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国内外のプロオーバークロッカーから熱伝導グリスブランドとして高い評価を得ているThermal Grizzlyから新たにリリースされた、高度な先端技術で新開発された炭素繊維によって高い熱伝導率と密着性に優れる柔軟な特性を兼ね備えたサーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」のサンプルを国内正規代理店の親和産業よりご提供いただけたのでレビューしていきます。
「Thermal Grizzly Carbonaut」がCore i9 9900Kの冷却において実用に足るのか、Thermal Grizzly製ハイエンドグリス「Kryonaut」と比較して冷却性能を徹底検証します。
代理店公式ページ:https://www.shinwa-sangyo.co.jp/thermal-grizzly/tg-ca-32-32-02-r
Thermal Grizzly Carbonautについて
最初に「Thermal Grizzly Carbonaut」の概要や製品の実物について簡単に紹介します。「Thermal Grizzly Carbonaut」はKryonautなど同社製グリスと同様に黒色のビニール袋で包装されていました。
ビニール袋の上側を切ってジップロックを開くと、中には「Thermal Grizzly Carbonaut」のサーマルシート本体が収められた紙製パッケージと、簡易マニュアル&登録シートが封入されていました。
「Thermal Grizzly Carbonaut」は高度な先端技術で新開発された炭素繊維によって、高い熱伝導率と密着性に優れる柔軟な特性を兼ね備えた、高性能なサーマルシートです。
独自の炭素繊維構造により62.5W/m・kの非常に高い熱伝導率を生み出し、熱伝導グリスの代替品として優れた能力を発揮します。加えて同素材は柔軟性があり小さな圧力で設置面の凸凹に密着し、炭素繊維の持つ優れた熱伝導性能を十分に活かすことができます。
シリコングリスと違って、ドライアウト(硬化不良)をおこさないのて長期間に渡って安定した冷却性能を維持でき、少なくとも数回着脱した程度では消耗せず、再利用が可能なため経済的です。
「Thermal Grizzly Carbonaut」のサーマルシート本体は、紙製パッケージでしっかりと保護されており、輸送・保管中に折り曲がったり、千切れたりする心配はありません。
封印シールやホッチキスでしっかりと封印されたパッケージを開くと、紙製パッケージの中央に安置された「Thermal Grizzly Carbonaut」のサーマルシート本体が現れます。
「Thermal Grizzly Carbonaut」は厚み0.2mmの非常に薄いシート状です。
今回の検証で使用する「Thermal Grizzly Carbonaut TG-CA-32-32-02-R」は縦32mm×横32mmサイズで、Intel LGA115XソケットCPUのヒートスプレッダのサイズ合わせてカットされており、同モデルは加工せずにそのまま使用できます。「Thermal Grizzly Carbonaut」は導電性があるので端子と接触しないように注意する必要がありますが、IHSピッタリのサイズにカットされているので基本的にショートの心配はありません。
Thermal Grizzly Carbonautの検証機材
「Thermal Grizzly Carbonaut」の冷却性能の検証に使用する機材について紹介しておきます。今回はThermal Grizzly CarbonautがCore i9 9900Kを冷やせるかどうかを検証するので、Z390マザーボード「ASUS WS Z390 PRO」などを含む検証機材を使用しました。テストベンチ機の詳細構成については下記テーブルの通りです。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 9900K 8コア16スレッド (レビュー) |
マザーボード |
ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 3600MHz, CL16-16-16-36-CR2 |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー) |
ビデオカード | MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
Core i9 9900Kは手動OCすると発熱がかなり大きくなるので大型簡易水冷CPUクーラーが推奨されますが、360サイズや240サイズなど120mmファンを複数搭載できるマルチファンラジエーターの簡易水冷CPUクーラーを使用するのであれば、「Noctua NF-A12x25 PWM」への換装もおすすめです。
「Noctua NF-A12x25 PWM」は、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファンとなっており、1基あたり3500円ほどと高価ですが、標準ファンよりも静音性と冷却性能を向上させることができます。
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Intel Core-XやAMD Ryzen TRのようなハイエンドデスクトップ環境はもちろん、メインストリーム向けでもハイパフォーマンスな環境を目指すのであれば、システムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
今回、「Thermal Grizzly Carbonaut」の冷却性能を確認するための比較対象として、当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を使用しました。
使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
Thermal Grizzly Carbonautの冷却性能
さて「Thermal Grizzly Carbonaut」の冷却性能の検証結果をチェックしていきます。今回、「Thermal Grizzly Carbonaut」の冷却性能を検証するために、Core i9 9900Kの同じCPU個体についてサーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」とサーマルグリス「Thermal Grizzly Kryonaut」の2種類で負荷テストを行いCPU温度を比較しました。
CPU温度は環境温度にも影響されるため測定時は室温(ベンチ機付近の温度)が温度計で20度程度となるように注意しました。CPUクーラーには「Fractal Design Celsius S36」&「Noctua NF-A12x25 PWM x3」を使用していますがファン回転数は1200RPMに固定しています。
冷却性能を比較するための負荷テストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間7分、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)でAviutl+x264を使って動画エンコードを行いました。エンコード時間はCore i9 9900Kの場合20分ほどなので同じ動画のエンコードを2つ並列して1周実行しています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
まずはCore i9 9900Kの電力制限を解除したプチOC的な動作設定で検証を行いました。Core i9 9900Kの具体的な動作設定は「短期間/長期間電力制限:200W」としました。メモリのOC設定は「メモリ周波数3600MHz」、「メモリタイミング16-16-16-36-CR2」、「メモリ電圧:1.350V」としています。
Core i9 9900Kの電力制限解除時について「Thermal Grizzly Carbonaut」と「Thermal Grizzly Kryonaut」で、負荷テスト中のCPU温度の推移を比較したグラフは次のようになっています。
続いてCore i9 9900Kを全コア5.0GHzにOCした時について検証を行いました。「Core i9 9900K」の具体的なOC設定については「CPUコアクロック全コア:5.0GHz」、「CPUキャッシュクロック:4.7GHz」、「コア電圧:1.270V固定」、「ロードラインキャリブレーション:Level 7」、「SVID:Disable」と設定しました。メモリのOC設定は「メモリ周波数:3600MHz」、「メモリタイミング:16-16-16-36-CR2」、「メモリ電圧:1.350V」です。
Core i9 9900Kの全コア5.0GHz OC時について「Thermal Grizzly Carbonaut」と「Thermal Grizzly Kryonaut」で、負荷テスト中のCPU温度の推移を比較したグラフは次のようになっています。
Core i9 9900Kにおいて「Thermal Grizzly Carbonaut」の冷却性能をハイエンドサーマルグリスKryonautと比較した結果をまとめると次のグラフのようになりました。
CPU消費電力が150W前後に達する電力制限解除のプチOC設定で1~2度程度、CPU消費電力が200Wを超過する全コア5.0GHz OCで2~3度程度の温度差でKryonautには及ばなかったものの、「Thermal Grizzly Carbonaut」はCore i9 9900Kの常用に十分以上に足るパフォーマンスを発揮しています。
CPUやCPUクーラー交換時の拭き取りや塗りなおしが不要であり、数年スパンの長期使用においても性能低下の心配が基本的になく、再利用も可能といったメリットもあるので、とにかく冷却性能を追求するということでなければ、サーマルグリスの代用品として「Thermal Grizzly Carbonaut」はかなり有用な製品だと思います。
CarbonautとKryonaut 性能比較 早見表 | ||
Carbonaut | Kryonaut | |
冷却性能 | KryonautのほうがCarbonautよりも 2~5度程度、冷却性能が高い |
|
長期使用 (数年スパン) |
基本的に劣化なし | ドライアウト(硬化不良) で性能低下の可能性あり |
再利用 | 少なくとも数回の使用で 消耗することはない |
毎回、使用済みグリスの 拭き取りと塗りなおしが必要 |
以上、『Thermal Grizzly CarbonautはCore i9 9900Kを冷やせるか!?』でした。
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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