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GeForce RTX 3070グラフィックボードとしてELSAからリリースされた、2スロット占有2連ファンGPUクーラーを搭載したコンパクトモデル「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C(型番:GD3070-8GERS)」をレビューしていきます。
NVIDIA Ampere世代のミドルハイクラスGeForce RTX 3070が、前世代同クラスのRTX 2070 SUPERや最上位モデルRTX 2080 Tiをどの程度上回るのか、実ゲームベンチマークでグラフィック性能を徹底比較します。
製品公式ページ:https://www.elsa-jp.co.jp/products/detail/geforce-rtx-3070-sac/
ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C レビュー目次
1.ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cの外観
2.ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cの分解
3.ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cの検証機材・GPU概要
4.ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cのゲーム性能
・レイトレーシング&DLSSの性能を検証
5.ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cの温度・消費電力・ファンノイズ
6.ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cのレビューまとめ
ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cの外観
早速、「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を開封していきます。外パッケージの中には黒色段ボールの内パッケージが入っており、マニュアル類収められた紙製蓋を外すと、エアパッキン&静電防止ビニール袋で包装されたでグラフィックボード本体が現れます。
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」のグラフィックボード本体を見ていきます。
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」のGPUクーラー外装は黒色プラスチック製、装飾もなく非常にシンプルなデザインです。
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」の全長は246mmと、RTX 3070グラフィックボードの中ではコンパクトなモデルです。メーカー製PCなどグラフィックボード用スペースの限られるPCへのグラフィックボード換装にも最適です。
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」は250mm以下で短めの基板に加えて、GPUクーラーとPCB基板がPCIブラケットとほぼ同じ高さなのでサイドパネルとの干渉も心配ありません。
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」は新設計の2連ファンGPUクーラー S.A.C 4 Evolutionを搭載しており、90mm径の冷却ファンが計2基設置されています。
RTX 3070のオリファンモデルでは3スロットを占有する大型GPUクーラーを搭載したモデルが多いですが、「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」は2スロット占有に収まっています。
RTX30シリーズの上位モデルではTGPが大幅に引き上げられたのでVRM電源部分の発熱問題が再燃しそうですが、「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」は、VRAMチップとVRM電源回路をGPUコアと同様にGPUクーラーヒートシンク本体で冷やすという、理想的な構造が採用されています。
ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cはリファレンスの動作クロックと同じ設定のモデルですが、PCIE補助電源はRTX 3070オリファンモデルで一般的な8PIN×2となっています。
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」のPCIE端子と各種ビデオ出力には黒色の保護カバーが装着されています。
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」のビデオ出力はリファレンス仕様と同じくHDMI2.1×1、DisplayPort1.4×3の4基が実装されています。
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」には金属製バックプレートを搭載しています。基板の反りや破損を防止する保護プレートとしての役割に加えて、VRAMチップ背面やVRM電源回路背面との間にはサーマルパッドが貼られているので冷却補助の役割を果たします。
なおグラフィックボードの重量はZOTAC GAMING GeForce RTX 3070 Twin Edgeが793g、MSI GeForce RTX 3070 VENTUS 2X OCが830gに対して、ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cは815gでした。
ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cの分解
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を分解してGPUクーラーやグラフィックボード基板についてチェックしていきます。なお今回は自己責任で(もしくはレビュー用サンプル貸出先の協力のもと特別に許可を頂いて)分解を行っています。GPUクーラーの取り外し(分解行為)は、一部を除く多くのメーカーではグラフィックボードの正規保証の対象外になる行為です。今回はレビューのために分解していますが、繰り返しますが保証対象外になるので基本的には非推奨の行為なのでご注意下さい。
ELSA GeForce RTX 3070 S.A.CのGPUクーラーは基板裏面のコア周辺4カ所と、バックプレート上の6か所の計10個のネジによって固定されていました。
10カ所のネジを外すとGPUクーラーは容易に取り外しが可能です。さらにネジを外していくと、PCB基板から補強フレームやバックプレートも取り外しが可能です。
バックプレートとPCB基板背面の間にはVRAMチップとVRM電源回路の裏側部分にサーマルパッドが貼り付けられているので、バックプレートはそのまま放熱板としての役割も果たしています。
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」にはELSA独自設計(厳密にはOEM元のInno3D)のオリジナル基板が採用されています。
GeForce RTX 3070のGPUコアにはGA104-300-A1が使用されていました。RTX 3070 Ti以上の上位モデルとは違い、RTX 3070のVRAMはGDDR6となっており、GDDR6メモリチップはMicron、Samsung、SK Hynixが製造していますが、今回入手した「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO」にはSamsung製の8GbのGDDR6メモリチップが8枚搭載されています。
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」のVRM電源回路はGPUコアの左側に10フェーズが実装されています。この10フェーズは全てGPUコア向けで、VRAM向けのVRM電源はPCIE補助電源コネクタの下側に2フェーズが実装されています。
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」のGPUクーラー本体をチェックすると、GPUコアと接する部分はヒートパイプダイレクトタッチ構造が採用され、ベースコアからは4本の銅製ヒートパイプが伸び、アルミニウム製放熱フィンが2スロットスペース内いっぱいに展開されています。
GPUコアと接するベースコアから伸びた4本のヒートパイプによって3スロットを占有する大型放熱フィン全体へ熱を拡散します。
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」のヒートパイプダイレクトタッチ構造のコア部分については4本のヒートパイプで構成されているのですが、下の写真を見ての通り、GPUコアの両端がカバーされておらず、ヒートパイプ間のギャップも1,2mm程度と広く、少々残念な構造です。
VRAMチップやVRM電源回路はGPUクーラー放熱フィンにろう付けされたアルミニウム製プレートにサーマルパッドを介して接しており、ヒートシンク本体で直接冷却するという理想的な構造です。
ベースプレートから伸びる4本の銅製ヒートパイプによって2スロットを占有するGPUクーラー内部いっぱいにアルミ製放熱フィンが展開されています。
ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cの検証機材・GPU概要
外観やハードのチェックはこのあたりにして早速、「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を検証用の機材に組み込みました。テストベンチ機の構成は次のようになっています。テストベンチ機の構成 | ||
ベンチ機1(温度・消費電力) |
ベンチ機2(ゲーム性能) |
|
OS | Windows10 Home 64bit (1909) |
|
CPU |
Intel Core i9 9900K (レビュー) Core/Cache:5.1/4.7GHz |
Intel Core i9 10900K (レビュー) Core/Cache:5.2/4.7GHz |
M/B | ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 4000MHz, 17-17-17-37-CR2 |
G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) 4000MHz, 15-16-16-36-CR2 |
システム ストレージ |
Samsung 860 EVO M.2 1TB (レビュー) |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
データ ストレージ |
Samsung 860 QVO 4TB (レビュー) | |
CPUクーラー |
Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
|
電源 ユニット |
Corsair HX1200i (レビュー) |
|
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
ELSA GeForce RTX 3070 S.A.CのGPU概要
ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cに搭載されているGPU「GeForce RTX 3070」のスペックについて簡単に確認しておきます。「GeForce RTX 3070」はGA104-300コアが使用されておりCUDAコア数は5888、GPUコアクロックはベース1500MHz、ブースト1725MHzです。VRAMには14.0GbpsのGDDR6メモリを8GB容量搭載しています。
典型的なグラフィックボード消費電力を示すTGPは220Wに設定されており、PCIE補助電源として各社AIBモデルの多くは8PIN+6PINや8PIN×2を要求しています。
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」については、リファレンス仕様と同じくブーストクロック1725MHz、パワーリミット(TGP)もリファレンス仕様と同じく220Wです。電力制限は+9%で最大240Wまで解除が可能です。
今回の検証ではResizable BARを使用していませんが、GeForce RTX 3070搭載グラフィックボードの「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」は最初からResize-BARに対応していました。
GeForce RTX 3070グラフィックボードでは一般にメーカーが配布するvBIOSアップデートが必要ですが、2021年6月発売の同モデルでは、メーカー出荷時に対応BIOSへアップデート済みでした。
対応するプラットフォーム(CPU&MB)において、マザーボードBIOS設定からResize-BARを有効にし、最新ドライバをインストールすれば機能を有効化できます。
NVIDIA GeForce RTX 3090/3080/3070 詳細スペック比較 | ||||
GPU名 | RTX 3090 |
RTX 3080 | RTX 3070 |
RTX 2080 Ti |
GPUダイ | GA102-300 | GA102-200 | GA104-300 | TU102-300 |
製造プロセス | Samsung 8nm |
Samsung 8nm | Samsung 8nm | 12nm FinFET |
CUDAコア数 | 10496 | 8704 | 5888 | 4352 |
TMU/ROP | -/- | -/- | -/- | 272/88 |
ベースクロック | 1395MHz | 1440MHz | 1500MHz | 1350MHz |
ブーストクロック (FE) |
1695MHz | 1710MHz | 1725MHz | 1545MHz (1635MHz) |
メモリ | 24GB GDDR6X | 10GB GDDR6X | 8GB GDDR6 | 11GB GDDR6 |
バス幅 | 384-bit | 320-bit | 256-bit | 352-bit |
メモリクロック | 4875 MHz | 4750 MHz | 4000 MHz | 3500 MHz |
有効メモリクロック | 19500 MHz | 19000 MHz | 14000 MHz | 14000 MHz |
メモリ帯域 | 936 GB/s | 760 GB/s | 448 GB/s | 616 GB/s |
PCIEレーン | PCIE4.0x16 | PCIE4.0x16 | PCIE4.0x16 | PCIE3.0x16 |
マルチGPU |
NVLink SLI | - | - | NVLink SLI |
TGP(TDP) | 350W |
320W | 220W | 250W (FE:260W) |
補助電源 |
8PIN×2~ | 8PIN×2~ | 8PIN+6PIN~ | 8PIN×2~ |
対応ビデオ出力 |
DP1.4 HDMI2.1 |
DP1.4 HDMI2.1 |
DP1.4 HDMI2.1 |
DP1.4 HDMI2.0 USB Type-C |
登場時期 |
20年9月24日 |
20年9月17日 | 20年10月29日 | 18年9月 |
価格 | 1499ドル~ | 699ドル~ | 499ドル~ | 999ドル~ FE:1199ドル |
今回レビューするGeForce RTX 3070をはじめとして、GeForce RTX 30シリーズに採用されるAmpereアーキテクチャにおいて、前世代Turingと比較してスペック上のCUDAコア数が2倍に激増していることについて簡単に説明しておきます。
まず純粋に事実として、複数のCUDAコアからなるCUDAコア群のストリーミングマルチプロセッサ(Streaming Multiprocessors:SMs)の『FP32スループットがTuring世代と比較してAmpereでは2倍に向上』しています。これは間違いありません。
一度、前世代Turingを振り返ると、TuringアーキテクチャではFP32とINT32を同時に実行できる(データパスが独立に用意されている)ことがアーキテクチャとしての新しい特徴でした。Turingでは1基のSMにFP32とINTが1:1割合で実装されていました。
Turingがこのようなアーキテクチャを採用したのは、PCゲームではFP32だけでなくINT32も実行されるから、というのが理由でしたが、同時に公表されていた統計を思い出すと、ゲームによって多少変動はあるもののFP32に対してINT32はせいぜい2:1の割合でした。
であればAmpereでは2つのデータパスのうち、INT32用のデータパス上にINT32の実行ユニットだけでなくFP32の実行ユニットも乗せれば、FP32とINT32の割合が現実に即した理想的な比率になり、省スペースに実装もできるというのは理にかなった話だと思いました。(下はSMの1/4を抜粋)
従来では『CUDAコア数 = FP32実行ユニットの数』とカウントしていたので、同じく単純にFP32実行ユニットの数をカウントするとAmpereアーキテクチャのGeForce RTX 30シリーズでは、CUDAコア数が2倍に爆増します。確かに1クロックで同時に実行できるFP32の最大数は2倍になったのですが、即ちCUDAコア数が2倍になったとカウントするのかというとやや疑問も残ります。
GTX700からRTX2000まで4世代ほどは、『CUDAコア数の増加による比例』×『コアクロックの上昇やアーキテクチャ改良による性能向上』が次世代GPUの性能指標だったので、GTX10からRTX20でCUDAコア数が2倍であれば実際の性能は2倍以上ですが、RTX20からRTX30ではCUDAコア数が2倍になっても実際の性能は2倍以下なのでどうしても違和感が残ります。
ともあれPCゲームを含め実際のアプリケーションではINT32も使用されるので、実性能を見るとGeForce RTX 30シリーズはCUDAコア数に比例して単純に2倍の性能にはならず、INT32/FP32混合データパスの使用状態に応じて、性能の伸び幅(Performance gains)が変動します。
ただFP32など一般的なシェーダーだけでなく、レイトレーシング用コアやテンサーコアも新世代へアップグレードされているので、レイトレーシング表現やDLSSに対応したPCゲームであればRTX20に対して2倍に迫る性能も発揮できるようです。
またGeForce RTX 30シリーズの諸機能について、前世代RTX 20シリーズとの大きな違いとして、8K/60FPS映像を取り扱えるHDMI2.1に対応し、それに伴ってハードウェアデコーダのNVDecが第5世代にアップデートしています。第5世代NVDecでは、8Kなど超高解像度映像に使用されるAV1コーデックのデコードに対応しています。
ゲーム実況などリアルタイム配信・録画において好評を博したNVEncについてはRTX 20シリーズと同じく第7世代が採用されています。
ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cのゲーム性能
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」の性能を測るべく各種ベンチマークを実行しました。性能比較には「GeForce RTX 3060 Ti」、「GeForce RTX 3060」、「Radeon RX 6700 XT」、「GeForce RTX 2080 Ti Founders Edition」、「GeForce RTX 2080 SUPER」、「GeForce RTX 2070 SUPER」を使用しています。(特定のモデルや型番を指名していない場合、各GPUメーカーのリファレンスモデルもしくはリファレンス仕様のオリファンモデルです)
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkで現在主流なDirectX11のベンチマーク「FireStrike」による比較になります。
FireStrike | Extreme | Ultra | |
RTX 3070 ELSA S.A.C. |
33089 | 16156 | 8223 |
RTX 3060 Ti | 29369 | 14298 | 7200 |
RTX 3060 |
21970 | 10337 | 5054 |
RX 6700 XT |
35299 | 17136 | 8404 |
RTX 2080 Ti FE |
34955 | 16797 | 8179 |
RTX 2080 SUPER |
29145 | 13866 | 6800 |
RTX 2070 SUPER |
26161 | 12475 | 6097 |
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkのDirectX12ベンチマーク「TimeSpy」、およびレイトレーシング対応ベンチマーク「Port Royal」による性能比較となります。
TimeSpy | Extreme | Port Royal |
|
RTX 3070 ELSA S.A.C. |
12944 | 6401 | 7981 |
RTX 3060 Ti | 11668 | 5679 | 6861 |
RTX 3060 | 8755 | 4126 | 5105 |
RX 6700 XT |
11831 | 5491 | 5815 |
RTX 2080 Ti FE |
14309 | 6813 | 8839 |
RTX 2080 SUPER |
11696 | 5412 | 7032 |
RTX 2070 SUPER | 10232 | 4788 | 6095 |
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を含めた各グラフィックボードについて、近年普及しつつあるHTC VIVE Pro 2やValve Index、Oculus Quest 2のPCモードなどVR HMDを使用したVRゲームに関する性能を測定する最新ベンチマーク「VRMark」による性能比較となります。
Orange Room |
Cyan Room |
Blue Room |
|
RTX 3070 ELSA S.A.C. |
16078 | 12857 | 3944 |
RTX 3060 Ti | 15668 | 10955 | 3508 |
RTX 3060 | 11861 | 9190 | 2604 |
RX 6700 XT |
14455 | 12871 | 3366 |
RTX 2080 Ti FE |
15938 | 13994 | 4675 |
RTX 2080 SUPER |
15532 | 11080 | 3755 |
RTX 2070 SUPER | 15010 | 9861 | 3316 |
続いて近年最新のPCゲームを実際に用いたベンチマークになります。同一のグラフィック設定で同一のシーンについてフルHD(1920×1080)とWQHD(2560×1440)の2種類の解像度で平均FPSを比較しました。
ベンチマーク測定を行ったゲームタイトルは、Anthem(ウルトラ設定プリセット)、Assassin's Creed Odyssey(最高設定プリセット)、Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12)、CONTROL(高設定プリセット, DirectX12, AMD製GPUはDirectX11)、DEATH STRANDING(最高設定プリセット, TAA)、The Division 2(ウルトラ設定プリセット, DirectX11)、Final Fantasy XV(最高設定プリセット, NVIDIA GameWorksはVXAOを除き有効)、Gears 5(最高設定プリセット)、Ghost Recon Breakpoint(ウルトラ設定プリセット)、Horizon Zero Dawn(最高画質設定プリセット)、Marvel's Avengers(最高設定プリセット, TAA)、Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット, DirectX12)、MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット, DirectX12)、Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット, TAA, DirectX12)、Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)以上の15タイトルです。
Anthem(ウルトラ設定プリセット)に関する「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Assassin's Creed Odyssey(最高設定プリセット)に関する「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
CONTROL(高設定プリセット, DirectX12, AMD製GPUはDirectX11)に関する「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
DEATH STRANDING(最高設定プリセット, TAA)に関する「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
The Division 2(ウルトラ設定プリセット, DirectX11)に関する「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Final Fantasy XV(最高設定プリセット、NVIDIA GameWorksはVXAOを除き有効)に関する「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Gears 5(最高設定プリセット)に関する「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Ghost Recon Breakpoint(ウルトラ設定プリセット)に関する「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Horizon Zero Dawn(最高設定プリセット)に関する「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Marvel's Avengers(最高画質設定プリセット, TAA)に関する「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット, DirectX12)に関する「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット, TAA, DirectX12)に関する「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)に関する「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cなど7種類のGPUについて実ゲーム性能の比率の平均を出してみたところ、ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cは、前世代同クラスのアップデートモデルであるGeForce RTX 2070 SUPERよりも30%程度高い性能を発揮し、前世代最上位モデルであるGeForce RTX 2080 Tiと比較しても同等の性能を実現しています。
ちょうど2年前に発売された無印版GeForce RTX 2070と比較すると平均で40%、ベストケースでは50%以上の性能向上を果たしており、同ナンバリングの性能の伸び幅としては類を見ない、まさに”飛躍”という表現がピッタリな性能向上です。
RTX 2080 Tiとの比較に関していくつか補足しておくと、リファレンス仕様のRTX 3070の場合、GeForce RTX 2080 Tiにはパワーリミット+10WなファクトリーOCが施されたFounders Editionなので僅かに劣る傾向がありますが、ファクトリーOCモデル同士で比較すれば、フルHDやWQHDであればRTX 3070が僅かながら上回る可能性が高いです。
一方で4K解像度についてはVRAMの使用量次第です。今回の検証タイトルでもFinal Fantasy XVやMiddle-Earth: Shadow of Warは最高画質設定において影関連でVRAMを非常に大きく使うので差が開いてしまいます。画質設定を多少下げてVRAM使用量が8GBを十分下回る条件であれば、4K解像度でもRTX 3070はRTX 2080 Tiと同等の性能を発揮できます。
レイトレーシング&DLSSの性能を検証
上では一般的なPCゲーミングシーンにおける「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」の性能を比較検証してきましたが、ここからはGeForce RTX 30シリーズの大きな特徴である、前世代GeForce RTX 20シリーズよりも改良された、レイトレーシング表現やDLSSの性能をチェックしていきます。なおレイトレーシング表現の性能やDLSSの性能についてはGeForce RTX 3070リファレンス仕様の性能検証の結果を引用する形で紹介していきます。
最初に、レイトレーシング表現やDLSSについて簡単に紹介しておきます。
まず、レイトレーシング(Raytracing)表現では、照明や光源(エリアライト)や太陽光(グローバルイルミネーション)の影響を厳密に再現し、光の反射や透過も現実に即して忠実に描写されます。
レイトレーシングを採用したわかりやすい例としては鏡に映る反射など、視覚(視点から見た)の外にある物体もリアルに描画することができます。小さい光源や太陽光などが生み出す影が現実に対して忠実に再現されるので、画面の中に引き込まれるような奥行き、陰影を感じる映像が生まれます。
なお高画質機能「Raytracing(レイトレーシング)」はMicrosoftが提供するAPI「DirectX 12」に内包される「DirectX Raytracing」(DXR)を使用したレンダリング機能となっており、後述のDLSSと違ってNVIDIA独自技術というわけではなく、AMD製グラフィックボード、PS5やXbox Series S/Xといったコンソールゲーム機にも互換性のある機能です。
下はPS5のMarvel's Spider-Man Remasteredでレイトレーシング表現のオン/オフを比較したものですが、オフでは鏡面になっている窓ガラスにスパイダーマンの身体の鏡像がないだけでなく、風景の反射も反対側と比較してデタラメなのが一目瞭然です。
次に、「NVIDIA DLSS」は”Deep Learning Super Sampling”の頭文字を取った略称となっており、その名の通り、近年流行りのディープラーニングによって高画質化(超解像化)する機能で、AIレンダリングの名前でもアピールされています。
DLSSが具体的にどのように動作するか簡単に説明すると、フルHD~WQHDのリアルタイムレンダリングソースから4K映像を生み出すDLSSの原型があります。このDLSSの原型が作り出した4K映像を、16Kなど現実的にはリアルタイムでのレンダリングが難しい超々高解像度のレンダリング結果と比較し、DLSSの原型の改良版1をNVIDIAの専用サーバーが作ります。
DLSSの原型の改良版1で再び4K映像を生み出し、16Kレンダリング結果と比較して、DLSSの原型の改良版2を生み出す……、というプロセスを何万回も繰り返すことで、ユーザーに提供される汎用の、もしくは個別ゲームタイトルに特化した専用のDLSSプロファイルが出来上がります。
GeForce RTX 30シリーズの登場と共にアップデートされたDLSS2.0では最終出力解像度に対して3種類のオリジナルレンダー解像度が選択でき、4K解像度の場合は、Quality(2560×1440)、Balanced(2240×1260)、Performance(1920×1080)の3種類から選択できます。
オリジナルのレンダー解像度がフルHD~WQHDなので、DLSSによる超解像(SuperSampling)プロセスを挟むとはいえ、ネイティブに4K解像度をレンダリングするよりもフレームレートは大幅に向上します。
現在のDLSSでは16Kレンダリング結果を目標に学習が繰り返されているので、高画質アンチエイリアス技術として一般的なTAAと比較してフレームレートが大幅に向上するだけでなく、画質も改善するという一挙両得な高画質化機能になっています。
以上のレイトレーシング表現やDLSSに対して、GeForce RTX 30シリーズでは通常のレンダリングに使用するCUDAコアとは別に専用コアを搭載しており、アップグレードされた第2世代レイトレーシングコアと第3世代テンサーコアによって、専用コアを搭載しない旧式GPUはもちろん、従来のGeForce RTX 20シリーズと比較してもさらに高い性能を発揮することが可能になっています。
前置きが長くなりましたが、本題のレイトレーシング表現やDLSSの性能をチェックしていきます。
まずはGeForce RTX 2080 Ti、GeForce RTX 2080 SUPER、GeForce RTX 2070 SUPERを比較対象にして、GeForce RTX 3070のレイトレーシング性能をチェックします。
解像度は4K(3840×2160)とし、検証するゲームはBattlefield V (最高設定プリセット、RTX:ON)、Control(高設定プリセット、RTX:High)、Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット、RTX:Ultra)、Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット、RTX:Max)の4種類です。
上で検証した一般的なゲーミングシーンにおけるRTX 2070 SUPERに対するRTX 3070のパフォーマンスゲインは30%程度でしたが、レイトレーシング表現を有効にすると改良されたレイトレーシングコアのおかげもあって平均で50%程度、ベストケースでは60%に引き上がります。
一方で、レイトレーシング表現に使用される専用コアRT CoreはRTX 3070では第2世代にアップグレードされているので、通常のPCゲーミングで同等の性能を発揮するRTX 2080 Tiと比較した場合、レイトレーシング表現有効下では10%程度上回るのでは?と期待していたのですが良い結果は得られませんでした。
なおControlについてはRTX 3070とRTX 2070 SUPERではテクスチャが正常に貼られない現象が発生しており(RTX 2080 Tiは正常)、4K解像度においてはDLSS併用が必須というのが実状です。
続いて上で検証したレイトレーシング対応の4タイトルについて、レイトレーシング表現とDLSS(2.0)を併用した時の性能をチェックします。
解像度は4K(3840×2160)とし、当然ですがDLSS以外のグラフィック設定(DLSS有効で排他になるものを除く)は上の検証と共通です。
DLSSの設定はDLSS2.0に対応していてQuality、Balanced、Performanceの3つのプリセットを選択できる場合、4K出力時のオリジナルのレンダー解像度が2560×1440になるQuality設定を選択しています。
レイトレーシングコアとテンサーコアが改良されたGeForce RTX 3070でもDLSSを併用したレイトレーシング表現で最高画質設定のまま4K解像度/60FPSをキープするのは流石に難しいですが、最高画質設定で50FPS程度は出ているので画質設定を多少下げれば60FPSも狙えそうです。
ちなみにRTX 3070は解像度をWQHDに下げるとネイティブでもレイトレーシング表現で60FPSに近いパフォーマンスを発揮できます。
DLSSを併用すればレイトレーシング表現を有効にしてもGeForce RTX 3070は80FPS程度をキープすることが可能です。(BFVはWQHD解像度でのDLSSに非対応)
さらにレイトレーシング表現には非対応なゲームについても、DLSSを使用することでどれくらい性能を向上させることができるのかチェックしてみます。
解像度は4K(3840×2160)とし、検証するゲームは、Anthem、DEATH STRANDING、Final Fantasy XV、Marvel's Avengers、MONSTER HUNTER: WORLDの5種類です。DLSS以外のグラフィック設定は上の検証と共通です。
DLSSの設定はDLSS2.0に対応していてQuality、Balanced、Performanceの3つのプリセットを選択できる場合、4K出力時のオリジナルのレンダー解像度が2560×1440になるQuality設定を選択しています。
RTX 3070ではテンサーコアも第3世代にアップグレードされているので、ネイティブレンダー解像度がWQHD以下に下がり、テンサーコアによる超解像処理が加わる4K DLSSならRTX 2080 Ti越えになるのでは?と思ったのですが、こちらの結果もやはり芳しくはありません。むしろDLSSを使用することで相対的な差が広がる傾向が読み取れます。
レイトレーシング表現の対応・非対応を含めた9タイトルについて、DLSSによるGeForce RTX 3070の性能向上比率をまとめると次のグラフのようになります。
Battlefield VやControlのように最適化が優れたタイトルでは60~80%というマルチGPUクラスの性能向上が期待できます。その他のタイトルについても平均的に30~40%前後の性能向上が期待できるので、同世代で1~2ランク上のGPUと同等の性能を発揮します。性能向上に加えてTAAなど一般的なアンチエイリアスよりも高画質になるので、DLSSの普及と最適化には期待したいところです。
テンサーコアによる超解像技術DLSSについては上のようにGPUクラスやコストを超越した性能向上が得られるので今後に期待する機能なのですが、ネガティブな面を挙げておくと、DLSS有効時とDLSS無効時について、RTX 3070とRTX 2070 SUPERで比較した性能向上比率を見ての通り、オリジナルのレンダー解像度がフルHDやWQHDに下がるのでGPU別のゲインは下がる傾向があります。
ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cの温度・消費電力・ファンノイズ
ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cの負荷時のGPU温度やファンノイズや消費電力についてチェックしていきます。「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」のGPU温度とファンノイズの検証負荷としては約20分間に渡たり連続してGPUに100%近い負荷をかける3DMark TimeSpy Stress Testを使用しています。
ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cのテスト終盤におけるGPU温度は最大72度で標準的ですが、ファン回転数は2100~2200RPM程度とやや高めな数値を示しました。
ファン速度についてはファン径によってノイズレベルも変わるので一概には評価できませんが、過去にレビューしたZOTAC GAMING GeForce RTX 3070 Twin Edgeと比較するとGPU温度の差が大きく、やはり「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」はヒートパイプダイレクトタッチ構造が足を引っ張っている印象です。
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」はアイドル時にファンが停止するセミファンレス機能に対応しており、GPU温度50度前後が始動閾値、GPU温度32度前後が停止閾値でヒステリシスも採用されています。製品によっては回転数が上下してふらつくことの多い始動や停止の直前も、閾値を上下した瞬間にピタッと切り替わります。
GPUコアクロックについては「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」の仕様値ではブーストクロック1725MHzとなっていましたが、負荷テスト中の実動平均は1777MHzでした。
【備考】 AMD、NVIDIAともに最新GPUでは実動コアクロックはGPUコア個体毎に異なる内部設定のV-Fカーブが支配的になっており、加えて負荷中のGPU温度も大きく影響します。ファクトリーOCが施されたオリファンモデルの公式仕様値として公表されているブーストクロックはOC耐性選別の1つの指標にはなると思いますが、実動コアクロックの優劣においてあまりあてになりません。
これまで検証したGeForce RTX 3070グラフィックボードはリファレンス仕様のモデルでも実動平均のブーストクロックは1850MHz前後だったのですが、「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」は1770MHz程度と低く、実際のゲーム性能でもほかのRTX 3070と比較して3~5%程度低い性能でした。
MSI AfterBurnerのVoltage/Frequency Curve Editorを使用して、標準設定で1700~1900MHzの電圧区間を1900MHzにクロックアップすれば同等の性能を発揮でき、今回入手した「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」はその設定でも安定動作しました。
単純にハズレ個体だったのか、ELSAの選別が微妙なのか、LHR切り替え前の在庫放出だったの微妙な個体しかなかったのか、今回入手した「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」の実動コアクロックが微妙だった原因は、はっきりとはよくわかりませんが、最近のグラフィックボードはメーカー仕様のブーストクロックがあてにならず、個体差で3~5%くらいの性能差が出るのは困ったものです。
また実用条件に近い冷却性能の検証として、実際にPCケースへ「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を組み込み、Time Spy Extreme グラフィックテスト1を1時間に渡ってループさせてGPU温度やファン回転数がどうなるかを確認してみました。
検証機材のPCケースには「Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t」を使用しています。CPUクーラーは120サイズ簡易水冷でラジエーターを天面前方に設置、またPCケースのフロントに吸気ファンとして3基とリアに排気ファンとして1基の140mm角ケースファンをそれぞれ設置し、ファン回転数は1000RPMに固定しています。
PCケースのエアフローファンには空冷ヒートシンク、水冷ラジエーター、PCケースエアフローの全ての用途で一般的な140mmサイズファンを上回る性能を発揮する「Thermaltake TOUGHFAN 14」を使用しています。140mmサイズファン選びに迷ったらこれを買っておけば問題ない、高性能かつ高静音性なファンです。
・「Thermaltake TOUGHFAN 14」をレビュー。最強140mmファンの登場か!?
PCケースに入れた状態で長時間負荷をかけても「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」のGPUの最大温度は73度以下に収まりましが、ファン回転数は2300RPM程度に達し、ベンチ板上での測定よりも若干上昇しています。
ファン回転数は2000RPM以上とかなり高くなっていますが、ファン径は90mmと小さく、ファン数も2基なのでファンノイズ自体はそれほど大きくありません。PCケース内からもファン動作はハッキリと分かりますが、ことさら煩く感じるほどではないはずです。
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」のGPUクーラーは内排気ファンということもありPCケースの吸排気を最適化しないと冷却効率が下がるので、フロントx3/リアx1で140mmファンを設置して1000RPMで回していますが、さすがに200Wを超えるTGPなので、ベンチ板での比較的に理想な環境のままとはいきませんでした。実際にPCケースへ組み込むユーザーはPCケースの吸排気にも注意してみてください。
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」はGPU温度的にはまだ余裕があるようなので、GPU温度80度以下を目標にファン速度を手動設定した例として、ファン速度を1900RPMに固定した状態で上の1時間ストレステストと連続して10分程度負荷を掛けましたがGPU温度が80度以下に収まりました。
静音化のために手動でファン速度を下げるにしても、GPU温度が80度を超えないという条件下では今回の検証環境においてこの辺りが限界です。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 3070 Twin Edgeではファン速度を1500RPMまで落としてもGPU温度は74度程度に収まったので、「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」はヒートパイプダイレクトタッチ構造のヒートシンクコア部分が冷却上のボトルネックになっているように感じました。
加えて1時間のストレステスト終盤にサーモグラフィカメラ搭載スマートフォン「CAT S62 PRO」を使用してゲーム負荷時のグラフィックボード上の各所の温度をチェックしました。
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」は、バックプレート表面や、背面や側面の隙間から確認できるPCB基板上のVRM電源回路やPCIE補助電源コネクタの付近の温度がホットスポットの80度未満に収まっています。
ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cを含めていくつかのグラフィックボードについてサウンドレベルメーターを利用してゲーム負荷時のノイズレベルを測定・比較しました。
検証機材はベンチ台の上に平置きにしているので、サウンドレベルメーターをスタンドで垂直上方向に50cm程度離して騒音値を測定しています。
この測定方法において電源OFF時の騒音値は30dB未満です。目安として騒音値が35dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになりますが、35~38dB以下であればPCケースに入れてしまえばファンノイズが気になることはそうそうないと思います。40dB前後になるとベンチ台上で煩く感じ始め、45dBを超えるとヘッドホンをしていてもはっきり聞き取れるくらいになります。
A特性で測定しているのである程度は騒音値にも反映されていますが、同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質(細かい乱高下の有無や軸ブレ)にもよるので注意してください。
ノイズレベルの測定結果は次のようになっています。
ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cのファンノイズはベンチ板上/PCケース組み込みで2200~2300RPMというファン回転数に対してノイズレベルは37~38dB程度に収まっています。
小径ファンが高速動作するので、高周波ノイズが気になる可能性はあるものの、小径ゆえにファンノイズの大きさ自体は比較的に小さく、PCケースに入れてしまえばそれほど気にならないはずです。実用的には及第点だと思います。
また上で行った検証の通り冷却性能には多少の余力があり、1900RPM前後までファン速度を落とせばノイズレベルは33~34dB前後まで下がりPCケースからファンノイズを聞き分けるのも難しくなります。
ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cの消費電力と瞬間的な最大電源負荷を測定しました。
測定負荷には上で行った温度検証と同様に3DMark TimeSpy ストレステストを使用しています。テスト全体から1秒間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので、電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。
消費電力の測定は電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの入力ではなく変換ロスを差し引いたシステムへの出力電力をチェックしています。また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。
この方法であれば、CPU(後述のiGPUも)に負荷をかけても、CPUによる消費電力の変動はメイン電源ユニットCorsair HX 1200iの測定値には影響しません。しかしながら、測定値にはまだATX24PIN経由で供給されるマザーボードやDDR4メモリの電力が含まれるので、iGPUを使用した時の3DMark TimeSpy ストレステスト中の消費電力と最大電源負荷を同様に測定し、各種グラフィックボード使用時と差分を取る形でグラフィックボード単体の消費電力と最大電源負荷を算出します。
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」の消費電力は219W、最大瞬間負荷は285Wでした。「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」のTDP(パワーターゲット)は220Wに設定されており、概ね仕様値通りの消費電力になっていると思います。
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」がグラフィック性能で30%も上回るRTX 2070 SUPERとはほぼ同等の消費電力、一方、同等のグラフィック性能を発揮するRTX 2080 Tiと比較して30~40W、約15%程度も低消費電力になっており、Ampereアーキテクチャの省電力性能の高さを再確認できる結果です。
TGPが300W超過するRTX 3080など上位モデルと違って、TGP220Wというのは従来のミドルハイクラスからハイエンドの中間くらい数値なので、既存環境において電源や冷却を気にせずにアップグレードできるところもRTX 3070の魅力だと思います。
ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C レビューまとめ
最後に「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C(型番:GD3070-8GERS)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- フルHD/240HzからWQHD/144Hz+、さらに4K/60FPSまで幅広いPCゲーミングにマッチ
- RTX 2070を実ゲームで40%以上も上回るグラフィック性能
- 前世代最上位モデルRTX 2080 Tiより低消費電力で同等のグラフィック性能
- RTX 2080 Tiとほぼ同性能ながら希望小売価格は半分の499ドルから
- RTX 3070では最小クラスの全長246mmかつ2スロット占有というコンパクトサイズ
- コンパクトながらRTX 3070を騒音値38dB以下で冷やしきる静音性
- グラボ枯渇状況下なので仕方ないものの、RTX 3070で11.7万円と割高
- GPUコア両端がはみ出すヒートパイプダイレクトタッチ構造
- 他社のショート基板製品と比較して冷え具合や静音性が微妙
- 実動平均コアクロックが低く、性能も3~5%低い(今回入手した個体がハズレだっただけかも)
GeForce RTX 3070は、前世代同クラスとGeForce RTX 2070と比較して平均して40%以上、ベストケースでは50%以上の性能を発揮、さらに前世代最上位GeForce RTX 2080 Tiと比較しても15%近く低い消費電力で同等のグラフィック性能を実現しており、前世代から圧倒的な飛躍を遂げています。
次世代スタンダードなWQHD/144Hz+、4K/60FPSのラグジュアリーな超高画質、フルHD/240FPSのスーパーハイフレームレートなど幅広いPCゲーマー層にマッチし、499ドルからという手ごろな価格も相まって新定番なミドルハイクラスGPUです。
RTX 3070は2020年現在、手ごろな価格で普及しつつあるWQHD/144Hz+のIPS液晶ゲーミングモニタと組み合わせて高画質・ハイフレームレートなPCゲーミング入門に最適なグラフィックボードです。
WQHD/144HzのIPS液晶ゲーミングモニタは色々と販売されていますが、リモコン操作&USB Type-C対応でマルチメディアに最適な「BenQ EX2780Q」、ELMB Syncやスナイパーなど独自のゲーミング機能が豊富な「ASUS TUF Gaming VG27AQ」、同スペック製品の中でも特に高発色・高応答速度な「LG 27GL850-B」は当サイトでもレビューを公開していてオススメなモデルです。
・WQHD解像度/144Hz+ゲーミングモニタのレビュー記事一覧へ
その他にもバトルロイヤル系ゲームに最適な240Hzオーバーの超高速ゲーミングモニタと組み合わせてガチで勝利を狙うゲーマーにもフルHDで高FPSを稼げるRTX 3070はオススメです。
・240Hz+の超ハイリフレッシュレートなゲーミングモニタのレビュー記事一覧へ
「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」については3スロット占有で厚みこそ大きいですが、全長246mmのショート基板かつPCEIブラケットと同じ高さ、さらに2スロットに収まる薄型と、RTX 3070搭載グラフィックボードの中で最小サイズなところが最大の魅力です。
メーカー製PCではPCケース内クリアランスの関係で全長250mm以上のグラフィックボードを搭載できない場合も少なくありませんが、そういった環境でグラフィックボードをアップグレードしたいユーザーに最適な製品です。また奥行きの小さいMini-ITX対応コンパクトPCケースで自作PCを組むユーザーなどにももちろんオススメです。
ただし後述の冷却・静音の面で他社製品のZOTAC GAMING GeForce RTX 3070 Twin Edgeに比べて微妙な結果だったので、『PCIEブラケットから高さ30mmのスペースがなくて干渉する』という条件でなければ、積極的に「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」を勧める理由がなかったり……。
この種のコンパクトモデルはトレードオフで静音性が低くなりがちなのですが、「MSI GeForce RTX 3070 VENTUS 2X OC」に関してはサイズの問題というよりも、ヒートパイプダイレクトタッチ構造のヒートシンクコアに端を発して、PCケース内での実用条件でいまいち冷えない、ファンノイズが煩いという少々残念な結果になりました。実用に耐えないレベルというわけでは決してないのですが、4本のヒートパイプで構成されるクーラーコアからGPUコアの両端がはみ出しているのを見るにつけて、ヒートパイプがもう1本あれば(あとヒートパイプ間のギャップも狭ければ)、結果は大分違ったのではないかと感じざるを得ません。
以上、「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.C」のレビューでした。
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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記事冒頭の「ELSA GeForce RTX 3070 S.A.Cの外観」などのリンク先が別記事の「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」の該当部分へのリンクになってしまっているようです。