Intel Core i7 13700K


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Intel第13世代Raptor Lake-Sシリーズから16コア24スレッドで倍率アンロックなOC対応の上位モデル 「Intel Core i7 13700K」をレビューします。
前世代最上位モデルのCore i9 12900Kや同クラスのCore i7 12700K、競合製品のRyzen 9 7900X、Ryzen 7 7700Xと比較して、クリエイティブタスクやPCゲーミングにおいてどれくらい性能を発揮するのか、各種ベンチマーク比較によって徹底検証していきます。
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製品公式ページ:https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/products/sku/230500/intel-core-i713700k-processor-30m-cache-up-to-5-40-ghz/specifications.html





Intel Core i7 13700K レビュー目次


1.Intel Core i7 13700Kの外観・付属品・概要
2.Intel Core i7 13700Kの検証機材・動作設定


3.Intel Core i7 13700Kの動作クロック・消費電力・温度

4.Intel Core i7 13700Kの基礎ベンチマーク

5.Intel Core i7 13700Kのクリエイティブ性能
  ・3Dレンダリング性能
  ・動画編集・エンコード性能
  ・RAW現像・写真リタッチ性能
  ・PCゲーム/スマホアプリのビルド性能
  ・AIアップスケール・自動分類性能

6.Intel Core i7 13700Kのゲーミング性能
  ・4K解像度/60FPSターゲット
  ・フルHD解像度/ハイフレームレート

7.CPUエンコーダとリアルタイム配信について

8.Intel Core i7 13700Kのレビューまとめ
  ・温度・消費電力について
  ・クリエイティブ性能について
  ・ゲーム性能について
  ・総評



【機材協力:Intel】



Intel Core i7 13700Kの外観・付属品・概要

「Intel Core i7 13700K」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。またこの章では「Intel Core i7 13700K」の仕様等について簡単に触れておきたい概要もあれば紹介します。
「Intel Core i7 13700K」の製品パッケージは第12世代から配色が少し変わっていますが、イラストデザインはほぼ同じです。
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パッケージのチェックはこの辺りにして、肝心の「Intel Core i7 13700K」のCPU本体を見ていきます。
「Intel Core i7 13700K」など第13世代CPUは第12世代CPUと同じくLGA1700ソケットのCPUなので、LGA1200/115X以前の正方形から、CPU形状は縦長の長方形に変わっています。
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「Intel Core i7 13700K」など第13世代CPUを第12世代CPUと比較すると外見はほぼ同じです。PCB基板の背面中央に実装された素子のレイアウトだけ微妙に異なりますが。
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「Intel Core i7 13700K」の重量はCore i9 12900Kと同じくは36gでした。
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「Intel Core i7 13700K」も共通すると思いますが、第12世代CPUと第11世代CPUを参考にすると、CPU基板本体の重量は6~7gでほぼ同じですが、第11世代CPUのIHSの重量が21gに対して、第12世代CPUのIHSの重量は29g、約40%も質量が増していました。
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Intelの公式リリースによると、第12世代CPUでは『CPUダイとヒートスプレッダの間にはTIMとしてSTIMが採用され、前世代よりもさらにCPUダイとSTIM層を薄くし、放熱バッファとなるヒートスプレッダを厚くすることでCPU温度的にも改良が施されている』とのこと。
Intel 12th-Gen AlderLake-S_Thermal Improvement

第11世代ではIHS周辺の素子レイアウトが非常にタイトで難しかったのですが、第12世代CPUは余裕があり殻割りそのものは難しくありません。ROCKITCOOLからは専用の殻割りツールと、純正よりも大きいオリジナル銅製IHSが発売されています。



パッケージや外観の話はこの辺りにして、続いて「Intel Core i7 13700K」のスペックについて見ていきます。
「Intel Core i7 13700K」は、8コア16スレッドの高性能P-Coreと8コア8スレッドの高効率E-Coreを組み合わせた16コア24スレッド(8C/16T+8C8T)のCPUです。
P-Coreの単コア最大ブーストクロックは5.4GHz(TBM3.0有効時)、全コア最大ブーストクロックは5.3GHzとなっています。CPU消費電力の指標となるProcessor Base Powerは125W、Maximum Turbo Powerは253Wです。
Intel 13th-Gen RaptorLake-S_lineup

「Intel Core i7 13700K」を、前世代最上位のIntel Core i9 12900Kや、競合AMDのメインストリーム向け上位モデルであるRyzen 9 7950XやRyzen 9 7900Xと比較すると次のようになっています。
Intel Core i7 13700K スペック簡易比較

Core i7 13700K
Core i9 12900K Ryzen 7 7700X
Ryzen 9 7900X
コアスレッド 16コア
24スレッド
16コア
24スレッド
8コア
16スレッド
12コア
24スレッド
P-Core
8C16T 8C16T 8C16T 12C24T
E-Core 8C8T 8C8T - -
ベースクロック
P-Core (E-Core)
3.4GHz
(2.5GHz)
3.2GHz
(2.4GHz)
4.5GHz 4.7GHz
全コア最大
P-Core (E-Core)
5.3GHz
(4.2GHz)
4.9GHz
(3.7GHz)
5.3~5.4GHz 5.2~5.5GHz
単コア最大
P-Core (E-Core)
5.4GHz
(4.2GHz)
5.2GHz
(3.9GHz)
5.4GHz 5.6GHz
オーバークロック
O
L2/L3 キャッシュ 24MB / 30MB
14MB / 30MB 8MB / 32MB 12MB / 64MB
PBP (TDP) 125W 105W 170W
MTP (max PPT) 253W 241W 142W 230W
CPUクーラー X
iGPU
O
対応メモリ
DDR5
DDR4
(MBに依存)
DDR5
メモリ ch / pcs
2 / 4
CPU直結PCIEレーン
PCIE5.0x16
+
PCIE4.0x4
PCIE5.0x16
+ PCIE5.0x4×2
おおよその国内価格
2022年12月
(北米希望小売価格)
6.4万円
(409ドル)
7.9万円
(589ドル)
5.8万円
(399ドル)
8.0万円
(549ドル)
iGPU非搭載モデル
の価格
6.1万円
(384ドル)
7.7万円
(564ドル)


Raptor Lake(ラプターレイク)のコードネームで呼ばれるIntel第13世代Core-S CPUでも第12世代CPUと同じく、高性能コア「P-Core」と高効率コア「E-Core」の2種類の混成でCPUを構成するIntel Hybrid Computing Architectureが採用されています。
Intel 12th-Gen AlderLake-S_Intel Hybrid Computing Architecture

Intel第13世代Raptor Lake-Sでは、P-Core/E-Coreのコアスレッド数が変更(E-Coreの増加)、P-Coreのコアクロックの上昇、第12世代と比較してコア当たりのL2/L3キャッシュ容量の増量という大きく3つの変化があります。
P-Coreの数は第13世代CPUと第12世代CPUで共通ですが、アーキテクチャの改良により省電力性能が向上し、単コア最大ブーストクロックが上昇しています。
またE-Coreの最大数量が第13世代CPUでは8コアから16コアに増えており、物量的にもマルチスレッド性能が大きく向上しています。
Intel 13th-Gen RaptorLake-S_change-12th-K
さらにP-Core 1コアあたりのL2キャッシュは1.25MBから2.00MBに、E-Core 4コアで共有されるL2キャッシュは2.00MBから4.00MBに、L3キャッシュは最大30MBから最大36MBへと増量しています。
Intel 13th-Gen RaptorLake-S_change-12th
これらの改良によって、Core i9 13900KであればCore i9 12900Kと比較して15%のシングルスレッド性能の向上、41%のマルチスレッド性能の向上を果たしています。
Intel 13th-Gen RaptorLake-S_Perf

電力制限の最大値であるMTPは絶対性能を重視して定格値が設定されており、ワットパフォーマンス的なスイートスポットから大きく外れているため、Core i9 13900Kを始めとしてIntel第13世代CPUの一部モデルはCPU温度と消費電力が非常に高いと評価される傾向にあります。
Core i9 13900Kのマルチスレッド性能は電力制限PL(=PL1=PL2)を250W程度から125W程度まで下げても性能低下は20%程度に収まり、また241W動作のCore i9 12900Kと比較して、Core i9 13900Kは電力制限を65Wまで下げても同等のマルチスレッド性能を発揮できるとのこと。(検証ソフトウェアはSPECint_rate_base2017 n-copy)
Intel 13th-Gen RaptorLake-S_PpW


Intel第13世代Raptor Lake-Sプラットフォームの特長として、前世代とおなじく従来のDDR4メモリを引き続きサポートしています。
DDR5メモリも入手性が上がっているので性能的にはDDR5メモリで組むのがオススメですが、競合のRyzen 7000はAM5マザーボードでDDR4をサポートしないので、既存のメモリを使ってCPU&MBだけ更新したい人には魅力です。
また次世代システムメモリのDDR5メモリについては定格メモリ周波数が5600MHzに引き上げられています。(第12世代の定格メモリ周波数は4800MHz)

Intel第13世代Core-Sでは組み合わせて使用するマザーボードによってサポートされるメモリ規格が変わるので注意が必要です。
ASRock、ASUS、GIGABYTE、MSIの主要4社の製品を見たところ、ハイエンドからアッパーミドルまでの上位製品は基本的にDDR5対応となっています。ミドルクラス以下ではDDR5対応とDDR4が混在し、メーカー毎にラインナップ展開が異なります。
ASUS製Z690マザーボードを例に挙げるとDDR5対応の「ASUS PRIME Z790-P」とDDR4対応の「ASUS PRIME Z790-P D4」のようにほぼ似た名前、対応メモリ以外の仕様もほぼ同じ、といった製品もあるので使用するメモリに合わせて購入するマザーボードには注意してください。(各社表記なしはDDR5対応、DDR4対応の場合は”DDR4”や”D4”の表記が末尾に付くことが多いようです)
ASUS PRIME Z790-P_and_D4

「Intel Core i9 13900K」など第13世代CPUのCPU直結PCIEレーンのPCIEレーンについては第12世代CPUと同じ仕様です。
グラフィックボード接続使用されるx16レーンは、PCIE4.0と比較して2倍の帯域で最大64GB/sの通信が可能な次世代規格のPCIE5.0対応です。前世代同様にNVMe SSD用のPCIEレーンを備えますが、こちらはPCIE5.0に非対応で、帯域はPCIE4.0x4のままです。

チップセットについてはZ690などIntel 600シリーズチップセットが引き続きIntel第13世代Raptor Lake-SシリーズCPUをサポートしますが(対応BIOSにアップデートが必要)、新たにZ790などIntel 700シリーズチップセットが登場します。
Z790はZ690と比較して、チップセット経由のPCIEレーン総数は28レーンで共通ですが、PCIE4.0対応PCEIレーン数が12レーンから20レーンに増えています。(代わりにPCIE3.0対応は16から8へ削減)
またマザーボードに実装可能なUSB3.2 Gen2x2(20Gbps)の総数が4基から5基へ増えています。
Intel 13th-Gen RaptorLake-S_Platform
Intel_Z790_diagram

Intel第13世代CPUをサポートするZ790/Z690チップセットをZ590など歴代Zシリーズチップセットと比較すると、CPU-PCH間帯域やPCH経由のPCIEレーンの増強はやはり目に留まりやすいポイントですが、その他にもZ790チップセットの特長として、USB3.2 Gen2x2 (20Gbps)対応、内部コントローラーによるWiFi 6E対応、外部コントローラーによるThunderbolt4対応などが挙げられます。
Intel Z790 Chipset_vs-Z690
またIntel 700シリーズチップセット搭載マザーボードのうち、コアクロックのOCに対応しているのは最上位のZ790だけです。
下位チップセットでは定格のBy Core Usage倍率を上回るような動作倍率設定(OC設定)を行うことはできません。
一方で、動作倍率の引き下げによる省電力化は可能ですし、定格動作倍率の中でも動作電圧のマイナスオフセットによる省電力化、一定電力制限内での性能向上を狙うことは可能です。
省電力運用ならH670やB660の下位チップセット搭載マザーボードでも十分と言えばあながち間違いでもありませんが、V-Fカーブ調整に対応するのはZ790/Z690だけなので実のところ省電力運用においても上位互換です。
Mini-ITX環境はI/O数的に下位チップセットで十分かと思いきや、省電力運用や冷却リソースが限られた中での性能追求ならZ790かZ690がベストな選択肢になり得ます。
Intel Z790 Series_OC-Feature



Intel Core i7 13700Kの検証機材・動作設定

以下、「Intel Core i7 13700K」の各種検証を行うベンチ機、および比較対象となる各CPUのベンチ機の詳細となります。
Intel LGA1700(Z790)環境 テストベンチ機の構成
CPU 【Intel第13世代CPU】
Intel Core i9-13900K (レビュー
Intel Core i9-13900 (レビュー
Intel Core i7-13700K (レビュー
Intel Core i7-13700 (レビュー
Intel Core i5-13600K (レビュー
Intel Core i5-13500 (レビュー
Intel Core i5-13400 (レビュー
マザーボード ASUS ROG MAXIMUS Z790 HERO
レビュー
CPUクーラー Fractal Design Celsius S36 (レビュー
Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー
メインメモリ G.Skill Trident Z5 Neo
F5-6000J3038F16GX2-TZ5N (レビュー
DDR5 16GB*2=32GB
6000MHz, CL30-38-38-96
メインメモリ
ゲーム性能の追加検証
G.Skill Trident Z5 RGB
F5-7200J3445G16GX2-TZ5RK (レビュー
DDR5 16GB*2=32GB
7200MHz, CL34-45-45-115
ビデオカード(共通) PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8
Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN
レビュー
システムストレージ(共通) Samsung SSD 980 PRO 500GB
レビュー
OS(共通) Windows 11 Home 64bit
電源ユニット(共通) Corsair HX1500i 2022 (レビュー
ベンチ板 STREACOM BC1 (レビュー

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比較に使用しているその他のテストシステムについてはこちらを参照してください。



Intel Core i9 13900KなどIntel第13/12世代CPUを検証するIntel LGA1700(Z790)環境では、検証機材マザーボードとして「ASUS ROG MAXIMUS Z790 HERO」を使用しています。


ASUS製マザーボードではBIOS設定のASUS Multicore Enhancementを”Disabled - Enforce All limits”にすれば、Intel公式仕様通りの電力制限が適用されます。
ASUS ROG MAXIMUS Z690 HERO_BIOS_Multicore Enhancement

ASUS製マザーボードではBIOS設定のASUS Multicore Enhancementを”Disabled - Enforce All limits”にすれば、Intel公式仕様通りの電力制限が適用されます。
ASUS ROG MAXIMUS Z690 HERO_BIOS_Multicore Enhancement

なおIntel第13世代Raptor Lake-Sシリーズについて、長時間電力制限PL1、短時間電力制限PL2、短期間電力制限時間TauのIntel公式仕様は下のテーブルの通りです。
通常はPL1=PBP(Processor Base Power)ですが、倍率アンロックのK付きCPUについては、PL1=PL2=MTP(Maximum Turbo Power)が公式仕様となります。
Intel第13世代CPUの電力制限仕様値

PBP PL1 PL2 Tau
Core i9
(8C16T+16C16T)
125W 253W 253W (56s)
65W 65W -W 28s
35W 35W -W 28s
Core i7
(8C16T+8C8T)
125W 253W 253W (56s)
65W 65W -W
28s
35W 35W -W 28s
Core i5
(6C12T+8C8T)
(6C12T)
125W 181W 181W (56s)
65W
65W -W 28s
35W
35W -W 28s
Core i3
(4C8T)
65W 65W -W 28s
35W
35W -W 28s


電力制限以外にもCPU動作に大きく影響する項目についてまとめました。
Turbo Boost Max 3.0はアクティブなタスクに対して単コア最大動作倍率など最も高速に動作している(電圧特性に優れた)コアを割り当てる機能です。
Thermal Velocity Boostは閾値温度70度以下においてブーストクロックを引き上げる機能と説明されていますが、機能の実装としてはBy Core Usage倍率に対してTVB Ratio Clippingという設定によってCPU温度が閾値(一般に70度)以上の時に動作倍率を-1倍に、正確にはCPU毎に設定された倍率に引き下げるという形になっています。
AVX Voltage Guardband ScaleはAVX2やAVX512を実行時のコア電圧を調整する機能です。0~255の整数値で設定し、定格設定は128です。128以下では低電圧化、128以上では高電圧化します。(マザーボードに依っては1.00を基準に0.01~1.99で設定)
低電圧化というよりもAVX実行時の電力制限(AVX限定のPL1)に近い動作なので、Scale=1でもクラッシュすることはありませんが、性能は低下するものと思われます。

Turbo Boost Max 3.0は多くの600シリーズマザーボードで基本的に有効になっています。Thermal Velocity Boostは600シリーズマザーボードでも機能強化版が実装されていますが標準ではオフになっています。マザーボードによっては電力保護や省電力化の一環で同機能を使用した電力制限が設けられていることがあります。
さらに備考として、Z690マザーボードの中にはCPU個体毎のV-Fカーブ(Adaptive Mode)にマイナスオフセットを適用する低電圧化や、CPU Package Powerのモニタリング値にマイナスオフセットを適用してブーストを引き上げるチューニングが標準が施されているものがあります。

検証機材として採用しているASUS ROG MAXIMUS Z790 HEROに関しては、ASUS Multicore Enhancementを”Disabled - Enforce All limits”にすれば、おおむねIntel公式仕様通りの電力制限が適用されます。
Thermal Velocity BoostのみMCE:Disabledでも無効のままでしたが、Boostの名前に反して、実際はBy Core Usage倍率に対して温度制限をかける機能なので、あまり検証には影響しません。
ASUS ROG MAXIMUS Z790 HERO(BIOS:0703)
Core i9 13900K 動作設定(MCE:Disabled)

標準設定 定格
単コア最大倍率 P/E
58/ 43
58/ 43
全コア最大倍率 P/E
55/ 43 55/ 43
Turbo Boost Max 3.0 On On
TVB Ratio Clipping Off On
PL1, PL2, Tau 253W, 253W, 56s
253W, 253W, 56s
AVX2 Offset 0 0
AVX2 Voltage Guardband 128 (1.00)
128 (1.00)
備考
-


ディスクリートGPU、グラフィックボードがゲーミング性能において重要なのは言うまでもありませんが、近年ではクリエイティブタスクでもGPU支援による性能向上が主流になっているので、CPU性能比較の統一検証機材として、2022年最新のウルトラハイエンドGPUを搭載したグラフィックボード「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN」を使用しています。
GPU for CPU Test

PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8は、ベイパーチャンバー構造のベースコアや、厚みのあるファンブレードをバリヤーリングで結合した重厚な冷却ファンを採用する4スロット占有大型GPUクーラーにより、各社AIBモデルの中でもトップクラスの静音性を実現しています。
メーカーのPNYは2022年に株式会社アスクが販売代理店契約を結んだばかりの新参なので国内での知名度は高くありませんが、北米など海外市場では30年以上に渡りコンシューマーならびにビジネス向けで電子機器の製造・販売を行う大手メーカーです。
国内正規品なら代理店を介してPNY公式のグローバル保証と同じ3年間の長期保証が受けられるところも魅力です。
「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8」をレビュー
PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN

Intel第13世代CPUの検証機ではシステムメモリとして、高級感のあるヒートシンクでデザイン面でも優れ、16GB×2枚組み32GBの大容量でメモリ周波数6000MHz/CL30の低レイテンシなメモリOCに対応した「G.Skill Trident Z5 Neo(型番:F5-6000J3038F16GX2-TZ5N)」を使用しています。
G.Skill Trident Z5 NeoはAMD EXPO対応メモリですが、Intel製CPUでも正常動作が期待できます。ARGB LEDイルミネーションを搭載したバリエーションモデル G.Skill Trident Z5 Neo RGBもラインナップされています。
「G.Skill Trident Z5 Neo」をレビュー。EXPOで6000MHz/CL30のOCを試す!
G.Skill Trident Z5 Neo

またG.SkillからはIntel XMP3.0対応DDR5メモリとしてG.Skill Trident Z5無印やARGB LEDイルミネーションを搭載したG.Skill Trident Z5 RGBも発売されており、互換性をより重視するなら、こちらもオススメです。
Core i9 13900Kなど一部の第13世代CPUについてはメモリ周波数7200MHz/CL34の高メモリクロックかつ低レイテンシなメモリOCに対応した「G.Skill Trident Z5 RGB(型番:F5-7200J3445G16GX2-TZ5RK)」を使用したゲーム性能も検証しています。
「G.Skill Trident Z5 RGB」をレビュー。XMPで7200MHz OCに対応!
G.Skill Trident Z5 RGB Black

ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 980 PRO 500GB」を使用しています。
Samsung SSD 980 PROは、PCIE4.0対応によって連続アクセススピードを最大で2倍に飛躍させただけでなく、ランダム性能の向上によってSSD実用性能においても前世代970 PROから大幅な向上を果たし、PCIE4.0アーリーアダプターなPhison PS5016-E16採用リファレンスSSDよりも高速なので、これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
「Samsung SSD 980 PRO 1TB」をレビュー。堂々の最速更新
Samsung SSD 980 PRO 1TB

360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。
「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
Noctua NF-A12x25シリーズのレビュー記事一覧へ
Noctua NF-A12x25 PWM chromax.black.swap


CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。


グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
Thermal Grizzly Kryonaut_apprication

サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。




Intel Core i7 13700Kの動作クロック・消費電力・温度

「Intel Core i7 13700K」に関する検証のはじめに、「Intel Core i7 13700K」の動作クロック、消費電力、温度など同CPUの基本的な動作についてチェックしていきます。

「Intel Core i7 13700K」は、8コア16スレッドの高性能P-Coreと8コア8スレッドの高効率E-Coreで構成された16コア24スレッドのCPUです。
アーキテクチャが変更されていますが、コアスレッド構成は前世代である第12世代CPUの最上位Core i9 12900Kと同じです。
Intel Core i7 13700K_CPU-Z
「Intel Core i7 13700K」の高性能P-Coreは8コア16スレッドのCPUであり、定格動作において1コア~8コアまで同時に負荷がかかった時の最大動作倍率は最大コア数から順番に[54, 54, 53, 53, 53, 53, 53, 53]です。P-Coreでは全8コアへ同時に負荷がかかっても最大で5.3GHz動作が可能となっています。
一方、高効率E-Coreは8コア8スレッドのCPUであり、定格動作において1コア~8コアまで同時に負荷がかかった時の最大動作倍率は一律に42倍です。E-Coreでは全8コアへ同時に負荷がかかっても最大で4.2GHz動作が可能となっています。
Intel Core i7 13700K_XTU
参考までに、「Intel Core i7 13700K」のコアtoコア遅延は次のようになっています。
第12世代では『P-Core同士<P-Core/E-Core間<E-Core同士』のように遅延が小さかったのですが、第13世代ではP-Core同士とP-Core/E-Core間が25~35ms程度でほぼ同じ、E-Core同士は40~50ns程度という感じに傾向が少し変わっています。
とはいえやはり、P-CoreとE-Coreの別種コア間で大きく遅延が増す傾向はなく、単純にコアの速さで遅延が決まっていると見ていいと思います。
Intel Core i7 13700K_latency-heatmap

HWiNFOから「Intel Core i7 13700K」のコアクロックの挙動を確認したところ、確かに負荷の軽い場面では最大5.4GHz程度で動作するコアがありました。
Intel Core i7 13700K_Boost-Clock_Single
また全コア最大動作倍率は特にゲーム性能で重要になりますが、今回レビューしている「Intel Core i7 13700K」はBy Core Usage最大動作倍率の通り、ゲームのような負荷の軽いシーンであればP-Core All 5.4GHz、E-Core All 4.2GHzで動作可能でした。
Rainbow Six Extraction 2022_12_10 10_51_35

またIntel第13世代Core-S CPUの製品仕様では、Processor Base Power(従来で言うところのTDP)が長期間電力制限/Power Limit 1(PL1)に、Maximum Turbo Powerが短期間電力制限/Power Limit 2(PL2)に一致します。
ただし今回レビューする「Intel Core i7 13700K」など倍率アンロックのK付きCPUは特例的に”PL1=PL2=MTP”なので、電力制限はPL1=PL2=253Wとなります。PL1とPL2が共通なのであまり意味はありませんが、Turbo Boost Power Time Window(短期間電力制限時間/Tau)は56sです。
Intel Package Power Control
「Intel Core i7 13700K」をASUS製マザーボードと組み合わせる場合、BIOS設定においてASUS Multicore Enhancementを”Disabled - Enforce All limits”にすればIntel公式仕様と概ね一致する電力制限で動作します。
ASUS ROG MAXIMUS Z690 HERO_BIOS_Multicore Enhancement

「Intel Core i7 13700K」の定格仕様である『PL1:253W、PL2:253W、Tau:56s』で動作させたところ、Cinebenchやx264エンコードなど、全コアへ同時に大きな負荷がかかった時の動作クロックはP-Coreなら5.3GHz、E-Coreなら4.2GHzのようにBy Core Usage最大倍率の全コア値に張り付きました。
全コア負荷時のCPU Package PowerはタスクがAVX命令をどれくらい使用するかによって変動しますが、PBP:125Wを超過し220~240W程度を示します。
Intel Core i7 13700K_Boost-Clock_Multi

「Intel Core i7 13700K」の全コアにフル負荷がかかった時のCPU消費電力は、タスクがAVX命令をどれくらい使用するかによって大きく変わります。
上のスクリーンショットはCinebench R23となっており、CPU Package Powerは230~240Wくらいで変動するので、「Intel Core i7 13700K」のMTP:253Wの範囲内に収まり、最大動作倍率に張り付きますが、MTPを超えるような電力が発生すると最大動作倍率よりも実際のコアクロックが低くなります。
AVX命令を多く使用するタスクほどCPU消費電力が増大し、冷やすのも難しくなるのですが、Intel第13世代CPUではAVX実行時のコアクロックを引き下げるオフセット設定に加えて、AVX Voltage Guardband Scaleと呼ばれるAVXに限定した電力制限的な機能もあります。この辺りは各自で上手く調整してください。
AVX Voltage Guardband Scale


続いてCPU消費電力やCPU温度の検証結果をチェックしていきます。
当サイトのCPUレビューでは主として”CPU温度への影響要因”という意味においてCPU消費電力を評価しているので、動画のエンコードによって長期間電力制限が効いている状態の平均的な消費電力をCPU消費電力として比較します。

個人的な意見としては短期間電力制限は短期間かつCPU温度によっても制御されるのでCPU温度への影響要因として比重は小さく、また瞬間ピーク電力はせいぜいがTDP+100W程度なので、マザーボードVRM電源の破損を心配するほどではなく、その程度の電力超過は電源ユニットで十分吸収できるので、評価対象としてあまり意味がないと思っています。
またCPU製品仕様のTDPについては、定義がIntel/AMDで厳密には異なり、各社の具体的な測定・算出方法も不明なので、CPU動作クロックを含めて総合的に判断する必要があるものの、基本的には長期間電力制限時の消費電力がTDP仕様値とほぼ一致、もしくはTDP仕様値を下回れば正常であると評価します。
当レビュー記事では簡単のため割愛しますが、CPUの消費電力に関する評価基準の補足として下記の記事も参考にしてください。


CPUの消費電力測定には、当サイトの検証に使用するためワンオフで特注した測定ツール「CPU Power Tester」を使用しています。
CPU Power TesterはEPS電源端子、ATX24PIN電源、PCIEスロット経由の各消費電力を直接測定できるツールです。5分間程度の負荷に対して、1ms間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。


消費電力の測定にあたってCPU負荷には、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、HandBrakeによるx264動画エンコードを使用しています。
メニーコアになるほど単独のエンコードではCPUが遊ぶので、CPU使用率が100%前後に張り付くように、動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列、16コア以上は3並列のように適宜調整しています。
Power-Consumption-Test
注:CPUのストレステストについてはOCCTやPrimeなど専用負荷ソフトを使用しているレビューもありますが、管理人の私見としてはCPU負荷が非現実的なので、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースを想定した場合、ほぼ最大のCPU負荷となるx264による動画エンコードとストレステストに採用しています。


定格仕様や検証用設定で指定する電力制限を適用した状態で動画エンコードによるフル負荷をかけると、「Intel Core i7 13700K」など各CPUについてCPU Package Powerは次のようになりました。 全CPU比較データ
CPU Package PowerはIntelのPL1/PL2、AMDのPPTといったパラメーターによる電力制限の制御ソースとなる数値です。メーカー純正ソフトウェアのIntel Extreme Tuning Utility (XTU)やAMD Ryzen Master、サードパーティー製ソフトHWiNFOなどでソフトウェアモニタリングが可能です。
Intel Core i7 13700K_power_3_cpp

続いてCPU Power Testerを使用して実際の消費電力をチェックしていきますが、注意点として、マザーボード独自のコア電圧調整によってCPU消費電力は変化します。Intel/AMDともに現状ではCPU動作のリファレンスになるようなマザーボードがないので、あくまで今回のレビューに使用している検証機材マザーボードを組み合わせた場合の数値となります。
また組み合わせるマザーボードによってはCPU Package Powerにマイナスオフセットをかけて事実上の電力制限解除が行われる場合があります。管理人の判断で定格っぽい動作のものを選んでいますが、こういった事情も念頭に置いて検証結果をご確認ください。

定格仕様や検証用設定で指定する電力制限を適用した状態で動画エンコードによるフル負荷をかけると、「Intel Core i7 13700K」など各CPUについてEPS 8PIN電源の消費電力は次のようになりました。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_power_1_eps

定格仕様や検証用設定で指定する電力制限を適用した状態で動画エンコードによるフル負荷をかけると、「Intel Core i7 13700K」など各CPUについてEPS 8PIN電源&ATX 24PIN電源の消費電力は次のようになりました。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_power_2_eps+arx


絶対性能を重視した電力設定が定格となっており、ワットパフォーマンス的なスイートスポットから大きく外れているため、Intel第13世代CPUの一部モデルはCPU温度と消費電力が非常に高いとレビューで評価される傾向にあります。
しかしながらCinebench R23とEPS消費電力の関係からワットパフォーマンスを確認してみると、「Intel Core i7 13700K」の電力効率は決して悪くありません。
電圧特性の良いCPUダイを上位モデル13900Kに回してなお、前世代最上位のCore i9 12900Kを若干上回るワットパフォーマンスを実現しています。
競合AMDの最新CPUであるRyzen 7000シリーズと比較しても、Ryzen 9 7900Xと同等であり、希望小売価格で同価格帯のRyzen 7 7700Xを大幅に上回るワットパフォーマンスです。
Intel Core i7 13700K_Performance_per-Wtt

また下のグラフは電力制限を調整した時のCPU Package Powerに対するマルチスレッド性能の比率です。
Cinebench R23 マルチスレッドスコアから各CPUの定格設定を基準に、電力制限解除で定格の全コア最大動作倍率に張り付いた状態を上限として性能比率を算出しています。

加えて3つの縦線は、Tom Clancy's Rainbow Six Extraction (フルHD/360FPS)、Cyberpunk 2077 (4K/60FPS)、Marvel’s Spider-Man Remastered (4K DLSS&RayTracing)のPCゲームをプレイした時のCPU Package Powerの平均値です。
ゲームシーンで理想的な性能を発揮できるように、電力制限を解除してコアクロックが全コア最大動作倍率に張り付くために必要なCPU Package Powerを見ています。

「Intel Core i7 13700K」はProcessor Base Power/TDPの125Wに電力制限を適用すると消費電力は半分以下に下がりますが、定格運用と比較してマルチスレッド性能の低下は20%未満に収まります。
性能低下が10%程度に収まるのは185W前後の電力制限の時となっており、高性能な空冷CPUクーラーや240サイズのAIO水冷クーラーで冷やせる発熱なので、扱いやすさを重視するならこれくらいの設定がベストだと思います。

またPCゲームプレイ中に「Intel Core i7 13700K」のコアクロックが全コア最大動作倍率に張り付くのに必要な電力制限の下限は90~130W程度です。実際の負荷はゲームや設定に依って変わりますが、「Intel Core i7 13700K」はPL1:150~180Wもあれば電力制限無効化と同等のゲーミング性能を発揮できます。
Intel Core i7 13700K_Performance_per-and-game



この章の最後に、「Intel Core i7 13700K」を空冷CPUクーラーやAIO水冷CPUクーラーで運用する時のCPU温度についてです。

「Intel Core i7 13700K」の定格設定であるPL1/PL2:253Wの設定で、x264動画エンコードによって負荷をかけた時のCPU温度やコアクロックの推移は次のようになっています。
CPUクーラーには360サイズAIO水冷クーラーFractal Design Celsius S36を使用し(ポンプは最速)、冷却ファンはNoctua NF-A12x25 PWMでファン速度を1500RPMに固定しています。

「Intel Core i7 13700K」は360サイズAIO水冷CPUクーラーを使用していても、定格設定ではCPU Package Powerが230~240Wに達し、CPU温度は80度を超え、平均84.5度、最大90度となりました。各自で電力制限を変更せず、定格のまま運用するのであれば、280サイズや360サイズの大型マルチファンAIO水冷CPUクーラーが推奨です。
Intel Core i7 13700K_temp_1_def_1
Intel Core i7 13700K_temp_1_def_2

流石にDIY水冷を導入するのはハードルが高いと思いますが、最近のPCケースなら360サイズラジエーターを問題なく設置できるはずなので、「Intel Core i7 13700K」を定格設定や200W以上の電力制限で使い倒したい人には「MSI MEG CORELIQUID S360」や「ASUS ROG RYUJIN II 360」や「Fractal Design Celsius S36」のような360サイズAIO水冷CPUクーラーがオススメです。


一方、上で確認した通り、「Intel Core i7 13700K」の定格設定は絶対性能を重視したものになっており、電力制限を多少強くしても性能低下は1割弱、それほど大きくありません。
一例として電力制限を『PL1:185W、PL2:253W』として同じように検証を行うと、CPU温度やコアクロックの推移は次のようになります。
短期間電力制限の253Wでターボブーストがかかる1分弱はCPU温度が高くなりますが、長期的にはCPU温度が70度前後に収まっています。
PL1:185W程度の設定であれば240サイズ以下の小さめのAIO水冷CPUクーラーや140サイズの大型空冷CPUクーラーでも問題なく運用できるはずです。また120サイズでもNoctua NH-U12Aのような高性能なものなら対応できると思います。
Intel Core i7 13700K_temp_2_PL-185W_1
PL1:185Wに設定した時のコアクロックも確認しておくと、定格設定(PL1:253W)ではP-Core All 5.3GHzで最大動作倍率に張り付いていましたが、PL1:185Wに下げても5.0GHz前後です。E-Coreも4.2GHzに対して3.9GHz前後となっており、定格設定に対するPL1:185Wの性能低下が10%程度というのも納得の結果です。
Intel Core i7 13700K_temp_2_PL-185W_2



組み合わせて使用するマザーボード次第ですが、その標準設定が実はCPUメーカーの指定する定格動作を無視していることがあります。(最近ではこの電力制限に関して浸透してきて、定格と電力制限解除を選択できるマザーボードが増えていますが)
そのためにメインストリーム向けでもメニーコアで全コア最大動作が高い上位CPUは、『消費電力(発熱)が非常に大きく、CPU温度が高温になるためハイエンド空冷やマルチファン大型AIO水冷といった高価なCPUクーラーが必要』と評価されることが多いという実状があります。
仕様値通りの動作設定であったり、適切な電力制限(ワッパのスイートスポット)を適用するのであれば当然ながら消費電力は抑制され、そういったCPUであっても一般的な空冷CPUクーラーで問題なく運用できます。

当サイトでは約4年前のCore i9 7900Xのレビューから指摘していたことですが、『CPUメーカーは大手メディアによる選考レビューなどの検証において定格動作設定を使用するガイドラインを示す』、『マザーボードベンダーはBIOS標準設定に定格動作を満たす設定を採用する』の2点を徹底してもらいたいというのが管理人の意見です。




Intel Core i7 13700Kの基礎ベンチマーク

Intel Core i7 13700Kの基本的なCPU性能を専用ベンチマークソフトで検証しました。
この章ではULMarkからリリースされているPCMark 10という総合ベンチマークソフトを使用していますが、デスクトップ向けの高性能CPUの性能比較ベンチマークとしては頭打ちな傾向があります。最新世代ではEssentialsとProductivityが高いとシングルスレッド性能の向上を確認できる、くらいの扱いです。
レビュー項目の1つとして参考までにスコア比較していますが、より実用的なCPU性能、クリエイティブタスク性能やPCゲーミング性能については後半の個別性能比較を参考にしてください。

*Ryzen 7000は一部の高性能GPUを組み合わせた場合にVideo Editing, Sharpening OpenCLのスコアが0になる不具合があり、総合スコアとDigital Content Creationが空欄になっています。


「PCMark 10 Extended」のベンチマーク結果をチェックしていきます。
「PCMark 10」は動画再生能力、DirectX11のグラフィック性能、Webブラウジング、ビデオチャットなど一般ユースにおけるPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトです。

「Intel Core i7 13700K」を含めた各CPU環境について、PCMark 10ベンチマークの総合スコアを比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_bench_PCM10_1

「PCMark 10 Extended」にはPCの基本性能を測る「Essentials」、ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」、クリエイティブ性能を測る Digital Content Creation」、ゲーム性能を測る「Gaming」の大きく分けて4つのテストグループがあるので、個別にベンチマークスコアを比較してみました。

PCの基本性能を測る「Essentials」は、アプリケーションの起動に要する時間を測る「App Start-up」、 ウェブブラウジングの性能を測る「Web Browsing」、1対1または多対多のビデオ会議をシミュレートする「Video Conferencing」の3つのワークロードで構成されています。
モバイル版向けCPUのCore i7 1165G7を搭載するSurface Pro 7+との比較でわかりますが、一般的なPC利用において大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Essentials」について「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_bench_PCM10_2

ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」は、ワープロソフト(マイクロソフトWordなど)の処理性能をシミュレートする「Writing」、表計算ソフト(マイクロソフトExcelなど)の処理性能をシミュレートする「Spreadsheets」の2つのワークロードで構成されています。
モバイル版向けCPUのCore i7 1165G7を搭載するSurface Pro 7+との比較でわかりますが、一般的なオフィスワークにおいて大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Productivity」について「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_bench_PCM10_3

クリエイティブ性能を測る「Digital Content Creation」は、写真に対するフィルタリング処理の性能をシミュレートする「Photo Editing」、動画編集の性能をシミュレートするワークロード「Video Editing」、レイトレーシングによる3Dグラフィクス制作(3Dレンダリング)をシミュレーションする「Rendering and Visualization」の3つのワークロードで構成されています。
「Digital Content Creation」について「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_bench_PCM10_4

ゲーム性能を測る「Gaming」は、グラフィックボードの性能測定で幅広く活用されているベンチマークソフト「3DMark」に収録された「Fire Strike」と同じベンチマークテストを実行するワークロードです。
「Gaming」について「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_bench_PCM10_5



Intel Core i7 13700Kのクリエイティブ性能

Intel Core i7 13700Kについて3Dレンダリング、動画編集・エンコード、RAW現像・写真リタッチ、PCゲーム/スマホアプリのビルド、AI機能による超解像・写真分類などクリエイティブ作業に関する性能を各種ベンチマークソフトや実際のアプリケーションで検証しました。

Intel Core i7 13700Kの3Dレンダリング性能

まずは「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUの3Dレンダリング性能を比較していきます。
CPUのマルチスレッド性能を比較するベンチマークソフトとして国内外で最も知られているCinebenchの2021年リリース最新バージョン「Cinebench R23」、オープンソース3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトの4種類を使用してベンチマーク測定を行いました。

Cinebench R23は3Dレンダリング性能を測定するベンチマークソフトになっており、マルチスレッド性能を測定するテストとシングルスレッド性能を測定するテストの2種類を実行しています。
Intel Core i7 13700K_Cinebench R23

Cinebench R23 マルチスレッド性能テストについて「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_rendering_1_cine_r23_multi

Cinebench R23 シングルスレッド性能テストについて「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_rendering_1_cine_r23_single

3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト(ver3.4.0)
について「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Blender Benchmark 3.0ではmonster/junkshop/classroomの3つのレンダリングが実行され、それぞれ分間サンプル数がベンチマークスコアとして表示されます。Core i5 12400Fを基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、3つのスコアについて性能比率を算出し、その平均値をグラフ化しています。
Intel Core i7 13700K_rendering_2_blender

3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフト(ver5.2.0)について「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
V-Rayのベンチマークソフトのレンダリングサンプル数が結果として表示されますが、性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 12400Fを基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しています、
Intel Core i7 13700K_rendering_3_vray


Intel Core i7 13700Kの動画エンコード・動画編集性能

続いて「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUの動画編集や動画エンコードの性能を比較していきます。
検証には、無料で利用できる動画編集ソフトとして国内外で多数のユーザーがいる「Aviutl」、大量の動画ファイルを一括エンコードする時に便利なフリーソフト「HandBrake」を使用しています。
またアマチュアからプロまで動画編集ソフトとして幅広く使用されている「Adobe Premiere Pro」の実用性能を検証するベンチマークとしてULMarkのUL Procyon Video Editing Benchmarkも測定しています。


まずは単純に動画ファイルをそのまま圧縮するエンコード作業の性能比較として、HandBrakeを使用したエンコード性能をチェックします。
HandBrakeは、現在主流なH.264 (MPEG-4 AVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x264」エンコーダ、そしてH.264より高圧縮・高画質で次世代規格として期待されているH.265(HEVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x265」エンコーダが使用できるので、CPUをリソースとして各エンコーダで共通の動画ファイルのエンコードを行いました。
エンコードを行う動画ファイルについては、Tom Clancy's Ghost Recon Wildlandsのゲーム内ベンチマーク(60秒ほど)をNVIDIA ShadowPlayで録画したものを使用しています。1920×1080/60FPS/50Mbpsと3840×2160/60FPS/120Mbpsの2種類の動画ファイルを作成し、それぞれ解像度はそのままにCRF値指定でエンコードを行っています。
HandBrake_test
比較グラフのx2/x3/x4のバーについては同じエンコードを添え字の数だけ並列実行した時の合計変換フレームレートを示しています。
ソースファイルやエンコード設定にも依りますが、フルHD解像度では8コア16スレッド程度、4K解像度では16コア32スレッド程度でマルチスレッド分散がボトルネックになり始め、単独エンコードではCPUが遊び始めます。
20コアオーバーのウルトラメニーコアCPUでマルチスレッド性能をフルに活用しようと思うと、8K解像度のような超高解像度のエンコード、もしくは複数並列エンコードを行う必要があるので注意してください。

x264エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_encode_1_handbrake_x264_1920-1920

x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_encode_2_handbrake_x264_3840-3840

x265エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_encode_3_handbrake_x265_1920-1920

x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_encode_4_handbrake_x265_3840-3840

続いてAviutlで編集した動画プロジェクトのエンコード速度について、「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUの性能を比較していきます
編集プロジェクト自体は単純で、4K解像度とフルHD解像度(4K解像度に拡大)の2つの動画ファイルを使用し、それぞれの動画を左右にフェードイン/アウト、後は画面上にテキストをオーバーレイさせているだけです。YouTubeにアップしている下の動画が完成物となっており、冒頭1分間部分のエンコード速度を測定しています。


Aviutlで作成した3840×2160解像度の4K動画プロジェクトをH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について、「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
動画編集ソフトにも依りますが、Aviutlの場合、動画開始直後のように単独の4K映像に文字をオーバーレイするだけでもエンコード出力のCPU使用効率が下がります。
カット編集だけならAviutlもHandBrakeも大差ありませんが、編集したプロジェクト1つをエンコード出力した場合、上で見たHandBrakeによる単純エンコードと比較してマルチスレッド性能に比例したスケーリングは鈍り、シングルスレッド性能で差が出る傾向が強まります。
Intel Core i7 13700K_encode_5_aviutl_x264_3840-Project

続いてAdobe Premiere Proの実用性能を検証するベンチマークソフト、UL Procyon Video Editing Benchmarkのベンチマーク結果から、「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUの動画編集性能を比較していきます
Adobe Premiere Proはver23.0を使用しています。UL Procyon Video Editing BenchmarkにはフルHD解像度と4K解像度の2種類のプロジェクトがあり、それぞれにおいてCPUのみを使用するテストとGPU支援を有効にするテストを行い、トータルのベンチマークスコアを算出しています。

Adobe Premiere Proの実用性能を検証するベンチマークソフト、UL Procyon Video Editing Benchmarkについて、「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ:Total Score / FHD(CPU) / FHD(CPU&GPU) / 4K(CPU) / 4K(CPU&GPU)
Intel Core i7 13700K_encode_6_ul-procyon_1

この章の最後に、映画/ポストプロダクション/放送業界に向けて世界最高品質の製品を開発しているBlackmagic Design社製の動画編集ソフト DaVinci Resolveの実用性能について、Puget Systemsから配布されているベンチマークソフト PugetBench for DaVinci Resolveを使用して、「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUの動画編集性能を比較していきます。
DaVinci Resolveは有償版のDaVinci Resolve Studio(ver18.1.1)を使用し、PugetBench for DaVinci ResolveのExtended Testを実行しています。
PugetBench for DaVinci Resolve Extended Testには4K Media、8K Media、GPU Effect、Fusionの4つのテストが実行され、それぞれのサブスコアからトータルのベンチマークスコアが算出されます。

DaVinci Resolveの実用性能を検証するベンチマークソフト PugetBench for DaVinci Resolveについて、「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ:Total Score / 4K Media / 8K Media / GPU Effect / Fusion
Intel Core i7 13700K_encode_7_davinci-resolve_1


Intel Core i7 13700KのRAW現像・写真リタッチ性能

続いて「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのRAW現像や写真リタッチの性能を比較していきます。
検証には、強力なノイズ除去機能PRIMEや最新版DeepPRIMEで評判の写真編集ソフトDxO PhotoLab 6によるRAW現像に加えて、アマチュアからプロまで動画編集ソフトとして幅広く使用されている「Adobe Lightroom Classic」と「Adobe Photoshop」の実用性能を検証するベンチマークとしてULMarkのUL Procyon Photo Editing Benchmarkも測定しています。

まずはDxO PhotoLab 6によるRAW現像について、「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUの性能を比較していきます
ミラーレス一眼カメラSONY α1で撮影した8640×5760解像度のRAW画像ファイル 100枚に対して、DxO PhotoLab 6の画質プリセット「DxO 標準」をベースにノイズ除去をPRIMEに変更したプリセットを適用し、RAW現像を行いました。
なおDxO PhotoLab 6によるRAW現像は並列処理数を設定できますが、CPUコア数の半分前後の並列処理で最速になるようです。
DxO Photolab_test

DxO PhotoLab 6によるRAW現像速度について、「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_photo_1_DxO


続いてAdobe Lightroom ClassicとAdobe Photoshopの実用性能を検証するベンチマークソフト、UL Procyon Photo Editing Benchmarkのベンチマーク結果から、「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのRAW現像と写真リタッチの性能を比較していきます
UL Procyon Photo Editing BenchmarkにはAdobe Lightroom Classic ver11.5を使用したバッチ処理テスト(Batch Processing test)に加えて、Adobe Lightroom Classicで簡易処理を施した写真セットをAdobe Photoshop ver23.5.3で編集するテスト(Image Retouching test)の2種類を行い、トータルスコアが算出されます。

Adobe Lightroom ClassicとAdobe Photoshopの実用性能を検証するベンチマークソフト、UL Procyon Photo Editing Benchmarkについて、「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 【全CPU比較データ:Total Score / Retouch / Batch
Intel Core i7 13700K_photo_2_ul-procyon_1


Intel Core i7 13700KのPCゲーム/スマホアプリのビルド性能

最後に「Unreal Engine 4/5」や「Unity」などフリーウェアながら高画質なPCゲームやスマホゲームを製作可能なゲームエンジンを使用したゲーム制作におけるCPU性能の検証として、Unreal Engine 4で「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。
Epic Games Storeで無料配布されているUnreal Engine 4のデモプロジェクト Infiltratorを使用したビルド時間の比較を行います。検証設定としてリアルタイム表示はオフ、ライティングの品質をプロダクションとしています。Unreal Engine 4のバージョンは4.27.2で統一しています。
Unreal Engine 4_Infiltrator_test

「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間について、「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 12400Fを基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、各種CPUのビルド速度を性能比としてグラフ化しています、
Intel Core i7 13700K_dev_Unreal-Engine


Intel Core i7 13700KのAI性能

ディープラーニングや人工知能(AI:Artificial Intelligence)の流行に合わせて、近年の最新CPUではAI支援機能の実装も目玉の1つになっているので、一般ユースに近い活用方法として、AIによる写真の超解像化や写真の自動分類で「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。

まずはAIによって低解像度の写真を高精細な高解像度にアップスケールできる「Topaz Gigapixel AI」を使用して、「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。
500×500解像度前後の写真を50枚用意し、AIモデルStandardによって4倍の解像度にアップスケールするのにかかる時間を測定しました。
Topaz Gigapixel AIはOpenVINOツールキットにより、第10世代以降のIntel Core CPUで採用されているDL Boostと呼ばれるディープラーニングを支援する新しい命令に対応していますが、CPUのマルチスレッド性能でゴリ押しも効くアプリです。

Topaz Gigapixel AIのAIアップスケール速度について、「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
処理時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 12400Fを基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、各種CPUのAIアップスケール速度を性能比としてグラフ化しています、
Intel Core i7 13700K_ai_1_topaz-gigapixel-ai

続いてAIによって写真の被写体(人物、犬猫、自動車など)を自動で分類できる「Nero AI Photo Tagger」を使用して、「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。
500×500解像度前後の写真を計1300枚(犬、猫、自動車の3種類)用意し、AI認識によって自動分類するのにかかる時間を測定しました。
Nero AI Photo TaggerはOpenVINOツールキットにより、第10世代以降のIntel Core CPUで採用されているDL Boostと呼ばれるディープラーニングを支援する新しい命令に対応しています。
CPUのAI支援機能が効果を発揮するのはもちろん、AVX512命令でも大幅に性能が向上する用途です。

Nero AI Photo TaggerのAI自動分類速度について、「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
処理時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i5 12400Fを基準にして(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)、各種CPUのAI自動分類速度を性能比としてグラフ化しています、
Intel Core i7 13700K_ai_2_nero_ai_photo_tagger



Intel Core i7 13700Kのゲーミング性能

「Intel Core i7 13700K」のPCゲームに関する性能を実ゲームを用いたベンチマーク測定で検証しました。
なお章タイトルではゲーミング性能と表記してはいますが、近年発売された4コア4スレッド以上のCPUであればフルHD解像度~4K解像度の60FPSターゲットにおいてCPUボトルネックが発生するケースは多くありません。そのためCPUゲーム性能比較の具体的な内容は”高フレームレートにおけるCPUボトルネック比較”と表現するのが実状に即しています。

ゲーミングPCに搭載するなら、Intel Core i5 12400(F)やAMD Ryzen 5 5500など6コア12スレッド以上のCPUを当サイトでは推奨しています。
最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあります。またベンチマーク結果からフレームレートの数値的に60FPS前後なら問題なさそうに見えても、2コア~4コアの場合、ゲームの起動やロードの時間が極端に長くなることがあり快適にプレイできない可能性もあります。



各CPUのゲーミング性能を測定するため統一検証機材として、2022年最新にして最速のウルトラハイエンドGPUを搭載したグラフィックボード「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN」を使用しています。
GPU for CPU Test
PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8は、ベイパーチャンバー構造のベースコアや、厚みのあるファンブレードをバリヤーリングで結合した重厚な冷却ファンを採用する4スロット占有大型GPUクーラーにより、各社AIBモデルの中でもトップクラスの静音性を実現しています。
メーカーのPNYは2022年に株式会社アスクが販売代理店契約を結んだばかりの新参なので国内での知名度は高くありませんが、北米など海外市場では30年以上に渡りコンシューマーならびにビジネス向けで電子機器の製造・販売を行う大手メーカーです。
国内正規品なら代理店を介してPNY公式のグローバル保証と同じ3年間の長期保証が受けられるところも魅力です。
「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8」をレビュー
PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN


CPU別ゲーミング性能の比較には近年の高画質PCゲームから、Assassin’s Creed Valhalla、Cyberpunk 2077、F1 2022、Far Cry 6、Marvel’s Guardians of the Galaxy、Shadow of the Tomb Raider、Tom Clancy's Rainbow Six Extraction、Forza Horizon 5、MONSTER HUNTER RISE : SUNBREAK、Marvel’s Spider-Man Remastered、Call of Duty: Modern Warfare II、The Witcher 3: Next Gen Update、Microsoft Flight Simulator(4Kのみ)の13タイトルを使用しています。
前述の通り、CPUがゲーム性能に与える影響の多くは100FPS以上の高フレームレートにおけるボトルネックの解消なので、フルHD(1920×1080)解像度/高画質設定について、各ゲームで平均フレームレートと1% Lowフレームレートを測定しました。
また参考としてAssassin’s Creed Valhalla、Cyberpunk 2077、Shadow of the Tomb Raider、Marvel’s Spider-Man Remastered、Microsoft Flight Simulator、The Witcher 3: Next Gen Updateの6種類については4K解像度をターゲットとしたベンチマーク測定も行っています。
CPU-Review_Game-Bench_2022

ゲームタイトルにもよりますがPCゲームにおけるCPU負荷であれば、CPU Package PowerはIntelのPBPやAMDのTDPよりも十分に低い数値に収まることが多く、CPUコアクロックは全コア最大動作倍率に張り付きます。
フレームレートに対するCPUボトルネックの緩和においては、この全コア最大動作倍率の高さが重要になり、クリエイティブタスクと違って電力制限は支配的ではなくなります。(PCゲームではIntel製CPUのPL1、AMD製CPUのPPTは影響をほとんど及ぼさなくなる)

Intel Core i9 12900やAMD Ryzen 7 5700Xのように定格の電力制限に対して全コア動作倍率の高いCPUの場合、PCゲームにおいてもCPU使用率が高くなるハイフレームレートでCPU消費電力がPBPやTDPを超過するタイミングもありますが、短期間電力制限PL2によるターボブーストやTDPよりも余裕をもって設定されたPPTによって高いコアクロックを維持し続けることができるので、影響は軽微です。

クリエイティブタスクの検証において複数の電力制限で測定していたCPUもPCゲームでは極端に大きい消費電力になることはないので、電力制限が緩い方を代表として測定しています。
Intel製CPUの場合は単純に電力制限を無効化しています。AMD製CPUはブーストクロックの動作が少々複雑でPPT/EDC/TDCを下げた方がFPSが上がる、逆にPBOで性能が下がる場合もあるため、基本的に定格のまま測定し、必要に応じて判断しています。


Intel Core i7 13700Kのゲーム性能 - 4K解像度/60FPSターゲット

まずは60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度のゲーミング性能について「Intel Core i7 13700K」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。
上述の通り4K高解像度の60FPSターゲットでは基本的にCPUボトルネックは発生しません。グラフの掲載順は平均フレームレートによる昇順ですが、4コア8スレッドや6コア6スレッドよりもコアスレッド数が多いCPUについては、ほぼ測定誤差の範囲内です。

Assassin's Creed Valhara(4K解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_game_1_3840_1_acv

Cyberpunk 2077(4K解像度、画質プリセット:高、FSR:オフ)に関する「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_game_1_3840_2_cyber

Shadow of the Tomb Raider(4K解像度、DirectX12、画質プリセット:最高、レイトレーシング表現:最高、アンチエイリアス:TAA)に関する「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_game_1_3840_3_sottr

Marvel’s Spider-Man Remastered(4K解像度、DLSS:品質、画質プリセット:非常に高い、レイトレーシング:高/高/6)に関する「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Marvel’s Spider-Man Remasteredは非常にCPUボトルネックが強いタイトルです。4K解像度かつレイトレーシング表現有効でもCPU性能に応じてフレームレートが大きく変わります。
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Microsoft Flight Simulator(4K解像度、画質プリセット:ウルトラ、アンチエイリアス:TAA、オンライン機能:オフ)に関する「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Microsoft Flight Simulatorは非常にCPUボトルネックが強いタイトルです。4K解像度の60~120FPSでもCPU性能に応じてフレームレートが大きく変わります。
Intel Core i7 13700K_game_1_3840_5_msfs

The Witcher 3: Wild Hunt, Next Gen Update(4K解像度、DLSS:品質、画質プリセット:RTウルトラ、レイトレーシング:有効)に関する「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
The Witcher 3: Wild Huntは非常にCPUボトルネックが強いタイトルです。4K解像度の60~120FPSでもCPU性能に応じてフレームレートが大きく変わります。
2022年12月にレイトレーシングにも対応した次世代機向けアップデートが配信されており、それを適用して検証を行っていますが、ゲーム自体は2015年の発売と古く、Ryzen CPUの登場以前なので、当時主流というかほぼ一択な状態だったIntel製CPUに有利な傾向です。
Intel Core i7 13700K_game_1_3840_6_wit


Intel Core i7 13700Kのゲーム性能 - フルHD解像度/ハイフレームレート

続いて100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/高画質設定のゲーミング性能について「Intel Core i7 13700K」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。

Assassin's Creed Valhara(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_game_2_1920_01_acv

Cyberpunk 2077(フルHD解像度、画質プリセット:高、FSR:オフ)に関する「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_game_2_1920_02_cyber

F1 2022(フルHD解像度、画質プリセット:高、異方性フィルタリング:x16、アンチエイリアス:TAA/FidelityFX)に関する「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_game_2_1920_03_f1

Far Cry 6(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
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Marvel's Guardians of the Galaxy(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
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Shadow of the Tomb Raider(フルHD解像度、DirectX12、画質プリセット:高、アンチエイリアス:TAA)に関する「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_game_2_1920_06_sottr

Tom Clancy's Rainbow Six Extraction(フルHD解像度、画質プリセット:高、レンダースケール:固定100%)に関する「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_game_2_1920_07_rse

Forza Horizon 5(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
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MONSTER HUNTER RISE(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
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Marvel’s Spider-Man Remastered(フルHD解像度、アンチエイリアス:TAA、画質プリセット:高い、レイトレーシング表現:オフ)に関する「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_game_2_1920_10_spider

Call of Duty: Modern Warfare II(フルHD解像度、画質プリセット:バランス、アンチエイリアス:オフ)に関する「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_game_2_1920_11_cod

The Witcher 3: Wild Hunt, Next Gen Update(フルHD解像度、画質プリセット:高)に関する「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_game_2_1920_12_wit


最後に、今回検証した10種類のゲームについて各タイトルについて平均FPSと1% Low FPSでそれぞれ、Core i5 12400Fを基準にした性能比率を算出し、さらに平均値としてグラフにまとめました。(全CPU比較データではCore i5 12400Fが基準)
フルHD解像度/ハイフレームレートの相対的なPCゲーミング性能に関する「Intel Core i7 13700K」を含めた各種CPUの比較結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
Intel Core i7 13700K_game_3_1920_relative



CPUエンコーダとリアルタイム配信について

ゲーム実況やライブ配信と呼ばれるPCゲームのリアルタイム配信について、現在ではNVIDIA GeForce RTX 3050やAMD Radeon RX 6600などハードウェアエンコード機能を使用できるエントリー~ミドルクラスのGPUを使用することでフルHD解像度で必要十分な画質とフレームレートが得られます。

GPUエンコーダは動作自体も軽いので、これらGPUエンコーダの登場によってリアルタイム配信やプレイ動画の録画におけるCPUエンコーダの役目は終わったというのが一時期の私見でしたが、メインストリーム向けCPUのコアスレッド数の増加に伴い、x264 Mediumのような高画質プリセットのプレイ&録画が一般ユーザー的にも現実的になってきています。

YouTube LiveやTwitchなどリアルタイム配信(ライブストリーミング)サービスで、PlayStation 5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch等のコンシューマーゲーム機や、PCゲームのプレイ動画・ゲーム実況を快適に配信するのに必要なCPU性能については、現在、連載を続けている【快適配信】シリーズで詳細に解説しています
一口にゲーム実況と言っても、『1.ビデオキャプチャを使用してPCは録画配信作業のみを行う』、『2.PC1台で同時にゲームプレイと録画配信を行う』の2つのケースに大別され、どちらで使用するのかで要求されるCPU性能やCPUメーカー毎の得手不得手など事情が変わってくるので注意してください。

ざっくりと現状でCPUを使用したリアルタイム配信・ゲーム実況に要求されるCPU性能だけ述べておくと、『ビデオキャプチャを使用した配信の最低水準は6コア12スレッドのCPU』、『ゲームをプレイしながら配信の最低水準は8コア16スレッドのCPU』です。


【快適配信】シリーズの記事一覧へ
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画質と快適性を求めるなら録画・配信専用マシンもオススメ

ビデオキャプチャ業界の進歩も目覚ましく、2018年に発売された「AVerMedia Live Gamer Ultra」を皮切りに、各社から4K/60FPS/HDRやフルHD/240FPSの映像ソースを無遅延なパススルー表示しつつ、フルHD/60FPSのプレイ動画として録画・配信できるUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャが各社から発売されています。


前述の通りフルHD/60FPSの録画・配信であれば、GPUのハードウェアエンコーダを利用することで必要十分な画質が得られて動作も軽いので、録画配信のために高性能な反面、非常に高額なCPUに投資するよりも、多少コストがかかっても「AVerMedia Live Gamer Ultra」などのビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するほうが、録画・配信の手法としてはわかりやすくてハードルが低いと思います。
Intel Core i7 13700K review_00899







Intel Core i7 13700Kのレビューまとめ

「Intel Core i7 13700K」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ or 概要
  • 8コア P-Coreと8コア E-Coreによる16コア24スレッドCPU
  • PL1:253WにおいてコアクロックはP-Core All 5.3GHz、E-Core All 4.2GHzに張り付く
  • PL1:185W制限でも定格のPL1:253Wに対してマルチスレッド性能の低下は10%程度
  • PL1:125W制限でも定格のPL1:253Wに対してマルチスレッド性能の低下は20%程度
  • PL1:125~160Wなら120サイズ空冷CPUクーラーでも問題なく運用可能
  • Core i9 12900Kよりも高速なシングルスレッド性能
  • 144FPS~500FPSのハイフレームレートなPCゲーミングで最速クラス
  • 最新規格DDR5のシステムメモリに対応(対応マザーボードも必要)
悪いところ or 注意点
  • 6万円程度と高価(2022年12月現在)
  • PL:200W超はマルチファン大型AIO水冷クーラーを推奨
  • VRM電源が弱いMBでの運用は非推奨(Z790/Z690マザーボードなら基本問題なし)

温度・消費電力について

絶対性能を重視した電力設定が定格となっており、ワットパフォーマンス的なスイートスポットから大きく外れているため、今回レビューしている「Intel Core i7 13700K」を始めとしてIntel第13世代CPUの一部モデルはCPU温度と消費電力が非常に高いとレビューで評価される傾向にあります。
しかしながらCinebench R23とEPS消費電力の関係、ワットパフォーマンスを確認してみると、「Intel Core i7 13700K」の電力効率、PWカーブそのものは非常に優れています。
組み合わせたCPUクーラーで冷却が追いつかない、シンプルに消費電力を下げたい、という場合は、長期間電力制限PL1を各自で調整してみてください。
Intel Core i7 13700K_Performance_per-Wtt

「Intel Core i7 13700K」の定格By Core Usage倍率に対してゲーム用CPUとして理想的な性能を発揮するのに必要な電力制限の設定は150W程度、余裕を見て160~180Wもあれば十分です。なおRTX 4090と組み合わせた場合の検証結果なので、下位GPUとなら10~30W程度は下がると思います。
定格設定のPL:253Wは360サイズAIO水冷CPUクーラーでやっと常用できそう、という感じの発熱ですが、マルチスレッド性能の低下が10%程度に収まるPL:185Wならゲーム性能を損なうこともなく、240サイズAIO水冷CPUクーラーや大型空冷CPUクーラーで運用できます。扱いやすさを重視するなら『PL1:185W、PL2:253W』くらいの設定がオススメです。
Intel Core i7 13700K_Performance_per-and-game


クリエイティブ性能について

「Intel Core i7 13700K」のクリエイティブ性能については、全コア5.3GHzで動作する8コア16スレッドのP-Coreと全コア4.2GHzで動作する8コア8スレッドのE-Coreとで構成されるCPUなので、E-Core数の増強とコアクロックの上昇により前世代同クラスのCore i7 12700Kから30%以上も性能向上を果たし、同じコアスレッド数になった前世代最上位Core i9 12900Kを上回る性能を実現しています。
電力特性の良いCPUダイは上位モデル13900Kに回されるので、Core i7 13700KがCore i9 12900Kを上回るために消費電力がトレードオフになっていますが、同程度の消費電力で揃えたとしても同等以上の性能を発揮するので、流石は最新世代という結果です。
一方で競合AMDのメインストリーム向けCPUであるRyzen 7000と比較すると、マルチスレッド性能依存なシーンでは、2022年12月現在の国内価格において価格帯で競合するRyzen 7 7700Xを40%程度も上回り、アプリにも依って前後するものの上位モデルRyzen 9 7900Xと同等の性能を発揮しています。
Intel Core i7 13700K_Performance_vs

高電力効率なE-Coreを多数実装することによってマルチスレッド性能を伸ばしているため、E-Coreを16コア実装する上位モデルCore i9 13900Kではソフト側の最適化の影響なのかUnreal Engine 4など性能の伸びが鈍化しているケースもありましたが、12900Kと同じコアスレッド数の「Intel Core i7 13700K」は綺麗に性能がスケーリングしているので、そういう点で扱いやすいCPUです。

「Intel Core i7 13700K」は高速なP-CoreによりCinebench R23で確認したシングルスレッド性能は前世代や競合Ryzen 7000を上回っていました。
今回の検証でいうとAviutlで編集した動画プロジェクトのエンコード速度やUL ProcyonによるAdobe CCアプリの実用性能ベンチにその影響が表れやすいのですが、AMD Ryzen 7000が猛追していることもあって、Intel第12世代CPU vs AMD Ryzen 5000の時と比べると差は大きくありません。

「Intel Core i7 13700K」は近年流行りのAIに最適化された命令セットIntel Deep Learning Boost(DL Boost)に対応しており、OpenVINOツールキットで開発されたアプリで高い性能を発揮できます。
ただし第11世代では対応していたAVX512については、高効率E-Coreが対応していないため第12世代CPU同様に第13世代CPUでもやはりCPU全体でサポートしておらず、256bit幅×2という非ネイティブ対応ではあるもののAVX512をサポートするRyzen 7000に対して、AI機能を活用するアプリでは大きく差をあけられてしまいました。


ゲーム性能について

ゲーム性能検証の冒頭でも述べたようにフルHD~4K解像度の60FPSターゲットであれば4コア4スレッド以上の最新CPUであればどれを使用しても大差はありません。
Ryzen 2000/3000の頃だとゲーム側の最適化の問題で60FPSターゲットであってもCPUによって差が出るケースも散見され、ゲーム用ならどちらかというとIntelという感じでしたが、Ryzen 5000以降ではこの差もほぼ無視できるレベルだと思います。
ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するなら、2万円台半ばから購入できることもありIntel Core i5 12400(F)やAMD Ryzen 5 5500など6コア12スレッド以上のCPUを当サイトでは推奨しています。

「Intel Core i7 13700K」は最上位のCore i9 13900Kにこそ及びませんが、前世代最上位Core i9 12900Kや競合Ryzen 7000を上回る性能を実現しており、PCゲームにおけるCPUボトルネックを最も緩和できるCPUの1つです。
GeForce RTX 4080やRadeon RX 7900 XTX/XTは優れたGPU性能から4K解像度でもCPUバウンドなシーンに遭遇する可能性がありますが、Core i7 13700Kはそういった次世代ハイエンドGPUの性能を遺憾なく発揮できるベストパートナーなCPUです。
また360Hz+の超ハイリフレッシュレートなゲーミングモニタの性能を最大限発揮できるので、オンライン対戦PCゲームをプレイし、勝つためのゲーミングPCに搭載するCPUとしてもオススメです。
Intel Core i7 13700K_game_3_1920_relative

ゲーム用CPUの当サイト的推奨が6コア12スレッド以上というのは上記の通りですが、ゲーム性能ベンチマークで見たように例えばMarvel’s Spider-Man Remasteredの4K解像度/最高画質&レイトレーシングは60~120HzでもCPUボトルネックが発生します。
競技系ではない、画質重視なPCゲームでもメニーコアCPUが力を発揮することはあるので、GPU優先が定石ではあるものの、「Intel Core i7 13700K」はMarvel’s Spider-Man RemasteredやFINAL FANTASY VII REMAKEのような高画質アクション/RPGゲームを好むPCゲーマーにとっても魅力のある製品です。

またプレイ動画の配信についてはNVIDIA GeForceグラフィックボードで使用可能なハードウェアエンコーダNVEncの動作が軽快で、画質もRTX20/GTX16世代以降ではCPUによるx264の実用プリセットに迫る品質に改良されているので主流になりつつあります。
この分野ではCPUの存在感は薄まりつつありますが、プレイ動画の作成や編集においては依然として動画のエンコード性能しかりCPUの性能が重要であることは間違いないので、プレイ動画の作成という面もゲーム性能と捉えるなら、その意味でも「Intel Core i7 13700K」は優れたゲーミングCPUです。


総評 - 次世代ハイエンドGPUのベストパートナー

「Intel Core i7 13700K」はGeForce RTX 4080やRadeon RX 7900 XTX/XTのような次世代ハイエンドGPU搭載グラフィックボードで組む高性能ゲーミングPCのお供として当サイト的にイチオシのCPUです。
PCゲーミングにおいて当サイト的なCPUの推奨(必要最小)スペックは6コア12スレッドであり、具体的にはCore i5 12400やRyzen 5 5600ですが、「Intel Core i7 13700K」はハイフレームレートで最新ハイエンドGPUの性能を最大限に引き出し、トータルシステムとして6コア12スレッドCPUよりも高い性能を発揮します。
またMarvel’s Spider-Man Remastered 4K解像度/最高画質&レイトレーシングのように、画質重視なPCゲーミングでもCPUボトルネックが生じるものは今後増えていくと予想されるので、GeForce RTX 4080やRadeon RX 7900 XTX/XTでゲーミングPCを新たに組む、BTO PCを購入するのであれば「Intel Core i7 13700K(F)」がオススメです。




Core i9 13900Kと比較すると最上位モデルだけあってゲーム性能とクリエイティブタスク性能の両面で流石に及びませんが、Core i7 13700Kは”製品価格が3万円ほども安価”という長所があります。
3万円も浮けばストレージを余分に1~2TB増設したり、グラフィックボードをより静音性の高い上位のオリファンモデルへアップグレードするといった予算配分が可能です。
CPU性能の面でも「Intel Core i7 13700K」のゲーム性能はCore i9 13900Kに及ばずとも大きく劣るわけではありませんし、クリエイティブタスク性能もゲーム実況・配信で動画を編集する分には十分過ぎる性能です。
GeForce RTX 4090などGPUを最上位にするならCPUも併せて最上位のCore i9 13900Kにしたいところですが、GeForce RTX 4080やRadeon RX 7900 XTX/XTならCore i3 13700Kを組み合わせて他に予算を配分するほうが賢く高コスパだと思います。

あとRyzen 7000との性能比較は上を見ての通りですが、「Intel Core i7 13700K」などIntel第13世代CPUのRyzen 7000に対するアドバンテージがもう1つ、マザーボードやシステムメモリも含めたプラットフォームが挙げられます。
円安など時期的な問題もあって仕方ないのですが、Ryzen 7000はX670マザーボードが5万円以上、B650もATXサイズは4万円以上と高価であるのに対し、Intel第13世代CPUは前世代と同じマザーボードが使用できるので、Z690マザーボードが3万円台から、B660マザーボードならATXサイズでも2万円台から見つかります。
またIntel第13世代CPUは従来規格のDDR4メモリもサポートしています。入手性も改善していますし、性能を追求するなら最新規格のDDR5メモリですが、予算を抑えたいとなった時にDDR4メモリのIntel/AMD環境を所有している人が手を伸ばしやすいのはどちらかとなると、やはり「Intel Core i7 13700K」などIntel第13世代CPUだと思います。

以上、「Intel Core i7 13700K」のレビューでした。
Intel Core i7 13700K


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