12分割アドレッサブルLEDイルミネーションを搭載するハイエンドゲーマー向けDDR5メモリキット FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGBシリーズから、Intel XMP3.0による8400MT/sのメモリOCに対応する24GB×2枚組み=48GBのメモリキット「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB(型番:KF584CU40RSAK2-48)」をレビューします。
【機材協力:Kingston】
24GB×2 / 8400MHz / CL40
Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGBの外観
最初に「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」の外観をチェックします。
「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」は化粧箱ではないものの、下位モデル Beastと違って単純なブリスターパックではなく、製品イラスト等が描かれた紙製パッケージで梱包されています。
紙製パッケージ表面のプリントは通常のUDIMM DDR5メモリ採用モデルと同じですが、「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」の場合、背面デザインが微妙に違って、CUDIMMであることが明記されています。
今回レビューする型番:KF584CU40RSAK2-48は24GB×2枚組み48GB容量のメモリキットなので、ブリスターパックに2枚のメモリが収められています。

「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」の外観についてチェックしていきます。
「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」は艶のある黒色アルミニウム製ヒートシンク上に、シルバーのヘアライン仕上げアルミニウムプレートが装着されています。
「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」を真上から見るとLEDイルミネーションの発光を拡散する半透明ディフューザーがあり、その中央左寄りにはFURYのブランドロゴが描かれています。
側面はPCゲーマーを意識した凝ったデザインですが、PC組み込み後にメモリの顔になる上側は万人受けを狙えるシンプルなデザインです。

スタンダードモデルFURY Beast DDR5はヒートシンク搭載ながら全高35mmのロープロファイル設計で大型空冷CPUクーラーとも高い互換性を備えた製品でしたが、ハイエンドかつLED搭載の「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」は全高44mmでヒートシンク搭載メモリとしては少し大きめの高さです。
ちなみにLEDイルミネーション非搭載のFURY Renegade DDR5無印は全高39mmとなります。

ヒートシンクなしのDDR5メモリと比べると「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」の全高は約+12~13mmでした。

「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」はハイエンドモデルだけあって、スタンダードモデルのBeastよりも凝ったヒートシンクを搭載しています。

しかしながら、DDR4時代のRenegadeがアルミニウム塊な重厚ヒートシンクを採用していたのに対して、「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」はBeastと同じく薄いアルミニウム板なヒートシンクです。メモリヒートシンクは冷却面で少し物足りなさを感じます。

「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」を実際にマザーボードメモリスロットに装着するとこんな感じになります。
DDR5メモリの最新規格 CUDIMMを採用
「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」で今回レビューするモデル(型番:KF584CU40RSAK2-48)はDDR5メモリの最新規格 CUDIMMのメモリモジュールが採用されています。
ヒートシンクの形状など見た目は従来のUDIMM採用モデルと全く同じですが、隙間から基板を見ると水色のサーマルパッドで冷却されている細長いチップ、Clocked Driverを確認できます。

CUDIMMはメモリ外形や金属端子など基本仕様は従来のUDIMMと全く同じですが、クロック信号を補正するClockedDriverが追加されており、高速動作の安定性を向上させた新規格です。
1.100Vの低電圧でも6400MT/sの高速メモリ周波数が安定し、JEDEC準拠のスペックを満たすだけでなく、従来のUDIMMよりも高クロック動作の安定性を増しており、CUDIMMの選別品は8000MT/s~9000MT/s以上のメモリOCにも対応します。

LEDイルミネーションについて
「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」のLEDイルミネーションをチェックします。
「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」のメモリモジュール上に実装されたLEDイルミネーションは12個のアドレスに分割されており、個別にライティング制御が可能なアドレッサブルLEDイルミネーションです。

「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」はソフトウェア制御を行わなくても、アドレッサブルな発光パターンでLEDイルミネーションが点灯します。標準発光パターンではCPUソケットを左、メモリスロットを右として、各メモリで下から上に7色に変化していきます。
赤外線機能でライティングが自動同期
Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGBは「赤外線同期テクノロジー(Infrared Sync Technology)」という独自機能によって、ソフトウェア制御がない状態で時間が経過しても、全てのメモリモジュールの発光タイミングが綺麗に一致します。
他社製品では標準のアドレッサブルな発光パターンは時間の経過とともに各メモリモジュール間で色の遷移のタイミングがズレてくるのですが、Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGBならソフトウェア制御なしでも各メモリモジュールが同期した綺麗なライティングが可能です。

「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」の赤外線通信素子はメモリ端子の切り込み付近に実装されています。隣り合うメモリ同士でここを遮ってしまうとライティングが同期しなくなるので注意してください。

純正ソフトやMB機能でライティング制御
「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」にはLEDイルミネーションのライティング制御のため純正ソフトウェアのKingston FURY CTRLが配布されています。

加えて、ASRock Polychrome RGB Sync、ASUS AURA Sync、GIGABYTE RGB Fusion、MSI Mystic Lightなど主要4社のマザーボードで使用可能なライティング制御機能とも互換性があります。

「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」はKingston FURY CTRLを使用することでレインボーやスペクトルのようなアドレッサブルRGBの発光パターンに加えて、メモリ上に実装された12分割アドレスに対して個別に発光カラーを適用することもできます。
Kingston FURY CTRLから行った任意のライティング設定はメモリモジュール側には保存されません。システムを再起動すると上で紹介した標準の発光パターンになります。アプリを常駐させておく必要はありませんが、再起動後にライティング設定を適用するにはアプリを一度起動する必要があります。
検証機材、メモリOCの基本
「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」の定格動作やXMP/手動設定を使用したオーバークロックの検証を行う前に、検証機材の紹介と、メモリOCの基本・手順についての説明をしておきます。
テストベンチ機の詳細
「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」の検証環境は次のテーブルの通りです。
テストベンチ機の構成 | ||
---|---|---|
CPU | Intel Core Ultra 9 285K | |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 | レビュー |
Noctua NF-A12x25 PWM | レビュー | |
マザーボード | ASUS ROG MAXIMUS Z890 HERO | レビュー |
ASRock Z890 Nova WiFi | レビュー | |
GIGABYTE Z890 AORUS MASTER | レビュー | |
MSI MEG Z890 ACE | レビュー | |
ビデオカード | PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN | レビュー |
システムストレージ | Samsung SSD 990 PRO 1TB | レビュー |
OS | Windows 11 Pro 64bit 22H2 | |
電源ユニット | Corsair HX1500i 2022 | レビュー |
ベンチ板 | STREACOM BC1 | レビュー |
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メモリOCの基本や効果
過去にはオシャレなヒートシンク目当てという傾向が強く、割と趣味の領域でしたが、現在はゲーミングPCなら性能重視でOCメモリを選ぶのも普通にアリです。
ゲーミングPCでメモリOCが注目された経緯
2020年以前は、システムメモリについては必要な容量さえ満たせば(当時は16GB程度、現在のゲーミングデスクトップPCなら32GBあれば十分)、OCによる性能の向上はCPUやGPUのOCに比べると実感し難い、というのが通説でした。
そのため管理人も一口にOCメモリと言っても性能向上を狙うよりは、オシャレなヒートシンク目当てに自作PCの装飾的な感覚で購入するのが個人的にはオススメな買い方だと思っていました。
Intel XMPに対応したOCメモリがあるとはいえ、2020年以前、当時はいまいちメモリOCの安定性が良くないというか、マザーボードとの相性問題が厳しかったのも一因です。
今のようにOCプロファイルを当てて一発安定ではなく、各自でOC設定の微調整が必要で、メモリOCの知識を求められました。
そういったメモリOCに対する評価が変わり始めたのはAMD Ryzen/Threadripper CPUの登場以降です。
初期のRyzen環境では『Infinity FabricというCPU内外のコンポーネントを相互接続するインターコネクトの動作周波数がメモリ周波数に同期する』という構造上、メモリ周波数がエンコードや3Dゲームを含めた総合的なパフォーマンスに大きく影響することからOCメモリが重要視されました。
性能に影響が大きいと分かるとCPU/マザーボード/メモリの各メーカーが最適化を進めたので、1,2年もするとOCプロファイルを当てればDDR4の3200MHz/C16、3600MHz/C18のような定番設定が一発で動くようになり、メモリOCのハードルがグンと下がりました。

Ryzen 3000/5000シリーズ以降、IF周波数はメモリ周波数/メモコン周波数と非同期設定が可能になったものの、それでも高周波数で1:1同期させた方が低遅延、高性能になるので3600MHz/C16のようなDDR4メモリが性能を追求するなら最適であり、最新のRyzen 7000シリーズでは6000MHz/CL30のDDR5メモリが高性能のスイートスポットとしてAMD公式からもアピールされています。
またGPU性能の大幅な向上や240Hz+のハイリフレッシュレートに対応したゲーミングモニタの登場によって、Intel環境においても144FPS~360FPSのハイフレームレートなPCゲーミングではCPUボトルネックの緩和にメモリ周波数のOCが効くことから、需要は高まりました。
GPU性能をフルに発揮できない、足を引っ張る要員として”CPUボトルネック”という言葉はPCゲーマーなら一度は聞いたことがあると思います。
実のところ”CPUボトルネック”は広義な言葉(として使われている)で、CPUそのものの性能不足ももちろん含むのですが、それ以外に、GPUドライバやゲームエンジンのオーバヘッド、そしてシステムメモリのアクセス遅延・帯域等もGPU性能の足枷になる原因として含んでいます。
変な表現ですが、メモリOCによって解消できるCPUボトルネックも少なくありません。
Core i9 14900K&RTX 4090の環境において、定格5600MHzのDDR5メモリと7200MHz OCのDDR5メモリでゲーム性能にどれくらい差が出るのか、最新18タイトルの実ゲームベンチマークで比較しているので参考にしてみてください。
フルHD・ハイフレームレートで効果が高いですが、近年増えつつあるリッチグラフィックな最新タイトルはCPUバウンドな傾向も強く、4Kのような高解像度でもメモリOCによって20%程度も性能が向上することがあります。

一方で、大容量キャッシュメモリによって非常に高いゲーム性能を発揮するRyzen 7 9800X3D環境であっても、GeForce RTX 4090、最新モデルならGeForce RTX 5080やRTX5090といった高性能GPUを組み合わせると、4KやWQHDの高解像度でもメモリ性能(CPU性能)を原因としたボトルネックは発生します。
JEDEC準拠の定格スペックメモリと比べて追加で予算は必要になりますが、+1万円未満で10万円を軽く超える高価なGPUの本来の性能(平均FPSで最大10%程度、最小FPSで最大20%程度)を引き出せる対価ということなら、意外と悪くないコスパです。

メモリ性能の見分け方
メモリの性能は簡単に言うと『動作クロック(周波数)が高く』『メモリタイミングが小さい』ほど性能が高くなります。
メモリ周波数については4800MHzや5600MHzなど〇〇MHzと周波数で表示されていたり、DDR5-4800やDDR5-5600のような規格として表記されていますが、製品仕様としてハッキリと明記されているのですぐにわかると思います。メモリ周波数は数値が高いほうが高速です。
一方、メモリタイミングは若干複雑で、「30-38-38-38」や「36-40-40-96」のような数字の羅列で表記されています。
メモリ周波数とは逆に、メモリタイミングは数値が小さい方が高速です。
メモリタイミングの中でも最初の1つ目はCAS Latencyという名前でCL30やCL36と単独で表記されることもあり、メモリタイミングを代表する数値になっています。初心者はCAS Latencyだけ見ておけばOKです。
IMC周波数との同期で逆に遅延が増える
基本的にメモリ周波数のスペックが高いほど高性能なメモリでしたが、現在ではこの事情が少々変わっています。*システムメモリの帯域と遅延は、高いメモリ周波数と小さいメモリタイミングの兼ね合いですが、OCメモリメーカーはあえて実性能を度外視してメモリ周波数を引き上げるために、メモリタイミングを過度に緩めるようなチューニングをすることはないので。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUにせよ、AMD Ryzen 9000/7000シリーズCPUにせよ、非常に高いメモリ周波数のOCを実現するために、メモリコントローラー(IMC)周波数とメモリ周波数の同期を可変にしています。
Intel Core Ultra 200SシリーズCPUでは定格の5600MHzから8400MHzくらいまでは2:1同期が可能ですが、それ以上では4:1同期になります。AMD Ryzen 9000/7000シリーズCPUでは定格の5600MHzから6400MHzくらいまでは1:1同期が可能ですが、それ以上では2:1同期になります。
メモリ周波数が上がれば通常、システムメモリの遅延と帯域はどちらも向上しますが、IMC周波数の同期が下がると遅延は逆に増大します。
高帯域が効くのか、低遅延が効くのかはゲームの種類、クリエイティブタスクなど各種用途によって異なるので、IMC周波数同期の低下が要求されるハイクロックなメモリOCも一概にダメとは言い切れず、ケースバイケースです。
ただ、ハイクロックなメモリほど
- 動作を安定させるのが難しい
- 高選別品なので高価になる
ということも事実なので、費用対効果を考えると、現状ではIMC周波数の同期が下がらない範囲でハイクロックなOCメモリを選ぶのがオススメです。
メモリスペックと性能の早見表
高性能なOC対応DDR5メモリの目安として、メモリ周波数とメモリタイミングの組み合わせは下のテーブルを覚えておくとOCメモリを選ぶ時に便利です。*厳密に言えば、メモリチップの種類(メーカーや世代)、メモリモジュールのランク、主要スペックとしては公表されないセカンド・サードタイミングと呼ばる数十種類を超えるサブタイミングによってメモリの性能は変わります。
ただ、そこまで網羅するのはメモリOCに精通したOCerでもないと現実的でないので、早見表くらいの理解で十分だと思います。
OC特化MBではなく、一般的なメモリスロットが4基のマザーボードなら動作するスペックを抜粋しています。
Intel Core Ultra 2000SシリーズCPU環境に対応するDDR5メモリのOCスペック早見表です。
Intel Core Ultra 2000SシリーズCPUは最新規格のCUDIMMと組み合わせた場合、8000~9000MHzのメモリOCにも対応します。
ただし、IMC周波数が2:1同期できるのは8400MHzまでとなっており、8400MHzより上は4:1同期で遅延が増え、2xメモリスロットのOC特化MBでないと安定動作が難しくなるので、最高でも8400MHzを上限に考えてください。
一般的なUDIIMM DDR5メモリで対応できる7200MHz/CL36や6400MHz/CL36の辺りは入手性とコスパの観点からオススメです。とにかく性能を追求するならCUDIMM DDR5メモリの8400MHz/CL40対応品を検討してみてください。
代表的なOC DDR5メモリのスペック | |||
---|---|---|---|
6400MHz | 7200MHz | 8400MHz | |
実用最速 | CL30 30-39-39-102 | CL34 34-45-45-115 | CL40 40-52-52-134 |
高性能 定番スペック | CL32 32-40-40-102 | 36-46-46-115 38-44-44-105 | CL36~38|
低価格 安定性重視 | 38-40-40-84 | CL36~38||
定格 | CL52 (CUDIMMのみ) 52-52-52-103 |
基本スペックと収録OCプロファイル
「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB(型番:KF584CU40RSAK2-48)」のスペックや収録されているOCプロファイルについて解説します。
Intel XMP3.0とAMD EXPOはメモリはどちらもDDR5メモリのOCプロファイルです。
ただ、CPUのメモリOC耐性に対してメモリ周波数とCLなどプライマリタイミングのスペックが重なるOCメモリなら、OCプロファイルの種類に依らず正常動作するというのも事実なので、『OCメモリを新規に購入する時は合わせた方が良い』くらいの認識でOKです。
XMPはIntel製CPU環境向け規格
メモリOCで有名なXMPプロファイルは「インテル エクストリーム・メモリー・プロファイル」の略称でありIntelの策定した規格です。

XMP3.0は最新のDDR5メモリに対応したメモリOCプロファイル規格です。
前バージョンのXMP2.0は”DDR4メモリ”に対応したメモリOCプロファイル規格です。そもそも対応するメモリ規格が異なるので、XMP3.0とXMP2.0の違いを気にする必要はありません。
2025年最新CPUのIntel Core Ultra 200Sシリーズの時点ですでにDDR4メモリのサポートは終了しているので、最新CPUと一緒にOCメモリを選ぶ場合、自動的にDDR5メモリかつIntel XMP3.0になります。
AMD製CPU向け規格はAMD EXPO
XMP/EXPOは異なるCPU環境でも動く
Intel環境向けの規格なのでAMD製CPU環境において”XMPでOCする”等の表現をするのは厳密には正しくありませんが、XMPプロファイルとして収録されたメモリ周波数とメモリタイミングの設定値からAMD Ryzen環境に合わせたメモリOCプロファイルを自動生成する機能が各社マザーボードのBIOS上に実装されています。
この機能によって異なる組み合わせでも実質同じようにOCできるので、『 XMP = メモリOCプロファイル 』くらい汎用的な言葉とザックリ理解してもさほど支障はありません。
当記事中でも、AMD製CPU環境においてXMPプロファイルを流用したメモリOCを、便宜上細かいことを気にせずに”XMPを使用したOC”などXMPとして表記することがあります。
逆にEXPO対応メモリもIntel製CPU環境ではマザーボードが自動的に最適なOCプロファイルへ変換してくれるので、大抵は正常に動きます。
すでにXMP3.0/EXPOのOCメモリを使っている人が他社製CPUに乗り換える時に必ずしもOCメモリを買い替える必要はない、という意味です。
OCメモリだけ、もしくはCPUも一緒に新規に購入する場合は、当然、CPUとOCメモリの種類は揃えるのがベストです。
メモリモジュールと定格動作
OCプロファイルによるメモリ周波数8400MT/s, メモリタイミングCL40のオーバークロックに対応する24GB×2枚組み48GB容量のメモリキット「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB(型番:KF584CU40RSAK2-48)」については、OC耐性の高さに定評のあるSK Hynix製メモリモジュールが採用されていました。
(製品型番とスペックはそのままでも、メモリモジュールについてはロットやバージョンで変更される可能性があります)

「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB(型番:KF584CU40RSAK2-48)」はIntel Core Ultra 200SシリーズCPU向けのハイクロックなメモリOCに対応したモデルですが、SPDプロファイルとして収録されている最大スペックはJEDEC準拠の6400MT/sです。
OCプロファイルを適用しない場合、Intel Core Ultra 200SシリーズCPUのように環境がサポートするなら、定格最大メモリ周波数の6400MT/s, CL52で動作します。

収録されているOCプロファイル
Kingston FURY Renegade DDR5シリーズからは容量やOCの違いで様々なスペックが展開されています。
今回レビューする「KF584CU40RSAK2-48」はCUDIMMのメモリモジュールを採用し、IntelプラットフォームのOCメモリ規格、Intel XMP3.0による『8400MT/s, CL40-52-52』に対応したモデルです。
「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB(型番:KF584CU40RSAK2-48)」には最大スペックの『8400MT/s, CL40-52-52』に加えて、
Intel XMP3.0やAMD EXPOに対応したOCメモリは、一般的に公式仕様として掲載されているOCプロファイル1つしか収録されていません。
そういったメモリだと、1つしか収録されていないOCプロファイルが適用しても安定しない場合、メモリOCに詳しくないユーザーは折角、高価なメモリを買ったのに、4800MT/sや6400MT/sなどJEDEC準拠のスペックでしか運用できず損することになります。
CPU・マザーボードとの相性が悪く、8400MT/sのOCプロファイルが動かなくても、8000MT/sなど下位モデルのOCプロファイルを試すことができます。
KF572C38RWAK2-32はメーカーテストにおいて8400MT/sの安定動作を確認している選別品なので、メモリモジュールの特性は当然、8000MT/s対応品など下位モデルよりも優れています。価格差を気にしないのであれば、シンプルに上位互換です。

Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGBのメモリOCを試す
「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB(型番:KF584CU40RSAK2-48)」を各種検証機材と組み合わせてメモリオーバークロックの動作検証を行いました。
DDR5メモリにおいて6000MT/s台の低レイテンシ設定や、7000~8000MT/sのハイクロック設定は温度影響によるメモリエラーが結構シビアですが、温度原因のエラー対策はサブタイミングや電圧を微調整するよりもファンを1台増設するほうが手っ取り早く簡単に解消できます。
Refresh Interval (tREFi) について
メモリOCで調整するサブタイミングにおいて「Refresh Interval (tREFi)」だけは数字が大きいほどメモリ動作が高速・低遅延になります。またtREFiはメモリ温度によるメモリエラー発生にも影響の大きい設定値です。
tREFiの設定値は『256×整数値 - 1』がよく使用されます。例えば256*128-1=32767は低遅延な反面、メモリ温度にシビアです。256*32-1=8191は速度はそこそこですが、温度に対して耐性が高い設定という感じです。
OCプロファイル適用時のMBによる自動設定も、ベンチマークスコア重視で25000~32000程度だったり、安定性重視で6000~8000程度だったり、MBメーカーやモデルによってまちまちです。また、同じ設定でもマザーボードによってエラー/ノーエラーが変わったりもするので地味に厄介です。

温度原因のメモリエラーとtREFIについて
DRAMはSSDなどSRAMと違って時間経過とともに信号電荷がかなりの速さで減少していくので、メモリデータを保持するために一定時間毎にリフレッシュという信号電荷を再び書き込む動作を行う必要があります。
リフレッシュ中はメモリにアクセスできなくなるため、リフレッシュを実行する間隔 Refresh Interval (tREFi)が長いほどメモリ動作は高速になります。*ちなみに似た名前の設定として「Refresh Cycle Time (tRFC)」がありますが、こちらは1回のリフレッシュにかかる時間(サイクル数)なので小さい方が高速です。
”時間経過とともに信号電荷がかなりの速さで減少していく”と書きましたが、この減少速度はメモリ温度の影響を受け、高温であるほど高速にメモリデータを失います。
メモリデータを失う前にリフレッシュを行う必要があるので、同じtREFiの設定値でもメモリストレステストにおいて、メモリ温度が低温ならノーエラーなのに、一定温度を超えるとエラーが出るということが起こります。
最新規格 DDR5メモリにおいて6000MHz台の低レイテンシ設定や、7000~8000MHzのハイクロック設定はこの温度影響によるメモリエラーが結構シビアです。
メモリストレステストを実行して5~10分程度が経過し、HWiNFO等のモニタリングソフトで確認できるメモリ温度が60~70度を超えた辺りでエラーが発生する場合は、メモリ温度が原因のエラーの可能性が高いです。
温度原因メモリエラーの実害と対策
PCゲームのプレイ中にメモリストレステスト的にメモリ温度が高温になることはないので、ゲーム用途でメモリOCを行う場合は、温度原因によるエラー発生はあまり気にする必要はありません。
ゲーム実況等でゲームの裏で配信ソフトが動いていても、NVEncなどGPU側ハードウェアエンコーダを使用しているなら同じく気にする必要はありません。
一方で、動画エンコードなどシステムメモリを大量に使用するクリエイティブタスクについてはメモリ温度がメモリストレステスト的に上昇するので実用的にも対策が必要です。
理屈としてはtREFiを調整することでメモリ温度原因のエラーは対策できるはずなのですが、同じ設定でもマザーボードによってエラー/ノーエラーが変わったりもするので地味に厄介です。tREFi以外に他の何が影響しているのか調べるのも大変なので筆者も諦めています。
メモリ電圧が1.300~1.400V程度の一般的な常用メモリOCであれば60~80mm径のファンで風を当ててやるだけでメモリ温度を50度前半かそれ以下に抑えることが可能です。
メモリ温度が60~70度を超えて発生する温度原因のメモリエラーについてはメモリ設定を調整するよりもスポットクーラーを増設して温度を下げる対策のほうが手っ取り早く楽なのでオススメです。
ただ8000MHz超のハイクロックかつ1.450V以上の高電圧の場合はファンを使っても十分に冷やすのが難しく、55度~60度に冷やしても温度原因でエラーが生じる可能性があります。その場合は、tREFiをAuto設定の設定値から引き下げる形で微調整をしてみてください。

Intel Z890環境でメモリOCを実践
Intelの最新メインストリーム向けCPUであるCore Ultra 200SシリーズCPUの最上位モデル Core Ultra 9 285KとZ890マザーボードの環境で「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB (KF584CU40RSAK2-48)」のメモリOCを実践しました。

ASUS ROG MAXIMUS Z890 HERO

ASRock Z890 Nova WiFi
ASRock Z890 Nova WiFi(BIOS:2.20 AS03)の環境で、24GB×2枚組み48GBで8400MT/s, CL40のメモリOCが安定動作しました。MCLK/UCLK同期は自動設定のまま2:1同期です。
OCプロファイルを適用するだけで安定動作したので、特に補足説明はありません。

GIGABYTE Z890 AORUS MASTER
GIGABYTE Z890 AORUS MASTER(BIOS:F16c)の環境で、24GB×2枚組み48GBで8400MT/s, CL40のメモリOCが安定動作しました。MCLK/UCLK同期は自動設定のまま2:1同期です。
OCプロファイルを適用するだけで安定動作したので、特に補足説明はありません。


MSI MEG Z890 ACE
MSI MEG Z890 ACE(BIOS:1.A51)の環境でも、24GB×2枚組み48GBで8400MT/s, CL40のメモリOCが安定動作しました。MCLK/UCLK同期は自動設定のまま2:1同期です。
OCプロファイルを適用するだけで安定動作したので、特に補足説明はありません。


レビューまとめ
最後に「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB(型番:KF584CU40RSAK2-48)」を検証してみた結果のまとめです。
- OCプロファイルによって8400MT/s, CL40が正常動作
- Intel Core Ultra 2000S環境に対応
- 8000MT/sや7600MT/sの低速なOCプロファイルも収録
- 【RGBのみ】 赤外線同期によって制御なしでもライティングが同期する
- クロックドライバを搭載する最新のCUDIMM DDR5メモリ
- 簡単にメモリのOCが可能なIntel XMP3.0のOCプロファイルを収録
- ユーザーが自由に書き換え可能なプロファイルが2つ
- 【RGBのみ】 12分割でライティング制御が可能なARGB LEDイルミネーション搭載
- 【RGBのみ】 専用アプリ FURY CTRLによってライティング制御が可能
- 【RGBのみ】 ASRock/ASUS/GIGABYTE/MSIなどMBのライティング制御機能に対応
- –
- FURY Renegadeブランドにしてはメモリヒートシンクが簡素
「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB (KF584CU40RSAK2-48)」の検証ではメーカー動作確認済みのOCプロファイルを使用することによって、Intel Core Ultra 200SシリーズCPU&Z890マザーボード環境においてメモリ周波数8400MT/s, CL40のオーバークロックが手軽に行え、安定動作が確認できました。
Intel製CPUはゲーム性能において、3D V-Cache技術によって大容量キャッシュを搭載するAMD Ryzen X3Dシリーズに後れを取るという評価も多いですが、実のところ、メモリOCによってゲーム性能向上にかなりの伸びしろを残しています。
最新のCore Ultra 200Sも1つ前の第14世代Coreも7000MT/s~8000MT/sの高クロックなメモリOCに対応しているので、ゲーム性能を追求する人はOCメモリの導入も検討する価値はあると思います。
Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5の8400MT/s対応モデル KF584CU40RSAK2-48には、7600MT/sや8000MT/sのOCプロファイルも収録されています。
8400MT/sはCPUのIMC特性やマザーボードのメモリ回路も良くないと安定させるのが難しいOCプロファイルですが、仮に動かなくとも上位モデルを買っておけば8000MT/sや7600MT/sのメモリ周波数が低い下位モデルのOCプロファイルを試せるというのはありがたい仕様だと思います。
12分割アドレッサブルLEDイルミネーションで色鮮やかにライトアップすることができる「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」はPCをオシャレに装飾したいユーザーにとって非常に魅力的な製品です。
七色に変化するRGBもしくはアドレッサブルな発光パターンを標準にしているLEDイルミネーションは数多く存在するものの、いずれも時間経過とともに各メモリの発光カラーや変化にズレが生じますが、「Kingston FURY Renegade DDR5 White RGB」は独自の赤外線同期テクノロジー(Infrared Sync Technology)」によって、ソフトウェア制御がない状態で時間が経過しても、全てのメモリモジュールの発光タイミングが綺麗に一致します。
専用アプリ FURY CTRLによるライティング制御も使い勝手が良くカスタマイズ性も高いですが、ソフトウェアを使わずそのまま導入するLEDイルミネーション搭載メモリの入門機としてもオススメできるメモリです。
以上、「Kingston FURY Renegade CUDIMM DDR5 RGB」のレビューでした。
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24GB×2 / 8400MHz / CL40
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「Crucial DDR5 Pro OC 6400MHz」をレビュー。Ryzen9000やCoreUltra200に最適な高信頼、高コスパなOCメモリを徹底検証6400MHz/CL38の低レイテンシなメモリOCに対応する「Crucial DDR5 Pro OC CP2K16G64C38U5B」をレビュー。Core Ultra 200SやRyzen 9000の最新環境でメモリOCが安定動作するのか徹底検証
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「CORSAIR DOMINATOR TITANIUM RGB」をレビュー。光らない高冷却ヒートシンクに換装も可能CORSAIRのハイエンドDDR5メモリキット「DOMINATOR TITANIUM RGB DDR5」をレビュー。7200MHzのメモリOCに対応する24GB×2枚組みモデル CMP48GX5M2X7200C36をCore i9 14900K&Z790で試してみた。
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DDR5-5600/4800とDDR4-3600でゲーム性能を比較。新しく自作PCを組むならDDR5メモリがオススメ!?ネイティブ5600MHz対応DDR5メモリ「Crucial CT16G56C46U5」を使用して、DDR5初期スペックのDDR5-4800や、DDR4メモリでは定番のOCスペックであるDDR4-3600とゲーム性能を最新10タイトル以上で比較検証
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