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OBS Studioを使ってHDR対応ビデオキャプチャで取り込んだPlayStation 5やXbox Series X|SのHDR映像をHDR動画として正しく録画する方法を説明します。
HDR対応ビデオキャプチャを使用しているとか、PS5やXboxからはHDR映像が出力されているとか、大前提は満たしているものとして、HDR映像ソースをHDR動画として保存するには『1.映像キャプチャデバイスのHDR出力設定』、『2.OBSキャンバスのHDR出力設定』、『3.エンコーダのHDR出力設定』の3つの手順を”全て”正しく行う必要があります。
この記事ではその3つの手順について順番に説明していきます。
少し前置きしておくと、
録画したHDR動画については編集するとなるとAdobe Premiere ProやDaVinci Resolveが必要になってかなりハードルが上がりますが、再生だけならWindows標準アプリやフリーソフトで比較的簡単にできます。
また今回はOBS ver29.1.3とAVerMedia Live Gamer ULTRA 2.1の組み合わせで下記の説明通りに設定をしてHDR動画を録画しましたが、そのままYouTubeに投げてもHDR動画として認識されました。(HDR再生に対応した環境でないとHDRの画質設定は表示されません)
YouTubeではフルHD、WQHD、4Kと解像度順に最適化していき、最後にHDR動画として認識します。
アップロードした動画がHDR動画として認識されているかどうかはHDR対応環境で視聴画面の画質設定にHDRがあるかを見る以外に判別方法がありません。(Studioでも表示して欲しい)
また4Kなど最大解像度で視聴可能になってから、HDR動画として認識されるまで2分程度の動画でも半日くらいかかったので、しばらく待ってみてください。
1.映像キャプチャデバイスのHDR出力設定
OBS Studioを使用したHDR動画の録画についてわざわざ記事を作成した理由でもあります。現状、”OBS HDR”等で検索して出てくる録画方法の大半でこの設定が抜けています。この設定が正常にできていないと、HDR映像をSDRにトーンマップし直して(非可逆圧縮)、そのSDR映像をOBSキャンバスのHDRフォーマットに合わせて再びHDR化するという無駄というか、HDRフォーマットなだけで実質HDRではない映像を作ることになるので注意してください。
ともあれ、映像キャプチャデバイスのHDR出力設定について説明していきます。
今回は映像キャプチャデバイスとしてAVerMedia Live Gamer ULTRA 2.1を使用していますが、その他のHDR対応ビデオキャプチャ機器を使用する場合や、OBSでゲームキャプチャなどその他のソースを使用する場合も同じような設定が必要になります。
ビデオキャプチャ、OBSで言うところの映像キャプチャデバイスはゲーム機等の外部映像出力機器から出力される映像データを特定仕様の映像に変換してPCへ出力する機器です。
『NV12(SDR), 4K, 60FPS』や『P010(HDR), 4K, 30FPS』といったビデオキャプチャが変換する映像仕様はOBS等のソフトウェアから制御する必要があります。
まず使用している映像ソースをダブルクリックするかプロパティを選択して映像ソースの出力設定画面を表示します。
映像ソースの出力設定画面(プロパティ)を開くと、解像度やフレームレート(FPS)の下に、映像フォーマットや色空間、色範囲の設定項目があります。
解像度やFPSを自動設定にしている場合、通常、OBSは”設定できる最大値”を自動的に適用します。しかしAVerMedia Live Gamer ULTRA 2.1を例にすると、SDR映像は4K/60FPSで録画できるが、HDR映像は4K/30FPSまでのようにフレームレートに制限がかかる機器が大半です。
自動設定や最大フレームレートなど各ビデオキャプチャ機器で非対応な解像度・フレームレートが設定されていると、映像フォーマットにはSDRで定番のNV12等だけが表示され、HDR対応のP010が表示されません。
ビデオキャプチャにHDR映像を出力させるためには、各機器がHDR録画に対応する解像度・フレームレートを手動で設定する必要があります。
AVerMedia Live Gamer ULTRA 2.1の場合は4K解像度において30FPSがHDR録画の上限なので、4K/30FPSに指定することで、映像フォーマットの選択肢としてHDRに対応したP010が現れます。
以上のような設定仕様に注意しつつ、映像フォーマットを”P010”、色空間を”Rec. 2100(PQ)”、色範囲を”フル”に設定します。
以上の設定を全て行うことで映像キャプチャデバイスから出力されたHDR映像をHDRフォーマットのままOBSキャンバスに引き渡せるようになります。
繰り返しますが、以上の設定を行わずにOBSキャンバスとエンコーダだけHDR出力設定を行うと、SDRにトーンマップされた映像をHDRフォーマットに格納し直しただけの偽HDR映像を録画することになるので注意してください。
SDRトーンマップでもそれっぽい映像にはなりますが、正常に録画したHDRと比較すると見え方は大分変わります。(写真にすると正確ではなくなるのですが参考までに)
OBSの「HDRトーンマッピング(上書き)」について
OBSのフィルタ設定の1つ、「HDRトーンマッピング(上書き)」はHDR映像をHDR動画として録画するだけなら設定する必要はありません。上で説明したデバイス出力と後述のOBSキャンバスが両方ともHDRフォーマットになっていればOBSはSDRにトーンマップせずHDRのまま映像を扱ってくれます。
一方、デバイス出力がHDRでもOBSキャンバスがSDRフォーマットなら自動的にSDRへトーンマップしてくれます。
「HDRトーンマッピング(上書き); HDR Tone Mapping (Override)」は、
【SDR: Reinhard】 → HDRのOBSキャンバス内でHDR映像ソースをSDRにトーンマップする
【HDR: maxRGB】 → HDR映像の最大輝度を調整する
のどちらかの用途で使用します。
2.OBSキャンバスのHDR出力設定
続いてOBSキャンバス(OBS Studioのキャンバス)のHDR出力設定です。ゲーム映像と自撮りカメラのように複数映像を合成して配信している人ならすぐにわかると思いますが、要は複数映像ソースを乗せる土台がOBSキャンバスです。その映像フォーマットをHDR対応形式になるよう設定します。
OBSキャンバスの映像フォーマットは、”設定 - 詳細設定”の順番にアクセスすると”映像”という項目で表示されます。
OBSキャンバスも映像キャプチャデバイス同様に、カラーフォーマット(映像フォーマット)を”P010 (10-bit, 4:2:0, 2planes)”、色空間を”Rec. 2100(PQ)”、色範囲を”フル”に設定してください。
SDRホワイトレベルやHDR公称ピークレベルは初期設定の300nits、1000nitsのままで問題ありません。
ちなみにPS5やXbox Series X|SのHDR調整機能において全白輝度を調整する画面をプレビュー表示した時に、OBSキャンバス設定のSDRホワイトレベルを100~200nitsで調整してプレビュー表示の明るさが変化する場合、前章で説明したデバイスのHDR出力設定が正常にできていないことが分かります。
あとSDRで録画する時と共通ですが、OBSキャンバス自体の解像度やフレームレートの設定もお忘れなく。ちなみにOBSキャンバスのフレームレートは共通値だと60FPSまでですが、整数値で120FPS、分数値を使うと240FPSなどハイフレームレートも設定できます。
3.エンコーダのHDR出力設定
最後にOBSキャンバスを動画ファイルとして出力するエンコーダのHDR出力設定です。エンコーダの設定はOBSキャンバスの映像フォーマットと同様にまずはOBSの設定ウィンドウを開き、出力タブを選択します。
出力関連の設定が表示されるので、一番上の出力モードを”詳細”にして、録画タブを選択します。
映像エンコーダをNVIDIA製GPUを搭載している環境であれば、”NVIDIA NVENC HEVC”を選択してください。あとGeForce RTX 40シリーズならAV1でもOKです。AMD製GPUやIntel製GPUの環境でもHEVCもしくはAV1を選択してください。
YouTubeにアップする場合、録画フォーマットは”.mp4”と”.mkv”のどちらでも大丈夫なので、普段SDRの録画に使用しているフォーマットを選んでください。
続いて下にスクロールしていき、エンコーダの詳細設定を行います。HDRで録画する時に必ず変更する必要があるのはプロファイルの”main10”です。
その他はお好みで変更してください。CBRではビットレートを上げるほうが画質が上がり(負荷も下がるのでコマ落ちしにくくもなる)、プリセットは画質とコマ落ちのし難さのトレードオフです。コマ落ちなく、気に入る画質になるようにバランス良く調整してみてください。ググれば設定例は色々出てくるので割愛。
補足:OBSでHDR録画が可能なビデオキャプチャ
最後にOBSと組み合わせてHDR動画の録画に対応しているビデオキャプチャについて簡単に紹介しておきます。OBSでHDR映像を録画できるビデオキャプチャについてはOSB公式のFAQでも掲載されています。
OBSが互換性認証を付与している”OBS Certified device”の中では次の製品がHDR録画に対応しており、「ASUS TUF GAMING CAPTURE BOX-CU4K30」は国内でも発売済みの製品です。
- ASUS TUF GAMING CAPTURE BOX-CU4K30
- EVGA XR1 Pro (国内未発売)
- AVerMedia Live Gamer 4K GC573
- AVerMedia Live Gamer ULTRA GC553
- Elgato 4K60 Pro Mk.2 (デバイス設定のFPSで最高FPSを選択しないとP010が表示されない)
- Elgato 4K60 S+ (HDR映像が素通しなのでHEVCで録画可能。PS5は4K帯域設定を-2でYUV420にする必要がある)
- Elgato HD60 S+
- Elgato HD60 X
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OBS Studioを使ってHDR対応ビデオキャプチャで取り込んだPlayStation 5やXbox Series X|SのHDR映像をHDR動画として正しく録画する方法を解説。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) November 8, 2023
AVerMedia Live Gamer ULTRA 2.1を使って実際にPS5の4K/HDR画面を録画し、YouTubeにアップ、HDRで視聴できています。https://t.co/8dsqTn2sSo
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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