することで、OC TVB Parametersという項目が表示され、Thermal Velocity Boostの設定値を任意に変更できるようになります。
Thermal Velocity Boostによる動作倍率制御方法として、アクティブコア数に対して設定するPer P-Core Groupに加えて、Intel Core Ultra 200SシリーズCPUでは新たに、P-Core個別に設定するPer CPP Moduleが追加されています。Bothを選択すれば両方とも設定できます。


Per P-Core GroupとPer CPP ModuleのどちらのTVB制御モードもアクティブコア数/各P-Coreに対して閾値温度/ネガティブオフセット倍率のセットを2種類ずつ設定できます。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPU特有の注意点として閾値温度は設定値よりも5度高い温度になるようです。55度で設定した場合、60度以上で設定したネガティブオフセット倍率が適用されます。
なお閾値温度が参照する温度はCPU Package全体の温度ではなく、Per P-Core GroupとPer CPP ModuleのどちらでもP-Core個別の温度とのこと。


Intel Core Ultra 200SシリーズCPUは高効率コアE-Coreがアーキテクチャ上、AVX-512に対応していないので、P-Coreも含めたCPU全体としてもAVX-512に非対応です。
元々は発熱が非常に大きいAVX-512に対応するために用意されていた設定ですが、「ASRock Z890 Nova WiFi」でもAVX2実行時の発熱を低減する方法として、従来の倍率動作オフセットに加えて、Voltage Guardband Scaleと呼ばれる電力制限に近い機能を使用できます。


CPU DLVR 設定にはロードラインキャリブレーションの設定も配置されています。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUはMB VRMとCPUコアの間にDLVRがありますし、最近のCPUはストック状態で限界近くまでチューニングされているので、LN2極冷等の極端なOCでもない限り、Auto設定のまま放置で良いと思います。
一応少し補足すると、ロードラインキャリブレーションはCPU負荷時の電圧降下を補正してOCを安定させる機能です。
補正の強度としてLevel 〇で何段階か用意されています。Levelの添え字の数字が大きくなるほど電圧降下の補正は強くなり、OCは安定しやすくなりますが発熱も大きくなります。また強い補正では瞬間的に電圧のスパイクも生じるのでCPUにダメージが蓄積しやすいです。手動で設定する場合は真ん中あたりから始めて安定する設定値を模索していくのがおすすめです。

メモリのオーバークロックについて
メモリのオーバークロックについても簡単に紹介しておきます。メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。
そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
なお、 メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありません。メモリ設定を初期化できるようにCMOSクリアの手順を事前に確認しておいてください。
Intel XMPやAMD EXPOのOCプロファイルによるメモリOCは上の手順によるOC選別をメーカー側がすでに行い動作確認をしているので、メーカーが動作確認を行ったOCプロファイルを適用するだけで簡単にメモリをオーバークロックできます。
「ASRock Z890 Nova WiFi」はIntel環境に最適化されたXMP対応メモリだけでなく、AMD EXPO対応メモリのどちらでもOCプロファイルによるメモリOCが可能です。
ASRock製マザーボードには、メモリに収録されたAMD EXPOプロファイルからIntel製CPU環境でも使用可能なメモリOCプロファイルを自動生成する機能があるので、AMD EXPO対応メモリも使用できます。
OCツールタブのDRAM設定に配置されている”XMP設定の読み込み”から適用したいOCプロファイルを選択することで、OCプロファイルによるメモリOC設定の適用が可能です。


メモリ周波数は「DRAM周波数(DRAM Frequency)」という項目のプルダウンメニューから動作クロック(倍率)を任意に設定可能です。メモリ周波数もBCLKに対する倍率で動作周波数が決まります。
XMP/EXPOを使用せず、「DRAM Frequency」の設定値が自動(Auto)になっている場合は、使用するメモリにSPD情報として収録されている動作クロック4800MHz、5600MHzなどのメモリ周波数およびタイミングによる定格動作となります。

Intel Core Ultra 200SシリーズCPUは動作周波数が高速なDDR5メモリだけをサポートするので、そのメモリコントローラー周波数(IMC周波数)は、メモリ周波数に対して1:2同期のGear2(メモリ周波数が6400MHzならメモコンは3200MHz)、1:4同期のGear4(メモコンが1600MHz)という2つの動作モードがあります。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUはIMCのOC耐性個体差にも依りますが、メモリ周波数 8400MHzくらいまでは1:2同期でも動作するようです。

メモリタイミングの個別打ち込み設定も可能です。
メモリタイミングを手動で設定する場合、基本的にはOCメモリ製品のスペックとして公表されることの多い、「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS Read/Write (tRCD)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な4タイミング以外はAutoのままでいいと思います。
以前は「Command Rate:1 or 2」と「Refresh Cycle Time (tRFC)」も手動で調整することもありましたが、XMP/EXPOなどOCプロファイルをベースにするなら、これもAutoのままでOKです。

高メモリクロックのOC時にWindowsの起動や軽い動作までは安定するものの、メモリストレステストでエラーが出る程度の状態であれば、「Write Recovery Time (tWR)」や「CAS Write Latency (tCWL)」をいくつか引き上げることで安定する可能性があります。

メモリOCで調整するサブタイミングにおいて「Refresh Interval (tREFi)」だけは数字が大きいほどメモリ動作が高速・低遅延になります。またtREFiはメモリ温度によるメモリエラー発生にも影響の大きい設定値です。
tREFiの設定値は『256×整数値 - 1』がよく使用されます。例えば256*128-1=32767は低遅延な反面、メモリ温度にシビアです。256*32-1=8191は速度はそこそこですが、温度に対して耐性が高い設定という感じです。
OCプロファイル適用時の自動設定についても、ベンチマークスコア重視で25000~32000程度だったり、安定性重視で6000~8000程度だったり、MBメーカーやモデルによってまちまちです。

メモリ電圧が1.300~1.400V程度の一般的な常用メモリOCであれば60~80mm径のファンで風を当ててやるだけでメモリ温度を50度前半かそれ以下に抑えることが可能です。
メモリ温度が60~70度を超えて発生する温度原因のメモリエラーについてはメモリ設定を調整するよりもスポットクーラーを増設して温度を下げる対策のほうが手っ取り早く楽なのでオススメです。
ただ8000MHz超のハイクロックかつ1.450V以上の高電圧の場合はファンを使っても十分に冷やすのが難しく、55度~60度に冷やしても温度原因でエラーが生じる可能性があります。その場合は、tREFiをAuto設定の設定値から引き下げる形で微調整をしてみてください。

メモリの周波数OCを行う際は「DRAM電圧(DRAM VDD Voltage)」の項目を昇圧します。
DDR5メモリに対応したマザーボードでメモリ周波数を6000MHz以上にOCする場合はメモリ電圧を1.300~1.400Vに盛ってください。メモリをOCする場合は最初から1.350V以上にDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。

加えてメモリ周波数やIMC周波数をOCする時に調整した方がいい電圧設定として、DDR5メモリ対応マザーボードの場合は「VCCSA(CPU System Agent Voltage)」、「DRAM VDDQ(DRAM VDDQ Voltage)」、「CPU VDD2(Memory Controller Voltage)」の3つを調整すると良いようです。
DRAM VDDQとCPU VDD2は簡単にDRAM VDDと揃えればOKです。

その他のOC設定やTipsについて
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUやZ890マザーボード環境における、その他のOC設定やTipsについていくつか紹介しておきます。Windows OS上でCPUのOC設定が正常に適用されているか確認する方法として、Intel純正アプリケーション Extreme Tuning Utility (XTU)を使用する人は多いと思います。

Intel Core Ultra 200SシリーズCPUとWindows 11 24H2など最新Windows環境ではVBS(Virtualization Based Security;仮想化ベースのセキュリティ)が標準で有効になるようで、特定の条件を満たさないとXTUがそもそも起動できません。
なおよく言及される設定として、Windows設定のデバイス セキュリティ内にある、コア分離、メモリの整合性をオフにしても、VBSそのものは無効にならず、下の状態ではXTUを起動できません。

『Windowsアップデートを最新にする』、『BIOSを最新バージョンにアップデートする』は分かり易いのですが、最後の『Undervolt Protectionを有効にする』が不慣れなユーザーには難しいと思います。
ASRock製マザーボードの場合、CPU設定の下の方にUndervolt Protectionが配置されています。

Power Delivery Profileで定格動作プロファイルが適用されていれば、通常、Undervolt Protectionは有効になっていると思いますが、XMPのメモリOC等で勝手に無効化されることもあるので、XTUを使用する人はAutoから手動で有効に切り替えておいてください。
もしくは個人がゲーム用等でPCを使う分には仮想化ベースのセキュリティが必要かというと微妙です。
アドバンスドタブのCPU設定に配置されている「Intel VMX (Virtualization Technology)」を無効に切り替えるとVBSそのものを無効化できるので、自己責任にはなりますが、XTU上で低電圧設定を行いたい場合(Undervolt Protectionを無効にする必要がある)には検討してみてください。

帯域ベンチ等で効果は確認できるものの、P-Core/E-CoreのOCに比べて実用性能への影響があるかというと微妙ですが、Intel Core Ultra 200SシリーズCPUではRing(キャッシュ)、SoCタイルのD2DやNGUといったインターコネクト(fabric)類もOCの対象になっています。
キャッシュ動作倍率は「CPUキャッシュ最大動作倍率(Max CPU Cache Ratio)」から変更可能です。CPUコアクロック同様にベースクロックに対する動作倍率でキャッシュの動作周波数を設定できます。

Intel Core Ultra 200SシリーズCPUではキャッシュ用のDLVRがあるので、Ring DLVR Voltageから個別に電圧を設定できます。

Intel Core Ultra 200SシリーズCPUではSoCタイルのD2DやNGUといったインターコネクト(fabric)類もOCが可能です。
OCするとAIDA64のメモリ・キャッシュベンチマークで帯域幅の向上、遅延の低減は確認されていますが、 やはりP-Core/E-CoreやメモリそのもののOCに比べると実用的な効果はよく分からないというのが正直なところです。


Intel Core Ultra 200SシリーズCPUではD2DとNGUにも専用のDLVRがあるので、VNNAON Voltageから個別に電圧を設定できます。

「Ai Overclock Tuner」から「Manual」モードもしくは「XMP (D.O.C.P)」モードを選択するとベースクロック(BCLK)の設定項目が表示されます。
デフォルトのAutoでは100MHzに固定されていますが、設定値を直打ちすることで任意に設定が可能です。CPUコアクロックはBCLKに対する動作倍率で設定されるのでBCLK110MHz、動作倍率45倍の場合はコアクロック4.95GHz動作となります。ただしBCLKを使用したOCはかなり上級者向けなので通常はAutoか100MHzが推奨です。

メモリ、NGU、D2Dには別にSOC BCLK Frequencyという設定項目があり、CPUやキャッシュとは独立して異なるベースクロックを設定できます。

ASRock Z890 Nova WiFiの動作検証・OC耐性
BIOS周りの筆者的に気になるところの紹介はこのあたりにしてASRock Z890 Nova WiFiを使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。「ASRock Z890 Nova WiFi」にCore Ultra 9 285Kを組み込んだ場合のBIOS標準設定における動作についてですが、P-Coreは最大57倍、全8コアで54倍の動作倍率になっており、CPUコア動作倍率は仕様値通りです。
電力制限についても、「ASRock Z890 Nova WiFi」の初期設定でPL1/PL2:250W、短期間電力制限時間Tau:56s、IccMAX:347Aなので、Power Delivery Profile:Performanceの定格設定通りです。



電力制限以外にもCPU動作に大きく影響する項目についてまとめました。
Turbo Boost Max 3.0はアクティブなタスクに対して単コア最大動作倍率など最も高速に動作している(電圧特性に優れた)コアを割り当てる機能です。
Thermal Velocity Boostは閾値温度以下においてブーストクロックを引き上げる機能と説明されていますが、機能の実装としてはBy Core Usage倍率に対してTVB Ratio Clippingという設定によってCPU温度が閾値以上の時に動作倍率を-1倍に(正確にはCPU毎に設定された倍率に)引き下げるという形になっています。
AVX Voltage Guardband Scaleは該当するAVX命令実行時のコア電圧を調整する機能です。0.00~2.00の範囲内で設定し、定格設定は1.00です。1.00以下では低電圧化、1.00以上では高電圧化します。(マザーボードに依っては128を基準に0~255の整数値で設定)
低電圧化というよりもAVX実行時の電力制限(AVX限定のPL1)に近い動作なので、Scale=0.01など極端な設定でもクラッシュすることはありませんが、性能は低下するものと思われます。
ASRock Z890 Nova WiFi (BIOS:2.20, 2.19) Core Ultra 9 285Kの標準動作設定 |
||
標準設定 | 定格 | |
Power Delivery Profile |
Performance | Performance |
単コア最大倍率 | 57 | 57 |
全コア最大倍率 | 54 | 54 |
Turbo Boost Max 3.0 | On | On |
TVB Ratio Clipping | 1C: NA 2C~8C: 70℃ -1x |
1C: NA 2C~8C: 70℃ -1x |
PL1, PL2, Tau | 250, 250, 56s |
250, 250, 56s |
IccMAX | 347A |
347A |
AVX Offset | 0 | 0 |
AVX Voltage Guardband | 1.00 |
1.00 |
備考 |
特になし |
続いてASRock Z890 Nova WiFiを使用した場合のCPUとメモリのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
まずは「ASRock Z890 Nova WiFi」に24コア32スレッドCPUのCore Ultra 9 285Kを組み合わせて長時間負荷をかけ続けた時に、VRM電源周辺温度はどれくらいなのか、サーモグラフィーカメラ搭載スマートフォン CAT S62 PROを使用してチェックします。
CPUを定格で運用もしくはOC設定を適用した際のCPU温度やVRM電源温度を検証するストレステストについては、下記の動画エンコードを使用しています。
4K動画ファイル(4K解像度、60FPS、5.7GB)をソースとしてHandBrake(x264)を使ってエンコードを行います。
Core Ultra 9 285Kは24コア24スレッドのCPUなので、同じ動画のエンコードを4つ並列して実行し、30分程度負荷をかけ続けます。ストレステスト中のファン回転数は一定値に固定しています。

注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から筆者の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
まずは単純に「ASRock Z890 Nova WiFi」でIntel Default SettingsをPerformanceとして、Core Ultra 9 285Kを定格で動作させてみました。メモリOCもせず、Core Ultra 200SシリーズCPUの定格であるJEDEC準拠の6400MHzにしています。

上記の動作設定においてストレステスト中のCPU温度やCPU使用率のログは次のようになりました。
CPUクーラーにはFractal Design Celsius S36を使用し、冷却ファンNoctua NF-A12x25 PWのファン回転数は1500RPMで固定しています。
Core Ultra 9 285KはPower Delivery Profile:PerformanceでIntel公式仕様の通りに動作させた場合、電力制限はPL1/PL2:250Wですが、IccMAX:347Aの電力制限も効いてくるので、動画エンコードやCinebenchのような非常に重いマルチスレッド負荷に対してはPL1を少し下回るCPU消費電力で変化しながら推移していきます。
360サイズAIO水冷CPUクーラーのように十分に冷却性能の高いCPUクーラーを組み合わせれば、CPU定格の
電力/電流制限の範囲内なら臨界温度 105度以下で運用可能です。

電力/電流制限が効くので動画エンコードなどのフル負荷においてCPUコアクロックが全コア最大動作倍率に張り付くことはありませんが、「ASRock Z890 Nova WiFi」のVRM電源温度などマザーボード原因でスロットリングが発生することはなく、Core Ultra 9 285KをP-Core All 4.8GHz、E-Core All 4.2GHz程度の実動値で安定して動作させることができました。

なお「ASRock Z890 Nova WiFi」のBIOS:2.20(正確にはベータ版の2.20.AS03)はHandbrakeと相性が悪いのか、BIOS:2.19と比べてエンコード中のコアクロックが200MHz程度低くなりました。
他社MBでもBIOSバージョンによって発生を確認しているので、MBの問題というよりもCPUマイクロコード側の問題だと思います。
Core Ultra 200SシリーズはまだPCゲームで十分な性能が出せず、CPUマイクロコードのアップデートを進めている途中のようなので、Thread Directorとの兼ね合いもあって特定アプリで上手くコアクロックが上がらなかったりするようです。
上記の動作設定で動画エンコードを行った時のEPS電源経由のCPU消費電力は280~310W程度です。

Core Ultra 9 285Kの定格動作で負荷をかけるとEPS電源経由のCPU消費電力は250W以上に達しますが、「ASRock Z890 Nova WiFi」のVRM電源周りの温度をサーモグラフィーで確認したところ、70度前半に収まりました。
最上位CPUのCore Ultra 9 285Kは定格運用でもCPU Package Powerで250Wが許容されており、VRM電源負荷が非常に大きいCPUですが、「ASRock Z890 Nova WiFi」ならAIO水冷CPUクーラーを組み合わせた、VRM電源周りがパッシブ空冷の状態でも標準装備だけで問題なく運用できます。



続いて、Intel Core Ultra 9 285KでメモリOCと電力制限の解除を行ったケースです。
メモリOC設定については検証機材メモリ「G.Skill Trident Z5 CK F5-8400C4052G24GX2-TZ5CK」に収録されたOCプロファイルを適用し、メモリ周波数 8400MHz、メモリタイミング 40-52-52-134、メモリ電圧1.400Vです。

マザーボードメーカーはもとより、同じメーカーの別モデルでも、Intel公式のPower Delivery Profile:Performanceに対するコアクロックの挙動は5%程度(200~300MHz程度)の差があります。
またメモリOCを行うとCPUコア以外の部分の消費電力も増え、電力効率は下がる傾向なので、メモリOC時の検証では合わせて、電力制限も解除しています。
電力制限解除の設定値は、PL1/PL2:300W、IccMax:450Aです。

メモリ周波数を8400MHzにOCしていますが、動画エンコードによるストレステストは問題なく完走できています。
また電力制限についても、PL1/PL2:300Wへと引き上げていますが、定格同様にIccMAX:450Aの電力制限も効いてくるので、PL1を少し下回るCPU消費電力で変化しながら推移していきます。
360サイズAIO水冷CPUクーラーのように十分に冷却性能の高いCPUクーラーを組み合わせれば、300Wまでの負荷なら臨界温度 105度以下で運用が可能です。

PL1:300W、IccMAX:450Aでも電力/電流制限が効くので動画エンコードなどのフル負荷においてCPUコアクロックが全コア最大動作倍率に張り付くことはありませんが、「ASRock Z890 Nova WiFi」のVRM電源温度などマザーボード原因でスロットリングが発生することはありませんでした。
メモリOCをしているので電力に対するコアクロックの効率は下がりますが、それでも電力制限を解除しているので、Core Ultra 9 285Kを定格動作時よりも高い、P-Core All 5.1GHz、E-Core All 4.4GHz程度の実動値で安定して動作させることができました。

上記の動作設定で動画エンコードを行った時のEPS電源経由のCPU消費電力は320~360W程度です。

Core Ultra 9 285Kで8400MHzのメモリOCに加えて、PL1/PL2:300Wの電力制限解除を行い、フル負荷をかけるとEPS電源経由のCPU消費電力は300W前後に達しますが、「ASRock Z890 Nova WiFi」のVRM電源周りの温度をサーモグラフィーで確認したところ、70度台半ばに収まりました。
「ASRock Z890 Nova WiFi」ならAIO水冷CPUクーラーを組み合わせた、VRM電源周りがパッシブ空冷の状態でも、Core Ultra 9 285Kの常用OCに問題なく対応できます。



最後に「ASRock Z890 Nova WiFi」のメモリOC性能についてもチェックしておきます。
マザーボードのメモリOC検証についてはスポットクーラーによってメモリを冷却した状態でメモリストレステストを実行しています。
DDR5メモリにおいて6000MHz台の低レイテンシ設定や、7000~8000MHzのハイクロック設定は温度影響によるメモリエラーが結構シビアですが、温度原因のエラー対策はサブタイミングや電圧を微調整するよりもファンを1台増設するほうが手っ取り早く簡単に解消できます。さらに詳しくはメモリOCに関する解説のtREFI関連の部分で。

ゲーム用途でメモリOCを行う場合は実用的に高温になることがないので、あまり気にする必要はありませんが、動画エンコードなどシステムメモリを大量に使用するクリエイティブタスクについてはメモリ温度がメモリストレステスト的に上昇するので実用的にも対策が必要になります。
ASRock Z890 Nova WiFiの環境(BIOS:2.20)のOC検証では検証機材メモリとして24GB×2枚組み48GB容量のCUDIMM DDR5メモリキット「G.Skill Trident Z5 CK (型番:F5-8400C4052G24GX2-TZ5CK)」を使用しています。

同メモリに収録されたOCプロファイルを適用するだけで、メモリ周波数 8400MHz、メモリタイミング 36-46-46-115が安定動作しました。メモリコントローラー周波数UCLKも1:2同期です。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUと一般的なx4メモリスロットのZ890マザーボードにおいて、CUDIMM DDR5メモリでは常用最速クラスのOC設定です。

上は新たにサポートされたCUDIMMのメモリOCですが、「ASRock Z890 Nova WiFi」はDDR5メモリで一般的なUDIMMにも対応しているので、UDIMMのメモリOC結果についてもいくつかチェックしていきます。
24GB×2枚組み48GB容量のDDR5メモリキット「G.Skill Trident Z5 RGB(型番:F5-7600J3848F24GX2-TZ5RK)」に収録されたOCプロファイルによって、メモリ周波数 7600MHz、メモリタイミング 38-48-48-121が安定動作しました。
前世代Z790マザーボードではメモリスロット 2基のOC特化マザーボードでないと安定動作が難しかったスペックです。

Crucial DDR5 Pro Overclocking UDIMMシリーズの16GB×2枚組みで6400MHz OC対応モデル(型番:CP16G64C38U5B)についても検証してみました。
高性能OCメモリというとG.Skillがやはり有名で、筆者も自分のPCや各種検証機材として愛用していますが、Crucial DDR5 Pro Overclocking UDIMMシリーズはMicron純正メモリモジュール確定で高信頼性、入手性も高く、安価なので検討する人も多い製品だと思います。

16GB×2枚組み48GB容量のDDR5メモリキット「Crucial DDR5 Pro Overclocking(型番:CP16G64C38U5B)」に収録されたOCプロファイルによって、メモリ周波数 6400MHz、メモリタイミング 38-40-40-84が安定動作しました。

ASRock Z890 Nova WiFiのレビューまとめ
最後に「ASRock Z890 Nova WiFi」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、レビュー後の所感となります。良いところ
- 黒色ベースに青・赤紫グラデーションがカッコいいNovaデザイン
- 110A対応SPSで構成された堅牢な25フェーズVRM電源
- 285K定格の200W超のCPU消費電力でもVRM電源温度は70度前後に収まる
- 24GB×2枚組みDDR5 CUDIMMでメモリ周波数8400MHz/CL40が安定動作
- 24GB×2枚組みDDR5 UDIMMでメモリ周波数7600MHz/CL38が安定動作
- 重量級グラボにも耐えるメタルアーマー採用PCIEスロット
- PCIEスロットのロック解除が簡単な グラフィック カード EZリリース
- NVMe接続M.2スロットをマザーボード上に5基設置 (うち1基はPCIE5.0x4対応)
- 全てのM.2スロットに大型SSDヒートシンクを装備
- M.2 SSDを4基増設可能なPCIE拡張ボードも付属(各PCIE4.0x1帯域)
- TB4対応Type-Cポート 2基を標準搭載(iGPU経由でビデオ出力も可能)
- Killer製2.5Gb LANとRealtek製5.0Gb有線LANを標準搭載
- Wi-Fi 7&Bluetooth5.4対応無線LAN(Intel BE200)を標準搭載
- Realtek ALC4082の高性能オンボードオーディオ
- 外部温度センサー対応で多機能なファンコントロール機能
- USB BIOS FlashBackに対応
- 標準搭載のネットワーク機器のうち無線LANはWindows 11 24H2の標準ドライバに非対応
- 税込み6.1万円 (2025年1月現在)
「ASRock Z890 Nova WiFi」は最大で24コアのCore Ultra 200SシリーズCPUにも対応できる高耐久・低発熱な25フェーズVRM電源回路を搭載することに始まり、PCIE5.0対応を含む5基のM.2スロット、さらに4基を増設可能なPCIE拡張ボードが標準で付属、2基のThunderbolt4対応USB Type-Cポート、高速な5.0GbイーサやWi-Fi 7対応無線LANなど次世代高速NIC、ALC4082によるハイレゾ対応オンボードサウンドなど、ハイエンド指向なゲーマーを満足させる機能が詰め込まれたモデルです。
ASRock製マザーボードのBIOSではクラシカルなUIが採用されており、OSインストールのブート設定からオーバークロックまで多方面に使いやすいUIだと思います。管理人個人的にも好みです。
マザーボードのOC耐性を評価する上で重要なファクターになるVRM電源について、「ASRock Z890 Nova WiFi」は非常に優秀な性能を発揮しました。
「ASRock Z890 Nova WiFi」であれば市販のAIO水冷クーラーやDIY水冷など環境を選ばず、VRM電源周りは標準装備のまま、Core Ultra 9 285Kの定格設定を運用できます。
市販クーラーで冷却性能が最高クラスの360サイズAIO水冷でもCore Ultra 9 285KはCPU温度的に定格PL:250Wよりも電力を増やすのが難しく、OCの伸びしろはそれほど大きくありませんし、これで十分です。
Core Ultra 9 285Kはアウトボックス時点で絶対性能を重視した電力制限が適用されており、標準でEPS電源経由のCPU消費電力が300W前後に達しますが、その強烈なVRM電源負荷に対しても、110A対応SPSなどで構成される25フェーズの超堅牢なVRM電源回路が適切に熱を分散します。
「ASRock Z890 Nova WiFi」のVRM電源クーラーは重厚なアルミニウム塊型ヒートシンクが備え付けてあり、CPUソケットの上側/左側のヒートシンクをヒートパイプで連結するという構造です。
その他にも高性能サーマルパッドなどVRM電源クーラーの設計にこそ工夫が見られますが、あくまでパッシブ型という構造のまま、スポットクーラーの増設を必要とせずに、200W超の負荷に対してVRM電源温度を70度前後に収めることができました。
メモリOCについては、検証機材に使用しているCUDIMMのG.Skill Trident Z5 CK(F5-8400C4052G24GX2-TZ5CK)でメモリ周波数 8400MHz、一般的なUDIMMのG.Skill Trident Z5 RGB(F5-7600J3848F24GX2-TZ5RK)でメモリ周波数 7600MHzがOCプロファイルを適用するだけで安定動作しました。
入手性の高いCrucial DDR5 Pro Overclockingの6400MHz/CL38の低レイテンシOC等も安定動作しているので、現状、メモリOC回りで「ASRock Z890 Nova WiFi」に不足を感じることはないはずです。
以上、「ASRock Z890 Nova WiFi」のレビューでした。

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110A対応SPSで構成される25フェーズの超堅牢VRM電源、最大9基のNVMe M.2 SSDが増設可能なゲーミングモデル「ASRock Z890 Nova WiFi」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) January 25, 2025
Core Ultra 9 285Kや8400MHz OCメモリも安定して運用できるのか徹底検証https://t.co/puwt8YpfZY pic.twitter.com/a54Dszd8GV
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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