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MSIから発売された、360Hzの超高速な垂直リフレッシュレートにネイティブ対応する史上最速のゲーミングモニタ「MSI Oculux NXG253R」をレビューします。
360Hzの超高速リフレッシュレートにネイティブ対応であることを筆頭に、G-Syncモジュールによる可変リフレッシュレート同期機能、240Hzで黒挿入が可能なモーションブラーリダクション機能ULMB、システム遅延測定機能NVIDIA Reflex Latency Analyzerなど、オンライン対戦ゲームで勝利するために開発されたといっても過言ではない究極のゲーミングモニタを徹底検証していきます。
製品公式ページ:https://jp.msi.com/Monitor/Oculux-NXG253R

MSI Oculux NXG253R レビュー目次
1.MSI Oculux NXG253Rの概要
2.MSI Oculux NXG253Rの開封・付属品
3.MSI Oculux NXG253Rの液晶モニタ本体
4.MSI Oculux NXG253RのOSD操作・設定
5.MSI Oculux NXG253Rの発色・輝度・視野角
6.MSI Oculux NXG253Rの360Hzリフレッシュレートについて
7.MSI Oculux NXG253Rの応答速度・表示遅延
8.MSI Oculux NXG253RのG-Syncについて
9.MSI Oculux NXG253RのReflex Latency Analyzerについて
10.MSI Oculux NXG253RのNVIDIA ULMBについて
11.MSI Oculux NXG253RのHDR表示やCSゲーム機対応について
12.MSI Oculux NXG253Rのレビューまとめ
【機材協力:MSI】
MSI Oculux NXG253Rの概要
「MSI Oculux NXG253R」は解像度が1920×1080のフルHD解像度で、画面サイズが24.5インチの液晶モニタです。液晶パネルタイプはノングレア(非光沢)で発色や視野角に優れたIPS液晶パネルが採用され、99% sRGB(ΔE<1)の広色域を実現しています。コントラスト比は通常1,000:1、応答速度は1ms (GTG)、輝度は通常400nits(cd/m^2)です。「MSI Oculux NXG253R」は標準輝度400nits(cd/m^2)で、HDR表示にも対応しています。VESA DisplayHDR等の輝度認証は取得していません。
「MSI Oculux NXG253R」のリフレッシュレートはネイティブ360Hzです。今年に入って各社から発売の相次いでいる240Hz対応IPS液晶ゲーミングモニタはもちろん、ASUS TUF Gaming VG279QM/VG259QMが独自のOC機能によって達成した280Hzを大きく更新する、史上最速のゲーミングモニタです。

360Hzの高リフレッシュレートによって応答速度が高速になるのでブレや残像がなくなってクッキリとした滑らかな表示です。60FPSでは識別の難しいゲーム内遠方で動くエネミーやオブジェクトの発見などが容易になるので、オンライン対戦FPSゲームなど競技性の高いPCゲームにおいて対戦相手よりも優位に立つことができます。
NVIDIAによると240Hz/FPSと比較して360Hz/FPSではさらに4%程度のエイム精度が向上するとのこと。

「MSI Oculux NXG253R」はNVIDIA製グラフィックボードを組み合わせることで利用可能、モニタ内蔵G-Syncモジュールによって最適な動作を実現する、可変リフレッシュレート同期機能「NVIDIA G-Sync」に対応しており、ティアリング(フレーム更新タイミング差による画面のズレ)がなく、スタッタリング(カクツキ)を抑えた快適で鮮明なゲーミング環境を実現できます。

「MSI Oculux NXG253R」はG-Syncモジュールによってサポートされるモーションブラーリダクション機能「ULMB (Ultra Low Motion Blur)」にも対応しています。

また「MSI Oculux NXG253RR」に搭載されたG-Syncモジュールは、NVIDIAがリリースした最新のシステム遅延低減技術NVIDIA Reflexに含まれているシステム遅延測定機能NVIDIA Reflex Latency Analyzer(対応マウスが別途必要)にも対応しています。

「MSI Oculux NXG253R」のビデオ入力はDisplayPort1.4とHDMI2.0×2の3系統です。DisplayPort1.4はフルHD/360Hzに対応、HDMI2.0はフルHD/240Hzに対応となります。
またUSBハブとしてPCと接続するアップストリーム端子1つに加えて周辺機器を接続するためのダウンストリームUSB3.0端子が4基搭載されています。
「MSI Oculux NXG253R」の寸法はモニタスタンド込みで幅560mm x 高さ399~529mm x 奥行234mm(モニタ単体では-mm)となっています。付属モニタスタンドは上下チルト、左右首振りスイーベル、昇降高さ調整、90度回転ピボットに対応しています。チルト角は上20度から下5度、スイーベル角は左右45度、高さ調整は最大130mmの範囲で調節可能です。本体重量はモニタスタンドありで6.5kg、モニタスタンドなしの液晶パネル本体のみは-kgとなります。VESA100x100マウントにも対応しておりモニタアームも使用可能です。
MSI Oculux NXG253Rの開封・付属品
まずは「MSI Oculux NXG253R」を開封していきます。
今回のサンプル機では「MSI Oculux NXG253R」は茶色パッケージの中にカラー刷りのパッケージが入っていました。輸送用なのか、販売時も同じ状態で届くのかは分かりませんが。

「MSI Oculux NXG253R」のパッケージサイズは幅77cm×厚さ23cm×高さ44cmとなっており、24.5インチモニタが入っている箱としては若干大きめで、重量は7~8kg程度です。側面に持ち手の穴があるので成人男性なら特に問題なく持ち運べると思います。

パッケージを開くと液晶モニタ本体や付属品が収められた発泡スチロール製スペーサーが現れます。ケーブル等の付属品が入った面を上に向けて、発泡スチロール製スペーサーを取り出します。

発泡スチロール製スペーサーの上側に各種付属品とモニタスタンドが収納されており、下の段にはモニタ本体があります。


「MSI Oculux NXG253R」の付属品を簡単にチェックしておくと、HDMIケーブル、DisplayPortケーブル、ACアダプタ、ACケーブル、USBアップストリームケーブル、VESAマウント用スタンドオフ、モニタスタンドネジ穴カバー、マニュアル冊子類となっています。

「MSI Oculux NXG253R」のビデオ入力はDisplayPort1.4とHDMI2.0×2の3系統があり、DisplayPortケーブルとHDMIケーブルがそれぞれ1本ずつ付属しています。
各種ケーブルを個別に購入するのであれば、4K/120Hz対応のDisplayPort1.4ケーブルなら「サンワサプライ KC-DP14シリーズ」、HDMI2.0ケーブルなら「エレコム Premium HDMIケーブル スリムタイプ DH-HDP14ESBKシリーズ」がおすすめです。いずれも標準で付属するケーブルよりもケーブル径が細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。

エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 1.0m
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 1.5m
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 2.0m
エレコム
「MSI Oculux NXG253R」に付属するモニタスタンドはフレームとフットプレートの2つの部品で構成されています。

フットプレートをフレームに差し込んで底面のネジを締めるだけで簡単にモニタスタンドを組み立てられます。ネジにレバーが付いているのでドライバー不要で組み立てが可能です。

モニタ本体を発泡スチロールのスペーサーに置いたまま、スタンド装着部の包装を開いて、モニタスタンドをはめ込みます。


モニタスタンドの組み立てまではツールレスなのですが、「MSI Oculux NXG253R」はモニタ本体にモニタスタンドを装着する手順でプラスドライバーが必要になるので注意してください。
モニタスタンドをはめ込んだら、モニタスタンド下側左右のネジ穴に先ほど取り外したネジを使って固定します。ネジを締めたら付属のネジ穴カバーを装着してモニタスタンドの取り付け完了です。

MSI Oculux NXG253Rの液晶モニタ本体
続いて「MSI Oculux NXG253R」の液晶モニタ本体をチェックしていきます。「MSI Oculux NXG253R」の上と左右はフレームレス構造ですが、フレーム内パネル上には非表示領域があり、上左右の非表示領域の幅は7mm程度、フレームのある下は20mm程度です。

「MSI Oculux NXG253R」の背面外装は黒色プラスチック製で、独特な多面体デザインになっています。「MSI Oculux NXG253R」はE-Sports志向なゲーミングモニタという位置づけの製品なので、MSIのゲーミングブランドを代表するドラゴンアイコンと、”NVIDIA G-SYNC 360”と”MSI”のロゴが背面右上に大きく描かれています。

またモニタスタンドのフレーム下側中央には各種ケーブルを通してまとめるケーブルホールがあります。

また「MSI Oculux NXG253R」の背面左側の斜めラインには7分割アドレッサブルLEDイルミネーションが内蔵されています。
標準では緑色の単色で点灯しますが、USBアップストリームケーブルでPCと接続し、MSI CenterというWindows上アプリケーションを使用することで発光カラーや発光パターンを設定できます。

「MSI Oculux NXG253R」のモニタ本体の厚さは最厚部で70mmほど(左右端の最薄部は20mm程度)と最近の液晶モニタとしてはかなり厚みが大きくなっています。モニタ本体重量は3.7kg程度と軽量です。

「MSI Oculux NXG253R」のモニタ本体背面の右側には下向きに各種I/OやAC端子が配置されています。右から順に、USBアップストリーム端子、DC端子、ヘッドホン端子、DisplayPort1.4ビデオ入力、HDMI2.0ビデオ入力×2が設置されています。

またモニタ本体の正面から見て左側面には3基のUSB3.0端子が搭載されており、USBアップストリーム端子を接続したPCからUSBハブとして使用できます。

「MSI Oculux NXG253R」付属モニタスタンドの左右スイーベルの可動域は左右45度(90度)に対応しています。

「MSI Oculux NXG253R」の付属モニタスタンドの上下チルトの可動域は仕様通り下に5度、上に20度です。

モニターの高さはモニター本体とスタンドの付け根部分が上下に動く構造になっており、モニタパネルの頂点で399mm~529mm、130mmの範囲内で調整できます。

付属のスタンドはピボットに対応しており、縦向きにして使用できます。

「MSI Oculux NXG253R」はVESA100x100規格のVESAマウントに対応しておりサードパーティ製のモニターアームを使用できます。モニタ単体の重量も3.7kgほどなのでモニターアームを問題なく利用可能です。

「MSI Oculux NXG253R」のVESAネジ穴は背面外装から窪んだ場所にありますが、高さをオフセットするスタンドオフが標準で付属するので、外装とモニターアームなどのVESA接続機器が干渉する心配はありません。

モニターアームについては管理人は「Lumen MA-GS102BK」、もしくは色違いでほぼ同機能な「サンワダイレクト 100-LA018」という製品をおすすめしています。モニターアームというとエルゴトロン製が一番の売れ筋ですが、クランプのネジが下に伸びているタイプのモニターアームは机に干渉して使えないという問題があり、MA-GS102BKはクランプを上側から六角レンチで締めるタイプでテーブル下の隙間が狭いデスクでも使用できるので管理人も使っています。

「Lumen MA-GS102BK」はモニタとアームを接続する部分がクイックリリースのブラケット式になっていてモニタアームからモニタ本体の着脱が非常に簡単です。ピボット機能もあるので設置後にモニタを縦・横で向きを切り替えることもできます。ただ関節の滑りに若干難があるので潤滑剤を塗布するのがおすすめです。

なおVESAネジ穴が背面外装から窪んだ場所にあるモニタの場合、スライド式クイックリリースプレートを採用するモニターアームでは、背面外装とクリックリリースブラケットが干渉して設置できない可能性があります。そういった場合はスペーサーを使用してください。VESA100x100規格ではネジ規格がM4と決まっているのでM4ネジのスペーサーをAmazonや最寄りのホームセンターで探して下さい。

VESA100x100規格ではネジ規格もM4と決まっているのでM4のスペーサーであれば基本的に何でもいいのですが、別件で購入していたNUC用VESAマウント拡張ブラケット「SilverStone SST-MVA01 NUC用VESAマウント拡張ブラケット」に付属するスペーサーがちょうど使用できたので、管理人はこれを流用しています。M4ネジのスペーサーがよくわからないという人は2000円ほどしますが、とりあえずこれを買えば干渉を回避できます。

MSI Oculux NXG253RのOSD操作・設定
「MSI Oculux NXG253R」のOSD操作はモニタ背面左側(正面から見て右側)に配置された操作スティックを使用します。またモニタ本体の電源ボタンが操作スティックのある位置からすぐ下の底面に実装されています。電源ボタンがOSD操作用ボタンと離れた場所に設置されていて誤押下の心配がないところも小さな評価ポイントです。
操作スティックは上下左右と押下の5つの操作が可能で、操作ボタン各種の応答も良好でした。同種の操作スティックを採用する他社製品の一部では操作スティックの応答が微妙なことがありますが、「MSI Oculux NXG253R」は押下ボタンも含めて反応が良いので操作しやすく感じました。

操作スティックの上下左右にはショートカット機能が割り当てられています。OSDメニューが表示されていない状態で操作スティックを上方向に動かすと画面表示モード切替(ゲームモード)のショートカットメニューが画面中央下に表示されます。下方向に動かすとスクリーンアシスタント(OSDクロスヘア)、右方向に動かすとビデオ入力切替、左方向に動かすとアラームクロック、のように各種設定のショートカットメニューが表示されます。

操作スティックを上下左右に切り替えた時に表示されるショートカットメニューについては、OSDメニューのNaviキーから割り当てを変更可能です。

「MSI Oculux NXG253R」の操作スティックを押下すると詳細メニューが表示されます。メニューは24.5インチ画面の4分の1程度を占有するので見やすいサイズ感だと思います。
「MSI Oculux NXG253R」は初めて起動した時にOSD言語として日本語が適用されています。もし別の言語だった場合も下記の操作で日本語UIに切り替えが可能です。

「MSI Oculux NXG253R」のOSDメニューには大きく分けて、「ゲーム」「G-Syncプロセッサー」「イメージ」「入力源」「Navi キー」「設定」の6つの項目が用意されています。






「MSI Oculux NXG253R」の画質モードはOSDメニューのゲームに配置されており、モードにはユーザー、FPS、レーシング、RTS、RPG、sRGB、アンチブルーの計7種類があり、いずれのモードも任意に個別設定を変更できます。

またG-Syncプロセッサーのメニュー内には、E-Sports系PCゲームの視認性や遅延最小化の最適化が施された「G-Sync Esports」モードも用意されています。

一般にオーバードライブと呼ばれる応答速度を調整する機能は、「MSI Oculux NXG253R」では「応答速度」の名前で配置されています。オーバードライブ補正の強度を通常/速い/最も速いの3段階で設定ができて、標準設定は速いになっています。

黒の強弱を調節して暗がりの視認性を高める機能「ダークブースト」も用意されており、補正強度はオフ/通常/強い/最も強いの4段階があり、レベルを上げるほど明るく(白く)なります。加えて暗所と明所を分けて補正するAI.も用意されています。

モーションブラーリダクション機能「ULMB (Ultra Low Motion Blur)」については標準ではグレーアウトしており選択できませんが、PC側設定でG-Syncが無効かつ、DisplayPort接続においてリフレッシュレートが144Hzもしくは240Hzの時に選択可能となります。なおAMD製グラフィックボード環境ではULMBは使用できません。

ゲーミングモニタの便利機能として定番のOSDクロスヘア表示は「スクリーンアシスタンス」という設定項目で配置されています。アイコンの種類選択だけでなく、表示位置の微調整も可能です。



「MSI Oculux NXG253R」は可変リフレッシュレート同期機能にも対応しているのでリアルタイムなリフレッシュレートをOSD表示する機能も実装されています。表示位置の微調整も可能です。


MSI Oculux NXG253Rの発色・輝度・視野角
MSI Oculux NXG253Rの発色・輝度・視野角など画質についてチェックしていきます。直接的な画質ではありませんがMSI Oculux NXG253Rの液晶パネルは光沢のあるグレアではなくアンチグレアタイプなので暗転時に自分の顔などが映り込みません。

液晶パネルには大きく分けてIPS液晶パネルとVA液晶パネルとTN液晶パネルの3種類があり、各社個別の製品によって個体差はあるものの、この3つの液晶パネルの特性を簡単にまとめると次のテーブルのようになります。
「MSI Oculux NXG253R」に採用されているIPS液晶パネルはTN液晶パネルやVA液晶パネルと比べると色再現性や視野角など一般に画質に直結する性能が優れている反面、価格が高価になりがちな液晶パネルです。TN液晶パネルに比べて応答速度が遅めなので、60Hzオーバーのリフレッシュレートを実現しているIPS液晶パネル採用ゲーミングモニタは少ないため、輪をかけて高価です。とはいえ画質とリフレッシュレートを両立できるので、予算に糸目をつかないエンスーゲーマー勢に好まれています。
液晶パネルの簡易比較表 | |||
IPS | VA | TN | |
色再現性 | ◎ | 〇 | △ |
コントラスト | 〇 | ◎ | △ |
視野角 | 〇 | 〇 | △ |
応答速度 | 〇 | △ | ◎ |
価格 (高RR) |
△ (×) |
△ | 〇 |
液晶パネルの種類による性能の違いについてはこちらの記事も参照してみてください。
・IPS/VA/TN液晶パネルを比較解説 - ゲーミングモニタの選び方[4]

「MSI Oculux NXG253R」は360Hzの高速リフレッシュレートながら、IPS液晶パネルが採用されているので視野角も良好です。


「MSI Oculux NXG253R」の発色について、色温度の標準設定である”標準”で、白色が極端に黄色や青色がかって見えることはありませんでした。もしも標準設定で違和感を覚える場合は、「MSI Oculux NXG253R」では寒色・暖色の2つの画質モードや、任意にRGB強度を調整できるユーザーモードがあります。


「MSI Oculux NXG253R」はガンマの設定にも対応しており、標準の2.2に加えて、1.8、2.0、2.4、2.6の5段階で調整できます。

ここからはカラーキャリブレータを使用して、色域・色再現性・輝度・コントラスト・均一性など画質に直結するモニタの性能について詳細な検証結果を見ていきます。なおこれらのモニタ性能(特に輝度の均一性)については同じ製品であっても個体差が大きいのでご注意ください。検証にはカラーフィルター式(色差式)のX-Rite i1 Display Pro PlusとDatacolor SpyderX、そして分光式(スペクトロメーター)のX-Rite i1 Basic Pro 3を使用しています。

余談ですが、分光式のi1 Basic Pro 3は20万円程と非常に高価ですが、一般的な用途であれば測定精度は十分なので、イラスト製作や写真編集でカラーキャリブレーションを行う場合、カラーフィルター式のX-Rite i1 Display ProかDatacolor SpyderX Proで十分です。ユーザー数の多さで面倒が少ないのはX-Rite i1 Displayだと思います。
「MSI Oculux NXG253R」のディスプレイ輝度について白色点の輝度をOSD設定別で測定しました。OSD上の輝度設定10%刻みで0%~100%の輝度変化は次のようになっています。
「MSI Oculux NXG253R」において、一般に見やすい明るさと言われる120cd/m^2は輝度20%前後、室内照明に依りますが個人的に見やすいと感じる明るさの180~200cd/m^2は輝度30%前後です。また最大輝度が440cd/m^2程度と比較的明るいモニタです。

「MSI Oculux NXG253R」はSDR表示においても可変バックライト機能が標準で有効になっていますが、同機能をOFFに切り替えても、白色輝度には変化はありませんでした。バックライトの輝度変化が気になるかどうか、各自の好みで選択すればOKです。なお今回の検証はオフに設定しています。

可変バックライトの簡単な動作確認の方法としては、全画面黒表示で、白色輝点のマウスカーソルを画面上でインアウトさせるとバックライトの強弱が変化する様子が分かります。(機能的に同じだったのでASUS ROG Swift 360Hz PG259QNの動画を引用しています)
下の動画では分かりやすくバックライトを強弱させていますが、今回の検証でいくつかゲームも動かしてみたところ、可変バックライトのせいでチラつき(輝度の変化、明滅)を感じるような弊害は特にありませんでした。PCゲーミングシーンにおいては実用上、特に問題のない機能だと思いますが、チラつき(輝度の変化、明滅)を感じるようなら機能をOFFにしてみてください。
「MSI Oculux NXG253R」のディスプレイ輝度の均一性(Uniformity)を検証しました。画面中央の輝度が約120cd/m^2になるOSD設定において、画面を横7×縦5の35分割として各位置の白色点の輝度を測定し、120cd/m^2を基準にしたパーセンテージで等高線マップにしています。

液晶モニタにおいて輝度の低下が特に大きい四隅&四辺は、上のような領域分割測定では見落とされてしまうので、同様に中央120cd/m^2を基準にして個別に測定したところ次のようになりました。
「MSI Oculux NXG253R」については(下の写真は全体が白表示なので実用シーンよりもやや強調されていますが)、左右端の上側は輝度が30%近くも落ちており、均一性はよくありません。

画面中央の白色点が約120cd/m2になるOSD設定において「MSI Oculux NXG253R」のブラックレベルを測定したところ次のようになりました。ブラックレベルの測定にはX-Rite i1 Display Pro Plusを使用しています。

またこの時のコントラスト比も算出したところ次のようになっています。なおコントラスト比に大きく影響するブラックレベルはコンマ2桁での測定になるため測定精度が若干怪しく、ブラックレベル0.01の差でコントラスト比が大きく変わるので参考程度と考えてください。

続いて「MSI Oculux NXG253R」の色域と色の正確性を検証してみました。
まずはモニタのOSD設定を標準設定の標準モードにして(ディスプレイ輝度のみ120cd/m^2になるように調整)、任意のカラープロファイルを適用しない場合、次のようになりました。
「MSI Oculux NXG253R」は標準モードでそのまま使用しても96% sRGBでそこそこ広い色域をカバーしています。

色の正確性は平均ΔEが2.23となっており、標準設定のままだと誤差は大きめです、X-Riteによると『ΔE=2~3程度で2つの色を離して見比べた時に違いが分かるレベル』とのこと。

次にX-Rite i1 Basic Pro 3を使用してカラーキャリブレーションを行いました。キャリブレーション設定は下のスクリーンショットの通りですが、i1 Profilerの標準設定をそのまま採用しています。



「MSI Oculux NXG253R」では色温度を標準設定のままで、RGBの強さは適正と表示されたのでそのままでカラーキャリブレーションを実行しました。

X-Rite i1 Basic Pro 3によってカラーキャリブレーションで作成したICCファイルを適用し、同じくX-Rite i1 Basic Pro 3で行った品質検証(色の正確性の検証)の結果は次のようになっています。X-Rite i1 Basic Pro 3は分光式(スペクトロメーター)のカラーキャリブレータなので、測定精度はこちらの方が高いはずです。
上の測定結果ではカラーキャリブレーション前の色の正確性はΔE 2.23でしたが、カラーキャリブレーション後にX-Rite i1 Basic Pro 3で測定した色の正確性はΔE 0.5とかなり優秀な数値です。

また分光型測色計(スペクトロメーター)で測定した輝度120cd/m^2における白色点のカラースペクトラムが次のようになっています。
カラースペクトラムから発色の良いモニタを見分けるざっくりとしたポイントは『RGB各色のピークが鋭く立ち上がり、かつ高さが同程度であること』です。一般的な液晶モニタは白色LEDバックライト(青色LEDを光源として赤緑(≒黄)蛍光体を組み合わせて白色を生成する)を採用しているので青色のピークが高くかつ鋭くなります。白色を基準として測定した場合、緑と赤のピークの高さは色温度のOSD設定で若干上下します。以上から簡単化すると『緑と赤のピークが鋭くなっているかどうか』をチェックすればカラースペクトラムの良し悪しがざっくりと判定できます。
「MSI Oculux NXG253R」については青色ピークの立ち上がりは鋭いものの、緑と赤の分離が弱く、また青に比べてピークも低いという一般的な液晶モニタの特長です。

MSI Oculux NXG253Rの360Hzリフレッシュレートについて
「MSI Oculux NXG253R」の最大の特徴である360Hzリフレッシュレートについてチェックしていきます。まずは「MSI Oculux NXG253R」の特徴の1つである”360Hzリフレッシュレート”について、その意味自体は特に説明せずとも読者はご存知だと思いますが、一般的な60Hzリフレッシュレートの液晶モニタが1秒間に60回の画面更新を行うのに対して、144Hzリフレッシュレートであれば標準的な60Hzの2.4倍となる1秒間に144回の画面更新を行います。
さらに最近では競技ゲーマー向け製品で240Hzの超高速リフレッシュレートなゲーミングモニタも販売されていますが、「MSI Oculux NXG253R」はそれを1.5倍に上回る360Hzの超々高速なリフレッシュレートを実現しています。

1秒間に360回の画面更新を行う360Hzリフレッシュレートの物理的なメリットとしては、単純に秒間コマ数が増えるので映像がより滑らかになります。上の章で詳しく検証したようにリフレッシュレートが上がると応答速度も上がって細部がクッキリとしたシャープな映像に見えやすくなり、加えて画面更新間隔が短くなるので表示遅延が小さくなり、一般的な60Hz環境よりもスピーディーなプレイで他者を圧倒しやすくなります。
「MSI Oculux NXG253R」ではNVIDIA GeForce RTX30シリーズやNVIDIA GeForce RTX20シリーズなど最新グラフィックボードのDisplayPort1.4のビデオ出力に接続することによって、モニタリフレッシュレートを最大360Hzなどに自由に設定できます。

G-Syncモジュール搭載モニタでは長らくサブ入力のHDMIバージョンが1.4でしたが、最新モデルでは第2世代G-Syncモジュールが採用されており、サブ入力もHDMI2.0に対応しています。
「MSI Oculux NXG253R」では2基のサブ入力の両方がHDMI2.0に対応しており、最大でフルHD/240Hzの画面表示が可能でした。

モニタリフレッシュレートの設定は、NVIDIA製GPUの場合は上のスクリーンショットのようにNVIDIAコントロールパネルから、AMD製GPUの場合はWindowsのディスプレイ設定から行います。
「MSI Oculux NXG253R」はNVIDIA G-Syncモジュール搭載モニタですが、DisplayPortに接続すればAMD製GPU環境でも360Hz対応モニタとして問題なく使用できます。

オンライン対戦FPSなど競技性の高いゲームにおいて144Hzや240Hzなど高リフレッシュレートのモニタを使用した時の実用的なアドバンテージとして、ゲーム内視線を左右に振った時の視認性が上がるという例は直感的にもわかりやすいメリットですが、その他にもゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性が上がるというメリットも存在します。
下の比較動画では4分割して映像を並べていますが、右下以外の3つは右下画面の緑枠部分を拡大するよう接写して、「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影したものになっています。リフレッシュレート別で左上は60Hz、右上は120Hz、左下は240Hzとなっていますが、赤枠で囲った建物の出入り口付近で左方向に移動する敵の動きはリフレッシュレートが上がるほど視認しやすくなるのがわかると思います。
またハイリフレッシュレートなゲーミングモニタでは表示遅延も小さくなります。
表示遅延が小さいメリットとしては、視認と操作の繰り返し応答が良くなることに加えて、例えば下の動画のように壁に隠れたターゲットが壁から出てきた時、画面に表示されるのが実際に速くなります。
240~360Hz・FPSでシステム遅延が小さい環境の攻撃側に敵(守備側)が見えているのに対して、一般的な60Hz・FPSでシステム遅延が大きい環境の守備側は敵(攻撃側)が見えていない様子がハッキリと映っています。
主観の画面表示を基準にしてみると、クロスヘア中央にターゲットをエイムしてから撃ち始めた場合、240Hzのほうが60Hzより先に着弾します。ターゲットが逃げる場合は50ms程度の差で撃ち漏らす場合もあります。
技術云々ではなく、単純に、クロスヘア中央にエイムするという同じタイミングで撃ちあっていたら、リフレッシュレートが高いモニタを使っている方が勝ちます。加えて操作と画面表示の繰り返し応答も早いので、当然、リフレッシュレートが高い方がエイムもスムーズになります。
なお「MSI Oculux NXG253R」でフル解像度/360FPSを狙うには、元から軽めのPCゲームや画質設定を下げた最新PCゲームであってもグラフィックボードのGPU性能はかなり高い水準で要求されます。
ゲーミングモニタとして「MSI Oculux NXG253R」を使用するのであれば2020年最新のハイエンドGPUであるNVIDIA GeForce RTX 3080やNVIDIA GeForce RTX 3090がおすすめです。
・GeForce RTX 30シリーズのレビュー記事一覧へ

MSI Oculux NXG253Rの応答速度・表示遅延
次にゲーミングモニタのハードウェア性能として特に重要な、「MSI Oculux NXG253R」の応答速度や表示遅延についてチェックしていきます。まずは「MSI Oculux NXG253R」の応答速度について検証していきます。
なおゲーミングモニタを選ぶ、もしくはモニタの応答速度や残像を評価する上で重要な予備知識である『液晶モニタの応答速度とオーバードライブ機能』についてはこちらの記事で簡単に紹介しているので、よくわからないという人は先に確認してみてください。
・ゲーミングモニタの選び方[1] 応答速度とオーバードライブについて
![ゲーミングモニタの選び方[1] 応答速度とオーバードライブについて](https://livedoor.blogimg.jp/wisteriear/imgs/4/0/40404cc5-s.jpg)
「MSI Oculux NXG253R」のOSDメニュー上ではオーバードライブ機能は「応答速度」の名前で配置されており、オーバードライブ補正の強度を通常/速い/最も速いの3段階で設定ができ、標準設定は速いになっているので、以降の検証においても上で解説したオーバードライブの補正がかかります。
「MSI Oculux NXG253R」のオーバードライブ設定は60Hzから360Hzの全域に渡って”速い”が最適な設定値です。1種類のオーバードライブ設定で一般的な60Hzから超高速な360Hzまで幅広くカバーできるところは可変オーバードライブ機能でリフレッシュレートに合わせてオーバードライブの補正強度を調整できる、G-Syncモジュール搭載モニタならではの強みです。
なおオーバードライブ設定を”最も速い”にすると過渡応答は速くなりますがオーバーシュートの逆像がかなり強くなります。

応答速度の確認には「UFO Test: Ghosting」を使用します。同テストではUFOが移動する背景カラーを選択できますが、今回の検証ではブラック/グレー/ホワイトの3色を選択しています。
背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。

まずは簡単にシャッタースピードを十分に速くして「UFO Test: Ghosting」の様子を写真撮影してみたところ、「MSI Oculux NXG253R」では360Hzリフレッシュレートで動作させると(オーバードライブ設定は最適値の通常)、ベストタイミングにおいて1フレーム前の残像が薄っすらと残る感じになりました。
単純に既存の240Hz対応IPS液晶パネルで強引に360Hz動作をさせたと仮定すると、2,3フレームは前のものが残ってしまうので、360Hzに対応する「MSI Oculux NXG253R」にはさらに改良された高速IPS液晶パネルが採用されているのが分かる結果です。
だだし、GtoGやGtoWは高速ですが、GtoBやWtoGのように明るさが下がる方向の変化は若干遅めに見えます。ゲーミングシーンで重要なGtoGに範囲を狭める感じで応答速度を最適化(高速化)しているような印象です。

さらに「MSI Oculux NXG253R」のリフレッシュレートを変えてみたり、他の液晶モニタを比較対象にしたりしながら、「UFO Test: Ghosting」の様子を「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、比較してみます。

「MSI Oculux NXG253R」の標準オーバードライブ設定は”速い”ですが、これがリフレッシュレートをネイティブ対応する最大値の360Hzにした時の最適設定です。オーバードライブ設定を”最も速い”にすると過渡応答は速くなりますがオーバーシュートの逆像が強く出ます
ハイリフレッシュレートで理想的な応答を見せるオーバードライブ設定は相対的に補正が強過ぎるため、リフレッシュレートを下げるとオーバーシュートが発生してしまうことが多いですが、「MSI Oculux NXG253R」は360Hzで最適な応答を見せる”速い”設定のままで、60~240Hzのリフレッシュレートでも綺麗な応答を見せます。
ここからはSONY DSC-RX100M5の960FPS(16倍速)よりもさらに高速な5760FPS(96倍速)のスーパースローモーションカメラを使用して「MSI Oculux NXG253R」の応答速度を比較検証していきます。
まずは先ほどのおさらいになりますが、360Hz動作時のオーバードライブ設定別で「MSI Oculux NXG253R」の応答速度をチェックしてみました。
結果は先ほど同様ですが、標準設定の”速い”から”最も速い”に設定を買えるとオーバーシュートの残像が強く出るので”速い”が最適な設定です。
同じく360Hz対応ゲーミングモニタASUS ROG Swift 360Hz PG259QNと比較してみると、PG259QNの最適OD設定である通常設定時の応答速度と、「MSI Oculux NXG253R」の”速い”設定時の応答速度はほぼ一致しています。
続いて応答速度に優れるTN液晶パネルを採用し、240Hzネイティブ対応ゲーミングモニタでは最速の「ZOWIE XL2746K」と比較してみました。
「MSI Oculux NXG253R」を240Hz動作にした時については、960FPS動画と同様に5760FPS動画を見ても、PCゲーミングシーンの指標になるグレーバックではIPS液晶ながらTN液晶と遜色ない応答を見せているのが分かります。オーバードライブの逆像も含めれば「MSI Oculux NXG253R」のほうが低残像です。
動画右半分のように黒背面での応答速度は「MSI Oculux NXG253R」のほうが劣るので、オシロスコープ等を使用した全域GTGの平均応答速度では数値上、ポジションが下がる可能性がありますが、PCゲーミングの実用シーンではTN液晶よりも高速と言っても過言ではないと思います。
「MSI Oculux NXG253R」を360Hz動作にしてもやはり、TN液晶の「ZOWIE XL2746K」よりグレーバックで低残像です。しかしながらGtoGの中域の変化に最適化が強いせいか、ブラックバックでは360Hzの変化に追いつかず残像が増しています。
最後に「MSI Oculux NXG253R」と同じく360Hz対応ゲーミングモニタのASUS ROG Swift 360Hz PG259QNやAlienware AW2521Hと応答速度を比較してみます。
「MSI Oculux NXG253R」とASUS ROG Swift 360Hz PG259QN、Alienware AW2521Hとをそれぞれ最適OD設定で比較してみましたが、応答速度はほぼ同じでした。この3機種で悩んでいる人は応答速度の優劣で悩む必要はないと思います。
「UFO Test: Ghosting」において下の写真のようにUFOが微かに表示された瞬間を始点に、その地点のUFOが完全に消えた時点を終点にして、その間隔のフレーム数を応答速度として算出し比較してみました。なおオーバードライブ機能によって発生するオーバーシュート/アンダーシュートによる逆像が発生してから消えるまでの時間は別に計算しています。
測定には240Hz未満のモニタではSONY DSC-RX100M5の960FPSスーパースローモーションを使用していますが、240Hzを超えるモニタでは5760FPSのスーパースローモーションを使用しており、その場合は末尾に”*”マークを添えています。

評価の目安として、”1000msをリフレッシュレートで割って2倍した数値”よりも測定値が小さければ、画面更新に応答速度が追いついています。60Hzの場合は33.3ms、120Hzの場合は16.6ms、144Hzの場合は13.9ms、240Hzの場合は8.3ms、360Hzの場合は5.6msを下回っていればOKです。
まずは背景カラーがブラックの時の「MSI Oculux NXG253R」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。
3種の中では高速な応答を見せることが多いテストなのですが、GtoG中域の応答速度が高速になるように最適化されているためなのか、「MSI Oculux NXG253R」は240Hz以上において、この応答速度が若干遅めです。

続いて背景カラーがホワイトの時の「MSI Oculux NXG253R」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。

最後に背景カラーがグレーの時の「MSI Oculux NXG253R」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
「MSI Oculux NXG253R」に関してはスーパースローモーションでよくよく見ると、オーバーシュートの残像が確認できますが、薄いもやのような感じなので、実際はオーバーシュートによる色滲みとして知覚されることはないように思います。なのでオーバーシュートによる加算分はなし、もしくは+1ms未満程度の加算が応答速度と考えてもいいと思います。

最後に「MSI Oculux NXG253R」の表示遅延(内部遅延)について測定を行いました。
モニタにはGPUのビデオ出力が送られてきてから実際にモニタに表示されるまで遅延が存在し、この遅延が大きいと例えば、FPSゲームでゲームパッドのトリガーやマウスのクリックによる操作からワンテンポ遅れて、マズルフラッシュが表示される、といった現象が発生します。人間は当然目で見てから操作するので、格闘ゲームやFPSゲームなど1,2フレームを争うような競技性の高いゲームにおいてはモニタの表示遅延が可能な限り小さいことが望まれます。

システム表示遅延やディスプレイ表示遅延の測定には、フォトセンサーを使用した特殊な測定機器「PC Gaming Latency Tester」を使用しています。当サイトのレビュー用に特注した機器なので、詳細についてはこちらの記事を参照してください。
「MSI Oculux NXG253R」やその他の比較モニタのディスプレイ表示遅延の測定結果は次のようになりました。測定方法的に遅延が2ms以下であればディスプレイ内部の表示遅延は誤差の範囲内で十分に小さいと考えてOKです。

「MSI Oculux NXG253R」やその他の比較モニタのシステム表示遅延の測定結果は次のようになりました。この測定値は一般的なPCゲームにおける操作から画面表示の変化までの遅延に一致します。
グラフの通りリフレッシュレートを上げると応答速度だけでなく表示遅延も改善するのでゲーマーにとってハイリフレッシュレートなゲーミングモニタを選択するメリットは大きいということが分かると思います。

MSI Oculux NXG253RのG-Syncについて
続いて「MSI Oculux NXG253R」の大きな特徴の1つ、可変リフレッシュレート同期機能「NVIDIA G-Sync」についてチェックしていきます。モニタの画面更新(リフレッシュ)に関する基本的な予備知識や、「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync)」と「NVIDIA G-Sync Compatible」の関係についてはこちらの記事を参考にしてください。
・ゲーミングモニタの選び方[3] FreeSyncとG-Sync Compatibleについて

なお当サイトのレビューではNVIDIA環境について、G-Syncモジュールが搭載されたモニタにおける可変リフレッシュレート同期機能を単純にG-Syncと呼び、AMD FreeSync(VESA Adaptive-Sync)に対応したモニタにおける可変リフレッシュレート同期機能はG-Sync CompatibleもしくはAdaptive-Syncと呼びます。またドライバでそのモニタが正式にサポートされている場合はG-Sync Compatible認証取得済みと補足します。
「MSI Oculux NXG253R」は、可変リフレッシュレート同期機能のために独自のNVIDIA G-Syncモジュールが内蔵されたゲーミングモニタです。従来のG-Syncモジュール内蔵モニタはNVIDIA製GPU環境でしか可変リフレッシュレート同期機能を利用できませんでしたが、「MSI Oculux NXG253R」はAMD製GPU環境でも使用できます。

「NVIDIA G-Sync」はモニタ側に専用モジュールを搭載しており、その分高価ですが、「AMD FreeSync」とは違って可変リフレッシュレート型同期機能を使用可能な映像ソースのフレームレートについて、モニタに依存した制限が基本的に存在しないというメリットがあります。
またG-Syncモジュール内蔵モニタは「可変オーバードライブ」にも対応しオーバードライブの補正強度をリフレッシュレートに合わせて調整してくれるので、可変リフレッシュレート同期機能によってリフレッシュレートが変動しても、リフレッシュレートが下がった時にオーバーシュートによる色滲み(逆像)が生じにくいというメリットもあります。
「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync) / NVIDIA G-Sync Compatible」で対応可能なリフレッシュレート(フレームレート)の下限は40~48Hz程度ですが、G-Syncモジュールを内蔵する「MSI Oculux NXG253R」はDisplayPort接続時に、1Hz~360の範囲内で可変リフレッシュレート同期機能に対応しています。
またG-Syncモジュールを搭載するモニタではこれまでHDMIのサブ入力は可変リフレッシュレート同期機能に非対応でしたが、「MSI Oculux NXG253R」に搭載された2基のHDMI入力はNVIDIA製GPU環境において、G-Sync対応モニタとして認識され、可変リフレッシュレート同期機能が使用できます。

NVIDIA G-Syncが正常に動作してリフレッシュレートが可変になると、「MSI Oculux NXG253R」のゲーム向上モードの機能の1つであるフレームレートによってオーバーレイ表示されるリアルタイムリフレッシュレートがフレームレートに合わせて変動するようになります。
可変動作リフレッシュレート同期機能が正常に動作しているかは、フレームレート(リアルタイムリフレッシュレート)がゲーム内フレームレートに合わせて変動しているかどうかを見て確認してください。

ちなみに「MSI Oculux NXG253R」のDisplayPortとHDMIはいずれもAMD製GPU環境でもFreeSync対応モニタとして認識されました。
ただし、2021年8月11日現在最新のドライバ「Radeon Software Adrenalin 2021 Edition 21.18.1」では1FPS~255FPSまでの可変リフレッシュレートに対応と表示されますが、実際に動作検証をしてみたところ、AMD製GPU環境において可変リフレッシュレート同期が正常に動作するのは240Hzリフレッシュレートに設定した時まで、300Hzや360Hzなど上のリフレッシュレートに設定するとリフレッシュレートが固定されました。
ハードウェアの問題か、今後のドライバアップデートで対応可能なのかは分かりませんが、AMD製GPU環境においては今のところ可変リフレッシュレート同期機能が利用できるのは240Hzまでのようです。


NVIDIA G-SyncやG-Sync Compatibleの使い方
「MSI Oculux NXG253R」で可変リフレッシュレート同期機能「NVIDIA G-Sync / G-Sync Compatible」を有効化する手順について説明します。可変リフレッシュレート同期機能「NVIDIA G-Sync」の使い方は非常に簡単で、「MSI Oculux NXG253R」をNVIDIA製GPUのDisplayPortビデオ出力に接続し、NVIDIAコントロールパネル上からG-Syncを有効にすると、以降はゲーム内の垂直同期制御はドライバが上書きする形で、G-Syncによってモニタ側の更新タイミングが制御されるようになります。

2019年1月15日以降の最新ドライバによってNVIDIA GeForce環境でもAdaptive-Syncが利用可能になりました。ドライバの更新に合わせてG-Sync Compatible認証を取得するモニタが増えています。
417.71以降の最新ドライバをインストールして、DisplayPortビデオ出力(一部ではHDMIビデオ出力も)にAdaptive-Sync対応モニタを接続すると、G-Sync対応モニタを接続した時と同様にAdaptive-Syncを有効化するための設定が、NVIDIAコントロールパネル上の「G-Syncの設定」に表示されます。
「G-Sync、G-Syncとの互換性を有効化(Enable G-Sync, G-Sync Compatible)」のチェックボックスをチェックして、下のモニタアイコンに使用するモニタの名前が表示・選択されていることを確認し、適用をクリックすればNVIDIA GeForce環境でAdaptive-Syncを有効化できます。

なおG-Sync Compatible認証を取得していない一般のAMD FreeSync/VESA Adaptive-Sync対応モニタでも、互換性が検証されていないと注記が表示されますが、NVIDIA製GPU環境においてAdaptive-Syncを利用できます。

AMD FreeSyncの使い方
「MSI Oculux NXG253R」で可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync」を有効化する手順について説明します。AMD製GPU搭載PCの場合はRadeon設定のウィンドウ右上にある歯車アイコンを選択、トップメニュータブからディスプレイを選択の手順で表示される「Radeon FreeSync」のスライドスイッチから機能を有効化します。

また上で紹介した参考記事中で解説しているように、AMD FreeSyncではテアリング解消とマウス遅延低減のどちらを優先するかで垂直同期の有無を各自で選択する必要があります。垂直同期は通常ゲーム内設定でON/OFFの切り替えが可能ですが、ドライバ側が上書きしてゲーム内からは切り替えられない場合があります。ゲーム内で設定して希望通りの動作にならない時はRadeon Settingsのゲームプロファイルもチェックしてください。

NVIDIA G-Syncの効果
可変リフレッシュレート同期機能の「NVIDIA G-Sync」や、「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync) / NVIDIA G-Sync Compatible」の効果やメリットについて説明していきます。後者については機能的にほぼ同じなので以降まとめてFreeSyncと呼ぶことがあります。可変リフレッシュレート同期機能の検証に際してはリプレイ機能があって同一シーンで検証がしやすいので「Project Cars 2」を使用しています。またフレームレートやテアリングの発生の様子を確認しやすいように、画面左上にはGPUフレームレートOSD、画面左端にはGPUフレームバッファで色の変わるカラーバーが表示されるようにしています。加えてモニタが対応していればモニタOSDのリフレッシュレート表示機能も使用します。
画面右上のフレームレートはGPUフレームバッファから算出されているので必ずしもリフレッシュレートとは一致しません。画面左端のカラーバーは連続するフレーム間、つまりn番目とn+1番目のフレームではそれぞれ異なる色になっているため、同時に複数色のカラーバーが表示されている画面はテアリングが発生していることを意味します。

まずは同期なし、垂直同期、G-Syncの違いを分かりやすく体感してもらうため、モニタリフレッシュレートを60HzにGPU側出力を50FPS前後になるようにして、「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影して、画面表示の様子を比較してみました。
同期なし、垂直同期、G-Syncのいずれも50FPS前後の映像ソースが表示されていますが、同期なしではテアリングが発生し、垂直同期ではスタッター(カクつき)が発生しているのがわかります。一方でG-Sync有効ではテアリングもスタッターも一切発生していません。4K解像度のように高フレームレートを稼ぐのが難しい超高解像度において可変リフレッシュレート同期機能「NVIDIA G-Sync」が快適なゲームプレイに与える影響はかなり大きいと思います。
なお上動画の右下にはG-Sync有効下でリフレッシュレートを超える映像ソースが表示された場合の画面を表示しています。G-Sync有効下において映像フレームレートがリフレッシュレートを上回ると、動画のようにテアリングが発生します。
G-Sync対応モニタでは通常はドライバによって垂直同期設定が上書きされてそういった現象が発生しないように制御されるのですが、実際の挙動はゲームによって異なるという実状があります。

G-Sync有効時にゲーム内設定の垂直同期を有効にするとモニタリフレッシュレートを上回らないようにするものもありますが、垂直同期でフレームレートの上限を上手く制御できない場合は、NVIDIAコントロールパネルの「Max Frame Rate」に”リフレッシュレートから3,4FPSを引いた値”を指定してください。(グローバル設定だけでなくゲームタイトル別に設定が可能)

NVIDIAコントロールパネルの設定以外にもRivaTunerやNvidia Profile Inspectorを使用してゲーム内フレームレートがモニタリフレッシュレートを上回らないように設定することが可能です。


AMD環境においてもFreeSyncのみを有効した時に映像フレームレートが対応フレームレート範囲外になるとテアリングが発生します。リフレッシュレートを上回ってしまう場合については、Radeon設定のRadeon Chillの最大FPSに”リフレッシュレートから3,4FPSを引いた値”を指定してください。(グローバル設定だけでなくゲームタイトル別に設定が可能)

以下、「ASUS ROG SWIFT PG27UQ」を使用した検証結果を元にして、NVIDIA G-Syncの効果やメリットについて紹介していきます。
「ASUS ROG SWIFT PG27UQ」の4K解像度120Hリフレッシュレートにおいて、ゲーム内フレームレートが50FPS程度になる映像を使用して、同期なし、垂直同期、G-Syncを比較してみました。右下の分割画面には比較対象として同じ映像で60Hzリフレッシュレートの垂直同期を載せています。
左上の同期なしは盛大にテアリングが発生しています。4K解像度についてはGPU負荷的に40~60FPSを狙う高画質ゲームが多いので画質を重視するなら同期機能は必須だと思います。右側の垂直同期の60Hzと120Hzを比較すると同じ映像であっても画面更新間隔は小さくなるので、120Hzのほうがスタッターによるカクつきの違和感は減っています。それでも垂直同期120Hzでは細かいスタッターがありますが、左下のG-Sync有効ではスタッターもテアリングもなく綺麗で滑らかな表示が実現できています。
さらに「ASUS ROG SWIFT PG27UQ」の4K解像度120Hリフレッシュレートにおいて、ゲーム内フレームレートが100FPS程度になる映像を使用して、同期なし、垂直同期、G-Syncを比較してみました。右下の分割画面には比較対象として50FPS程度のG-Syncを載せています。
G-Sync有効であれば同期なしのテアリングや垂直同期のスタッターに悩まされることなく滑らかで綺麗な映像が表示できています。G-Syncの50FPSと100FPSを比較すると当然ですが100FPSの方がコマ割りが増えるので16倍速スローモーションでもスムーズに見えます。
またPUBGやCS:GOのようなオンライン対戦FPSや格闘ゲームなど1,2フレームを争う競技性の高いPCゲームでは、表示遅延(入力遅延)が発生する垂直同期は嫌われる傾向にありますが、144Hzや240Hzといったハイリフレッシュレートモニタにおいて、同期機能を無効化した場合に発生するテアリングがどのように影響するのか検証してみました。
テアリングはモニタ表示更新中のフレームバッファの更新で発生しますが、目で見た時の違和感はn番目とn+1番目のフレームの絵の差に影響されます。コマ割りが細かくなる高フレームレートではn番目とn+1番目の絵の違いは当然、低フレームレートの場合よりも小さくなります。そのため50FPSでは画面の分断のように知覚できたテアリングは、200FPSのような高フレームレートでは細かいノイズのような形で知覚されます。
100FPSを超える高フレームレートでは大きな分断に見えるテアリングの代わりに、細かいノイズのように感じるテアリングが増えてきます。『細かいノイズの発生程度であれば高リフレッシュレートモニタのテアリングは実用上は大した問題ではなく、可変リフレッシュレート同期機能は不要である』という意見がありますが、高リフレッシュレートモニタのアドバンテージとして先に解説した「ゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性」と合わせて考えると、このノイズの有無は遠方の細かいエネミーやオブジェクトの発見に影響します。なので高リフレッシュレートモニタを使用するのであれば可変リフレッシュレート同期機能はあったほうがいい、というのが管理人の意見です。
MSI Oculux NXG253RのReflex Latency Analyzerについて
「MSI Oculux NXG253R」はNVIDIA G-Syncモジュールによってサポートされるシステム遅延測定機能「NVIDIA Reflex Latency Analyzer」に対応しています。
「NVIDIA Reflex Latency Analyzer」を使用するには同機能に対応したゲーミングモニタに加えて、対応ゲーミングマウスも必要になります。
NVIDIA Reflexの公式ページでは、Reflex対応ゲームと各ゲームがサポートする機能、Reflex Latency Analyzerに対応するゲーミングモニタとゲーミングマウスの一覧が公開されています。
互換性一覧:https://www.nvidia.com/ja-jp/geforce/technologies/reflex/supported-products/

「NVIDIA Reflex Latency Analyzer」において対応ゲーミングモニタはG-Syncモジュールを使用する機能なので必須ですが、実のところ互換マウスは必須ではなく、測定を正確にするための推奨機器という扱いです。
NVIDIA Reflex Latency Analyzerで測定対象となるシステム遅延とは『マウスをクリックしてから、ディスプレイ表示に反映されるまでの時間』です。
マウスをクリックしてからG-Syncモジュール(PC)がマウス信号を認識するまでの時間、つまりマウス遅延については、NVIDIAラボで測定した参考値をドライバに収録しているものと思っていたのですが、実際に動作を確認してみたところ、試行毎に0.1ms単位で異なる値になったので、NVIDIA Reflex Latency Analyzerは互換マウスと組み合わせた場合、マウス遅延も正確に測定できるようです。

またNVIDIA Reflex対応ゲーム一覧についてもNVIDIA公式から公開されています。システム遅延低減機能自体は互換性ゲームのほぼ全てで全機能がサポートされていますが、NVIDIA Reflexの一部であるシステム遅延測定機能Reflex Latency Analyzerのサポート状況はゲームによって異なります。
ゲーム内遅延統計とReflex Latency Analyzerのフラッシュインジケーター表示の両方に対応しているので、ゲーム自体もフリー配信ですし、まずはフォートナイトで試すのが良さそうです。

「MSI Oculux NXG253R」でシステム遅延測定機能NVIDIA Reflex Latency Analyzerを使用する方法について説明していきます。

今回は「MSI Oculux NXG253R」と合わせて、NVIDIA Reflex Latency Analyzerに対応するMSI製ゲーミングマウス「MSI CLUTCH GM41 LIGHTWEIGHT ゲーミングマウス」をお借りしたので、これを使用して検証してみました。

NVIDIA Reflex Latency Analyzerを使用する場合、測定するマウスはモニタのマウスアイコンが描かれたUSBポートに接続し、モニタのアップストリームUSBケーブルでPCとモニタを接続します。以上でハードウェア的なセットアップは完了です。

次にモニタ側の設定として、OSD設定のG-Sync ProcessorにNVIDIA Reflex Latency Analyzerに関する設定項目が配置されています。
システム遅延測定機能を使用する場合は、一番上にある「PC + Display レイテンシ」の項目を選択して機能をオンに切り替えます。

注記の通りですが、モニタを正面から見た時に左側面の上側にあるマウスマークが刻印されたUSBポートにマウスを接続します。あとUSBアップストリームケーブルでPCとモニタを接続するのも忘れずに。

NVIDIA Reflex Latency Analyzerではマズルフラッシュのような画面変化を観測することでディスプレイ表示の完了を検出します。検出範囲は半透明なオーバーレイ枠として画面上に表示されます。
モニタリング枠内の表示(明るさ)変化を検出する感度は、低/中/高の3段階で設定できます。


モニタリング枠についてはOSD設定で表示と非表示の切り替えも可能です。

モニタリング枠の位置やサイズについては中央・右利き・左利きの3種類のプリセットに加えて、任意に設定ができ、「枠の位置」や「枠サイズ」の項目から任意にカスタマイズが可能です。


モニタリング枠の範囲内でマズルフラッシュのような操作に対する画面変化を測定するのですが、単純かすると暗→明の変化を測定することになるので、無操作時にも起きる揺れなどで誤検出が起こらないように、もしくは弱いマズルフラッシュ等でも検出できるように、検出感度を低・中・高の3段階で設定できます。




モニタリング枠の表示をONにすると「MSI Oculux NXG253R」では半透明な薄緑色のモニタリング枠が表示されます。モニタリング枠のサイズや位置は上で紹介したOSD設定からOSD操作スティックで細かく調整が可能なので、プレイしているゲームの銃口付近にモニタリング枠を配置します。

モニタリング枠が銃口付近を上手くカバーできていれば、マウスをクリックすると表示遅延がディスプレイ左上にOSD表示されます。なおモニタOSDで表示される表示遅延はマウス入力遅延を含まない、『システム表示遅延 + ディスプレイ表示遅延』になります。

なお遅延測定はディスプレイ表示の輝度変化を参照しているので、遅延を正確に測定したい場合は、モニタリング枠付近の表示が、暗くて変化の少ない状態にしてください。

以上のようにNVIDIA Reflex Latency Analyzerは対応モニタと対応マウスがあればPC側の設定なしで簡単に使用できますが、GeForce ExperienceのOSD機能を組み合わせることで、さらに詳細な遅延測定も可能になります。
GeForce Experienceの基本的な使い方については割愛しますが、NVIDIA Reflex Latency Analyzerを組み合わせる場合は、まず「Alt + Z」でOSDメニューを表示し、歯車アイコンを選んで設定メニューを開き、HUDレイアウトを選択、「パフォーマンス - 遅延」を表示内容に選びます。



以上のように設定すると、設定位置に応じて、表示遅延に関するパフォーマンスオーバーレイが表示されます。

あとは先ほどと同様にNVIDIA Reflex Latency Analyzerに対応するゲーミングモニタに接続されたマウスをクリックすれば銃口の発光を検出して、GeForce Experienceのオーバーレイに遅延の詳細情報も表示されます。(モニタOSDに少し遅れてオーバーレイが更新されるので、下写真ではOSDの遅延とオーバーレイの遅延の数値が異なります)

MSI Oculux NXG253RのNVIDIA ULMBについて
「MSI Oculux NXG253R」はNVIDIA G-Syncモジュールによってサポートされるモーションブラーリダクション機能「NVIDIA Ultra Low Motion Blur (NVIDIA ULMB)」に対応しています。NVIDIA Ultra Low Motion Blur (NVIDIA ULMB)は、製品公式ページで『バックライトのストロボを使用してモーションブラーを軽減し、非常に滑らかで躍動感あふれるビジュアルを実現します』と表記されているように、一般に言うところのMotion Blur Reduction(モーションブラーリダクション、残像抑制)機能の1種です。
モーションブラーリダクション機能についてはこちらの記事で簡単に紹介しているので、よくわからないという人は先に確認してみてください。
・ゲーミングモニタの選び方[2] モーションブラーリダクションについて

「MSI Oculux NXG253R」に搭載されたモーションブラーリダクション機能「NVIDIA Ultra Low Motion Blur (NVIDIA ULMB)」については標準ではグレーアウトしており選択できませんが、PC側設定でG-Syncをオフにして、DisplayPort接続においてリフレッシュレートが144Hz、240Hzの時に選択可能となります。

また「MSI Oculux NXG253R」のNVIDIA ULMBでは明転/暗転の割合を変更できる設定として、ULMB有効時に「ULMB Pulse Width」が表示されます。
ULMB Pulse Widthは10~100の範囲内で1刻みで設定でき、100に近いほど明転時間が長く、10に近いほど明転時間が短くなります。明転時間は長いほど画面輝度が上がりますが、逆に明転時間が短いほど輝度が低くなる代わりに、よりクッキリした画面表示が得られます。

まずはモーションブラーリダクション機能「NVIDIA ULMB」が具体的にどのような動作をしているのか確認していきます。「MSI Oculux NXG253R」で240HzリフレッシュレートのNVIDIA ULMBが動作している時の様子を5760FPSスーパースローモーションムービーで撮影してみました。5760FPS(96倍速)で240Hz(4倍速)のモニタを撮影しているので、モニタの1フレームが更新されるまでを撮影した動画は24フレームに分割されます。
「MSI Oculux NXG253R」ではULMB Pulse Widthから明転/暗転の割合を変更できるので、10/40/70/100の4段階について測定した結果を並べてみました。
いずれも前述の通り24フレーム周期で1リフレッシュとなっていますが、明転時間は、Pulse Width:10では2フレーム、Pulse Width:40では3~4フレーム、Pulse Width:70では5フレーム、Pulse Width:100では7フレームとなっています。

明転時間が最長のPulse Width:100でも明暗比率はおおよそ1:2なのでゲーミングモニタのMBR機能としては標準的な比率となっており、Pulse Widthを下げる方向は輝度を犠牲にしてよりクッキリした表示を得るためのオプショナルな設定のようです。
また黒フレーム挿入によるMotion Blur Reduction機能では、残像感を低減させる効果が期待できる反面、バックライトを消灯するので時間平均の輝度が下がって画面が暗くなるというデメリットが指摘されます。
「MSI Oculux NXG253R」はNVIDIA ULMBを使用しても、輝度:100%かつULMB Pulse Width:100に設定すれば200cd/m^2程度の明るさを確保できるので通常の室内利用では問題ないはずですが、室内照明がかなり明るい環境等では注意が必要です。(下グラフでMSI Oculux NXG253RとPG259QNの横軸はPulse Width)

「MSI Oculux NXG253R」に搭載された「NVIDIA ULMB」などモーションブラーリダクション機能は、人の目の錯覚が引き起こす残像やボヤケを解消する機能なので、写真や動画を見せて残像が抑制されている様子を実際に見せるというような解説は厳密には不可能です。
そのためレビューでは管理人が試用してみたインプレッションを伝えることくらいしかできないのですが、「NVIDIA ULMB」を有効にすると動いている物体の輪郭がクッキリとして確かに視認しやすくなりました。下の写真は管理人が「UFO Test: Strobe Crosstalk」を見た時の感覚を表現したイメージ図ですが、「NVIDIA ULMB」を有効にすると輪郭のボヤケがなくなってネイティブスピードでも倍速ハイスピード動画のスローモーションで輪郭を追っている時に近い感覚で追従して見ることができました。

MSI Oculux NXG253RのHDR表示やHDCP対応について
最後に「MSI Oculux NXG253R」のHDR表示やCSゲーム機の対応(4Kエミュレートなど)についてチェックしていきます。HDR表示やCSゲーム機対応について | |
HDMI ver, ポート数 |
HDMI2.0×2 |
HDR表示 | 対応 |
VRR同期 | 併用可能 |
カラーフォーマット | DP: FHD/360Hz/10bit RGB HDMI: FHD/240Hz/12bit RGB |
ピーク輝度(実測) | 440cd/m^2 |
輝度認証 | - |
ローカルディミング | 非対応(全体のバックライト制御に対応) |
4Kエミュレート | 非対応、最大でFHDまで |
PlayStation 5 | FHD/120FPS対応 |
Xbox Series X/S | FHD/120FPS対応 |
HDR表示への対応やカラーフォーマットについて
「MSI Oculux NXG253R」はゲーミングシーンで一般的なHDR10規格のHDR表示に対応しています。HDR表示で重要な輝度は標準輝度400nits(cd/m^2)、なおVESA DisplayHDRなど輝度認証は取得していません。「MSI Oculux NXG253R」は標準でHDR信号を受け付ける状態になっており、HDR表示を行う上で特にOSD上から設定を行う必要はありません。HDR入力を検出するとOSDメニュー上のHDRの項目がオンになります。
HDR映像ソースを受け付けるとHDR表示モードに自動で切り替わり、ディスプレイ輝度など一部のOSD設定はグレーアウトして設定できなくなります。

「MSI Oculux NXG253R」にはOSD設定として「可変バックライト(Variable Backlight)」がありますが、HDR表示モードになると同機能が自動的に有効になります。

「可変バックライト(Variable Backlight)」の動作のうち、モード0はHDR対応PCゲーミングに最適なモードで、モード2は写真編集などデスクトップ作業に最適なモード、モード1はその中間とのこと。


「MSI Oculux NXG253R」はDisplayPort1.4に対応しているので、最新グラフィックボードを搭載したゲーミングPCと接続した場合、フルHD/360Hz/HDR表示において、RGB 8bitのカラーフォーマットに対応します。G-Syncなど可変リフレッシュレート同期機能も併用が可能です。

リフレッシュレートを300Hzに下げるとRGB 10bit、240Hzに下げるとRGB 12bitに対応します。


HDMI接続時は240HzではRGB 8bit、120Hzに下げるとRGB 12bitに対応します。


HDRについて簡単に説明すると、HDR(ハイダイナミックレンジ)というのは、RGBの光の三原色の映像情報に加えて、輝度(明るさ)の情報が備わった映像ソースのことです。
従来の表示機器や映像ソースでは10^3程度のダイナミックレンジしかありませんでしたが、HDRに対応することでダイナミックレンジが10^5程度と100倍近く拡張され、従来よりも細かい階調で明るさや暗さを表現できるようになり、「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるように画面の明るさを操作することで、白飛びや黒潰れをなくして高画質を実現しています。

HDRに関する説明は色々とあると思いますが、管理人は『明るい場所はより明るく、暗い場所はより暗く』と大雑把に理解しています。
「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」するということは必ずしも”見えやすく”なるわけではありません。というか暗い場所は暗くなるので必然、暗い部分は見えにくくなります。逆に明るい場所が明るくなったら見えやすくなるかというと、再現可能な輝度の領域が増すので、ディスプレイによる描画は現実に近づきますが、太陽を覗き込んだ時のように特に明るい場所の周辺は光で潰れて(目の調光機能的な問題で)見えにくくなります。もちろん明暗が分かれることで境界線がクッキリして見えやすくなる場合もあります。
一部のゲーミングモニタに暗所を明るく(白く)して見えやすくする機能があるように、HDR表示は見やすさには直結しないので、見やすさという意味で画質が良くなるのかというと、その点はケースバイケースです。SDRダイナミックレンジの範囲内で平滑化されていた時に比べて、暗い部分が強調されることを考えると見えにくさの方が体感しやすい気がします。
HDRは原理的にはモニタから見える映像を”リアル”に近づける機能です。ただし実際のところはモニタ個別の色調設定などの都合で鮮やかになり過ぎたり色味が変わったりするので、「実際の視覚と同じ」という意味でリアルかというと疑問符が付くのですが。「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるので立体感は増して、平面表示の中に奥行を感じやすくなるという点ではリアルな表示に近づきます。個人的にはHDR表示の効果はSDRに比べて、鮮やかになって、立体感が増すと感じています。
4Kモニタの広告をフルHDモニタで見る以上に、SDRモニタでHDRについて体感的に理解することは困難です。なのでHDRについては店頭など実機で体験して気に入れば購入するくらいが正直なところおすすめです。HDRについては正直に言って”百聞は一見に如かず”な機能です。SDRモニタ上で調べるよりもHDR表示の実機を見て気に入るかどうかが全てな機能だと思います。
HDR表示におけるディスプレイ輝度やローカルディミングについて
「MSI Oculux NXG253R」はVESA DisplayHDR等の輝度認証は取得していません。VESAがMicrosoft Store上で無料アプリとして公開しているVESA DisplayHDR Compliance Testsから、「MSI Oculux NXG253R」のディスプレイ輝度の扱いが確認できました。(データの読み方については管理人も怪しいので参考までに)


近年のモニタにおいてHDRモードのディスプレイ輝度は高輝度領域の広さや高輝度表示の継続時間に依存するので、i1 Display Pro Plusを使用してHDR時の最大輝度を条件別で測定してみました。なお持続最大輝度は十数秒後で測定しているのでもう少し下がる可能性もあります。
「MSI Oculux NXG253R」の最大輝度は高輝度領域や表示時間には依存せず、可変バックライト有効時は最大440cd/m^2、無効すると400cd/m^2になりました。輝度認証こそ取得していませんが、VESA DisplayHDR 400相当の明るさです。

「MSI Oculux NXG253R」はHDRモードにおいてバックライト部分制御が可能なローカルディミング機能には非対応ですが、全体のバックライト輝度の可変制御には対応しており、HDR Variable BLの名前でOSD設定が用意されています。制御速度はMode1が標準設定です。

「可変バックライト(Variable Backlight)」の動作のうち、モード0はHDR対応PCゲーミングに最適なモードで、モード2は写真編集などデスクトップ作業に最適なモード、モード1はその中間とのこと。


可変バックライトの簡単な動作確認の方法としては、全画面黒表示で、白色輝点のマウスカーソルを画面上でインアウトさせるとバックライトの強弱が変化する様子が分かります。(機能的に同じだったのでASUS ROG Swift 360Hz PG259QNの動画を引用しています)
下の動画では分かりやすくバックライトを強弱させていますが、今回の検証でいくつかゲームも動かしてみたところ、可変バックライトのせいでチラつき(輝度の変化、明滅)を感じるような弊害は特にありませんでした。PCゲーミングシーンにおいては実用上、特に問題のない機能だと思いますが、チラつき(輝度の変化、明滅)を感じるようなら機能をOFFにしてみてください。
CSゲーム機接続時の4KエミュレートやHDCP対応について
「MSI Oculux NXG253R」のHDMIサブ入力はHDMI2.0ですが、4Kなど高解像度のエミュレートには対応しておらず最大解像度はフルHDとなります。PlayStation 5やXbox Series X/Sを組み合わせた場合、フルHD/120Hzの表示が可能です。またゲーム機が対応していればVRR同期機能も利用できます。





MSI Oculux NXG253Rのレビューまとめ
最後に「MSI Oculux NXG253R」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 画面サイズ24.5インチでフルHD解像度ゲーミングモニタとしてはちょうどいいサイズ
- 発色や視野角に優れたIPS液晶パネルで、99% sRGBの広色域
- 液晶パネルは反射防止のアンチグレア
- IPS液晶としてはトップクラスに高速な応答速度
- 世界最速の360Hzリフレッシュレートに対応
- 240Hzよりも表示遅延は4msも低減
- ビデオ入力はDisplayPort1.4とHDMI2.0×2の計3系統
- 可変リフレッシュレート同期機能NVIDIA G-Sync(モジュール版)に対応
(NVIDIA製GPU環境においてDisplayPortは1FPS~360FPSの範囲内で対応) - HDMIでもG-Syncに対応し、AMD製GPUは全入力でFreeSyncに対応
- システム遅延測定機能NVIDIA Reflex Latency Analyzerに対応
- PCゲーミングで一般的なHDR10規格のHDR表示に対応
- モニタ背面にLEDイルミを搭載、USB接続でPCとの同期制御も可能
- モニタ本体重量3.7kgかつVESAマウント対応でモニターアームを使用可能
- 画面端の輝度低下が大きく、周辺部分の輝度の均一性は微妙
- AMD製GPUのVRR同期上限は240Hz(AMD製GPUのドライバの問題かも)
「MSI Oculux NXG253R」はネイティブで360Hzの世界最速となる超高速リフレッシュレートに対応するゲーミングモニタです。応答速度が遅いと言われていたIPS液晶パネル採用製品ながら、競技ゲーマーに愛用されるTN液晶パネルの240Hzゲーミングモニタと比較して遜色ないどころか、ゲーミングシーンで重要なグレーバックに関しては上回る性能を発揮しました。
「MSI Oculux NXG253R」は最大360Hzの最速リフレッシュレートに加え、視野角・発色にも優れて高画質さまで兼ね備えているので近年流行りのバトルロイヤル系ゲームを高FPSでガチプレイ、ミリ秒差の勝利を掴むための相棒として文句なしにオススメのゲーミングモニタです。
「MSI Oculux NXG253R」は内蔵の専用モジュールによって動作する可変リフレッシュレート同期機能NVIDIA G-Syncに対応しているところももう一つの大きな魅力です。
1FPS~360FPSまでフレームレートに制限されず同期してくれるのに加え、逐次変動するリフレッシュレートに合わせてオーバードライブの補正強度も調整されるので、テアリング・スタッター・スミアといったディスプレイ表示における問題を一切クリアにしてくれます。
また「MSI Oculux NXG253R」に内蔵されているのは第2.5世代ともいうべきG-Syncモジュールになっており、ビデオ入力はメインのDisplayPort1.4に加えてHDMI2.0×2の計3入力、HDR表示にも対応し、NVIDIA/AMD製GPUやDisplayPort/HDMIの組み合わせを問わずにVRR同期機能を使用できます。
「MSI Oculux NXG253R」は360Hzリフレッシュレートが最大の特長となっており、あえて240Hzに下げて使用するULMBに意味はあるのか?と思われるかもしれませんが、実のところ応答速度のスパースローモーションで見たように素の残像感という意味では240Hzが最も綺麗に見えていました。
黒挿入によってベストケースだけを網膜へ送るモーションブラーリダクション機能を組み合わせれば、視覚的な明瞭さで言えば360Hzを上回ります。ULMBのクッキリ表示を取るか、240Hzよりもさらに5ms高速な360Hzの低遅延表示を取るか、勝利最優先なガチゲーマーには地味に悩ましい選択かもしれません。
以上、「MSI Oculux NXG253R」のレビューでした。

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360Hzの超高速リフレッシュレートに対応する史上最速のゲーミングモニタ「MSI Oculux NXG253R」をレビュー。遅延測定機能Reflex Latency Analyzerにも対応のフルスペック版を徹底検証https://t.co/EjdlIiE1wj pic.twitter.com/jPlnrq8F43
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) August 16, 2021
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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