GeForce RTX 3070グラフィックボードとしてMSIからリリースされた、3スロット占有3連ファンGPUクーラーTRI-FROZR 2を搭載し、ファクトリーOCも施されたゲーミングモデル「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」をレビューしていきます。
NVIDIA Ampere世代のミドルハイクラスGeForce RTX 3070が、前世代同クラスのRTX 2070 SUPERや最上位モデルRTX 2080 Tiをどの程度上回るのか、実ゲームベンチマークでグラフィック性能を徹底比較します。
製品公式ページ:https://jp.msi.com/Graphics-Card/GeForce-RTX-3070-GAMING-X-TRIO-8G
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G レビュー目次
1.MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gの外観
2.MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gの分解
3.MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gの検証機材・GPU概要
4.MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gのゲーム性能
・レイトレーシング&DLSSの性能を検証
5.MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gの温度・消費電力・ファンノイズ
6.MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gのレビューまとめ
【機材協力:MSI Japan】
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gの外観
早速、「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を開封していきます。
外パッケージの中には黒色段ボールの内パッケージが入っており、マニュアル類の入った紙製ケースとスポンジ蓋を外すと、スポンジスペーサー&静電防止エアパッキン袋という一般的な梱包でグラフィックボード本体が鎮座していました。
マニュアルや保証書等以外の付属品はGPUホルダーです。
下の写真は旧モデルですが、付属GPUホルダーはこんな感じで使用します。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」のグラフィックボード本体を見ていきます。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」のGPUクーラーの外装はプラスチック製ですが、ブラック&ガンメタルカラーのフレームにはスチールのようなマットな塗装が施されており安っぽさは感じない外観です。
MSIのGamingシリーズと言えばブランドロゴにもなっているドラゴンを模した造形が1つの特長でしたが、代を重ねるごとにその要素は薄くなり、RTX30世代では流行に合わせ、かなりシンプルな作りになっています。
グラフィックボード側面のグレーカラーのプレートにはMSIテキストロゴとMSIゲーミングブランドを象徴するドラゴンマークがあり、加えて、中央ファンの2時と7時の方向にあるスリットおよびバックプレート側面のホワイトラインには、アドレッサブルLEDイルミネーションが内蔵されています。専用アプリケーション「MSI Mystic Light Sync」を使用すれば、同社製マザーボードなど対応機器と同期させてライティング制御が可能です。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」は全長323mmとなっています。近年主流なオープンスペースタイプのPCケースなら干渉の心配はありませんが、PCケースフロントにストレージベイがある少し古めのPCケースではグラフィックボード設置スペースのクリアランスに注意が必要です。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」は基板とGPUクーラーがPCIブラケットから35mmほどはみ出しているのでPCケースとの干渉は十分に注意してください。PCケースとの干渉ではグラフィックボードの背の高さは長さに比べて見落としやすいポイントです。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」の3連ファンGPUクーラーはTRI-FROZR 2と名付けられており、95mm径の冷却ファンが計3基設置されています。『左と中央』および『右』は2系統で個別に制御が可能です。
TRI-FROZR 2の冷却ファンには4世代目となりさらに改良された新型ファン「TORX FAN 4.0」が採用されています。TORX FAN 4.0では2枚のファンブレードを円弧を描く外周リングで一体化することで、スリムで振動しやすいファンブレードを安定させ、静圧を向上、ブレによるノイズの低減を実現しています。また軸受けには高耐久性なダブルボールベアリングが採用されています。
TORX FAN 4.0は外周リングによって補強されたファンブレードによって、前世代TORX FAN 3.0と比較して20%高い静圧を実現しており、TGP300Wクラスに対応すべくさらに高密度になったGPUクーラーヒートシンク放熱フィンへ十分なエアフローを供給できます。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」は冷却性能を上げるため、大型放熱フィンを採用したヒートシンクが搭載されており、PCIEスロットを3スロット占有します。
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gはリファレンスの動作クロックよりも高い数値で動作するメーカーによるファクトリーOCが施されたOCモデルですが、PCIE補助電源はRTX 3070オリファンモデルで一般的な8PIN×2となっています。
補助電源部分のPCB基板は切り込みで引っ込んでいるので補助電源ケーブルを装着しても補助電源端コネクタやケーブルとPCケースの干渉が発生し難い構造になっています。ただ切込みの深さは10mmほどで補助電源コネクタはカバーできていますが、ケーブルがはみ出すのでPCケースサイドパネルの干渉回避を考えると、もう10mmほど切込みは深めの方がよかったと思います。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」のPCIE端子と各種ビデオ出力には黒色の保護カバーが装着されています。
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gのビデオ出力はリファレンス仕様と同じくHDMI2.1×1、DisplayPort1.4×3の4基が実装されています。
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8GにはGeForce RTXロゴとドラゴンマークのブランドロゴが白色で刻印されたマットブラックのバックプレートを搭載しています。基板の反りや破損を防止する保護プレートとしての役割に加えて、GPUコアおよびVRAMとの間にはサーマルパッドが貼られているので冷却補助の役割を果たします。
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gのバックプレート素材にはグラフェンが採用され、非伝導性かつ優れた放熱性を実現しているところも特徴です。プラスチック製バックプレートと比較して4倍の強度と20倍の熱伝導率を実現しています。
一方で大型化(大重量化)していくGPUクーラーに対して、GPUコアと適切な圧力でクーラーベースコアが密接しないというケースも増えつつあるようで、NVIDIA製品でも一部メーカーで取り入れられつつある、リテンションバックプレートが「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」には採用されています。
またGPUクーラーからバックプレートに突き抜けるフロースルー構造は、MSI GAMING X TRIOのRTX 3080/3090の上位モデルでは採用されていませんでしたが、「MSIGeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」では採用されています。
なおグラフィックボードの重量はMSI GeForce RTX 3080 GAMING X TRIO 10Gが1560g、ASUS TUF-RTX3070-O8G-GAMINGが1109gに対して、MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gは1481gでした。
バックプレート等で基板の反りは防止されていますが、重量は1kgを軽く超過しているのでPCIEスロットへの負荷を考えるとVGAサポートステイなどで垂れ下がりを防止したほうがいいかもしれません。
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gの分解
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を分解してGPUクーラーやグラフィックボード基板についてチェックしていきます。
なお今回はレビュー用サンプル貸出先の協力のもと特別に許可を頂いて分解を行っております。GPUクーラーの取り外し(分解行為)は、EVGAやZOTACを除く多くのメーカーではグラフィックボードの正規保証の対象外になる行為です。今回はレビューのために分解しておりますが、繰り返しますが保証対象外になるので基本的には非推奨の行為なのでご注意下さい。
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8GのGPUクーラーは基板裏面のコア周辺4カ所と、バックプレート上の8か所の計12個のネジによって厳重に固定されていました。3スロットを占有する大型GPUクーラーでも安心な固定状態です。
12カ所のネジを外すとGPUクーラーは容易に取り外しが可能です。さらにネジを外していくと、PCB基板から補強フレームやバックプレートも取り外しが可能です。
バックプレートとPCB基板背面の間にはVRAMチップとVRM電源回路の裏側部分にサーマルパッドが貼り付けられているので、バックプレートはそのまま放熱板としての役割も果たしています。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」にはMSI独自設計のオリジナル基板が採用されています。
GeForce RTX 3070のGPUコアにはGA104-300-A1が使用されていました。RTX 3080/3090とは違い、RTX 3070のVRAMはGDDR6となっており、GDDR6メモリチップはMicron、Samsung、SK Hynixが製造していますが、今回入手した「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO」にはSamsung製の8GbのGDDR6メモリチップが8枚搭載されています。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」のVRM電源回路はGPUコアの左側に9フェーズが実装されています。この9フェーズは全てGPUコア向けで、VRAM向けのVRM電源はPCIE補助電源コネクタの下側に2フェーズが実装されています。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」のGPUクーラー本体をチェックすると、GPUコアと接する部分はヒートパイプダイレクトタッチ構造が採用され、ベースコアからは6本の銅製ヒートパイプが伸び、アルミニウム製放熱フィンが3スロットスペース内いっぱいに展開されています。
従来、MSI GAMING XシリーズではGPUコアと接する部分には冷却性能の高さで定評のあるニッケルメッキ処理済み銅製ベースプレートが採用されていましたが、「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」ではヒートパイプダイレクトタッチ構造が採用されています。
下位モデル「MSI GeForce RTX 3070 VENTUS 2X OC」とは違って、「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO」には十分な数のヒートパイプがあるのでヒートパイプで構成されたコアはちゃんとGPUダイ全体をカバーしています。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」に採用されているヒートパイプダイレクトタッチ構造は一般のそれとは異なり、ヒートパイプのコアを成す部分が四角形に成型されヒートパイプ同士が密接しています。この構造はTRI FROZR 2の高い冷却性能を支える中心的な設計で「Core Pipe」と呼ばれています。
GPUコアと接するベースコアから伸びた6本のヒートパイプによって3スロットを占有する大型放熱フィン全体へ熱を拡散します。
VRAMチップはGPUクーラー放熱フィンにろう付けされたアルミニウム製プレートにサーマルパッドを介して接しており、ヒートシンク本体で直接冷却するという理想的な構造です。
一方でVRM電源回路については、VRAM向け2フェーズはGPUクーラーヒートシンク本体で直接冷却する構造ですが、GPUコア向け9フェーズはチョークコイルこそサーマルパッドを介してヒートシンクに接しているものの、最も発熱の大きいMOS-FETは個別の小型アルミニウム製ヒートシンクをさらに介するという不思議な設計になっています。
このタイプの冷却構造はVRM電源回路が非常に高温になることもあるので、後ほどの実機検証で詳しくチェックしていきます。
ベースプレートから伸びる6本の銅製ヒートパイプによって3スロットを占有する大型GPUクーラー内部いっぱいに展開された極厚なアルミ製放熱フィンの迫力も圧巻です。
放熱フィンの設計も工夫されており、放熱表面積を拡大し、なおかつ冷却を要する場所へ的確にエアフローを送るデフレクタ構造(deflector、整流装置)、気流を分割して風切り音を低減しノイズを抑える波状に湾曲したフィン構造Wave-curved 2.0などが採用されています。
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gの検証機材・GPU概要
外観やハードのチェックはこのあたりにして早速、「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を検証用の機材に組み込みました。テストベンチ機の構成は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | ||
ベンチ機1(温度・消費電力) | ベンチ機2(ゲーム性能) | |
OS | Windows10 Home 64bit (1909) | |
CPU | Intel Core i9 9900K (レビュー) Core/Cache:5.1/4.7GHz |
Intel Core i9 10900K (レビュー) Core/Cache:5.2/4.7GHz |
M/B | ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 4000MHz, 17-17-17-37-CR2 |
G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) 4000MHz, 15-16-16-36-CR2 |
システム ストレージ |
Samsung 860 EVO M.2 1TB (レビュー) |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
データ ストレージ |
Samsung 860 QVO 4TB (レビュー) | |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
|
電源 ユニット |
Corsair HX1200i (レビュー) | |
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」のGPUクーラー側面、バックプレートと基板の隙間ラインと、MSIロゴ部分にはアドレッサブルLEDイルミネーションが内蔵されています。
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8GのGPU概要
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gに搭載されているGPU「GeForce RTX 3070」のスペックについて簡単に確認しておきます。
「GeForce RTX 3070」はGA104-300コアが使用されておりCUDAコア数は5888、GPUコアクロックはベース1500MHz、ブースト1725MHzです。VRAMには14.0GbpsのGDDR6メモリを8GB容量搭載しています。
典型的なグラフィックボード消費電力を示すTGPは220Wに設定されており、PCIE補助電源として各社AIBモデルの多くは8PIN+6PINや8PIN×2を要求しています。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」については、リファレンス仕様のブーストクロック1725MHzに対して、ブーストクロック1830MHzにファクトリーOCが施されており、パワーリミット(TGP)もリファレンス仕様の220Wから240Wへと引き上げられています。電力制限は+4%で最大250Wまで解除が可能です。
NVIDIA GeForce RTX 3090/3080/3070 詳細スペック比較 | ||||
GPU名 | RTX 3090 | RTX 3080 | RTX 3070 |
RTX 2080 Ti |
GPUダイ | GA102-300 | GA102-200 | GA104-300 | TU102-300 |
製造プロセス | Samsung 8nm | Samsung 8nm | Samsung 8nm | 12nm FinFET |
CUDAコア数 | 10496 | 8704 | 5888 | 4352 |
TMU/ROP | -/- | -/- | -/- | 272/88 |
ベースクロック | 1395MHz | 1440MHz | 1500MHz | 1350MHz |
ブーストクロック (FE) |
1695MHz | 1710MHz | 1725MHz | 1545MHz (1635MHz) |
メモリ | 24GB GDDR6X | 10GB GDDR6X | 8GB GDDR6 | 11GB GDDR6 |
バス幅 | 384-bit | 320-bit | 256-bit | 352-bit |
メモリクロック | 4875 MHz | 4750 MHz | 4000 MHz | 3500 MHz |
有効メモリクロック | 19500 MHz | 19000 MHz | 14000 MHz | 14000 MHz |
メモリ帯域 | 936 GB/s | 760 GB/s | 448 GB/s | 616 GB/s |
PCIEレーン | PCIE4.0x16 | PCIE4.0x16 | PCIE4.0x16 | PCIE3.0x16 |
マルチGPU | NVLink SLI | – | – | NVLink SLI |
TGP(TDP) | 350W | 320W | 220W | 250W (FE:260W) |
補助電源 | 8PIN×2~ | 8PIN×2~ | 8PIN+6PIN~ | 8PIN×2~ |
対応ビデオ出力 | DP1.4 HDMI2.1 |
DP1.4 HDMI2.1 |
DP1.4 HDMI2.1 |
DP1.4 HDMI2.0 USB Type-C |
登場時期 | 20年9月24日 | 20年9月17日 | 20年10月29日 | 18年9月 |
価格 | 1499ドル~ | 699ドル~ | 499ドル~ | 999ドル~ FE:1199ドル |
今回レビューするGeForce RTX 3070をはじめとして、GeForce RTX 30シリーズに採用されるAmpereアーキテクチャにおいて、前世代Turingと比較してスペック上のCUDAコア数が2倍に激増していることについて簡単に説明しておきます。
まず純粋に事実として、複数のCUDAコアからなるCUDAコア群のストリーミングマルチプロセッサ(Streaming Multiprocessors:SMs)の『FP32スループットがTuring世代と比較してAmpereでは2倍に向上』しています。これは間違いありません。
一度、前世代Turingを振り返ると、TuringアーキテクチャではFP32とINT32を同時に実行できる(データパスが独立に用意されている)ことがアーキテクチャとしての新しい特徴でした。Turingでは1基のSMにFP32とINTが1:1割合で実装されていました。
Turingがこのようなアーキテクチャを採用したのは、PCゲームではFP32だけでなくINT32も実行されるから、というのが理由でしたが、同時に公表されていた統計を思い出すと、ゲームによって多少変動はあるもののFP32に対してINT32はせいぜい2:1の割合でした。
であればAmpereでは2つのデータパスのうち、INT32用のデータパス上にINT32の実行ユニットだけでなくFP32の実行ユニットも乗せれば、FP32とINT32の割合が現実に即した理想的な比率になり、省スペースに実装もできるというのは理にかなった話だと思いました。(下はSMの1/4を抜粋)
従来では『CUDAコア数 = FP32実行ユニットの数』とカウントしていたので、同じく単純にFP32実行ユニットの数をカウントするとAmpereアーキテクチャのGeForce RTX 30シリーズでは、CUDAコア数が2倍に爆増します。確かに1クロックで同時に実行できるFP32の最大数は2倍になったのですが、即ちCUDAコア数が2倍になったとカウントするのかというとやや疑問も残ります。
GTX700からRTX2000まで4世代ほどは、『CUDAコア数の増加による比例』×『コアクロックの上昇やアーキテクチャ改良による性能向上』が次世代GPUの性能指標だったので、GTX10からRTX20でCUDAコア数が2倍であれば実際の性能は2倍以上ですが、RTX20からRTX30ではCUDAコア数が2倍になっても実際の性能は2倍以下なのでどうしても違和感が残ります。
ともあれPCゲームを含め実際のアプリケーションではINT32も使用されるので、実性能を見るとGeForce RTX 30シリーズはCUDAコア数に比例して単純に2倍の性能にはならず、INT32/FP32混合データパスの使用状態に応じて、性能の伸び幅(Performance gains)が変動します。
ただFP32など一般的なシェーダーだけでなく、レイトレーシング用コアやテンサーコアも新世代へアップグレードされているので、レイトレーシング表現やDLSSに対応したPCゲームであればRTX20に対して2倍に迫る性能も発揮できるようです。
またGeForce RTX 30シリーズの諸機能について、前世代RTX 20シリーズとの大きな違いとして、8K/60FPS映像を取り扱えるHDMI2.1に対応し、それに伴ってハードウェアデコーダのNVDecが第5世代にアップデートしています。第5世代NVDecでは、8Kなど超高解像度映像に使用されるAV1コーデックのデコードに対応しています。
ゲーム実況などリアルタイム配信・録画において好評を博したNVEncについてはRTX 20シリーズと同じく第7世代が採用されています。
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gのゲーム性能
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」の性能を測るべく各種ベンチマークを実行しました。性能比較には「GeForce RTX 2080 Ti Founders Edition」、「GeForce RTX 2080 SUPER Founders Edition」、「GeForce RTX 2070 SUPER Founders Edition」、「Radeon RX 5700 XT」を使用しています。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkで現在主流なDirectX11のベンチマーク「FireStrike」による比較になります。
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FireStrike | Extreme | Ultra | |
RTX 3070 MSI GX TRIO |
34109 | 16796 | 8571 |
RTX 2080 Ti FE | 34955 | 16797 | 8179 |
RTX 2080 SUPER FE | 29145 | 13866 | 6800 |
RTX 2070 SUPER FE | 26161 | 12475 | 6097 |
RX 5700 XT | 27300 | 12947 | 6553 |
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkのDirectX12ベンチマーク「TimeSpy」、およびレイトレーシング対応ベンチマーク「Port Royal」による性能比較となります。
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TimeSpy | Extreme | Port Royal | |
RTX 3070 MSI GX TRIO |
13821 | 6823 | 8248 |
RTX 2080 Ti FE | 14309 | 6813 | 8839 |
RTX 2080 SUPER FE | 11696 | 5412 | 7032 |
RTX 2070 SUPER FE | 10232 | 4788 | 6095 |
RX 5700 XT | 9362 | 4189 | – |
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を含めた各グラフィックボードについて、近年普及しつつあるHTC VIVE Cosmos、Oculus Quest 2/Rift S、Valve IndexなどVR HMDを使用したVRゲームに関する性能を測定する最新ベンチマーク「VRMark」による性能比較となります。
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Orange Room | Cyan Room | Blue Room | |
RTX 3070 MSI GX TRIO |
16379 | 13189 | 4150 |
RTX 2080 Ti FE | 15938 | 12955 | 4553 |
RTX 2080 SUPER FE | 15532 | 11080 | 3755 |
RTX 2070 SUPER FE | 15010 | 9861 | 3316 |
RX 5700 XT | 13796 | 9289 | 2546 |
続いて2020年最新のPCゲームを実際に用いたベンチマークになります。同一のグラフィック設定で同一のシーンについてフルHD(1920×1080)とWQHD(2560×1440)と4K(3840×2160)の3種類の解像度で平均FPSを比較しました。
ベンチマーク測定を行ったゲームタイトルは、Anthem(ウルトラ設定プリセット)、Assassin’s Creed Odyssey(最高設定プリセット)、Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12)、CONTROL(高設定プリセット, DirectX12, AMD製GPUはDirectX11)、DEATH STRANDING(最高設定プリセット, TAA)、The Division 2(ウルトラ設定プリセット, DirectX11)、Final Fantasy XV(最高設定プリセット, NVIDIA GameWorksはVXAOを除き有効)、Gears 5(最高設定プリセット)、Ghost Recon Breakpoint(ウルトラ設定プリセット)、Horizon Zero Dawn(最高画質設定プリセット)、Marvel’s Avengers(最高設定プリセット, TAA)、Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット, DirectX12)、MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット, DirectX12)、Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット, TAA, DirectX12)、Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)以上の15タイトルです。
Anthem(ウルトラ設定プリセット)に関する「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Assassin’s Creed Odyssey(最高設定プリセット)に関する「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
CONTROL(高設定プリセット, DirectX12, AMD製GPUはDirectX11)に関する「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
DEATH STRANDING(最高設定プリセット, TAA)に関する「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
The Division 2(ウルトラ設定プリセット, DirectX11)に関する「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Final Fantasy XV(最高設定プリセット、NVIDIA GameWorksはVXAOを除き有効)に関する「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Gears 5(最高設定プリセット)に関する「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Ghost Recon Breakpoint(ウルトラ設定プリセット)に関する「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Horizon Zero Dawn(最高設定プリセット)に関する「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Marvel’s Avengers(最高画質設定プリセット, TAA)に関する「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット, DirectX12)に関する「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット, TAA, DirectX12)に関する「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)に関する「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gなど5種類のGPUについて実ゲーム性能の比率の平均を出してみたところ、MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gは、前世代同クラスのアップデートモデルであるGeForce RTX 2070 SUPERよりも30%以上高い性能を発揮し、前世代最上位モデルであるGeForce RTX 2080 Tiと比較しても同等の性能を実現しています。
ちょうど2年前に発売された無印版GeForce RTX 2070と比較すると平均で40%、ベストケースでは50%以上の性能向上を果たしており、同ナンバリングの性能の伸び幅としては類を見ない、まさに”飛躍”という表現がピッタリな性能向上です。
RTX 2080 Tiとの比較に関していくつか補足しておくと、リファレンス仕様のRTX 3070の場合、GeForce RTX 2080 Tiにはパワーリミット+10WなファクトリーOCが施されたFounders Editionなので僅かに劣る傾向がありますが、「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」のようにファクトリーOCモデル同士で比較すれば、フルHDやWQHDであればRTX 3070が僅かながら上回る可能性が高いです。
一方で4K解像度についてはVRAMの使用量次第です。今回の検証タイトルでもFinal Fantasy XVやMiddle-Earth: Shadow of Warは最高画質設定において影関連でVRAMを非常に大きく使うので差が開いてしまいます。画質設定を多少下げてVRAM使用量が8GBを十分下回る条件であれば、4K解像度でもRTX 3070はRTX 2080 Tiと同等の性能を発揮できます。
レイトレーシング&DLSSの性能を検証
上では一般的なPCゲーミングシーンにおける「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」の性能を比較検証してきましたが、ここからはGeForce RTX 30シリーズの大きな特徴である、前世代GeForce RTX 20シリーズよりも改良された、レイトレーシング表現やDLSSの性能をチェックしていきます。
なおレイトレーシング表現の性能やDLSSの性能についてはGeForce RTX 3070リファレンス仕様の性能検証の結果を引用する形で紹介していきます。
最初に、レイトレーシング表現やDLSSについて簡単に紹介しておきます。
まず、レイトレーシング(Raytracing)表現では、照明や光源(エリアライト)や太陽光(グローバルイルミネーション)の影響を厳密に再現し、光の反射や透過も現実に即して忠実に描写されます。
レイトレーシングを採用したわかりやすい例としては鏡に映る反射など、視覚(視点から見た)の外にある物体もリアルに描画することができます。小さい光源や太陽光などが生み出す影が現実に対して忠実に再現されるので、画面の中に引き込まれるような奥行き、陰影を感じる映像が生まれます。
なお高画質機能「Raytracing(レイトレーシング)」はMicrosoftが提供するAPI「DirectX 12」に内包される「DirectX Raytracing」(DXR)を使用したレンダリング機能となっており、後述のDLSSと違ってNVIDIA独自技術というわけではなく、AMD製グラフィックボード、PS5やXbox Series S/Xといったコンソールゲーム機にも互換性のある機能です。
次に、「NVIDIA DLSS」は”Deep Learning Super Sampling”の頭文字を取った略称となっており、その名の通り、近年流行りのディープラーニングによって高画質化(超解像化)する機能で、AIレンダリングの名前でもアピールされています。
DLSSが具体的にどのように動作するか簡単に説明すると、フルHD~WQHDのリアルタイムレンダリングソースから4K映像を生み出すDLSSの原型があります。このDLSSの原型が作り出した4K映像を、16Kなど現実的にはリアルタイムでのレンダリングが難しい超々高解像度のレンダリング結果と比較し、DLSSの原型の改良版1をNVIDIAの専用サーバーが作ります。
DLSSの原型の改良版1で再び4K映像を生み出し、16Kレンダリング結果と比較して、DLSSの原型の改良版2を生み出す……、というプロセスを何万回も繰り返すことで、ユーザーに提供される汎用の、もしくは個別ゲームタイトルに特化した専用のDLSSプロファイルが出来上がります。
GeForce RTX 30シリーズの登場と共にアップデートされたDLSS2.0では最終出力解像度に対して3種類のオリジナルレンダー解像度が選択でき、4K解像度の場合は、Quality(2560×1440)、Balanced(2240×1260)、Performance(1920×1080)の3種類から選択できます。
オリジナルのレンダー解像度がフルHD~WQHDなので、DLSSによる超解像(SuperSampling)プロセスを挟むとはいえ、ネイティブに4K解像度をレンダリングするよりもフレームレートは大幅に向上します。
現在のDLSSでは16Kレンダリング結果を目標に学習が繰り返されているので、高画質アンチエイリアス技術として一般的なTAAと比較してフレームレートが大幅に向上するだけでなく、画質も改善するという一挙両得な高画質化機能になっています。
以上のレイトレーシング表現やDLSSに対して、GeForce RTX 30シリーズでは通常のレンダリングに使用するCUDAコアとは別に専用コアを搭載しており、アップグレードされた第2世代レイトレーシングコアと第3世代テンサーコアによって、専用コアを搭載しない旧式GPUはもちろん、従来のGeForce RTX 20シリーズと比較してもさらに高い性能を発揮することが可能になっています。
前置きが長くなりましたが、本題のレイトレーシング表現やDLSSの性能をチェックしていきます。
まずはGeForce RTX 2080 Ti、GeForce RTX 2080 SUPER、GeForce RTX 2070 SUPERを比較対象にして、GeForce RTX 3070のレイトレーシング性能をチェックします。
解像度は4K(3840×2160)とし、検証するゲームはBattlefield V (最高設定プリセット、RTX:ON)、Control(高設定プリセット、RTX:High)、Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット、RTX:Ultra)、Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット、RTX:Max)の4種類です。
上で検証した一般的なゲーミングシーンにおけるRTX 2070 SUPERに対するRTX 3070のパフォーマンスゲインは30%程度でしたが、レイトレーシング表現を有効にすると改良されたレイトレーシングコアのおかげもあって平均で50%程度、ベストケースでは60%に引き上がります。
一方で、レイトレーシング表現に使用される専用コアRT CoreはRTX 3070では第2世代にアップグレードされているので、通常のPCゲーミングで同等の性能を発揮するRTX 2080 Tiと比較した場合、レイトレーシング表現有効下では10%程度上回るのでは?と期待していたのですが良い結果は得られませんでした。
なおControlについてはRTX 3070とRTX 2070 SUPERではテクスチャが正常に貼られない現象が発生しており(RTX 2080 Tiは正常)、4K解像度においてはDLSS併用が必須というのが実状です。
続いて上で検証したレイトレーシング対応の4タイトルについて、レイトレーシング表現とDLSS(2.0)を併用した時の性能をチェックします。
解像度は4K(3840×2160)とし、当然ですがDLSS以外のグラフィック設定(DLSS有効で排他になるものを除く)は上の検証と共通です。
DLSSの設定はDLSS2.0に対応していてQuality、Balanced、Performanceの3つのプリセットを選択できる場合、4K出力時のオリジナルのレンダー解像度が2560×1440になるQuality設定を選択しています。
レイトレーシングコアとテンサーコアが改良されたGeForce RTX 3070でもDLSSを併用したレイトレーシング表現で最高画質設定のまま4K解像度/60FPSをキープするのは流石に難しいですが、最高画質設定で50FPS程度は出ているので画質設定を多少下げれば60FPSも狙えそうです。
ちなみにRTX 3070は解像度をWQHDに下げるとネイティブでもレイトレーシング表現で60FPSに近いパフォーマンスを発揮できます。
DLSSを併用すればレイトレーシング表現を有効にしてもGeForce RTX 3070は80FPS程度をキープすることが可能です。(BFVはWQHD解像度でのDLSSに非対応)
さらにレイトレーシング表現には非対応なゲームについても、DLSSを使用することでどれくらい性能を向上させることができるのかチェックしてみます。
解像度は4K(3840×2160)とし、検証するゲームは、Anthem、DEATH STRANDING、Final Fantasy XV、Marvel’s Avengers、MONSTER HUNTER: WORLDの5種類です。DLSS以外のグラフィック設定は上の検証と共通です。
DLSSの設定はDLSS2.0に対応していてQuality、Balanced、Performanceの3つのプリセットを選択できる場合、4K出力時のオリジナルのレンダー解像度が2560×1440になるQuality設定を選択しています。
RTX 3070ではテンサーコアも第3世代にアップグレードされているので、ネイティブレンダー解像度がWQHD以下に下がり、テンサーコアによる超解像処理が加わる4K DLSSならRTX 2080 Ti越えになるのでは?と思ったのですが、こちらの結果もやはり芳しくはありません。むしろDLSSを使用することで相対的な差が広がる傾向が読み取れます。
レイトレーシング表現の対応・非対応を含めた9タイトルについて、DLSSによるGeForce RTX 3070の性能向上比率をまとめると次のグラフのようになります。
Battlefield VやControlのように最適化が優れたタイトルでは60~80%というマルチGPUクラスの性能向上が期待できます。その他のタイトルについても平均的に30~40%前後の性能向上が期待できるので、同世代で1~2ランク上のGPUと同等の性能を発揮します。性能向上に加えてTAAなど一般的なアンチエイリアスよりも高画質になるので、DLSSの普及と最適化には期待したいところです。
テンサーコアによる超解像技術DLSSについては上のようにGPUクラスやコストを超越した性能向上が得られるので今後に期待する機能なのですが、ネガティブな面を挙げておくと、DLSS有効時とDLSS無効時について、RTX 3070とRTX 2070 SUPERで比較した性能向上比率を見ての通り、オリジナルのレンダー解像度がフルHDやWQHDに下がるのでGPU別のゲインは下がる傾向があります。
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gの温度・消費電力・ファンノイズ
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gの負荷時のGPU温度やファンノイズや消費電力についてチェックしていきます。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」のGPU温度とファンノイズの検証負荷としては約20分間に渡たり連続してGPUに100%近い負荷をかける3DMark TimeSpy Stress Testを使用しています。
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gのテスト終盤におけるGPU温度は最大65度と非常に低く、ファン回転数も最大1500RPM程度と良好な数値です。上位モデルRTX 3080/3090のGAMING X TRIO同様に「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」も抜群に冷える、と評価して何ら問題のない抜群の冷え具合です。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」はアイドル時にファンが停止するセミファンレス機能に対応しており、GPU温度55度前後が始動閾値、GPU温度35度前後が停止閾値でヒステリシスも採用されています。製品によっては回転数が上下してふらつくことの多い始動や停止の直前も、閾値を上下した瞬間にピタッと切り替わります。
GPUコアクロックについては「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」の仕様値ではブーストクロック1830MHzとなっていましたが、負荷テスト中の実動平均は1900MHzでした。
なおAMD、NVIDIAともに最新GPUでは実動コアクロックはGPUコア個体毎に異なる内部設定のV-Fカーブが支配的になっており、加えて負荷中のGPU温度も大きく影響します。ファクトリーOCが施されたオリファンモデルの公式仕様値として公表されているブーストクロックはOC耐性選別の1つの指標にはなると思いますが、実動コアクロックの優劣においてあまりあてになりません。
また実用条件に近い冷却性能の検証として、実際にPCケースへ「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を組み込み、Time Spy Extreme グラフィックテスト1を1時間に渡ってループさせてGPU温度やファン回転数がどうなるかを確認してみました。
検証機材のPCケースには「Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t」を使用しています。CPUクーラーは120サイズ簡易水冷でラジエーターを天面前方に設置、またPCケースのフロントに吸気ファンとして2基とリアに排気ファンとして1基の140mm角ケースファンをそれぞれ設置し、ファン回転数は1000RPMに固定しています。
PCケースに入れた状態で長時間負荷をかけても「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」のGPUの最大温度は68度以下に収まりました。一方でファン回転数は1800RPM程度に達し、ベンチ板上での測定よりも300RPM程度ですが上昇しています。
ファン回転数は比較的高くなっているのですが、TORX FAN 4.0やヒートシンクの放熱フィン形状が上手く調整されているためファンノイズを煩く感じません。またこれくらいGPU温度が低ければ、ファン速度ももっと下げても問題ないので、「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」の冷却性能や静音性が実用上問題になることはないと断言していいと思います。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」のGPUクーラーは内排気ファンということもありPCケースの吸排気を最適化しないと冷却効率が下がるので、フロントx2/リアx1で140mmファンを設置して1000RPMで回していますが、さすがに200Wを超えるTGPなので、ベンチ板での比較的に理想な環境のままとはいきませんでした。実際にPCケースへ組み込むユーザーはPCケースの吸排気にも注意してみてください。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」はGPU温度的にはまだ余裕があるようなので、GPU温度80度以下を目標にファン速度を手動設定した例として、ファン速度を1300RPMに固定した状態で上の1時間ストレステストと連続して10分程度負荷を掛けましたがGPU温度が74度以下に収まりました。
加えて1時間のストレステスト終盤にサーモグラフィカメラ搭載スマートフォン「CAT S62 PRO」を使用してゲーム負荷時のグラフィックボード上の各所の温度をチェックしました。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」は、バックプレート表面や、背面や側面の隙間から確認できるPCB基板上のVRM電源回路やPCIE補助電源コネクタの付近の温度がホットスポットの70度未満に収まっています。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」はVRAMチップの全てを、GPUコアと同様にGPUクーラーヒートシンク本体で冷やすという、理想的な構造が採用されています。ただ今回入手した個体の問題なのか、PCIEスロット側のVRAMメモリからサーマルパッドが浮いてコンマミリ程度の隙間がありました。
GPUクーラーを取り外して分解してみても、他2カ所のVRAMチップと比較してPCIE端子側の3枚はサーマルパッドが十分に接していない様子が見て取れます。
バックプレートの表面温度をチェックすると、サーマルパッドが十分に接していないVRAMチップ付近の温度(Sp3)は、GPUコアを挟んで逆側(Sp4)よりも15度も高くなっています。今回のケースではバックプレートの温度を見る限り破損の心配をするほどではないようですが、故障に繋がる可能性もあるのでやはり気になります。
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gを含めていくつかのグラフィックボードについてサウンドレベルメーターを利用してゲーム負荷時のノイズレベルを測定・比較しました。
検証機材はベンチ台の上に平置きにしているので、サウンドレベルメーターをスタンドで垂直上方向に50cm程度離して騒音値を測定しています。
この測定方法において電源OFF時の騒音値は30dB未満です。目安として騒音値が35dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになりますが、35~38dB以下であればPCケースに入れてしまえばファンノイズが気になることはそうそうないと思います。40dB前後になるとベンチ台上で煩く感じ始め、45dBを超えるとヘッドホンをしていてもはっきり聞き取れるくらいになります。
A特性で測定しているのである程度は騒音値にも反映されていますが、同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質(細かい乱高下の有無や軸ブレ)にもよるので注意してください。
ノイズレベルの測定結果は次のようになっています。
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gのファンノイズはベンチ板上で1500RPMというファン回転数に対してノイズレベルは32dB程度で、非常に優れた静音性を発揮しています。またPCケース内に入れた時のファン速度1800RPMをベンチ台上で測定するとノイズレベルは34dB程度でした。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」に採用されているTORX FAN 4.0はノイズレベルだけでなく体感的にもファンノイズを煩く感じにくい特長があり、ノイズレベルの通りPCケースに入れてしまえばまず煩く感じることのない程度のファンノイズです。
また上で行った検証の通り冷却性能には余力があり、1300RPM前後までファン速度を落とせばノイズレベルは31dB前後まで下がりPCケースからファンノイズを聞き分けるのも難しくなります。
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gの消費電力と瞬間的な最大電源負荷を測定しました。
測定負荷には上で行った温度検証と同様に3DMark TimeSpy ストレステストを使用しています。テスト全体から1秒間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので、電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。
消費電力の測定は電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの入力ではなく変換ロスを差し引いたシステムへの出力電力をチェックしています。また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。
この方法であれば、CPU(後述のiGPUも)に負荷をかけても、CPUによる消費電力の変動はメイン電源ユニットCorsair HX 1200iの測定値には影響しません。しかしながら、測定値にはまだATX24PIN経由で供給されるマザーボードやDDR4メモリの電力が含まれるので、iGPUを使用した時の3DMark TimeSpy ストレステスト中の消費電力と最大電源負荷を同様に測定し、各種グラフィックボード使用時と差分を取る形でグラフィックボード単体の消費電力と最大電源負荷を算出します。
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8Gの消費電力は237W、最大瞬間負荷は356Wでした。MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8GのTGP(パワーターゲット)は240Wに設定されており、概ね仕様値通りの消費電力になっていると思います。
ファクトリーOCによって電力制限が引き上げられていますが、それでもRTX 2080 Tiは下回る消費電力です。一方で前世代上位モデルRTX 2080 SUPERを上回る消費電力が発生しているのは事実で、それを60度前半のGPU温度に冷やしきる「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」のGPUクーラーの性能の高さをここでも再認識させられます。
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」はファクトリーOCが施されTGP(パワーリミット)が引き上げられたモデルですが、RTX 3070のリファレンス仕様について言及すると、グラフィック性能で30%以上も上回るRTX 2070 SUPERとはほぼ同等の消費電力、一方、同等のグラフィック性能を発揮するRTX 2080 Tiと比較して30~40W、約15%程度も低消費電力になっており、Ampereアーキテクチャの省電力性能の高さを再確認できる結果です。
TGPが300W超過するRTX 3080など上位モデルと違って、TGP220Wというのは従来のミドルハイクラスからハイエンドの中間くらい数値なので、既存環境において電源や冷却を気にせずにアップグレードできるところもRTX 3070の魅力だと思います。
MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G レビューまとめ
最後に「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。
良いところ
- フルHD/240HzからWQHD/144Hz+、さらに4K/60FPSまで幅広いPCゲーミングにマッチ
- RTX 2070を実ゲームで40%以上も上回るグラフィック性能
- 前世代最上位モデルRTX 2080 Tiより低消費電力で同等のグラフィック性能
- RTX 2080 Tiとほぼ同性能ながら希望小売価格は半分の499ドルから
- TGP240W OCなRTX 3070を騒音値34dB以下で冷やしきる非常に優秀な静音性
悪いところor注意点
- 全長324mmと非常に長いのでPCケースとの干渉に注意
- 補助電源も含めてPCIEブラケットよりも30mm背が高いのでサイドパネルとの干渉に注意
- VRAMチップの一部がサーマルパッドと十分に接していない(個体差の問題?)
GeForce RTX 3070は、前世代同クラスとGeForce RTX 2070と比較して平均して40%以上、ベストケースでは50%以上の性能を発揮、さらに前世代最上位GeForce RTX 2080 Tiと比較しても15%近く低い消費電力で同等のグラフィック性能を実現しており、前世代から圧倒的な飛躍を遂げています。
次世代スタンダードなWQHD/144Hz+、4K/60FPSのラグジュアリーな超高画質、フルHD/240FPSのスーパーハイフレームレートなど幅広いPCゲーマー層にマッチし、499ドルからという手ごろな価格も相まって新定番なミドルハイクラスGPUです。
RTX 3070は2020年現在、手ごろな価格で普及しつつあるWQHD/144Hz+のIPS液晶ゲーミングモニタと組み合わせて高画質・ハイフレームレートなPCゲーミング入門に最適なグラフィックボードです。
WQHD/144HzのIPS液晶ゲーミングモニタは色々と販売されていますが、リモコン操作&USB Type-C対応でマルチメディアに最適な「BenQ EX2780Q」、ELMB Syncやスナイパーなど独自のゲーミング機能が豊富な「ASUS TUF Gaming VG27AQ」、同スペック製品の中でも特に高発色・高応答速度な「LG 27GL850-B」は当サイトでもレビューを公開していてオススメなモデルです。
・WQHD解像度/144Hz+ゲーミングモニタのレビュー記事一覧へ
その他にもバトルロイヤル系ゲームに最適な240Hzオーバーの超高速ゲーミングモニタと組み合わせてガチで勝利を狙うゲーマーにもフルHDで高FPSを稼げるRTX 3070はオススメです。
・240Hz+の超ハイリフレッシュレートなゲーミングモニタのレビュー記事一覧へ
「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」については、ファクトリーOCによって引き上げられたTGP240Wという発熱に対して、GPU温度は60度前半に収まり、なおかつ同測定環境においてノイズレベル34dB以下という抜群の冷却性能と静音性を発揮しました。RTX 3070搭載グラフィックボードの中でもオススメの1台です。
静音性の高さについては単純なチューニングだけの話ではなく、ファン速度が1800RPM程度まで上がっても風切り音が小さく、実際のノイズレベルは34dB未満に収まっていることから、新構造のTORX FAN 4.0や放熱フィン形状の最適化などハードウェアレベルで設計が優れていることが分かります。
設計によって性能に差が出やすいヒートパイプダイレクトタッチ構造のヒートシンクコアについても、「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO」では6本のヒートパイプによってGeForce RX 3070の大型GPUダイをしっかりとフルカバーできており、十分な熱交換性能を実現できているので安心してください。
以上、「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO 8G」のレビューでした。
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3スロット占有3連ファンGPUクーラーTRI-FROZR 2搭載ゲーミングモデル「MSI GeForce RTX 3070 GAMING X TRIO」をレビュー。
RTX 2070 SUPERやRTX 2080 Tiと実ゲーム性能をベンチマークで徹底比較。https://t.co/0ph0BbAKg8 pic.twitter.com/b7wT3YcaC8— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) February 10, 2021
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