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WD Black NVMe SSDシリーズの第3世代としてリリースされた、Western Digital&東芝連合製TLC型64層3D NANDメモリチップ「BiCS3」を採用するNVMe M.2 SSD「WD Black SN750 NVMe SSD」から、容量1TBモデル「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB(型番:WDS100T3X0C)」のサンプル機を国内正規代理店テックウィンドよりお借りできたのでレビューしていきます。
代理店公式ページ:https://www.tekwind.co.jp/WDC/products/entry_s290.php
製品公式ページ:https://www.wd.com/ja-jp/products/internal-ssd/wd-black-sn750-nvme-ssd.html
データシート:https://www.wd.com/content/dam/wdc/website/downloadable_assets/eng/spec_data_sheet/02-05-WW-04-00054.pdf
WD Black SN750 NVMe SSD 1TB レビュー目次
1.WD Black SN750 NVMe SSDについて
2.WD Black SN750 NVMe SSD 1TBの外観
3.WD Black SN750 NVMe SSD 1TBの検証機材と基本仕様
4.WD Black SN750 NVMe SSD 1TBのベンチマーク比較
5.WD Black SN750 NVMe SSD 1TBの連続書き込みについて
6.WD Black SN750 NVMe SSD 1TBの温度とサーマルスロットリングについて
7.WD Black SN750 NVMe SSD 1TBのデータコピー・ゲームロード比較
8.WD Black SN750 NVMe SSD 1TBのレビューまとめ
WD Black SN750 NVMe SSDについて
「WD Black SN750 NVMe SSD」シリーズはメモリチップにWestern Digital&東芝連合製TLC型64層3D NANDメモリチップ「BiCS3」が採用された、M2 2280フォームファクタでNVMe(PCIE3.0x4)接続のM.2 SSDです。メモリコントローラーには前世代モデルにも採用され、低発熱で好評を得た同社オリジナルコントローラーが採用されています。「WD Black SN750 NVMe SSD」シリーズにはSSD容量として250GB(型番:WDS250G3X0C)、500GB(型番:WDS500G3X0C)、1TB(型番:WDS100T3X0C)、2TB(型番:WDS200T3X0C)の4モデルに加えて、500GB以上のモデルについては標準でEKWB製M.2 SSDヒートシンクを搭載したモデル(型番:WDS500G3XHC, WDS100T3XHC, WDS200T3XHC)もラインナップされています。
「WD Black SN750 NVMe SSD」シリーズでは、前世代(第2世代WD Black)と同様にWestern Digitalが独自開発した新型メモリコントローラーが採用されています。同メモリコントローラーの特徴として、コントローラー内部にCPUとは別に「Data Path engines」が用意されていることが挙げられます。
「WD Black SN750 NVMe SSD」は近年主流なTLC型SSDとなっておりTLC型の例にもれずNANDメモリの一部を高速なSLCキャッシュとして使用する高速化技術「nCache 3.0」が採用されています。従来のTLC型SSDではこのSLCキャッシュが飽和した後の書き込みでもSLCキャッシュを必ず通す仕様があるためアクセス遅延が発生しました。
「WD Black SN750 NVMe SSD」ではこの対策として、SLCキャッシュの飽和後にSLCキャッシュを介さずに直接NANDメモリに書き込みを行うバイパス経路「Data path」およびData path制御用コントローラー「Data Path engines」が用意されています。SLCキャッシュ超過後に「Data path」から直接TLC NAND領域に書き込みアクセスを行うことで、アクセス遅延の回避に加えて、CPUのクロックサイクルを消費しないため消費電力および発熱の大幅な引き下げを実現しています。
「WD Black SN750 NVMe SSD」シリーズのアクセススピードは容量によって若干異なりますが、最大でシーケンシャル読出3470MB/s、シーケンシャル書込3000MB/s、ランダム(4KB, QD32, 1thread)読出515,000 IOPS、ランダム(4KB, QD32, 8thread)書込550,000 IOPSの高速アクセスを実現しています。
「WD Black SN750 NVMe SSD」シリーズのMTBFは175万時間、書込耐性は250GBが200TBW、500GBが300TBW、1TBが600TBW、2TBが1200TBWとなっており、メーカーによる製品保証期間は5年間です。
WD Black SN750 NVMe SSD スペック一覧 |
||||
容量 | 250GB WDS250G3X0C |
500GB WDS500G3X0C |
1TB WDS100T3X0C |
2TB WDS200T3X0C |
ヒートシンク | - |
WDS500G3XHC | WDS100T3XHC | WDS200T3XHC |
メモリー | Western Digital&東芝連合製TLC型64層3D NAND BiCS3 |
|||
連続読出 | 3000MB/s | 3400MB/s | 3400MB/s | |
連続書込 | 1600MB/s | 2500MB/s | 2800MB/s | 2800MB/s |
4Kランダム読出 | 220,000 IOPS | 420,000 IOPS | 515,000 IOPS | 480,000 IOPS |
4Kランダム書込 | 180,000 IOPS | 380,000 IOPS | 560,000 IOPS | 550,000 IOPS |
消費電力 アイドル/ピーク |
70mW / 9.24W |
100mW / 9.24W |
||
動作温度範囲 | 0°C~70°C | |||
MTBF | 175万時間 | |||
耐久性評価 | 200TBW | 300TBW | 600TBW | 1200TBW |
保証期間 | メーカー5年 |
WD Black SN750 NVMe SSD 1TBの外観
まず最初にWD Black SN750 NVMe SSD 1TBの外観や付属品について簡単にチェックしておきます。パッケージの外観について第2世代ではWD BlueやWD Greenなどと同様に製品カラー&ホワイトのツートンカラー仕様でしたが、WD Black SN750 NVMe SSDはマットブラック1色でデザイン性を意識したお洒落なものにリニューアルされています。
紙製のパッケージを開くとSSD本体はプラスチックのスペーサーに収められていました。付属品は保証規定書およびインストールガイドとなっています。
WD Black SN750 NVMe SSDシリーズのSSD本体デザインについては普通にM.2 2280サイズ、M-Key型のM.2 SSDです。PCB基板は黒色になっています。
WD Black SN750 NVMe SSDシリーズの表面にはM.2端子を右端として、右からメモリチップ、メモリコントローラー、DRAMキャッシュ、メモリチップが実装されています。
WD Black SN750 NVMe SSDシリーズの250GB/500GB/1TBの3モデルについては背面にはメモリチップ等の実装が一切なく、片面実装となっています。最大容量の2TBモデルについては今のところ不明です。
WD Black SN750 NVMe SSD 1TBの検証機材と基本仕様
「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」の各種検証を行う環境としては、Intel Core i9 9900K&ASUS WS Z390 PROなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 9900K(レビュー) Core/Cache:5.1/4.7GHz, 1.300V 殻割り&クマメタル化(レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 4000MHz, CL17-17-17-37-CR2 |
マザーボード |
ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
ビデオカード | 【基礎性能検証用】 MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC (レビュー) 【PCゲームロード時間検証用】 ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB MZ-N6E1T0B/IT (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製3bit-MLC型64層V-NANDのメモリチップを採用するメインストリーム向け最新SATA接続M.2 SSD「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」を使用しています。「Samsung SSD 860 EVO M.2」は2.5インチSATA SSDと同等のパフォーマンスをケーブルレスで発揮できる手軽さが魅力です。Samsung SSD 860 EVOシリーズの容量1TB以上のモデルは大容量データの連続書き込みにおける書き込み速度の低下というTLC型SSDの欠点も解消されているので、大容量ファイルをまとめて入れても余裕のあるメインストレージとしてお勧めのSSDです。
・「Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB」をレビュー
「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」のボリュームをWindows10上で作成したところ、空きスペースは931GBでした。
「WD Black SN750 NVMe SSD」シリーズでは、Western Digitalが公式サイトで配布している管理ツール「Western Digital SSD Dashboard」から、同SSDの省電力機能を無効化して読み出し性能の向上を図る「ゲームモード」の有効/無効を切り替えることができます。ゲームモードの切り替え時にはシステムの再起動が必要になります。
なお検証機材マザーボードのASUS WS X390 PROのCPU直結PCIEスロットはPLXスイッチチップを介しているからか、同スロットに変換ボードを使用して「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」を設置した状態でゲームモードを切り替えるとSSDの認識がおかしくなりました。チップセットに接続されたPCIEスロットであれば特に問題は発生しなかったので、一部環境ではゲームモードの切り替えで不具合が発生する場合があります。
WD Black SN750 NVMe SSD 1TBのベンチマーク比較
「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」の性能を測るためストレージに関する基本的なベンチマークソフトを使用して測定を行います。比較対象として同じくNVMe M.2 SSDの「Samsung SSD 970 PRO 1TB(レビュー)」、「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB(レビュー)」、「WD Black 3D NVMe SSD 1TB(レビュー)」、「Corsair Force MP510 960GB(レビュー)」、およびSATA SSDの「WD Blue 3D NAND SATA SSD 1TB(レビュー)」、「Samsung SSD 860 EVO 1TB(レビュー)」等でも同様の測定を行いました。まずはCrystalDiskMark6.0.2(8GiB)について、「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」のベンチマークススコアは連続読み出し3500MB/s、連続書き込み3000MB/sとなりました。連続読み出し3000MB/s越えの製品はそれなりに出てきていますが、3000MB/sという連続書き込み速度は2019年現在文句なしに最速クラスの製品です。また「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」でゲームモードを有効にすると省電力機能が無効化されてランダム性能が若干向上するのが確認できます。
ATTO Disk Benchmark 4.00.0f2(512B-64MB, 8GB, QD1/QD4)について、「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
ATTO Disk Benchmarkはブロックサイズ別のシーケンシャル性能を主にチェックするベンチマークなので4KB~1MBを抜粋してリード/ライト性能をグラフにして比較しました。
AS SSD Benchmark v2.0.6821.41776(5GB)について、「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
PCMark8 ストレージテストについて、「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
WD Black SN750 NVMe SSD 1TBの連続書き込みについて
「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」に連続書き込みを行った場合の動作についてチェックします。TLC型NANDやQLC型NANDと呼ばれる3bit以上のマルチレベルセルで動作するNANDが採用されているSSDでは、書き込み速度の底上げのためNANDメモリの一部を高速なSLCキャッシュ化する機能が実装されています。SLCキャッシュ機能を有するSSDにおいて、SLCキャッシュ容量を超過する連続した大容量の書き込みが発生した場合、書き込み速度が階段的にガクッと下がる仕様になっています。
例えば600MB/sが理論的な上限速度となるSATA SSDの場合は、動画ファイルなど数十GB以上の単一ファイルの連続書き込みが発生すると、SLCキャッシュ超過後はCrystalDiskMarkなどベンチマークソフトで表示される500MB/s程度の連続書き込み速度を維持できず100~200MB/sまで書き込み速度が低下する可能性があります。
2.5インチSATA SSDの「Samsung 850 PRO 2TB(レビュー)」やNVMe M.2 SSDの「Samsung 970 PRO 1TB(レビュー)」はMLC型なので、HD Tune Proを使用して100GB以上の大容量な連続書き込みを行っても書き込み速度が下がることはなく、いずれも理想的な書き込み速度を維持することが可能です。
SATA SSDの「PNY CS1311 960GB」はSLCキャッシュによる書き込み速度の底上げを行っている典型的なTLC型SSDとなっており、書き込み開始直後は500MB/sの書き込み速度をマークしているものの、全容量960GBに対して1.5%程度の13~15GBを書き込んだ後は300~350MB/sまで書き込み速度が低下します。
しかしながら2018年から2019年初頭にかけて主流な64層3D NANDや、2019年以降に採用製品の増えつつある90層オーバーの最新3D NANDでは、SLCキャッシュを介さない書き込み速度が改善されています。
64層3D NANDを採用しているTLC型SATA SSDの「Samsung SSD 860 EVO(レビュー)」「WD Blue 3D NAND SATA SSD(レビュー)」「SanDisk SSD Ultra 3D(レビュー)」「Crucial MX500(レビュー)」などで、かつ容量が1TB以上の大容量モデルでは書き込み速度の低下は解消されています。(SATA3.0規格の速度上限が先にくるので)
またTLC型SSDの書き込み速度の低下はNVMe SSDでも発生することがあります。「Samsung 970 EVO 1TB(レビュー)」もTLC型NANDの一部を高速なSLCキャッシュとして用いて書き込み時にそこを優先的に使用する高速化技術「Intelligent TurboWrite」が使用されているので、SLCキャッシュ容量を超過する連続した大容量な書き込みが発生すると書き込み速度が低下します。
TLC型64層3D NANDをメモリチップに採用する「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」はどのような挙動を見せるのか確認してみたところ、製品仕様でも紹介されているように書き込み開始直後は3000MB/s程度の書き込みスピードを維持していますが、書き込み総量が13GB程度に達するとSLCキャッシュを超過するため書き込み速度は1500MB/s前後まで低下しました。
キャッシュを超過すると書き込み速度が低下するとはいえ、低下後ですら1500MB/sという十分な速さを実現しており、理想500MB/sなSATA3.0 SSDよりは3倍近く高速で、比較対象をNVMe M.2 SSDに限定しても明確に上回るのはMLC型のSamsung SSD 970 PROのみ、競合のSamsung SSD 970 EVO Plusは1700MB/s程度で若干遅れるもののほぼ同等、それらを除けば匹敵する製品はほぼ存在しないという実状を考えると十分な性能だと思います。
WD Black SN750 NVMe SSD 1TBの温度とサーマルスロットリングについて
NVMe M.2 SSDでは重要になる項目として「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」の温度とサーマルスロットリングについてチェックしていきます。アクセススピードが数GB/sに及ぶ非常に高速なNVMe接続に対応したM.2 SSDでは、そのコンパクトさゆえに放熱性能には表面積的な限界があり、連続したアクセスが発生するとメモリチップやメモリコントローラーが高温になって速度制限がかかるサーマルスロットリングが発生する可能性があることが知られています。
「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」について、連続した高速アクセス発生時の温度やサーマルスロットリング発生の有無をソフトウェアモニタリングとサーモグラフィーカメラを使用して検証します。
WD Black SN750 NVMe SSD 1TBのSSD温度の測定やサーマルスロットリング発生の有無の確認については、ヒートシンクがないPCIE-M.2アダプタ拡張ボードにSSDを装着して検証を行います、
測定時の検証負荷としては上で行ったベンチマーク測定同様にCrystalDiskMark6.0.0(QD32, 8GiB)を使用して間を置かず複数回ベンチマークをループさせ、その間のSSD温度や読み出し・書き込み速度のモニタリング値はHWinfoを使用してログを取得します。
WD Black SN750 NVMe SSD 1TBの検証結果を確認する前に比較参考のサンプルとして、2019年現在最速のNVMe M.2 SSDとして君臨している「Samsung SSD 970 PRO 1TB」において、上記の負荷テストを実行した結果を確認しておきます。
Samsung SSD 970 PRO 1TBのSSD温度とアクセススピードの推移は下のようになっています。Samsung SSD 970 PRO 1TBではメモリコントローラーとメモリチップの2種類の温度についてソフトウェアモニタリングが可能になっているようです。ベンチマークを複数回繰り返してもサーマルスロットリングによる大幅な速度低下は発生していませんが、2周目以降に連続書き込み速度の計測で若干速度低下が確認できます。1周目ですでにメモリコントローラーの温度は100度に達し、メモリチップも70度を超えておりかなり高温です。
負荷テスト終盤におけるSamsung SSD 970 PRO 1TBのサーモグラフィーは下のようになっています。サーモグラフィーでもソフトウェアモニタリング同様に、「Samsung SSD 970 PRO 1TB」の右端にあるメモリコントローラー温度は100度を上回り、左半分に実装されたメモリチップは70度半ばになっています。
さて本題のWD Black SN750 NVMe SSD 1TBの温度やサーマルスロットリングの有無についてチェックしていきます。
まずソフトウェアモニタリングによるWD Black SN750 NVMe SSD 1TBのSSD温度とアクセススピードの推移は下のようになっています。WD Black SN750 NVMe SSD 1TBでソフトウェアモニタリングが可能な温度はメモリチップ付近の温度になっているようです。ベンチマークを複数回繰り返してもサーマルスロットリングによる大幅な速度低下は確認できません。
負荷テスト終盤におけるWD Black SN750 NVMe SSD 1TBのサーモグラフィーは下のようになっています。「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」の中央にあるメモリコントローラー温度は最大で90度前後、メモリチップやDRAMキャッシュは70~80度となっています。読み出し/書き込みが3GB/sをオーバーする超高速なNVMe M.2 SSDは発熱も大きくこのテストで100度を超える製品も少なくありませんが、WD Black SN750 NVMe SSD 1TBは比較的低発熱です。
「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」のゲームモードを有効にして同様のテストを実行してみましたが、ソフトウェアモニタリングとサーモグラフィーともに無効時より数度高い程度でした。ゲームモードはランダム性能を上げる機能ですが、NVMe M.2 SSDにおける温度要因はランダムアクセスよりも数GB/sに達するシーケンシャルアクセスなので、CrystalDiskMarkによる負荷テストではゲームモードのオンオフで差はあまり出ず、実用的にも特に問題はなさそうです。
ちなみに前世代WD Black 3D NVMe SSD 1TBと比較すると、「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」は高速化のデメリットとして若干の温度上昇があるようです。
今回の負荷テストでは「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」でサーマルスロットリングによる大幅な速度低下こそ確認できなかったものの、メモリコントローラーが90度前後、メモリチップも70~80度とかなり高温になるので、長期運用における温度原因の故障リスクを最小限にするため、可能であれば、M.2 SSDヒートシンクやヒートシンク付きPCIE拡張ボードの利用をおすすめします。
・「AquaComputer kryoM.2 evo/micro」をレビュー
・「SilverStone SST-TP02-M2」をレビュー
SilverStone M.2 SSD専用放熱ヒートシンク/パッドセット SST-TP02-M2
SilverStone
WD Black SN750 NVMe SSD 1TBのデータコピー・ゲームロード性能比較
続いて「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」で大容量・多数データのコピーやPCゲームのロード時間など実際の使用について性能比較をしてみました。比較対象として同じくNVMe M.2 SSDの「Samsung SSD 970 PRO 1TB(レビュー)」、「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB(レビュー)」、「WD Black 3D NVMe SSD 1TB(レビュー)」、「Corsair Force MP510 960GB(レビュー)」、およびSATA SSDの「WD Blue 3D NAND SATA SSD 1TB(レビュー)」、「Samsung SSD 860 EVO 1TB(レビュー)」等でも同様の測定を行いました。
まずはファイルのコピーに関する実性能比較となります。検証に使用するデータとしては総容量が約80GBで多数のファイルが入ったPCゲームフォルダ(The Witcher 3とRise of the tomb Raiderなど)、および容量50GBの単一動画ファイルの2種類を使用しています。
データのコピーにおいては当然ですが、元データのあるストレージの読み出し性能とコピー先の書き込み性能の両方が重要になります。測定においては書き込み先/読み出し元の対象となるストレージが必要になるため、各ストレージのコピー相手にはM.2-PCIE変換アダプタ「Aquacomputer kryoM.2」に設置したSamsung SSD 970 PRO 1TBを使用しています。
コピーテストにおいて検証ストレージがコピー相手の「Samsung SSD 970 PRO 1TB」と同じくNVMe SSDの場合は、ASUS WS Z390 PROの1段目PCI-Eスロットにグラフィックボード、3段目PCI-Eスロットにコピー相手ストレージの「Samsung SSD 970 PRO 1TB」、5段目PCI-Eスロットに検証ストレージを設置しています。
Z390プラットフォームでは通常、複数のNVMe SSDへ同時にアクセスが発生すると、CPU-チップセット間のDMI 3.0の帯域がボトルネックになってトータルのアクセススピードが4GB/s程度に制限されますが、ASUS WS Z390 PROではPLXスイッチチップを介するものの、コピーテストで使用する2つのNVMe SSDはそれぞれCPU直結PCI-Eレーンに接続されているので、この問題は発生しません。
「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」など各種検証ストレージとSamsung SSD 970 PRO 1TBとの間で50GBの動画ファイルおよび80GBのゲームフォルダをコピーした時間の比較結果は次のようになりました。
まずは50GBの動画ファイルのコピーについてですが、動画ファイルは単一の大容量ファイルなので実際のコピーではベンチマークのシーケンシャルリード・ライト性能が重要になってきます。
WD Black SN750 NVMe SSD 1TBは動画ファイルのコピー読み出しにおいて、前世代WD Black 3D NVMe SSD 1TBとほぼ同等の性能であり、競合製品のSamsung 970 EVO Plus 1TBには数秒の差で及びませんでした。WD Black SN750 NVMe SSD 1TBはPCI-E3.0x4帯域のNVMe接続に対応した高速SSDなので、SATA3.0接続のSSDと比較すると4倍近い高速な読み出し速度を実現しており、読み出し速度は2200MB/s程度となっています。
動画ファイルのコピー書き込みについてチェックしてみると「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」のコピー書き込み時間は32秒程となり、前世代WD Black 3D NVMe SSD 1TBと比較して若干の速度向上が確認できます。競合製品のSamsung 970 EVO Plus 1TBはSLCキャッシュ容量が40GB以上あるため、SLCキャッシュ容量が10GB程度の「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」とはコピー書き込み時間に差が開きました。
続いてゲームフォルダのコピーについてですが、ゲームフォルダは大小様々なファイルを含むので、実際のコピーではベンチマークの連続性能だけでなく、ランダム性能も重要になってきます。
「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」はゲームフォルダのコピー読み出しにおいて、動画ファイルの時と同様に前世代WD Black 3D NVMe SSD 1TBとほぼ同等の性能ですが、ゲームモードを有効にするとランダム性能が向上するので、コピー時間が短縮されているのが確認できます。やはり動画ファイルのコピー読み出し同様にSATA3.0 SSDよりも3倍も高速な読み出し速度です。
WD Black SN750 NVMe SSD 1TBのゲームフォルダのコピー書き込み速度についてみてみると、前世代WD Black 3D NVMe SSD 1TBよりも高速化を果たしていることが確認できます。計80GBのデータコピーなので、「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」も競合製品のSamsung 970 EVO Plus 1TBもSLCキャッシュ容量を大幅に超過するため両者のコピー書き込み時間はほぼ同等です。
続いて実際にPCゲームのロード時間も比較してみました。
PCゲームのロード時間比較に関してはゲームインストールデータへのアクセスが最も大きくなる4K解像度/最高グラフィック設定を対象とするため、統一検証機材として、2019年最新にして最速のGPUである「NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti」を搭載したグラフィックボード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Core」を使用しています。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Coreは、RTX 2080 TiのAIBパートナーの中でも屈指のOCチューニング力を誇るZOTACによって良質なGPUコアが選別され、リファレンスよりも200MHz以上も高いブーストクロック、さらにGDDR6メモリのメモリクロックまで引き上げるという、RTX 2080 Tiグラフィックボードで最速を狙えるファクトリーOCが施されています。加えて、ZOTACを高品質メーカーとして一躍ブランド力を押し上げたAMP Extremeシリーズの代名詞とも言える3スロットを占有する超弩級な大型GPUクーラーが採用され、静音性も非常に優れたモデルです。
・「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme」をレビュー
The Witcher 3ではグラフィック設定を4K解像度/最高グラフィック設定として、ノヴィグラドの広場からトゥサンのコルヴォ・ビアンコブドウ園までのファストトラベル時のロード時間を比較しています。
Rise of the Tomb Raiderでは4K解像度においてグラフィック設定をDirectX12で個別に最高グラフィック設定として、製鋼所の空き地までのファストトラベル時のロード時間を比較しています。
Final Fantasy XV PC版では4K以上の超高解像度向けに無料配布されている「FFXV WINDOWS EDITION 4K Resolution Pack」を使用して4K解像度/最高グラフィック設定で、『スタートメニューのロード画面からレスタルムまで』についてロード時間を比較しています。
以上の条件で「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」など各ストレージについてゲームのロード時間比較を行った結果は次のようになりました。
ロード時間を測定して比較してみたところThe Witcher 3とRise of the Tomb Raiderではコンマ秒で差がある可能性はあるものの「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」を含めて各SSDでは大きな差は確認できませんでした。
一方、Final Fantasy XV PC版ではNVMe(PCIE3.0x4) SSDの「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」とSATA3.0 SSDとの間に若干ではありますが、ロード時間に差が確認できました。今後PCゲームが高解像度・高画質化してテクスチャなどのゲームデータが大きくなっていけば、NVMe SSDがSATA SSDよりもゲームのロード時間で明確に優位に立つかもしれません
WD Black SN750 NVMe SSD 1TBのレビューまとめ
最後にWD Black NVMe SSDシリーズ第3世代の容量1TBモデル「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB(型番:WDS100T3X0C)」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- NVMe規格として理想的な連続読み出し3500MB/sと連続書き込み3000MB/s(最大)
- 1TBは大容量書き込みで速度低下しても書き込み速度1500MB/sで高速
- ゲームモードの有効化でランダム読み出しが若干高速になる
- TLC型なので高速NVMe M.2 SSDとしては安価な価格帯
- Western Digital独自メモリコントローラーによって高速ながら競合製品より若干低温
- メーカー正規保証期間が5年間
- TLC型なので大容量の連続書き込みではSLCキャッシュ超過後に速度低下が発生する
1TBモデルはSLCキャッシュ容量13GB前後で、低下後の書き込み速度は1500MB/s - 連続して負荷がかかった時のメモコンやメモリチップの温度は高め
「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」を検証してみたところ、基礎的な各種ベンチマーク実際の性能検証の多くで、同時期に発売された競合製品のSamsung SSD 970 EVO Plusと同等で、TLC型のNVMe M.2 SSDとしては最速クラスのパフォーマンスを発揮しています。そんな抜群のアクセススピードを発揮しながら、Western Digitalが独自開発した「Data Path engines」を搭載するメモリコントローラーによって、競合製品と比較して若干ながら低温・低発熱になっているところも魅力です。
「WD Black SN750 NVMe SSD」シリーズには東芝&Western Digital連合製のTLC型64層3D NANDメモリチップ「BiCS3」が採用されているので、多くのTLC型SSDと同様の特徴が大容量書き込み時にでており、今回検証した1TBモデルでは13GB程度のSLCキャッシュを超える書き込みアクセスでは理想値3000MB/sから1500MB/sまで書き込み速度が低下します。とはいえ速度低下時ですらSATA3.0規格の理想的な書き込み速度である500MB/sの3倍近い速度をマークしており、不便を感じるほどの速度低下ではないと思います。
同時期に発売された競合製品のSamsung SSD 970 EVO Plusが90+層の次世代3D NANDを採用してきたのに対して、「WD Black SN750 NVMe SSD」は性能向上こそ確認できるものの前世代からマイナーアップデート感はあります。WD Blackシリーズでは第1世代と第2世代の名前がほぼ同じで紛らわしかったのですが、第3世代で”SN750”の名前が付いてわかりやすくなったことが最大のアップデートだと個人的には感じました。
今のところマイナーアップデートという印象ですが、前世代にはなかった大容量2TBモデルや、EKWBとコラボしたヒートシンクを標準搭載するモデルなども控えているので、「WD Black SN750 NVMe SSD」シリーズではそちらが本命なのかもしれません。
同時期発売の競合製品と比較すると性能面で半歩程度及ばないシーンもあったものの、省電力性能に優れて低発熱・低温で運用しやすいというメリットを備えた「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」は、2019年最新高速NVMe M.2 SSDの定番モデルとしてオススメな製品です。
以上、「WD Black SN750 NVMe SSD 1TB」のレビューでした。
関連記事
・おすすめSSDまとめ。QLC/TLC/MLCやNVMe/SATA3.0など最新SSD事情を解説・SSDレビュー記事の一覧へ <SATA SSD><NVMe SSD><M.2 SSD>
・「Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB」をレビュー
・「Intel Optane SSD 905P M.2 380GB」をレビュー
・「Samsung SSD 970 PRO 1TB」をレビュー
・「CFD PG2VN NVMe M.2 SSD 2TB」をレビュー
・QLC型NVMe M.2 SSD「Crucial P1 1TB」をレビュー
(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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