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ASUS独自機能ELMB Syncに対応するWQHD解像度で170Hzリフレッシュレートの27インチIPS液晶ゲーミングモニタ「ASUS ROG Strix XG279Q」をレビューします。
WQHD/144Hz+/IPS液晶というGeForce RTX 3070やRadeon RX 6800などミドルハイクラスGPUとの組み合わせに最適な2021年の定番スペックに加えて、可変リフレッシュレート同期機能とモーションブラーリダクション機能を併用できるELMB Syncやゲーマー向け便利機能を多数を備えた「ASUS ROG Strix XG279Q」の実力を徹底検証していきます。

製品公式ページ:https://rog.asus.com/jp/monitors/27-to-31-5-inches/rog-strix-xg279q-model/
マニュアル:https://dlcdnets.asus.com/pub/ASUS/LCD%20Monitors/XG279Q/XG279Q_Japanese.pdf

ASUS ROG Strix XG279Q レビュー目次
1.ASUS ROG Strix XG279Qの概要
2.ASUS ROG Strix XG279Qの開封・付属品
3.ASUS ROG Strix XG279Qの液晶モニタ本体
4.ASUS ROG Strix XG279QのOSD操作・設定
5.ASUS ROG Strix XG279Qの発色・輝度・視野角
6.ASUS ROG Strix XG279Qの170Hzリフレッシュレートについて
7.ASUS ROG Strix XG279Qの応答速度・表示遅延
8.ASUS ROG Strix XG279QのG-Syncについて
9.ASUS ROG Strix XG279QのELMB Syncについて
10.ASUS ROG Strix XG279QのHDR表示やHDCP対応について
11.ASUS ROG Strix XG279Qのレビューまとめ
【機材協力:ASUS Japan】
ASUS ROG Strix XG279Qの概要
「ASUS ROG Strix XG279Q」は解像度が2560×1440のWQHD解像度、画面サイズが27インチの液晶モニタです。液晶パネルタイプはノングレア(非光沢)で発色や視野角に優れたIPS液晶パネルが採用されており、95% DCI-P3の広色域を実現しています。コントラスト比は通常1,000:1、応答速度は最大1ms (GTG)、輝度は標準400nits(cd/m^2)です。「ASUS ROG Strix XG279Q」はHDR表示にも対応しており最大輝度400nits(cd/m^2)で、VESAがPCモニター向けに展開している輝度認証のVESA DisplayHDR 400を取得しています。
「ASUS ROG Strix XG279Q」のリフレッシュレートはネイティブ144Hzで、オーバークロック機能により最大170Hzに対応します。144Hz/170Hzの高リフレッシュレートによって応答速度が高速になるのでブレや残像がなくなってクッキリとした滑らかな表示です。60FPSでは識別の難しいゲーム内遠方で動くエネミーやオブジェクトの発見などが容易になるので、オンライン対戦FPSゲームなど競技性の高いPCゲームにおいて対戦相手よりも優位に立つことができます。

「ASUS ROG Strix XG279Q」はゲーミングPCやコンソールゲーム機のPlayStation 5やXbox Series X/Sを組み合わせることで利用可能な可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync)」にも対応しており、ティアリングがなくスタッタリングを抑えた快適で鮮明なゲーミング環境を実現できます。NVIDIA製GPUとの互換性を証明するG-Sync Compatible認証も取得しています。AMD FreeSyncに対応したビデオ出力とフレームレートは、HDMI(48~144Hz)、DisplayPort(48~144Hz, 170Hz)です。

「ASUS ROG Strix XG279Q」はモーションブラーリダクションを、可変リフレッシュレート同期機能G-Sync Compatibleと併用可能なASUS独自機能「Extreme Low Motion Blur (ELMB) Sync」にも対応しています。

「ASUS ROG Strix XG279Q」のビデオ入力は1基のDisplayPort1.2と2基のHDMI2.0の3系統です。全てのビデオ入力がWQHD解像度において、HDMI2.0ビデオ入力は最大144Hzリフレッシュレート、DisplayPort1.2ビデオ入力は最大170Hzリフレッシュレートに対応します。またUSBハブとしてPCと接続するアップストリーム端子1つに加えて周辺機器を接続するためのダウンストリームUSB3.0端子が2基搭載されています。
「ASUS ROG Strix XG279Q」の寸法はモニタスタンド込みで幅611mm x 高さ422~542mm x 奥行270mm(モニタ単体では82mm)となっています。付属モニタスタンドは上下チルト、左右首振りスイーベル、昇降高さ調整に対応しています。90度回転ピボットにも対応しています。チルト角は上20度から下5度、スイーベル角は左右40度、高さ調整は最大120mmの範囲で調節可能です。本体重量はモニタスタンドありで7.2kg、モニタスタンドなしの液晶パネル本体のみは4.0kgとなります。VESA100x100マウントにも対応しておりモニタアームも使用可能です。
ASUS ROG Strix XG279Qの開封・付属品
まずは「ASUS ROG Strix XG279Q」を開封していきます。「ASUS ROG Strix XG279Q」のパッケージサイズは幅68cm×厚さ25cm×高さ42cmとなっており、27インチモニタが入っている箱としては若干大きめで、重量は10kg程度です。

箱のサイズが大きく、重量も重いですが、天面には持ち手もあるので成人男性なら問題なく持ち運べそうです。

パッケージを開くと液晶モニタ本体や付属品が収められた発泡スチロール製のスペーサーが現れます。
各種付属品は発泡スチロールスペーサー上に蓋もなく収められているので、スペーサーをパッケージから取り出す際は、付属品が脱落しないよう、厚みの大きい方が上に向くようしてください。


「ASUS ROG Strix XG279Q」は製品出荷前にΔE<2.0となるようにファクトリーキャリブレーションが行われており、カラーキャリブレーションレポートが同封されていました。

「ASUS ROG Strix XG279Q」の付属品を簡単にチェックしておくと、DisplayPortケーブル、HDMIケーブル、USBアップストリームケーブル、ACアダプタ、ACケーブル、マニュアル冊子類が付属します。あと写真含めて製品外観の章で説明しますが、IOポートカバーも付属しています。

各種ケーブル類はコネクタにROGのブランドロゴが刻印されたオリジナル品になっていて、近年のASUS ROG Swift/Strixシリーズのゲーミングモニタは付属品にも力が入っています。

「ASUS ROG Strix XG279Q」のビデオ入力はDisplayPort1.2とHDMI2.0×2の3つがあり、DisplayPortケーブルとHDMIケーブルがそれぞれ1本ずつ付属しています。
各種ケーブルを個別に購入するのであれば、4K/120Hz対応のDisplayPort1.4ケーブルなら「サンワサプライ KC-DP14シリーズ」、HDMI2.0ケーブルなら「エレコム Premium HDMIケーブル スリムタイプ DH-HDP14ESBKシリーズ」がおすすめです。いずれも標準で付属するケーブルよりもケーブル径が細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。

エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 1.0m
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 1.5m
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 2.0m
エレコム
各種付属品が収められた側の発泡スチロール製スペーサーと持ち上げると、液晶モニタ本体が現れます。

「ASUS ROG Strix XG279Q」のモニタスタンドはメインフレームとフットフレームの2つの部品から構成されています。開封時点でメインフレームはモニタ本体に装着されています。

メインフレーム端にフットフレームを挿入して、底面のネジを締めるだけで簡単にモニタスタンドを組み立てられます。ネジにはレバーが付いているのでドライバー不要で組み立てが可能です。

「ASUS ROG Strix XG279Q」のモニタスタンドのメインフレーム底面にはロゴを投射できるLEDイルミネーションが搭載されており、フットフレームの固定後に上からカバーを装着します。

ASUS ROG Strix XG279Qの液晶モニタ本体
続いて「ASUS ROG Strix XG279Q」の液晶モニタ本体をチェックしていきます。
「ASUS ROG Strix XG279Q」はフレームレス構造ですが、2mm程度の外枠を含めて、パネル上には上左右の非表示領域の幅は6mm程度、下は18mm程度です。

また「ASUS ROG Strix XG279Q」の下側フレームは、 画面への反射を軽減する特殊な無反射コーティングが施されており、「アンチグレアベゼル」としてアピールされています。

「ASUS ROG Strix XG279Q」の背面はROGシリーズらしい電子回路を模した近未来的なパターンが描かれた、黒寄りなグレーのプラスチック製外装パネルになっています。付属スタンドは明るめのメタリックグレーで、アクセントカラーとしてフットフレームの付け根部分にはメタリックレッドカラーのリングが装着されています。

外装パネルはプラスチック製ですが塗装が綺麗なので金属のような質感になっています。鏡面シルバーで右上に大きくあしらわれたROGロゴも目を引きます。

「ASUS ROG Strix XG279Q」のモニタスタンドにはケーブルホールがあるので、各種ケーブルをまとめることができます。I/Oポートは外装パネルを大きく切り開く形で配置されていますが、付属のI/Oポートカバーによって背面から見てもスタイリッシュに仕上がります。I/Oポートカバーはプラスチックのツメでツールレスに簡単に着脱できます。

「ASUS ROG Strix XG279Q」のモニタ背面に大きく装飾されたROGロゴマークはアドレッサブルLEDイルミネーションが内蔵されており、OSDメニューやWindows OS上の専用アプリ「Armoury Crate」から発光パターンや発光カラーが設定できます。


ROGロゴのアドレッサブルLEDイルミネーションの発光カラーや発光パターンはOSDメニューから設定が可能です。OSDメニューから消灯設定もできるので必要なければ切ればOKな機能です。


アップストリームUSB3.0端子を付属のUSBケーブルでPCと接続することによって、「ASUS ROG Strix XG279Q」に搭載されたアドレッサブルLEDイルミネーションをWindows上で専用アプリArmoury Crateから制御することができます。Windows上で制御する場合はOSD設定の「Aura Sync」をオンにします。

Armoury Crateを使用すると、AURA Syncに対応したゲーミングキーボードやヘッドセットなどと「ASUS ROG Strix XG279Q」のLEDイルミネーションをライティング同期させることも可能です。

またモニタスタンドの底面にはロゴを投射できるLEDイルミネーションが搭載されており、標準のROGロゴマーク以外にも交換用カバーを使用することで各ユーザーが投射するイメージをカスタマイズできます。発光カラーは赤色のみですが、明るさは消灯含めて4段階で設定できます。


アクリルパネルはROGロゴに円形と三角形の幾何学外周が描かれた2種類に加えて、無色透明のものも付属するので、シルエットシールを作成して貼りつければ各自でお気に入りの絵柄を投影することもできます。

モニタ本体背面の左下(正面から見て右下の裏面)には、液晶モニタの電源をON/OFFするパワースイッチやモニタOSDを操作するための操作スティックおよび4つのスイッチが配置されています。

「ASUS ROG Strix XG279Q」のモニタ本体の厚さは最厚部で95mmほどと最近の液晶モニタとしてはかなり厚みが大きくなっています。モニタ本体重量は3.8kg程度と軽量です。

「ASUS ROG Strix XG279Q」の背面には下向きに各種I/Oポートが実装されており、左から順にACアダプタ接続用DC端子、HDMI2.0×2、DisplayPort1.4、アップストリームUSB3.0端子、ダウンストリームUSB3.0端子×2、3.5mmヘッドホンジャックが設置されています。(カバー付きUSB端子はメーカー補修用なので使用しない)
アップストリームUSB3.0端子は2基のダウンストリームUSB3.0端子をハブとして使用するためだけでなく、「ASUS ROG Strix XG279Q」に搭載されたLEDイルミネーションをWindows上で専用アプリから制御するのにも使用します。

「ASUS ROG Strix XG279Q」付属モニタスタンドの左右スイーベルの可動域は左右40度(80度)に対応しています。

「ASUS ROG Strix XG279Q」の付属モニタスタンドの上下チルトの可動域は仕様通り下に5度、上に20度です。

モニターの高さはモニター本体とスタンドの付け根部分が上下に動く構造になっており、全高で高さ422mm~522mmの範囲内で調整できます。

付属のスタンドはピボットに対応しており、縦向きにして使用できます。

「ASUS ROG Strix XG279Q」はVESA100x100規格のVESAマウントに対応しておりサードパーティ製のモニターアームを使用できます。モニタ単体の重量も4.0kgほどなのでモニターアームを問題なく利用可能です。

「ASUS ROG Strix XG279Q」はモニタスタンドのフレームが標準で装着されていますが、外す手順を説明すると、まずモニタ側の根本にあるカバーを取り外します。このカバーが地味に取り外し辛く、隙間にマイナスドライバーや定規など細いものを差し込んでテコで外しました。

カバーが外れればスタンドを固定する4か所のネジが現れるのでこれを外します。

ネジが外れればあとは手前方向に斜め上へ引き上げればモニタスタンドが取り外せます。

モニターアームについては管理人は「Lumen MA-GS102BK」、もしくは色違いでほぼ同機能な「サンワダイレクト 100-LA018」という製品をおすすめしています。モニターアームというとエルゴトロン製が一番の売れ筋ですが、クランプのネジが下に伸びているタイプのモニターアームは机に干渉して使えないという問題があり、MA-GS102BKはクランプを上側から六角レンチで締めるタイプでテーブル下の隙間が狭いデスクでも使用できるので管理人も使っています。

「Lumen MA-GS102BK」はモニタとアームを接続する部分がクイックリリースのブラケット式になっていてモニタアームからモニタ本体の着脱が非常に簡単です。ピボット機能もあるので設置後にモニタを縦・横で向きを切り替えることもできます。ただ関節の滑りに若干難があるので潤滑剤を塗布するのがおすすめです。

なおVESAネジ穴が背面外装から窪んだ場所にあるモニタの場合、スライド式クイックリリースプレートを採用するモニターアームでは、背面外装とクリックリリースブラケットが干渉して設置できない可能性があります。そういった場合はスペーサーを使用してください。VESA100x100規格ではネジ規格がM4と決まっているのでM4ネジのスペーサーをAmazonや最寄りのホームセンターで探して下さい。

しかしながら「ASUS ROG Strix XG279Q」はVESAネジ穴部分の窪みが25mm程度とかなり大きく、適切な長さのスペーサーを探すのも少々大変なので、スライド式クイックリリース構造のモニターアームで使用を検討しているひとは要注意です。

ASUS ROG Strix XG279QのOSD操作・設定
「ASUS ROG Strix XG279Q」のOSD操作はモニタ背面の左下(正面から見て裏側の右下)に設置されている操作スティックと4つのボタンを使用します。
5つのボタン(うち1つは操作スティック)の機能は上から順に、操作スティックボタン(4方向スティック&押下ボタン)、×ボタン、ショートカット1ボタン、ショートカット2ボタン、電源ボタンとなっています。
ASUS製モニタの操作スティックは押下ボタンの反応が雑?で、反応が悪かったり、連続押下になったりして残念な操作感のものが多かったのですが、「ASUS ROG Strix XG279Q」では改善されていたのが地味な評価ポイントでした。

操作スティックボタンを押下すると詳細設定メニューが表示されます。メニューに合わせてボタンを操作すると入力選択や詳細設定メニューからの設定が行えます。OSD表示領域は画面の6分の1程度と広く、文字も大きいので視認性は良好です。
「ASUS ROG Strix XG279Q」のOSDメニューは初めて起動した時にOSD言語として英語が適用されていますが、日本語UIにも対応しています。

「ASUS ROG Strix XG279Q」ではGameVisualボタン(ショートカットボタン1)を押下すると画質モード変更のショートカットメニューが表示されます。もう一方のGamePlusボタン(ショートカットボタン2)を押下すると、OSDクロスヘア、リアルタイムリフレッシュレート表示などゲームプレイに役立つ特殊機能にショートカットでアクセスできます。

なおこの2つのショートカットキーに割り当てる機能はOSDメニューから切り替えが可能です。


また「カスタマイズした設定」からはOSD設定の組み合わせを4種類のプロファイルとして保存し、ロードすることも可能です。


「ASUS ROG Strix XG279Q」の画質モードは、標準設定の「レースモード」に加えて、「シーンモード(風景画像の閲覧)」「映画モード」、およびゲームジャンル別で「RTS/RPGモード」「FPSモード」「MOBAモード」、さらに「sRGBモード」「ユーザーモード」の計8つの画質モードが用意されています。

「ASUS ROG Strix XG279Q」のOSDメニューには大きく分けて、「ゲーミング」「画像」「色設定」「入力選択」「照明効果」「My Favorite」「システム設定」の7つの項目が用意されています。







ゲーム関連の表示設定はトップメニューで一番上の「ゲーミング」に配置されています。
「ASUS ROG Strix XG279Q」はネイティブ対応となるWQHD解像度の144Hzリフレッシュレートに加えて、OSDメニューからさらに上の最大170Hzリフレッシュレートへオーバークロックが可能です。
リフレッシュレートのOC方法はOSDメニューの詳細設定を開いて、ゲーム機能設定の「オーバークロック」の項目をオンにすると、「最大リフレッシュレート」の項目が現れ、そこで155Hz/160Hz/165Hz/170Hzから最大リフレッシュレートを選択すると自動的にモニタが再起動します。


一般にオーバードライブと呼ばれる応答速度を調整する機能は、ASUS ROG Strix XG279Qでは「OD」の名前で配置されています。オーバードライブ補正の強度をLevel 0~5の6段階で設定できます。標準設定はLevel 3です。

可変リフレッシュレート同期機能「Adaptive-Sync (DP)」はそのままの名前で設定項目が配置されています。標準でONになっています。

モーションブラーリダクションと可変リフレッシュレート同期機能を併用できる「ELMB (Extreme Low Motion Blur) Sync」については標準ではグレーアウトしており選択できませんが、「Adaptive-Sync」をONにして、DisplayPort接続においてリフレッシュレートが120Hz、144Hzの時に選択可能となります。
なおリフレッシュレートOCで170Hz動作の時はPC側でG-Sync Compatibleを有効にするとELMB Syncを有効にできます。HDMIビデオ入力の場合はモーションブラーリダクション機能自体は使用できますが、可変リフレッシュレート同期機能との併用はできません。

黒の強弱を調節して暗がりの視認性を高める機能「Shadow Boost」は、無効化(None)およびLevel 1~Level 3およびダイナミック調整の3段階+αで設定が可能です。

この種の機能は従来、画面全てを一律に色調整していましたが、Shadow Boostのダイナミック調整では画面上を複数のゾーンに分けて、暗い部分だけを浮かび上がらせるように調整するので、画面の鮮やかさに対する損失を抑えているのが特徴です。

GamePlusからは、リフレッシュレートのリアルタイムカウンターやグラフ、照準点(OSDクロスヘア)、カウントダウンタイマーなどをオーバーレイ表示できるゲームプレイに便利な機能の設定が行えます。




また「ASUS ROG Strix XG279Q」ではGamePlus新機能として「スナイパー」が加わりました。「スナイパー」では1.5倍/1.7倍/2.0倍の3種類の倍率が選択でき、設定を有効にすると、赤もしくは緑の照準点に加えて、画面中央部分を選択した倍率で拡大表示します。


単純なOSDクロスヘアもゲーミングモニタによる”ハードウェアチート”と呼ばれることがありますが、スナイパー機能はガチでチート級です。

ASUS ROG Strix XG279Qの発色・輝度・視野角
ASUS ROG Strix XG279Qの発色・輝度・視野角など画質についてチェックしていきます。直接的な画質ではありませんがASUS ROG Strix XG279Qの液晶パネルは光沢のあるグレアではなくアンチグレアタイプなので暗転時に自分の顔などが映り込みません。

液晶パネルには大きく分けてIPS液晶パネルとVA液晶パネルとTN液晶パネルの3種類があり、各社個別の製品によって個体差はあるものの、この3つの液晶パネルの特性を簡単にまとめると次のテーブルのようになります。
「ASUS ROG Strix XG279Q」に採用されているIPS液晶パネルはTN液晶パネルやVA液晶パネルと比べると色再現性や視野角など一般に画質に直結する性能が優れている反面、価格が高価になりがちな液晶パネルです。TN液晶パネルに比べて応答速度が遅めなので、60Hzオーバーのリフレッシュレートを実現しているIPS液晶パネル採用ゲーミングモニタは少ないため、輪をかけて高価です。とはいえ画質とリフレッシュレートを両立できるので、予算に糸目をつかないエンスーゲーマー勢に好まれています。
液晶パネルの簡易比較表 | |||
IPS | VA | TN | |
色再現性 | ◎ | 〇 | △ |
コントラスト | 〇 | ◎ | △ |
視野角 | 〇 | 〇 | △ |
応答速度 | 〇 | △ | ◎ |
価格 (高RR) |
△ (×) |
△ | 〇 |
液晶パネルの種類による性能の違いについてはこちらの記事も参照してみてください。
・IPS/VA/TN液晶パネルを比較解説 - ゲーミングモニタの選び方[4]

「ASUS ROG Strix XG279Q」は144Hz+の高速リフレッシュレートながら、IPS液晶パネルが採用されているので視野角も良好です。


「ASUS ROG Strix XG279Q」の発色について、色温度の標準設定である”暖かい(暖色)”で、白色が極端に黄色や青色がかって見えることはありませんでした。通常は青が若干強めに見えますが、こちらが好みというユーザーもいるかもしれません。
もしも標準設定で違和感を覚える場合は、「ASUS ROG Strix XG279Q」では冷たい(寒色)、通常、温かい(暖色)の3つの色温度や、任意にRGB強度を調整できるユーザーモードがあります。


「ASUS ROG Strix XG279Q」はガンマカーブ設定にも対応しており、一般的なガンマ2.2に対応する標準設定の2.2に加えて、1.8/2.5の3つのプリセットから選択できます。

また標準設定のレースモードではグレーアウトしていて調整できませんが、ユーザーモードなど一部のモード(GameVisual)では、彩度も調整が可能です。

ここからはカラーキャリブレータを使用して、色域・色再現性・輝度・コントラスト・均一性など画質に直結するモニタの性能について詳細な検証結果を見ていきます。なおこれらのモニタ性能(特に輝度の均一性)については同じ製品であっても個体差が大きいのでご注意ください。検証にはカラーフィルター式(色差式)のX-Rite i1 Display Pro PlusとDatacolor SpyderX、そして分光式(スペクトロメーター)のX-Rite i1 Basic Pro 3を使用しています。

余談ですが、分光式のi1 Basic Pro 3は20万円程と非常に高価ですが、一般的な用途であれば測定精度は十分なので、イラスト製作や写真編集でカラーキャリブレーションを行う場合、カラーフィルター式のX-Rite i1 Display ProかDatacolor SpyderX Proで十分です。ユーザー数の多さで面倒が少ないのはX-Rite i1 Displayだと思います。
「ASUS ROG Strix XG279Q」のディスプレイ輝度について白色点の輝度をOSD設定別で測定しました。OSD上の輝度設定10%刻みで0%~100%の輝度変化は次のようになっています。
「ASUS ROG Strix XG279Q」において、一般に見やすい明るさと言われる120cd/m^2は輝度15%前後、室内照明に依りますが個人的に見やすいと感じる明るさの180~200cd/m^2は輝度50%前後です。また最大輝度が約500cd/m^2程度とけっこう明るいモニタです。(一般的に最大400cd/m^2以下が多い)

「ASUS ROG Strix XG279Q」のディスプレイ輝度の均一性(Uniformity)を検証しました。画面中央の輝度が約120cd/m^2になるOSD設定において、画面を横7×縦5の35分割として各位置の白色点の輝度を測定し、120cd/m^2を基準にしたパーセンテージで等高線マップにしています。

液晶モニタにおいて輝度の低下が特に大きい四隅&四辺は、上のような領域分割測定では見落とされてしまうので、同様に中央120cd/m^2を基準にして個別に測定したところ次のようになりました。
「ASUS ROG Strix XG279Q」については(下の写真は全体が白表示なので実用シーンよりもやや強調されていますが)、左右端は輝度が20%~30%も落ちており、均一性はよくありません。後述するように発色がかなり良いモニタなので、輝度の均一性が低いのは少々残念でした。

画面中央の白色点が約120cd/m2になるOSD設定において「ASUS ROG Strix XG279Q」のブラックレベルを測定したところ次のようになりました。ブラックレベルの測定にはX-Rite i1 Display Pro Plusを使用しています。
ASUS ROG Swift 360Hz PG259QNでは可変バックライトを有効にしないとブラックレベルが高くなりコントラストが大きく下がる症状があったのですが、「ASUS ROG Strix XG279Q」は標準設定の通り可変バックライトを無効のままでも1000:1程度のIPS液晶モニタとして標準的なコントラストが出ました。

またこの時のコントラスト比も算出したところ次のようになっています。なおコントラスト比に大きく影響するブラックレベルはコンマ2桁での測定になるため測定精度が若干怪しく、ブラックレベル0.01の差でコントラスト比が大きく変わるので参考程度と考えてください。

続いて「ASUS ROG Strix XG279Q」の色域と色の正確性を検証してみました。
まずはモニタのOSD設定を標準設定の標準モードにして(ディスプレイ輝度のみ120cd/m^2になるように調整)、任意のカラープロファイルを適用しない場合、次のようになりました。
「ASUS ROG Strix XG279Q」は標準モードでそのまま使用しても100% sRGB、96% DCI-P3となっており広い色域をカバーしています。

色の正確性は平均ΔEが0.50となっており、標準設定のままでもかなり正確に色を出せるモニタです。X-Riteによると『ΔE=1程度で2つの色を横にくっつけて見比べた時に違いが判別できるレベル』とのこと。

次にX-Rite i1 Basic Pro 3を使用してカラーキャリブレーションを行いました。キャリブレーション設定は下のスクリーンショットの通りですが、i1 Profilerの標準設定をそのまま採用しています。



「ASUS ROG Strix XG279Q」では色温度を標準設定にするとRGBの強さに差が大きいとアラートが出たので、色温度(カラー)を手動で調整できるユーザー設定モードでR(赤)=93, G(緑)=94, B(青)=99としてキャリブレーションを行いました。

X-Rite i1 Basic Pro 3によるカラーキャリブレーションで作成したICCファイルを適用し、上と同様に色域と色の正確性を測定したところ次のようになりました。
「ASUS ROG Strix XG279Q」はカラーキャリブレーションを行うとΔEの平均値は0.67へと逆に下がりました。とはいえ、あまり大きな差はなく、モニタ性能的に標準設定で限界近い色調整が施されているのだと思います。

参考までにX-Rite i1 Basic Pro 3で行った品質検証(色の正確性の検証)の結果は次のようになっています。X-Rite i1 Basic Pro 3は分光式(スペクトロメーター)のカラーキャリブレータなので、測定精度はこちらの方が高いはずです。
上の測定結果ではカラーキャリブレーション後も色の正確性はΔE 0.67でしたが、X-Rite i1 Basic Pro 3で測定した色の正確性はΔE 0.3とかなり優秀な数値です。

また分光型測色計(スペクトロメーター)で測定した輝度120cd/m^2における白色点のカラースペクトラムが次のようになっています。
カラースペクトラムから発色の良いモニタを見分けるざっくりとしたポイントは『RGB各色のピークが鋭く立ち上がり、かつ高さが同程度であること』です。一般的な液晶モニタは白色LEDバックライト(青色LEDを光源として赤緑(≒黄)蛍光体を組み合わせて白色を生成する)を採用しているので青色のピークが高くかつ鋭くなります。白色を基準として測定した場合、緑と赤のピークの高さは色温度のOSD設定で若干上下します。以上から簡単化すると『緑と赤のピークが鋭くなっているかどうか』をチェックすればカラースペクトラムの良し悪しがざっくりと判定できます。
「ASUS ROG Strix XG279Q」については赤と緑と青の分離がいずれも良く、青に比べて若干なだらかではあるものの、赤と緑のピークが比較的鋭くなっており、一般的なIPS液晶モニタよりもかなり良い特性です。

一般的なIPS液晶モニタの場合は赤と緑の分離が悪く、青に比べて赤と緑のピークは低くなだらかという特性を見せます。

LGがNano-IPSのブランドで展開している一部の製品も良いカラースペクトルを見せますが、緑よりも赤のピークが強く、赤ではピークの左側10nm程度のところにもう1つ極大値の山ができるので、それとも特性が違います。
「ASUS ROG Strix XG279Q」の特性は、傾向としてはASUS ROG Swift PG27UQやAcer Predator X27などQuantum dot技術を採用するモニタに近いように見えます。性能的に基準に満たないからQuantum dotとしてブランディングされていないなど何か事情があるのかもしれませんが、ともあれ、カラースペクトルからも「ASUS ROG Strix XG279Q」の発色の良さの一端が伺えました。

ASUS ROG Strix XG279Qの170Hzリフレッシュレートについて
「ASUS ROG Strix XG279Q」の最大の特徴である170Hzリフレッシュレートについてチェックしていきます。まずは「ASUS ROG Strix XG279Q」の特徴の1つである”170Hzリフレッシュレート”について、その意味自体は特に説明せずとも読者はご存知だと思いますが、一般的な60Hzリフレッシュレートの液晶モニタが1秒間に60回の画面更新を行うのに対して、144Hzリフレッシュレートであれば標準的な60Hzの2.4倍となる1秒間に144回の画面更新を行います。
さらに最近では競技ゲーマー向け製品で240Hz~360Hzの超高速リフレッシュレートなゲーミングモニタも販売されています。

1秒間に144回の画面更新を行う144Hzリフレッシュレートの物理的なメリットとしては、単純に秒間コマ数が増えるので映像がより滑らかになります。上の章で詳しく検証したようにリフレッシュレートが上がると応答速度も上がって細部がクッキリとしたシャープな映像に見えやすくなり、加えて画面更新間隔が短くなるので表示遅延が小さくなり、一般的な60Hz環境よりもスピーディーなプレイで他者を圧倒しやすくなります。
「ASUS ROG Strix XG279Q」ではNVIDIA GeForce RTX30シリーズやNVIDIA GeForce RTX20シリーズなど最新グラフィックボードのDisplayPort1.2のビデオ出力に接続することによって、モニタリフレッシュレートを最大144Hzなどに自由に設定できます。

「ASUS ROG Strix XG279Q」では2基のサブ入力の両方がHDMI2.0に対応しており、最大でWQHD/144Hzの画面表示が可能でした。

モニタリフレッシュレートの設定は、NVIDIA製GPUの場合は上のスクリーンショットのようにNVIDIAコントロールパネルから、AMD製GPUの場合はWindowsのディスプレイ設定から行います。

「ASUS ROG Strix XG279Q」がネイティブ対応するのはWQHD解像度において最大で144Hzリフレッシュレートまでですが、OSDメニューからさらに上の170Hzリフレッシュレートに対応するオーバークロックが可能です。
リフレッシュレートのOC方法はOSDメニューの詳細設定を開いて、ゲーム機能設定の「オーバークロック」の項目をオンにすると、「最大リフレッシュレート」の項目が現れ、そこで155Hz/160Hz/165Hz/170Hzから最大リフレッシュレートを選択すると自動的にモニタが再起動します。


上の手順でリフレッシュレートのOCを適用するとモニタの自動再起動後、NVIDIAコントロールパネルにおいて170Hzなど定格最大リフレッシュレートを上回る値が新たに表示されます。これで「ASUS ROG Strix XG279Q」が対応可能な最大リフレッシュレートの170Hzで動作させることができます。

オンライン対戦FPSなど競技性の高いゲームにおいて144Hzや240Hzなど高リフレッシュレートのモニタを使用した時の実用的なアドバンテージとして、ゲーム内視線を左右に振った時の視認性が上がるという例は直感的にもわかりやすいメリットですが、その他にもゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性が上がるというメリットも存在します。
下の比較動画では4分割して映像を並べていますが、右下以外の3つは右下画面の緑枠部分を拡大するよう接写して、「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影したものになっています。リフレッシュレート別で左上は60Hz、右上は120Hz、左下は240Hzとなっていますが、赤枠で囲った建物の出入り口付近で左方向に移動する敵の動きはリフレッシュレートが上がるほど視認しやすくなるのがわかると思います。
またハイリフレッシュレートなゲーミングモニタでは表示遅延も小さくなります。
画面表示を基準にして、クロスヘア中央にターゲットをエイムしてから撃ち始めた場合、240Hzのほうが60Hzより先に着弾します。ターゲットが逃げる場合は50ms程度の差で撃ち漏らす場合もあります。
技術云々ではなく、単純に、クロスヘア中央にエイムするという同じタイミングで撃ちあっていたら、リフレッシュレートが高いモニタを使っている方が勝ちます。加えて操作と画面表示の繰り返し応答も早いので、当然、リフレッシュレートが高い方がエイムもスムーズになります。
NVIDIA公式からもハイリフレッシュレートなゲーミングモニタとハイフレームレートに対応可能な高性能グラフィックボードを使用するメリットについて紹介する「動画が公開されています。
こちらもNVIDIA公式による比較動画ですが、相対しているプレイヤーそれぞれのディスプレイを、現実に横に並べてハイスピードカメラで撮影しています。
240~360Hz・FPSでシステム遅延が小さい環境の攻撃側に敵(守備側)が見えているのに対して、一般的な60Hz・FPSでシステム遅延が大きい環境の守備側は敵(攻撃側)が見えていない様子がハッキリと映っています。
なお「ASUS ROG Strix XG279Q」でWQHD解像度/170FPSを狙うには、元から軽めのPCゲームや画質設定を下げた最新PCゲームであってもグラフィックボードのGPU性能がそれなりに要求されます。液晶モニタに「ASUS ROG Strix XG279Q」を使用するのであれば2020年最新のミドルハイクラスGPUであるNVIDIA GeForce RTX 3070やAMD Radeon RX 6800がおすすめです。
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ASUS ROG Strix XG279Qの応答速度・表示遅延
次にゲーミングモニタのハードウェア性能として特に重要な、「ASUS ROG Strix XG279Q」の応答速度や表示遅延についてチェックしていきます。まずは「ASUS ROG Strix XG279Q」の応答速度について検証していきます。
なおゲーミングモニタを選ぶ、もしくはモニタの応答速度や残像を評価する上で重要な予備知識である『液晶モニタの応答速度とオーバードライブ機能』についてはこちらの記事で簡単に紹介しているので、よくわからないという人は先に確認してみてください。
・ゲーミングモニタの選び方[1] 応答速度とオーバードライブについて
![ゲーミングモニタの選び方[1] 応答速度とオーバードライブについて](https://livedoor.blogimg.jp/wisteriear/imgs/4/0/40404cc5-s.jpg)
「ASUS ROG Strix XG279Q」のOSDメニュー上ではオーバードライブ機能は「OD」の名前で配置されています。オーバードライブ補正の強度をLevel 0~5の6段階で設定できます。標準設定はLevel 3です。標準設定は高速になっているので、以降の検証においても上で解説したオーバードライブの補正がかかります。
「ASUS ROG Strix XG279Q」のオーバードライブ設定は170Hzにおいては”Level 2”が最適な設定で、目視してみて問題なければ”Level 3”でもOKという具合です。Level 4以上にすると過渡応答は速くなりますが盛大にオーバーシュートが発生します。
144Hzにおいては”Level 1”もしくは”Level 2”をお好みで選ぶ感じですが、100~144Hzで可変リフレッシュレート同期機能を利用する場合は”Level 1”が推奨です。
60Hzにリフレッシュレートを下げるとLevel 1以上の各種設定においてオーバーシュートの逆像が発生するため、オーバーシュートを割けるには補正なしの”Level 0”にする必要があります。「ASUS ROG Strix XG279Q」は素の応答速度が優秀なので”Level 0”でも60Hzで綺麗な応答を見せますが、高リフレッシュレートに合わせたOD設定ではオーバーシュートが大幅に発生するので注意してください。

応答速度の確認には「UFO Test: Ghosting」を使用します。同テストではUFOが移動する背景カラーを選択できますが、今回の検証ではブラック/グレー/ホワイトの3色を選択しています。
背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。

まずは簡単にシャッタースピードを十分に速くして「UFO Test: Ghosting」の様子を写真撮影してみたところ、「ASUS ROG Strix XG279Q」では144Hzリフレッシュレートで動作させると(オーバードライブ設定は最適値のLevel 1)、ベストタイミングにおいて1フレーム前の残像がかすかに残る感じになりました。
同社のVG27AQを含め1msGTG対応LG製パネルを除くWQHD/144Hz+/IPS液晶モニタの多くの製品ではこのベストタイミングの撮影でも1,2フレーム前がハッキリ写っていました。「ASUS ROG Strix XG279Q」もAUO製パネルですが応答性能が改良された液晶パネルが採用されていることが分かります。

リフレッシュレートOCで対応する最大値の170Hzでも応答速度が劇的に向上するわけではありませんが、オーバードライブ設定を最適値のLevel 2に引き上げることで、やはりベストタイミングで1フレーム前が薄っすらと映る程度という高速な応答を実現しています。

さらに「ASUS ROG Strix XG279Q」のリフレッシュレートを変えてみたり、他の液晶モニタを比較対象にしたりしながら、「UFO Test: Ghosting」の様子を「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、比較してみます。

「ASUS ROG Strix XG279Q」の標準オーバードライブ設定は”Level 3”ですが、リフレッシュレートをOCで対応する最大値の170Hzにした場合、若干ですがオーバーシュートによる滲みが見て取れます。最適値はLevel 2だと思いますが、過渡応答はLevel 3のほうが高速なので実際に試してみて違和感がなければLevel 3でもいいと思います。Level 4/5についてはオーバーシュートがかなり強いので非推奨です。
ハイリフレッシュレートで理想的な応答を見せるオーバードライブ設定は相対的に補正が強過ぎるため、リフレッシュレートを下げるとオーバーシュートが発生してしまうことが多いですが、144HzではLevel 1(違和感がなければLevel 2でもOK)、60HzではLevel 0が推奨設定です。
なお100~144Hz程度の範囲内でNVIDIA G-Sync CompatibleやAMD FreeSyncなど可変リフレッシュレート同期機能を使用する場合は、Level 1が推奨のオーバードライブ設定です。
「ASUS ROG Strix XG279Q」と同じくWQHD解像度/144Hz+リフレッシュレートでIPS液晶パネルの「ASUS TUF Gaming VG27AQ」や「LG 27GL850-B」と、144Hz動作時の応答速度を比較してみました。
WQHD/144Hz/IPS液晶のパネルは主にLG、AUO、Innoluxの3社が製造しており、特に純正モデルのLG 27GL850-Bを始めとしてNano IPSと1ms GTGを冠するLG製パネル採用製品は頭一つ抜きん出た高速な応答速度を実現していることで知られています。
「ASUS ROG Strix XG279Q」は先行して発売されたASUS TUF Gaming VG27AQと同じくAUO製パネルが採用されているようですが、応答速度は高速になっています。一方で同じく1ms GTGを謳うLG 27GL850-Bと比較すると僅かに遅いようです。(実際の目視では同等になる程度の差ですが)
最速とはならなかったものの、「ASUS ROG Strix XG279Q」は2018~2020年に多数発売されたWQHD解像度/144Hz+/IPS液晶ゲーミングモニタの多くよりも高速な応答性能を発揮する製品だと思います。
ここからはSONY DSC-RX100M5の960FPS(16倍速)よりもさらに高速な5760FPS(96倍速)のスーパースローモーションカメラを使用して「ASUS ROG Strix XG279Q」の応答速度を比較検証していきます。
先ほど同様、比較対象には「ASUS TUF Gaming VG27AQ」に加えて、他にちょうどいい製品がなかったので144HzかつIPS液晶という関連でLG 27GN950-B、LG 38GL950G-Bと比較してみた様子が次のようになっています。
やはり「ASUS ROG Strix XG279Q」はASUS TUF Gaming VG27AQよりも高速ですが、1ms GTGを売りにしているLG勢の最新パネル採用製品と比較すると同等からやや下回る性能になっているのが分かります。
「UFO Test: Ghosting」において下の写真のようにUFOが微かに表示された瞬間を始点に、その地点のUFOが完全に消えた時点を終点にして、その間隔のフレーム数を応答速度として算出し比較してみました。なおオーバードライブ機能によって発生するオーバーシュート/アンダーシュートによる逆像が発生してから消えるまでの時間は別に計算しています。
測定には240Hz未満のモニタではSONY DSC-RX100M5の960FPSスーパースローモーションを使用していますが、240Hzを超えるモニタでは5760FPSのスーパースローモーションを使用しており、その場合は末尾に”*”マークを添えています。

評価の目安として、”1000msをリフレッシュレートで割って2倍した数値”よりも測定値が小さければ、画面更新に応答速度が追いついています。60Hzの場合は33.3ms、120Hzの場合は16.6ms、144Hzの場合は13.9ms、240Hzの場合は8.3ms、360Hzの場合は5.6msを下回っていればOKです。
まずは背景カラーがブラックの時の「ASUS ROG Strix XG279Q」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。

続いて背景カラーがホワイトの時の「ASUS ROG Strix XG279Q」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。

最後に背景カラーがグレーの時の「ASUS ROG Strix XG279Q」やその他の比較対象モニタの応答速度の計測結果となります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。

最後に「ASUS ROG Strix XG279Q」の表示遅延(内部遅延)について測定を行いました。
モニタにはGPUのビデオ出力が送られてきてから実際にモニタに表示されるまで遅延が存在し、この遅延が大きいと例えば、FPSゲームでゲームパッドのトリガーやマウスのクリックによる操作からワンテンポ遅れて、マズルフラッシュが表示される、といった現象が発生します。人間は当然目で見てから操作するので、格闘ゲームやFPSゲームなど1,2フレームを争うような競技性の高いゲームにおいてはモニタの表示遅延が可能な限り小さいことが望まれます。
モニタの表示遅延測定においてはモニタ以外の要因で表示遅延に差が出ると問題があるので、検証モニタへビデオ出力を行うPCはCore i9 9900KとGeForce RTX 2080 Tiを搭載した次のベンチ機で統一しています。
テストベンチ機の構成 | |
CPU | Intel Core i9 9900K(レビュー) Core/Cache:5.1/4.7GHz, 1.300V 殻割り&クマメタル化(レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36(レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z Black F4-4400C19D-16GTZKK DDR4 8GB*2=16GB (レビュー) 4000MHz, CL17-17-17-37-CR2 |
マザーボード |
ASUS WS Z390 PRO (レビュー) |
ビデオカード | ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 860 EVO M.2 1TB MZ-N6E1T0B/IT (レビュー) |
OS | Windows10 Home 64bit |
電源ユニット | Corsair HX1200i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
キーボード | HyperX Alloy FPS メカニカルゲーミングキーボード (レビュー) |

モニタの表示遅延を測定する具体的な方法としては、キー押下時にそのキーのLEDが点灯するキーボードを使用して、LEDの点灯から画面表示への反映までの間隔を遅延時間として測定します。画面表示の確認については簡単にメモ帳を使用しています。この様子を「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、遅延フレーム数を数えて遅延時間を算出します。同計測を各モニタ(と各リフレッシュレート)ごとに10回ずつ行って、その平均値を表示遅延とします。
「ASUS ROG Strix XG279Q」やその他の比較モニタの表示遅延の測定結果は次のようになりました。グラフの通りリフレッシュレートを上げると応答速度だけでなく表示遅延も改善するのでゲーマーにとってハイリフレッシュレート液晶モニタを選択するメリットは大きいです。
以前レビューしたVG279QMでも見られた傾向ですが、ASUS製ゲーミングモニタの一部はなぜか60Hzリフレッシュレートの時に表示遅延が20~30ms程度大きくなってしまい、「ASUS ROG Strix XG279Q」もそうなりました。

表示遅延が小さいメリットとしては、視認と操作の繰り返し応答が良くなることに加えて、例えば下の動画のように壁に隠れたターゲットが壁から出てきた時、画面に表示されるのが実際に速くなります。
240~360Hz・FPSでシステム遅延が小さい環境の攻撃側に敵(守備側)が見えているのに対して、一般的な60Hz・FPSでシステム遅延が大きい環境の守備側は敵(攻撃側)が見えていない様子がハッキリと映っています。
主観の画面表示を基準にしてみると、クロスヘア中央にターゲットをエイムしてから撃ち始めた場合、240Hzのほうが60Hzより先に着弾します。ターゲットが逃げる場合は50ms程度の差で撃ち漏らす場合もあります。
技術云々ではなく、単純に、クロスヘア中央にエイムするという同じタイミングで撃ちあっていたら、リフレッシュレートが高いモニタを使っている方が勝ちます。加えて操作と画面表示の繰り返し応答も早いので、当然、リフレッシュレートが高い方がエイムもスムーズになります。
ASUS ROG Strix XG279QのFreeSync/G-Sync CPについて
続いて「ASUS ROG Strix XG279Q」が対応する可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible(VESA Adaptive-Sync)」についてチェックしていきます。モニタの画面更新(リフレッシュ)に関する基本的な予備知識や、「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync)」と「NVIDIA G-Sync Compatible」の関係についてはこちらの記事を参考にしてください。
・ゲーミングモニタの選び方[3] FreeSyncとG-Sync Compatibleについて

なお当サイトのレビューではNVIDIA環境について、G-Syncモジュールが搭載されたモニタにおける可変リフレッシュレート同期機能を単純にG-Syncと呼び、AMD FreeSync(VESA Adaptive-Sync)に対応したモニタにおける可変リフレッシュレート同期機能はG-Sync CompatibleもしくはAdaptive-Syncと呼びます。またドライバでそのモニタが正式にサポートされている場合はG-Sync Compatible認証取得済みと補足します。
「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync) / NVIDIA G-Sync Compatible」には対応可能なフレームレート(リフレッシュレート)の上限と下限が製品ごとに設定されており、「ASUS ROG Strix XG279Q」は48Hz~144Hz/170Hzの範囲内で可変リフレッシュレート同期に対応しています。「AMD FreeSync」に対応するビデオ入力はHDMI2.0とDisplayPort1.2の両方です。
「NVIDIA G-Sync Compatible」に対応するビデオ入力は機能の仕様上DisplayPortのみ、GeForce Driver 457.51でG-Sync Compatible認証取得を確認しています。(NVIDIA公式ページによると441.08以降でサポート)

「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync) / NVIDIA G-Sync Compatible」が正常に動作してリフレッシュレートが可変になると、「ASUS ROG Strix XG279Q」のGamePlus機能の1つであるFPSカウンターによってオーバーレイ表示されるリアルタイムリフレッシュレートがフレームレートに合わせて変動するようになります。
可変動作リフレッシュレート同期機能が正常に動作しているかは、FPSカウンター(リアルタイムリフレッシュレート)がゲーム内フレームレートに合わせて変動しているかどうかを見て確認してください。

「ASUS ROG Strix XG279Q」で可変リフレッシュレート同期機能G-Sync Compatibleを使用すると、下の動画のように同期なしで頻発するテアリング(画面の分断)やスタッター(カクつき)が綺麗に消えているのが分かります。
以下、「ASUS ROG Strix XG279Q」でAMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync) / NVIDIA G-Sync Compatibleを使用する手順について説明しますが、共通の確認事項として、OSD設定で「Adaptive-Sync」の項目をオンにしてください。同設定項目は標準ではオンになっています。

AMD FreeSyncの使い方
可変リフレッシュレート同期「AMD FreeSync」を有効化する手順について説明します。AMD製GPU搭載PCの場合はRadeon設定のウィンドウ右上にある歯車アイコンを選択、トップメニュータブからディスプレイを選択の手順で表示される「Radeon FreeSync」のスライドスイッチから機能を有効化します。

また上で紹介した参考記事中で解説しているように、AMD FreeSyncではテアリング解消とマウス遅延低減のどちらを優先するかで垂直同期の有無を各自で選択する必要があります。垂直同期は通常ゲーム内設定でON/OFFの切り替えが可能ですが、ドライバ側が上書きしてゲーム内からは切り替えられない場合があります。ゲーム内で設定して希望通りの動作にならない時はRadeon Settingsのゲームプロファイルもチェックしてください。

NVIDIA G-Sync Compatibleの使い方
可変リフレッシュレート同期「NVIDIA G-Sync Compatible」を有効化する手順について説明します。2019年1月15日以降の最新ドライバによってNVIDIA GeForce環境でもAdaptive-Syncが利用可能になりました。ドライバの更新に合わせてG-Sync Compatible認証を取得するモニタが増えています。
417.71以降の最新ドライバをインストールして、DisplayPortビデオ出力にAdaptive-Sync対応モニタを接続すると、G-Sync対応モニタを接続した時と同様にAdaptive-Syncを有効化するための設定が、NVIDIAコントロールパネル上の「G-Syncの設定」に表示されます。
「G-SYNC、G-SYNCとの互換性を有効化(Enable G-SYNC, G-SYNC Compatible)」のチェックボックスをチェックして、下のモニタアイコンに使用するモニタの名前が表示・選択されていることを確認し、適用をクリックすればNVIDIA GeForce環境でAdaptive-Syncを有効化できます。

なお今回レビューする「ASUS ROG Strix XG279Q」と違ってG-SYNC Compatible認証を取得していない一般のAMD FreeSync/VESA Adaptive-Sync対応モニタでも、互換性が検証されていないと注記が表示されますが、NVIDIA製GPU環境においてAdaptive-Syncを利用できます。

AMD FreeSync/NVIDIA G-Sync Compatibleの効果
可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync) / NVIDIA G-Sync Compatible」の効果やメリットについて説明していきます。機能的にはほぼ同じなので以下まとめてFreeSyncと呼ぶことがあります。AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync) / NVIDIA G-Sync Compatibleの検証に際してはリプレイ機能があって同一シーンで検証がしやすいので「Project Cars 2」を使用しています。またフレームレートやテアリングの発生の様子を確認しやすいように、画面左上にはGPUフレームレートOSD、画面左端にはGPUフレームバッファで色の変わるカラーバーが表示されるようにしています。加えてモニタが対応していればモニタOSDのリフレッシュレート表示機能も使用します。
画面右上のフレームレートはGPUフレームバッファから算出されているので必ずしもリフレッシュレートとは一致しません。画面左端のカラーバーは連続するフレーム間、つまりn番目とn+1番目のフレームではそれぞれ異なる色になっているため、同時に複数色のカラーバーが表示されている画面はテアリングが発生していることを意味します。

まずは同期なし、垂直同期、FreeSync、FreeSync+垂直同期の違いを分かりやすく体感してもらうため、モニタリフレッシュレート60HzにおいてGPU側出力フレームレートが30FPS~60FPSの間で変動するようにして、「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影して、画面表示の様子を比較してみました。
同期なしでは盛大にテアリングが発生し、垂直同期ではスタッター(カクつき)が発生しているのがわかります。一方でFreeSyncと垂直同期の両方を有効にした場合はテアリングもスタッターも発生しません。ただし例外として動画で50秒以降のフレームレートが40FPSを下回るとAMD FreeSyncの対応フレームレート外となるためスタッターが発生しています。またFreeSyncのみを有効にして垂直同期は無効の場合、同期なしと比べて圧倒的にテアリングが減っているのがわかります。ただし対応フレームレート内であっても稀にテアリングが発生し、対応フレームレート外では同期なし同様にテアリングが発生します。
続いて144Hzリフレッシュレートにおいて、GPU側出力フレームレートが100FPS前後で変動するようにして、先ほど同様に同期なし、垂直同期、FreeSync、FreeSync+垂直同期の様子を16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影して比較してみました。
FreeSync有効であれば同期なしのテアリングや垂直同期のスタッターに悩まされることなく滑らかで綺麗な映像が表示できています。FreeSyncの60Hz/50FPS前後と144Hz/100FPS前後を比較すると当然ですが後者の方がコマ割りが増えるので16倍速スローモーションでもスムーズに見えます。
FreeSyncのみを有効した時に映像フレームレートが対応フレームレート範囲外になるとテアリングが発生しますが、リフレッシュレートを上回ってしまう場合については、Radeon設定のRadeon Chillの最大FPSに”リフレッシュレートから3,4FPSを引いた値”を指定してください。(グローバル設定だけでなくゲームタイトル別に設定が可能)

なおNVIDIA GeForce環境でAdaptive-Syncを利用する場合も、フレームレートがリフレッシュレートを超過するとテアリングが発生するので、テアリングを完全になくすには垂直同期を有効化する必要があります。もしくは垂直同期無効においてテアリングをなくすには、NVIDIAコントロールパネルの「Max Frame Rate」に”リフレッシュレートから3,4FPSを引いた値”を指定してください。(グローバル設定だけでなくゲームタイトル別に設定が可能)

これの設定以外にもRivaTunerやNvidia Profile Inspectorを使用してゲーム内フレームレートがモニタリフレッシュレートを上回らないように設定することも可能です。


下の比較はいずれもFreeSyncが有効になっているのでスタッターもなく滑らかですが、単純にFreeSyncだけを有効にすると対応フレームレートの上限となるリフレッシュレートを超えた時にテアリングが発生します。
リフレッシュレートが144Hz(フレームレートの上限が144FPS)の場合は120FPS~140FPSが上限になるようにフレームレートに制限をかければ、マウス操作を低遅延しつつ、テアリングの発生も最小限に抑えて快適なゲームプレイが可能です。
またPUBGやCS:GOのようなオンライン対戦FPSや格闘ゲームなど1,2フレームを争う競技性の高いPCゲームでは、表示遅延(入力遅延)が発生する垂直同期は嫌われる傾向にありますが、144Hzや240Hzといったハイリフレッシュレートモニタにおいて、同期機能を無効化した場合に発生するテアリングがどのように影響するのか検証してみました。
テアリングはモニタ表示更新中のフレームバッファの更新で発生しますが、目で見た時の違和感はn番目とn+1番目のフレームの絵の差に影響されます。コマ割りが細かくなる高フレームレートではn番目とn+1番目の絵の違いは当然、低フレームレートの場合よりも小さくなります。そのため50FPSでは画面の分断のように知覚できたテアリングは、200FPSのような高フレームレートでは細かいノイズのような形で知覚されます。
100FPSを超える高フレームレートでは大きな分断に見えるテアリングの代わりに、細かいノイズのように感じるテアリングが増えてきます。『細かいノイズの発生程度であれば高リフレッシュレートモニタのテアリングは実用上は大した問題ではなく、可変リフレッシュレート同期機能は不要である』という意見がありますが、高リフレッシュレートモニタのアドバンテージとして先に解説した「ゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性」と合わせて考えると、このノイズの有無は遠方の細かいエネミーやオブジェクトの発見に影響します。なので高リフレッシュレートモニタを使用するのであれば可変リフレッシュレート同期機能はあったほうがいい、というのが管理人の意見です。
ASUS ROG Strix XG279QのELMB Syncについて
「ASUS ROG Strix XG279Q」にはASUS独自モーションブラーリダクション機能「Extreme Low Motion Blur (ELMB)」が実装され、可変リフレッシュレート同期機能G-Sync Compatibleと併用可能なのでELMB Syncとしてアピールされています。『画面からスミアやモーションブラーを取り除き、動体の描画をより鮮明に表現します』という文句以外には、同機能に関する詳細な仕様についてはASUSからは公表されていませんが、実機の動作を確認してみたところ、「ELMB (Extreme Low Motion Blur)」は一般に言うところのMotion Blur Reduction(モーションブラーリダクション、残像抑制)機能の1種のようです。
モーションブラーリダクション機能についてはこちらの記事で簡単に紹介しているので、よくわからないという人は先に確認してみてください。
・ゲーミングモニタの選び方[2] モーションブラーリダクションについて

「ASUS ROG Strix XG279Q」に搭載されたモーションブラーリダクションと可変リフレッシュレート同期機能を併用できるASUSの独自機能「ELMB (Extreme Low Motion Blur) Sync」については標準ではグレーアウトしており選択できませんが、「Adaptive-Sync」をONにして、DisplayPort接続においてリフレッシュレートが120Hz、144Hzの時に選択可能となります。
HDMIビデオ入力の場合はモーションブラーリダクション機能自体は使用できますが、可変リフレッシュレート同期機能との併用はできません。

「ASUS ROG Strix XG279Q」は公式マニュアルにおいてELMB Syncを使用可能な最大リフレッシュレートは165Hzと表記されていますが、PC側でG-Sync Compatibleが有効になっていれば、170HzリフレッシュレートでもELMB Syncを有効にできます。(VRR同期を使用していない時に対応する最大リフレッシュレートは165Hz)

まずはモーションブラーリダクション機能「ELMB Sync」が具体的にどのような動作をしているのか確認していきます。「ASUS ROG Strix XG279Q」で170HzリフレッシュレートのELMB Syncが動作している時の様子を5760FPSスーパースローモーションムービーで撮影してみました。5760FPS(96倍速)で160Hzモニタ(2.8倍速)を撮影しているので、モニタの1フレームが更新されるまでを撮影した動画は約36フレームに分割されます。
前述の通り36フレーム周期で1リフレッシュとなっていますが、明転時間は12フレーム、暗転時間は36フレームです。明暗比率は1:2なのでゲーミングモニタのMBR機能としては標準的な比率です。
なおASUS ROG Strix XG279QではMBR時の明るさを調整できますが、明転:暗転の比率は一定で明転時のバックライト輝度を調整しています。

また黒フレーム挿入によるMotion Blur Reduction機能では、残像感を低減させる効果が期待できる反面、バックライトを消灯するので時間平均の輝度が下がって画面が暗くなるというデメリットが指摘されます。
「ASUS ROG Strix XG279Q」はELMB Syncを使用しても通常表示の時と同じく画面輝度を0%~100%で設定できますが、輝度を100%に設定しても最大で180cd/m^2となります。200cd/m^2には届かいないものの、最大輝度ならある程度の明るさは確保できるので通常の室内利用では問題ないはずですが、室内照明がかなり明るい環境等では注意が必要です。

「ASUS ROG Strix XG279Q」に搭載された「ELMB Sync」などモーションブラーリダクション機能は、人の目の錯覚が引き起こす残像やボヤケを解消する機能なので、写真や動画を見せて残像が抑制されている様子を実際に見せるというような解説は厳密には不可能です。
そのためレビューでは管理人が試用してみたインプレッションを伝えることくらいしかできないのですが、「ELMB Sync」を有効にすると動いている物体の輪郭がクッキリとして確かに視認しやすくなりました。下の写真は管理人が「UFO Test: Strobe Crosstalk」を見た時の感覚を表現したイメージ図ですが、「ELMB Sync」を有効にすると輪郭のボヤケがなくなってネイティブスピードでも倍速ハイスピード動画のスローモーションで輪郭を追っている時に近い感覚で追従して見ることができました。

また「ELMB Sync」の魅力は冒頭で述べた通りであり、その名前の通りでもあるのですが、可変リフレッシュレート同期機能G-Sync Compatibleと併用が可能なところです。
実際に上限170Hzリフレッシュレートにおいて「ELMB Sync」の動作を確認してみたところ、フレームレートに合わせて変動するリフレッシュレートに対し、適切に黒フレームが挿入されています。可変リフレッシュレート同期機能も正常に動作しているので、ELMBのみでテアリングやスタッターが頻発するのに対して、「ELMB Sync」は綺麗かつ滑らかな表示になっています。
ASUS ROG Strix XG279QのHDR表示やHDCP対応について
最後に「ASUS ROG Strix XG279Q」のHDR表示やHDCP対応について簡単にチェックします。「ASUS ROG Strix XG279Q」はHDR表示に対応しており、VESAが展開するHDR輝度認証のVESA DisplayHDR 400を取得しています。
「ASUS ROG Strix XG279Q」は標準でHDR信号を受け付ける状態になっており、HDR表示を行う上で特にOSD上から設定を行う必要はありません。HDR信号を認識すると通常はグレーアウトしているHDR関連のOSD設定にアクセスできるようになり、HDR表示プリセットとして「ASUS Gaming HDR」と「ASUS Cinema HDR」の2種類が選択できます。HDR表示モード中は明るさやコントラストが自動制御となりグレーアウトして設定できなくなります。

また通常表示においては標準で無効化されている機能ですが、ダイナミック調光という設定があり、HDR映像を検出してHDR表示モードに変わるとともに同機能が有効になります。

下はダイナミック調光の様子を分かりやすく見せたものですが、縦縞状で10分割に満たないローカルディミング的なバックライト制御が行われます。正直、違和感を覚えるケースのほうが多そうなので、HDRモードでもオン/オフは各自で切り替えられるようにして欲しかったところです。
「ASUS ROG Strix XG279Q」はWQHD/144HzやWQHD/170HzでもHDR表示とVRR同期機能を併用できますが、DisplayPortビデオ入力はバージョン1.4ではなくバージョン1.2なので、カラーフォーマットは8bit RGBが上限となります。

HDR表示において10bit RGBに対応するのはWQHD/120Hzまでです。DisplayPort1.4に対応していれば144Hzや170Hzでも10bit RGBに対応できていたので少々残念なポイントでした。

「ASUS ROG Strix XG279Q」のサブ入力として設置されている2基のHDMI端子は両方ともver2.0に対応しており、モニタの物理的な解像度がWQHDなので実際の表示自体は当然WQHDにダウンスケールされますが、PlayStation 5やXbox Series X/Sに接続した場合、4K/60FPS対応モニタとして認識され、4K解像度のビデオ出力が可能です。
PlayStation 5やXbox Series X/Sのビデオ出力設定を4K解像度にすると、最新のデジタル著作権保護HDCP2.2に対応し、Ultra HD Blu-rayなど著作権保護のあるコンテンツも再生が可能になります。


なおHDRコンテンツを再生(ゲームをプレイ)する時は、YCbCr422を許可するように設定してください。

Xbox Series X/Sは1440pにも対応しているので2560×1440のネイティブ解像度でビデオ出力が可能、加えて120Hzリフレッシュレートや可変リフレッシュレート同期機能も利用できます。

HDRについて簡単に説明すると、HDR(ハイダイナミックレンジ)というのは、RGBの光の三原色の映像情報に加えて、輝度(明るさ)の情報が備わった映像ソースのことです。従来の表示機器や映像ソースでは10^3程度のダイナミックレンジしかありませんでしたが、HDRに対応することでダイナミックレンジが10^5程度と100倍近く拡張され、従来よりも細かい階調で明るさや暗さを表現できるようになり、「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるように画面の明るさを操作することで、白飛びや黒潰れをなくして高画質を実現しています。

HDRに関する説明は色々とあると思いますが、管理人は『明るい場所はより明るく、暗い場所はより暗く』と大雑把に理解しています。「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」するということは必ずしも”見えやすく”なるわけではありません。というか暗い場所は暗くなるので必然、暗い部分は見えにくくなります。逆に明るい場所が明るくなったら見えやすくなるかというと、再現可能な輝度の領域が増すので、ディスプレイによる描画は現実に近づきますが、太陽を覗き込んだ時のように特に明るい場所の周辺は光で潰れて(目の調光機能的な問題で)見えにくくなります。もちろん明暗が分かれることで境界線がクッキリして見えやすくなる場合もあります。
一部のゲーミングモニタに暗所を明るく(白く)して見えやすくする機能があるように、HDR表示は見やすさには直結しないので、見やすさという意味で画質が良くなるのかというと、その点はケースバイケースです。SDRダイナミックレンジの範囲内で平滑化されていた時に比べて、暗い部分が強調されることを考えると見えにくさの方が体感しやすい気がします。
HDRは原理的にはモニタから見える映像を”リアル”に近づける機能です。ただし実際のところはモニタ個別の色調設定などの都合で鮮やかになり過ぎたり色味が変わったりするので、「実際の視覚と同じ」という意味でリアルかというと疑問符が付くのですが。「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるので立体感は増して、平面表示の中に奥行を感じやすくなるという点ではリアルな表示に近づきます。個人的にはHDR表示の効果はSDRに比べて、鮮やかになって、立体感が増すと感じています。
4Kモニタの広告をフルHDモニタで見る以上に、SDRモニタでHDRについて体感的に理解することは困難です。なのでHDRについては店頭など実機で体験して気に入れば購入するくらいが正直なところおすすめです。HDRについては正直に言って”百聞は一見に如かず”な機能です。SDRモニタ上で調べるよりもHDR表示の実機を見て気に入るかどうかが全てな機能だと思います。
ASUS ROG Strix XG279Qのレビューまとめ
最後に「ASUS ROG Strix XG279Q」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 画面サイズ27インチでゲーミングモニタとしてはちょうどいいサイズ
- 発色や視野角に優れたIPS液晶パネル
- 液晶パネルは反射防止のアンチグレア
- ビデオ入力はDisplayPort1.2×1とHDMI2.0×2の計3系統
- 全てのビデオ入力においてWQHD解像度/144Hzリフレッシュレートに対応
- DP1.2入力ではオーバークロックによって170Hzリフレッシュレートにも対応
- 可変リフレッシュレート同期機能AMD FreeSync(VESA Adaptive-Sync)に対応
(DisplayPortとHDMIで48FPS~144FPS, 170FPSの範囲内で対応) - PS5やXbox Series X/Sの接続時は4K/60FPSの入力、HDCP2.2に対応
- 可変リフレッシュレート同期と併用可能なMBR機能「ELMB Sync」に対応
- 照準点をオーバーレイし、なおかつ画面中央を拡大表示する「スナイパー」機能
- モニタ本体重量3.8kgかつVESAマウント対応でモニターアームを使用可能
- 60Hz動作で表示遅延が20~30ms程度大きい
- ビデオ入力の自動切換えをOFFにできない
- 輝度の均一性が低く、左右端がけっこう暗く感じる
「ASUS ROG Strix XG279Q」は2560×1440のWQHD解像度、ネイティブ144HzさらにOC 170Hzの高速リフレッシュレート、IPS液晶パネルというハイスペックな液晶パネルを採用したゲーミングモニタです。
同スペックの製品は5年ほど前が初出となっており、真新しさこそありませんが登場当時の最速グラフィックボードはGeForce GTX 1660相当のGeForce GTX 980で、WQHD/144Hzのフルスペックを発揮しようとするとマルチGPUが要求されたのが、2021年現在の最新GPUであればGeForce RTX 3070/3060TiやRadeon RX 6800などミドルハイクラスGPU1台で対応できるので、高解像度かつハイリフレッシュレートなゲーミングモニタとしてはちょうどいい製品です。
液晶パネルの性能については、1msGTGを謳うLG製パネルに迫る高速応答、実測で97% DCI-P3の広色域かつΔE=0.3の色精度という優れた発色は非常に魅力的ですが、一方で中央と比較して左右端が20~30%も輝度が落ちるという均一性の低さは残念でした。
「ASUS ROG Strix XG279Q」は可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync)」に対応しています。FreeSync対応フレームレートとして48FPS~170FPSの幅広いフレームレートをカバーしており、60FPS前後しか維持できない最新の高画質な重いゲームから、100FPS以上を維持できる競技性の高い軽めなゲームまで、テアリングやスタッターのないクリアで滑らかな表示を実現します。
これまではAMD製GPUを搭載した環境でしか使用できない機能でしたが、2019年1月からはNVIDIA製GPUでも可変リフレッシュレート同期機能Adaptive-Syncが利用できるようになったので間口もかなり広くなったと思います。
さらに「ASUS ROG Strix XG279Q」は最新GeForceドライバにおいてNVIDIA製GPUとの互換性を証明するG-Sync Compatible認証も取得しているので、国内シェアの高いNVIDIA環境でも安心して使用できます。
その他にも「ASUS ROG Strix XG279Q」には、可変リフレッシュレート同期と併用可能なモーションブラーリダクション機能「Extreme Low Motion Blur (ELMB) Sync」や、もはやチート級なゲーマー向け便利機能「スナイパー」といったASUS独自の機能が満載され、PS5やXbox Series X/Sと接続した時は4K/60FPSエミュレートにも対応しています。「ASUS ROG Strix XG279Q」は多数のゲーマー向け独自機能という点で各社から発売されて競合製品の多いWQHD/144Hz+/IPS液晶モニタの中でも魅力的な製品だと思います。
以上、「ASUS ROG Strix XG279Q」のレビューでした。

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ELMB Syncに対応するWQHD/170Hzの27インチIPS液晶ゲーミングモニタ「ASUS ROG Strix XG279Q」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) February 22, 2021
RTX 3070やRX 6800に最適な2021年の定番スペックの実力や、豊富なASUS独自機能を徹底検証https://t.co/eNb0kG5u0j pic.twitter.com/WFSpoCkUQ7
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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