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GeForce RTX 4080 SUPERグラフィックボードとしてPalitからリリースされた、4スロット占有3連ファンGPUクーラー搭載でファクトリーOCも施されたハイパフォーマンスゲーミングモデル「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC(型番:NED408ST19T2-1032A)」をレビューします。
RTX40シリーズのハイエンドモデルRTX 4080 SUPERが、前モデルRTX 4080をどの程度上回り、競合メーカーの同価格帯ハイエンドモデル RX 7900 XTXにどこまで迫るのか、実ゲームのベンチマークでグラフィック性能を徹底比較します。
製品公式ページ:https://www.palit.com/palit/vgapro.php?id=5007&lang=jp
Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC レビュー目次
1.Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCの外観
2.Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCの分解
3.Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCの検証機材・GPU概要
4.Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCのゲーム性能
5.Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCの温度・消費電力・ファンノイズ
6.Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCのレビューまとめ
【機材協力:Palit】
Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCの外観
早速、「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を開封していきます。外パッケージの中には黒色段ボールの内パッケージが入っており、スポンジ蓋を外すと、スポンジスペーサー&静電防止ビニール袋という一般的な梱包でグラフィックボード本体が鎮座していました。
グラフィックボード本体の下にある小分けパッケージには付属品が封入されています。付属品は、PCIE5.0電源変換ケーブル(12VHPWR to PCIE 8PIN×2)、ARGB LEDケーブルです。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」のグラフィックボード本体を見ていきます。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」の外装の大部分は黒色プラスチック製ですが、中央のデジタル迷彩なアクリルプレートの光沢感や、左右端のサンドブラスト処理金属プレートの重厚感とのコントラストで安っぽさは感じません。
GPUクーラー正面のデジタル迷彩パターンが描かれたアクリルプレート部分や、側面のGPロゴが描かれたアクリルプレートにはアドレッサブルLEDイルミネーションが内蔵されており、七色に点灯します。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」のLEDイルミネーションは専用アプリケーションThunderMasterから変更が可能です。
レインボー、カラーサイクル、スタティックといった一般的な発光パターンは、ウィンドウ右下にある”デフォルトに設定”のボタンを選択することで、グラフィックボード側に設定が保存されるので、ソフトウェアをスタートアップ・常駐させる必要はありません。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」に搭載されたARGB LEDイルミネーションは、専用アプリケーションThunderMasterを使用すればライティング制御が可能です。
グラフィックボード基板上のLEDヘッダーを付属ケーブルを使用してマザーボードなどARGB対応VD-G型汎用3PIN LEDコントローラーに接続することでマザーボードなど外部からの制御にも対応します。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」は全長329mmとなっています。近年主流なオープンスペースタイプのPCケースなら干渉の心配はありませんが、PCケースフロントにストレージベイがある少し古めのPCケースではグラフィックボード設置スペースのクリアランスに注意が必要です。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」はGPUクーラーはPCIEブラケットから25mmほどはみ出しているのでPCケースとの干渉は十分に注意してください。PCケースとの干渉ではグラフィックボードの背の高さは長さに比べて見落としやすいポイントです。
なおグラフィックボード基板自体はPCIEブラケットとほぼ同じ高さなので、PCIE補助電源コネクタや電源ケーブルの干渉については心配ありません。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」の3連ファンGPUクーラーには95mm径の冷却ファンが3基設置されています。ファンには高寿命を実現するダブルボールベアリングが採用されています。
GALE HUNTER FANと呼ばれる冷却ファンは、一般的なGPUクーラーのファンよりも厚みが大きく高静圧で、ファンブレードテールにウィングレットを備えており、エアフローが凝縮されるために渦巻効果が解消されます。
3基のファンは「左右」と「中央」の2つに分けて、専用アプリケーションのThunderMasterで個別に速度制御が可能です。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」は、RTX 4080 SUPERの定格でTGP320Wという大きい発熱に対応するため、大型放熱フィンを採用したヒートシンクが搭載されており、PCIEスロットを4スロット占有します。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」で使用するPCIブラケットの数は2スロット分ですがGPUクーラーの厚みは63.4mmとなっており、ギリギリで4スロット目にグラフィックボードが侵入してしまいます。設置したPCIEスロットから3つ下にあるPCIEスロットも使用できない可能性があるので注意してください。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」は補助電源コネクタとして、16PIN(12+4PIN)でPCIE5.0補助電源と呼ばれることの多い、最新電源コネクタ 12VHPWRを1基搭載しています。RTX 4070 SUPERとしては一般的なPCIE補助電源の構成です。
グラフィックボード側12VHPWRコネクタは、挿入不足(による電源コネクタ溶解)を防止するためSENSEピンが短くなったマイナーアップデート”12V-6x2”が採用されていました。
12VHPWRに対応した電源ユニットと組み合わせた場合、電源ケーブル1本だけでスマートに配線が可能です。
12VHPWRに対応する電源ケーブルが付属する自作PC向け電源ユニットは2024年1月現在では数は増えているものの、数年前のグラフィックボードを搭載した既存環境からのアップグレードとなると当時の電源はネイティブ対応できないケースが大半になるはずです。
ただ、「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」には現在主流なPCIE 8PIN補助電源に変換するケーブルが標準で付属しています。
この変換ケーブルを使用することで、従来のPCIE 8PINを2基以上使用できる電源ユニットやPCシステムであれば「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を組み込むことが可能です。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」のビデオ出力はリファレンス仕様と同じくHDMI2.1×1、DisplayPort1.4×3の4基が実装されています。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」にはオリジナルイラストのプリントされた金属製バックプレートが装着されています。
基板の反りや破損を防止する保護プレートとしての役割を果たしますが、金属製ではあるものの基板との間にサーマルパッドがないので冷却補助にはなっていません。
1kg超へと大型化(大重量化)していくGPUクーラーでも、GPUコアとクーラーベースコアが適切な圧力で密接するように、板バネ構造のリテンションバックプレートも「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」には採用されています。
バックプレート右端にはファン1.5基分のエアスリットが設けられており、ファンからヒートシンクを通って背面に直接風が抜けるフロースルー構造も採用されています。
GPUクーラー側面も外装で覆わず、ヒートシンク放熱フィンが剥き出しになっています。バックプレート方向だけでなく左右にも風が突き抜け、グラフィックボード周辺に熱溜まりが生じるのを抑制する構造です。
なおグラフィックボードの重量はPalit GeForce RTX 4080 GameRock OCが1957g、NVIDIA GeForce RTX 4080 Founders Editionが2134gに対して、Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCは1607gでした。
バックプレート等で基板の反りは防止されていますが、重量は1kgを軽く超過しているのでPCIEスロットへの負荷を考えるとVGAサポートステイなどで垂れ下がりを防止したほうがいいかもしれません。
Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCの分解
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を分解してGPUクーラーやグラフィックボード基板についてチェックしていきます。なお今回は自己責任で(もしくはレビュー用サンプル貸出先の協力のもと特別に許可を頂いて)分解を行っています。GPUクーラーの取り外し(分解行為)は、一部を除く多くのメーカーではグラフィックボードの正規保証の対象外になる行為です。
今回はレビューのために分解していますが、繰り返しますが保証対象外になるので基本的には非推奨の行為なのでご注意下さい。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」のバックプレート上、10個のネジを外すと、バックプレートを取り外すことができます。
バックプレートは金属製ですが、基板との間にはサーマルパッドはなく放熱板としての役割はありません。単純にGPUクーラーの保持や基板の反り防止の役割です。
GPUクーラー本体を固定しているのはGPUコア周辺、リテンションプレートが併用されている4ヶ所のネジとPCIEブラケット側の4つのネジです。PCIEブラケットはビデオ入力付近の3つのネジでも固定されています。
以上のようにネジを外していくと、GPUクーラーは簡単に取り外せました。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」にはPalit独自設計のオリジナル基板が採用されています。
RTX 4080 SUPERのGPUコアにはAD103-400-A1が使用されていました。
GDDR6Xメモリは今のところ1社しか量産していないのでMicron製。今回入手した「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」にはMicron製の16GbのGDDR6Xメモリチップが表面に8枚搭載されています。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」のVRM電源回路はGPUコア&VRAMの右側にGPUコア向け12フェーズ、左側にVRAMメモリ向け2フェーズで計14フェーズが実装されています。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」のGPUクーラー本体をチェックすると、GPUコアと接する部分は銅製ペースプレートが採用され、ベースコアからは8本の銅製ヒートパイプが伸び、アルミニウム製放熱フィンが4スロットスペース内いっぱいに展開されています。
GPUコアと接する部分には冷却性能の高さで定評のある銅製ベースプレートが採用されています。GPUダイと接する銅製ベースプレートにはニッケルメッキが施されており、完全な鏡面ではありませんが、近い物が映り込む程度には平滑化されています。
GPUコア周辺のVRAMチップは共通の銅製ベースプレートと、VRM電源回路はヒートシンクにろう付けされた金属製プレートとサーマルパッドを介してヒートシンク本体で直接冷却するという理想的な構造です。
GPUコアと接するベースコアから伸びた8本の極太ヒートパイプによって4スロットを占有する大型放熱フィン全体へ熱を拡散します。
ベースプレートから伸びる8本の銅製ヒートパイプによって4スロットを占有する大型GPUクーラー内部いっぱいに展開された極厚なアルミ製放熱フィンの迫力も圧巻です。
放熱フィンの冷却ファンと対面する方向には”Y FORMULA FINS”とよばれるY字成型されたフィンアレイ構造が採用されています。ファンブレードの回転方向に垂直なフィン角度により、フィンアレイのチャネルへ滑らかにエアーが流れ込みます。
Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCの検証機材・GPU概要
外観やハードのチェックはこのあたりにして早速、「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を検証用の機材に組み込みました。テストベンチ機の構成は次のようになっています。テストベンチ機の構成 (ゲーム性能検証) |
|
OS | Windows11 Home 64bit |
CPU | Intel Core i9 14900K (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z5 RGB F5-7200J3445G16GX2-TZ5RK DDR5 16GB*2=32GB (レビュー) 7200MHz, 34-45-45-115 |
マザーボード |
ASUS ROG MAXIMUS Z790 HERO (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 990 PRO 1TB (レビュー) |
ゲームストレージ |
Samsung SSD 870 QVO 8TB (レビュー) |
電源ユニット | Corsair HX1500i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
ベンチ機のCPUには2024年現在ゲーミングシーンで最速CPUである「Intel Core i9 14900K」を使用しています。
近年では4K解像度・高画質設定の60~120FPSでもCPUボトルネックが生じるリッチグラフィックなゲームが増えています。
検証機材に使用しているCore i9 14900Kを始めとして、Intel第13/14世代CoreのK付き倍率アンロックモデルはそういったCPUバウンドな高画質ゲームでも旧世代CPUと比較して高い性能を発揮できるので、グラフィックボードを最新世代に買い替えるならGPUランクに合わせてCPUもアップグレードするのがオススメです。
・ゲームに最適なIntel製CPUはどれか、Core i9 14900Kと徹底比較
ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 990 PRO 1TB」を使用しています。
Samsung SSD 990 PROは、PCIE4.0対応SSDで最速クラスの性能を発揮し、なおかつ電力効率は前モデル980 PRO比で最大50%も向上しており、7GB/s超の高速アクセスでも低発熱なところも魅力な高性能SSDです。これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
・「Samsung SSD 990 PRO 1TB」をレビュー。性能も電力効率もトップクラス!
ベンチ機のシステムメモリには、Intel第13/14世代CPU向けメモリとしては4xメモリスロットのマザーボードでも動作可能な最速クラスの製品、メモリ周波数7200MHz/CL34の高メモリクロックかつ低レイテンシなメモリOCに対応した「G.Skill Trident Z5 RGB(型番:F5-7200J3445G16GX2-TZ5RK)」を使用しています。
G.Skill Trident Z5シリーズはIntel XMP3.0のOCプロファイルに対応した製品となっており、6000MHzの定番設定なモデルもあり、Intel第13/14世代CPUで高性能なPCを構築するお供としてオススメのOCメモリです。
ARGB LEDイルミネーションを搭載したバリエーションモデル G.Skill Trident Z5 Neo RGBもラインナップされています。
・「G.Skill Trident Z5 RGB」をレビュー。XMPで7200MHz OCに対応!
Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCのGPU概要
Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCに搭載されているGPU「GeForce RTX 4080 SUPER」のスペックについて簡単に確認しておきます。「GeForce RTX 4080 SUPER」はAD103-400コアが使用されておりCUDAコア数は10240、GPUコアクロックはベース2295MHz、ブースト2550MHzです。VRAMには従来よりも高速な23.0GbpsのGDDR6Xメモリを16GB容量搭載しています。メモリーバス幅は256bitなのでメモリ帯域は736GB/sです。
典型的なグラフィックボード消費電力を示すTGPは320Wに設定されており、PCIE補助電源として最新規格のPCIE5.0補助電源(12VHPWR)を要求します。なお基本的に変換ドングルが付属するので、既存のPCIE補助電源8PIN×2~3にも対応します。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」については、リファレンス仕様値2550MHzに対してブーストクロック2610MHzへファクトリーOCが施されています。パワーリミット(TGP)はリファレンス仕様と同じ320Wですが、手動設定によって+3%で最大330Wまで解除が可能です。
GPUコアの増強、コアクロックの高速化といった3Dグラフィックス関連の強化に加えて、「GeForce RTX 4080 SUPER」などGeForce RTX 40シリーズの新たな特長としてハードウェアエンコーダに最新の第8世代NVEncが実装されています。
第8世代NVEncはAV1コーデックのエンコードに対応したところが、RTX 30シリーズの第7世代NVEncとの大きな違いです。(AV1コンテンツのデコード/再生はRTX 30シリーズですでに対応済み)
映像編集ソフトではDavinci Resolve、ビデオキャプチャソフトではOBS Studioなどが最新バージョンにおいてGeForce RTX 40シリーズによるAV1エンコードに対応しています。
AV1は従来のH.264(x264)よりも40%程度も圧縮効率に優れており、OBS Studioの場合、従来のH.264(x264)形式によってフルHD解像度で作成したコンテンツも、同等のビットレート、同等の映像品質で、AV1形式ならWQHD解像度にできます。
また「GeForce RTX 4080 SUPER」などGeForce RTX 40シリーズの上位モデル(RTX 4070 Ti以上)は従来との大きな違いとしてハードウェアエンコーダNVEncが”2基”実装されているところも大きな注目ポイントです。
2基の最新NVEncが実装されているので、Davinci ResolveなどデュアルNVEncによる書き出しに対応した映像編集ソフトではRTX 30シリーズと比較して2倍以上高速になります。
レイトレーシング&DLSS SR/FGについて
レイトレーシング表現やDLSSについて簡単に紹介しておきます。レイトレーシング(Raytracing)とは3Dグラフィックスのレンダリング手法の1つであり、現在主流なラスタライズ方式とある種の対になる言葉です。
レイトレーシングだけで3Dグラフィックスを全て描画しきるのはGPU性能的に現実的ではないので、ベースは従来のラスタライズ方式で行い、鏡面反射などエフェクトにレイトレーシング方式を使う、というハイブリッドなレンダリング方式が現在のレイトレーシング対応PCゲームの主流です。
レイトレーシング表現では、照明や光源(エリアライト)や太陽光(グローバルイルミネーション)の影響を厳密に再現し、光の反射や透過も現実に即して忠実に描写されます。
レイトレーシングを採用したわかりやすい例としては鏡に映る反射など、視覚(視点から見た)の外にある物体もリアルに描画することができます。小さい光源や太陽光などが生み出す影、反射によって生まれる光が現実に対して忠実に再現されるので、画面の中に引き込まれるような奥行き、陰影を感じる映像が生まれます。
なお高画質機能 Raytracing(レイトレーシング)はMicrosoftが提供するAPI”DirectX 12”内包されるDirectX Raytracing(DXR)を使用したレンダリング機能となっており、後述のDLSSと違ってNVIDIA独自技術というわけではなく、AMD/Intel製グラフィックボード、PlayStation 5やXbox Series S/Xといったコンソールゲーム機にも互換性のある機能です。
下はPlayStation 5のMarvel's Spider-Man Remasteredでレイトレーシング表現のオン/オフを比較したものですが、オフでは鏡面になっている窓ガラスにスパイダーマンの身体の鏡像がないだけでなく、風景の反射も反対側と比較してデタラメなのが一目瞭然です。
「NVIDIA DLSS」は”Deep Learning Super Sampling”の頭文字を取った略称となっており、その名の通り、近年流行りのディープラーニングによって高画質化(超解像化)する機能で、AIレンダリングの名前でもアピールされています。
DLSSが具体的にどのように動作するか簡単に説明すると、フルHD~WQHDのリアルタイムレンダリングソースから4K映像を生み出すDLSSの原型があります。このDLSSの原型が作り出した4K映像を、16Kなど現実的にはリアルタイムでのレンダリングが難しい超々高解像度のレンダリング結果を比較し、DLSSの原型の改良版1をNVIDIAの専用サーバーが作ります。
DLSSの原型の改良版1で再び4K映像を生み出し、16Kレンダリング結果と比較して、DLSSの原型の改良版2を生み出す……、というプロセスを何万回も繰り返すことで、ユーザーに提供される汎用の、もしくは個別ゲームタイトルに特化した専用のDLSSプロファイルが出来上がります。
GeForce RTX 30シリーズの登場と共にアップデートされたDLSS2.0では最終出力解像度に対して3種類のオリジナルレンダー解像度が選択でき、4K解像度の場合は、Quality(2560×1440)、Balanced(2240×1260)、Performance(1920×1080)の3種類から選択できます。
オリジナルのレンダー解像度がフルHD~WQHDなので、DLSSによる超解像(SuperSampling)プロセスを挟むとはいえ、ネイティブに4K解像度をレンダリングするよりもフレームレートは大幅に向上します。
現在のDLSSでは16Kレンダリング結果を目標に学習が繰り返されているので、高画質アンチエイリアス技術として一般的なTAAと比較してフレームレートが大幅に向上するだけでなく、画質も改善するという一挙両得な高画質化機能になっています。
フルHDやWQHDのレンダリングソースを高品質な4K解像度に超解像化することから始まったDLSSですが、この超解像機能(DLSS SR:Super Resolution)に加えて、GeForce RTX 40シリーズが対応する最新バージョンの”DLSS 3”ではAI中間フレーム生成機能 Frame Generationが追加されたのが大きなトピックです。
中間フレーム生成というと、倍速補間などと呼ばれることの多いテレビの高画質化機能が有名ですが、テレビの倍速補間は完成した映像フレームを2つ以上(一部のハイエンドテレビだと7つなど)をソースに中間フレームを作成しています。
ソースとなる映像フレーム数が多いほど生成される中間フレームの映像的な破綻はなくなりますが、遅延が大きくなるのでゲーム用途では到底実用できません。逆にソースとなる映像フレーム数を減らすと遅延は減りますが、単純なスクロールのような画面変化しか綺麗に補間できず、映像的な破綻が増えてしまいます。
一方、DLSS 3のAI中間フレーム生成機能 Frame Generationは、3Dオブジェクトの動きを正しく追跡できるMotion Vector(3Dオブジェクトのピクセル単位での位置や向きの履歴)に、影のような光エフェクトを正しく追跡できるOptical Flowを組み合わせることで中間フレームを生成しています。
中間フレームの生成方法が全く異なるので、DLSS 3は2フレーム(現在と1つ前)による補間と同等かそれ以下という低遅延で倍速補間を実行でき、急にポップするオブジェクトや影などの光エフェクトが破綻しにくい、という特徴があります。
現在のビルドではUIやテキストにノイズが生じやすいといった欠点はあるものの、超解像のDLSS SRも徐々に改良されていったのでDLSS FGも対応ゲームが増えるにしたがって補間品質もアップデートされていくはずです。
あとDLSS FGの副次的な効果として、中間フレームはGPUが単独で生成するので、CPUボトルネックで伸び悩むシーンでもフレームレートが向上するという効果もアピールされています。有名どころではMicrosoft Flight Simulatorが該当します。
DLSS Frame GenerationはOptical Flow Acceleratorという専用ハードウェアを使用しているので、現在、この機能を使用できるのはGeForce RTX 40シリーズに限定されています。(Optical Flow Accelerator自体は全く同じものかは不明ですがRTX 30シリーズにも存在するので、今後、対応GPUに加わる可能性があるかも)
また上記の通り、DLSS 3による倍速補間はそれそのものが遅延を生じにくい設計ですが、”DLSS 3対応”ならNVIDIA製GPU環境の低遅延技術 Reflexも含むことになっており、よりゲーム操作にラグを感じない低遅延な表示が可能です。
Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCのゲーム性能
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」の性能を測るべく各種ベンチマークを実行しました。性能比較には「GeForce RTX 4080 T」、「GeForce RTX 4070 Ti」、「Radeon RX 7900 XTX」、「GeForce RTX 3090」、「GeForce RTX 3080」を使用しています。(特定のモデルや型番を指名していない場合、各GPUメーカーのリファレンスモデルもしくはリファレンス仕様のオリファンモデルです)
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を含めた各グラフィックボードについて、現在も採用ゲームの多いDirectX11のベンチマーク 3DMark FireStrikeによる比較になります。
FireStrike | Extreme | Ultra | |
RTX 4080 SUPER Palit GamingPro |
61297 | 34092 | 17486 |
RTX 4080 |
60756 | 33603 | 17077 |
RTX 4070 Ti |
54095 | 26965 | 13360 |
RX 7900 XTX |
65420 | 38650 | 19957 |
RTX 3090 |
47529 | 23676 | 12156 |
RTX 3080 |
42837 | 20927 | 10621 |
RTX 3070 |
33173 | 16169 | 8144 |
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を含めた各グラフィックボードについて、最新タイトルでは採用が増えつつあるDirectX12ベンチマーク 3DMark TimeSpy、およびレイトレーシング表現に対応したベンチマーク 3DMark Port Royalによる性能比較となります。
TimeSpy | Extreme | Port Royal |
|
RTX 4080 SUPER Palit GamingPro |
28387 | 14181 | 18170 |
RTX 4080 | 28189 | 14099 | 17932 |
RTX 4070 Ti |
22883 | 10962 | 14174 |
RX 7900 XTX | 29582 | 14348 | 15812 |
RTX 3090 |
19387 | 9828 | 13062 |
RTX 3080 |
17284 | 8581 | 11338 |
RTX 3070 |
13126 | 6461 | 8033 |
続いて近年の最新PCゲームを実際に用いたベンチマーク比較になります。同一のグラフィック設定で同一のシーンについてフルHD(1920×1080)とWQHD(2560×1440)と4K(3840×2160)の3種類の解像度で平均FPSを比較しました。
最新タイトルでは専用ハードウェアによるレイトレーシング表現や、NVIDIA DLSS/AMD FSR/Intel XeSSといったAIを活用した超解像・倍速補間に対応したものも増えていますが、それらの機能は無効化し、ここでは従来のラスタライズ方式の3Dグラフィックス性能を比較しています。
ベンチマーク測定を行ったゲームタイトルは以下の15タイトルです。
- ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON (アーマード・コア6)
- Assassin’s Creed Mirage (アサシン クリード ミラージュ)
- Baldur's Gate 3 (バルダーズ・ゲート3)
- Battlefield V
- CONTROL
- Cyberpunk 2077 (サイバーパンク2077)
- Far Cry 6
- FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE
- Forza Horizon 5
- God of War (ゴッド・オブ・ウォー)
- MONSTER HUNTER: WORLD (モンスターハンター:ワールド)
- Shadow of the Tomb Raider
- Tales of Arise (テイルズ オブ アライズ)
- UNCHARTED(アンチャーテッド): Legacy of Thieves Collection
- Watch Dogs Legion (ウォッチドッグス レギオン)
ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON (画質プリセット:最高、モーションブラー:オフ、被写界深度:高)に関する「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
なお、ARMORED CORE VIはゲームプレイ時の最大フレームレートは120FPSですが、独自にFPSアンロックしてベンチマーク測定を行っています。
Assassin's Creed Mirage(最高設定プリセット、モーションブラー:オフ、適応品質:オフ、TAA:クオリティ)に関する「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Baldur's Gate 3(ウルトラ設定プリセット)に関する「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12, レイトレーシング表現:オフ)に関する「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
なお、Battlefield Vはゲームプレイ時の最大フレームレートは200FPSですが、起動コマンドに”-GameTime.MaxVariableFps 0”を追加し、FPSアンロックしてベンチマーク測定を行っています。
CONTROL(高設定プリセット, DirectX12, レイトレーシング表現:オフ)に関する「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Cyberpunk 2077(ウルトラ設定プリセット, FSR:オフ, レイトレーシング表現:オフ)に関する「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Far Cry 6(最高設定プリセット, 高解像度テクスチャ:オフ, レイトレーシング表現:オフ)に関する「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE(テクスチャ解像度:高設定、シャドウ解像度:高設定、キャラクター表示数:10)に関する「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
なお、FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADEは、標準では最大フレームレートが120FPSですが、アンリアルエンジン4のiniファイルによるカスタム設定を有効にするMODのFFVIIHookを使用して『フレームレート制限なし』、『可変レンダリング解像度:オフ』、『モーションブラー:オフ』の設定を適用しています。垂直同期もGPUドライバから無効化しています。
Forza Horizon 5(エクストリーム設定プリセット, モーションブラー:オフ, レイトレーシング表現:オフ)に関する「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
God of War(ウルトラ設定プリセット, モーションブラー:オフ)に関する「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Shadow of the Tomb Raider(最高画質設定プリセット, DirectX12, TAA, レイトレーシング表現:オフ)に関する「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Tales of Arise(最高設定, モーションブラー:オフ)に関する「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
なお、Tales of Ariseは、標準ではPlayStation 5やXbox Series Xのコンソールゲーム機版よりもオブジェクトや影の遠景描画が省略されているので、アンリアルエンジン4のiniファイルによるカスタム設定を有効にするMODのArise-SDKを使用して高画質化する設定を適用しています。
UNCHARTED: Legacy of Thieves Collection(ウルトラ設定プリセット, モーションブラー:オフ)に関する「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Watch Dogs Legion(最大設定プリセット, DirectX12, レイトレーシング表現:オフ)に関する「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCなど6種類のGPUについて実ゲーム性能の比率の平均を出してみたところ、Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCは、前世代同クラスのRTX 3080を平均50%以上、前世代最上位のRTX 3090と比較しても平均35%以上も上回るという2024年最新ハイエンドGPUらしい卓越した性能を発揮しました。
実際に測定した上のベンチマーク結果であるフレームレートを見ての通り、従来のラスタライズ式3DグラフィックスなPCゲームなら、NVIDIA DLSS等の超解像機能を使用しなくても、余裕で4K/120FPSにも手が届く4KゲーミングモンスターなGPUです。
GeForce RTX 4080 SUPERはCUDAコア数が増量された上位モデル(アップグレードモデル)ではあるものの、増えた量は5%程度、TGPは据え置きなので性能差は1桁%に収まっています。
性能差1~2%程度のタイトルについては正直なところ、測定誤差、GPU個体差(V-Fカーブ)やGPUクーラーの冷え具合によるコアクロック変動の影響で優劣がひっくり返ってもおかしくありません。
製品スペックの通りCUDAコア数は多いのでGeForce RTX 4080 SUPERのほうが速いことは間違いありませんが、RTX 4070 SUPERやRTX 4070 Ti SUPERのようにハッキリとした差があるかというとそこは微妙です。やはりGeForce RTX 4080 SUPERは『性能そのまま(微増)で200ドルの大幅値下げしたコスパ増強モデル』という見方が正解だと思います。
ちなみにRTX 40 SUPERにアップデートされたことで晴れて北米希望小売価格が同じ999ドルで横並びになった競合AMDのRadeon RX 7900 XTXと比較した結果が次のようになっています。
なお、AMD vs NVIDIAのGPU性能比較はスケーリングがやや複雑になり、比較に使用する検証タイトルの抜粋次第なので注意してください。
今回検証した15タイトルの4K解像度ではRTX 4080 SUPERとRX 7900 XTXの優劣が±15%程度でタイトルによって入れ替わり、GeForce RTX 4080 SUPERが平均して数%程度上回る結果になりました。
筆者の個人的な趣味(プレイするゲーム)に合わせてFF7R、テイルズアライズ、アーマードコア6などGeForceに有利なタイトルが混じっているため、優劣傾向が少しRTX 4080 SUPERに寄っている感はあります。
Alan Wake 2、Hogwarts Legacy、Starfieldとかメジャーな高画質洋ゲータイトルを加えて比較データを増やした場合、『RX 7900 XTXのほうがRTX 4080 SUPERよりも5%弱程度は高速という評価』に落ち着くと思います。
前世代だと4K高解像度では広帯域なVRAMメモリでRTX 3080/3090が強く、WQHD以下の低解像度では実行帯域が広い大容量キャッシュでRX 6800/6900XTが強いという傾向でしたが、RX 7900 XTXがVRAM帯域を増強したのに対して、逆にGeForce RTX 40シリーズは前世代比で最大16倍にキャッシュ容量を増強しています。RTX 4080 SUPERの場合は64MBのL2キャッシュが実装されています。
大容量キャッシュによるアドバンテージがなくなったので、ハイフレームレートなフルHDではRTX 4080 SUPERが若干優位で、WQHD解像度ではイーブンくらいになり、VRAMのバス幅が狭いので4K解像度になるとRX 7900 XTXが盛り返していく、という感じです。
Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCの温度・消費電力・ファンノイズ
Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCの負荷時のGPU温度やファンノイズや消費電力についてチェックしていきます。「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」のGPU温度とファンノイズの検証負荷としては約20分間に渡たり連続してGPUに100%近い負荷をかける3DMark TimeSpy(Extreme) Stress Testを使用しています。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」のテスト終盤におけるGPU温度は最大66度と十分に低く、ファン速度も最大1400RPMと低速です。
GeForce RTX 4080 SUPERはTGP320Wで消費電力の大きいGPUですが、「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」のクーラーは4スロット占有の厚みがあり、高静圧な冷却ファンや銅製ベースプレートを採用する大型ヒートシンクによって、十分過ぎる冷却性能と静音性を実現しています。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」はアイドル時にファンが停止するセミファンレス機能に対応しており、GPU温度50度前後が始動閾値、GPU温度35度前後が停止閾値でヒステリシスも採用されています。製品によっては回転数が上下してふらつくことの多い始動や停止の直前も、閾値を上下した瞬間にピタッと切り替わります。
GPUコアクロックについて、今回入手した「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」の負荷テスト中の実動平均は2718MHzでした。
【補足】
コアクロック比較グラフはAIBモデル別の優劣を決めるための比較ではなく、特定のGPUがだいたいどの程度のコアクロックで動作するのか確認するために掲載しています。
AMD、NVIDIAともに最新GPUでは実動コアクロックはGPUコア個体毎に異なる内部設定のV-Fカーブが最も支配的なファクターです。加えて負荷中のGPU温度も5~10度刻みでブーストクロックの制御に影響します。
そのため、ファクトリーOCが施されたオリファンモデルの公式仕様値として公表されているブーストクロックは各メーカー内におけるOC耐性選別という意味で1つの指標にはなると思いますが、実動コアクロックの優劣にはあまり当てになりません。
今回検証している個体Aが他社AIBと比較して実動コアクロックが低くても、市場製品の個体Bは高い、個体Cは同程度…のように、本当に御神籤状態です。
GeForce RTX4090/4080など2022年以降のウルトラハイエンドGPUは4K解像度の高画質3Dグラフィックスをレンダリングする3DMark TimeSpy ExtremeでもMaxTGPにGPU消費電力が張り付かないので、レイトレーシング表現に対応した3DMark Speed Way(もしくはPort Royal)の4K解像度カスタム設定を負荷として20分間ループ再生する負荷テストも実行しました。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」の場合、TimeSpy Extremeと比較してSpeed Way 4Kでもグラフィックボード全体の消費電力は1桁W程度しか増加しません。そのためテスト終盤におけるGPU温度はやはり最大66度と十分に低く、ファン速度も最大1400RPMと低速です。
320Wのパワーリミットに対してTGP制御のソースになるGPU Powerは平均312W程度で推移しているので、今回の検証結果よりも大幅にGPU温度やファン速度が高くなることはないはずです。
また実用条件に近い冷却性能の検証として、実際にPCケースへ「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を組み込み、1時間に渡って負荷をかけた時にGPU温度やファン回転数がどうなるかを確認してみました。
検証するGPUランクによって負荷を変えており、通常は3DMark Time Spy(Extreme) グラフィックテスト1、一部のウルトラハイエンドGPUには3DMark Speed Way 4K(もしくはPort Royal 4K)をループ再生させ、各GPUがMaxTGPに張り付く状態を検証しています。
検証機材のPCケースには「Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t」を使用しています。
CPUクーラーは120サイズ簡易水冷でラジエーターを天面前方に設置、またPCケースのフロントに吸気ファンとして3基とリアに排気ファンとして1基の140mm角ケースファンをそれぞれ設置し、ファン回転数は1000RPMに固定しています。
PCケースのエアフローファンには空冷ヒートシンク、水冷ラジエーター、PCケースエアフローの全ての用途で一般的な140mmサイズファンを上回る性能を発揮する「Thermaltake TOUGHFAN 14」を使用しています。140mmサイズファン選びに迷ったらこれを買っておけば問題ない、高性能かつ高静音性なファンです。
・「Thermaltake TOUGHFAN 14」をレビュー。最強140mmファンの登場か!?
PCケースに入れた状態で長時間負荷をかけると、「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」のGPUの最大温度は66度、ファン回転数は1500RPM程度でベンチ板上で測定した時と大差ありません。非常に優秀と評価していい冷却性能です。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」のGPUクーラーは内排気ファンということもありPCケースの吸排気を最適化しないと冷却効率が下がるので、フロントx3/リアx1で140mmファンを設置して1000RPMで回しています。実際にPCケースへ組み込むユーザーはPCケースの吸排気にも注意してみてください。
加えて1時間のストレステスト終盤にサーモグラフィカメラ搭載スマートフォン「CAT S62 PRO」を使用してゲーム負荷時のグラフィックボード上の各所の温度をチェックしました。
TGP300W超のグラフィックボードではVRM電源回路やPCIE補助電源付近がかなり高温になるモデルも散見されるのですが、「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」はホットスポットでも60~70度に収まっているので、運用上、特に心配する必要はありません。
Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCを含めていくつかのグラフィックボードについてサウンドレベルメーターを利用してゲーム負荷時のノイズレベルを測定・比較しました。
検証機材はベンチ台の上に平置きにしているので、サウンドレベルメーターをスタンドで垂直上方向に50cm程度離して騒音値を測定しています。
この測定方法において電源OFF時の騒音値は30dB未満です。目安として騒音値が35dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになりますが、35~38dB以下であればPCケースに入れてしまえばファンノイズが気になることはそうそうないと思います。40dB前後になるとベンチ台上で煩く感じ始め、45dBを超えるとヘッドホンをしていてもはっきり聞き取れるくらいになります。
A特性で測定しているのである程度は騒音値にも反映されていますが、同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質(細かい乱高下の有無や軸ブレ)にもよるので注意してください。
ノイズレベルの測定結果は次のようになっています。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」は、4スロット占有というRTX 4090級の超大型GPUクーラーを搭載しているだけあって、TGP320WのGPUを冷やしていながらPCケース組み込み時でも1500RPM程度とファン速度が低速であり、ファンノイズは34dB以下という非常に優秀な数値を叩き出しています。
Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCの消費電力と瞬間的な最大電源負荷を測定しました。
グラフィックボードの消費電力測定には、当サイトの検証に使用するためワンオフで特注した測定ツール「GPU Power Tester」を使用しています。GPU Power TesterはPCIEスロット経由とPCIE補助電源の消費電力を直接に測定しているので、シンプルにグラフィックボードそのものの消費電力をしることができます。
消費電力の測定にあたって検証するGPUランクによって負荷を変えており、通常はTime Spy(Extreme) グラフィックテスト1、一部のウルトラハイエンドGPUにはPort Royal 4KもしくはSpeed Way 4K(GPU名に*マークを併記)をループ再生させ、各GPUがMaxTGPに張り付く状態を検証しています。
テスト全体から1ms間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。
Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCの消費電力は308W、最大瞬間負荷は346Wでした。Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OCのTGP(パワーターゲット)は320Wに設定されているので、設定値よりも若干低めの消費電力です。
パワーリミットの320Wよりも少し低めの消費電力ですが、制御ソースのGPU Powerは平均312W前後で推移し、最大値は320Wに達していたので、実際にこれより大きい消費電力が発生することはないと思います。
とはいえ「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」はグラフィックボード単体で300W以上の消費電力を要求するので、安定した電力供給のためにも、電源容量750W以上、可能なら電源容量850Wくらいの電源ユニットを組み合わせる必要があると思います。
Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC レビューまとめ
最後に「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 4K/120FPSゲーミングにも対応可能、4KゲーミングモンスターなGPU
- RTX 3090と比較して平均30%以上、ベストケースでは40~50%も高速
- RTX 4080との性能差は数%増程度だが、200ドルの大幅値下げ
- GeForce RTX 40の最新機能であるAI中間フレーム生成 DLSS 3に対応
- 高圧縮かつ高画質な次世代コーデックAV1のハードウェアエンコードに対応
- TGP320WのRTX 4080 SUPERをノイズレベル34dB以下で十分冷やせるGPUクーラー
- GPUクーラーにARGB LEDイルミネーションを搭載
- 付属12VHPWR変換ドングルでPCIE 8PIN×2で運用できる
- 全長329mm、全高がPCIEスロット+20mmと巨大なのでPCケースとの干渉に注意
- PCIEスロットを4スロット占有
- 12VHPWR電源コネクタは取り扱いに注意が必要 【解説記事へ】
- RTX 4080 SUPER 一般に価格が税込み18万円半ばから (2024年2月現在)
GeForce RTX 4080 SUPERは、前世代同クラスのRTX 3080を平均50%以上、前世代最上位のRTX 3090と比較しても平均35%以上も上回るという2024年最新ハイエンドGPUらしい卓越した性能を実現しています。
RTX 4080無印との性能差はほとんどありませんが(数%程度の微増)、GPU価格が1199ドルから999ドルへと200ドルも値下がりしているので、コストパフォーマンスの増強はそれだけで十分に目玉です。
GeForce RTX 4080 SUPERは近年の超高画質なPCゲームですらラスタライズ式ならDLSSのような超解像機能を必要とせず、素の最高画質設定で4K/60~120FPSを余裕でキープできます。
もちろんAI中間フレーム生成機能 DLSS FGを含む最新バージョンのDLSS 3にも対応しているので、同機能を利用すればさらに高いフレームレートを出したり、GPU要求性能が激増するレイトレーシングを有効にしても4K解像度のハイフレームレートで快適にゲームをプレイしたりできます。
4K解像度/120FPSにも対応可能なGeForce RTX 4080 SUPERを使用するのであれば、4K/144Hz対応IPS液晶ゲーミングモニタの「ASUS TUF Gaming VG28UQL1A」や「LG 27GP950-B」や「MSI Optix MPG321UR-QD」、4K/120Hz有機ELテレビ「LG OLED TV C2/G2」や4K/120Hz有機ELモニタ「ASUS ROG Swift OLED PG42UQ」など、4K解像度&ハイリフレッシュレートなディスプレイと組み合わせてラグジュアリーなゲーミング環境を構築したいところです。
・4K/120Hz+対応ゲーミングモニタのレビュー記事一覧へ
GeForce RTX 4080 SUPERは3Dグラフィックス性能に関わるスペックが無印版からほぼ据え置き(微増)なので、最大のアピールポイントは200ドルの値下げ、つまり価格ですが、現状ではネガティブポイントもまた”価格(実売価格)”です。
18万円台半ばからという2024年2月現在の実売価格ベースで見ると、RTX 4080 SUPERとRTX 4080無印の販売価格には大差がなく、200ドル値下げの恩恵はほとんど感じません。むしろRTX 4080無印には実際にちゃんと買えるより安いモデルもあり、この性能差と価格差ならRTX 4080無印を買った方が良い、すらあり得ます。(RTX 4080無印は在庫限り終売ではあるものの)
ともあれ、2023年末頃にRTX 4080無印が18万円前後、安価なモデルなら17万円台で購入できたことを考えると、200ドル値下げされたRTX 4080 SUPERは15~16万円くらいで実売価格が落ち着くのを期待したいところです。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」のGPUクーラーについては、TGP320WのRTX 4080 SUPERにフル負荷をかけ続けても、GPU温度は60度台に収まり、なおかつ同測定環境においてノイズレベル34dB以下という非常に優れた静音性を発揮しました。
「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」はLEDイルミネーション付きGPUクーラーが採用されているため、同社のJetStream OCよりも1万円程高くなっていますが、RTX 4080 SUPERオリファンモデルの中では実売価格の最安値ラインである18万円台後半です。
また同製品を含めPalit製グラフィックボードは国内市場ではドスパラの専売ですが、在庫数は比較的に多く入手性が優れているところも魅力です。
以上、「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」のレビューでした。
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4スロット占有3連ファンGPUクーラー搭載でファクトリーOCも施されたゲーミングモデル「Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) February 1, 2024
RTX 4080無印や競合のRX 7900 XTXをどの程度上回るのか、実ゲームベンチマークで徹底比較https://t.co/k5EMZ9eA1z
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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