Radeon RX 6600 XTグラフィックボードとしてSAPPHIREからリリースされた、3スロット占有2連ファンGPUクーラーを搭載し、大幅なファクトリーOCが施されたハイエンドモデル「SAPPHIRE NITRO+ AMD Radeon RX 6600 XT GAMING OC 8GB GDDR6(型番:SAP-NITROPRX6600XTOC8GB/11309-01-20G )」をレビューします。
AMD製次世代ミドルクラスGPU「Radeon RX 6600 XT」が、前世代上位ナンバリングのRX 5700 XTや競合NVIDIAの最新GPUであるRTX 3060に対してどれくらいの性能を発揮するのか、ゲームベンチマークでグラフィック性能を徹底比較します。
代理店公式ページ:https://www.ask-corp.jp/products/sapphire/graphicsboard/radeon-rx-6600-xt/sapphire-nitro-plus-radeon-rx-6600-xt-oc-8g-gddr6.html
製品公式ページ:https://www.sapphiretech.com/ja-jp/consumer/nitro-radeon-rx-6600-xt-8g-gddr6
SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC レビュー目次
1.SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OCの外観
2.SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OCの分解
3.SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OCの検証機材・GPU概要
4.SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OCのゲーム性能
5.SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OCの温度・消費電力・ファンノイズ
6.SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OCのレビューまとめ
【機材協力:SAPPHAIRE 国内正規代理店 アスク】
SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OCの外観
早速、SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OCを開封していきます。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」のグラフィックボード本体を見ていきます。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」のGPUクーラー外装はプラスチック製、ブラックを基調に上下ラインのシルバーを組み合わせたツートンカラーです。バックプレート側は逆にシルバーカラーがメインになります。
ちなみに下位モデルPULSEと比較すると、RX 6600 XTではGPUクーラーやグラフィックボード基板など基本的なハードウェア実装はほぼ同じで、NITRO+は『より高いファクトリーOC』、『BIOSスイッチ』、『ARGB対応LEDヘッダー』など付加価値的な特長を備えた製品になっています。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」は全長240mmでRX 6600 XTのオリファンモデルとして、またTDP150W前後のミドルクラスGPUとして標準的なサイズです、
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」はPCIEブラケットからはみ出す高さ方向も+10mm程度であり、基板自体はPCIEブラケットとほぼ同じなので、PCIE補助電源とPCケースサイドパネルとの干渉については特に注意は必要ありません。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」の2連ファンGPUクーラーには90mm径ファンが2基搭載されています。
2基の冷却ファンにはファンノイズを抑えつつ高い静圧&風量を得ることが可能なバリアーリング搭載冷却ファンHybrid Fan Bladeを採用しており、最新トレンドもしっかりと組み込まれています。バリアーリングが逆に吸気を妨げないように、ブレード間で切込みが入っているところも特徴的です。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」の冷却ファンはいずれも、Quick Connectと呼ばれる簡単に着脱可能な構造が採用されており、メンテナンス性を向上させています。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」はTGP160Wでそれほど発熱が大きくないミドルクラスGPU搭載ということもあり、一見、PCIEスロットは2スロット占有に見えますが、GPUクーラー外装が微妙に3スロット目に入ってしまうので、3スロット占有となります。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」はファクトリーOCが施されたモデルですが、補助電源数はRX 6600 XT リファレンス仕様と同じくPCIE 8PIN×1です。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」の各種ビデオ出力には半透明青色の保護カバーが装着されています。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」のビデオ出力はHDMI2.1×1、DisplayPort1.4×3の4基が実装されています。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」にはシルバーカラーが基調の金属製バックプレートが搭載されています。基板の反りや破損を防止する保護プレートとしての役割を果たしますが、金属製ではあるものの基板との間にサーマルパッドがないので冷却補助にはなっていません。
大型化(大重量化)していくGPUクーラーに対して、GPUコアと適切な圧力でクーラーベースコアが密接するよう補助するリテンションバックプレートが採用されています。またバックプレート右端にはエアスリットが設けられており、ファンからヒートシンクを通って背面に直接風が抜けるフロースルー構造も採用されています。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」は複数のBIOSを搭載したデュアルBIOSに対応し、PCIブラケット付近にはBIOS切り替え用のスライドスイッチが設置されています。
「Performanceモード(Primary Setting、Default)」と「Quietモード(Secondary Setting)」の2つのモードを簡単に切り替えることができます。スライドスイッチを切り替えてPCを起動後、BIOSが変更されていない場合はOSを再起動すると切り替わります。
デュアルBIOSという名前ですが、スライドスイッチは3段階となっており、上写真で右から順に「Performanceモード(Default)」、「Silentモード」、「Software Switchモード」となっています。
「Software Switchモード」は専用アプリTRIXXから前述のPerformanceモードとSilentモードのどちらかを割り当てることができます。(下はRX 6900 XT NITRO+のスクリーンショット)
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」のグラフィックボード基板の右端、バックプレートのNITROロゴの右側にはARGB対応VD-G型3PIN汎用LEDヘッダーが実装されています。
このLEDヘッダーとマザーボード等のLEDヘッダーとを接続し、専用アプリ「TRIXX」からExternal Sourceモードに切り替えると外部コントローラーによって「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」のLEDイルミネーションを制御できます。
グラフィックボードの重量はSAPPHIRE PULSE Radeon RX 6600 XT GAMING OCが610g、AMD Radeon RX 6700 XTが885gに対して、SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OCは614gでした。
SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OCの分解
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を分解してGPUクーラーやグラフィックボード基板についてチェックしていきます。
なお今回は自己責任で(もしくはレビュー用サンプル貸出先の協力のもと特別に許可を頂いて)分解を行っています。GPUクーラーの取り外し(分解行為)は、一部を除いて多くのメーカーではグラフィックボードの正規保証の対象外になる行為です。今回はレビューのために分解していますが、繰り返しますが保証対象外になるので基本的には非推奨の行為なのでご注意下さい。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」のGPUクーラーは、基板裏面のコア周辺4カ所、バックプレート上2カ所の計6カ所のネジで固定されていました。
バックプレート側から見て、四隅にある4ヶ所のネジを外すと、冷却ファンが固定されたGPUクーラー外装を取り外すことができます。
その他の6カ所のネジを外すとGPUクーラーは容易に取り外しが可能です。さらにネジを外していくと、PCB基板から補強プレートや各種ヒートシンク、バックプレートも取り外しが可能です。
バックプレートは金属製ですが、グラフィックボード基板背面との間にサーマルパッドはないので、放熱板としては機能しません。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」にはSAPPHIREが独自に設計したオリジナル基板が採用されています。
Radeon RX 6600 XTのGPUコアにはNavi 23と呼ばれる237mm^2のGPUダイが使用されています。(NVIDIA製GPUと違ってGPUコア天面に刻印がない)
Radeon RX 6600 XTのVRAMはGDDR6となっており、GDDR6メモリチップはMicron、Samsung、SK Hynixが製造していますが、今回入手した「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」にはSamsung製の16GbのGDDR6メモリチップが4枚搭載されています。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」のVRM電源回路はGPUコアの右側にGPUコア向け9フェーズおよび、右側にVRAM向け2フェーズで、計11フェーズが実装されています。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」」のGPUクーラー本体をチェックすると、GPUコアと接する部分は銅製ベースプレートが採用され、ベースコアからは2本の銅製ヒートパイプが伸び、アルミニウム製放熱フィンが2スロットスペース内いっぱいに展開されています。
GPUコアと接する部分には冷却性能の高さで定評のある銅製ベースプレートが採用されています。またGPUコア周辺のVRAMチップやVRM電源回路は、GPUコア向けとは別にろう付けされたアルミニウム製ベースプレートに、それぞれサーマルパッドを介して接し、ヒートシンク本体で直接冷却するという理想的な構造です。
GPUコアと接するベースプレートからは2本の銅製ヒートパイプが上下へ抜ける構造で、GPUクーラーヒートシンクの放熱フィン全体へ効率的に熱を拡散します。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」はベースプレートから伸びる2本の銅製ヒートパイプによって2スロットスペースに放熱フィンが展開されています。
フィンアレイ1枚1枚の上端に施されたウェーブカッティング構造はファンから送り込まれた風がフィンの間に入り込む時に生じるファンノイズを低減させます。
SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OCの検証機材・GPU概要
外観やハードのチェックはこのあたりにして早速、「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を検証用の機材に組み込みました。テストベンチ機の構成は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 | ||
ベンチ機1(温度・消費電力) | ベンチ機2(ゲーム性能) | |
OS | Windows10 Home 64bit (1909) | |
CPU | Intel Core i9 9900K (レビュー) Core/Cache:5.1/4.7GHz |
Intel Core i9 10900K (レビュー) Core/Cache:5.2/4.7GHz |
M/B | ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 4000MHz, 17-17-17-37-CR2 |
G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) 4000MHz, 15-16-16-36-CR2 |
システム ストレージ |
Samsung 860 EVO M.2 1TB (レビュー) |
Samsung 860 PRO 256GB (レビュー) |
データ ストレージ |
Samsung 860 QVO 4TB (レビュー) | |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
|
電源 ユニット |
Corsair HX1200i (レビュー) | |
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」のグラフィックボード側面、SAPPHIREロゴ部分にはアドレッサブルLEDイルミネーションが内蔵されています。
SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OCのGPU概要
SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OCに搭載されているGPU「Radeon RX 6600 XT」のスペックについて簡単に確認しておきます。
「AMD Radeon RX 6600 XT」のスペックは、コンピュートユニット数が32、シェーダー数が2048、コアクロックはゲームクロック2359MHz、最大ブーストクロック2589MHzです。
VRAMには速度16Gbpsで容量8GBのGDDR6メモリが採用され、RDNA2アーキテクチャの特長である超高速キャッシュInfinity Cacheを32MB搭載しています。消費電力の指標となるTBP(Typical Board Power)は160Wです。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」のコアクロックはベースクロック2064MHz、ゲームクロック2428MHz、最大ブーストクロック2607MHzへファクトリーOCが施されています。
またGPU-ZからはRadeon RX 6000シリーズの電力制限値そのものは確認できないのですが、SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OCにおいて電力制限の基準値の調整可能幅は-6%~+20%でした。
ちなみに海外ユーザーによって作成されたAMD製GPU向けチューニングソフト(vBIOS編集ソフト)から「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」の仕様を探ってみました。
Radeon RX 6600 XTのグラフィックボード全体の消費電力の指標値であるTBP(NVIDIA仕様でいうTGPのこと)は160Wに対して、GPUコア単体の電力制限はRX 6600 XTリファレンスモデルでは130Wに設定されていましたが、「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」では145Wへと引き上げられていました。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」は上記のPerformanceモードに加えて、グラフィックボード上のハードウェアBIOSスイッチによって切り替えが可能なSilentモードがあります。 Silentモードではゲームクロック2359MHz、最大ブーストクロック2589MHzで、RX 6600 XTリファレンスモデルと同じコアクロックになります。
MorePowerToolから電力制限等の情報をチェックしてみると、GPUコア単体の電力制限もまたSilentモードでは、RX 6600 XTのリファレンスモデルと同じ値である130Wに設定されていました。
なお「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」のPerformanceモードとSilentモードではGPUコアクロックや電力制限は異なるものの、ファン制御プロファイルは共通でした。
今回の検証ではResizable BARを使用していませんが、Radeon RX 6600 XT搭載グラフィックボードの「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」は、出荷時のvBIOSで最初からResize-BARに対応しています。 対応するプラットフォーム(CPU&MB)において、マザーボードBIOS設定からResize-BARを有効にし、最新ドライバをインストールすれば機能を有効化できます。
AMD Radeon RX 6600 XT スペック一覧 | ||||
RX 6600 XT |
RX 6700 XT | RX 5700 XT | RX 5700 | |
GPUコア | Navi 23 |
Navi 22 | Navi | Navi |
製造プロセス | 7nm FinFET | 7nm FinFET | 7nm FinFET | 7nm FinFET |
Compute Unit数 | 32 |
40 | 40 | 36 |
シェーダー数 | 2048 |
2560 | 2560 | 2304 |
ベースクロック | – MHz | 2321 MHz | 1605 MHz | 1465 MHz |
ゲームクロック | 2359 MHz | 2424 MHz | 1755 MHz | 1625 MHz |
ブーストクロック | 2589 MHz | 2581 MHz | 1905 MHz | 1725 MHz |
単精度性能 | – TFLOPs | 13.21 TFLOPs | 9.75 TFLOPs | 7.95 TFLOPs |
Infinity Cache | 32 MB | 96 MB | – | – |
VRAM | 8 GB GDDR6 | 12 GB GDDR6 | 8 GB GDDR6 | 8 GB GDDR6 |
バス幅 | 128-bit | 192-bit | 256-bit | 256-bit |
メモリクロック | 16.0 GHz | 16.0 GHz | 14.0 GHz | 14.0 GHz |
メモリ帯域 | 256 GB/s | 384 GB/s | 448 GB/s | 448 GB/s |
補助電源 | 8PIN~ | 8PIN+6PIN~ | 8PIN+6PIN~ | 8PIN+6PIN~ |
TBP | 160W |
230W | 225W | 180W |
発売日 | 2021年8月 | 2021年3月 | 2019年7月 | 2019年7月 |
希望小売価格 | 379ドル~ | 479ドル~ | 399ドル~ | 349ドル~ |
Radeon設定によるRX 6600 XTのチューニングについて
Radeon RX 6000シリーズでも、デスクトップ右クリックメニューからアクセスできるRadeon設定の「パフォーマンスタブ – チューニング」の順にアクセスすると、前世代同様にコアクロック・メモリクロックやファン制御に関する設定が表示されます。
チューニングを開くとまず、GPU動作プロファイルの選択が表示されます。なお6800XT/6900XTの上位モデルと違い、「Radeon RX 6600 XT」では自動OCによって性能が向上するレイジモードは用意されていません。
チューニングコントロールで「手動」を選択すると、大別してGPUコアクロック、VRAMコアクロック、ファン制御、電力制限の4種類の設定が表示されます。
GPUチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると最小周波数、最大周波数、GPUコア電圧(Voltage)の3種類の設定スライダーが表示されます。
高度な制御のスライドスイッチをONにすると設定値が%単位からMHzやmVといった実際の物理単位に変わります。「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」では最大周波数を3150MHzまで引き上げることが可能です。
Radeon VIIやRX 5000シリーズでは低電圧化耐性の指標になったもののRX 6000シリーズではどうなのかわかりませんが、とりあえず今回管理人が入手した個体については標準の最大周波数が2664MHz、GPUコア電圧が1150mVでした。
VRAMチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えるとVRAM周波数(最大周波数)の設定スライダーが表示されます。
高度な制御のスライドスイッチをONにすると設定値が%単位からMHzの物理単位に変わります。「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」では定格の2000MHzから最大周波数を2400MHzまで引き上げることが可能です。
電源チューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると電力制限の設定スライダーが表示されます。
電力制限の設定は各GPUの標準GPUコア電力制限に対するパーセンテージのオフセットですが、「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」では145Wを基準にして最大で+20%まで電力制限の引き上げが可能です。
ファンチューニングの横にあるスライドスイッチをON(赤色バー表示)に切り替えると、ゼロRPM(セミファンレス機能)の切り替えスイッチ、最大ファン速度の設定スライダーが表示されます。
また高度な制御のスライドスイッチをONにするとファン制御カーブの手動設定が表示されます。Radeon RX 6000シリーズにはGPU温度とジャンクション温度(複数あるGPUダイ上の温度センサーの最大値)の2種類の温度があり、ファン制御カーブはジャンクション温度を参照するようです。
温度とファン速度について5つの頂点を任意に指定してファン速度を制御できます。上述のセミファンレス機能との併用や、セミファンレス機能の無効化も可能です。
新アーキテクチャRDNA2で特に重要な2つの特長
AMD Radeon RX 6000に採用されている新アーキテクチャ「RDNA2」について、様々な特長が公式に発表されていますが、エンドユーザーが特に押さえておくべきポイントはVRAMフルアクセス機能「AMD Smart Access Memory」と、レイトレーシング表現対応(ハードウェアアクセラレーター搭載)の2点です。
Infinity Cacheを始め、レビューや解説記事としてRadeon RX 6000シリーズやそのアーキテクチャであるRDNA2について掘り下げられるポイントは非常に多いのですが、実性能と価格に加えて消費者目線で最低限抑えておくべきポイントを挙げるとすればこの2つになると思います。
まず1つ目の大きな特徴は「AMD Smart Access Memory」です。Radeon RX 6000シリーズを同社の次世代CPUであるRyzen 5000シリーズと組み合わせることで使用可能な(AMD公式にサポートされる)ビデオメモリアクセスを改善し性能を向上させる機能です。
Radeon RX 6000シリーズの登場当初はSmart Access Memoryの対応プラットフォームはRyzen 5000シリーズ&500シリーズチップセットの組み合わせに限定されていましたが、RX 6700 XTの登場と同時にRyzen 3000シリーズCPUの正式サポートも公表されたので、性能的には十分でRyzen 5000シリーズよりもコスパに優れるRyzen 3000シリーズとRX 6600 XTの組み合わせは非常にオススメです。
従来のプラットフォームでは32bit命令の名残でCPUとグラフィックボードVRAM間では最大でも256MB単位でしかデータのやり取りができませんでした。
AMD Smart Access Memoryでは10GBを超える大容量VRAMに対してCPUからサイズ制限なく一度にフルアクセスが可能になり、なおかつ第3世代Ryzen&X570でAMDがいち早くサポートを始めたPCIE4.0の従来比2倍な高速帯域を用いることで、VRAMアクセスによって生じるボトルネックが解消されます。
ハイエンドGPUではVRAM容量が10GBを超えるのが当たり前になったので、CPU-VRAM間でフルアクセス機能を実現するためにはより高速な帯域(PCIE4.0対応)が必要になります。1年前、第3世代Ryzen&X570など早期にPCIE4.0の普及を目指したのは、 同機能でCPU・MB・GPUのプラットフォーム単位で優位性を示すための布石だった、と考えるといろいろと納得がいきます。(そうでないとPCIE4.0アーリーアダプターな某SSDはIOベンチ以外に魅力がなく、微妙過ぎました…)
AMD公式のベンチマークによると「AMD Smart Access Memory」を使用することで最大10%程度もパフォーマンスが改善するとのこと。
AMD Smart Access Memoryの名前の方が有名ですが、実のところ、これはPCIE規格で策定されている「Re-Size BAR (Base Address Register)」と同等の機能です。【参考資料】
すでに一部のIntel Z490マザーボードにおいてベータBIOSという形ですが、Re-Size BARを有効にできるBIOSが一部メーカーから配信されており、またIntelの次世代CPUである第11世代Rocket Lake-SではRe-Size BARの正式サポートが公表されています。
またAMDと競合するGPUメーカーのNVIDIAも2021年発売のRTX 3060を皮切りに、同社最新GPUであるGeForce RTX 30シリーズ(Ampere世代)においてRe-Size BARのサポートを順次開始していくことが正式に発表されています。
CPUとGPUをコンシューマー向けに展開しているAMDだからこそいち早く、Re-Size BARの土壌としてPCIE4.0を普及させ、次世代GPUのRadeon RX 6000シリーズでサポートさせることができた、こと自体は評価に値すると言って間違いありません。
一方でAMD Smart Access Memory = Re-Size BARなので、「VRAMフルアクセス機能Re-Size BARによる性能向上は”将来的には”AMDオンリープラットフォームに限定されるユニークなアドバンテージではない」、その点は留意しておいてください。
次に2つ目の大きな特徴がレイトレーシング表現への対応です。Radeon RX 6000シリーズが採用するRDNA2アーキテクチャでは一般的にコア数としてカウントされるシェーダーコアをひとまとめにしたCU(Compute Unite)に対して1基のレイトレーシング処理支援ハードウェア「Ray Accelerator」を搭載しています。Ray Acceleratorはレイトレーシング処理においてCPUによる演算よりも10倍も高速とのこと。
余談ですが、以下のような事情もあって当サイトでは”レイトレーシング表現”と呼んでいます。
レイトレーシングというのはそもそもレンダリング手法の1つであって、現在主流なレンダリング手法のラスタライゼーション(ラスタライズ)と、ある種の対になる言葉です。
PCゲームにおいては負荷的な問題で全てをレイトレーシングでレンダリングするのではなく、「ラスタライゼーションをベースにレイトレーシングはアクセント」という形で併用するのが主流です。
またPCゲームにおいてレイトレーシングというとDirectX12がサポートするDXR(DirectX Raytracing)が有名、というか現状でレイトレーシングをサポートするPCゲームはほぼコレですが、Vulkanなどその他のAPIもレイトレーシングを続々とサポートし始めています。
下はNVIDIAによるデモですが、レイトレーシング表現では、照明(エリアライト)や太陽光(グローバルイルミネーション)の影響を厳密に再現し、光の反射やガラス面の透過なども現実に即して忠実に描写されます。レイトレーシングを採用したわかりやすい例としては鏡に映る反射など、視覚(視点から見た)の外にある物体もリアルに描画することができます。
またRadeon RX 6800 XTなどのハイエンドモデルでは「FidelityFX Super Resolution」と呼ばれる超解像機能を併用することでレイトレーシング表現と4K解像度の組み合わせにも対応します。
SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OCのゲーム性能
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」の性能を測るべく各種ベンチマークを実行しました。性能比較には「Radeon RX 6700 XT」、「GeForce RTX 3060 Ti」、「GeForce RTX 3060」、「GeForce RTX 2060 SUPER」、「GeForce RTX 2060」、「Radeon RX 5700 XT」を使用しています。
(特定のモデルや型番を指名していない場合、各GPUメーカーのリファレンスモデルもしくはリファレンス仕様のオリファンモデルです)
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」」にはBIOSスイッチで2種類のモードを切り替えられますが、今回の検証ではPerformanceモードで測定しました。またRadeon Settingから選択可能なソフトウェア上の動作モードについては標準モードのまま変更していません。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkで現在主流なDirectX11のベンチマーク「FireStrike」による比較になります。
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FireStrike | Extreme | Ultra | |
RX 6600 XT SAPPHIRE NITRO+ |
28130 | 13142 | 6542 |
RX 6700 XT | 35299 | 17136 | 8404 |
RTX 3060 Ti | 29369 | 14298 | 7200 |
RTX 3060 | 21970 | 10337 | 5054 |
RTX 2060 SUPER | 23027 | 10889 | 5357 |
RTX 2060 | 19909 | 9244 | 4377 |
RX 5700 XT | 27300 | 12947 | 6553 |
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を含めた各グラフィックボードについて、3DMarkのDirectX12ベンチマーク「TimeSpy」、およびレイトレーシング対応ベンチマーク「Port Royal」による性能比較となります。
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TimeSpy | Extreme | Port Royal | |
RX 6600 XT SAPPHIRE NITRO+ |
9525 | 4359 | 4387 |
RX 6700 XT | 11831 | 5491 | 5815 |
RTX 3060 Ti | 11668 | 5679 | 6861 |
RTX 3060 | 8755 | 4126 | 5105 |
RTX 2060 SUPER | 8895 | 4198 | 5133 |
RTX 2060 | 7617 | 3544 | 4308 |
RX 5700 XT | 9362 | 4189 | – |
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を含めた各グラフィックボードについて、近年普及しつつあるHTC VIVE Pro 2やValve Index、Oculus Quest 2のPCモードなどVR HMDを使用したVRゲームに関する性能を測定する最新ベンチマーク「VRMark」による性能比較となります。
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Orange Room | Cyan Room | Blue Room | |
RX 6600 XT SAPPHIRE NITRO+ |
14574 | 10204 | 2403 |
RX 6700 XT | 14455 | 12871 | 3366 |
RTX 3060 Ti | 15668 | 10955 | 3508 |
RTX 3060 | 11861 | 9190 | 2604 |
RTX 2060 SUPER | 12978 | 8377 | 2749 |
RTX 2060 | 11814 | 7883 | 2448 |
RX 5700 XT | 13796 | 9289 | 2546 |
続いて近年の最新PCゲームを実際に用いたベンチマークになります。同一のグラフィック設定で同一のシーンについてフルHD(1920×1080)とWQHD(2560×1440)の2種類の解像度で平均FPSを比較しました。
ベンチマーク測定を行ったゲームタイトルは、Anthem(ウルトラ設定プリセット)、Assassin’s Creed Odyssey(最高設定プリセット)、Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12)、CONTROL(高設定プリセット, DirectX12, AMD製GPUはDirectX11)、DEATH STRANDING(最高設定プリセット, TAA)、The Division 2(ウルトラ設定プリセット, DirectX11)、Final Fantasy XV(最高設定プリセット, NVIDIA GameWorksはVXAOを除き有効)、Gears 5(最高設定プリセット)、Ghost Recon Breakpoint(ウルトラ設定プリセット)、Horizon Zero Dawn(最高画質設定プリセット)、Marvel’s Avengers(最高設定プリセット, TAA)、Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット, DirectX12)、MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット, DirectX12)、Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット, TAA, DirectX12)、Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)以上の15タイトルです。
Anthem(ウルトラ設定プリセット)に関する「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Assassin’s Creed Odyssey(最高設定プリセット)に関する「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Battlefield V(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
CONTROL(高設定プリセット, DirectX12, AMD製GPUはDirectX11)に関する「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
DEATH STRANDING(最高設定プリセット, TAA)に関する「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
The Division 2(ウルトラ設定プリセット, DirectX11)に関する「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Final Fantasy XV(最高設定プリセット、NVIDIA GameWorksはVXAOを除き有効)に関する「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Gears 5(最高設定プリセット)に関する「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Ghost Recon Breakpoint(ウルトラ設定プリセット)に関する「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Horizon Zero Dawn(最高設定プリセット)に関する「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Marvel’s Avengers(最高画質設定プリセット, TAA)に関する「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Metro Exodus(エクストリーム設定プリセット, DirectX12)に関する「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
MONSTER HUNTER: WORLD(最高設定プリセット, DirectX12)に関する「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Shadow of the Tomb Raider(最高設定プリセット, TAA, DirectX12)に関する「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
Middle-Earth: Shadow of War(ウルトラ設定プリセット)に関する「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を含めた各グラフィックボードのベンチマーク結果です。
SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OCなど7種類のGPUについて実ゲーム性能の比率の平均を出してみたところ、SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OCは、初代RDNAアーキテクチャを採用する最上位モデルRadeon RX 5700 XTと同等の性能を発揮しました。
AMDが訴求するように2世代前のGTX 1060やRX 480と比較して2倍以上の性能を実現しており、旧世代のミドルクラスGPUユーザーが選ぶアップグレード対象として通用する性能です。
一方で「Radeon RX 6600 XT」のグラフィック性能を最新NVIDIA製GPUのRTX 30シリーズと比較すると、当サイトで行ったベンチマーク測定による平均性能ではRTX 3060 TiとRTX 3060の中間、RTX 3060よりも10%弱高速で、RTX 3060寄りの性能という具合でした。
AMD正式発表時の性能比較スライドでは、RTX 3060を最大15%程度上回るとされていましたが、Radeon RX 6000シリーズに優位なタイトルが集められているようです。(得手不得手があるので抜粋タイトル次第という言い方もできますが)
個別に見ていくと、RTX 3060 Tiと同等以上の性能を発揮するタイトルもあれば、平均性能的に近いRTX 3060を下回るケースもあり、RTX 30シリーズに対するRX 6600 XTの性能スケーリングはやや複雑、ゲームタイトルに依るところが大きいというのが実状です。
各サイトレビューにおいてベンチマーク比較で抜粋されるタイトルによってRX 6600 XTの性能に対する印象は大きく変わるので注意が必要なところですが、『RX 6600 XTはRTX 3060よりも概ね10%弱程度高性能』というのがざっくりとした管理人の感想です。
性能スケーリングが複雑になる原因について、ゲームタイトルがAMD製GPUとNVIDIA製GPUに対してどれくらい最適化されているかというのも影響しているのですが、加えて、RDNA2アーキテクチャの高性能を支える大容量キャッシュInfinity Cacheという構造が大きく影響しているように思います。ハイエンドモデルでは128MB、WQHDがスイートスポットなRX 6700 XTの場合は96MBのキャッシュが搭載されているのに対して、RX 6600 XTでは32MBしか搭載されていません。
RX 6600 XTはフルHDゲーミングをターゲットにしたGPUではあるものの、上位モデル同様にターゲットに対してキャッシュ容量がまだ少ない感じはあります。
シンプルに高速なVRAM帯域を実現するNVIDIAのアプローチに対して、キャッシュを組み合わせるAMDのアプローチはまだ万能というわけではなさそうです。
SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OCの温度・消費電力・ファンノイズ
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」の負荷時のGPU温度やファンノイズや消費電力についてチェックしていきます。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」にはRadeon設定から選択が可能なコアクロックや電力制限が変化する複数のモードが用意されていますが、標準モードで測定しました。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」のGPU温度とファンノイズの検証負荷としては約20分間に渡たり連続してGPUに100%近い負荷をかける3DMark TimeSpy Stress Testを使用しています。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」のテスト終盤におけるGPU温度は最大72度、ファン回転数もファン制御の設計上、一時的に高くなりますが最終的には1200RPM程度に収まっています。TGP200W未満のミドルクラスGPUとはいえ、GPU温度とファン速度は共に低く、非常に優秀な冷え具合です。
静音性重視のSilentモードに切り替えるとGPU温度とファン速度が若干下がりますが、実用上はどちらでも大差なさそうです。
GPUに搭載された複数の温度センサーのうち、最大温度を示すジャンクション温度の推移は下のようになりました。Radeon RX 6000シリーズはジャンクション温度をファン制御のソース温度とし、負荷がかかるといったん上限速度まで上昇、徐々に収束していく方式が採用されていることが多いですが、「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」でも一度、1600RPM程度に達してから、1200RPMへ収束していきます。
また「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」はアイドル時にファンが停止するセミファンレス機能に対応しており、ジャンクション温度を制御ソースとして始動閾値は60度前後、停止閾値は50度前後でヒステリシスも採用されています。製品によっては回転数が上下してふらつくことの多い始動や停止の直前も、閾値を跨いだ瞬間にピタッと切り替わります。
ただし、「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」はヒートシンクのサイズが小さいので、アイドル状態で放置していても数分置きにファンの始動と停止を繰り返しました。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」ではGDDR6メモリやVRM電源回路の温度もモニタリングが可能であり、ストレステスト中の推移は下のようになりました。ファン速度が1200RPMと低速ですが、いずれもしっかり冷えています。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」と下位モデルPULSEを比較してみると下のようになります。最低ファン速度はNITRO+が1200RPM、PULSEが1000RPMなこともあって、ファン速度が1000~1200RPMで変動するPULSEの方が終盤の温度推移は高めですが、ジャンクション温度に着目するとファン速度がほぼ同じな序盤でも温度差があるので、やはり上位モデルのNITRO+は低電圧動作な選別コアが採用されているのが分かります。
GPUコアクロックについて、「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」はゲームクロック2428MHz、最大ブーストクロック2607MHzへファクトリーOCが施されていますが、負荷テスト中の実動平均は2466MHzでした。
リファレンス仕様相当のコアクロック・電力設定になるSilentモードに切り替えると負荷テスト中の実動平均は2394MHzでした。
【備考】AMD、NVIDIAともに最新GPUでは実動コアクロックはGPUコア個体毎に異なる内部設定のV-Fカーブが支配的になっており、加えて負荷中のGPU温度も大きく影響します。ファクトリーOCが施されたオリファンモデルの公式仕様値として公表されているブーストクロックはOC耐性選別の1つの指標にはなると思いますが、実動コアクロックの優劣においてあまりあてになりません。
Radeon RX 6600 XTのようにTGPが200Wを大きく下回ると、下記のような参考環境のミドルタワーPCではベンチ板測定とあまり差が出ないので、PCケース組み込み時の検証については割愛しています。
TGPが200Wを超える上位GPUでは、実用条件に近い冷却性能の検証として、実際にPCケースへグラフィックボードを組み込み、Time Spy Extreme グラフィックテスト1を1時間に渡ってループさせてGPU温度やファン回転数がどうなるかを確認します。
検証機材のPCケースには「Cooler Master MASTERCASE MAKER 5t」を使用しています。CPUクーラーは120サイズ簡易水冷でラジエーターを天面前方に設置、またPCケースのフロントに吸気ファンとして3基とリアに排気ファンとして1基の140mm角ケースファンをそれぞれ設置し、ファン回転数は1000RPMに固定しています。
PCケースのエアフローファンには空冷ヒートシンク、水冷ラジエーター、PCケースエアフローの全ての用途で一般的な140mmサイズファンを上回る性能を発揮する「Thermaltake TOUGHFAN 14」を使用しています。140mmサイズファン選びに迷ったらこれを買っておけば問題ない、高性能かつ高静音性なファンです。
・「Thermaltake TOUGHFAN 14」をレビュー。最強140mmファンの登場か!?
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」を含めていくつかのグラフィックボードについてサウンドレベルメーターを利用してゲーム負荷時のノイズレベルを測定・比較しました。
検証機材はベンチ台の上に平置きにしているので、サウンドレベルメーターをスタンドで垂直上方向に50cm程度離して騒音値を測定しています。
この測定方法において電源OFF時の騒音値は30dB未満です。目安として騒音値が35dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになりますが、35~38dB以下であればPCケースに入れてしまえばファンノイズが気になることはそうそうないと思います。40dB前後になるとベンチ台上で煩く感じ始め、45dBを超えるとヘッドホンをしていてもはっきり聞き取れるくらいになります。
A特性で測定しているのである程度は騒音値にも反映されていますが、同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質(細かい乱高下の有無や軸ブレ)にもよるので注意してください。
ノイズレベルの測定結果は次のようになっています。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」のファンノイズは、ベンチ板測定時の1200RPM程度であればセミファンレス動作時と同じ31dB前後を示します。
ファン速度を1700RPM程度まで引き上げてもノイズレベルは32dB以下に収まる抜群の静音性を発揮するので、「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」はPCケースに組み込んでしまえばファン動作を聞き分けるのも難しいくらいの静音性です。
SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OCの消費電力と瞬間的な最大電源負荷を測定しました。
測定負荷には上で行った温度検証と同様に3DMark TimeSpy ストレステストを使用しています。テスト全体から1秒間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので、電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。
消費電力の測定は電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの入力ではなく変換ロスを差し引いたシステムへの出力電力をチェックしています。また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。
この方法であれば、CPU(後述のiGPUも)に負荷をかけても、CPUによる消費電力の変動はメイン電源ユニットCorsair HX 1200iの測定値には影響しません。しかしながら、測定値にはまだATX24PIN経由で供給されるマザーボードやDDR4メモリの電力が含まれるので、iGPUを使用した時の3DMark TimeSpy ストレステスト中の消費電力と最大電源負荷を同様に測定し、各種グラフィックボード使用時と差分を取る形でグラフィックボード単体の消費電力と最大電源負荷を算出します。
SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OCの消費電力は152W、最大瞬間負荷は184Wでした。
Radeon RX 6600 XTは公式仕様でグラフィックボード全体の消費電力の指標値が160Wと公表されており、「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」はメーカー仕様としてTGP180Wと公表されていましたが、実測の消費電力はそれらをさらに下回ってきました。
消費電力を50Wも削減しながらRX 6600 XTの性能は前世代RX 5700 XTとほぼ同等なので、新ゲーミングアーキテクチャRDNA2のワットパフォーマンスの高さを再確認できる結果です。
SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC レビューまとめ
最後に「SAPPHIRE NITRO+ AMD Radeon RX 6600 XT GAMING OC 8GB GDDR6(型番:SAP-NITROPRX6600XTOC8GB/11309-01-20G)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。
良いところ
- 最新高画質PCゲームの60FPSやe-Sports系の144Hz+などフルHDゲーミングにマッチ
- 前世代上位モデルRX 5700 XTやRTX 2070 SUPERと同等のグラフィック性能
- NVIDIAの最新GPUでは、RTX 3060よりも10%弱程度高速
- AMD優位なタイトルならRTX 3060 Tiと同等以上の性能も発揮できる
- 379ドルからという手を出しやすい価格帯
- 白銀のバックプレートにアドレッサブルLEDイルミネーションが映える
- 全長240mmで換装に使い易いショートサイズ
- RX 6600 XTを騒音値32dB以下で冷やす非常に優秀な静音性
- ハードウェアスイッチで切り替え可能なデュアルBIOS
悪いところor注意点
- 2スロット占有に見えて、実は3スロット占有なので注意
- セミファンレス機能は数分置きにファンの始動と停止を繰り返す可能性あり
- レイトレーシング表現を支援する専用ハードウェアの性能ではRTX 30シリーズに劣る
- ワッパの高さに注目されてマイニングの餌食になり、2021年9月現在、在庫が枯渇中
AMD Radeon RX 6600 XTはミドルクラス製品ながら、初代RDNAアーキテクチャを採用する最上位モデルにして、上位ナンバリングのRadeon RX 5700 XTと同等の性能を発揮します。
最新高画質PCゲームの60FPSやe-Sprotsタイトルの144Hz+といったフルHD解像度のPCゲーミングをターゲットに最適化された性能、低消費電力ゆえに換装しやすい小型モデルが多く、379ドルからという手を伸ばしやすい価格帯なので、RX 480やGTX 1060など旧世代のミドルクラスGPUを使用しているユーザーが選ぶアップグレード対象として通用する製品です。
最新世代同士で比較した場合、比較用に抜粋するゲームタイトル次第ではあるものの、当サイトを含め一般レビューサイトでは、”RX 6600 XTはRTX 3060よりも10%弱程度高速である”、と評価が多いように思います。
「Radeon RX 6600 XT」の北米希望小売価格は379ドル~となっており、発売当時、RTX 3060 Tiが399ドル~、RTX 3060 Tiが329ドル~なので、若干コスパが悪く見えるのですが、2021年初頭から続くGPU枯渇状況を踏まえた値付けとも見られなくはないので、価格面の評価は難しいところです。
なお2020年末に発売された最新コンソールゲーム機についてはPlayStation 5がGeForce RTX 3060やRadeon RX 6600 XTと同じくらい、Xbox Series XがGeForce RTX 3070よりもやや遅いくらいの性能です。(GPUスペックから想定したざっくり評価ですが)
マウス&キーボードの操作に標準で対応しているなどPCゲーミングならではの魅力はありますが、すでにPlayStation 5の時点でグラフィック性能はRTX 3060程度まで達しているので、2021年にPCゲーミング用途でグラフィックボードを新調するのであればGeForce RTX 3060 TiやRadeon RX 6700 XTよりも高速な製品を選択するのがオススメです。
そういった事情もあって発売当初こそ、実店舗の店頭やオンライン通販でも在庫が豊富だったRX 6600 XTですが、マイニングにおけるワットパフォーマンスの高さから買い占めの対象になり、8月末の時点で各所で在庫が枯渇してしまいました。
もともとグラフィックボード単体で5万円以上(スペック的に同性能なPS5が丸ごと買える価格)ということもあり、自作erにはそれほど人気はない印象だったので、影響は少ないとも取れますが、”価格的にも在庫的にも気軽に購入できるミドルクラスGPU”としては難しい状況になったと思います。
「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」については当サイトの測定環境においてノイズレベル32dB以下という抜群の冷却性能と静音性を発揮しました。
実動150W以下という低消費電力なGPUなのでPCケースに組み込んでもベンチ板測定時と大差ないファン速度になるはずで、実用シーンでもGPUクーラーのファンノイズを聞き分けるのも難しいレベルの静かさを発揮すると思います
また、ただファン制御チューニングで無理やり低速にしているのではなく、1200RPMという非常に低いファン速度でも、GPU温度に加えてVRAMチップやVRM電源回路を含めたグラフィックボード全体の温度が非常に低いので安心して運用できます。
また「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」は白銀のバックプレートやGPUクーラー側面にアドレッサブルLEDイルミネーションが映える外観も目を引くポイントです。ホワイトやシルバーのカラーリングを基調にしたゲーミングPCを組みたいユーザーにとっても重宝するモデルだと思います。
以上、「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC」のレビューでした。
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大幅なファクトリーOCが施されたハイエンドモデル「SAPPHIRE NITRO+ AMD Radeon RX 6600 XT GAMING OC 8GB GDDR6」をレビュー。
前世代RX 5700 XTや競合最新のRTX 3060やRTX 3060 Tiと実ゲーム性能をベンチマークで徹底比較https://t.co/YsZxvH8ct7 pic.twitter.com/OqA5pB4FZQ— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) September 5, 2021
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