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Core Ultra 9 285KなどIntel Core Ultra 200シリーズCPUに対応するZ890チップセット搭載マザーボードとしてGIGABYTEからリリースされた、80A対応SPSで構成される19フェーズの堅牢VRM電源、Thunderbolt4対応Type-Cポートを搭載するゲーミングモデル「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」をレビューします。

GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7 レビュー目次
1.GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7の外観・付属品
2.GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7の基板上コンポーネント詳細
3.GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7の検証機材
4.GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7のBIOSについて
5.GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7のOC設定について
・By Core Usage倍率によるOCについて
・VFカーブOC電圧設定や電力制限について
・メモリのオーバークロックについて
・その他のOC設定やTipsについて
6.GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7の動作検証・OC耐性
7.GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7のレビューまとめ
【2025年2月1日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:F16cで検証
製品公式ページ:https://www.gigabyte.com/jp/Motherboard/Z890-AORUS-ELITE-WIFI7
【機材協力:日本ギガバイト】
GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7の外観・付属品
まず最初にGIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7の外観と付属品をチェックしていきます。
パッケージを開くと上段にはマザーボード本体が静電防止ビニールに入った状態でスペーサーの中央に収められていました。マザーボードを取り出すと2重底になっており下段には各種付属品が入っています。

マニュアル冊子とドライバメディアは付属しておらず、いずれも公式サポートページからダウンロードする形です。ファングッズとしてシール等が付属しています。

組み立てに関連する付属品としては、SATAケーブル 2本、G-Connector、Wi-Fiアンテナとなっています。

GIGABYTEの一部のマザーボードではフロントパネルコネクタのマザーボードへの装着を簡単にする独自パーツ G-Connectorが付属します。
今回は検証用スイッチ&LEDで試してみましたが次のように「G-Connector」へ各種コネクタを装着します。あとはこのままG-Connectorをマザーボードのフロントパネルヘッダーに挿せばOKという非常に便利な独自機能です。

マザーボード全体像は次のようになっています。
「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」はATXフォームファクタのマザーボードです。

「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」のマザーボード下側はチップセットクーラーとM.2 SSDヒートシンクが一体化して見えるアルミニウム一枚板のような外観です。
グレーでバーチャル空間的なイラストや斜めラインのパターンも描かれていますが、フラットな形状もあいまって印象としてはシンプルなデザインです。

リアI/OカバーもグレーでAORUSロゴ等は描かれていますが、ほぼフルブラックなシンプルかつフラットなデザインです。

「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」はマザーボード備え付けのLEDイルミネーションやRGB対応汎用4PIN/ARGB対応汎用3PINイルミネーション機器を操作可能なライティング制御機能 GIGABYTE_RGB_Fusionに対応しています。
「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」にはマザーボード備えつけのLEDイルミネーションとして、リアI/OカバーのAORUSロゴとチップセットクーラーの隙間にアドレッサブルLEDイルミネーションが内蔵されています。



加えてGIGABYTE_RGB_Fusionから制御可能な汎用LEDヘッダーとして、1基のRGB対応汎用4PIN LEDヘッダーと3基のARGB対応VD-G型3PIN LEDヘッダーも実装されています。

「GIGABYTE Z890 AORUS MASTER」にはVRM電源クーラーとして、CPUソケットの上側と左側にフィンカットアルミニウム塊型ヒートシンクが搭載されています。2基のヒートシンクにはクーラー全体で効率的に放熱を行うため熱の拡散を速めるヒートパイプが組み込まれています。左側はリアI/Oに覆い被さる部分も含めて全てアルミニウム製ヒートシンクです。



「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」にはメインストリーム向けマザーボードながら、21フェーズ(18+1+2)の超堅牢なVRM電源回路が実装されています。
VRM電源回路にハイサイド/ローサイドMOS-FETとドライバICをワンパッケージし、低発熱で定評のあるSmart Power Stage(Dr. MOSの名前で有名)を採用するのはハイエンドマザーボードでは定番ですが、「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」にはCPUコア用16フェーズに80A対応SPS(Renesas ISL99380)が使用されています。




最大で24コアとなるIntel Core Ultra 200SシリーズCPUを組み合わせても安定した大電力の供給が行えるように、「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」にはEPS電源端子として8PIN×2が設置されています。
700W以下のメインストリーム電源ユニットではEPS端子が1つしかないものもあるので組み合わせて使用する電源ユニットには注意が必要です。

「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」には一体型リアI/Oバックパネルも採用されています。PCケースにパネルを装着する作業は固くて装着し難かったり、忘れてしまうこともあるのでマザーボードに統合されているのは嬉しい機能です。

以下USB規格に関する説明がありますが『USB3.2 Gen2 = USB3.1 Gen2』、『USB3.2 Gen1 = USB3.1 Gen1 = USB3.0』と考えて基本的に問題ありません。
「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」のリアI/Oに実装された1基のUSB Type-Cポートは帯域40Gbpsの最新規格 Thunderbolt4に対応しています。
DisplayPort Alternate Modeによるビデオ出力に対応し(映像ソースはiGPU)、USB Power Delivery規格によって15W(5V/3A)の電力供給も可能です。

リアI/Oには最新のUSB3.2 Gen2規格に対応した2基のType-A端子(赤色)が設置されています。そのほかのUSB端子については3基のUSB3.0端子と4基のUSB2.0端子が搭載されています。
ただUSB3.Xは無線マウスと電波干渉を起こすことがあるので、USB2.0は少し離れた場所に配置して欲しかったです。

ちなみに一般的なビデオ出力としては使用できませんが、「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」ののマザーボード上にはMOD PCで人気が出始めているPCケースサイドパネルやケース内部に設置するディスプレイ用にHDMIビデオ出力も実装されています。

有線LANとして近年ではエントリー~ミドルクラスのMBでも普及しつつある2.5Gb LAN(Realtek RTL8125)を搭載しています。
さらにWi-Fi 7に対応したMediaTek MT7925コントローラーによる無線LANも搭載しています。
接続規格としてはWi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac/ax/be、2.4/5GHz/6GHzトライバンド、最大通信速度4.6Gbps(5GHz/6GHz帯の160MHz幅接続時)、Bluetooth 5.4に対応しています。リアI/Oには無線モジュールのアンテナ端子が設置されているので付属のアンテナを接続できます。

「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」のWi-FiアンテナにはWIFI EZ-Plugと呼ばれるワンタッチ装着機能も採用されています。従来のようなネジ巻き作業が必要なくなりました。
「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」に搭載されているネットワーク機器のうち、有線LAN(Realtek RTL8126)はWindows 11 24H2の標準ドライバで動作しますが、無線LAN(Qualcomm NCM865)は動作しません。

条件次第では問題になることもあるので詳しくはこちらの記事を参照してください。
GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7の基板上コンポーネント詳細
続いて「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」はIntel Core Ultra 200SシリーズCPUに対応するマザーボードなのでCPUソケットは当然、Intel LGA1851です。
CPUソケットが異なるので第12~14世代Coreの旧CPUは使用できませんが、LGA1851とLGA1700のCPUクーラーマウントは共通なので、LGA1700対応CPUクーラーなら問題なく使用できます。
LGA1700登場から3年も経っているので、新しいCPUクーラーを購入する分には互換性が問題になることはないはずです。

LGA1851と同時にCPU固定用金具には”RL-ILM (Reduced Load-Independent Loading Mechanism)”、その名の通り、リテンション圧を軽減した新たなリテンションブラケットが導入されており、「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」にもRL-ILMが採用されています。

所謂、”CPU反り問題”については実害が存在するかというとエビデンスは怪しいです。せいぜい、ヒートスプレッダと接するコールドプレートが中央凸形状でないCPUクーラーで5度程度の差で冷却性能が下がるくらい、というのが筆者の私見です。Asetek OEMのAIO水冷などここ5年くらいの製品でちゃんと設計されたCPUクーラーなら中央凸なコールドプレートになっているはずです。
とはいえCPU形状が縦長になったことで従来よりも第12~14世代Core CPUに反りが生じやすいこと自体は事実なので、ワッシャーMODとかコンタクトフレームなどによるMBの保証が失効するような処置(逆に接触不良による動作不安定、メモリOCエラーといった悪影響も)をユーザーが自己責任でとる必要がなくなったのは素直に喜んでいいと思います。
「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」はシステムメモリの最新規格DDR5に対応しています。従来規格のDDR4と下方互換はなく使用できないので注意してください。
システムメモリ用のDDR5メモリスロットはCPUソケット右側に4基のスロットが設置されています。固定時のツメは両側ラッチとなっています。片側ラッチよりも固定が少し面倒ですが、しっかりとDDR5メモリを固定できるので信頼性は高い構造です。

Intel Core Ultra 200SシリーズCPUとIntel Z890などIntel 800シリーズマザーボードの環境は、従来のUDIMM(Unbuffered DIMM)規格のDDR5メモリに加えて、新規格 CUDIMM(Clocked Unbuffered)にも対応しています。
当然、今回レビューする「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」もCUDIMM対応です。
CUDIMMはクロック信号を補正するClocked Driverが追加されており、高速動作の安定性を向上させた新規格です。1.100Vの低電圧でも6400MHzの高速メモリ周波数が安定し、JEDEC準拠のスペックを満たすだけでなく、8000~9000MHz以上のメモリOCで従来のUDIMMよりも安定性を増しています。

グラフィックボードなどを設置するPCIEスロットは上から[N/A、x16、N/A、N/A、N/A、x16、x16]サイズのスロットが設置されています。上段のプライマリグラフィックボードを2段目のスロットに配置することで、大型ハイエンド空冷CPUクーラーとグラフィックボードの干渉を回避しています。
2段目のx16サイズPCIEスロットはCPU直結のPCIE5.0x16レーンに接続されています。
6段目と7段目はPCH経由のPCIEレーンに接続されており、両方とも帯域はPCIE4.0x4です。いずれも排他利用はありません。

Intel Core Ultra 200SシリーズCPUの環境はCPU直結x16レーンの分割についてx8/x8やx8/x4/x4には対応していますが、4基のx4レーンに分割する動作には非対応のようです。
PCIE帯域分割でM.2 SSDを4基増設するタイプのPCIE拡張カードには非対応なので注意してください。

「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」のグラフィックボード用x16サイズスロットにはPCIEスロット補強に亜鉛合金製アーマー Ultra Durable SMD PCIe 5.0 Armorが採用されています。
メタルアーマー自体から伸びるマルチポイント固定ピン SMD Iron Crawと、PCIEスロット左右端の固定を補強するGIGABYTE特許取得済 Double Locking Bracket による2重の保護で、PCIEスロットはマザーボードへ強固に固定されています。
1kgを超える重量級グラボの重さに耐えるためのこれらの対策により垂直方向に2.2倍、水平方向に1.7倍と両方向の負荷に対する強度は大幅に向上しています。

大型空冷CPUクーラーを組み合わせた場合など、グラフィックボードを取り外す際にPCIEスロットの固定ラッチを解除するのが難しい、という場面に遭遇したことのある自作erは多いと思いますが、PCIEスロット固定ラッチの解除を簡単にする新機能 EZ-Latch PlusがGIGABYTE製マザーボードの一部で採用され始めました。

EZ-Latch Plusに対応しているマザーボードでは、PCIEスロット付近に実装されたボタンを押下するだけで簡単にPCIEスロットのロックを解除できます。
GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7にはSATAストレージ用の端子はマザーボード右下に4基搭載されています。いずれもチップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/5/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。

「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」には高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットが、CPUソケット下やPCIEスロットと並んで計5基設置されています。
M2A_CPUはCPU直結PCIE5.0x4レーンに接続されており、PCIE5.0x4接続のNVMe接続M.2 SSDに対応しています。
M2B_CPUはCPU直結PCIE4.0x4レーンに接続されており、PCIE4.0x4接続のNVMe接続M.2 SSDに対応しています。
M2Q_SBとM2M_SBはチップセット経由PCIEレーンに接続されており、NVMe接続(PCIE4.0x4)のM.2 SSDに対応しています。M2M_SBはSATA接続のM.2 SSDにも対応しています。

PCIE5.0x4接続に対応したM.2スロットにはメタルアーマー搭載M.2端子 Ultra Durable SMD PCIe 5.0 x4 M.2が採用されています。外部ノイズEMIから保護して安定した高速通信を実現し、またSSDの挿抜によるM.2スロットの歪みや破損を防止します。

・PCIE4.0/5.0対応NVMe M.2 SSDのレビュー記事一覧へ

「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」のM.2スロットにはM.2 SSD自体の固定にはネジを使用しない、M2 EZ-Latch Plusという独自の構造が採用されています。バネ仕掛けのクリップなので装着時はM.2 SSDを押し込むだけで簡単にM.2 SSDを固定できるので非常に楽です。
(個体差があり上手くクリップが回らないこともあるようです。軽く押して上手くいかない時は、手動でクリップを回して下さい)

「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」には4基のM.2スロットそれぞれに大型M.2 SSDヒートシンク M.2 Thermal Guard LとM.2 Thermal Guard Extが設置されています。
同ヒートシンクを使用することで、グラフィックボードなど発熱から保護し、M.2 SSDがむき出しの状態よりもサーマルスロットリングを抑制する効果が期待できます。

「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」のM.2スロットのうちPCIE5.0x4に対応するCPUソケット直下のM.2スロットには M.2 Thermal Guard Lと呼ばれる、厚みが20mm以上もある特に巨大なヒートシンクが搭載されています。
高速な反面、発熱の大きいPCIE5.0対応NVMe M.2 SSDを頻繁にアクセスするシステムストレージに使っても安心して運用できます。


一般的なマザーボード備え付けM.2 SSDヒートシンクは表面のみに金属プレートが実装されていますが、同製品ではPCIE5.0対応のM.2スロットで両面ヒートシンク設計を採用しており、背面金属プレートも表面同様にサーマルパッドを介してM.2 SSDと接します。

「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」のM.2 SSDヒートシンクにはM.2 EZ-Latch Clickと呼ばれる回転式レバーが搭載されています。レバーはバネ仕掛けになっていて、M.2 SSDヒートシンクを装着する時は上から押さえるだけ、外す時も90度くらい回転させるだけでロックを解除できます。

M.2 SSD自体も上で紹介したようにクリップによるツールレス固定なので、頻繁にM.2 SSDを交換する必要がある人には便利な構造です。
「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」のマザーボード右側には最新接続規格USB3.2 Gen2x2に対応する内部USB Type-Cヘッダー(正式名称はFront USB Type-E)が実装されています。内部USB3.0ヘッダーも1基設置されています。

マザーボードの下端には2基の内部USB2.0ヘッダーが設置されています。Corsair iCUEやNZXT CAM対応製品などUSB2.0内部ヘッダーを使用する機器も増えていますが、「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」であればそれらの機器も問題なく使用可能です。
内部USB2.0が2基でも不足する場合はUSB2.0ヘッダー増設ハブの「NZXT INTERNAL USB HUB (Gen3)」や「Thermaltake H200 PLUS」がおすすめです。

「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」はオンボードサウンドに7.1チャンネルや32Bit/192kHzのハイレゾ音源に対応するRealtek ALC1220コーデックを使用したGIGABYTE独自の高音質ソリューション AMP-UP AUDIOが採用されています。
リアIOにはデジタル出力としてオーディオ用の外部アンプ等との接続に最適な光デジタル端子が設置されています。

マザーボード基板上にはOCerのみならず一般自作erにとっても組み立て中の動作確認に便利なオンボードのスタートスイッチとリセットスイッチが実装されています。POSTエラーのチェックに便利なDebug LEDも設置されています。

「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」にはQ-FLASH PLUSボタンが設置されています。
BIOSファイル(サポートページからダウンロードして、”gigabyte.bin”に改名)の入ったUSBメモリを所定のUSB端子に接続してボタンを押すとQ-FLASH PLUS機能によってCPUやメモリなしの状態でもBIOSの修復・アップデートが可能です。

「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」にはCMOSクリアのためのオンボードボタンは実装されておらず、内部USB2.0端子の左上にあるジャンパーピンを使用してCMOSクリアを行います。
ケーブルの長い2PINスイッチをあらかじめ装着しておくのがオススメです。

冷却ファンや簡易水冷クーラーのポンプの接続用の端子はマザーボード上の各場所に計6か所設置されています。

GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7の検証機材
「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」を使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。マザーボード以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core Ultra 9 285K (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z5 CK F5-8400C4052G24GX2-TZ5CK (レビュー) DDR5 CUDIMM 24GB×2=48GB 8400MHz, CL40-52-52-134 G.Skill Trident Z5 RGB F5-7200J3646F24GX2-TZ5RK (レビュー) DDR5 UDIMM 24GB×2=48GB 7200MHz, CL36-46-46-115 |
ビデオカード | MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 990 PRO 1TB (レビュー) |
OS | Windows 11 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1500i 2022 (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。
「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材 Sterrox LCPの採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・Noctua NF-A12x25シリーズのレビュー記事一覧へ

ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 990 PRO 1TB」を使用しています。
Samsung SSD 990 PROは、PCIE4.0対応SSDで最速クラスの性能を発揮し、なおかつ電力効率は前モデル980 PRO比で最大50%も向上しており、7GB/s超の高速アクセスでも低発熱なところも魅力な高性能SSDです。 これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
・「Samsung SSD 990 PRO 1TB」をレビュー。性能も電力効率もトップクラス!

CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で筆者も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。筆者はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。

以上で検証機材のセットアップが完了となります。

GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7のBIOSについて
GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7を使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付が変になっている場合がありますが無視してください。また内容的に差異がなければ過去のスクリーンショットを流用しています)
BIOSにアクセスすると最初はイージーモードというグラフィカルな画面が表示されます。
パッと見の見栄えは良いのですが詳細モードでないと詳細設定ができないので「F2」キーを押してサクッと「アドバンスドモード(Advanced Mode)」へ移るのがおすすめです。

アドバンスドモードに切り替えると従来通りの文字ベースBIOSメニューが表示されます。
トップに表示されるシステムタブのシステム言語から日本語を選択可能です。トップメニューのタブは左右カーソルキーで簡単に移動できます。

GIGABYTE製マザーボードのBIOSの翻訳は一部誤訳もあるものの比較的まともなので日本語UIとしては使いやすいと評価していいと思います。未だに一部の漢字に違和感のあるフォントですが、フォントサイズが調整されて見切れることがないように最新の製品では修正が加えられています。
G定の保存とBIOSからの退出はトップメニュータブ最右端の「保存して終了(save and exit)」から行えます。特定のブートデバイスを指定してBIOSから退出するBoot Override機能もあります。

BIOSのアップデート方法は、まず公式サポートページから最新のBIOSファイルをダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://www.gigabyte.com/jp/Motherboard/Z890-AORUS-ELITE-WIFI7/support#support-dl-bios
USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、BIOSメニューのSystem Infoタブの最下段に表示される「Q-FLASH」を選択するか、「F8」キーのショートカットキーでQ-FLASHを起動します。
Q-Flashの画面に移動したら、Update BIOSを選択し、USBメモリからアップデートファイルを選択します。


ブートとOSインストール周りについて紹介します。
ブート回りは下画像のようにトップメニュータブ「BIOS」の中で非常に簡潔にまとめられており初心者でも迷うことはないと思います。OSのインストールも「起動オプション #1」に「UEFI 〇〇」というOSインストールメディアを設定して保存&退出でOKです。

GIGABYTEのBIOSではブートデバイスの指定が可能なので起動オプションで設定せずに、「保存して終了(save and exit)」のタブメニューから「UEFI 〇〇」というOSインストールメディアを選択してもOKです。

BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7のBIOS機能で筆者が気になったものをいくつかチェックしていきます。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUはThread Directorと呼ばれるスケジューラーによってCPUコアに適切なタスク分けを行いますが、一部のゲームに対しては適切にスケジューリングができないことがあります。
それによる性能低下をWindows上ソフトウェアによって解決するため、第14世代CPUと同時に導入された「Intel APO(Application Optimization)」があり、通常、Intel Core Ultra 200SシリーズCPU環境では標準で有効化されています。

このIntel APOを利用する前提条件として、BIOS設定においてDTT(Dynamic Tuning Technology)と呼ばれる機能を有効にしておく必要があります。
「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」などGIGABYTE製Intel 800シリーズ マザーボードでは、TweakerタブのCPU詳細設定の中に設定項目があります。
Intel APOの使用要件としては”DTT”のほうが呼称として有名ですが、GIGABYTE製マザーボード内では”Intel Innovation Platform Framework”の名前で配置されています。


最近、各社マザーボードに搭載されているOS起動後のドライバ自動ダウンロード機能について、GIGABYTE製マザーボードではSettingsタブのIOポートの項目を開き、さらにGigabyte Utilities Downloader Configurationを開くと設定項目が表示されます。


よく使うBIOS設定をお気に入りリストに登録するFavorite機能もあります。
他設定同様に左右カーソルキーでお気に入りタブに切り替えるか、F11キーのショートカットで開くことができます。
お気に入りリストへの登録も簡単です。BIOSメニューの個別設定にカーソルを合わせた状態でInsertキーを押下すると選択中の項目をお気に入りリストに追加できます。

GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7のリセットスイッチは「MULTIKEY」という機能に対応しており、BIOS上から、「リセット」、「LED オン/オフ」、「起動してBIOSメニューを表示」、「セーフモードでOSを起動」など押下時の機能を切り替えることができます。

「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」などGIGABYTE製マザーボードに採用されるファンコントロール機能 Smart Fan 6について紹介していきます。外部温度センサー対応など多機能かつ、ユーザービリティーにも優れたUIでかなり使いやすい機能です。
「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」のファンコントロール機能 Smart Fan 6には、「F6」のショートカットキーか、SettingsタブのSmart Fan 6を選択することでアクセスできます。
「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」のファンコントロール機能は下のスクリーンショットのようにグラフィカルUIでマウスを使って簡単にできる機能なのですが、マウスレスでも全て設定可能となっており、ASUSやASRockのBIOSのようなテキストボックス直打ちUIが好きな筆者でも使いやすいと感じる良いファンコンでした。

Smart Fan 6ではファンカーブグラフの下に頂点座標を設定するテキストボックスがあり、ファンカーブの設定値を直打ち設定することが可能です。

同ファンコントロール機能でユーザーが主に触る部分は下のスクリーンショットで囲った、「設定を行うファン端子」「速度設定プリセットの選択」「手動設定時のファンカーブ」「ファン制御ソース温度」「複数ファン端子への設定の適用」の5つになると思います。

設定を行うファン端子は画面左側に列挙されたファン端子名から選択します。
選択したファン端子について「〇〇ファン速度制御」の項目から、「通常」「静音」「フルスピード((定格)」の3つのプリセットに加えて、ユーザーが各自でファンカーブをカスタマイズできる「手動」の4種類を選択できます。

また選択しているファン端子の操作を行う温度ソースは「Fan Control Use Temperature input」から選択可能です。
マザーボード備え付けの温度センサーに加えて、対応マザーボードであれば増設可能な外部温度センサーを温度ソースに指定できます。ただしCPUファンについてはCPU温度ソース固定となります。
水温センサーを外部温度センサー端子に接続すれば水温ソースにしたラジエーターファンのファンコンにも対応可能なので水冷PC用のマザーボードとしても最適なファンコン機能です。

「〇〇ファン速度制御」の項目で「手動」を選択した場合はファンカーブのグラフにおいて、ファンストップ温度と、フルスピード温度に加えて、グラフ内で任意の6点についてファンカーブを設定できます。
「Monitor」と「〇〇ファン速度制御」の項目間で上下カーソルキーを使うことで各ファンカーブ頂点を指定することができます。Shiftキーを押したままでカーソルキーを操作することによってマウスレスでファンカーブの頂点を格子上で移動可能です。冒頭で紹介したようにSmart Fan 6ではテキストボックスを使用した頂点設定値の直打ちにも対応しています。

〇〇_Fan Stopという項目でソース温度が一定以下の時にファンを停止させるセミファンレス機能も用意されています。
「0」と書かれたファンカーブの頂点はファンストップ温度となっており、指定した温度ソースがファンストップ温度以下の場合、設定を行ったファン端子に接続されたファンを停止させる、所謂セミファンレス機能が使用できます。

「Tune Alll」のボタンをクリックするとマザーボードに設置されたファン端子が全て列挙され、ファン端子名の左にあるチェックボックスのチェックを入れるもしくは外すことで、現在設定を行っているファン端子と同じ設定を他のファン端子にも一斉に適用することが可能です。
ファン設定の同期適用機能があるというのはユーザービリティーに優れ非常に好印象です。

その他にも急激な温度変化へファンコンが過敏に反応しないようファン速度変化に1~3秒の猶予を設ける「Temperature Interval」、ファン操作モードを「DC/PWM/自動検出」から設定する「〇〇ファン Control Mode」などのファンコン設定項目があります。
またマザーボードにブザーユニットが接続されている場合は、特定温度ソースが一定温度を超えた場合にエラーを知らせる「Temperature Warning」や接続されているファンに不具合が発生した(回転数の検出ができない)場合に警告を行う「〇〇ファン異常警告」といった設定も可能です。

また画面左下にある「Save Fan Profile」、「Load Fan Profile」でファン制御設定を保存できます。
外部ストレージだけでなく、BIOSメモリにも1つのプロファイルを保存しておくことが可能で、このプロファイルはBIOSをアップデートしても引き継がれます。

GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7のOC設定について
GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7を使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
オーバークロック関連の設定項目はトップメニュータブ「Tweaker」に各種設定がまとめられています。
下にスクロールしていくと概ね「コアクロック→メモリ→電圧」の順番で並んでいます。設定値を直接入力する項目でデフォルトの「Auto」に戻す場合は「a」キーを入力すればOKです。

GIGABYTE製のIntel 800シリーズ マザーボードでは「GIGABYTE PerfDrive」からIntel公式仕様通りの動作プロファイル(電力制限、電流制限)を適用するかどうか設定できます。

Intel第13/14世代CPUで話題になった”Baseline”プロファイルとかに関連する設定です。
当サイトではCore-X登場当時、かれこれ7年ほど前からMBの初期設定は公式仕様通りにすべきと主張していたので、やっと時代が追いついた気がして感慨深く、そうなったのは嬉しい変化です。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUはFoverosと呼ばれる3Dパッケージング技術を応用し、ベースダイ上にCompute Tile、SoC Tileなど複数のシリコンタイルを積層する構造が採用されています。
iGPUが実装されているGraphic Tileだけでなく、SoCタイルのD2DやNGUといったインターコネクト(fabric)類もOCの対象になっていて、設定できることも増えてやや複雑になっていますが、とはいえ、メインはやはりCompute Tileです。


Intel Core Ultra 200SシリーズCPUでもOCや電力制限の主な対象となるCompute Tileには前世代同様に高性能コアP-Coreと高効率コアE-Coreがあり、2種類の混成でCPUが構成されています。
またIntel Core Ultra 200SシリーズCPUには省電力性能を高める新機能としてDLVR(Digital Linear Voltage Regulator; デジタルリニア電圧レギュレータ)呼ばれるCPU内蔵VRが搭載されています。
P-CoreとE-Coreには個別に動作倍率を設定するところは従来同様ですが、DLVRが追加されたIntel Core Ultra 200SシリーズCPUでは各P-Coreや各E-Core Clusterに対して個別に電圧、V-Fカーブを設定できるようになっており、より柔軟に低電圧化や、昇圧による単コアブースト引き上げなどOCが可能です。

By Core Usage倍率によるOCについて
By Core Usage倍率によるオーバークロック、V-Fカーブによる低電圧化といった近年のIntel Core CPUのチューニングにオススメな設定について紹介します。近年のIntel製CPUはアクティブコア数(大きい負荷のかかっているコア数)に応じて最大動作倍率が変化するBy Core Usage倍率により、例えばCore Ultra 9 285Kなら最大5.7GHzのような単コア最大動作倍率で動作が可能になっており、高いシングルスレッド性能を発揮します。
優良コアが電圧を盛れば6GHzに迫るような高コアクロックで動作できる一方、同じコアクロックで全コアを稼働させることは相対的な不良コアの電圧特性的にも、CPUパッケージ全体での発熱的にも難しいので、シングルスレッド性能を損なう全コア一律のコアクロックを適用するマニュアルOCはベンチマークスコアを重視したOC競技的な設定となっており、現在の常用OCにおける主流はBy Core Usage倍率とV-Fカーブを組み合わせた手法です。
まずはBy Core Usage倍率によるコアクロックの設定について説明します。
By Core Usage倍率関連の基本的な話は共通なので、旧世代のCore i9 13900Kを例にしますが、13900KのPコアは1~8コアのアクティブコア数に応じて[58, 58, 55, 55, 55, 55, 55, 55]というBy Core Usage倍率が適用されています。(コアクロックはベースクロックBCLK、通常100MHzに対する倍率で決まる)
アクティブコア数が2コアまでであれば、そのアクティブコアは最大5.8GHzで動作します。所謂、単コア最大ブーストクロックのことです。(1コアではなく2コアまでなどの時もありますが、便宜上、単コアと呼びます)

一方、Cinebench R23のマルチスレッドテストやx264動画エンコードのように全コアへ大きな負荷がかかるシーンでは全コアが最大5.5GHzで動作できます。
なぜ”最大”と注釈つくかというと、特にCPU全体の発熱が大きくなる全コア負荷時については、長期間電力制限(Long Duration Package Power Limit; PL1)や臨界温度(Tj Max)、Thermal Velocity Boostによるコアクロック制限が適用されることがあるからです。

ゲーム性能に対しては全コア最大動作倍率が重要であり、逆に電力や温度といったCPU負荷自体は軽いという特長があります。
ゲームシーンで高い性能を実現しつつ、CPU負荷の大きいクリエイティブタスクではCPU Package PowerやCPU温度を制御ソースとして各自冷却環境(CPUクーラー)で冷やせる範囲内で最大の性能を発揮できるようにする、というパフォーマンスデザインです。

By Core Usage倍率とV-Fカーブ、Thermal Velocity Boost等のOC機能を組み合わせると、Cinebench R23のような高負荷なマルチスレッド性能はそのままに低電圧化で消費電力やCPU温度は大幅に下げ、同時にP-Coreの単コア最大ブーストクロックをOCしてシングルスレッド性能を伸ばすことができます。

さらにPCゲームのような軽い負荷であれば、P-Core Allの動作倍率を引き上げることでゲーム性能も向上も狙えます。
例えばBy Core Usage倍率による全コア最大動作倍率を57倍に引き上げ、Thermal Velocity Boostによって8コア負荷時にCPU温度 80度以上でコア倍率 -2倍の制限をかけるとCinebench R23のような高負荷ではP-Core All 5.5GHz動作となりますが、ゲーム中はP-Core All 5.7GHzにするような運用が可能です。

「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」ではBIOS:F16cにおいて、By Core Usageなど全コア一致以外のコア倍率設定はCPU詳細設定の中に配置されています。

なぜBy Core Usage倍率を使用するのか前置きの説明が長くなりましたが、Core Ultra 200SシリーズCPUとZ890マザーボードにおけるOC設定に話を戻します。
「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」の場合は、アクティブ・ターボ倍率という項目を手動に切り替えると、P-Core動作倍率の設定としてBy Core Usageを任意に変更できるようになります。
By Core Usage倍率の設定値は[58, 58, 57, 56, 56, 56, 55, 55]のようにバラけさせることも可能ですが後ほど電圧設定が面倒になります。
[58, 58, 56, 56, 56, 56, 56, 56]のように後述のTBM3.0で優先可能な2コアだけ単コア最大ブーストクロックを引き上げ、残りは同じ倍率に揃えるのがオススメです。

Intel Core Ultra 200Sシリーズのうち、Core Ultra 9/7のP-Coreは「Intel Turbo Boost Max 3.0 Technology (TBM3.0)」に対応しています。
TBM3.0は、CPUダイ上で最も電圧特性の良いコア(CPU個体ごとに異なる)を自動で選別し、非常に高い単コア最大ブーストクロックで動作させ、アクティブタスクへ優先的に割り当ててくれる機能です。

電圧特性が優良なコアは、Windows上で使用できるIntel公式のOCツール Extreme Tuning Utility (XTU)から確認が可能です。優良コアには星マーク(☆)が付いています。

P-Core別の最大動作倍率(Performance Core Specific Ratio Limit)は定格では上のXTUのスクリーンショットのように優良コアとその他で分けて設定されています。
TBM3.0によるタスク割り当てに非対応の場合、1~2コアを使用する少アクティブコアなタスクが最大5.8GHzの優良コアに割り当てられるか、最大5.5GHzのその他に割り当てられるかは完全にランダムとなり、性能にブレが生じます。
Intel Core Ultra 200SシリーズのうちCore Ultra 9/7はTBM3.0により少アクティブコアなタスクは優良コアが優先されるので、非優良コアの最大動作倍率(電圧特性)に引っ張られることなく、優良コアへより高い単コア最大ブーストクロックが適用することで、安定して性能を向上させることができます。
また、手動OCによってBy Core Usage倍率で設定する単コア最大ブーストクロックを定格よりも引き上げると、一般的にマザーボードBIOSの多くは全てのP-Coreの最大動作倍率をその値へ一律に引き上げます。
当然、優良コアとその他では安定動作できる最大動作倍率は異なるので、By Core Usage倍率を定格よりも引き上げる場合は、P-Core別の最大動作倍率も適切に設定する必要があります。
P-Core別の最大動作倍率を設定するには、Performance Core Ratioの下にあるSpecific Performance Core(コア当たりのターボ制限制御)の項目を開きます。
優良コアの最大動作倍率(Performance Core〇 Specific Ratio Limit)だけ単コア最大ブーストクロックに一致させます。
優良コアはWindows OS上のアプリケーション XTUを使用すれば確実に確認できます。
その他のコアはBy Core Usage倍率のAll Core倍率に一致させればOKです。面倒でなければ、CPU個別のOC耐性に合わせて各自で個別に設定してください。

実のところ、By Core Usage倍率やSpecific Ratio Limitに関する設定は第13/14世代CPUと同じですが、Intel Core Ultra 200Sシリーズで新たに導入された機能「Granular Ratio」があります。
従来のIntel製CPUはベースクロック 100MHzに対して整数倍で、つまり100MHz単位で動作クロックが制御されていましたが、Intel Core Ultra 200Sシリーズでは16.67MHz単位というより細かな制御に対応しています。

16.67MHz単位でコアクロックを制御するGranular Ratioはそれだけ細かい制御を可能とする電力制御による省電力性能の向上だけでなく、性能面やOCにおいてもCPU電圧特性の限界まで高クロックを追求し、CPUのポテンシャルを最大限に発揮できるというメリットがあります。
Granular Ratioは『Specific Ratio Limitによる整数倍の最大コア倍率に対して、16.67MHz単位でさらにネガティブ倍率を加算する』という形で動作します。
例えば、Granular Ratioで57.34GHzに最大動作倍率を設定したい場合、Specific Ratio Limit自体は端数切り上げ58倍として、Granular Ratioの倍率を4倍にします。
後述のAdditional Turbo Mode Voltageの参照値となる最大動作倍率はSpecific Ratio Limitのほうになるので注意してください。

以上が高性能P-Coreの動作倍率設定ですが、高効率E-Coreも動作倍率の設定フォーマット自体は同じです。
Windows OSと協調するIntel Thread Directorで優先すべきタスクはP-Coreに割り当てられ、E-Coreの主な役割は、マルチスレッド性能を引き上げる補助コア、もしくは優先度の低いタスクのバックグラウンド処理用コアです。
E-Coreもアクティブコア数に応じたBy Core Usage倍率は設定が可能ですが、少ないアクティブコア数の時にブーストさせる意味があまりないので、OC設定を簡略化させる意味で、E-CoreはSync All Coreで一律に動作倍率を設定してしまうのがオススメです。

前述の通り、Sync All Coreで一律に設定するのがオススメですが、E-Coreは4コア1組のクラスターとして個別に動作倍率や動作電圧を設定することも可能です。P-Core同様に16.67MHz単位のGranular Ratioにも対応しています。


VFカーブOC電圧設定や電力制限について
続いて電圧設定について説明していきます。CPUには個体差がありますが、電圧特性に応じたCPUコア電圧とコアクロック(周波数)の比例関係を指定するV-Fカーブがそれぞれ収録されています。
CPUコア電圧モードを分類すると、まず定格モードがあり、定格のV-Fカーブに対して、周波数に依らず一定の昇圧or降圧を行うオフセットモード、さらに周波数に依らず一定の電圧を適用するオーバーライド(マニュアル)モードがあります。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUをBy Core Usage倍率でオーバークロックする時に使用するのがアダプティブモードです。
一例としてCore Ultra 9 285Kでは最小動作倍率800MHzから最大動作倍率5700MHz(a頂点)までのV-Fカーブが定格モードとして収録されています。
最大動作倍率を6000MHzにOCした時にV-Fカーブがどうなるかというと、5700MHz~6000MHzの間にはV-Fカーブがないので、Additional Turbo Mode Voltage(Adaptive Voltage Override)という電圧値を設定することで、OC最大倍率に対するb頂点が決まります。a頂点とb頂点の間は自動的に補間されます。

Intel第13/14世代CPUにおいてCPUコア(P-CoreとE-Coreの両方)とキャッシュ(Ring、L3キャッシュ)は全てGlobal Core SVID Voltageによって電力供給され、単一のV-Fカーブで動作していました。
Intel第13/14世代CPUにもSpecific Performance/Efficient Coreの項目から個別に電圧を設定できたので紛らわしかったのですが、この個別コア電圧設定で動作するのは、そのコアだけがアクティブな状態の時に限定されます。

第13/14世代CPUと大きく異なる点として、Intel Core Ultra 200SシリーズCPUにはDLVR(Digital Linear Voltage Regulator; デジタルリニア電圧レギュレータ)呼ばれるCPU内蔵VRが搭載されています。個別P-Core 、個別E-Core Cluster、iGPU、SoCにはそれぞれ専用のDLVRがあります。
Core i9 Ultra 285Kの場合、8個のP-Coreと4個のE-Core Clusterにはそれぞれ専用のDLVRがあり、マザーボードVRMから供給されるVccIA電圧を共通のソースとして、SVIDプロトコルによってリクエストされた電圧を各DLVRが対応するコアへ供給します。

Intel Core Ultra 200SシリーズCPUと800シリーズ マザーボード環境では、DLVR介して各コンポーネントに電圧を供給するRegulation Modeが既定設定です。
DLVRを素通ししてMB VRMから直接電圧供給するPower Gate Modeもありますが、LN2極冷OCのような特殊なOC用なので無視してOKです。
Power Gate Modeは一般的なOCでは使用しない動作モードであり、誤った使い方をすると容易にCPUを破損させる可能性があるため、一部のOC特化製品を除いて、GIGABYTE製マザーボードの最新BIOSでは基本的に設定項目自体が廃止されています。
「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」ではVcore電圧モードからAdaptive Vcoreを選択することで、P-CoreのAdditional Turbo Mode Voltageを設定できます。
Efficient Core、Ringなど各コンポーネントに対してDLVR Voltageの設定項目があり、Intel Core Ultra 200SシリーズCPUでは全てを個別に設定できます。


上のようにVcore電圧の項目からAdaptive Vcoreを設定すると、全てのP-Coreに対して一律で同じAdditional Turbo Mode Voltageが適用されますが、Single Core VcoreにするとさらにSpecial Vcore Settingという項目が現れ、そこから各P-Coreに対して異なるAdditional Turbo Mode Voltageを設定することも可能です。
ただし、「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」では2025年1月最新のBIOS:F16cにおいて個別コアに対する電圧設定と後述のVFカーブ低電圧化を併用できません。


以上で基準となるV-Fカーブが決まったので、続いてV-Fカーブによる低電圧化を行います。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUではV-Fカーブ(動作周波数と動作電圧の関係)を細かく調整できます。P-Coreだけでなく、E-CoreについてもVFカーブの設定が追加されていますが、「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」はBIOS:F16cにおいてP-Core/E-Coreの個別設定には非対応です。
「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」ではV-Fカーブを調整するには、VF Point Offset Modeを初期設定のLegacyからSlectionに切り替えます。
CPU個体毎に異なる各周波数のストック電圧に対して+/-のオフセット電圧を設定できます。
Core Ultra 9 285Kの場合は800MHz、2000MHz、3000MHz、4800MHz、5300MHz、5500MHz、5600MHz、5700MHzに対してmV単位でコア電圧オフセット値を指定できます。
初期状態では非表示ですが、By Core Usage/Specific Ratio Limitで定格よりも高い動作倍率を設定している場合、9番目が追加で表示され、OC最大倍率のV-Fポイントになります。

GIGABYTE製マザーボードでは電力制限や電流制限に関する設定はCPU詳細設定の中に配置されています。

By Core Usage倍率でオーバークロックを行う場合は、IccMaxを定格設定値よりも引き上げてください。電力制限や臨界温度と同様、高負荷時にコアクロック低下の原因になります。
MB初期設定でIccMaxもCPU定格値を適用する理由にもなった第13/14世代CPUにおける動作不安定性問題はCPUマイクロコードバグによる過剰電圧が原因だったので、Intel Core Ultra 200SシリーズCPUでは多少引き上げても問題ないはずです。
定格設定値と見比べてIccMaxがマルチスレッド負荷時のボトルネックにならない数値を設定してください。

By Core Usage倍率によるオーバークロックで全コア最大動作倍率も引き上げている場合は、電力制限や臨界温度を使用して、高負荷時のCPUコアクロックに制限をかけ、CPU温度や消費電力を下げます。
CPU詳細設定を開き、Turbo Power制限を有効にすると電力制御関連の設定が表示されます。
「瞬間許容電力制限値(Short Duration Power Limit、PL2)」、「許容電力上限値(Long Duration Power Limit、PL1)」という2つの電力制限機能があり、電力制限がかかる閾値(単位はW)と電力制限がかかるまでの時間を設定できます。
電力制限がかかるとCPU Package Powerがその指定電力内に収まるようにコアクロックに制限がかかります。


CPU温度が一定以上(臨界温度, Tj Max)に達した時にCPUコアクロックを下げる、所謂、サーマルスロットリングが発生する閾値を指定するのがCPU加熱保護()です。
Tj MaxはIntel Core Ultra 200SシリーズCPUでは一般的に105度に設定されています。基本的には上記のPL1/PL2の電力制限でCPUクーラーの性能に応じたコアクロック制限をかけ、Tj MaxはCPUクーラーに故障が発生した時のセーフティ的な使い方オススメです。

「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」はThermal Velocity Boostの設定に対応しています。
Thermal Velocity Boostはコアクロックを上昇させる機能のような名前ですが、実際には、By Core Usage倍率に対して、TVB Ratio Clippingという設定によってCPU温度が閾値以上の時に動作倍率を-1倍など設定値に応じて引き下げます。
一定温度以下であれば非常に高い単コア最大ブーストクロックが動作するコアがある、ゲーム(低温)とクリエイティブタスク(高温)で全コア最大動作倍率をそもそも切り替えたい、という時に使用する機能です。

Frequency Clipping TVB設定をperCore ModeもしくはTurbo Modeに変更することで、Thermal Velocity Boostの設定値を任意に変更できるようになります。
Thermal Velocity Boostによる動作倍率制御方法として、アクティブコア数に対して設定するTurbo Modeに加えて、Intel Core Ultra 200SシリーズCPUでは新たに、P/E-Core個別に設定するperCore Modeもが追加されています。
perCore ModeとTurbo ModeのどちらのTVB制御モードもアクティブコア数/各P-Coreに対して閾値温度/ネガティブオフセット倍率のセットを2種類ずつ設定できます。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPU特有の注意点として閾値温度は設定値よりも5度高い温度になるようです。55度で設定した場合、60度以上で設定したネガティブオフセット倍率が適用されます。
なお閾値温度が参照する温度はCPU Package全体の温度ではなく、
perCore ModeとTurbo ModeのどちらでもP-Core個別の温度とのこと。




Pコア毎、アクティブコア毎に個別に設定するのが面倒であれば、Parameter SettingをCore Syncにすることで一律で同じ設定を適用できます。
初期設定ではCore Syncになっているので、Thermal Velocity Boostのパラメーターを複数個別に設定したい場合はCore Splitに変更してください。

Intel Core Ultra 200SシリーズCPUは高効率コアE-Coreがアーキテクチャ上、AVX-512に対応していないので、P-Coreも含めたCPU全体としてもAVX-512に非対応です。
元々は発熱が非常に大きいAVX-512に対応するために用意されていた設定ですが、「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」でもAVX2実行時の発熱を低減する方法として、従来の倍率動作オフセットに加えて、Voltage Guardband Scaleと呼ばれる電力制限に近い機能を使用できます。

高度な電圧設定 - CPU/VRM設定の順に進むと、ロードラインキャリブレーションの設定が現れます。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUはMB VRMとCPUコアの間にDLVRがありますし、最近のCPUはストック状態で限界近くまでチューニングされているので、LN2極冷等の極端なOCでもない限り、Auto設定のまま放置で良いと思います。


一応少し補足すると、ロードラインキャリブレーションはCPU負荷時の電圧降下を補正してOCを安定させる機能です。
補正の強度としてLevel 〇で何段階か用意されています。Levelの添え字の数字が大きくなるほど電圧降下の補正は強くなり、OCは安定しやすくなりますが発熱も大きくなります。また強い補正では瞬間的に電圧のスパイクも生じるのでCPUにダメージが蓄積しやすいです。手動で設定する場合は真ん中あたりから始めて安定する設定値を模索していくのがおすすめです。

メモリのオーバークロックについて
メモリのオーバークロックについても簡単に紹介しておきます。メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。
そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
なお、 メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありません。メモリ設定を初期化できるようにCMOSクリアの手順を事前に確認しておいてください。
Intel XMPやAMD EXPOのOCプロファイルによるメモリOCは上の手順によるOC選別をメーカー側がすでに行い動作確認をしているので、メーカーが動作確認を行ったOCプロファイルを適用するだけで簡単にメモリをオーバークロックできます。
「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」はIntel環境に最適化されたXMP対応メモリだけでなく、AMD EXPO対応メモリのどちらでもOCプロファイルによるメモリOCが可能です。
GIGABYTE製マザーボードでは、メモリに収録されたAMD EXPOプロファイルからIntel製CPU環境でも使用可能なメモリOCプロファイルを自動生成する機能があるので、AMD EXPO対応メモリも使用できます。
「エクストリーム・メモリ・プロファイル(XMP)」でプロファイルを選択することで、OCプロファイルによるメモリOC設定の適用が可能です。

メモリ周波数は「DRAM周波数(DRAM Frequency、システムメモリマルチプライヤ)」という項目のプルダウンメニューから動作クロック(倍率)を任意に設定可能です。メモリ周波数もBCLKに対する倍率で動作周波数が決まります。
XMP/EXPOを使用せず、「DRAM Frequency」の設定値が自動(Auto)になっている場合は、使用するメモリにSPD情報として収録されている動作クロック4800MHz、5600MHzなどのメモリ周波数およびタイミングによる定格動作となります。

高度なメモリ設定の項目を開くと、ギアモードの設定項目が現れます。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUは動作周波数が高速なDDR5メモリだけをサポートするので、そのメモリコントローラー周波数(IMC周波数)は、メモリ周波数に対して1:2同期のGear2(メモリ周波数が6400MHzならメモコンは3200MHz)、1:4同期のGear4(メモコンが1600MHz)という2つの動作モードがあります。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUはIMCのOC耐性個体差にも依りますが、メモリ周波数 8400MHzくらいまでは1:2同期でも動作するようです。


メモリタイミングの個別打ち込み設定も可能です。

メモリタイミングを手動で設定する場合、基本的にはOCメモリ製品のスペックとして公表されることの多い、「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS Read/Write (tRCD)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な4タイミングと、加えて「Command Rate:1 or 2」と「Refresh Cycle Time (tRFC)」の6つ以外はAutoのままでいいと思います。

高メモリクロックのOC時にWindowsの起動や軽い動作までは安定するものの、メモリストレステストでエラーが出る程度の状態であれば、「Write Recovery Time (tWR)」や「CAS Write Latency (tCWL)」をいくつか引き上げることで安定する可能性があります。
メモリOCで調整するサブタイミングにおいて「Refresh Interval (tREFi)」だけは数字が大きいほどメモリ動作が高速・低遅延になります。またtREFiはメモリ温度によるメモリエラー発生にも影響の大きい設定値です。
tREFiの設定値は『256×整数値 - 1』がよく使用されます。例えば256*128-1=32767は低遅延な反面、メモリ温度にシビアです。256*32-1=8191は速度はそこそこですが、温度に対して耐性が高い設定という感じです。
OCプロファイル適用時の自動設定についても、ベンチマークスコア重視で25000~32000程度だったり、安定性重視で6000~8000程度だったり、MBメーカーやモデルによってまちまちです。

メモリ電圧が1.300~1.400V程度の一般的な常用メモリOCであれば60~80mm径のファンで風を当ててやるだけでメモリ温度を50度前半かそれ以下に抑えることが可能です。
メモリ温度が60~70度を超えて発生する温度原因のメモリエラーについてはメモリ設定を調整するよりもスポットクーラーを増設して温度を下げる対策のほうが手っ取り早く楽なのでオススメです。
ただ8000MHz超のハイクロックかつ1.450V以上の高電圧の場合はファンを使っても十分に冷やすのが難しく、55度~60度に冷やしても温度原因でエラーが生じる可能性があります。その場合は、tREFiをAuto設定の設定値から引き下げる形で微調整をしてみてください。

メモリの周波数OCを行う際は「DRAM電圧(DRAM VDD Voltage)」の項目を昇圧します。
DDR5メモリに対応したマザーボードでメモリ周波数を6000MHz以上にOCする場合はメモリ電圧を1.300~1.400Vに盛ってください。メモリをOCする場合は最初から1.350V以上にDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。

加えてメモリ周波数やIMC周波数をOCする時に調整した方がいい電圧設定として、DDR5メモリ対応マザーボードの場合は「VCCSA(CPU System Agent Voltage)」、「DRAM VDDQ(DRAM VDDQ Voltage)」、「CPU VDD2(Memory Controller Voltage)」の3つを調整すると良いようです。
DRAM VDDQとCPU VDD2は簡単にDRAM VDDと揃えればOKです。
GIGABYTE製のIntel Z890マザーボードの場合、VCCSAが2カ所あるのと、CPU VDD2とCPU VDDQがあり、またメモリOCに関連しそうな設定として、Internal Memory(おそらくこれが他社MBで言うところのIMC電圧)という電圧設定があります。
最初はOCプロファイルの適用だけ試してみて、それでダメなら、2カ所のVCCSAは1.100~1.250V程度、Internal Memoryを前述の通り、DRAM電圧に揃える形で昇圧してみてください。DRAM電圧制御の項目にあるCPU VDD2とCPU VDDQは放置でOKです。

Intel XMP3.0/AMD EXPOなどDDR5メモリのOCプロファイルは従来よりも拡張され、計5つのプロファイルを保存できるようになっています。
このうちの1つ~4つはメモリメーカーが使用しますが、未使用の残りは書き換え対応でユーザーが利用可能です。

「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」ではBIOS上でユーザー用XMPプロファイルを編集できます。


その他のOC設定やTipsについて
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUやZ890マザーボード環境における、その他のOC設定やTipsについていくつか紹介しておきます。Windows OS上でCPUのOC設定が正常に適用されているか確認する方法として、Intel純正アプリケーション Extreme Tuning Utility (XTU)を使用する人は多いと思います。

Intel Core Ultra 200SシリーズCPUとWindows 11 24H2など最新Windows環境ではVBS(Virtualization Based Security;仮想化ベースのセキュリティ)が標準で有効になるようで、特定の条件を満たさないとXTUがそもそも起動できません。
なおよく言及される設定として、Windows設定のデバイス セキュリティ内にある、コア分離、メモリの整合性をオフにしても、VBSそのものは無効にならず、下の状態ではXTUを起動できません。

『Windowsアップデートを最新にする』、『BIOSを最新バージョンにアップデートする』は分かり易いのですが、最後の『Undervolt Protectionを有効にする』が不慣れなユーザーには難しいと思います。
GIGABYTE製マザーボードの場合、Tweakerタブ内のCPU詳細設定という項目内にUndervolt Protectionが配置されています。


「Performance Preferrences」、「Intel Default Settings」で定格動作プロファイルが適用されていれば、通常、Undervolt Protectionは有効になっていると思いますが、XMPのメモリOC等で勝手に無効化されることもあるので、XTUを使用する人はAutoから手動で有効に切り替えておいてください。
もしくは個人がゲーム用等でPCを使う分には仮想化ベースのセキュリティが必要かというと微妙です。
詳細タブのCPU設定に配置されている「Intel Virtualization Technology」を無効に切り替えるとVBSそのものを無効化できるので、自己責任にはなりますが、XTU上で低電圧設定を行いたい場合(Undervolt Protectionを無効にする必要がある)には検討してみてください。
GIGABYTE製マザーボードの場合、Settingsタブからその他を開くと、「VT-d」の名前でIntel Virtualization Technologyの設定が配置されています。

帯域ベンチ等で効果は確認できるものの、P-Core/E-CoreのOCに比べて実用性能への影響があるかというと微妙ですが、Intel Core Ultra 200SシリーズCPUではRing(キャッシュ)、SoCタイルのD2DやNGUといったインターコネクト(fabric)類もOCの対象になっています。
キャッシュ動作倍率は「CPUキャッシュ最大動作倍率(Max CPU Cache Ratio)」から変更可能です。CPUコアクロック同様にベースクロックに対する動作倍率でキャッシュの動作周波数を設定できます。

Intel Core Ultra 200SシリーズCPUではキャッシュ用のDLVRがあるので、Ring DLVR Voltageから個別に電圧を設定できます。

Intel Core Ultra 200SシリーズCPUではSoCタイルのD2DやNGUといったインターコネクト(fabric)類もOCが可能です。
OCするとAIDA64のメモリ・キャッシュベンチマークで帯域幅の向上、遅延の低減は確認されていますが、 やはりP-Core/E-CoreやメモリそのもののOCに比べると実用的な効果はよく分からないというのが正直なところです。


Intel Core Ultra 200SシリーズCPUではD2DとNGUにも専用のDLVRがあるので、VNNAON Voltageから個別に電圧を設定できます。

「Ai Overclock Tuner」から「Manual」モードもしくは「XMP (D.O.C.P)」モードを選択するとベースクロック(BCLK)の設定項目が表示されます。
デフォルトのAutoでは100MHzに固定されていますが、設定値を直打ちすることで任意に設定が可能です。CPUコアクロックはBCLKに対する動作倍率で設定されるのでBCLK110MHz、動作倍率45倍の場合はコアクロック4.95GHz動作となります。ただしBCLKを使用したOCはかなり上級者向けなので通常はAutoか100MHzが推奨です。

メモリ、NGU、D2Dには別にSOC BCLK Frequencyという設定項目があり、CPUやキャッシュとは独立して異なるベースクロックを設定できます。

GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7の動作検証・OC耐性
BIOS周りの筆者的に気になるところの紹介はこのあたりにしてGIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7を使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」にCore Ultra 9 285Kを組み込んだ場合のBIOS標準設定における動作についてですが、P-Coreは最大57倍、全8コアで54倍の動作倍率になっており、CPUコア動作倍率は仕様値通りです。
電力制限についても、「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」の初期設定でPL1/PL2:250W、短期間電力制限時間Tau:56s、IccMAX:347Aなので、Power Delivery Profile:Performanceの定格設定通りです。



電力制限以外にもCPU動作に大きく影響する項目についてまとめました。
Turbo Boost Max 3.0はアクティブなタスクに対して単コア最大動作倍率など最も高速に動作している(電圧特性に優れた)コアを割り当てる機能です。
Thermal Velocity Boostは閾値温度以下においてブーストクロックを引き上げる機能と説明されていますが、機能の実装としてはBy Core Usage倍率に対してTVB Ratio Clippingという設定によってCPU温度が閾値以上の時に動作倍率を-1倍に(正確にはCPU毎に設定された倍率に)引き下げるという形になっています。
AVX Voltage Guardband Scaleは該当するAVX命令実行時のコア電圧を調整する機能です。0.00~2.00の範囲内で設定し、定格設定は1.00です。1.00以下では低電圧化、1.00以上では高電圧化します。(マザーボードに依っては128を基準に0~255の整数値で設定)
低電圧化というよりもAVX実行時の電力制限(AVX限定のPL1)に近い動作なので、Scale=0.01など極端な設定でもクラッシュすることはありませんが、性能は低下するものと思われます。
GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7 (BIOS:F16c) Core Ultra 9 285Kの標準動作設定 |
||
標準設定 | 定格 | |
Power Delivery Profile |
Performance | Performance |
単コア最大倍率 | 57 | 57 |
全コア最大倍率 | 54 | 54 |
Turbo Boost Max 3.0 | On | On |
TVB Ratio Clipping | 1C: NA 2C~8C: 70℃ -1x |
1C: NA 2C~8C: 70℃ -1x |
PL1, PL2, Tau | 250, 250, 56s |
250, 250, 56s |
IccMAX | 347A |
347A |
AVX Offset | 0 | 0 |
AVX Voltage Guardband | 1.00 |
1.00 |
備考 |
特になし |
続いてGIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7を使用した場合のCPUとメモリのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。
まずは「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」に24コア32スレッドCPUのCore Ultra 9 285Kを組み合わせて長時間負荷をかけ続けた時に、VRM電源周辺温度はどれくらいなのか、サーモグラフィーカメラ搭載スマートフォン CAT S62 PROを使用してチェックします。
CPUを定格で運用もしくはOC設定を適用した際のCPU温度やVRM電源温度を検証するストレステストについては、下記の動画エンコードを使用しています。
4K動画ファイル(4K解像度、60FPS、5.7GB)をソースとしてHandBrake(x264)を使ってエンコードを行います。
Core Ultra 9 285Kは24コア24スレッドのCPUなので、同じ動画のエンコードを4つ並列して実行し、30分程度負荷をかけ続けます。ストレステスト中のファン回転数は一定値に固定しています。

注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から筆者の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
まずは単純に「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」でIntel Default SettingsをPerformanceとして、Core Ultra 9 285Kを定格で動作させてみました。メモリOCもせず、Core Ultra 200SシリーズCPUの定格であるJEDEC準拠の6400MHzにしています。

上記の動作設定においてストレステスト中のCPU温度やCPU使用率のログは次のようになりました。
CPUクーラーにはFractal Design Celsius S36を使用し、冷却ファンNoctua NF-A12x25 PWのファン回転数は1500RPMで固定しています。
Core Ultra 9 285KはPower Delivery Profile:PerformanceでIntel公式仕様の通りに動作させた場合、電力制限はPL1/PL2:250Wですが、IccMAX:347Aの電力制限も効いてくるので、動画エンコードやCinebenchのような非常に重いマルチスレッド負荷に対してはPL1を少し下回るCPU消費電力で変化しながら推移していきます。
360サイズAIO水冷CPUクーラーのように十分に冷却性能の高いCPUクーラーを組み合わせれば、CPU定格の
電力/電流制限の範囲内なら臨界温度 105度以下で運用可能です。

電力/電流制限が効くので動画エンコードなどのフル負荷においてCPUコアクロックが全コア最大動作倍率に張り付くことはありませんが、「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」のVRM電源温度などマザーボード原因でスロットリングが発生することはなく、Core Ultra 9 285KをP-Core All 4.9GHz、E-Core All 4.4GHz程度の実動値で安定して動作させることができました。

上記の動作設定で動画エンコードを行った時のEPS電源経由のCPU消費電力は230~260W程度です。

Core Ultra 9 285Kの定格動作で負荷をかけるとEPS電源経由のCPU消費電力は250W以上に達しますが、「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」のVRM電源周りの温度をサーモグラフィーで確認したところ、70度以下に収まりました。
最上位CPUのCore Ultra 9 285Kは定格運用でもCPU Package Powerで250Wが許容されており、VRM電源負荷が非常に大きいCPUですが、「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」ならAIO水冷CPUクーラーを組み合わせた、VRM電源周りがパッシブ空冷の状態でも標準装備だけで問題なく運用できます。



続いて、Intel Core Ultra 9 285KでメモリOCと電力制限の解除を行ったケースです。
メモリOC設定については検証機材メモリ「G.Skill Trident Z5 CK F5-8400C4052G24GX2-TZ5CK」に収録されたOCプロファイルを適用し、メモリ周波数 8400MHz、メモリタイミング 40-52-52-134、メモリ電圧1.400Vです。

マザーボードメーカーはもとより、同じメーカーの別モデルでも、Intel公式のPower Delivery Profile:Performanceに対するコアクロックの挙動は5%程度(200~300MHz程度)の差があります。
またメモリOCを行うとCPUコア以外の部分の消費電力も増え、電力効率は下がる傾向なので、メモリOC時の検証では合わせて、電力制限も解除しています。
電力制限解除の設定値は、PL1/PL2:300W、IccMax:450Aです。

メモリ周波数を8400MHzにOCしていますが、動画エンコードによるストレステストは問題なく完走できています。
また電力制限についても、PL1/PL2:300Wへと引き上げていますが、定格同様にIccMAX:450Aの電力制限も効いてくるので、PL1を少し下回るCPU消費電力で変化しながら推移していきます。
360サイズAIO水冷CPUクーラーのように十分に冷却性能の高いCPUクーラーを組み合わせれば、300Wまでの負荷なら臨界温度 105度以下で運用が可能です。

PL1:300W、IccMAX:450Aでも電力/電流制限が効くので動画エンコードなどのフル負荷においてCPUコアクロックが全コア最大動作倍率に張り付くことはありませんが、「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」のVRM電源温度などマザーボード原因でスロットリングが発生することはありませんでした。
メモリOCをしているので電力に対するコアクロックの効率は下がりますが、それでも電力制限を解除しているので、Core Ultra 9 285Kを定格動作時よりも高い、P-Core All 5.0GHz、E-Core All 4.4GHz程度の実動値で安定して動作させることができました。

上記の動作設定で動画エンコードを行った時のEPS電源経由のCPU消費電力は250~280W程度です。

Core Ultra 9 285Kで8400MHzのメモリOCに加えて、PL1/PL2:300Wの電力制限解除を行い、フル負荷をかけるとEPS電源経由のCPU消費電力は300W前後に達しますが、「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」のVRM電源周りの温度をサーモグラフィーで確認したところ、70度前後に収まりました。
「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」ならAIO水冷CPUクーラーを組み合わせた、VRM電源周りがパッシブ空冷の状態でも、Core Ultra 9 285Kの常用OCに問題なく対応できます。



最後に「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」のメモリOC性能についてもチェックしておきます。
マザーボードのメモリOC検証についてはスポットクーラーによってメモリを冷却した状態でメモリストレステストを実行しています。
DDR5メモリにおいて6000MHz台の低レイテンシ設定や、7000~8000MHzのハイクロック設定は温度影響によるメモリエラーが結構シビアですが、温度原因のエラー対策はサブタイミングや電圧を微調整するよりもファンを1台増設するほうが手っ取り早く簡単に解消できます。さらに詳しくはメモリOCに関する解説のtREFI関連の部分で。

ゲーム用途でメモリOCを行う場合は実用的に高温になることがないので、あまり気にする必要はありませんが、動画エンコードなどシステムメモリを大量に使用するクリエイティブタスクについてはメモリ温度がメモリストレステスト的に上昇するので実用的にも対策が必要になります。
なお、「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」の環境(BIOS:F16c)については、ハイクロックや低レイテンシなメモリOCにおいて温度原因によるメモリエラーが発生しやすい傾向でした。今後のBIOSアップデートでその辺りの安定性についても改善を期待したいところ。
温度に対してセンシティブなtREFI含めメモリ設定がほぼ同じでエラーが発生しない環境(他マザーボード)もあるので、何か見落としている電圧設定があるか、メモリ回路との相性などエラー発生に理由はありそうですが、筆者も原因を究明できていません。
「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」は自動設定でtREFIが20000~36000程度とかなり性能重視なチューニングになっているので、熱耐性重視の6000~8000程度に下げてみるのも1つですが、上記の通り上記の通り、ファンで冷却するのが一番手っ取り早く、確実な対策です。
GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7の環境(BIOS:F16c)のOC検証では検証機材メモリとして24GB×2枚組み48GB容量のCUDIMM DDR5メモリキット「G.Skill Trident Z5 CK (型番:F5-8400C4052G24GX2-TZ5CK)」を使用しています。

同メモリに収録されたOCプロファイルを適用するだけで、メモリ周波数 8400MHz、メモリタイミング 36-46-46-115が安定動作しました。メモリコントローラー周波数UCLKも1:2同期です。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUと一般的なx4メモリスロットのZ890マザーボードにおいて、CUDIMM DDR5メモリでは常用最速クラスのOC設定です。

上は新たにサポートされたCUDIMMのメモリOCですが、「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」はDDR5メモリで一般的なUDIMMにも対応しているので、UDIMMのメモリOC結果についてもいくつかチェックしていきます。
24GB×2枚組み48GB容量のDDR5メモリキット「G.Skill Trident Z5 RGB(型番:F5-7600J3848F24GX2-TZ5RK)」に収録されたOCプロファイルによって、メモリ周波数 7600MHz、メモリタイミング 38-48-48-121が安定動作しました。
前世代Z790マザーボードではメモリスロット 2基のOC特化マザーボードでないと安定動作が難しかったスペックです。

Crucial DDR5 Pro Overclocking UDIMMシリーズの16GB×2枚組みで6400MHz OC対応モデル(型番:CP16G64C38U5B)についても検証してみました。
高性能OCメモリというとG.Skillがやはり有名で、筆者も自分のPCや各種検証機材として愛用していますが、Crucial DDR5 Pro Overclocking UDIMMシリーズはMicron純正メモリモジュール確定で高信頼性、入手性も高く、安価なので検討する人も多い製品だと思います。

16GB×2枚組み48GB容量のDDR5メモリキット「Crucial DDR5 Pro Overclocking(型番:CP16G64C38U5B)」に収録されたOCプロファイルによって、メモリ周波数 6400MHz、メモリタイミング 38-40-40-84が安定動作しました。

GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7のレビューまとめ
最後に「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、レビュー後の所感となります。良いところ
- 黒色ベースのシンプルなデザイン
- 80A対応SPSで構成された堅牢な19フェーズVRM電源
- 285K定格の200W超のCPU消費電力でもVRM電源温度は70度以下に収まる
- 24GB×2枚組みDDR5 CUDIMMでメモリ周波数8400MHz/CL40が安定動作
- 24GB×2枚組みDDR5 UDIMMでメモリ周波数7600MHz/CL38が安定動作
- 重量級グラボにも耐えるメタルアーマー採用PCIEスロット
- PCIEスロットのロック解除が簡単な EZ-Latch Plus
- NVMe接続M.2スロットをマザーボード上に4基設置 (うち1基はPCIE5.0x4対応)
- 全てのM.2スロットに大型SSDヒートシンクを装備
- TB4対応Type-Cポート 1基を標準搭載(iGPU経由でビデオ出力も可能)
- Realtek製2.5Gb有線LANを標準搭載
- Wi-Fi 7&Bluetooth5.4対応無線LAN(MediaTek MT7925)を標準搭載
- Realtek ALC1220の高性能オンボードオーディオ
- CPU・RAMなしでBIOSのアップデート・修復が可能な「Q-FLASH PLUS」に対応
- 税込み4.6万円とZ890マザーボードでは安価 (2025年1月現在)
- 標準搭載のネットワーク機器のうち無線LANはWindows 11 24H2の標準ドライバに非対応
- ハイクロック、低レイテンシなメモリOCが高温時エラーにセンシティブな傾向(BIOS:F16c)
「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」は最大で24コアのCore Ultra 200SシリーズCPUにも対応できる高耐久・低発熱な19フェーズVRM電源回路を搭載することに始まり、PCIE5.0対応を含む4基のM.2スロット、Thunderbolt4対応USB Type-Cポート、2.5GbイーサやWi-Fi 7対応無線LANの高速NIC、ALC1220によるハイレゾ対応オンボードサウンドなど、最新のゲーミングマザーボードに必要な機能が十分に搭載されています。
上記の通り必要十分な機能性に加えて、「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」は2025年1月現在、税込み4.6万円程度とIntel Z890マザーボードの中では安価に販売されています。コスパ重視で最新CPUを採用したゲーミングPCを組みたい人にとって最適な1台だと思います。
GIGABYTE製マザーボードのBIOSではクラシカルなUIが採用されており、OSインストールのブート設定からオーバークロックまで多方面に使いやすいUIだと思います。管理人個人的にも好みです。
マザーボードのOC耐性を評価する上で重要なファクターになるVRM電源について、「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」は優秀な性能を発揮しました。
「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」であれば市販のAIO水冷クーラーやDIY水冷など環境を選ばず、VRM電源周りは標準装備のまま、Core Ultra 9 285Kの定格設定を運用できます。
市販クーラーで冷却性能が最高クラスの360サイズAIO水冷でもCore Ultra 9 285KはCPU温度的に定格PL:250Wよりも電力を増やすのが難しく、OCの伸びしろはそれほど大きくありませんし、これで十分です。
Core Ultra 9 285Kはアウトボックス時点で絶対性能を重視した電力制限が適用されており、標準でEPS電源経由のCPU消費電力が300W前後に達しますが、その強烈なVRM電源負荷に対しても、80A対応SPSなどで構成される19フェーズの超堅牢なVRM電源回路が適切に熱を分散します。
「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」のVRM電源クーラーは重厚なアルミニウム塊型ヒートシンクが備え付けてあり、CPUソケットの上側/左側のヒートシンクをヒートパイプで連結するという構造です。
その他にも高性能サーマルパッドなどVRM電源クーラーの設計にこそ工夫が見られますが、あくまでパッシブ型という構造のまま、スポットクーラーの増設を必要とせずに、200W超の負荷に対してVRM電源温度を70度以下に収めることができました。
メモリOCについては、検証機材に使用しているCUDIMMのG.Skill Trident Z5 CK(F5-8400C4052G24GX2-TZ5CK)でメモリ周波数 8400MHz、一般的なUDIMMのG.Skill Trident Z5 RGB(F5-7600J3848F24GX2-TZ5RK)でメモリ周波数 7600MHzがOCプロファイルを適用するだけで安定動作しました。
他にも入手性の高いCrucial DDR5 Pro Overclockingの6400MHz/CL38の低レイテンシOC等も安定動作していますし、現状、メモリOC回りで「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」に不足を感じることはないはずです。
以上、「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」のレビューでした。

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80A対応SPSで構成される19フェーズの堅牢VRM電源、Thunderbolt4を搭載するゲーミングモデル「GIGABYTE Z890 AORUS ELITE WIFI7」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) February 8, 2025
4万円台で十分過ぎる性能の高コスパなゲーミングマザーボード。
Core Ultra 9 285Kや8400MHz OCメモリも安定して運用できるのか徹底検証… pic.twitter.com/uE8UhIBEB2
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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