スポンサードリンク
引張強度と熱膨張率に優れる特殊な液晶ポリマー素材をファンブレードに採用し、従来製品よりも高い風量・静圧と静音性を実現した高性能ファン「Thermaltake TOUGHFAN 12(型番:CL-F117-PL12BL-A)」をレビューしていきます。
今回は360サイズ簡易水冷CPUクーラーに「Thermaltake TOUGHFAN 12」を3基設置して、冷却性能や静音性をNoctua NF-A12x25やCooler Master MasterFan SF120Mと徹底比較します。
製品公式ページ:https://www.thermaltake.com/toughfan-12-high-static-pressure-fan-single-pack.html
Thermaltake TOUGHFAN 12 レビュー目次
1.Thermaltake TOUGHFAN 12の外観・付属品
2.Thermaltake TOUGHFAN 12の検証機材
3.Thermaltake TOUGHFAN 12の性能
・Thermaltake TOUGHFAN 12の静音性
・Thermaltake TOUGHFAN 12の冷却性能
4.Thermaltake TOUGHFAN 12のレビューまとめ
【機材協力:Thermaltake国内正規代理店 株式会社アスク】
Thermaltake TOUGHFAN 12の外観・付属品
まずは「Thermaltake TOUGHFAN 12」の外観や付属品をチェックしていきます。「Thermaltake TOUGHFAN 12」の付属品は、降圧型ローノイズケーブル、ファン固定用テーパーネジ4個、ファン固定用長ネジ4個となっています。
「Thermaltake TOUGHFAN 12」は120mm角サイズ、定格2000RPMのPWM速度調整対応4PIN冷却ファンです。PWM速度調整によって500~2000RPMの範囲内で速度調整が可能です。
ファンフレームの四隅には防振ラバーパッドが装着されており冷却ファンの振動による共振の発生を抑制します。
「Thermaltake TOUGHFAN 12」の軸固定はファンブレード回転方向と直交する向きで回転するように6本の軸フレームが伸びる構造です。
「Thermaltake TOUGHFAN 12」の軸受けには、安定性と耐久性を高める金属製強化モーターハブ、潤滑剤によって動作音を低減し静音性と耐久性に優れる第2世代油圧ベアリングが採用されています。
PWM対応4PINファン端子ケーブルの長さは500mm、ファンケーブルにはゴム製スリーブが施されています。
「Thermaltake TOUGHFAN 12」の最大の特徴は引張強度と熱膨張率に優れる特殊な液晶ポリマー素材を採用したファンブレードです。高速回転でも形状が変化しないのでファンフレームとの隙間を限界まで小さくし、かつ熱膨張もしにくいのでファン自体も高温になるラジエーター冷却にも最適です。
「Thermaltake TOUGHFAN 12」をNoctua NF-A12x25 PWMと比較してみるとこんな感じです。フレームの形状やカラーリングこそ違いますが、ファンとして重要度の高い、ファンブレードとファンハブの形状はほぼ完全に一致しています。ファンブレードの素材独特の模様といい同一素材にしか見えません。
「Noctua NF-A12x25 PWM」といえば0.5mmという限界に挑んだフレーム-ブレード間の隙間の小ささが特徴でしたが、「Thermaltake TOUGHFAN 12」は公式には特にアピールされていないものの、ファンブレードとフレームの隙間の大きさもほぼ同じに見えます。
これらの優れた設計によって「Thermaltake TOUGHFAN 12」は水冷ラジエーター、空冷CPUクーラー、PCケースエアフローファンの3つの用途で求められる静圧に対して、いずれの用途でも一般的な冷却ファンよりも高い風量を得ることができるとアピールされています。
Thermaltake TOUGHFAN 12の検証機材
「Thermaltake TOUGHFAN 12」の検証機材を紹介しておきます。「Thermaltake TOUGHFAN 12」の検証機材として、Intel Core i9 10900KやIntel Core i9 7980XEなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。
テストベンチ機の構成 | ||
CPU | Intel Core i9 10900K (レビュー) |
Intel Core i9 10980XE(レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Ripjaws V F4-4000C15Q-32GVK (レビュー) 3600MHz, 16-16-16-36-CR2 |
G.Skill Trident Z Black F4-4200C19Q2-64GTZKK (レビュー) 3600MHz, CL16-16-16-36-CR2 |
マザーボード |
ASUS ROG MAXIMUS XII EXTREME (レビュー) |
ASUS PRIME X299 Edition 30 (レビュー) |
ビデオカード | ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core (レビュー) MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC (レビュー) |
|
システム ストレージ |
Samsung SSD 860 PRO 256GB (レビュー) | |
データ ストレージ |
Samsung SSD 860 QVO 4TB (レビュー) |
|
OS | Windows10 Home 64bit | |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) | |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Intel Core-XやAMD Ryzen TRのようなハイエンドデスクトップ環境はもちろん、メインストリーム向けでもハイパフォーマンスな環境を目指すのであれば、システムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
・「Thermal Grizzly Carbonaut」はCore i9 9900Kを冷やせるか!?
Thermaltake TOUGHFAN 12の冷却性能と静音性
本題となる「Thermaltake TOUGHFAN 12」の冷却性能と静音性を詳細に検証していきます。「Thermaltake TOUGHFAN 12」の性能を検証する環境として360サイズ簡易水冷CPUクーラー「Fractal Design Celsius S36」の水冷ラジエーターベースにして、120mm角冷却ファンとして最高クラスの性能を誇る「Noctua NF-A12x25 PWM」や、「Cooler Master MasterFan SF120M」と性能を比較しました。
Thermaltake TOUGHFAN 12の静音性
まずはサウンドレベルメーター(騒音計)を使用して「Thermaltake TOUGHFAN 12」のファンノイズをチェックしてみました。検証機材はベンチ台の上に平置きにしているので、サウンドレベルメーターをスタンドで垂直上方向に50cm程度離して騒音値を測定しています。
この測定方法において電源OFF時の騒音値は30dB未満です。目安として騒音値が35dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになりますが、35~38dB以下であればPCケースに入れてしまえばファンノイズが気になることはそうそうないと思います。40dB前後になるとベンチ台上で煩く感じ始め、45dBを超えるとヘッドホンをしていてもはっきり聞き取れるくらいになります。
A特性で測定しているのである程度は騒音値にも反映されていますが、同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質(細かい乱高下の有無や軸ブレ)にもよるので注意してください。
Fractal Design Celsius S36の水冷ラジエーターに「Thermaltake TOUGHFAN 12」、「Noctua NF-A12x25 PWM」、「Cooler Master MasterFan SF120M」をそれぞれ3基ずつ装着した場合のファンノイズの騒音値はファン回転数を横軸として次のようになっています。
「Thermaltake TOUGHFAN 12」は同じ水冷ラジエーターにおいて「Noctua NF-A12x25 PWM」と比較すると、ほぼ完全一致と言っても問題ない具合のノイズレベルカーブを描きました。
色を除けばファンブレードの形状が一致しているので、当然と言えば当然の結果なのかもしれませんが、風切り音だけでなく軸音についても「Thermaltake TOUGHFAN 12」ではシャー/シュルシュル等の嫌な音はなく、やはりNF-A12x25と遜色ない静音動作です。
ちなみにMasterFan SF120Mについてはダブルボールベアリング特有の”シャー”もしくは”シュルシュル”という軸音が聞こえ、そのノイズが低速回転時のノイズレベルの差に反映されているようです。
一方で1600RPM以上の高速回転時において、MasterFan SF120MはTOUGHFAN 12やNF-A12x25 PWMと比較して僅かながら低いノイズレベルを示します。ただし高速回転時も上述の軸音は聞こえているのですが、ファンブレードの風音が数値上は支配的になってしまうので、このような結果になっています。ダブルボールベアリングの仕様上、軸音は微妙ですが、逆に言うとバリヤーリングは風切り音的に液晶ポリマー新素材よりも優位という見方もできそうです。
ともあれ「Cooler Master MasterFan SF120M」のダブルボールベアリングの軸音はサウンドレベルメーターの測定に上手く乗らないので、このノイズを含めて厳密に静粛性を比較すると、静音性については「Thermaltake TOUGHFAN 12」や「Noctua NF-A12x25 PWM」に軍配が上がると思います。
ダブルボールベアリングは耐久性が高い反面(メーカー公称MTBFで比較すると、TOUGHFAN 12が4万時間、NF-A12x25 PWMが15万時間に対して、MasterFan SF120Mは28万時間)、独特の軸音が聞こえやすいというデメリットもあるのでこの辺りは性能面でトレードオフだと思います。
Thermaltake TOUGHFAN 12の冷却性能
続いて「Thermaltake TOUGHFAN 12」の冷却性能(風量・静圧)をチェックしていきます。
CPUクーラーの冷却性能を検証するためのストレステストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、Aviutl&x264を使って動画のエンコードを行います。動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列実行、16コア以上は3並列実行としています。テスト中のファン回転数については一定値に固定します。注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
2020年に発売されたばかりのIntel第10世代Comet Lake-S最上位モデル、10コア20スレッドCPUの「Intel Core i9 10900K」を使用して、Intel第10世代Core-S環境における、「Thermaltake TOUGHFAN 12」を含めた各冷却ファンの冷却性能を検証していきます。
今回検証に使用するCore i9 10900Kは、ROCKIT COOL製殻割りキット「ROCKIT COOL 10th Gen Copper Upgrade kit」で殻割りしてTIMをクマメタル化、さらにオリジナル銅製IHSに換装しています。
・Core i9 10900Kの殻割りクマメタル化&銅製IHSの冷却性能を検証
Core i9 10900KのOC設定は「CPUクロック倍率:51」「キャッシュ倍率:47」「CPUコア電圧:1.300V(固定モード)」「CPU SVIDサポート: Disabled」「ロードラインキャリブレーション: Level7」、メモリのOC設定は「メモリ周波数:3600MHz」「メモリ電圧:1.350V」「メモリタイミング:16-16-16-36-CR2」としています。
Core i9 10900Kを全コア5.1GHzにOCすると、Cinebench R20のスコアは6600ほどとなります。またこの動作設定において上で紹介したストレステストを実行すると、システムの消費電力(マイナス30~40WでCore i9 10900Kの消費電力)は330W前後に達します。
Fractal Design Celsius S36の水冷ラジエーターに「Thermaltake TOUGHFAN 12」をはじめ検証を行う冷却ファンをそれぞれ装着し、今回比較する3機種はファンノイズの傾向がほぼ一致しているので、ファン回転数を1000RPMと1500RPMに固定してストレステスト中のCPU温度を比較しました。
まずはファン回転数を1000RPMに固定した場合について、1度以下の僅差ではありますが、Noctua NF-A12x25 PWMが最も冷え、次いで「Thermaltake TOUGHFAN 12」とCooler Master MasterFan SF120Mがほぼ同着という感じです。
続けてファン回転数を1500RPMに固定した場合について、やはりCPU温度差は1度未満ではありますが、Noctua NF-A12x25 PWMとCooler Master MasterFan SF120Mが同率1位、次いで「Thermaltake TOUGHFAN 12」という結果になりました。
Thermaltake TOUGHFAN 12とNoctua NF-A12x25 PWMはファンブレードの形状だけでなく、ファンノイズの傾向もほぼ一致していたので、冷却性能で微妙に(1度以下の)差が出た理由はラジエーター用ガスケットの有無ではないかと思います。(測定誤差の可能性も否定できなくはないのですが)
Thermaltake TOUGHFAN 12はデザイン上はスマートに見える凹凸のあるファンフレーム形状が、逆にラジエーターとの間に隙間を生んでしましい、ラジエーター放熱フィンに対する静圧に損失が出てしまったのかなと。
余談ですが静圧的には、液晶ポリマー性ファンブレード&ガスケット(Noctua NF-A12x25 PWM)が低速回転時に強く、回転数が上がってくるとバリヤーリング(Cooler Master MasterFan SF120M)でも十分な静圧を稼げるようになる、といった感じでしょうか。
Thermaltake TOUGHFAN 12のレビューまとめ
最後に「Thermaltake TOUGHFAN 12(型番:CL-F117-PL12BL-A)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 500~2000RPMのPWM速度制御に対応した120mm角の汎用ファン
- NF-A12x25 PWMとほぼ同性能で、扱いやすい黒色のカラーリング
- 引張強度と熱膨張率に優れる特殊な液晶ポリマー素材を採用したファンブレード
- 金属製強化モーターハブと第2世代油圧ベアリングは軸音が静か
- Noctua NF-A12x25 PWMとほぼ同等の静音性
- Noctua NF-A12x25 PWMとほぼ同等の冷却性能(風量・静圧)
- 降圧型ローノイズケーブルで低速運用も簡単
- メーカー保証期間は2年間
- ラジエーター用ガスケットの差で、1度以下ではあるもののNF-A12x25より冷却性能が低い
- 公称製品寿命は4万時間、保証期間は2年で、 NF-A12x25やMasterFan SF120Mより短い
その見た目や製品仕様から想像した通り、「Thermaltake TOUGHFAN 12」は”NF-A12x25の黒色バージョンなのでは?”という期待に応え、120mm角冷却ファンとしては当サイトで各社の製品と比較する度に競合製品を千切っては投げてきたNoctua NF-A12x25 PWMとそん色ない性能を発揮してくれました。
厳密に静音性と冷却性能を比較するとラジエーター用ガスケットの差でNoctua NF-A12x25 PWMにはあともう半歩及ばないという評価になりますが、「Thermaltake TOUGHFAN 12」には、”ただ黒色のカラーリングである”という魅力があり、卓越した性能にも関わらずNF-A12x25 PWMがいまいち盛り上がらない最大の欠点をカバーしています。
黒色のカラーリングで高性能という意味で期待したCooler Master MasterFan SF120Mはダブルボールベアリングを採用しているため、高耐久性の反面、”シャー”もしくは”シュルシュル”という特有の軸音が若干聞こえるところが玉に瑕だったのですが、「Thermaltake TOUGHFAN 12」に採用されている第2世代油圧ベアリングは、軸音の静かさにおいてもNF-A12x25と同等、非常に耳あたりの良いファン動作音です。
競合製品と比べて明らかに見劣りする部分があるとすれば、公称製品寿命と保証期間でしょうか。Noctua NF-A12x25 PWMが15万時間/6年、Cooler Master MasterFan SF120Mが28万時間/5年に対して、「Thermaltake TOUGHFAN 12」は公称製品寿命が4万時間、メーカー製品保証期間が2年と少し短めです。
冷却性能と静音性に妥協したくないし、見た目のカッコよさにもこだわりたい欲張りなユーザーにとって「Thermaltake TOUGHFAN 12」は120mmサイズ汎用ファンとして非常におすすめな製品です。国内での発売が待ち遠しい!!
以上、「Thermaltake TOUGHFAN 12」のレビューでした。
記事が参考になったと思ったら、ツイートの共有(リツイートやいいね)をお願いします。
特殊な液晶ポリマー素材をファンブレードに採用し、従来製品よりも高い風量・静圧と静音性を実現した高性能ファン「Thermaltake TOUGHFAN 12」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) October 1, 2020
Noctua NF-A12x25やCooler Master MasterFan SF120Mと静音性や冷却性能を徹底比較!https://t.co/Oi69SQroBO
関連記事
・「Noctua NF-A12x25 PWM」を360サイズ簡易水冷に組み込む・「Cooler Master MasterFan SF120M」をレビュー
・エアフロー重視のケースファン「NZXT Aer F 120/140」をレビュー
・可変アルミフレーム搭載ファン「IN WIN MARS」をレビュー
・暖かさを追求したパーカー「Noctua NP-H1」が届いた【ミニレビュー】
(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
スポンサードリンク