18年最新にして最速クラスかつ最大容量なNVMe M.2 SSD「Samsung SSD 970 EVO 2TB」を8枚、4枚のNVMe M.2 SSDを増設可能なPCIE拡張ボード「HighPoint SSD7101A-1」を2台使用して、26GB/sを上回る超爆速なRAID0ストレージを構築してみたので、各種検証結果を簡単にレビューしていきます。
はじめに
今回のレビューに当たってSamsung製SSDの国内正規代理店であるITGマーケティング社より検証機材として18年最新にして最大容量のNVMe M.2 SSDの「Samsung SSD 970 EVO 2TB (型番:MZ-V7E2T0BW/IT)」を8枚お借りしました。
「Samsung SSD 970 EVO 2TB」については詳細な個別レビュー記事を公開中です。速くて丈夫で安いと3拍子揃ったSamsung SSD 970 EVOシリーズは容量バリエーションにも富んだ自作erの強い味方で、18年最新メインストリーム向けNVMe M.2 SSDとしてはおすすめ製品の1つです。
・「Samsung SSD 970 EVO 2TB」をレビュー
加えて8枚の「Samsung SSD 970 EVO 2TB」をマザーボードに接続するためのNVMe M.2 SSDアダプタとして、x16サイズPCIEスロットに4枚のNVMe M.2 SSDを増設可能なPCIE拡張ボード「HighPoint SSD7101A-1」を私物と貸出機で2台使用しています。
「HighPoint SSD7101A-1」の動作や使い方については詳細レビューを別途公開しているのでこちらを参照してください。
・NVMe M.2 SSDの4枚刺し拡張ボード「HighPoint SSD7101A-1」をレビュー
今回は検証機材に使用していませんが、PLXチップセット内蔵でPCIE3.0x4やPCIE3.0x8帯域でもNVMe M.2 SSDの4枚刺しが可能な「HighPoint SSD7101A-1」と違って、マザーボードがPCIEレーンの分割に対応している必要があり、元の帯域に応じた枚数しか増設できないものの価格が安価な「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」についてもレビューを公開しています。
・「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」をレビュー
また過去に8枚のSamsung 960 PRO 512GBを8枚使用してRyzen Threadripper環境でNVMe SSDのハードウェアRAID機能「Ryzen Threadripper NVMe RAID」の検証も行っています。Ryzen Threadripper NVMe RAIDだけでなく、Intel Core-X&X299環境におけるNVMe SSDのハードウェアRAID機能「Intel VROC」についても概要の解説など、当記事で不足する内容を補足している部分もあるので参考にしてください。
・Samsung 960 PRO 512GB 8枚でRyzen TRのNVMe RAIDを試す
現在普及の兆しを見せるUSB3.1 Gen2の10Gbpsの4倍となる40Gbpsの超高速帯域による通信を実現するThunderbolt3の外付けストレージとして、NVMe SSD内蔵モバイルストレージ「Samsung Portable SSD X5」や4枚のNVMe M.2 SSDを増設可能な外付けストレージ「HighPoint RocketStor 6661A-NVMe」が市販されており、システム内だけでなく複数システムにまたがって、数TBクラスの大容量データが高速に共有可能です。
・「Samsung Portable SSD X5 1TB」をレビュー
・「HighPoint RocketStor 6661A-NVMe」をレビュー
検証機材
8枚のNVMe M.2 SSDでRAID0を構築する検証機材のシステムとして、18コア36スレッドCPUの「Intel Core i9 7980XE」やASRock X299 OC Formulaなどで構成される検証機を使用しました。検証用ストレージには冒頭でも紹介したようにSamsung製SSDの国内正規代理店であるITGマーケティング社より検証機材としてお借りした最新NVMe M.2 SSDの「Samsung SSD 970 EVO 2TB」を使用しています。検証システムの詳細は下のテーブルのようになっています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 7980XE 18コア36スレッド (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4200C19Q2-64GTZKK(4枚を使用) DDR4 8GB*4=32GB (レビュー) OC設定:3600MHz, 16-16-16-36-CR2 |
マザーボード | ASRock X299 OC Formula (レビュー) |
ビデオカード | MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC (レビュー) |
システムストレージ | Samsung SSD 860 PRO 256GB (レビュー) |
検証用ストレージ |
Samsung SSD 970 EVO 2TB *8 (レビュー) |
M.2 SSDアダプタ |
HighPoint SSD7101A-1 *2 (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する18年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Intel Core i9 CPU&X299のようなエンスー環境のシステムストレージ用に一押しのSSDです。
・「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
NVMe SSDのRAID0による性能スケーリングについて
NVMe M.2 SSDを使用したRAID0ストレージの性能のスケーリング具合についてSamsung SSD 970 EVO 2TBを8枚使用して各種ベンチマークソフトでチェックしていきます。
まず最初に上のIometorを使用してRAID0ストレージの性能のスケーリングをチェックし見ました。設定はQD32、1MB/2MB、シーケンシャル100%で、読み出しと書き込みをそれぞれ行っています。
以下の測定ではいずれもWindowsパーティション作成を行っており、データサイズ1MBの「WIN FS 1MB」、データサイズ2MBの「WIN FS 2MB」、2n枚のストレージでn枚によるRAID0アレイを2つ作成したデータサイズ1MBの「WIN FS x2 1MB」の3種類について測定しました。読み出しについては過去にRyzen Threadripper&X399環境においてSamsung 960 PRO 512GBを8枚使用して測定した結果も掲載しています。
Iometorを使用した測定結果は次のようになりました。
まずは読み出し速度のスケーリングについてですが、Samsung SSD 970 EVO 2TBのRAID0ストレージはデータサイズ1MBに対して7枚のRAID0までは綺麗に読み出し速度が比例上昇して23.3GB/sに達しています。8枚目では速度増加が鈍って24.8GB/s程度となりました。データサイズを2MBに増やすと8枚によるRAID0でも26.7GB/sに達し、枚数に対して読み出し速度が綺麗に比例します。2台のHighPoint SSD7101A-1でそれぞれ2,3,4枚のRAID0ストレージを構築して同時に読み出しアクセスを行った場合も読み出し速度は綺麗にスケーリングしており、4枚のRAID0×2では26.7GB/sを実現しています。
Ryzen Threadripper&X399環境のRAIDモードでハードウェアRAIDを構築するとWindowsパーティション作成によって5枚目以降のRAID0構築で読み出し速度の上昇が鈍りましたが、HighPoint SSD7101A-1を2台使用してCore-X&X299環境で構築したRAID0ストレージは基本的に枚数に対して読み出し性能が綺麗にスケーリングしています。
参考までにRAID0ストレージを構築せずに8枚のSamsung SSD 970 EVO 2TBのシングルボリュームを作成して8つのボリュームに対して同時に読み出しを実行すると1つ当たり3500MB/sの8掛けで28GB/sの読み出し速度になりました。
RAID0を構築するとトータルアクセススピードを比較して1GB/s程度読み出し速度が低下しますが、理想28GB/sに対して26.7GB/sが実現できているので悪くない結果だと思います。
書き込みについても同様の測定を行ったところ次のようになりました。RAIDの枚数5枚までは綺麗にスケーリングしているのですが、6枚目以降でスケーリングが鈍るのが確認できます。下で紹介するATTO Disk Benchmarkでは8枚のRAID0で書き込み20GB/sをマークしているので、iometerの書き込みと相性が悪いのか設定がよくないのだと思います。なお4枚のRAID0×2では読み出し同様に枚数に対して綺麗にスケーリングして、20GB/sで理想的な書き込み速度を実現しています。
ATTO Disk Benchmark(512B-64MB, 256MB, QD4)の結果は次のようになっています。ブロックサイズ別のランダム性能を主にチェックするベンチマークなので4KB~4MBを抜粋して読み出し性能と書き込み性能をグラフにして比較しました。
ブロックサイズが1MB以上に大きくなるとRAID0に使用している枚数に応じてアクセススピードがスケーリングされているのが確認できます。iometerでは12GB/sで頭打ちになっていた書き込み速度も、ATTO Disk Benchmarkでは8枚のRAID0で理想的な20GB/s越えを達成しています。
今回のRAID0はソフトウェアRAIDなので4KB~32KBなどブロックサイズの小さいアクセスでは読み出し速度と書き込み速度が非RAID0のシングルボリュームと比べて若干低下します。
参考までに過去に検証を行ったRyzen Threadripper NVMe RAIDはハードウェアRAIDなのでブロックサイズの小さい4KB~32KBでも非RAIO0と比較してランダム性能が同程度の数値を維持できていました。Core-X&X299環境でもIntel VROCを使えばRAID時に小さいブロックサイズでも同様に性能を維持できると思います。
Ryzen Threadripper NVMe RAIDとTLC SSDのキャッシュ容量について
18年現在で主流となっている安価なTLC NANDでは一部に高速なSLCキャッシュを使用することで書き込み性能を改善する機能が採用されており、そういった所謂TLC型SSDでRAIDを構築した時の動作についても簡単にチェックしてみました。
検証機材として使用しているSamsung SSD 970 EVO 2TBを含め「Samsung SSD 970 EVO」シリーズにはメモリチップとしてSamsung製64層V-NAND 3bit MLC、一般に言うところのTLCタイプ64層3D NANDが採用されています。TLC NANDは上位モデル970 PROに採用されているMLC NANDに比べて書き込み性能で劣るため、TLC SSDでは一般に搭載するNANDフラッシュメモリーの一部をSLCキャッシュとして使用して書き込み性能を底上げする機能が採用されていますが、「Samsung SSD 970 EVO」ではこのキャッシュ機能を強化し、必要に応じてSLCの領域を増減する「Intelligent TurboWrite」機能が採用されています。
「Intelligent TurboWrite」においてはキャッシュとなる疑似SLC領域は標準で数GBの容量が確保されますが、それを上回る大容量の書き込みアクセスが発生した場合にモデルによって定められた容量を追加でバッファ領域として利用できます。「Samsung SSD 970 EVO」シリーズ各モデルのSLC領域、可変領域、書込速度は次のテーブルのようになっています。
「Samsung SSD 970 EVO」シリーズ IntelligentTurboWrite の仕様 |
|||||
容量 | 250GB | 500GB | 1TB | 2TB | |
キャッシュ サイズ |
標準 | 4GB | 6GB | ||
可変領域 | 9GB | 18GB | 36GB | 72GB | |
最大 | 13GB | 22GB | 42GB | 78GB | |
連続書込 | キャッシュ内 | 1500MB/s | 2300MB/s | 2500MB/s | |
キャッシュ外 | 300MB/s | 600MB/s | 1200MB/s | 1250MB/s |
この検証ではHD Tune Proというベンチマークソフトを使用して、数百GBの大容量な連続書き込みによる書き込み速度の低下をチェックしていきます。
Samsung SSD 970 EVO 2TBへ200GBサイズの連続書き込みを行った結果が次のようになっています。Samsung SSD 970 EVO 2TBの製品仕様通り78GB(実効80GB)のSLCキャッシュを超過すると、書き込み速度は理想的な2500MB/sから1250MB/sへと階段的に下がっているのが確認できます
ちなみにMLC型のSamsung SSD 970 PRO 1TBでは大容量の連続書き込みを行っても書き込み速度の低下は発生せず、2500MB/s程度の非常に高速な書き込み速度を安定して発揮することが可能です。
本題となるTLC型SSDを使用してRAIDを構築した場合の動作についてですが、簡単な比較のためにSamsung SSD 970 EVO 2TBを2枚使用したRAID0ストレージで同様に200GBサイズの連続書き込みを行ったところ、SLCキャッシュの容量も2倍の156GB(実効160GB)に増加しているのが確認できます。加えて初期の書き込み速度だけでなくキャッシュ超過によって低下した後の書き込み速度も1枚の時と比較して約2倍にスケーリングされて2500MB/s程度をマークしています。
SLCキャッシュ超過後の書き込み速度の低下は安価なTLC型SSDの弱点ですが、RAID0の構築によって枚数に応じたキャッシュ容量および速度低下時の書き込み速度の倍増が期待できるので、大容量で安価なNVMeストレージの構築の観点から考えると、TLC型SSDのRAIDアレイ構築は意外とありな手ではないかと思います。
NVMe SSDによるRAIDストレージのコピー性能比較
Samsung SSD 970 EVO 2TBを1枚~4枚使用したRAIDストレージを2セット構築し、大容量・多数データのコピーやPCゲームのロード時間など実際の使用について性能比較をしてみました。
ファイルのコピーに関する性能比較において、検証に使用するデータとしては次のような80GBで多数のファイルが入ったゲームのフォルダ(The Witcher 3とRise of the tomb Raiderなどのゲームフォルダ)と50GBの動画ファイルの2種類を使用しています。
データのコピーにおいては当然ですが、元データのあるストレージの読み出し性能とコピー先の書き込み性能の両方が重要になります。Core-X&X299環境ではCPU直結のPCIE3.0レーンが44レーンあるので、今回の検証では2つのPCIE3.0x16帯域のPCIEスロットにそれぞれ「HighPoint SSD7101A-1を設置して、Samsung SSD 970 EVO 2TBのシングルボリューム同士、x2 RAID0同士、x3 RAID0同士、x4 RAID0同士の4つのパターンでコピー速度の検証を行いました。
各種検証ストレージ間の50GB動画ファイルおよび80GBのゲームフォルダのコピー時間の比較結果は次のようになりました。同数のRAID0ストレージ間のデータコピー、特にシーケンシャル性能が効いてくる単一ファイルのコピーであればRAID0に使用するストレージ数に比例してコピー時間も短くなるかと思ったのですが、シングルボリュームと比べてx2 RAID0は10~20%程度高速化が期待できそうな結果になったものの、x3やx4はいまいち振るわない結果でした。取り扱うデータにもよると思いますが、現状ではコピーの高速化目的であればx2 RAID0が最適なようです。
レビューまとめ
最後に「Samsung SSD 970 EVO 2TB」を8枚使用したRAID0の検証を行った結果について簡単にまとめを行います。
RAID0の構築によってシーケンシャル性能は枚数に応じて綺麗にスケーリングされ、単独で3500MB/sを実現するSamsung 970 EVOや970 PROを使用すれば8枚で26GB/sに到達するものの、RAID0の特性としては既知な事実ですがランダム性能は改善しない(若干低下する)ので実用上はベンチスコア程の速度向上を体感することはできません。
また個人的には若干意外な結果として大型単一ファイルのコピーであってもx4 RAID0間のデータコピーでコピー時間が削減されることもありませんでした。
この種のRAIDストレージは個人のワークステーションなどクリエイティブ作業に使用するパワーユーザー向け製品となっているのでNVMe RAIDはRAID1やRAID10を使用した冗長性の確保に使用するのが効果的なように感じます。
もう1つのメリットとしては、SLCキャッシュ超過後の書き込み速度の低下は安価なTLC型SSDの弱点ですが、RAID0の構築によって枚数に応じたキャッシュ容量および速度低下時の書き込み速度の倍増が期待できるので、大容量で安価なNVMeストレージの構築の観点から考えると、TLC型SSDのRAIDアレイ構築は意外とありな手ではないかと思います。
RAID0による速度向上は見られなかったものの大きく逆の結果が出ることもなく、一方で平均コピー速度に着目すると動画ファイルとゲームフォルダのコピー共に2GB/s近い速度が出ているので、Samsung SSD 970 EVOやSamsung SSD 970 PROなどNVMe SSDを使用した環境は理論的に600MB/sが上限となる従来のSATA SSD環境と比較して高速なデータの取り扱いにおいて間違いなくメリットがあります。
以上、『Samsung 970 EVO 2TB 8枚のRAID0で26GB/sの超爆速リードを実現』でした。
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