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Radeon RX 6800グラフィックボードとしてSAPPHIREからリリースされた、3スロット占有3連ファンGPUクーラーを搭載し、ファクトリーOCも施されたスタンダードモデル「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC 16G GDDR6(型番:SAP-PULSERX680016GB/11305-02-20G)」をレビューします。
待望のAMD製次世代ハイエンドGPU「Radeon RX 6800」が、同社前ハイエンドのRadeon VII、競合NVIDIAの最新ミドルハイクラスRTX 3070や前世代最上位RTX 2080 Tiをどの程度上回るのか、実ゲームベンチマークでグラフィック性能を徹底比較します。

代理店公式ページ:https://www.ask-corp.jp/products/sapphire/graphicsboard/radeon-rx-6800/sapphire-pulse-radeon-rx-6800-oc-16g-gddr6.html
製品公式ページ:https://www.sapphiretech.com/en/consumer/pulse-radeon-rx-6800-16g-gddr6

SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC
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SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC レビュー目次
1.SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OCの外観
2.SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OCの分解
3.SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OCの検証機材・GPU概要
4.SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OCのゲーム性能
5.SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OCの温度・消費電力・ファンノイズ
6.SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OCのレビューまとめ
【機材協力:SAPPHAIRE 国内正規代理店 アスク】
SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OCの外観
早速、「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC 16G GDDR6」を開封していきます。



「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」のグラフィックボード本体を見ていきます。
「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」のGPUクーラーの外装は黒色プラスチック製です。製品シリーズ名のPULSEにちなみ、アクセントカラーとして赤色でパルスラインが描かれています。

「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」のGPUクーラー外装はプラスチック製ですが安っぽさはあまり感じません。側面にはSAPPHIREロゴが刻印されたアルミニウム製プレートが装着されています。


Radeon RX 6800のリファレンスモデルは従来のフルサイズグラフィックボード同様に全長267mm、ハイエンドGPUとしては比較的にコンパクトでしたが、「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」の全長303mmと非常に巨大です。

「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」は全長も非常に巨大ですが、PCIEブラケットからはみ出す高さ方向も+20mmと大きいので、PCケースサイドパネルとの干渉についても注意が必要です。なおPCIE補助電源は基板上に20mm程度の切り込みがあって奥まった場所に実装されているので干渉が発生し難いように配慮されています。


次世代ハイエンドGPUながら省電力性能に優れ、従来のフルサイズグラフィックボードと同等サイズなので、既存環境からのアップグレードに最適、というAMDのアピールとは逆に、RX 6800シリーズの各社オリファンモデルはいずれも全長300mm超かつ3スロット占有です。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6800 XT OC SE」もその1つとなっており、TGP250WのRX 6800を冷やすクーラーなので巨大でも過剰装備というわけではないのですが、同社からはハイエンドモデルとしてNITRO+がラインナップされているので、RX 6800のPULSEについてはリファレンスと同等サイズのコンパクトモデルを期待したかったというのも本音です。

「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」のGPUクーラーにはダブルボールベアリングで耐久性に優れた3基の90mm径ファンを搭載し、中央に配置された冷却ファンの回転方向を逆にして整流効果を生み出すTri-Xクーラーが採用されています。

3基の冷却ファンにはファンノイズを抑えつつ高い静圧&風量を得ることが可能なバリアーリング搭載冷却ファンHybrid Fan Bladeを採用しており、2020年最新トレンドもしっかりと組み込まれています。バリアーリングが逆に吸気を妨げないように、ブレード間で切込みが入っているところも特徴的です。

RX 6800リファレンスモデルは2スロット占有でしたが、「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」はTGP250Wの発熱に対して高い静音性を発揮すべく、大型放熱フィンを採用したヒートシンクが搭載されており、PCIEスロットを3スロット占有します。


「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」は大幅なファクトリーOCが施されたモデルですが、補助電源数はRX 6800リファレンスモデルと同じくPCIE 8PIN×2が搭載されています。

「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」の各種ビデオ出力には半透明青色の保護カバーが装着されています。

「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」のビデオ出力はHDMI2.1×1、DisplayPort1.4×3の4基が実装されています。リファレンスモデルや一部オリファンモデルと違って、USB Type-Cポート搭載されていません。

「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」には基板の反りや背面素子の破損を防止し、放熱を補助する金属製バックプレートが搭載されています。GPUクーラー外装と同じく赤色アクセントカラーでパルスラインが描かれています。

「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」のバックプレート右端には大きくエアベントが設けられており、ファンからヒートシンクを通って背面に直接風が抜けるフロースルー構造が採用されています。

「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」は複数のBIOSを搭載したデュアルBIOSに対応し、PCIブラケット付近にはBIOS切り替え用のスライドスイッチが設置されています。
下の写真で右側「Performanceモード(Primary Setting、Default)」と左側「Quietモード(Secondary Setting)」の2つのモードを簡単に切り替えることができます。スライドスイッチを切り替えてPCを起動後、BIOSが変更されていない場合はOSを再起動すると切り替わります。

グラフィックボードの重量はAMD Radeon RX 6800が1386g、SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6800 XT OCが1231gに対して、SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OCは970gでした。

バックプレート等で基板の反りは防止されていますが、重量はほぼ1kgなのでPCIEスロットへの負荷を考えるとVGAサポートステイなどで垂れ下がりを防止したほうがいいかもしれません。
SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OCの分解
「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC 16G GDDR6」を分解してGPUクーラーやグラフィックボード基板についてチェックしていきます。なお今回はレビュー用サンプル貸出先の協力のもと特別に許可を頂いて分解を行っております。GPUクーラーの取り外し(分解行為)は、EVGAやZOTACを除く多くのメーカーではグラフィックボードの正規保証の対象外になる行為です。今回はレビューのために分解しておりますが、繰り返しますが保証対象外になるので基本的には非推奨の行為なのでご注意下さい。
「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」のGPUクーラーは、のGPUクーラーは、基板裏面のコア周辺4カ所、PCIEブラケット側2カ所、およびバックプレート上6カ所の計12個のネジで固定されていました。

12カ所のネジを外すとGPUクーラーは容易に取り外しが可能です。

さらにネジを外していくと、PCB基板からバックプレートも取り外しが可能です。バックプレートとPCB基板背面の間にはVRM電源回路の裏側部分にサーマルパッドが貼り付けられているので、金属製バックプレートはそのまま放熱板としての役割も果たしています。金属製バックプレートにはサーマルパッドが貼りつく場所を除いて、ビニールシートで絶縁保護もされています。

「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」にはSAPPHIREが独自に設計したオリジナル基板が採用されています。


Radeon RX 6800のGPUコアにはNavi 21と呼ばれる520mm^2のGPUダイが使用されています。(NVIDIA製GPUと違ってGPUコア天面に刻印がない)
Radeon RX 6800のVRAMはGDDR6となっており、GDDR6メモリチップはMicron、Samsung、SK Hynixが製造していますが、今回入手した「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」にはSamsung製の16GbのGDDR6メモリチップが8枚搭載されています。

「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」のVRM電源回路はGPUコアの左側に8フェーズおよび右側に3フェーズで、計11フェーズが実装されています。


「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」のGPUクーラー本体をチェックすると、GPUコアと接する部分は銅製ベースプレートが採用され、ベースコアからは4本の銅製ヒートパイプが伸び、アルミニウム製放熱フィンが3スロットスペース内いっぱいに展開されています。

GPUコアと接する部分には冷却性能の高さで定評のある銅製ベースプレートが採用されています。またGPUコア周辺のVRAMチップとVRM電源回路はヒートシンクにろう付けされた金属製プレートに、それぞれサーマルパッドを介して接し、ヒートシンク本体で直接冷却するという理想的な構造です。

GPUコアと接するベースプレートからは4本の極太ヒートパイプが左右へ抜ける構造で、GPUクーラーヒートシンクの放熱フィン全体へ効率的に熱を拡散します。

「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」は3スロットのスペースを最大限活用して放熱フィンが展開されています。

SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OCの検証機材・GPU概要
外観やハードのチェックはこのあたりにして早速、「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC 16G GDDR6」を検証用の機材に組み込みました。テストベンチ機の構成は次のようになっています。テストベンチ機の構成 | ||
ベンチ機1(温度・消費電力) |
ベンチ機2(ゲーム性能) |
|
OS | Windows10 Home 64bit (1909) |
|
CPU |
Intel Core i9 9900K (レビュー) Core/Cache:5.1/4.7GHz |
Intel Core i9 10900K (レビュー) Core/Cache:5.2/4.7GHz |
M/B | ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 4000MHz, 17-17-17-37-CR2 |
G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) 4000MHz, 15-16-16-36-CR2 |
システム ストレージ |
Samsung 860 EVO M.2 1TB (レビュー) |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
データ ストレージ |
Samsung 860 QVO 4TB (レビュー) | |
CPUクーラー |
Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
|
電源 ユニット |
Corsair HX1200i (レビュー) |
|
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |

SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OCのGPU概要
SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC 16G GDDR6に搭載されているGPU「Radeon RX 6800」のスペックについて簡単に確認しておきます。Radeon RX 6800のスペックは、コンピュートユニット数が60、シェーダー数が3840、コアクロックはゲームクロック1815MHz、最大ブーストクロック2105MHzです。
VRAMには速度16GbpsのGDDR6メモリを容量16GB搭載し、RDNA2アーキテクチャの特長である超高速キャッシュInfinity Cacheを128MB搭載しています。消費電力の指標となるTBPは250Wです。

「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」のコアクロックはゲームクロック1950MHz、最大ブーストクロック2170MHzへファクトリーOCが施されています。公式仕様では公開されていないベースクロックについてはGPU-Zを参照すると1800MHz、こちらもリファレンスモデルよりも引き上げられています。
またGPU-ZからはRadeon RX 6000シリーズの電力制限値そのものは確認できないのですが、SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OCにおいて電力制限の基準値の調整可能幅は-8%~+10%でした。


ちなみに海外ユーザーによって作成されたAMD製GPU向けチューニングソフト(vBIOS編集ソフト)から「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」の仕様を探ってみました。
Radeon RX 6800 XTのグラフィックボード全体の消費電力の指標値であるTBP(NVIDIA仕様でいうTGPのこと)は300Wに対して、GPUコア単体の電力制限はRX 6800リファレンスモデルでは203Wに設定されていましたが、「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」では219Wへと引き上げられていました。

「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」は上記のPerformanceモードに加えて、グラフィックボード上のハードウェアBIOSスイッチによって切り替えが可能なSilentモードがあります。
Silentモードではゲームクロック1815MHz、最大ブーストクロック2105MHzで、RX 6800リファレンスモデルと同じコアクロックになります。


MorePowerToolから電力制限等の情報をチェックしてみると、GPUコア単体の電力制限もまたSilentモードでは、RX 6800のリファレンスモデルと同じ値である203Wに設定されていました。なおファン制御プロファイルはPerformanceモードとSilentモードで共通でした。

AMD Radeon RX 6900/6800シリーズ スペック一覧 | ||||
RX 6900 XT |
RX 6800 XT |
RX 6800 | Radeon VII |
|
GPUコア | Navi 21 XTX |
Navi 21 XT |
Navi 21 XL | Vega |
製造プロセス | 7nm FinFET | 7nm FinFET | 7nm FinFET | 7nm FinFET |
Compute Unit数 |
80 |
72 |
60 | 60 |
シェーダー数 | 5120 |
4608 | 3840 |
3840 |
ベースクロック | - MHz | - MHz | - MHz | 1450 MHz |
ゲームクロック | 2015 MHz | 2015 MHz | 1815 MHz | - MHz |
ブーストクロック | 2250 MHz | 2250 MHz | 2105 MHz | 1800 MHz |
単精度性能 | 23.07 TFLOPs | 20.74 TFLOPs | 16.17 TFLOPs | 13.8 TFLOPs |
Infinity Cache |
128MB | 128MB | 128MB | - |
VRAM | 16 GB GDDR6 | 16 GB GDDR6 | 16 GB GDDR6 | 16 GB HBM2 |
バス幅 | 256-bit | 256-bit | 256-bit | 4096-bit |
メモリクロック | 16.0 GHz | 16.0 GHz | 16.0 GHz | 2.0 GHz |
メモリ帯域 | 512 GB/s | 512 GB/s | 512 GB/s | 1000 GB/s |
補助電源 | 8PIN×2~ | 8PIN×2~ | 8PIN×2~ | 8PIN×2~ |
TBP | 300 W | 300W | 250W | 250W |
発売日 | 2020年12月8日 | 2020年11月18日 | 2020年11月18日 | 2019年2月 |
希望小売価格 | 999ドル~ | 649ドル~ | 579ドル~ |
699ドル |
Radeon設定によるRX 6800のチューニングについて
Radeon RX 6000シリーズでも、デスクトップ右クリックメニューからアクセスできるRadeon設定の「パフォーマンスタブ - チューニング」の順にアクセスすると、前世代同様にコアクロック・メモリクロックやファン制御に関する設定が表示されます。
チューニングを開くとまず、GPU動作プロファイルの選択が表示されます。なお6800XT/6900XTの上位モデルと違い、「Radeon RX 6800」では自動OCによって性能が向上するレイジモードは用意されていません。

チューニングコントロールで「手動」を選択すると、大別してGPUコアクロック、VRAMコアクロック、ファン制御、電力制限の4種類の設定が表示されます。

GPUチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると最小周波数、最大周波数、GPUコア電圧(Voltage)の3種類の設定スライダーが表示されます。
高度な制御のスライドスイッチをONにすると設定値が%単位からMHzやmVといった実際の物理単位に変わります。SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OCでは最大周波数を2600MHzまで引き上げることが可能です。
Radeon VIIやRX 5000シリーズでは低電圧化耐性の指標になったもののRX 6000シリーズではどうなのかわかりませんが、とりあえず今回管理人が入手した個体については標準の最大周波数が2249MHz、GPUコア電圧が1025mVでした。

VRAMチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えるとVRAM周波数(最大周波数)の設定スライダーが表示されます。
高度な制御のスライドスイッチをONにすると設定値が%単位からMHzの物理単位に変わります。SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OCでは定格の2000MHzから最大周波数を2150MHzまで引き上げることが可能です。

電源チューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると電力制限の設定スライダーが表示されます。
電力制限の設定は各GPUの標準GPUコア電力制限に対するパーセンテージのオフセットですが、SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OCでは219Wを基準にして最大で+15%まで電力制限の引き上げが可能です。

ファンチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると、ゼロRPM(セミファンレス機能)の切り替えスイッチ、最大ファン速度の設定スライダーが表示されます。

また高度な制御のスライドスイッチをONにするとファン制御カーブの手動設定が表示されます。Radeon RX 6000シリーズにはGPU温度とジャンクション温度(複数あるGPUダイ上の温度センサーの最大値)の2種類の温度があり、ファン制御カーブはジャンクション温度を参照するようです。
温度とファン速度について5つの頂点を任意に指定してファン速度を制御できます。上述のセミファンレス機能との併用や、セミファンレス機能の無効化も可能です。

新アーキテクチャRDNA2で特に重要な2つの特長
AMD Radeon RX 6000に採用されている新アーキテクチャ「RDNA2」について、様々な特長が公式に発表されていますが、エンドユーザーが特に押さえておくべきポイントはVRAMフルアクセス機能「AMD Smart Access Memory」と、レイトレーシング表現対応(ハードウェアアクセラレーター搭載)の2点です。Infinity Cacheを始め、レビューや解説記事としてRadeon RX 6000シリーズやそのアーキテクチャであるRDNA2について掘り下げられるポイントは非常に多いのですが、実性能と価格に加えて消費者目線で最低限抑えておくべきポイントを挙げるとすればこの2つになると思います。
まず1つ目の大きな特徴は「AMD Smart Access Memory」です。Radeon RX 6000シリーズを同社の次世代CPUであるRyzen 5000シリーズと組み合わせることで使用可能な(AMD公式にサポートされる)ビデオメモリアクセスを改善し性能を向上させる機能です。

従来のプラットフォームでは32bit命令の名残でCPUとグラフィックボードVRAM間では最大でも256MB単位でしかデータのやり取りができませんでした。
AMD Smart Access Memoryでは10GBを超える大容量VRAMに対してCPUからサイズ制限なく一度にフルアクセスが可能になり、なおかつ第3世代Ryzen&X570でAMDがいち早くサポートを始めたPCIE4.0の従来比2倍な高速帯域を用いることで、VRAMアクセスによって生じるボトルネックが解消されます。

ハイエンドGPUではVRAM容量が10GBを超えるのが当たり前になったので、CPU-VRAM間でフルアクセス機能を実現するためにはより高速な帯域(PCIE4.0対応)が必要になります。1年前、第3世代Ryzen&X570など早期にPCIE4.0の普及を目指したのは、 同機能でCPU・MB・GPUのプラットフォーム単位で優位性を示すための布石だった、と考えるといろいろと納得がいきます。(そうでないとPCIE4.0アーリーアダプターな某SSDはIOベンチ以外に魅力がなく、微妙過ぎました…)

AMD公式のベンチマークによると「AMD Smart Access Memory」を使用することで最大10%程度もパフォーマンスが改善するとのこと。

AMD Smart Access Memoryの名前の方が有名ですが、実のところ、これはPCIE規格で策定されている「Re-Size BAR (Base Address Register)」と同等の機能です。【参考資料】
現状でAMDが公式にサポートを公表しているのがRadeon RX 6000シリーズとRyzen 5000シリーズ、およびグラフィックボードをPCIE4.0で接続可能なAMD X570/B550チップセット搭載マザーボードの組み合わせであるというだけで、すでに一部のIntel Z490マザーボードにおいてベータBIOSという形ですが、Re-Size BARを有効にできるBIOSが一部メーカーから配信されています。

AMDと競合するGPUメーカーのNVIDIAも2021年の2月~3月にかけて同社最新GPUであるGeForce RTX 30シリーズ(Ampere世代)においてRe-Size BARのサポートを順次開始していくことが正式に発表されています。
CPUとGPUをコンシューマー向けに展開しているAMDだからこそいち早く、Re-Size BARの土壌としてPCIE4.0を普及させ、次世代GPUのRadeon RX 6000シリーズでサポートさせることができた、こと自体は評価に値すると言って間違いありません。
一方でAMD Smart Access Memory = Re-Size BARなので、「VRAMフルアクセス機能Re-Size BARによる性能向上は”将来的には”AMDオンリープラットフォームに限定されるユニークなアドバンテージではない」、その点は留意しておいてください。

次に2つ目の大きな特徴がレイトレーシング表現への対応です。Radeon RX 6000シリーズが採用するRDNA2アーキテクチャでは一般的にコア数としてカウントされるシェーダーコアをひとまとめにしたCU(Compute Unite)に対して1基のレイトレーシング処理支援ハードウェア「Ray Accelerator」を搭載しています。Ray Acceleratorはレイトレーシング処理においてCPUによる演算よりも10倍も高速とのこと。

余談ですが、以下のような事情もあって当サイトでは”レイトレーシング表現”と呼んでいます。
レイトレーシングというのはそもそもレンダリング手法の1つであって、現在主流なレンダリング手法のラスタライゼーション(ラスタライズ)と、ある種の対になる言葉です。

PCゲームにおいては負荷的な問題で全てをレイトレーシングでレンダリングするのではなく、「ラスタライゼーションをベースにレイトレーシングはアクセント」という形で併用するのが主流です。
またPCゲームにおいてレイトレーシングというとDirectX12がサポートするDXR(DirectX Raytracing)が有名、というか現状でレイトレーシングをサポートするPCゲームはほぼコレですが、Vulkanなどその他のAPIもレイトレーシングを続々とサポートし始めています。

下はNVIDIAによるデモですが、レイトレーシング表現では、照明(エリアライト)や太陽光(グローバルイルミネーション)の影響を厳密に再現し、光の反射やガラス面の透過なども現実に即して忠実に描写されます。レイトレーシングを採用したわかりやすい例としては鏡に映る反射など、視覚(視点から見た)の外にある物体もリアルに描画することができます。



なお、NVIDIA GeForce RTX 30シリーズが対応するDLSSのように超解像技術によって低負荷に4K~8Kの高解像度を実現する機能がAMD Radeon RX 6000シリーズでは実装されていないので、レイトレーシング表現と4K解像度の組み合わせは現時点では難しいようです。
一方で「FidelityFX Super Resolution」と呼ばれる超解像機能を開発中とのことなので将来的にはレイトレーシング表現と4K解像度の組み合わせにも対応が可能になると思います。

SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OCのゲーム性能
「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC 16G GDDR6」の性能を測るべく各種ベンチマークを実行しました。性能比較には「GeForce RTX 3070」、「GeForce RTX 2080 Ti Founders Edition」、「Radeon VII」、「Radeon RX 5700 XT」を使用しています。「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」にはBIOSスイッチで2種類のモードを切り替えられますが、今回の検証ではPerformanceモードで測定しました。またRadeon Settingから選択可能なソフトウェア上の動作モードについては標準モードのまま変更していません。
「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkで現在主流なDirectX11のベンチマーク「FireStrike」による比較になります。
![]() | |||
FireStrike | Extreme | Ultra | |
RX 6800 SAPPHIRE PULSE |
43909 | 21785 | 10688 |
RTX 3070 | 33680 | 16625 | 8470 |
RTX 2080 Ti FE |
34955 | 16797 | 8179 |
Radeon VII |
28115 | 13455 | 6863 |
RX 5700 XT | 27300 | 12947 | 6553 |
「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkのDirectX12ベンチマーク「TimeSpy」、およびレイトレーシング対応ベンチマーク「Port Royal」による性能比較となります。
![]() |
|||
TimeSpy | Extreme | Port Royal |
|
RX 6800 SAPPHIRE PULSE |
15273 | 7275 | 7701 |
RTX 3070 | 13644 | 6746 | 8141 |
RTX 2080 Ti FE |
14309 | 6813 | 8839 |
Radeon VII |
8974 | 4364 | - |
RX 5700 XT | 9362 | 4189 | - |
「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」を含めた各グラフィックボードについて、近年普及しつつあるHTC VIVEやOculus RiftなどVR HMDを使用したVRゲームに関する性能を測定する最新ベンチマーク「VRMark」による性能比較となります。
![]() | |||
Orange Room |
Cyan Room |
Blue Room |
|
RX 6800 SAPPHIRE PULSE |
14638 | 16606 | 4570 |
RTX 3070 | 16335 | 13002 | 4086 |
RTX 2080 Ti FE |
15938 | 12955 | 4553 |
Radeon VII |
14256 | 10462 | 2705 |
RX 5700 XT |
13796 | 9289 | 2546 |
続いて2020年最新のPCゲームを実際に用いたベンチマークになります。同一のグラフィック設定で同一のシーンについてフルHD(1920×1080)とWQHD(2560×1440)と4K(3840×2160)の3種類の解像度で平均FPSを比較しました。
ベンチマーク測定を行ったゲームタイトルは、Anthem(ウルトラ設定プリセット)、Assassin's Creed Odyssey(最高設定プリセット)、Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12)、CONTROL(高設定プリセット, DirectX12, AMD製GPUはDirectX11)、DEATH STRANDING(最高設定プリセット, TAA)、The Division 2(ウルトラ設定プリセット, DirectX11)、Final Fantasy XV(最高設定プリセット, NVIDIA GameWorksはVXAOを除き有効)、Gears 5(最高設定プリセット)、Ghost Recon Breakpoint(ウルトラ設定プリセット)、Horizon Zero Dawn(最高画質設定プリセット)、Marvel's Avengers(最高設定プリセット, TAA)、Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット, DirectX12)、MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット, DirectX12)、Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット, TAA, DirectX12)、Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)以上の15タイトルです。

Anthem(ウルトラ設定プリセット)に関する「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。

Assassin's Creed Odyssey(最高設定プリセット)に関する「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。

Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。

CONTROL(高設定プリセット, DirectX12, AMD製GPUはDirectX11)に関する「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。

DEATH STRANDING(最高設定プリセット, TAA)に関する「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。

The Division 2(ウルトラ設定プリセット, DirectX11)に関する「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。

Final Fantasy XV(最高設定プリセット、NVIDIA GameWorksはVXAOを除き有効)に関する「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。

Gears 5(最高設定プリセット)に関する「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。

Ghost Recon Breakpoint(ウルトラ設定プリセット)に関する「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。

Horizon Zero Dawn(最高設定プリセット)に関する「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。

Marvel's Avengers(最高画質設定プリセット, TAA)に関する「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。

Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット, DirectX12)に関する「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。

MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。

Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット, TAA, DirectX12)に関する「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。

Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)に関する「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。

SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OCなど5種類のGPUについて実ゲーム性能の比率の平均を出してみたところ、SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OCは、アッパーミドル向けではあるものの前世代最上位だったRadeon RX 5700 XTと比較して平均で60%以上、ベストケースでは80%を超える性能向上を実現しており、AMDが”4Kゲーミング入門に最適(Upgrade 4K Gaming)”と謳うのも納得の高性能です。
約2年前、最後に発売されたAMDのハイエンドGPUであるRadeon VIIと比較しても4Kゲーミング性能で50%程度の性能向上を実現しており、またVegaからRDNAを飛ばしてRDAN2へと最新アーキテクチャにアップグレードされているためフルHDのハイフレームレートなPCゲーミングでも順当に40%以上の性能向上を果たしているところも注目ポイントです。

一方で「Radeon RX 6800」のグラフィック性能をNVIDIA製GPUと比較すると、最新ミドルハイクラスのGeForce RTX 3070や前世代最上位のGeForce RTX 2080 Tiを平均で10%程度上回るという結果でした。
発売前にAMDから公表された10種の実ゲームによる公式ベンチマークでは、RX 6800はRTX 2080 Ti(≒RTX 3070)と比較してWQHD解像度で20%程度、4K解像度で15%程度も上回るとのことでしたが、Smart Access Memoryが有効であることを加味しても、ベストケースに近い性能が出るタイトルを集めたのだと思います。
NVIDIAでも公式ベンチに比べて10%弱の差が出るのは通例なので(近年では対AMDではなく同社の旧世代との比較ですが)、特に公式ベンチを批判する意図はなく、管理人としてはそういった事情も織り込み済みで妥当な結果が出たと思ったので、そういう意味での補足です。
個別に見ていくとRTX 3070やRTX 2080 Tiを比較対象としたRX 6800の性能スケーリングはやや複雑、ゲームタイトルに依るところが大きく、ほぼ同等のものもあれば(さすがに大きく下回ることはめったにない)、+20%以上も上回るタイトルもあります。
各サイトレビューにおいてベンチマーク比較で抜粋されるタイトルによってRX 6800の性能に対する印象は大きく変わるので注意が必要なところですが、『RX 6800はRTX 3070よりも概ね10%程度高性能』というのがざっくりとした管理人の感想です。
なお比較対象の選定についても補足しておくと、RX 6800 XT vs RTX 3080、RX 6900 XT vs RTX 3090という図式上、あえて選ぶならという注意付きで、RX 6800の競合モデルをRTX 3070にするしかありませんでした。
旧世代になったRTX 2080 Tiが踏み台になるのは仕方ないとして、RTX 3070については希望小売価格が499ドルでRX 6800よりも15%程度安く、またグラフィックボード消費電力の仕様値も220Wと低く設定されています。10~20%程度の性能差は価格相応という評価が適切、RX 6800もRTX 3070もピッタリとぶつかる競合が不在というのが正直な感想です。
(価格が小刻みになり過ぎて面倒なだけなので、AMDの対RTX 3070製品やNVIDIAの対RX 6800製品の登場は管理人的には嬉しくないというのもまた正直な感想です。)
性能スケーリングが複雑になる原因について、ゲームタイトルがAMD製GPUとNVIDIA製GPUに対してどれくらい最適化されているかというのも影響しているのですが、加えて、RX 6800ではフルHD解像度やWQHD解像度に対して4K解像度での性能スケーリングが鈍化する傾向があるゲームタイトルの存在を見ると、RDNA2アーキテクチャの高性能を支える大容量キャッシュInfinity Cacheという構造が大きく影響しているように思います。
公式スライドの示す通り、キャッシュ容量128MB辺りでフルHD・WQHDにおけるヒット率は頭打ちになり始めますが4K解像度ではまだリニアに上昇しているようなので、シンプルに高速なVRAM帯域を実現するNVIDIAのアプローチに対して、キャッシュを組み合わせるAMDのアプローチはまだ万能というわけではなさそうです。

ここまでは一般的なPCゲーミングシーンにおける「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」の性能を比較検証してきましたが、ここからはRadeon RX 6000シリーズの大きな特徴、AMD製GPUではRDNA2アーキテクチャで初めてサポートされたレイトレーシング表現の性能をチェックしていきます。(レイトレーシング表現の性能比較ベンチマークについてはRX 6800 XTリファレンスモデルのデータを引用しています)

いち早くレイトレーシング表現をサポートした競合NVIDIAの前世代最上位GeForce RTX 2080 Tiや、2021年最新ハイエンドGPUのGeForce RTX 3080とGeForce RTX 3070を比較対象にして、「Radeon RX 6800」のレイトレーシング性能を検証しました。
解像度は4K(3840×2160)とし、検証するゲームはBattlefield V (最高設定プリセット、RTX:ON)、Control(高設定プリセット、RTX:High)、Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット、RTX:Ultra)、Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット、RTX:Max)の4種類です。
なおドライバ2020.12.1においてRX 6800ではMetro Exodusでレイトレーシング表現を有効にするとほぼ確実にロード後にクラッシュし、上位モデルのRX 6800 XTでも何割かの確率でクラッシュしました。
まず純粋な性能として「Radeon RX 6800」はレイトレーシング表現を有効にすると4K解像度では30FPSをギリギリキープできるかどうか、WQHDで何とか60FPSに達するという具合でした。NVIDIA製GPUでもそうですが、レイトレーシング表現を4Kネイティブ解像度で実行するのは現在のGPU性能ではやはり難しく、DLSSのような超解像技術がAMD製GPUにも求められます。
上で検証した一般的なゲーミングシーンにおいてRadeon RX 6800はGeForce RTX 2080 TiやGeForce RTX 3070を10%程度上回る性能を発揮したのですが、レイトレーシング表現を有効にするとRX 6800はRTX 3070やRTX 2080 Tiと比較して20~30%劣る結果となりました。レイトレーシング表現を支援する専用ハードウェアの性能差が如実に現れています。

GeForce RTX 3070の場合はDLSSを併用すればレイトレーシング表現を有効にしてもWQHD解像度で80FPS程度をキープできることも考えると(BFVはWQHD解像度でのDLSSに非対応)、PCゲーミングにおけるレイトレーシング表現の性能に関してRX 6800がRTX 3070の後塵を拝しているのは否定できません。

ただAMDにとってRDNA2アーキテクチャのレイトレーシング表現サポートは、第1に次世代コンソールゲーム機とそのソフトウェアデベロッパー、次に3Dレンダリングなどのクリエイターを主要なターゲットとしており、PCゲーミングについてはオマケ程度の意味合いが強い気がします。
PS5やXbox Series Xの場合は、各ゲーム機固有のハードウェアクセラレーター性能によって実現できる範囲内でレイトレーシング表現を実行するだけなので競争力は求められず、近年のコンソールゲームはUnityやUnreal Engineといったゲームエンジンを使用して汎用PC環境で作成されています。
コンソールゲーム機なら実動環境を1,2種類に特定でき(デバッグが容易になる)、また実動環境に近似したハードウェアでゲーム開発ができるので、デベロッパーがレイトレーシング表現について学習しやすくなったことに一番の意義があるのだと思います。RTX 20シリーズの登場から2年たってもメジャーなレイトレーシング表現のサポートタイトルが10にも満たないのを見るとなおさら、そう感じます。

SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OCの温度・消費電力・ファンノイズ
「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC 16G GDDR6」の負荷時のGPU温度やファンノイズや消費電力についてチェックしていきます。「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」にはRadeon Settingから選択が可能なコアクロックや電力制限が変化する複数のモードが用意されていますが、標準モードで測定しました。
「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」のGPU温度とファンノイズの検証負荷としては約20分間に渡たり連続してGPUに100%近い負荷をかける3DMark TimeSpy Stress Testを使用しています。

「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」はファクトリーOCが施されているPerformanceモードにおいて、テスト終盤におけるGPU温度は最大76度、ファン回転数は最大1000RPM以下に収まっています。
静音性重視なSilentモードではGPU動作設定はリファレンス仕様になるものの、同時にファン回転数が800RPM前後に下がるのでCPU温度が若干上がりますが、それでもTGP250Wの発熱に対して80度以下に収まっており、「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6800 XT」に搭載されたGPUクーラーの性能をはっきりと確認できます。

GPUに搭載された複数の温度センサーのうち、最大温度を示すジャンクション温度の推移は下のようになりました。Radeon RX 6000シリーズはジャンクション温度をファン制御のソース温度とし、負荷がかかるといったん上限速度まで上昇、徐々に収束していく方式が採用されていることが多いですが、「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」でも一度、1200RPM程度に達してから、ジャンクション温度の変動に応じて800~1000RPMの範囲内でファン速度が緩やかに波打ちます。

また「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」はアイドル時にファンが停止するセミファンレス機能に対応しており、ジャンクション温度を制御ソースとして始動閾値は70度前後、停止閾値は55度前後でヒステリシスも採用されています。製品によっては回転数が上下してふらつくことの多い始動や停止の直前も、閾値を跨いだ瞬間にピタッと切り替わります。
「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」ではGDDR6メモリやVRM電源回路の温度もモニタリングが可能であり、ストレステスト中の推移は下のようになりました。
「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」は超静音性重視なファンチューニングでファン速度が非常に低速なので、GDDR6メモリやVRM電源回路の温度も90度前後とかなり高くなります。温度が気になる人はRadeon設定のファン制御から煩く感じない範囲内でファン速度を引き上げてみてください。


一応、RX 6800 リファレンスモデルと比較しておくと、「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」がファン速度1000RPM以下の超静音重視チューニング、RX 6800 リファレンスモデルは冷却性能重視チューニングとなっているため、ファクトリーOCの有無を差し引いて考えたとしても、標準設定ではリファレンスモデルの方がGPUコア・VRAMチップ・VRM電源温度が低くなっています。
ファンノイズ的には十分過ぎるくらい余力があるので、各種温度が気になる人はファン速度を上げてみてください。「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」は冷却ファン&ヒートシンクの静音性も優秀なので1500~1600RPMくらいまでファン速度を引き上げてもファンノイズが煩く感じることはないはずです。

GPUコアクロックについて、「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」はゲームクロック1950MHz、最大ブーストクロック2170MHzに設定されていますが、負荷テスト中の実動平均は2200MHzでした。

RX 6800リファレンスモデルと比較してPerformanceモードでもほぼ同等、Silentモードではコアクロックが低くなっている理由については、GPUクーラーが静音性重視なためジャンクション温度によってコアクロックの制限が働いているか、V-FカーブのGPU個体差が原因だと思います。
実はAMD、NVIDIAともに最新GPUでは実動コアクロックはGPUコア個体毎に異なる内部設定のV-Fカーブが支配的になっています。ファクトリーOCが施されたオリファンモデルの公式仕様値として公表されているブーストクロックはOC耐性選別の1つの指標にはなると思いますが、実動コアクロックの優劣においてあまりあてになりません。
また実用条件に近い冷却性能の検証として、実際にPCケースへ「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」を組み込み、Time Spy Extreme グラフィックテスト1を1時間に渡ってループさせてGPU温度やファン回転数がどうなるかを確認してみました。

検証機材のPCケースには「Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t」を使用しています。CPUクーラーは120サイズ簡易水冷でラジエーターを天面前方に設置、またPCケースのフロントに吸気ファンとして3基とリアに排気ファンとして1基の140mm角ケースファンをそれぞれ設置し、ファン回転数は1000RPMに固定しています。

PCケースのエアフローファンには空冷ヒートシンク、水冷ラジエーター、PCケースエアフローの全ての用途で一般的な140mmサイズファンを上回る性能を発揮する「Thermaltake TOUGHFAN 14」を使用しています。140mmサイズファン選びに迷ったらこれを買っておけば問題ない、高性能かつ高静音性なファンです。
・「Thermaltake TOUGHFAN 14」をレビュー。最強140mmファンの登場か!?

PCケースに入れた状態で長時間負荷をかけると「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」のGPU温度は最大77度、ジャンクション温度は最大90度に達し、ファン回転数は1000RPM以下に収まりってベンチ板測定時と同等でした。
1000RPMという低速度を見ての通りファンチューニングは超静音重視になっているので、GPU温度など各種温度は高いですが、PCケース組み込み時でもファンノイズは非常に静かで、TGP250WのハイエンドGPUにフル負荷をかけているとは思えない非常に優れた静音性でした。

バリアーリング搭載ファンやヒートシンクの放熱フィン形状が上手く設計されているため、「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」は1500~1600RPMくらいまでファン速度を引き上げてもPCケース内からファンノイズを煩く感じないので、各自でファン速度を調整してみるのもオススメです。
加えて1時間のストレステスト終盤にスマホで使用できるサーモグラフィカメラ「FLIR ONE Pro」(レビュー)を使用してゲーム負荷時のグラフィックボード上の各所の温度をチェックしました。
「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」は、バックプレート表面や、背面や側面の隙間から確認できるPCB基板上のVRM電源回路やPCIE補助電源コネクタの付近の温度がホットスポットが最大で90度前後に達していました。高温ではありますが破損に繋がるような心配はない温度に収まっていると思います。
GPUクーラー自体は本体ヒートシンクでVRM電源回路を冷やす理想的な設計となっており、単純に超静音重視で低速なファン速度がVRM電源回路やVRAMチップが高温になっている原因なので、周辺回路の温度が気になる人は煩く感じない範囲内でファン速度を引き上げてみてください。




「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」を含めていくつかのグラフィックボードについてサウンドレベルメーターを利用してゲーム負荷時のノイズレベルを測定・比較しました。
検証機材はベンチ台の上に平置きにしているので、サウンドレベルメーターをスタンドで垂直上方向に50cm程度離して騒音値を測定しています。

この測定方法において電源OFF時の騒音値は30dB未満です。目安として騒音値が35dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになりますが、35~38dB以下であればPCケースに入れてしまえばファンノイズが気になることはそうそうないと思います。40dB前後になるとベンチ台上で煩く感じ始め、45dBを超えるとヘッドホンをしていてもはっきり聞き取れるくらいになります。
A特性で測定しているのである程度は騒音値にも反映されていますが、同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質(細かい乱高下の有無や軸ブレ)にもよるので注意してください。
ノイズレベルの測定結果は次のようになっています。
「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」のファンノイズは1000RPM以下というファン回転数(テストベンチ上でもPCケース内でも)の通りノイズレベルは32dB以下、少し離れただけでセミファンレス状態とほぼ同等でファン動作を耳で察知するのが難しいくらいという、抜群の静音性を発揮しています。
「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」に採用されているバリアーリング付きファンはノイズレベルだけでなく体感的にもファンノイズを煩く感じにくい特長があり、ノイズレベルの通りPCケースに入れてしまえばまず煩く感じることのない程度のファンノイズです。
各種温度検証でも触れたように超静音重視なファンチューニングのためVRAMチップやVRM電源回路といった周辺回路が高温になりますが、ファン速度を1500~1600RPMに引き上げても十分過ぎるくらいに静かなので、各自でファンノイズが気にならない範囲内でファン速度を調整するのもオススメです。

SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OCの消費電力と瞬間的な最大電源負荷を測定しました。
測定負荷には上で行った温度検証と同様に3DMark TimeSpy ストレステストを使用しています。テスト全体から1秒間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので、電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。
消費電力の測定は電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの入力ではなく変換ロスを差し引いたシステムへの出力電力をチェックしています。また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。
この方法であれば、CPU(後述のiGPUも)に負荷をかけても、CPUによる消費電力の変動はメイン電源ユニットCorsair HX 1200iの測定値には影響しません。しかしながら、測定値にはまだATX24PIN経由で供給されるマザーボードやDDR4メモリの電力が含まれるので、iGPUを使用した時の3DMark TimeSpy ストレステスト中の消費電力と最大電源負荷を同様に測定し、各種グラフィックボード使用時と差分を取る形でグラフィックボード単体の消費電力と最大電源負荷を算出します。

「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」の消費電力は264W、最大瞬間負荷は338Wでした。ファクトリーOCによってRX 6800 XTのリファレンス仕様よりも20W程度高い消費電力で動作します。
またリファレス仕様と同じ電力設定で動作するSilentモードでは消費電力は241Wとなっています。RX 6800は公式仕様でグラフィックボード全体の消費電力の指標値が250Wと公表されており、概ね仕様値通りの消費電力になっていると思います。
7nmプロセス改良版とはいえ2世代前のVegaアーキテクチャを採用するRadeon VIIと比較して、50%以上も上回るグラフィック性能を実現しながら、RX 6800は同等の消費電力に収まっており、最新RDNA2アーキテクチャのワットパフォーマンスの高さを再認識できる結果です。

SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC レビューまとめ
最後に「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC 16G GDDR6(型番:SAP-PULSERX680016GB/11305-02-20G)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- フルHD/240HzからWQHD/144Hz+、さらに4K/60FPSまで幅広いPCゲーミングにマッチ
- Radeon VIIを実ゲームで50%も上回るグラフィック性能
- 競合NVIDIAの前世代最上位モデルRTX 2080 Tiと比較して10%程度も高速
- 579ドルからなので奮発すれば手を出せるハイエンドGPU
- 黒一色なカラーリングで装飾も最低限、シンプルかつスマートな外観
- ファクトリーOCでTGP270Wの発熱を騒音値33dB以下で冷やしきる抜群の静音性
- バリアーリングファンは1500~1600RPM程度の高速でも静か
- 全長303mmと非常に長いのでPCケースとの干渉に注意
- PCIEブラケットよりも20mm背が高いのでサイドパネルとの干渉に注意
- 2021年1月現在、入手性が極めて悪い(NVIDIA RTX 30と比較してもなお悪い)
- 希望小売価格に反して、オリファンモデル同士ではRTX 3080並みに高価
2年越し1世代飛ばしで登場した待望のAMD次世代ハイエンドGPU「Radeon RX 6800」は、同社から最後にリリースされた前ハイエンドGPUのRadeon VIIを50%以上も上回り、さらに長らく最速の座を独占していたNVIDIAの前世代最上位GeForce RTX 2080 Tiをも上回るグラフィック性能を実現しており、AMDが”4Kゲーミング入門に最適(Upgrade 4K Gaming)”と謳うのも納得です。
4K/60FPSのラグジュアリーな超高画質、次世代スタンダードなWQHD/144Hz+、フルHD/240FPSのスーパーハイフレームレートなど幅広いPCゲーマー層にマッチし、579ドルからという手ごろな価格も相まって旧世代のハイエンドGPUユーザーが狙うアップグレード対象としては高コストパフォーマンスな製品です。

NVIDIA製ハイエンドGPUの対抗馬として高い性能を発揮するのは上述の通りですが、入手性が悪いと批判の強いRTX 30シリーズに輪をかけて、RX 6000シリーズはさらに入手性が悪く、また希望小売価格に反してオリファンモデル同士で比較するとRX 6000シリーズの方が高価になってしまうというのはネックです。価格については供給不足の影響もあるので、早期に供給の安定と性能に見合った価格への是正を期待したいところです。
Radeon RX 6800は2020年現在、手ごろな価格で普及しつつあるWQHD/144Hz+のIPS液晶ゲーミングモニタと組み合わせて高画質・ハイフレームレートなPCゲーミング入門に最適なグラフィックボードです。
WQHD/144HzのIPS液晶ゲーミングモニタは色々と販売されていますが、リモコン操作&USB Type-C対応でマルチメディアに最適な「BenQ EX2780Q」、ELMB Syncやスナイパーなど独自のゲーミング機能が豊富な「ASUS TUF Gaming VG27AQ」、同スペック製品の中でも特に高発色・高応答速度な「LG 27GL850-B」は当サイトでもレビューを公開していてオススメなモデルです。
・WQHD解像度/144Hz+ゲーミングモニタのレビュー記事一覧へ

その他にもバトルロイヤル系ゲームに最適な240Hzオーバーの超高速ゲーミングモニタと組み合わせてガチで勝利を狙うゲーマーにもフルHDで高FPSを稼げるRadeon RX 6800 XTはオススメです。
・240Hz+の超ハイリフレッシュレートなゲーミングモニタのレビュー記事一覧へ

「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」については、ファクトリーOCによって引き上げられたTGP270W相当の発熱に対して、当サイトの測定環境においてノイズレベル32dB以下という抜群の冷却性能と静音性を発揮しました。
「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」に採用されているバリアーリング付きファンはファン速度に対する静音性脳が優秀で、ファン速度を1500~1600RPMに引き上げても十分過ぎるくらいに静かです。各種温度検証でも触れたように超静音重視なファンチューニングのためVRAMチップやVRM電源回路といった周辺回路が高温になりますが、温度が気になるということであれば各自でファンノイズが気にならない範囲内でファン速度を調整するのもオススメです。
以上、「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC」のレビューでした。

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3スロット占有3連ファンGPUクーラーを搭載し、ファクトリーOCも施されたスタンダードモデル「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 6800 OC 16G GDDR6」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) January 30, 2021
Radeon VIIやRTX 3070やRTX 2080 Tiと実ゲーム性能をベンチマークで徹底比較https://t.co/jhf2jASn6z pic.twitter.com/lp903vzFL4
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