スポンサードリンク
新ゲーミングアーキテクチャ「RDNA2」を採用するAMDの次世代ハイエンドGPU”Big Navi”ことRadeon RX 6800シリーズ下位モデル「AMD Radeon RX 6800」を搭載したAMD純正リファレンスグラフィックボードをレビューしていきます。
待望のAMD製次世代ハイエンドGPU「Radeon RX 6800」が、同社前ハイエンドのRadeon VII、競合NVIDIAの最新ミドルハイクラスRTX 3070や前世代最上位RTX 2080 Tiをどの程度上回るのか、実ゲームベンチマークでグラフィック性能を徹底比較します。
製品公式ページ:https://www.amd.com/ja/products/graphics/amd-radeon-rx-6800
AMD Radeon RX 6800 レビュー目次
1.AMD Radeon RX 6800の外観
2.AMD Radeon RX 6800の分解
3.AMD Radeon RX 6800の検証機材・GPU概要
4.AMD Radeon RX 6800のゲーム性能
5.AMD Radeon RX 6800の温度・消費電力・ファンノイズ
6.AMD Radeon RX 6800のレビューまとめ
AMD Radeon RX 6800の外観
早速、AMD Radeon RX 6800を開封していきます。「Radeon RX 6800」のリファレンスモデルはいくつかのベンダーからリリースされていていますが、基本的にAMD純正のリファレンスモデルを箱詰めしただけ、+αでファン中央に各社のロゴシールが貼られている、PCIE端子やビデオ出力ポートにカバーが付いているくらいの違いなので、どのベンダーの製品を買っても大差ありません。
SAPPHIRE、ASRock、Power Colorなど一部メーカー製品は他社の1年よりも長い2年保証になっているので、ここだけは気にしてもいいかもしれません。
「AMD Radeon RX 6800」のグラフィックボード本体を見ていきます。
「AMD Radeon RX 6800」のリファレンスモデルはシルバーとブラックのツートンカラーな金属製外装を採用しています。比較的シンプルなデザインが多かったRadeonのリファレンスグラフィックボードと比較してゲーミング風なデザインに生まれ変わっています。
グラフィックボード側面にはRadeonのブランドロゴがあり、側面縁のラインはAMDのブランドカラーでもある赤色で着色されています。
リファレンスモデルというとGPUリリースの最初に投入される廉価モデルというか、高性能オリファンモデルの当て馬な印象が強いですが、「Radeon RX 6800」ではGPUクーラーからPCB基板までこだわり抜いた設計であることがAMD公式からもアピールされています。
競合NVIDIAの準リファレンスモデルなFounders Editionが全長300mmクラスに巨大化したのに対して、ワットパフォーマンスで上回ることをアピールするRadeon RX 6000シリーズということもあり、「AMD Radeon RX 6800」のリファレンスモデルの全長は267mm、従来の一般的なフルサイズグラフィックボードと同じサイズです。
「AMD Radeon RX 6800」は全長も最新ハイエンドGPUとしては短めであるのに加えて、PCIEブラケットからはみ出す高さ方向も+15mm以下に収まっており、PCケースサイドパネルとの干渉についても基本的に大丈夫だと思います。
AMD Radeonシリーズのリファレンスモデルというと直近最後のハイエンドGPUであるRadeon VIIが内排気クーラーを採用していたものの、Radeon RX 5700 XTなど5000シリーズでは外排気ブロアーファン型でしたが、「AMD Radeon RX 6800」のリファレンスモデルは80mmサイズファンを3基搭載する内排気クーラーが採用されています。
3基の冷却ファンにはファンノイズを抑えつつ高い静圧&風量を得ることが可能なバリアーリング搭載冷却ファンを採用しており、2020年最新トレンドもしっかりと組み込まれています。
「AMD Radeon RX 6800」はTGP250Wで発熱は従来のハイエンドGPU相当ですが、TDP300Wの上位モデルと違って、リファレンスモデルのPCIEスロットの占有は2スロットに収まっています。
オリファンモデルの多くはやはり冷却性能や静音性を重視して3スロット占有が多いようなのでMini-ITX対応PCケースなどコンパクトPCを組む時には「AMD Radeon RX 6800」のリファレンスモデルが重宝しそうです。
「AMD Radeon RX 6800」のリファレンスモデルの補助電源数はPCIE 8PIN×2です。
今回購入したAMD Radeon RX 6800リファレンスモデルのASRock箱詰め品にはPCIE端子と各種ビデオ出力には黒色の保護カバーが装着されています。保護カバーの有無については箱詰めメーカーによって異なります。
「AMD Radeon RX 6800」のビデオ出力はHDMI2.1×1、DisplayPort1.4×2、USB Type-Cの4基が実装されています。USB Type-Cポートは通常のUSBポートとしても使用できますが、DisplayPort Alternate ModeによってDisplayPort1.4互換なビデオ出力として使用できます。
NVIDIAがVR機器接続用次世代規格Virtual Link対応としてRTX 20シリーズにUSB Type-Cを採用したものの、対応VR HMDが1台も登場しないままVirtual Link公式サイトが閉鎖されたのは記憶に新しいですが、「Radeon RX 6800」のUSB Type-Cビデオ出力についてはThunderbolt3対応モニタなどクリエイター向け機器への対応を重視した結果ではないかと思います。
「AMD Radeon RX 6800」にはGPUクーラーと同様にブラック&シルバーでツートンカラーな金属製バックプレートが装着されています。基板の反りや破損を防止する保護プレートとしての役割を果たしますが、VRM電源回路やVRAMチップとの間にはサーマルパッドが貼られていないので冷却補助の機能はありません。
グラフィックボードの重量はAMD Radeon RX 6800XTが1513g、AMD Radeon VIIが1283g、に対して、AMD Radeon RX 6800は1386gでした。
バックプレート等で基板の反りは防止されていますが、重量は1kgを軽く超過しているのでPCIEスロットへの負荷を考えるとVGAサポートステイなどで垂れ下がりを防止したほうがいいかもしれません。
AMD Radeon RX 6800の分解
「AMD Radeon RX 6800」を分解してGPUクーラーやグラフィックボード基板についてチェックしていきます。なおGPUクーラーの取り外し(分解行為)はグラフィックボードの正規保証の対象外になる行為です。今回はレビューのために自己責任で分解しておりますが、繰り返しますが保証対象外になるので基本的には非推奨の行為なのでご注意下さい。
【暇があれば更新予定】
AMD Radeon RX 6800の検証機材・GPU概要
外観やハードのチェックはこのあたりにして早速、「AMD Radeon RX 6800」を検証用の機材に組み込みました。テストベンチ機の構成は次のようになっています。テストベンチ機の構成 | ||
ベンチ機1(温度・消費電力) |
ベンチ機2(ゲーム性能) |
|
OS | Windows10 Home 64bit (1909) |
|
CPU |
Intel Core i9 9900K (レビュー) Core/Cache:5.1/4.7GHz |
Intel Core i9 10900K (レビュー) Core/Cache:5.2/4.7GHz |
M/B | ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 4000MHz, 17-17-17-37-CR2 |
G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) 4000MHz, 15-16-16-36-CR2 |
システム ストレージ |
Samsung 860 EVO M.2 1TB (レビュー) |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
データ ストレージ |
Samsung 860 QVO 4TB (レビュー) | |
CPUクーラー |
Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
|
電源 ユニット |
Corsair HX1200i (レビュー) |
|
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
AMD Radeon RX 6800 XTリファレンスモデルグラフィックボード側面にはRadeonのブランドロゴがありLEDイルミネーションが内蔵されています。側面縁のラインと同じく、AMDのブランドカラーでもある赤色で発光します。
AMD Radeon RX 6800のGPU概要
AMD Radeon RX 6800に搭載されているGPU「Radeon RX 6800」のスペックについて簡単に確認しておきます。「AMD Radeon RX 6800」のスペックは、コンピュートユニット数が60、シェーダー数が3840、コアクロックはゲームクロック1815MHz、最大ブーストクロック2105MHzです。
VRAMには速度16GbpsのGDDR6メモリを容量16GB搭載し、RDNA2アーキテクチャの特長である超高速キャッシュInfinity Cacheを128MB搭載しています。消費電力の指標となるTBPは250Wです。
今回レビューするのは「AMD Radeon RX 6800」のリファレンスモデルなので、AMD公式のリファレンス仕様通り、コアクロックはゲームクロック1815MHz、最大ブーストクロック2105MHzです。公式仕様では公開されていないベースクロックについてはGPU-Zを参照すると1700MHzとのこと。
またGPU-ZからはRadeon RX 6000シリーズの電力制限値そのものは確認できないのですが、AMD Radeon RX 6800リファレンスモデルにおいて電力制限の基準値の調整可能幅は-8%~+15%でした。
ちなみに海外ユーザーによって作成されたAMD製GPU向けチューニングソフト(vBIOS編集ソフト)からRadeon RX 6800リファレンスモデルの仕様を探ってみると、Radeon RX 6800のグラフィックボード全体の消費電力の指標値であるTBP(NVIDIA仕様でいうTGPのこと)は250Wと公表されていますが、GPUコア単体の電力制限は203Wに設定されていました。
AMD Radeon RX 6900/6800シリーズ スペック一覧 | ||||
RX 6900 XT |
RX 6800 XT |
RX 6800 | Radeon VII |
|
GPUコア | Navi 21 XTX |
Navi 21 XT |
Navi 21 XL | Vega |
製造プロセス | 7nm FinFET | 7nm FinFET | 7nm FinFET | 7nm FinFET |
Compute Unit数 |
80 |
72 |
60 | 60 |
シェーダー数 | 5120 |
4608 | 3840 |
3840 |
ベースクロック | - MHz | - MHz | - MHz | 1450 MHz |
ゲームクロック | 2015 MHz | 2015 MHz | 1815 MHz | - MHz |
ブーストクロック | 2250 MHz | 2250 MHz | 2105 MHz | 1800 MHz |
単精度性能 | 23.07 TFLOPs | 20.74 TFLOPs | 16.17 TFLOPs | 13.8 TFLOPs |
Infinity Cache |
128MB | 128MB | 128MB | - |
VRAM | 16 GB GDDR6 | 16 GB GDDR6 | 16 GB GDDR6 | 16 GB HBM2 |
バス幅 | 256-bit | 256-bit | 256-bit | 4096-bit |
メモリクロック | 16.0 GHz | 16.0 GHz | 16.0 GHz | 2.0 GHz |
メモリ帯域 | 512 GB/s | 512 GB/s | 512 GB/s | 1000 GB/s |
補助電源 | 8PIN×2~ | 8PIN×2~ | 8PIN×2~ | 8PIN×2~ |
TBP | 300 W | 300W | 250W | 250W |
発売日 | 2020年12月8日 | 2020年11月18日 | 2020年11月18日 | 2019年2月 |
希望小売価格 | 999ドル~ | 649ドル~ | 579ドル~ |
699ドル |
Radeon設定によるRX 6800のチューニングについて
Radeon RX 6000シリーズでも、デスクトップ右クリックメニューからアクセスできるRadeon設定の「パフォーマンスタブ - チューニング」の順にアクセスすると、前世代同様にコアクロック・メモリクロックやファン制御に関する設定が表示されます。チューニングを開くとまず、GPU動作プロファイルの選択が表示されます。なお6800XT/6900XTの上位モデルと違い、「Radeon RX 6800」では自動OCによって性能が向上するレイジモードは用意されていません。
チューニングコントロールで「手動」を選択すると、大別してGPUコアクロック、VRAMコアクロック、ファン制御、電力制限の4種類の設定が表示されます。
GPUチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると最小周波数、最大周波数、GPUコア電圧(Voltage)の3種類の設定スライダーが表示されます。
高度な制御のスライドスイッチをONにすると設定値が%単位からMHzやmVといった実際の物理単位に変わります。Radeon RX 6800リファレンスモデルでは最大周波数を2600MHzまで引き上げることが可能です。
Radeon VIIやRX 5000シリーズでは低電圧化耐性の指標になったもののRX 6000シリーズではどうなのかわかりませんが、とりあえず今回管理人が入手した個体については標準の最大周波数が2249MHz、GPUコア電圧が1025mVでした。
VRAMチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えるとVRAM周波数(最大周波数)の設定スライダーが表示されます。
高度な制御のスライドスイッチをONにすると設定値が%単位からMHzの物理単位に変わります。Radeon RX 6800リファレンスモデルでは定格の2000MHzから最大周波数を2150MHzまで引き上げることが可能です。
電源チューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると電力制限の設定スライダーが表示されます。
電力制限の設定は各GPUの標準GPUコア電力制限に対するパーセンテージのオフセットですが、Radeon RX 6800リファレンスモデルでは203Wを基準にして最大で+15%まで電力制限の引き上げが可能です。
ファンチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると、ゼロRPM(セミファンレス機能)の切り替えスイッチ、最大ファン速度の設定スライダーが表示されます。
また高度な制御のスライドスイッチをONにするとファン制御カーブの手動設定が表示されます。Radeon RX 6000シリーズにはGPU温度とジャンクション温度(複数あるGPUダイ上の温度センサーの最大値)の2種類の温度があり、ファン制御カーブはジャンクション温度を参照するようです。
温度とファン速度について5つの頂点を任意に指定してファン速度を制御できます。上述のセミファンレス機能との併用や、セミファンレス機能の無効化も可能です。
新アーキテクチャRDNA2で特に重要な2つの特長
AMD Radeon RX 6000に採用されている新アーキテクチャ「RDNA2」について、様々な特長が公式に発表されていますが、エンドユーザーが特に押さえておくべきポイントはVRAMフルアクセス機能「AMD Smart Access Memory」と、レイトレーシング表現対応(ハードウェアアクセラレーター搭載)の2点です。Infinity Cacheを始め、レビューや解説記事としてRadeon RX 6000シリーズやそのアーキテクチャであるRDNA2について掘り下げられるポイントは非常に多いのですが、実性能と価格に加えて消費者目線で最低限抑えておくべきポイントを挙げるとすればこの2つになると思います。
まず1つ目の大きな特徴は「AMD Smart Access Memory」です。Radeon RX 6000シリーズを同社の次世代CPUであるRyzen 5000シリーズと組み合わせることで使用可能な(AMD公式にサポートされる)ビデオメモリアクセスを改善し性能を向上させる機能です。
従来のプラットフォームでは32bit命令の名残でCPUとグラフィックボードVRAM間では最大でも256MB単位でしかデータのやり取りができませんでした。
AMD Smart Access Memoryでは10GBを超える大容量VRAMに対してCPUからサイズ制限なく一度にフルアクセスが可能になり、なおかつ第3世代Ryzen&X570でAMDがいち早くサポートを始めたPCIE4.0の従来比2倍な高速帯域を用いることで、VRAMアクセスによって生じるボトルネックが解消されます。
ハイエンドGPUではVRAM容量が10GBを超えるのが当たり前になったので、CPU-VRAM間でフルアクセス機能を実現するためにはより高速な帯域(PCIE4.0対応)が必要になります。1年前、第3世代Ryzen&X570など早期にPCIE4.0の普及を目指したのは、同機能でCPU・MB・GPUのプラットフォーム単位で優位性を示すための布石だった、と考えるといろいろと納得がいきます。(そうでないとPCIE4.0アーリーアダプターな某SSDはIOベンチ以外に魅力がなく、微妙過ぎました…)
AMD公式のベンチマークによると「AMD Smart Access Memory」を使用することで最大10%程度もパフォーマンスが改善するとのこと。
AMD Smart Access Memoryの名前の方が有名ですが、実のところ、これはPCIE規格で策定されている「Re-Size BAR (Base Address Register)」と同等の機能です。【参考資料】
現状でAMDが公式にサポートを公表しているのがRadeon RX 6000シリーズとRyzen 5000シリーズ、およびグラフィックボードをPCIE4.0で接続可能なAMD X570/B550チップセット搭載マザーボードの組み合わせであるというだけで、すでに一部のIntel Z490マザーボードにおいてベータBIOSという形ですが、Re-Size BARを有効にできるBIOSが一部メーカーから配信されています。
AMDと競合するGPUメーカーのNVIDIAも2021年の2月~3月にかけて同社最新GPUであるGeForce RTX 30シリーズ(Ampere世代)においてRe-Size BARのサポートを順次開始していくことが正式に発表されています。
CPUとGPUをコンシューマー向けに展開しているAMDだからこそいち早く、Re-Size BARの土壌としてPCIE4.0を普及させ、次世代GPUのRadeon RX 6000シリーズでサポートさせることができた、こと自体は評価に値すると言って間違いありません。
一方でAMD Smart Access Memory = Re-Size BARなので、「VRAMフルアクセス機能Re-Size BARによる性能向上は”将来的には”AMDオンリープラットフォームに限定されるユニークなアドバンテージではない」、その点は留意しておいてください。
次に2つ目の大きな特徴がレイトレーシング表現への対応です。Radeon RX 6000シリーズが採用するRDNA2アーキテクチャでは一般的にコア数としてカウントされるシェーダーコアをひとまとめにしたCU(Compute Unite)に対して1基のレイトレーシング処理支援ハードウェア「Ray Accelerator」を搭載しています。Ray Acceleratorはレイトレーシング処理においてCPUによる演算よりも10倍も高速とのこと。
余談ですが、以下のような事情もあって当サイトでは”レイトレーシング表現”と呼んでいます。
レイトレーシングというのはそもそもレンダリング手法の1つであって、現在主流なレンダリング手法のラスタライゼーション(ラスタライズ)と、ある種の対になる言葉です。
PCゲームにおいては負荷的な問題で全てをレイトレーシングでレンダリングするのではなく、『ラスタライゼーションをベースにレイトレーシングはアクセント』という形で併用するのが主流です。
またPCゲームにおいてレイトレーシングというとDirectX12がサポートするDXR(DirectX Raytracing)が有名、というか現状でレイトレーシングをサポートするPCゲームはほぼコレですが、Vulkanなどその他のAPIもレイトレーシングを続々とサポートし始めています。
下はNVIDIAによるデモですが、レイトレーシング表現では、照明(エリアライト)や太陽光(グローバルイルミネーション)の影響を厳密に再現し、光の反射やガラス面の透過なども現実に即して忠実に描写されます。レイトレーシングを採用したわかりやすい例としては鏡に映る反射など、視覚(視点から見た)の外にある物体もリアルに描画することができます。
なお、NVIDIA GeForce RTX 30シリーズが対応するDLSSのように超解像技術によって低負荷に4K~8Kの高解像度を実現する機能がAMD Radeon RX 6000シリーズでは実装されていないので、レイトレーシング表現と4K解像度の組み合わせは現時点では難しいようです。
一方で「FidelityFX Super Resolution」と呼ばれる超解像機能を開発中とのことなので将来的にはレイトレーシング表現と4K解像度の組み合わせにも対応が可能になると思います。
AMD Radeon RX 6800のゲーム性能
「AMD Radeon RX 6800」の性能を測るべく各種ベンチマークを実行しました。性能比較には「GeForce RTX 3070」、「GeForce RTX 2080 Ti Founders Edition」、「Radeon VII」、「Radeon RX 5700 XT」を使用しています。「AMD Radeon RX 6800」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkで現在主流なDirectX11のベンチマーク「FireStrike」による比較になります。
FireStrike | Extreme | Ultra | |
RX 6800 |
43285 | 21544 | 10579 |
RTX 3070 | 33680 | 16625 | 8470 |
RTX 2080 Ti FE |
34955 | 16797 | 8179 |
Radeon VII |
28115 | 13455 | 6863 |
RX 5700 XT | 27300 | 12947 | 6553 |
「AMD Radeon RX 6800」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkのDirectX12ベンチマーク「TimeSpy」、およびレイトレーシング対応ベンチマーク「Port Royal」による性能比較となります。
TimeSpy | Extreme | Port Royal |
|
RX 6800 | 15034 | 7156 | 7599 |
RTX 3070 | 13644 | 6746 | 8141 |
RTX 2080 Ti FE |
14309 | 6813 | 8839 |
Radeon VII |
8974 | 4364 | - |
RX 5700 XT | 9362 | 4189 | - |
「AMD Radeon RX 6800」を含めた各グラフィックボードについて、近年普及しつつあるHTC VIVEやOculus RiftなどVR HMDを使用したVRゲームに関する性能を測定する最新ベンチマーク「VRMark」による性能比較となります。
Orange Room |
Cyan Room |
Blue Room |
|
RX 6800 | 14813 | 16368 | 4494 |
RTX 3070 | 16335 | 13002 | 4086 |
RTX 2080 Ti FE |
15938 | 12955 | 4553 |
Radeon VII |
14256 | 10462 | 2705 |
RX 5700 XT |
13796 | 9289 | 2546 |
続いて2020年最新のPCゲームを実際に用いたベンチマークになります。同一のグラフィック設定で同一のシーンについてフルHD(1920×1080)とWQHD(2560×1440)と4K(3840×2160)の3種類の解像度で平均FPSを比較しました。
ベンチマーク測定を行ったゲームタイトルは、Anthem(ウルトラ設定プリセット)、Assassin's Creed Odyssey(最高設定プリセット)、Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12)、CONTROL(高設定プリセット, DirectX12, AMD製GPUはDirectX11)、DEATH STRANDING(最高設定プリセット, TAA)、The Division 2(ウルトラ設定プリセット, DirectX11)、Final Fantasy XV(最高設定プリセット, NVIDIA GameWorksはVXAOを除き有効)、Gears 5(最高設定プリセット)、Ghost Recon Breakpoint(ウルトラ設定プリセット)、Horizon Zero Dawn(最高画質設定プリセット)、Marvel's Avengers(最高設定プリセット, TAA)、Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット, DirectX12)、MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット, DirectX12)、Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット, TAA, DirectX12)、Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)以上の15タイトルです。
Anthem(ウルトラ設定プリセット)に関する「AMD Radeon RX 6800」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Assassin's Creed Odyssey(最高設定プリセット)に関する「AMD Radeon RX 6800」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「AMD Radeon RX 6800」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
CONTROL(高設定プリセット, DirectX12, AMD製GPUはDirectX11)に関する「AMD Radeon RX 6800」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
DEATH STRANDING(最高設定プリセット, TAA)に関する「AMD Radeon RX 6800」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
The Division 2(ウルトラ設定プリセット, DirectX11)に関する「AMD Radeon RX 6800」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Final Fantasy XV(最高設定プリセット、NVIDIA GameWorksはVXAOを除き有効)に関する「AMD Radeon RX 6800」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Gears 5(最高設定プリセット)に関する「AMD Radeon RX 6800」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Ghost Recon Breakpoint(ウルトラ設定プリセット)に関する「AMD Radeon RX 6800」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Horizon Zero Dawn(最高設定プリセット)に関する「AMD Radeon RX 6800」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Marvel's Avengers(最高画質設定プリセット, TAA)に関する「AMD Radeon RX 6800」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット, DirectX12)に関する「AMD Radeon RX 6800」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「AMD Radeon RX 6800」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット, TAA, DirectX12)に関する「AMD Radeon RX 6800」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)に関する「AMD Radeon RX 6800」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
AMD Radeon RX 6800など5種類のGPUについて実ゲーム性能の比率の平均を出してみたところ、AMD Radeon RX 6800は、アッパーミドル向けではあるものの前世代最上位だったRadeon RX 5700 XTと比較して平均で60%以上、ベストケースでは80%を超える性能向上を実現しており、AMDが”4Kゲーミング入門に最適(Upgrade 4K Gaming)”と謳うのも納得の高性能です。
約2年前、最後に発売されたAMDのハイエンドGPUであるRadeon VIIと比較しても4Kゲーミング性能で50%程度の性能向上を実現しており、またVegaからRDNAを飛ばしてRDAN2へと最新アーキテクチャにアップグレードされているためフルHDのハイフレームレートなPCゲーミングでも順当に40%以上の性能向上を果たしているところも注目ポイントです。
一方で「Radeon RX 6800」のグラフィック性能をNVIDIA製GPUと比較すると、最新ミドルハイクラスのGeForce RTX 3070や前世代最上位のGeForce RTX 2080 Tiを平均で10%程度上回るという結果でした。
発売前にAMDから公表された10種の実ゲームによる公式ベンチマークでは、RX 6800はRTX 2080 Ti(≒RTX 3070)と比較してWQHD解像度で20%程度、4K解像度で15%程度も上回るとのことでしたが、Smart Access Memoryが有効であることを加味しても、ベストケースに近い性能が出るタイトルを集めたのだと思います。
NVIDIAでも公式ベンチに比べて10%弱の差が出るのは通例なので(近年では対AMDではなく同社の旧世代との比較ですが)、特に公式ベンチを批判する意図はなく、管理人としてはそういった事情も織り込み済みで妥当な結果が出たと思ったので、そういう意味での補足です。
個別に見ていくとRTX 3070やRTX 2080 Tiを比較対象としたRX 6800の性能スケーリングはやや複雑、ゲームタイトルに依るところが大きく、ほぼ同等のものもあれば(さすがに大きく下回ることはめったにない)、+20%以上も上回るタイトルもあります。
各サイトレビューにおいてベンチマーク比較で抜粋されるタイトルによってRX 6800の性能に対する印象は大きく変わるので注意が必要なところですが、『RX 6800はRTX 3070よりも概ね10%程度高性能』というのがざっくりとした管理人の感想です。
なお比較対象の選定についても補足しておくと、RX 6800 XT vs RTX 3080、RX 6900 XT vs RTX 3090という図式上、あえて選ぶならという注意付きで、RX 6800の競合モデルをRTX 3070にするしかありませんでした。
旧世代になったRTX 2080 Tiが踏み台になるのは仕方ないとして、RTX 3070については希望小売価格が499ドルでRX 6800よりも15%程度安く、またグラフィックボード消費電力の仕様値も220Wと低く設定されています。10~20%程度の性能差は価格相応という評価が適切、RX 6800もRTX 3070もピッタリとぶつかる競合が不在というのが正直な感想です。
(価格が小刻みになり過ぎて面倒なだけなので、AMDの対RTX 3070製品やNVIDIAの対RX 6800製品の登場は管理人的には嬉しくないというのもまた正直な感想です。)
性能スケーリングが複雑になる原因について、ゲームタイトルがAMD製GPUとNVIDIA製GPUに対してどれくらい最適化されているかというのも影響しているのですが、加えて、RX 6800ではフルHD解像度やWQHD解像度に対して4K解像度での性能スケーリングが鈍化する傾向があるゲームタイトルの存在を見ると、RDNA2アーキテクチャの高性能を支える大容量キャッシュInfinity Cacheという構造が大きく影響しているように思います。
公式スライドの示す通り、キャッシュ容量128MB辺りでフルHD・WQHDにおけるヒット率は頭打ちになり始めますが4K解像度ではまだリニアに上昇しているようなので、シンプルに高速なVRAM帯域を実現するNVIDIAのアプローチに対して、キャッシュを組み合わせるAMDのアプローチはまだ万能というわけではなさそうです。
ここまでは一般的なPCゲーミングシーンにおける「AMD Radeon RX 6800」の性能を比較検証してきましたが、ここからはRadeon RX 6000シリーズの大きな特徴、AMD製GPUではRDNA2アーキテクチャで初めてサポートされたレイトレーシング表現の性能をチェックしていきます。
いち早くレイトレーシング表現をサポートした競合NVIDIAの前世代最上位GeForce RTX 2080 Tiや、2021年最新ハイエンドGPUのGeForce RTX 3080とGeForce RTX 3070を比較対象にして、「Radeon RX 6800」のレイトレーシング性能を検証しました。
解像度は4K(3840×2160)とし、検証するゲームはBattlefield V (最高設定プリセット、RTX:ON)、Control(高設定プリセット、RTX:High)、Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット、RTX:Ultra)、Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット、RTX:Max)の4種類です。
なおドライバ2020.12.1においてRX 6800ではMetro Exodusでレイトレーシング表現を有効にするとほぼ確実にロード後にクラッシュし、上位モデルのRX 6800 XTでも何割かの確率でクラッシュしました。
まず純粋な性能として「Radeon RX 6800」はレイトレーシング表現を有効にすると4K解像度では30FPSをギリギリキープできるかどうか、WQHDで何とか60FPSに達するという具合でした。NVIDIA製GPUでもそうですが、レイトレーシング表現を4Kネイティブ解像度で実行するのは現在のGPU性能ではやはり難しく、DLSSのような超解像技術がAMD製GPUにも求められます。
上で検証した一般的なゲーミングシーンにおいてRadeon RX 6800はGeForce RTX 2080 TiやGeForce RTX 3070を10%程度上回る性能を発揮したのですが、レイトレーシング表現を有効にするとRX 6800はRTX 3070やRTX 2080 Tiと比較して20~30%劣る結果となりました。レイトレーシング表現を支援する専用ハードウェアの性能差が如実に現れています。
GeForce RTX 3070の場合はDLSSを併用すればレイトレーシング表現を有効にしてもWQHD解像度で80FPS程度をキープできることも考えると(BFVはWQHD解像度でのDLSSに非対応)、PCゲーミングにおけるレイトレーシング表現の性能に関してRX 6800がRTX 3070の後塵を拝しているのは否定できません。
ただAMDにとってRDNA2アーキテクチャのレイトレーシング表現サポートは、第1に次世代コンソールゲーム機とそのソフトウェアデベロッパー、次に3Dレンダリングなどのクリエイターを主要なターゲットとしており、PCゲーミングについてはオマケ程度の意味合いが強い気がします。
PS5やXbox Series Xの場合は、各ゲーム機固有のハードウェアクセラレーター性能によって実現できる範囲内でレイトレーシング表現を実行するだけなので競争力は求められず、近年のコンソールゲームはUnityやUnreal Engineといったゲームエンジンを使用して汎用PC環境で作成されています。
コンソールゲーム機なら実動環境を1,2種類に特定でき(デバッグが容易になる)、また実動環境に近似したハードウェアでゲーム開発ができるので、デベロッパーがレイトレーシング表現について学習しやすくなったことに一番の意義があるのだと思います。RTX 20シリーズの登場から2年たってもメジャーなレイトレーシング表現のサポートタイトルが10にも満たないのを見るとなおさら、そう感じます。
AMD Radeon RX 6800の温度・消費電力・ファンノイズ
「AMD Radeon RX 6800 リファレンスモデル」の負荷時のGPU温度やファンノイズや消費電力についてチェックしていきます。「AMD Radeon RX 6800 リファレンスモデル」にはRadeon設定から選択が可能なコアクロックや電力制限が変化する複数のモードが用意されていますが、標準モードで測定しました。
「AMD Radeon RX 6800 リファレンスモデル」のGPU温度とファンノイズの検証負荷としては約20分間に渡たり連続してGPUに100%近い負荷をかける3DMark TimeSpy Stress Testを使用しています。
「AMD Radeon RX 6800 リファレンスモデル」のテスト終盤におけるGPU温度は最大69度、ファン回転数は最大1700RPM程度に収まっています。TGP250WのGPUを冷やしていることを考えれば悪くない数値です。
GPUに搭載された複数の温度センサーのうち、最大温度を示すジャンクション温度の推移は下のようになりました。Radeon RX 6000シリーズはジャンクション温度をファン制御のソース温度とし、負荷がかかるといったん上限速度まで上昇、徐々に収束していく方式が採用されていることが多いのですが、「AMD Radeon RX 6800 リファレンスモデル」ではジャンクション温度が80度後半にすぐに達して、以降はファン速度も1700RPM前後で安定しています。
また「AMD Radeon RX 6800 リファレンスモデル」はアイドル時にファンが停止するセミファンレス機能に対応しており、ジャンクション温度を制御ソースとして始動閾値は65度前後、停止閾値は55度前後でヒステリシスも採用されています。製品によっては回転数が上下してふらつくことの多い始動や停止の直前も、閾値を跨いだ瞬間にピタッと切り替わります。
「AMD Radeon RX 6800 リファレンスモデル」ではGDDR6メモリやVRM電源回路の温度もモニタリングが可能であり、ストレステスト中の推移は下のようになりました。
GPUコアクロックについて、「AMD Radeon RX 6800 リファレンスモデル」はゲームクロック1815MHz、ブーストクロック2105MHzで、上位モデルのRX 6800 XTと比較して200MHz近く低い数値が設定されていましたが、負荷テスト中の実動平均は2193MHzとかなり高く、RX 6800 XTなど上位モデルと比較して数十MHz程度の差しかありませんでした。
また実用条件に近い冷却性能の検証として、実際にPCケースへ「AMD Radeon RX 6800 リファレンスモデル」を組み込み、Time Spy Extreme グラフィックテスト1を1時間に渡ってループさせてGPU温度やファン回転数がどうなるかを確認してみました。
検証機材のPCケースには「Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t」を使用しています。CPUクーラーは120サイズ簡易水冷でラジエーターを天面前方に設置、またPCケースのフロントに吸気ファンとして2基とリアに排気ファンとして1基の140mm角ケースファンをそれぞれ設置し、ファン回転数は1000RPMに固定しています。
PCケースに入れた状態で長時間負荷をかけると「AMD Radeon RX 6800 リファレンスモデル」のGPU温度は最大73度、ジャンクション温度は最大91度に達しましたが、ファン回転数はベンチ板測定時と同じく1700RPM程度でした。
ファン速度はそこそこ高速なのでPCケース内に組み込んでいてもファン動作自体はハッキリと認識できますが、煩く感じるレベルではありません。
「AMD Radeon RX 6800 リファレンスモデル」のGPUクーラーは内排気ファンということもありPCケースの吸排気を最適化しないと冷却効率が下がるので、フロントx2/リアx1で140mmファンを設置して1000RPMで回していますが、さすがに300Wを超えるTGPなので、ベンチ板での比較的に理想な環境のままとはいきませんでした。実際にPCケースへ組み込むユーザーはPCケースの吸排気にも注意してみてください。
加えて1時間のストレステスト終盤にスマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE Pro」(レビュー)を使用してゲーム負荷時のグラフィックボード上の各所の温度をチェックしました。
「AMD Radeon RX 6800リファレンスモデル」は、バックプレート表面や、背面や側面の隙間から確認できるPCB基板上のVRM電源回路やPCIE補助電源コネクタの付近の温度がホットスポットの最大値でも70度以下に収まっていました
GPUクーラーやバックプレートでほぼ完全に覆われているので内部温度をサーモグラフィで正確に測ることはできないのですが、RX 6000シリーズに搭載されているVRAMやVRM電源回路の温度センサーを信用するなら、「AMD Radeon RX 6800リファレンスモデル」はいずれも70度以下に収まっているので、GPUコア以外のコンポーネントの発熱は特に心配する必要はないはずです。
「AMD Radeon RX 6800 リファレンスモデル」を含めていくつかのグラフィックボードについてサウンドレベルメーターを利用してゲーム負荷時のノイズレベルを測定・比較しました。
検証機材はベンチ台の上に平置きにしているので、サウンドレベルメーターをスタンドで垂直上方向に50cm程度離して騒音値を測定しています。
この測定方法において電源OFF時の騒音値は30dB未満です。目安として騒音値が35dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになりますが、35~38dB以下であればPCケースに入れてしまえばファンノイズが気になることはそうそうないと思います。40dB前後になるとベンチ台上で煩く感じ始め、45dBを超えるとヘッドホンをしていてもはっきり聞き取れるくらいになります。
A特性で測定しているのである程度は騒音値にも反映されていますが、同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質(細かい乱高下の有無や軸ブレ)にもよるので注意してください。
ノイズレベルの測定結果は次のようになっています。
「AMD Radeon RX 6800 リファレンスモデル」のファンノイズは1600~1700RPMというファン回転数(テストベンチ上でもPCケース内でも)に対して騒音値は35~36dB程度となっており悪くない数値です。38dB未満であればまだPCケースに入れてしまえば煩く感じることはないレベルに収まります。
同じく2スロット占有で内排気3連ファンなRadeon VIIがかなり煩かったので静音性については心配もあったのですが、杞憂に済んで安心しました。というかリファレンスモデルでこれだけ冷えて静かならオリファンモデルは必要ないくらいです。
AMD Radeon RX 6800の消費電力と瞬間的な最大電源負荷を測定しました。
測定負荷には上で行った温度検証と同様に3DMark TimeSpy ストレステストを使用しています。テスト全体から1秒間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので、電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。
消費電力の測定は電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの入力ではなく変換ロスを差し引いたシステムへの出力電力をチェックしています。また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。
この方法であれば、CPU(後述のiGPUも)に負荷をかけても、CPUによる消費電力の変動はメイン電源ユニットCorsair HX 1200iの測定値には影響しません。しかしながら、測定値にはまだATX24PIN経由で供給されるマザーボードやDDR4メモリの電力が含まれるので、iGPUを使用した時の3DMark TimeSpy ストレステスト中の消費電力と最大電源負荷を同様に測定し、各種グラフィックボード使用時と差分を取る形でグラフィックボード単体の消費電力と最大電源負荷を算出します。
AMD Radeon RX 6800の消費電力は250W、最大瞬間負荷は337Wでした。AMD Radeon RX 6800は公式仕様でグラフィックボード全体の消費電力の指標値が250Wと公表されており、概ね仕様値通りの消費電力になっていると思います。
7nmプロセス改良版とはいえ2世代前のVegaアーキテクチャを採用するRadeon VIIと比較して、50%以上も上回るグラフィック性能を実現しながら、RX 6800は同等の消費電力に収まっており、最新RDNA2アーキテクチャのワットパフォーマンスの高さを再認識できる結果です。
AMD Radeon RX 6800 レビューまとめ
最後に「AMD Radeon RX 6800 リファレンスモデル」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- フルHD/240HzからWQHD/144Hz+、さらに4K/60FPSまで幅広いPCゲーミングにマッチ
- Radeon VIIを実ゲームで50%も上回るグラフィック性能
- 競合NVIDIAの前世代最上位モデルRTX 2080 Tiと比較して10%程度も高速
- 579ドルからなので奮発すれば手を出せるハイエンドGPU
- 全長267mm&2スロット占有で、従来の一般的なフルサイズグラボと同じサイズ
- TGP250WのGPUを静音性を維持しつつしっかりと冷やせるGPUクーラー
- USB Type-C (DP Alt Mode) ビデオ出力を搭載
- レイトレーシング表現を支援する専用ハードウェアの性能ではRTX 30シリーズに劣る
- 2021年1月現在、入手性が極めて悪い(NVIDIA RTX 30と比較してもなお悪い)
- リファレンスモデルは限定数量生産のようなのですでに終売かも
- 希望小売価格に反して、オリファンモデルはRTX 3080の安価モデル並み
2年越し1世代飛ばしで登場した待望のAMD次世代ハイエンドGPU「Radeon RX 6800」は、同社から最後にリリースされた前ハイエンドGPUのRadeon VIIを50%以上も上回り、さらに長らく最速の座を独占していたNVIDIAの前世代最上位GeForce RTX 2080 Tiをも上回るグラフィック性能を実現しており、AMDが”4Kゲーミング入門に最適(Upgrade 4K Gaming)”と謳うのも納得です。
4K/60FPSのラグジュアリーな超高画質、次世代スタンダードなWQHD/144Hz+、フルHD/240FPSのスーパーハイフレームレートなど幅広いPCゲーマー層にマッチし、579ドルからという手ごろな価格も相まって旧世代のハイエンドGPUユーザーが狙うアップグレード対象としては高コストパフォーマンスな製品です。
Radeon RX 6800は2020年現在、手ごろな価格で普及しつつあるWQHD/144Hz+のIPS液晶ゲーミングモニタと組み合わせて高画質・ハイフレームレートなPCゲーミング入門に最適なグラフィックボードです。
WQHD/144HzのIPS液晶ゲーミングモニタは色々と販売されていますが、リモコン操作&USB Type-C対応でマルチメディアに最適な「BenQ EX2780Q」、ELMB Syncやスナイパーなど独自のゲーミング機能が豊富な「ASUS TUF Gaming VG27AQ」、同スペック製品の中でも特に高発色・高応答速度な「LG 27GL850-B」は当サイトでもレビューを公開していてオススメなモデルです。
・WQHD解像度/144Hz+ゲーミングモニタのレビュー記事一覧へ
その他にもバトルロイヤル系ゲームに最適な240Hzオーバーの超高速ゲーミングモニタと組み合わせてガチで勝利を狙うゲーマーにもフルHDで高FPSを稼げるRadeon RX 6800はオススメです。
・240Hz+の超ハイリフレッシュレートなゲーミングモニタのレビュー記事一覧へ
「AMD Radeon RX 6800」のリファレンスモデルについて、やはり特筆すべきは従来のフルサイズグラフィックボード標準な全長267mmかつ占有PCIEスロット数も2スロットに収まって、ハイエンドGPUとしてはコンパクトサイズに収まっているところだと思います。
コンパクトさと静音性・冷却性能はトレードオフになる要素であり、またサイズやGPUクーラー構造の近いRadeon VIIがかなり煩かったので心配していたのですが、それも杞憂で、AMD Radeon RX 6800 リファレンスモデルのGPUクーラーは優秀、TGP250Wの発熱をしっかりと冷やしつつ適度な静音性を維持することができました。
なおRadeon RX 6000シリーズは競合NVIDIAのRTX 30シリーズに対してワットパフォーマンスの高さ、それに付随してグラフィックボードサイズをコンパクトにできることを公式スライドでも売りにしているのに、パートナー各社オリファンモデルに目を向けると、RTX 30シリーズと同様に全長300mmかつ3スロット占有といった超大型モデルばかりです。
発売以来、入手困難な状態が続いていますが、Radeon RX 6000シリーズで小型モデルを探している人は終売になる前に何とか確保するのをお勧めします。とくに2スロット占有なRadeon RX 6800 リファレンスモデルは貴重な存在だと思います。
以上、「AMD Radeon RX 6800」のレビューでした。
記事が参考になったと思ったら、ツイートの共有(リツイートやいいね)をお願いします。
次世代アーキRDNA2採用ハイエンドGPU「Radeon RX 6800」を搭載したAMD純正リファレンスグラフィックボードをレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) January 12, 2021
Radeon VIIやGeForce RTX 3070やGeForce RTX 2080 Tiと実ゲーム性能をベンチマークで徹底比較https://t.co/5wCBKhbCqE pic.twitter.com/Wxkn2aeBPC
・RX 6800 XT/RX 6900 XT搭載のおすすめゲーミングBTO PCを徹底比較!
関連記事
・Radeon RX 6000シリーズのレビュー記事一覧へ・GeForce RTX 30シリーズのレビュー記事一覧へ
・おすすめグラボまとめ。予算・性能別で比較。各社AIBモデルの選び方
・グラフィックボードのレビュー記事一覧へ
・予算と性能で選ぶオススメのゲーミングモニタを解説
・PCモニタ・ディスプレイのレビュー記事一覧へ
・RTX 3060 Ti搭載のおすすめゲーミングBTO PCを徹底比較!
・RTX 3070搭載のおすすめゲーミングBTO PCを徹底比較!
・RTX 3080搭載のおすすめゲーミングBTO PCを徹底比較!
・RX 6800 XT/RX 6900 XT搭載のおすすめゲーミングBTO PCを徹底比較!
・RTX 3090搭載のおすすめBTO PCを徹底比較! 【TITAN RTX更新に最適】
・おすすめBTO PCまとめ。予算・性能別で比較。カスタマイズ指南も
・【できる!個人輸入】米尼でおすすめなEVGA製グラボのまとめ
(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
スポンサードリンク