MSI MEG Z690 UNIFY


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Core i9 12900Kなど第12世代Alder Lake-S CPUに対応するZ690チップセット搭載マザーボードとしてMSIからリリースされた、105A対応Dr. MOSで構成される21フェーズの超堅牢VRM電源や5基のNVMe対応M.2スロットを搭載するフルブラックなハイエンドゲーミングモデル「MSI MEG Z690 UNIFY」をレビューします。
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製品公式ページ:https://www.msi.com/Motherboard/MEG-Z690-UNIFY






MSI MEG Z690 UNIFY レビュー目次


1.MSI MEG Z690 UNIFYの外観・付属品
2.MSI MEG Z690 UNIFYの基板上コンポーネント詳細


3.MSI MEG Z690 UNIFYの検証機材

4.MSI MEG Z690 UNIFYのBIOSについて
5.MSI MEG Z690 UNIFYのOC設定について


6.MSI MEG Z690 UNIFYの動作検証・OC耐性

7.MSI MEG Z690 UNIFYのレビューまとめ


【注意事項】
同検証は2021年11月上旬に行っておりMSI MEG Z690 UNIFYのBIOSは1.12を使用しています。最新BIOSでは修正されている不具合や追加されている機能もあると思うので、最新BIOSのリリースについては公式ページを各自でチェックしてください。
サポート:https://www.msi.com/Motherboard/MEG-Z690-UNIFY/support#down-bios

【2021年11月30日:初稿】
レビュー記事初稿を公開、BIOS:1.12で検証



【機材協力:MSI Japan】



MSI MEG Z690 UNIFYの外観・付属品

まず最初にMSI MEG Z690 UNIFYの外観と付属品をチェックしていきます。
「MSI MEG Z690 UNIFY」のパッケージはマザーボードの箱としては独特な上開き化粧箱になっていました。開閉しやすく高級感もあります。持ち運びに便利な持ち手も付いています。
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パッケージを開くと上段にはマザーボード本体が静電防止ビニールに入った状態で収められていました。マザーボードを取り出すと2重底になっており下段には各種付属品が入っています。
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付属品一覧は次のようになっています。
マニュアルやドライバCDなど必要なものが一通り揃っています。付属の多言語マニュアルには日本語のページもありますが50ページほどで内容は多くありません。詳細について知りたい場合は公式ページでPDFファイルとして公開されている英語のマニュアルを見てください。
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注目ポイントとして「MSI MEG Z690 UNIFY」のドライバはCDではなく専用のUSBメモリに収録されていました。光学ドライブを搭載しない環境も増えているので嬉しい配慮です。その他のマザーボード製品でもドライバはUSBメモリに移行して欲しいところ。
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付属品はSATAケーブル4本、WiFiアンテナ、RGB対応4PIN LED機器接続用Y字分岐延長ケーブル、アドレッサブルRGB対応VG-D型3PIN LED機器接続ケーブル、Corsair製LED機器接続ケーブル、M.2 SSD用ネジ&スペーサー×4、フロントIOケーブル(MSI EZ FRONT PANEL CABLE)です。
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MSI MEG Z690 UNIFYにはRGB対応汎用4PIN LEDヘッダーがマザーボード上に実装されており、付属の2分岐ケーブルによって1つのLEDヘッダーに2つのLEDイルミネーション機器を接続可能です。
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MSI MEG Z690 UNIFYにはアドレッサブルRGB対応VG-D型汎用3PIN LEDヘッダーがマザーボード上に実装されていますが、それをロック付き3PINコネクタに変換する延長ケーブルが付属します。
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MSI MEG Z690 UNIFYにはCorsair社からリリースされているLEDイルミネーション搭載ファン用コントロールボックスが接続できるLEDヘッダーが実装されており、それに対応した延長ケーブルも付属します。
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あとファングッズ的なものとして、「MSI MEG Z690 UNIFY」には埃落としのブラシとキーホルダー型ドライバーが付属しています。
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マザーボード全体像は次のようになっています。
MSI MEG Z690 UNIFYはATXフォームファクタのマザーボードです。フルブラックで重厚な装いです。
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マザーボード右下のチップセット用ヒートシンクとPCIEスロット間のM.2 SSDヒートシンクはフラットデザインが採用されていますが、高級感のあるヘアライン仕上げ、スリット、サンドブラストなど複数の表面加工が組み合わさっているので立体感があります。
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「MSI MEG Z690 UNIFY」はリアI/Oカバーもフルブラックカラー、光沢のあるヘアライン仕上げアルミニウムの素材&表面加工が美しい仕上がりです。
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「MSI MEG Z690 UNIFY」はVRM電源クーラーとして、アルミニウム塊にフィンカットが施され、ヒートパイプによって連結された大型の高性能ヒートシンクを搭載しています。そのほかにも熱伝導率7W/mkの高性能サーマルパッドや、放熱を補助する金属製バックプレートも採用されています。
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マザーボード裏面左側には頑丈な金属製バックプレートが装着されています。各種素子の半田の出っ張りで指を切ることがありますが、バックプレートがあればその心配もありません。
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バックプレートはVRM電源回路背面とサーマルパッドを介して接しており、放熱プレートとしての役割も果たしています。
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MSI MEG Z690 UNIFYにはメインストリーム向けマザーボードながら、21(19+2)フェーズの超堅牢なVRM電源回路が実装されています。
前世代Z590 UNIFYではISL製フェーズコントローラー(ダブラー)によって各フェーズが2重化されていましたが、今回は19フェーズに対応したPWMコントローラーによるダイレクト設計です。
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VRM電源回路を構成する素子も、定格90Aを処理可能なSmart Power Stage(所謂、低発熱で定評のあるDr. MOSの105A対応版)、従来製品より電力効率を改善した「TITANIUM CHOKE III」、93%のエネルギー変換効率かつCPUクーラーと干渉し難い小型サイズキャパシタ「Hi-C CAP」、低ESRかつ10年以上の長寿命な日本製個体コンデンサなど厳選された高品質素子です。
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最大で16コア24スレッドのメニーコアに達するIntel第12世代CPUの大幅なマニュアルOCでも安定した大電力供給が行えるように「MSI MEG Z690 UNIFY」にはEPS電源端子として8PIN×2が実装されています。
EPS電源端子については電源容量800W以下の電源ユニットでは1つしか端子がない場合があるので、EPS端子が足りているか事前に注意して確認してください。
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「MSI MEG Z690 UNIFY」にはマザーボード一体型リアI/Oバックパネルも採用されています。PCケースにパネルを装着する作業は固くて装着し難かったり、忘れてしまうこともあるのでマザーボードに統合されているのは嬉しい機能です。
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以下USB規格に関する説明がありますが『USB3.2 Gen2 = USB3.1 Gen2』、『USB3.2 Gen1 = USB3.1 Gen1 = USB3.0』と考えて基本的に問題ありません。

リアI/Oには最新のUSB3.2 Gen2規格に対応した7基のType-A端子(赤色)と1基のType-C端子が設置されており、Type-C端子は20Gbpsの高速通信が可能なUSB3.2Gen2x2にも対応しています。
そのほかのUSB端子については2基のUSB2.0端子が搭載されています。マウス・キーボードなどの周辺機器を多数繋いでいてもVR HMDに十分対応可能です。ただUSB3.Xは無線マウスと電波干渉を起こすことがあるので、USB2.0は少し離れた場所に配置して欲しかったです。
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有線LANには一般的なギガビットイーサの2.5倍の帯域幅を実現するIntel製LANコントローラー I225-V(Foxville)による2.5Gb LANが搭載されています。
さらに従来の2.4GHz帯と5GHz帯に加えて、グローバルに免許不要で使用可能な6GHz帯もサポートするWiFi 6E&Bluetooth5.2に対応した無線LAN(Intel AX210)も搭載しています。(注:2021年11月現在、日本国内では法令に基づく規制のため6GHz帯は使用不可。将来的に使用できるようになる予定)
接続規格としてはWi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac/ax、2.4/5GHz/6GHzトライバンド、最大通信速度2400Mbps、Bluetooth 5.2に対応しています。リアI/Oには無線モジュールのアンテナ端子が設置されているので付属のアンテナを接続できます。
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Intel I225-V(Foxville)、Intel AX211など「MSI MEG Z690 UNIFY」に搭載されているネットワーク機器はWindows11の標準ドライバでは動作しません。(I225-Vが標準ドライバで動作するかどうかはマザーボードに依る)
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条件次第では問題になることもあるので詳しくはこちらの記事を参照してください。



またリアI/Oには「BIOS Flash」ボタンが設置されており所定のUSB端子にBIOSファイルの入ったUSBメモリを接続してボタンを押すと「BIOS Flash」機能によってCPUやメモリなしの状態でもBIOSの修復・アップデートが可能です。
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MSI MEG Z690 UNIFYの基板上コンポーネント詳細

続いて「MSI MEG Z690 UNIFY」のマザーボード基板上の各種コンポーネントをチェックしていきます。
「MSI MEG Z690 UNIFY」を含め、Intel第12世代CPUに対応するIntel 600シリーズチップセット搭載マザーボードは新CPUソケット”LGA1700”が採用されています。
従来のLGA1200やLGA1151(LGA115X)のCPUクーラーマウントホールと互換性がないので注意してください。

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「MSI MEG Z690 UNIFY」はシステムメモリの最新規格DDR5に対応しています。従来規格のDDR4と下方互換はなく使用できないので注意してください。
システムメモリ用のDDR5メモリスロットはCPUソケット右側に4基のスロットが設置されています。固定時のツメはマザーボード上側の片側ラッチとなっています。グラフィックカードを設置するPCIEスロットとは十分な距離があるのでメモリの着脱時に干渉の心配はありません。
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グラフィックボードなどを設置するPCIEスロットは上から[N/A、x16、N/A、N/A、x16、N/A、x4]サイズのスロットが設置されています。
上段のプライマリグラフィックボードを2段目のスロットに配置することで、大型ハイエンド空冷CPUクーラーとグラフィックボードの干渉を回避しています。
2段目と5段目のx16サイズPCIEスロットはCPU直結PCIE5.0x16レーンを共有しており、[x16, N/A]、[x8, x8]で使用できます。最下段のx4サイズスロットはチップセット経由のPCEI3.0x4接続で排他利用はありません。
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MSI MEG Z690 UNIFYにも最近のトレンドとして全てのx16サイズスロットには1kgを超える重量級グラボの重さに耐えるように補強用メタルアーマー搭載スロット「MSI PCI-E STEEL ARMOR」が採用されています。
金属製アーマーをハンダ付けすることによってPCIEスロットの固定を強化し、従来よりも4倍も頑丈になっており、PCIEスロットをシールドで覆うことによって外部ノイズEMIから保護する役割も果たします。
MSI PCIE Steel Armor
AMD Radeon RX 6000シリーズGPUとAMD Ryzen 5000シリーズCPUの組み合わせがサポートするAMD Smart Access Memoryの名前の方が有名ですが、PCIE規格で策定されているVRAMフルアクセス機能「Re-Size BAR (Base Address Register)」にもMSI MEG Z690 UNIFYは対応しています。
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SATAストレージ用の端子はマザーボード右下に6基搭載されています。SATA_1~6はいずれもIntel Z690チップセットのコントローラーによる接続で、RAID0/1/5/10のハードウェアRAID構築にも対応しています。
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高速NVMe接続規格に対応したM.2スロットは、CPUソケット下やPCIEスロットと並んで計5基が設置されています。
M2_1はCPU直結PCIE4.0x4レーンに接続されており、PCIE4.0x4接続のNVMe接続M.2 SSDに対応しています。
M2_2M2_5はチップセット経由PCIEレーンに接続されており、NVMe(PCIE4.0x4)接続のM.2 SSDのみをサポートします。
M2_3はチップセット経由PCIEレーンに接続されており、NVMe(PCIE4.0x4)接続とSATA接続のM.2 SSD両方に対応しています。
M2_4はチップセット経由PCIEレーンに接続されており、NVMe(PCIE3.0x4)接続のM.2 SSDのみをサポートします。
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PCIE4.0対応NVMe M.2 SSDのレビュー記事一覧へ
PCIE4.0対応NVMe M.2 SSDのレビュー記事一覧へ

「MSI MEG Z690 UNIFY」のM.2スロットにはM.2 SSD自体の固定にはネジを使用しない、「EZ M.2 Clip」という独自の構造が採用されています。クリップを90度回すだけで簡単にM.2 SSDを固定できるので非常に楽です。
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5基のM.2スロットにはMSI独自のSSDヒートシンク「Double-Sided M.2 Shield Frozr」が設置されており、同ヒートシンクを使用することで、グラフィックボードなど発熱から保護し、M.2 SSDがむき出しの状態よりもサーマルスロットリングを抑制する効果が見込まれます。
「MSI MEG Z690 UNIFY」のM.2 SSDヒートシンクのうち、CPU直結PCIEレーンに接続されているCPUソケット直下のM.2スロットについては、厚みが20mm程度もあり、特に巨大です。高速な反面、発熱の大きいPCIE4.0対応NVMe M.2 SSDを頻繁にアクセスするシステムストレージに使っても安心して運用できます。
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一般的なマザーボード備え付けM.2 SSDヒートシンクは表面のみに金属プレートが実装されていますが、同製品では”Double-Sided M.2 Shield Frozr”の名前通り、両面ヒートシンク設計を採用しており、背面金属プレートも表面同様にサーマルパッドを介してM.2 SSDと接します。
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「MSI MEG Z690 UNIFY」のマザーボード右側には最新接続規格USB3.2 Gen2x2に対応する内部USB Type-Cヘッダーが実装されています。また2基の内部USB3.0ヘッダーはマザーボード基板と平行に実装されています。
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マザーボード下側には2基の内部USB2.0ヘッダーが設置されています。Corsair iCUEやNZXT CAM対応製品などUSB2.0内部ヘッダーを使用する機器も増えていますが、「MSI MEG Z690 UNIFY」であればそれらの機器も問題なく使用可能です。内部USB2.0が2基でも不足する場合はUSB2.0ヘッダー増設ハブの「NZXT INTERNAL USB HUB (Gen3)」や「Thermaltake H200 PLUS」がおすすめです。
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「MSI MEG Z690 UNIFY」はエンスージアストゲーマー向けマザーボードということで、MSI独自の高音質オンボードサウンド機能を、最新オーディオコーデックRealtek ALC4080によって、従来機種よりもさらに強化した「AUDIO BOOST 5」が採用されています。
日本ケミコン製のオーディオコンデンサを採用し、オーディオパートはマザーボードから物理的に分離され、左右のオーディオチャンネルがレイヤー分けされることでクリアな音質を実現します。FPSゲームなどで足音や銃声をゲーム内にOSD表示で可視化する「NAHIMIC 3 Sound Technology」も使用できます。
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冷却ファンを接続するためのコネクタについてはPWM対応4PINファンコネクタとしてCPUファン端子水冷ポンプ対応端子ケースファン端子6基の計8基が搭載されています。これだけあれば360サイズなどの大型ラジエーターを複数基積んだハイエンド水冷構成を組んでもマザーボードのファン端子だけで余裕で運用可能です。
水冷ポンプ対応の「PUMP_FAN1」端子は最大36W(12V、3A)の出力にも対応しているので変換ケーブルを噛ませれば本格水冷向けのD5やDDCポンプの電源としても使用できます。
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「MSI MEG Z690 UNIFY」には外部温度センサー用2PINヘッダーも2基実装されています。一般的な2PIN温度センサー(若干コネクタのサイズ感が違いますが)を接続可能です。
加えて、W-FLOW1と記載された3PINファン端子は水冷の流量検出端子となっており、フローインジケーター&メーターを接続することで流量の検出が可能です。
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またマザーボード上にはOCerのみならず一般自作erにとっても組み立て中の動作確認に便利なオンボードとスタートスイッチとリセットスイッチが実装されています。POSTエラーのチェックができるDebug Code LEDも設置されています。
リアパネルにはCMOSクリアのハードウェアスイッチも設置されているのでオーバークロック設定を失敗しても簡単に初期化が可能です。
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「MSI MEG Z690 UNIFY」はデュアルBIOSを搭載しており、マザーボード下端に実装されたスライドスイッチによって起動するBIOSを切り替え可能です。
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「MSI MEG Z690 UNIFY」のリアI/OのUSB Type-CポートはThunderbolt4に対応していませんが、Thunderbolt4対応Type-Cポートを増設できるPCIE拡張ボードを使用するためのJTBT1ヘッダーが実装されています。
ただし「MSI MEG Z690 UNIFY」に実装されているThunderbolt4用ヘッダーは既存の拡張ボードがサポートしていない、見慣れない13PINとなっており、MSIからも今のところThunderbolt4増設PCIE拡張ボードは発表されていません。
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MSI MEG Z690 UNIFYの検証機材

MSI MEG Z690 UNIFYを使用して検証機材と組み合わせてベンチ機を構築しました。MSI MEG Z690 UNIFY以外の検証機材は次のようになっています。
テストベンチ機の構成
CPU Intel Core i9 12900K
レビュー
CPUクーラー Fractal Design Celsius S36(レビュー
Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー
メインメモリ Kingston FURY Beast DDR5
DDR5 16GB*2=32GB (レビュー
CPUベンチ用
ビデオカード
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC
ファンレス (レビュー
システムストレージ
Samsung SSD 980 PRO 500GB(レビュー
OS Windows 11 Home 64bit
電源ユニット Corsair HX1200i (レビュー
ベンチ板 STREACOM BC1 (レビュー



360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
Noctua NF-A12x25 PWM x3

ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 980 PRO 500GB」を使用しています。Samsung SSD 980 PROは、PCIE4.0対応によって連続アクセススピードを最大で2倍に飛躍させただけでなく、ランダム性能の向上によってSSD実用性能においても前世代970 PROから大幅な向上を果たし、PCIE4.0アーリーアダプターなPhison PS5016-E16採用リファレンスSSDよりも高速なので、これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
「Samsung SSD 980 PRO 1TB」をレビュー。堂々の最速更新
Samsung SSD 980 PRO 1TB

CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。


グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
Thermal Grizzly Kryonaut_apprication


サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
「Thermal Grizzly Carbonaut」はCore i9 9900Kを冷やせるか!?
Thermal Grizzly Carbonaut_Core i9 9900K


以上で検証機材のセットアップが完了となります。
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MSI MEG Z690 UNIFYのBIOSについて

MSI MEG Z690 UNIFYを使用した検証機の構築も完了したので動作検証とOC耐性のチェックの前にBIOSの紹介をします。
(OSから日付調整する前にスクショを取っている場合、日付がおかしいですが無視してください。また内容的に差異のないものは過去の同社製マザーボードのBIOSスクリーンショットを流用しています。)

BIOSに最初にアクセスするとイージーモードというグラフィカルな画面が表示されます。パッと見の見栄えは良いのですが詳細モードでないと詳細設定ができないので「F7」キーを押してサクッと詳細モード移るのがおすすめです。右上には表示言語変更のプルダウンメニューがあります。MSIマザーボードはASUSの次くらいにしっかりとローカライズされているので日本語UIも使いやすいと思います。
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MSIのBIOS詳細モードでは「SETTING」「OC」「M-FLASH」「OC PROFILE」「HARDWARE」「BETA RUNNER」の6つのアイコンを選択することで中央のイラスト部分や画面全体に詳細設定項目が表示されるという構造になっています。キーボード操作も可能ですがマウス操作を重視したUIです。
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MSI MEG Z690 UNIFYのBIOSにおいて設定の保存とBIOSからの退出は「SETTING」アイコンの「保存して終了」の項目内に存在します。ASUS、ASRock、GIGABYTEなどと違ってカーソルキーのみの移動で設定保存と退出関連の項目にサクッと移動できないのが少し不便に感じます。起動デバイスを指定して再起動をかける「Boot Override」機能があるのは使い勝手が良くて好印象です。
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BIOSのアップデート方法は、まず下から最新のBIOSファイルをダウンロード、解凍してUSBメモリのルートに解凍フォルダを置きます。
サポート:https://www.msi.com/Motherboard/MEG-Z690-UNIFY/support#down-bios

USBメモリを挿入したままBIOSを起動し、詳細モード左下の「M-FLASH」を選択します。「M-FLASH」モードはBIOSとは完全に別で用意されており再起動するか尋ねられるので再起動します。ただし手動でOCを行っている場合は「M-FLASH」を選択しても一度設定をデフォルトに戻して再起動がかかるので、再度BIOSに入って「M-FLASH」を選択する必要があるようです。
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再起動して「M-FLASH」に入ったら下のようにUSBメモリ内のBIOSファイルを選択してアップデートを実行すればBIOSのアップデートが完了します。なおBIOSアップデート後は自動でBIOSへ入らないので注意してください。アップデート後はOC設定なども初期化されてしまうので初回は自動でBIOSに入って欲しいです。
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ブートとOSインストール周りについて紹介します。
MSI MEG Z690 UNIFYのブートデバイス関連の設定は「SETTING」アイコンの「ブート」という項目にまとめられています。
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起動デバイスの優先順位は「FIXED BOOT ORDER Priorities」という項目で、ハードディスクやDVDドライブなど大別した優先順位が設定可能となっており、その下にある「〇〇 Drive BBS Priorities」で同じ種類のデバイスについて個別の起動優先順位の設定を行えます。
一般的にはWindows OSの入った「UEFI:HardDisk:Windows Boot Manager(〇〇)」を最上位に設定して、その他の起動デバイスは無効化しておけばOKです。
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Windows 11 OSのインストール手順(BIOSにおける設定)についても簡単に紹介しておきます。
Windows 11のOSインストールメディア(USBメモリ)については「UEFI USB Key:UEFI: 〇〇」という名前になります。「UEFI USB Key:UEFI: 〇〇」を起動優先順位の最上位に設定してください。
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起動優先順位でインストールメディアを最上位に設定したら設定を変更してBIOSから退出します。ただMSI MEG Z690 UNIFYはブートデバイスを指定できるBoot Overrideを使用できるので直接OSインストールメディアを起動デバイスとして指定して再起動してもOKです。
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ちなみにWindows11の製品パッケージに付属するUSBメモリではUEFIで認識できないトラブルが発生することがあるようです。その場合はマイクロソフト公式ツールを使用して適当なUSBメモリでOSインストールメディアを作成すると上手くいきます。大型アップデート適用済みのインストールメディアに都度更新できるので1つ用意しておくのがオススメです。



BIOSのアップデートやWindows OSのインストール方法を紹介したところで、MSI MEG Z690 UNIFYのBIOS機能で管理人が気になったものをいくつかチェックしていきます。

「MSI MEG Z690 UNIFY」のCPU直結PCIE5.0x16レーンに接続されたPCIEスロットについては、プライマリグラフィックボードで使用する標準的なPCIE3.0x16モードに加えて、PCIE帯域を「2つのPCIEスロットでPCIE5.0x8に分割するモード」、「プライマリをx8+x4、セカンダリをx4に分割するモード」の3種類が用意されています。
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MSI MEG Z690 UNIFYのファンコントロールや各種コンポーネント温度のハードウェアモニタリングはトップメニューの「HARDWARE」アイコンからアクセスできます。
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「MSI MEG Z690 UNIFY」のファンコントロール機能は下のスクリーンショットのようにグラフィカルUIのみが用意されています。
ファンカーブの設定には画面中央のグラフから頂点座標をマウスで直接操作するか、少し分かり難いのですが、右にある温度とファン速度(デューティ比or電圧)を直接数値入力するかのどちらかで行います。
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「MSI MEG Z690 UNIFY」にはモニタリング可能な温度が10種類も用意されています。
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「MSI MEG Z690 UNIFY」に搭載された8基のファン端子については、いずれも個別にファン制御モードをPWM制御とDC制御から選択でき、ファンコントロールソース温度やヒステリシス(Step Up/Down Time)の設定もできます。
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「MSI MEG Z690 UNIFY」に搭載されたファン端子はファンコンソース温度として、CPU温度、MOS(VRM電源)温度、PCH(チップセット)温度などの10種類から自由に選択できます。
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制御ソース温度の変動に対して、ファン速度制御に遅延を加えてファン速度の変化を平滑化する「Fan Step Up/Down Time」の設定も可能です。
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MSI製マザーボードのファンコントロール機能はグラフィカルUIでわかりやすく設定できるよ、という機能になっています。直感的にわかりますし直打ちが苦手な人にはありがたい機能だと思います。
ただ個人的にはテキストUIで数値直打ちが好きなので管理人がMSIマザボを敬遠してしまう理由の1つです。

あと細かいところですがBIOS内のスクリーンショットをF12キーで撮影できますがスクリーンショットファイルの名前がタイムスタンプではなく保存するUSBメモリのルートに存在するファイルで重複しない連番なのが少し使い難かったです。間違って上書き保存してしまうことがあるのでタイムスタンプにして欲しいです。



MSI MEG Z690 UNIFYのOC設定について

MSI MEG Z690 UNIFYを使用した場合のオーバークロックの方法を紹介します。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。


MSI MEG Z690 UNIFYではオーバークロック関連の設定項目はトップメニューの「OC」アイコンに各種設定がまとめられています。下にスクロールしていくと概ね「コアクロック→メモリ→電圧」の順番で並んでいます。設定値を直接入力する項目でデフォルトの「Auto」に戻す場合は「a」キーを入力すればOKです。
OCメニューのトップには「OC Explore Mode」という項目があり一般的なOC設定の可能な「Normal」モードに加えて、一部の高度なOC設定項目を解除できる「Expert」モードがあります。今回は「Expert」モードで紹介していきますが、基本的なOC設定は「Normal」モードでも十分行えるので初心者は無理せず「Normal」モード推奨です。
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「MSI MEG Z690 UNIFY」では初回起動時にBIOSメニューで各自のCPU冷却環境を確認されます。
ただしCore i9 12900Kを組み合わせた時に通常はIntel公式仕様通りになる設定のBoxed Coolerでも、短期間電力制限PL2は241Wで公式仕様通りですが、長期間電力制限PL1は125Wから241Wへ引き上げられていました。
高性能空冷CPUクーラーを想定したTower Air Coolerでは長期間電力制限PL1が288Wに、AIO水冷クーラーを想定したWater Coolerでは長期間電力制限PL1が完全に無効化されます。
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このCPUクーラー設定は、OC設定ページの「CPU Cooler Tuning」に当たり、初回設定後も自由に切り替えが可能です。
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CPUコアクロック(コア倍率)の変更について説明します。
Intel製CPUのコアクロックは定格では、負荷がかかっているコア数に対して最大動作クロック(BCLKに対する倍率)を指定する”By Core Usage”という設定が採用されています。
一例として4コアCPUで負荷がかかっているコア数1~4に対する倍率として[45:43:43:42]のように設定されている場合、4つのコアのうち1つに負荷が掛かる場合は4コアのうち1つが45倍動作(BCLKが100MHzなら4.5GHz)、2つと3つの場合は43倍動作、4つの場合は42倍動作となります。

「MSI MEG Z690 UNIFY」がサポートするIntel第12世代Core-Sは高性能コアP-Coreと高効率コアE-Coreの2種類の混成でCPUが構成されています。
OC設定に関して言えば、P-CoreとE-Coreは従来のIntel製CPUが2つ内蔵されているイメージで、それぞれ個別に動作倍率を設定します。なお電圧設定はP-CoreのOCではコア電圧を昇圧するだけ、E-CoreもOCする場合はコア電圧に加えてL2キャッシュ電圧も昇圧します。
Intel 12th-Gen AlderLake-S_Intel Hybrid Computing Architecture

「MSI MEG Z690 UNIFY」ではCPU内部クロック倍率の設定モードとして、標準では全コア動作倍率を指定するAll Coreモードだけが表示されます。
ユーザーがCPUのOCを行う場合は通常、全コアの最大倍率を一致させると思いますが、同マザーボードの場合は、NormalモードもしくはExpertモードのAll Coreにおいて「CPUの内部倍率を変更」の項目で動作倍率を45と設定することでデフォルトのBCLK(ベースクロック)が100MHzなのでその45倍の4.5GHzで動作します。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_4
All CoreモードやPer Coreモードでは通常、CPUコア負荷率に応じて動作倍率を下げる省電力機能が働きますが、「MSI MEG Z690 UNIFY」では、「CPU Ratio Mode」の設定項目から省電力機能による動作倍率の変動が発生する「Dynamic Mode」に加えて、指定の最大動作倍率に張り付き動作となる「Fixed Mode」を選択できます。(少コア負荷時の高倍率動作も無効化されます)
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_5
OC Explore ModeでExpertを選択すると、「CPU Ratio Apply Mode」の項目名でいくつかの動作倍率モードを選択できるようになります。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_6
「MSI MEG Z690 UNIFY」では、全コアの倍率を同じに設定する「All Core」、負荷のかかっているコア数によって最大動作倍率を設定する「Turbo Ratio」(一般に言うところのBy Core Usage)、定格のBy Core Usage倍率に対して一律に倍率オフセットを適用する「Turbo Ratio Offset」、コア別に倍率を適用する「Per Core」の4種類が選択できます。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_7
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_8
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_9

第9世代以前のIntel製CPUではオフセットやアダプティブのような大雑把な調整しか不可能でしたが、Intel第12世代CPUのP-CoreではV/Fカーブ(動作周波数と動作電圧の関係)を細かく調整できるようになっています。MSI MEG Z690 UNIFYではCPUコア電圧設定のリストの中に「Advanced Offset Mode」の名前で同設定が配置されています。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_10
現時点では既定の周波数に対して設定されたCPU個体毎のストック電圧に対して、+/-のオフセット電圧を設定できます。設定可能なポイントはCPU毎に異なりますが、Core i9 12900Kの場合は800MHz、1800MHz、3600MHz、4000MHz、4200MHz、4800MHz、5300MHzに対してmV単位でコア電圧オフセット値を指定できます。
なお5300MHzについては7~11番のV-Fポイントが割り当てられていますが、7番と8番のV-Fポイントに同じ設定値を適用してください。(同時に操作してPOST失敗の場合は、降圧時は7番の設定を適用してから再度BIOSに入って7番、昇圧時はその逆、という手順で)
BCU倍率で最大倍率を既定最大値(53倍)より大きく設定した場合は11番も必要なら調整します。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_11


Intel第11世代CPUで新たなターボブースト機能としてアピールされていたThermal Velocity Boostは、Intel第12世代CPUでは無効化されていますが、機能自体はマザーボードBIOS設定に残っている、というかさらに強化されています。
Thermal Velocity Boostは、”閾値温度70度以下においてブーストクロックを引き上げる機能”のように説明されますが、機能の実装としては通常のBy Core Usage倍率に対して、TVB Ratio Clippingという設定によってCPU温度が閾値以上の時に動作倍率を-1倍など設定値に応じて引き下げるという形になっています。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_12
第12世代CPUではThermal Velocity Boostによって、個別コアに対して閾値温度/オフセット倍率のセットを2種類ずつ設定できます。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_12a

前世代のIntel第11世代CPUは拡張命令AVX-512に対応していましたが、「MSI MEG Z690 UNIFY」がサポートするIntel第12世代CPUは高効率コアE-Coreがアーキテクチャ上、AVX-512に対応できないので、Intel第12世代CPUシリーズ全体がAVX-512に非対応です。
元々は発熱が非常に大きいAVX-512に対応するために用意されていた設定ですが、「MSI MEG Z690 UNIFY」でも、AVX2実行時の発熱を低減する方法として、従来の倍率動作オフセットに加えて、Voltage Guardband Scaleと呼ばれる電力制限に近い機能を使用できます。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_13

キャッシュ動作倍率にあたる「Ring Ratio」も変更可能です。CPUコアクロック同様にベースクロックに対する動作倍率でキャッシュの動作周波数を設定できます。
なおIntel第12世代CPUにおいてキャッシュ動作倍率はE-Core動作倍率を上限として制限され、E-Core動作倍率に合わせてキャッシュの動作倍率も下がります。E-Coreを無効化すると従来CPUのように4.0GHz以上の高いキャッシュ動作倍率も可能です。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_14

CPUクロック動作倍率の下にある「CPUベースクロック(CPU Base Clock)」の項目ではその名の通りベースクロック(BCLK)を変更可能です。デフォルトでは100MHzに固定されていますが、設定値を直打ちすることで0.05MHz刻みで設定できます。
CPUコアクロックはBCLKに対する動作倍率で設定されるのでBCLK110MHz、動作倍率45倍の場合はコアクロック4.95GHz動作となります。ただしBCLKを使用したOCはかなり上級者向けなので通常はAutoか100MHzが推奨です。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_15
「CPU Base Clock Apply Mode」ではBIOS設定を保存してから退出して再起動後にBCLKの変更を適用する「Next Boot」とリアルタイムで設定変更を反映させる「Immediate」の2つのモードを選択できます。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_16


続いてコア電圧の調整を行います。
Intel第12世代CPUにおいてCPUコア(P-CoreとE-Coreの両方)とキャッシュ(Ring、L3キャッシュ)への電圧は共通なので、CPUコアクロックやキャッシュクロックのOCに関連する電圧設定として、「MSI MEG Z690 UNIFY」では「CPU Core Voltage」や「CPU Core Voltage Mode」を調整します。

MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_17
「MSI MEG Z690 UNIFY」ではCPUコア電圧をマニュアルの設定値に固定する「Override」モードが標準動作ですが、Expertモードを選択すると、CPUに設定された比例値にオフセットかける「Offset」モード、ターボブースト時にのみ昇圧を行う「Adaptive」モードなどを使用できます。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_18
「MSI MEG Z690 UNIFY」でCPUコア/キャッシュクロックのOCを行う場合、CPUコア電圧の設定については設定が簡単で安定しやすいので固定値を指定するOverrideモードがおすすめです。
Core i9 12900KをOCする場合、CPUコア電圧の目安として、P-Coreを固定倍率の全コア5.0GHzで1.150V前後、全コア5.1GHzで1.200前後で動作が安定します。360サイズ簡易水冷CPUクーラーを使用して長期的に冷やせるという意味では、最大で1.250~1.300V程度が上限になると思います。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_19
加えて、Intel第12世代CPUではL2キャッシュの電圧だけ個別に設定が用意されており、E-CoreのコアクロックをOCする場合は「CPU E-Core L2 Voltage」も昇圧します。
L2キャッシュ電圧の目安としてE-Coreを固定倍率で全コア4.0GHzにした時の設定値は1.100~1.150Vくらいで動作が安定します。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_19a

CPUコア電圧モードについて簡単に説明すると、オフセットモードやアダプティブモードはCPU負荷に比例して電圧が設定されており、低負荷時は電圧が下がるので省電力に優れるのですが、OCをする場合はマザーボードによって挙動に差があり安定する設定を見極めるのが難しいので、個人的にはオフセットやアダプティブは定格向け、OCには固定値適用の固定モードを推奨しています。
仮にOCでオフセットやアダプティブを使う場合も最初はコアクロックに対して安定する電圧を見極める必要があるので、まずは固定モードを使用します。
ちなみにマザーボードにより対応しているモードは異なりますが、CPUのオーバークロックに付随するコア電圧のモードの概略図は次のようになっています。
vc

またコアクロックを高く設定する時に追加で変更するといい電圧設定項目として「DigitALL power」がCPUコア電圧の設定欄の直上にあります。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_20
「DigitALL power」内で特に調整した方がよい項目として「CPUロードラインキャリブレーション」があります。CPUロードラインキャリブレーションはCPU負荷時の電圧降下を補正してOCを安定させる機能です。補正の強度としてMode1~Mode8まで設定可能となっており、Mode1を補正最大として、添え字の数字が小さくなるほど補正が強くなります。補正を強くするほどOCの安定性は増しますがCPUの発熱も大きくなるので、Mode3あたりを最初に使っておいて、ストレステストのCPU温度をチェックしながら補正を調整するのがおすすめです。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_21

またCPU動作倍率設定の下にある「Advanced CPU Configuration」の下層には「短期間電力制限(Short Duration Power Limit)」「長期間電力制限(Long Duration Power Limit)」という2つの電力制限機能があり、電力制限がかかる閾値(単位はW)と電力制限がかかるまでの時間を設定できます。
電力制限がかかるとその指定電力内に収まるようにコアクロックに制限がかかります。デフォルトの状態では「Auto」になっていますが、MSI MEG Z690 UNIFYではCPUコアクロックをOCするとパワーリミットが掛からないように勝手に設定してくれるので放置でも問題ありません。
基本的に一定消費電力以内に収めるための省電力機能(+若干のシステム保護機能)と考えてください。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_22


メモリのオーバークロックについても簡単に紹介しておきます。
メモリの性能について簡単に言うと「動作クロックが高く」「タイミングが小さい」ほど性能は高くなります。そのためメモリOCを手動で行う手順を簡単にすると「電圧を上げて動作可能なクロックを探し」、「そのクロックにおいて正常に動作する最小のタイミングを探る」という2つの手順を繰り返すことになります。
一方でXMPによるメモリOCは上の手順によるOCをメーカー側がすでに行い動作確認をしているので、メーカーが動作確認を行ったOCプロファイルを適用するだけで簡単にメモリをオーバークロックできます。

メモリOCではPOSTすらクリアできずBIOSに到達できないことも少なくありませんが、「MSI MEG Z690 UNIFY」では正常にPOSTできないメモリOC設定でエラーが出た場合は数回再起動した後、自動でSPDプロファイルのような緩い設定で起動してくれるのでメモリOCを安心して行えます。

MSI MEG Z690 UNIFYでは「XMP(Extreme Memory Profile)」という項目をEnabledに設定する、もしくは適用したいプロファイルを選択することでXMPによるメモリのオーバークロックが可能です。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_23
XMPを使用せず、「DRAM Frequency(DRAM周波数)」の設定値がAutoになっている場合は、使用するメモリにSPD情報として収録されているメモリ周波数(DDR4なら2133~3200MHz、DDR5なら4800MHzなど)およびタイミングによる定格動作となります。
手動でメモリ周波数を設定する場合は「DRAM Frequency」の項目でプルダウンメニューから5000MHz以上の動作クロック(倍率)設定が可能です。
メモリ周波数もBCLKに対する倍率で動作周波数が決まっているので、BCLKを標準値の100MHzから120MHzに上げると、44倍設定時の動作周波数は4000MHzから5280MHzに上がります。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_24

Intel第12世代CPUのメモリコントローラー(IMC)周波数は、メモリ周波数に対して1:1対応のGear1(メモリ周波数が3200MHzならメモコンも3200MHz)、1:2対応のGear2(メモコンが1600MHz)、1:4対応のGear4(メモコンが800MHz)という3つの動作モードがあります。
DDR5メモリはGear2とGear4、DDR4メモリではGear1とGear2をサポートします。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_25
DDR5のGear2やDDR4のGear1でメモリ周波数とIMC周波数を引き上げたい場合の豆知識として、IMCのOC耐性は厳密には周波数ではなく動作倍率に依存します。(第12世代CPUではIMC周波数にそのまま依存しているかも)
メモリ周波数とIMC周波数はリファレンスクロック(100MHz or 133MHz)に対する動作倍率で決まるため、3600MHzの場合はリファレンスクロック133MHzでIMC倍率が27倍となります。
リファレンスクロック100MHzでメモリ周波数を3800MHzや4000MHzにするとIMC倍率が38倍や40倍となってしまいますが、リファレンスクロック133MHzにするとメモリ周波数が上と同程度の3733MHzでもIMC倍率は28倍、3866MHzでもIMC倍率は29倍に下がるのでIMCのOC耐性からするとハードルが下がります。

メモリタイミングの個別打ち込み設定も可能です。メモリタイミングを手動で設定する場合は基本的には「CAS Latency (tCL)」、「RAS to CAS (tRCD)」、「RAS Precharge (tRP)」、「RAS Active Time (tRAS)」の主要な4タイミングと、加えて「Refresh Cycle Time (tRFC)」と「Command Rate:1 or 2」の6つ以外はAutoのままでいいと思います。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_26
メモリクロックのOC時にWindowsの起動や軽い動作までは安定するものの、メモリストレステストでエラーが出る程度の状態であれば、「CAS Write Latency (tCWL)」を引き上げることで安定する可能性があります。(その他にtCCDやtCCD_Lも)
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_29

メモリ周波数のOCを行う際はメモリ電圧「DRAM Voltage」の項目を昇圧します。
DDR5メモリに対応したマザーボードでメモリ周波数を5000MHz以上にOCする場合はメモリ電圧を1.250~1.300Vに盛ってください。
DDR4メモリに対応したマザーボードでメモリ周波数を3000MHz以上にOCする場合は1.300~1.350V、3800MHz以上にOCする場合は1.370~1.400Vに上げる必要があります。メモリをOCする場合は最初から1.350V以上にDRAM電圧を盛っておくのがおすすめです。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_27
加えてメモリ周波数やIMC周波数をOCする時に調整した方がいい電圧設定として、DDR5メモリ対応マザーボードの場合は「VCCSA(CPU SA Voltage)」、「CPU VDDQ(CPU VDDQ Voltage)」、「CPU VDD2(CPU VDD2 Voltage)」、「DRAM VDDQ(DRAM VDDQ Voltage)」の4つを調整すると良いようです。
CPU VDDQについては単純に昇圧すればいいというわけではなく、メモリ設定に応じてスイートスポットのようなものがあるかもしれないので設定の際は注意してください。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_28

Intel XMP(エクストリーム・メモリー・プロファイル)がDDR5メモリでは新バージョンの「XMP 3.0」にアップデートされています。
従来のXMP2.0でメモリに収録可能なプロファイルは2つまででしたが、XMP 3.0では計5つのプロファイルを保存できるようになり、このうちの3つはメモリメーカーが使用し、残り2つは書き換え対応でユーザーが利用可能になりました。プロファイルの名前も16文字まででユーザーが設定できます。 XMP 3.0ではメモリOC関連でDRAM電圧以外の細かい電圧設定もOCプロファイルから指定できるようになっています。
Intel 12th Core_XMP3.0 (1)
「MSI MEG Z690 UNIFY」ではBIOS上で2つのユーザー用XMPプロファイルを編集できます。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_XMP3_User Profile (1)
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_XMP3_User Profile (2)
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_XMP3_User Profile (3)



MSI MEG Z690 UNIFYの動作検証・OC耐性

BIOS周りの管理人的に気になるところの紹介はこのあたりにしてMSI MEG Z690 UNIFYを使用した検証機で具体的に動作検証とOC耐性をチェックしていきます。

「MSI MEG Z690 UNIFY」にCore i9 12900Kを組み込んだ場合の動作については、OC設定の章で解説した通り、初回起動時の「Select CPU Cooler Type」や「CPU Cooler Tuning」から選択できるプロファイルによって電力制限が変化します。
ただしCore i9 12900Kなど第12世代KシリーズCPUでは、Boxed Coolerの設定でも、長期間電力制限PL1はProcessor Base Power (Base, PBP)の125Wではなく、Maximum Turbo Power (Turbo, MTP)の241Wに引き上げられるというのがIntelの公式仕様となっています。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_2
BIOS設定でAdvanced CPU Configurationの下に配置されている「長期間電力制限(Long Duration Power Limit, PL1)」、「短期間電力制限(Short Duration Power Limit, PL2)」を任意に設定すれば、PL1=125Wのような電力制限を適用することも可能です。
MSI MEG Z690 UNIFY_BIOS_OC_22

なお「MSI MEG Z690 UNIFY」は、他社のマザーボードと比較して標準設定におけるCPUコア電圧が高いせいか(他社製品が標準で低電圧化動作になっている可能性もありますが)、Core i9 12900Kに電力制限無効化で負荷をかけた時の消費電力が30W程度高いことを確認しています。
「MSI MEG Z690 UNIFY」でもV-Fカーブの設定で50~70mV程度の低電圧化が施すと他社製品と似たような動作になるので、標準設定でCPU温度が高い場合はV-Fカーブによる低電圧化を試してみてください。
Core i9 12900K_BIOS_PL-No+UV

電力制限以外にもCPU動作に大きく影響する項目についてまとめました。
Turbo Boost Max 3.0はアクティブなタスクに対して単コア最大動作倍率など最も高速に動作している(電圧特性に優れた)コアを割り当てる機能です。

Thermal Velocity Boostは閾値温度70度以下においてブーストクロックを引き上げる機能と説明されていますが、機能の実装としてはBy Core Usage倍率に対してTVB Ratio Clippingという設定によってCPU温度が閾値以上の時に動作倍率を-1倍に(正確にはCPU毎に設定された倍率に)引き下げるという形になっています。

AVX Voltage Guardband Scaleは該当するAVX命令実行時のコア電圧を調整する機能です。0~255の整数値で設定し、定格設定は128です。128以下では低電圧化、128以上では高電圧化します。(マザーボードに依っては1.00を基準に0.01~1.99で設定)
低電圧化というよりもAVX実行時の電力制限(AVX限定のPL1)に近い動作なので、Scale=1でもクラッシュすることはありませんが、性能は低下するものと思われます。

MSI MEG Z690 UNIFY (BIOS:1.12)
Core i9 12900Kの標準動作設定

標準設定
Boxed Cooler選択時
定格
単コア最大倍率 52 52
全コア最大倍率 49 49
Turbo Boost Max 3.0 On On
TVB Ratio Clipping
(70度以上で-1倍)
Off Off
PL1, PL2, Tau 無効化
(初期設定に依る)
241W, 241W, 56s
AVX Offset 0 0
AVX Voltage Guardband 128 128
備考
CPUコア電圧が昇圧されている


続いてMSI MEG Z690 UNIFYを使用した場合のCPUやメモリのオーバークロック耐性をチェックしてみました。
なおオーバークロックはメーカー保証外の行為であり製品の破損やデータの消失もすべて自己責任となります。オーバークロック検証時は最小構成(CPU、マザーボード、メモリ、システムストレージ、グラフィックボード)以外は基本的にすべて外し、可能ならOC検証用のシステムストレージを用意するなど細心の注意を払ってください。


CPUにOC設定を適用した際のCPU温度やVRM電源温度に関するストレステストについては、下記の動画エンコードを使用しています。
なおIntel第12世代CPUの場合、動画エンコードに比べてCinebench R23 30分ストレステストの方が負荷が大きく、安定動作に必要なコア電圧で10~20mV、CPU消費電力で30W程度の差が生じます。
ストレステストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間7分、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)をソースとしてAviutl+x264を使ってエンコードを行います。Core i9 12900Kは16コア24スレッドのCPUなので、同じ動画のエンコードを3つ並列して実行し、30分程度負荷をかけ続けます。ストレステスト中のファン回転数は一定値に固定しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
Core i9 12900K-OC_Stress-Test


まずは分かりやすいOC検証として、P-CoreとE-Coreの最大動作倍率を固定する形でOC設定を行いました。
Core i9 12900KのOC設定は、「P-Core:5.1GHz」「E-Core:4.0GHz」「CPUコア電圧:1.200V(固定モード)」「L2キャッシュ電圧:1.100V(固定モード)」としています。
メモリのOC設定は検証機材に使用しているKingston FURY Beast DDR5(型番:KF552C40BBK2-32)のXMPプロファイルを適用し、「メモリ周波数:5200MHz」「メモリ電圧:1.250V」「メモリタイミング:40-40-40-80-CR2」としています。
MSI MEG Z690 UNIFY_OC-test_BIOS_12900K_Fixed (1)
MSI MEG Z690 UNIFY_OC-test_BIOS_12900K_Fixed (2)

16コア24スレッド「Intel i9 12900K」を固定倍率かつ固定電圧でP-Core All:5.1GHz、E-Core All:4.0GHzにOCし、メモリ周波数も5200MHzにOCすると、Cinebench R23のマルチスレッドスコアは2900程度になります。シングルスレッドスコアは2000程度です。
MSI MEG Z690 UNIFY_12900K_fied_cinebench-r23

このOC設定においてストレステスト中のCPU温度とCPU使用率のログは次のようになりました。
マザーボードにMSI MEG Z690 UNIFYを使用すると、Core i9 12900Kを固定倍率モードでP-Core All:5.1Hz、E-Core All:4.0GHz、メモリ5200MHzにOCしてストレステストをクリアできました。
CPUクーラーにはFractal Design Celsius S36を使用し、冷却ファンNoctua NF-A12x25 PWのファン回転数は1500RPMで固定しています。
MSI MEG Z690 UNIFY_12900K_fixed-51-40_temp_1
MSI MEG Z690 UNIFY_12900K_fixed-51-40_temp_2


Core i9 12900KのマニュアルOCについては市販CPUクーラーで最高性能の360サイズ簡易水冷でもCPU消費電力250W程度がCPU温度を80~90度に収めることができる上限となっており、CPUコア電圧にすると1.200~1.250V程度が上限になります。DIY水冷でも1.300Vを超えると厳しいはずです。
この電圧に対してはCPU個体差にもよりますが、安定動作が可能なコアクロックは5.0~5.1GHz程度なので、全コア動作倍率の設定を行うと、標準動作の単コア5.2GHzブーストによるシングルスレッド性能が損なわれてしまいます。

全コア動作倍率設定&CPUコア電圧固定(Override)はやはり設定の手軽さが魅力で、Cinebench等でベンチマークスコアを狙うのには最適ですが、実用的に単コア5.2GHzの性能をキープしたいのであれば、By Core Usage設定で多コア負荷時の動作倍率を5.0~5.1GHzへ引き上げて(安定動作するようなら単コア最大動作倍率も5.3GHzに)、V-Fカーブ設定で48倍~53倍動作時の電圧をマイナスオフセットするのがオススメです。

ベンチマークスコアを重視するなら上のような固定倍率のOCが最適ですが、実用的にはシングル性能が優秀なBy Core Usage&V-Fカーブがオススメなので、こちらの設定例も紹介しておきます。
Core i9 12900KのOC設定は「P-Core: 1c x52, 2c x51, 3-8c x50」「E-Core: 1-4c x41, 5-8c x40」「CPUコア電圧:V-F Curve, Ratio x48 -120mV, Ratio x53 -120mV」「E-Core L2電圧:1.100V」としています。
メモリのOC設定は検証機材に使用しているKingston FURY Beast DDR5(型番:KF552C40BBK2-32)のXMPプロファイルを適用し、「メモリ周波数:5200MHz」「メモリ電圧:1.250V」「メモリタイミング:40-40-40-80-CR2」としています。
MSI MEG Z690 UNIFY_OC-test_BIOS_12900K_VFc (1)
MSI MEG Z690 UNIFY_OC-test_BIOS_12900K_VFc (2)

16コア24スレッド「Intel i9 12900K」をBy Core Usage&V-F CurveでP-Core All:5.0GHz、E-Core All:4.0GHzにOCし、メモリ周波数も5200MHzにOCすると、Cinebench R23のマルチスレッドスコアは28600程度になります。シングルスレッドスコアは2020程度です。
MSI MEG Z690 UNIFY_12900K_VFc_cinebench-r23

このOC設定においてストレステスト中のCPU温度とCPU使用率のログは次のようになりました。
マザーボードにMSI MEG Z690 UNIFYを使用すると、Core i9 12900KをBy Core UsageモードでP-Core All:5.0Hz、E-Core All:4.0GHz(V-Fカーブ設定で48~53倍動作時について低電圧化)、メモリ5200MHzにOCしてストレステストをクリアできました。
CPUクーラーにはFractal Design Celsius S36を使用し、冷却ファンNoctua NF-A12x25 PWのファン回転数は1500RPMで固定しています。
MSI MEG Z690 UNIFY_12900K_VFc-50-40_temp_1
MSI MEG Z690 UNIFY_12900K_VFc-50-40_temp_2


続いて、Core i9 12900Kを上記のBIOS設定でOCした時の負荷テスト終盤において、MSI MEG Z690 UNIFYのVRM電源周辺温度はどれくらいなのか、サーモグラフィカメラ搭載スマートフォン「CAT S62 PRO」を使用してチェックします。


今回、MSI MEG Z690 UNIFY環境ではCore i9 12900KのOC設定として、固定倍率モードとBy Core Usageモード(&V-Fカーブ)の2種類を検証しましたが、より電力負荷が大きいBy Core Usageモードの方をチェックします。
MSI MEG Z690 UNIFY環境でCore i9 12900KをBy Core UsageモードでP-Core All:5.0Hz、E-Core All:4.0GHzにOCするとシステム全体の消費電力が300~330W、VRM電源への影響が大きいEPS電源経由の消費電力は230Wに達します。
MSI MEG Z690 UNIFY_12900K_VFc-50-40_power
そんなCPU消費電力200W超級のVRM電源負荷に対して、「MSI MEG Z690 UNIFY」は105A対応Dr. MOSで構成される超堅牢な21(19+2)フェーズVRM電源回路とパッシブ型のVRM電源クーラーという標準装備だけで、VRM電源温度はソフトウェアモニタリングとサーモグラフィーのいずれも70度前後に収めることができました。
「MSI MEG Z690 UNIFY」であれば、市販CPUクーラーで最高性能な360サイズ簡易水冷はもちろん、DIY水冷も含めて、Core i9 12900Kの常用OCに標準装備のみで十分に対応が可能です。

MSI MEG Z690 UNIFY_12900K_50-40_VF


最後に「MSI MEG Z690 UNIFY」のメモリOC性能についてもチェックしておきます。
MSI MEG Z690 UNIFYの環境(BIOS:1.12)のOC検証では検証機材メモリとして16GB2枚組み32GB容量のDDR5メモリキット「Kingston FURY Beast DDR5(型番:KF552C40BBK2-32)」を使用しています。
同メモリに収録されたOCプロファイルによって、メモリ周波数5200MHz、メモリタイミング40-40-40-80-CR2という初期DDR5メモリでは定番のOC設定が安定動作しました。
MSI MEG Z690 UNIFY_12900K_DDR5_5200_C40

また手動設定でメモリのオーバークロックを行ったところ、メモリ周波数/主要メモリタイミングおよびメモリ電圧だけのカジュアル設定で、メモリ周波数を5400MHz、メモリタイミング:38-40-40-80-CR2へとOC設定を引き上げることもできました。
MSI MEG Z690 UNIFY_12900K_DDR5_5400_C38

MSI製マザーボードにはMemory Try It!というMSIラボで最適化されたメモリ周波数&タイミングのプロファイルを適用できる機能があるのですが、これで「5600MHz/CL42」のプロファイルを適用し、「CPU VDDQ:1.350V」、「tCWL:42」「tCCD:10」「tCCD_L:16」等の設定を追加すると、メモリ周波数を5600MHz、メモリタイミング:42-42-42-84-CR2で安定動作が確認できました。
MSI MEG Z690 UNIFY_12900K_DDR5_5600_C42
ただし、Memory Try It!を使用せずに、メモリ周波数5600MHzやCL42といった設定を適用してもメモリストレステストでエラーが出てしまいました。Memory Try It!でプロファイルを適用した場合と、完全手動設定の時とで、何かしらAuto設定が異なるようです。
汎用性のあるOC検証にはなりませんでしたが、「MSI MEG Z690 UNIFY」ではMicron製DDR5メモリモジュールでも上手くメモリ設定を行えばメモリ周波数5600MHzを狙えるという一例にはなったと思います。
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MSI MEG Z690 UNIFYのレビューまとめ

最後に「MSI MEG Z690 UNIFY」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ
  • MEG UNIFYはLEDなしのフルブラックで落ち着きある外観が魅力
  • Core i9 12900KのP-Core All:5.1GHz、E-Core All:4.0GHzのOCで安定動作
  • 200W超のCPU消費電力でもVRM電源温度は70度前後に収まる
  • DDR5メモリ(Micron)で5600MHz/CL42のメモリOCが安定動作
  • 外部センサー搭載で水温ソースのファンコンも可能なので水冷PCにも最適
  • 重量級グラボにも耐えるメタルアーマー採用PCIEスロット
  • ヒートシンク付きのNVMe対応M.2スロットを5基搭載
  • M.2スロットのうち4基はPCIE4.0x4接続に対応
  • Intel製2.5Gbイーサ(Intel I225-V)をリアI/Oに標準搭載
  • WiFi 6E&Bluetooth5.2対応無線LAN(Intel AX211)を標準搭載
  • スタート・リセットスイッチなど動作検証に便利なオンボードスイッチ
  • スライドスイッチで切り替え可能なデュアルBIOSに対応
悪いところor注意点
  • Windows11(21H2)の標準ドライバで動作するネットワーク機器がない
  • 製品価格が6.9万円ほどと高価

「MSI MEG Z690 UNIFY」はLEDなしのフルブラックカラーで落ち着きのある外観が最大の特長ですが、上位モデルMEG ACEとほぼ同等の105A対応Dr. MOSで構成された21(19+2)フェーズVRM電源回路を搭載し、第12世代Alder Lake-S CPUの最上位、16コア24スレッド「Core i9 12900K」の性能を余すことなく引き出します。
MEG ACEと違ってThunderbolt4対応Type-Cポートを搭載しないなど付加価値的な機能は省略されていますが、E-ATXになったACEと違い、引き続きATXサイズで扱いやすく、2.5Gb有線LANやWiFi6E対応無線LANといった定番の最新規格なコネクティビティは備えており、ハイエンド帯の中でもコストパフォーマンスを重視するユーザーにオススメなモデルです。

「MSI MEG Z690 UNIFY」のBIOSデザインについては好みの問題かと思いますが、マウス&キーボード環境を想定したグラフィカルなUIが採用されており管理人的には少し使いづらいと感じてしまいました。個人的にMSIマザボを敬遠してしまう理由の1つではあるのですが、グラフィカルUIが好きなユーザーにとっては嬉しい仕様だとも思うので個々人の好みで評価は分かれるところです。

BIOS標準設定でCore i9 12900Kを動作させると勝手に電力制限を無効化してしまうマザーボード製品も多いですが、「MSI MEG Z690 UNIFY」は初回起動時に環境(CPUクーラー)に合わせて、定格電力制限や電力制限無効化のどれを適用するか確認するガイドが表示されるという親切設計です。
近年のCPUでは全コア最大動作倍率を高く設定して電力制限でTDPを守る仕様が主流(昔はTDPに収まるような動作倍率になっていた)なので、こういったBIOS設計になったのは喜ばしいことだと思います。
ただし、Intel第12世代CPUのK付きモデルはPL1=PL2=Max Turbo Powerなので、Core i9 12900KやCore i7 12700Kを使用する場合、どちらにせよ発熱は大きく、組み合わせるCPUクーラーは240サイズ以上の簡易水冷CPUクーラーが推奨されます。


MSI MEG Z690 UNIFYを使用した検証機では16コア24スレッドのIntel Core i9 12900KのP-Coreを5.0~5.1GHz、E-Coreを4.0GHzに、DDR5システムメモリのメモリ周波数も5200MHz/CL40にオーバークロックして負荷テストをクリアすることができました。

マザーボードのOC耐性を評価する上で重要なファクターになるVRM電源について、「MSI MEG Z690 UNIFY」は非常に優秀な性能を発揮しました。「MSI MEG Z690 UNIFY」であれば市販の簡易水冷やDIY水冷など環境を選ばず、VRM電源周りは標準装備のままでCore i9 12900KをガンガンOCできます。
Core i9 12900Kを常用限界までOCするとEPS電源経由のCPU消費電力が250Wに迫りますが、「MSI MEG Z690 UNIFY」ではその強烈なVRM電源負荷に対しても、105A対応Dr. MOSなどで構成される21(19+2)フェーズの超堅牢なVRM電源回路が適切に熱を分散します。
リアIOに覆い被さる超大型VRM電源ヒートシンク、CPUソケット上左のアルミニウム塊型ヒートシンクを連結するヒートパイプなどVRM電源クーラーの設計にこそ工夫が見られますが、あくまでパッシブ型という構造のまま、スポットクーラーの増設を必要とせずに、VRM電源温度を70度前後に収めることができました。


メモリOCについては、「MSI MEG Z690 UNIFY」がサポートするDDR5メモリが登場したばかりということもあって評価が難しいのですが、検証機材に使用しているKingston FURY Beast DDR5(型番:KF552C40BBK2-32)のXMPプロファイルによってプチOCなメモリ周波数5200MHzが安定動作しているので、現状、メモリOC回りで不足を感じることはないはずです。
Memory Try It!によるプロファイルをベースに多少調整するとMicron製DDR5メモリモジュールでもメモリ周波数5600MHz/CL42が安定動作しました。指標がないと手動設定を詰めていくのも難しいので、こういった動くプロファイルが搭載されている辺り、DDR5メモリのOC練習用の板としても優秀だと思います。


以上、「MSI MEG Z690 UNIFY」のレビューでした。
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