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HDR表示や可変リフレッシュレート同期機能FreeSyncに対応、高音質なtreVoloスピーカーを搭載し、リモコンによるOSD操作にも対応するマルチメディア向けの28インチ4K解像度IPS液晶モニタ「BenQ EW2880U」をレビューします。
製品公式ページ:https://www.benq.com/ja-jp/monitor/entertainment/ew2880u.html
BenQ EW2880U レビュー目次
1.BenQ EW2880Uの概要
2.BenQ EW2880Uの開封・付属品
3.BenQ EW2880Uの液晶モニタ本体
4.BenQ EW2880UのOSD操作・設定
5.BenQ EW2880Uの発色・輝度・視野角
6.BenQ EW2880Uの応答速度・表示遅延
8.BenQ EW2880UのFreeSync/G-Sync CPについて
10.BenQ EW2880UのHDR表示やCSゲーム機対応について
11.BenQ EW2880Uのレビューまとめ
【機材協力:BenQ】
BenQ EW2880Uの概要
「BenQ EW2880U」は解像度が3840×2160の4K解像度、モニタサイズが28インチの液晶モニタです。液晶パネルタイプはノングレア(非光沢)で発色や視野角に優れたIPS液晶パネルが採用されており、90% DCI-P3の広色域を実現しています。コントラスト比は最大1000:1、応答速度は5ms(GTG)です。「BenQ EW2880U」はHDR表示にも対応しており標準輝度は300nits(cd/m^2)です。VESA DisplayHDR等の輝度認証は取得していません。
「BenQ EW2880U」はゲーミングPCやコンソールゲーム機のPlayStation 5やXbox Series X/Sを組み合わせることで利用可能な可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」にも対応しており、ティアリングがなくスタッタリングを抑えた快適で鮮明なゲーミング環境を実現できます。
「BenQ EW2880U」のビデオ入力はDisplayPort1.4×1、HDMI2.0×2、USB Type-C×1の4系統です。USB Type-CポートはUSB Power Delivery規格による最大60Wの給電にも対応します。
「BenQ EW2880U」には各種OSD設定の操作が可能なリモコンも付属します。
「BenQ EW2880U」にはtreVoloと呼ばれる高音質ソリューションが採用されています。3.0W×2の高音質な内蔵スピーカーに加えて、treVoloオーディオチームによって厳選のチューニングが施されたオーディオニーズ別5種類のサウンドモードというソフトウェアを組み合わせた「treVolo オーディオシステム」が搭載されています。
「BenQ EW2880U」の寸法はモニタスタンド込みで幅637mm x 高さ421〜521mm x 奥行277mm(モニタ本体の奥行は81mm)となっています。付属モニタスタンドは上下チルト、左右首振りスイーベル、昇降高さ調整に対応しています。90度回転ピボットには非対応です。チルト角は上15度から下5度、スイーベル角は左右15度、高さ調整は最大100mmの範囲で調節可能です。モニタスタンドを含めた本体重量は約7.9kg、モニタ単体重量は約5.29kgです。100mm x 100mmのVESAマウントにも対応しており重量的にもモニタアームが使用可能です。
BenQ EW2880Uの開封・付属品
まずは「BenQ EW2880U」を開封していきます。「BenQ EW2880U」のパッケージサイズは幅89cm×高さ50cm×厚み20cmで、28インチモニタが入っている箱としては横幅が大きめです。重さ10kg程度なので成人男性なら問題なく持ち運べると思います。
各種付属品はスペーサーに蓋もなく収められているので、保護スペーサーをパッケージから取り出す際は、付属品が脱落しないように、付属品のある面が上になるように確認してから引き出してください。
発泡スチロール製スペーサーの上側に各種付属品とモニタスタンドが収納されており、下の段にはモニタ本体があります。
「BenQ EW2880U」の付属品を簡単にチェックしておくと、HDMIケーブル、USB Type-Cケーブル、ACケーブル、リモコン、マニュアル冊子が付属します。
各種ケーブルを個別に購入するのであれば、4K/120Hz対応のDisplayPort1.4ケーブルなら「サンワサプライ KC-DP14シリーズ」、HDMI2.0ケーブルなら「エレコム Premium HDMIケーブル スリムタイプ DH-HDP14ESBKシリーズ」がおすすめです。いずれも標準で付属するケーブルよりもケーブル径が細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 1.0m
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 1.5m
エレコム PREMIUM HDMIケーブル スリムタイプ 2.0m
エレコム
「BenQ EW2880U」に付属するモニタスタンドはフレームとフットプレートの2つの部品で構成されています。
フットプレートをフレームに差し込んで底面のネジを締めるだけで簡単にモニタスタンドを組み立てられます。ネジにレバーが付いているのでドライバー不要で組み立てが可能です。
モニタスタンドを組み立てたら、「BenQ EW2880U」のモニタ本体背面の溝に斜め下の方向からモニタスタンドを差し込めば取り付け完了です。
モニタスタンドの取り外しは、根本の下にあるスイッチでロックを外して、装着した時と逆に動かして引き出すだけです。
BenQ EW2880Uの液晶モニタ本体
続いて「BenQ EW2880U」の液晶モニタ本体をチェックしていきます。「BenQ EW2880U」は概ねフレームレス構造ですが、フレーム内パネル上には非表示領域があり、上左右の非表示領域の幅は8mm程度です。下側にはアンティークゴールドのパネルが装着されたフレームがあり、幅は25mm程度です。
「BenQ EW2880U」の外装は黒色プラスチックで中央にはBenQのメーカーロゴが描かれていることを除けばシンプルな作りです。
「BenQ EW2880U」のモニタスタンドにはケーブルホールがあるので、各種ケーブルをまとめることができます。
「BenQ EW2880U」のモニタ本体の厚さは最薄部で30mm、最厚部で81mmほどと最近の液晶モニタとしては厚標準的な厚みです。モニタ本体重量は5.3kg程度で、28インチモニタとしてはこちらも標準的です。
BenQ EW2880UにはtreVoloスピーカーと呼ばれる高音質な内蔵ステレオスピーカー(3.0Wx2)というハードウェアと、treVoloオーディオチームによって厳選のチューニングが施されたオーディオニーズ別3種類のサウンドモードというソフトウェアを組み合わせた「treVolo オーディオシステム」が搭載されています。
「BenQ EW2880U」に搭載されたスピーカーには、スピーカーの反応を速くし、力強いサウンドと自然な音を実現するデュアルコイル構造とデュアルマグネット構造が採用され、マグネットにはネオジム磁石が使用されています。
一般に近年薄型化の傾向のあるモニタではコンパクトで低出力なスピーカーしか搭載されていませんが、「BenQ EW2880U」では内蔵スピーカーの音質が重視され、長く表面積を広くとったアルミニウム合金製コーンが搭載されています。
またウーファーのエンクロージャーは小型でも優れた低音を生み出すことが可能なスピーカーダクトを備えたバスレフ型構造(公式にはPorted Designと呼ばれる)が採用されています。アルミニウム合金製コーンとバスレフ型構造によって小さなスペースでも迫力ある重低音を響かせます。
treVoloスピーカーにはTrue Soundという独自技術も採用されており、内蔵されたDSPチップによって低ビットレートの録音または高圧縮レベルによる高周波数データの損失を検出した場合、高周波成分を補正してくれます。
ソフトウェア面でも、もともとBenQ内でスピーカーを作成していたtreVoloオーディオチームの経験を活用して厳選のチューニングが施されたオーディオプリセットが用意されています。OSD設定から、ライブ/ポップ、シネマ、トーク/ボーカル、ゲーム、ロック/パーティの5つのサウンドモード(イコライザープリセット)が選択できます。
シネマモードは、特に映画を見るために設計されており、音声を調整してボーカルの質を高め、会話をクリアにし、低音を強化します。ゲームモードでは、音の定位と臨場感のある音声が強調されます。ライブ/ポップモードはリアルなライブ会場のような臨場感を演出するよう最適化されています。
加えてシネマモードでは夜に映画を観るのに最適なナイトモードという機能が利用できます。アクションムービー等の大音量な効果音を制限し、低音量でも音声が鮮明に聞こえるようにチューニングされています。
「BenQ EW2880U」では背面下部、下向きにビデオ入力等のI/Oポートが実装されています。
I/Oポートは右側に実装されており、左から順に2基のHDMI2.0ビデオ入力、1基のDisplayPort1.4ビデオ入力、1基のUSB Type-Cビデオ入力、ヘッドホン出力用3.5mmジャックがあります。
「BenQ EW2880U」の付属モニタスタンドの左右スイーベルの可動域は左右15度(30度)に対応しています。
「BenQ EW2880U」の付属モニタスタンドの上下チルトの可動域は仕様通り下に5度、上に15度です。
モニタの高さはモニタ本体とスタンドの付け根部分が上下に動く構造になっており、全高で高さ421mm~521mmの範囲内で調整できます。
「BenQ EW2880U」はVESA100x100規格のVESAマウントに対応しておりサードパーティ製のモニターアームを使用できます。モニタ単体の重量も5kgほどなのでモニターアームを問題なく利用可能です。
なおVESAネジ穴が背面外装から窪んだ場所にあるモニタの場合、スライド式クイックリリースプレートを採用するモニターアームでは、背面外装とクリックリリースブラケットが干渉して設置できない可能性があります。また直接ネジ止めするタイプでも窪みの面積が狭くて、VESAブラケットとモニタ背面外装が直接干渉することも。
市販モニターアームのVESAブラケットがモニタ背面外装と干渉する場合はスペーサーやスタンドオフを使用してください。詳しくはこちらで。
オススメのモニターアームや調整機能が豊富なVESA汎用モニタースタンド、VESAマウントの干渉を避ける方法についてはこちらの記事で詳細に解説しているので、導入を検討している人は参考にしてください。
BenQ EW2880UのOSD操作・設定
「BenQ EW2880U」のOSD操作は、正面から見て右下方向のモニタ背面に設置されている操作スティックを主に使用します。操作スティックの下には電源ボタン、上にはカスタムキー1/2と呼ばれるショートカットキーがあります。操作スティックと誤って電源スイッチを押下してしまうことがあるので、電源スイッチは少し離れた場所に設置して欲しかったところ。
操作スティックを操作すると円形のクイックメニューが表示されます。クイックメニューで操作スティックを右方向に操作すると詳細設定メニューが表示されます。
クイックメニューで操作スティックを上方向に操作するとディスプレイ輝度の調整、下方向に操作するとボリューム調整のショートカット設定が表示されます。
また操作スティックの上に実装されたカスタムキーと呼ばれる2つのショートカットボタンを押下すると、入力切り替え、カラーモード切り替えのショートカット設定が表示されます。
なおこの2つのショートカットキーに割り当てる機能はOSDメニューから切り替えが可能です。
加えて、「BenQ EW2880U」はゲーミングモニタとしては珍しく、OSD機能の各種操作が行える専用リモコンが付属しています。モニタ本体のOSDスイッチで操作するよりも遥かに楽なので、基本的にリモコンで操作すればOKです。
リモコンにはさらに3つのショートカットキーが実装されており、ゲームモードプロファイルの切り替え、オーディオシナリオの切り替え、ナイトモードの切り替えを簡単に行うことができます。
メニューに合わせてボタンを操作すると詳細設定メニューから設定が行えます。OSD表示領域は28インチ画面の6分の1程度と広く、文字も大きいので視認性は良好です。
「BenQ EW2880U」のOSDメニューはOSD言語として日本語UIにも対応しています。初期設定からOSD言語は日本語のはずですが、他の言語であっても下記の手順で切り替えが可能です。
「BenQ EW2880U」の画質モードはトップメニューにある”カラー設定 - カラーモード”から選択できます。
プロファイルは、「標準」「ブルーライト軽減」「Rec.709」「M-Book」「Color Weakness」「ユーザー」、さらに「ゲーム」ではジャンル別に「FPS」「RPG」「レーシング」、以上の10種類から選択できます。
加えてSDR映像をHDR映像風にエミュレートする機能にも対応しており、HDRモードから「ゲームHDRi」「シネマHDRi」「HDR」の3種類のプロファイルを選択できます。
カラーモードやHDRモードによって各自で調整できるOSD設定が異なり、公式マニュアルにも一覧表が掲載されています。各自で細かく調整したい場合は「ユーザー」が最も多くの設定に対応しています。
「BenQ EW2880U」のOSDメニューには大きく分けて、「入力」「画像」「カラー設定」「オーディオ」「Eye Care」「カスタムキー」「システム」の7つの項目が用意されています。
ゲーム関連の表示設定はトップメニューで一番上の「ゲーミング」に配置されています。
一般にオーバードライブと呼ばれる応答速度を調整する機能は、「BenQ MOBIUZ EX3415R」では従来のBenQモニタ製品同様に「AMA (Advanced Motion Accelerator)」の名前で設置されており、オフ/高/プレミアムの3段階で設定できます。
BenQ EW2880Uの発色・輝度・視野角
BenQ EW2880Uの発色・輝度・視野角など画質についてチェックしていきます。直接的な画質ではありませんがBenQ EW2880Uの液晶パネルは光沢のあるグレアではなくアンチグレアタイプなので暗転時に自分の顔などが映り込みません。
液晶パネルには大きく分けてIPS液晶パネルとVA液晶パネルとTN液晶パネルの3種類があり、各社個別の製品によって個体差はあるものの、この3つの液晶パネルの特性を簡単にまとめると次のテーブルのようになります。
「BenQ EW2880U」に採用されているIPS液晶パネルはTN液晶パネルやVA液晶パネルと比べると色再現性や視野角など一般に画質に直結する性能が優れている反面、価格が高価になりがちな液晶パネルです。TN液晶パネルに比べて応答速度が遅めなので、60Hzオーバーのリフレッシュレートを実現しているIPS液晶パネル採用ゲーミングモニタは少ないため、輪をかけて高価です。とはいえ画質とリフレッシュレートを両立できるので、予算に糸目をつかないエンスーゲーマー勢に好まれています。
液晶パネルの簡易比較表 | |||
IPS | VA | TN | |
色再現性 | ◎ | 〇 | △ |
コントラスト | 〇 | ◎ | △ |
視野角 | 〇 | 〇 | △ |
応答速度 | 〇 | △ | ◎ |
価格 (高RR) |
△ (×) |
△ | 〇 |
液晶パネルの種類による性能の違いについてはこちらの記事も参照してみてください。
・IPS/VA/TN液晶パネルを比較解説 - ゲーミングモニタの選び方[4]
「BenQ EW2880U」はIPS液晶パネルが採用されているので視野角も良好です。
「BenQ EW2880U」の発色について、色温度の標準設定である”標準”で、白色が極端に黄色や青色がかって見えることもなく、特に違和感はありませんでした。
色温度設定には寒色(薄青)/通常/暖色(薄赤)の3種類のプリセットがありますが、これらを切り替えても発色に違和感がある場合は、ユーザー設定でRGBのバランスを好みに合わせて整えてください。
はガンマカーブ設定にも対応しており、5種類の設定値があります。表記の通り、ガンマの値を1.8、2.0、2.2、2.4、2.6から選択できます。
「BenQ EW2880U」では画質モードをユーザーなどに切り替えると、彩度や色相といった追加の設定項目が有効になります。
「BenQ EW2880U」は測光センサーによる輝度や色温度の自動調整機能「B.I. +(ブライトネスインテリジェンス プラス)」も用意されています。
ここからはカラーキャリブレーターを使用して、色域・色再現性・輝度・コントラスト・均一性など画質に直結するモニタの性能について詳細な検証結果を見ていきます。なおこれらのモニタ性能(特に輝度の均一性)については同じ製品であっても個体差が大きいのでご注意ください。検証にはカラーフィルター式(色差式)のX-Rite i1 Display Pro PlusとDatacolor SpyderX、そして分光式(スペクトロメーター)のX-Rite i1 Basic Pro 3を使用しています。
余談ですが、分光式のi1 Basic Pro 3は20万円程と非常に高価ですが、一般的な用途であれば測定精度は十分なので、イラスト製作や写真編集でカラーキャリブレーションを行う場合、カラーフィルター式のX-Rite i1 Display ProかDatacolor SpyderX Proで十分です。ユーザー数の多さで面倒が少ないのはX-Rite i1 Displayだと思います。
「BenQ EW2880U」のディスプレイ輝度について白色点の輝度をOSD設定別で測定しました。OSD上の輝度設定10%刻みで0%~100%の輝度変化は次のようになっています。
「BenQ EW2880U」において、一般に見やすい明るさと言われる120cd/m^2は輝度20%前後、室内照明に依りますが個人的に見やすいと感じる明るさの180~200cd/m^2は輝度50%前後です。最大輝度が300cd/m^2程度なので液晶モニタとしては標準的な明るさです。
「BenQ EW2880U」のディスプレイ輝度の均一性(Uniformity)を検証しました。画面中央の輝度が約120cd/m^2になるOSD設定において、画面を横7×縦5の35分割として各位置の白色点の輝度を測定し、120cd/m^2を基準にしたパーセンテージで等高線マップにしています。
「BenQ EW2880U」は最大差分でも20%以内に収まるので中央の大半については輝度の均一性は悪くありません。個体差の影響も大きいですが、今回のサンプル機は左右端に寄ると輝度が下がる傾向です。
液晶モニタにおいて輝度の低下が特に大きい四隅&四辺は、上のような領域分割測定では見落とされてしまうので、同様に中央120cd/m^2を基準にして個別に測定したところ次のようになりました。
「BenQ EW2880U」については、やはり左右端、特に左上と右上が少し暗い印象です。全体白表示なので強調されているものの、輝度低下が30%程度を超えるとカラフルな表示でも注視すると輝度低下に気付くと思います。悪いというほどではないものの、やはり4K解像度で5万円程度のコストパフォーマンス重視なモニタなので価格相応という感じです。
画面中央の白色点が約120cd/m2になるOSD設定において「BenQ EW2880U」のブラックレベルを測定したところ次のようになりました。ブラックレベルの測定にはX-Rite i1 Display Pro Plusを使用しています。
またこの時のコントラスト比も算出したところ次のようになっています。なおコントラスト比に大きく影響するブラックレベルはコンマ2桁での測定になるため測定精度が若干怪しく、ブラックレベル0.01の差でコントラスト比が大きく変わるので参考程度と考えてください。
続いて「BenQ EW2880U」の色域と色の正確性を検証してみました。
まずはモニタのOSD設定を標準設定にして(ディスプレイ輝度のみ120cd/m^2になるように調整)、任意のカラープロファイルを適用しない場合、次のようになりました。
「BenQ EW2880U」は標準モードでそのまま使用しても98% sRGBに加えて、86% DCI-P3という広い色域をカバーしています。
色の正確性は平均ΔEが0.34となっており、標準設定のままでも非常に優秀です。X-Riteによると『ΔE=1程度で2つの色を横にくっつけて見比べた時に違いが判別できるレベル』とのこと。
次にX-Rite i1 Basic Pro 3を使用してカラーキャリブレーションを行いました。キャリブレーション設定は下のスクリーンショットの通りですが、i1 Profilerの標準設定をそのまま採用しています。
「BenQ EW2880U」では色温度を標準設定にするとRGBの強さに差が大きいとアラートが出たので、手動で調整できるユーザー設定モードでR(赤)=97, G(緑)=96, B(青)=100としてキャリブレーションを行いました。
X-Rite i1 Basic Pro 3によってカラーキャリブレーションで作成したICCファイルを適用し、同じくX-Rite i1 Basic Pro 3で行った品質検証(色の正確性の検証)の結果は次のようになっています。X-Rite i1 Basic Pro 3は分光式(スペクトロメーター)のカラーキャリブレーターなので、測定精度はこちらの方が高いはずです。
上の測定結果ではカラーキャリブレーション前の色の正確性はΔE 0.34でしたが、カラーキャリブレーション後にX-Rite i1 Basic Pro 3で測定した色の正確性はΔE 0.3と非常に優秀な数値です。
また分光型測色計(スペクトロメーター)で測定した輝度120cd/m^2における白色点のカラースペクトラムが次のようになっています。
カラースペクトラムから発色の良いモニタを見分けるざっくりとしたポイントは『RGB各色のピークが鋭く立ち上がり、かつ高さが同程度であること』です。一般的な液晶モニタは白色LEDバックライト(青色LEDを光源として赤緑(≒黄)蛍光体を組み合わせて白色を生成する)を採用しているので青色のピークが高くかつ鋭くなります。白色を基準として測定した場合、緑と赤のピークの高さは色温度のOSD設定で若干上下します。以上から簡単化すると『緑と赤のピークが鋭くなっているかどうか』をチェックすればカラースペクトラムの良し悪しがざっくりと判定できます。
一般的な液晶パネル(IPS/VA/TNに依らず)であれば下画像の左側のように青のピークだけが強く、残りの分離が弱い波形になりますが、LG製Nano-IPSで有名なKSF蛍光体や、Quantum Dot(量子ドット)といった最新技術が採用された液晶パネルは各色の分離が良く、ピークも急峻になります。
「BenQ EW2880U」については緑がややなだらかなものの、赤と青のピークは急峻で、一般的なIPS液晶パネルよりも赤緑青の3色の分離が良好です。
「BenQ EW2880U」のディスプレイパネルについてはIPSという分類以外の詳細は不明でしたが、赤色ピークの左に小さい山がある特長から推測するに、KSF蛍光体(LG製Nano-IPSで有名)の技術を採用した液晶パネルのようです。
KSF蛍光体では赤が強く出やすいのですが、赤と青の強弱については色温度の設定の影響だと思います。
BenQ EW2880Uの応答速度・表示遅延
次にゲーミングモニタのハードウェア性能として特に重要な、「BenQ EW2880U」の応答速度や表示遅延についてチェックしていきます。まずは「BenQ EW2880U」の応答速度について検証していきます。
なおゲーミングモニタを選ぶ、もしくはモニタの応答速度や残像を評価する上で重要な予備知識である『液晶モニタの応答速度とオーバードライブ機能』についてはこちらの記事で簡単に紹介しているので、よくわからないという人は先に確認してみてください。
・ゲーミングモニタの選び方[1] 応答速度とオーバードライブについて
「BenQ EW2880U」のOSDメニュー上ではオーバードライブ機能は「AMA (Advanced Motion Accelerator)」の名前で設置されており、オフ/高/プレミアムの3段階で設定できます。
「BenQ EW2880U」のオーバードライブ設定は”高”が最適設定です。
”オフ”と比較すると差は小さいものの応答速度が高速化しています。ただ、”高”にしても、差は小さいのでもう少し補正強めのチューニングでもよかった気はします。
さらに補正の強い”プレミアム”に変更するとオーバーシュートの逆像が大きく発生してしまうので非推奨です。
応答速度の確認には「UFO Test: Ghosting」を使用します。同テストではUFOが移動する背景カラーを選択できますが、今回の検証ではブラック/グレー/ホワイトの3色を選択しています。
背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
まずは簡単にシャッタースピードを十分に速くして「UFO Test: Ghosting」の様子を写真撮影してみました。
「BenQ EW2880U」では60Hzリフレッシュレート、OD設定”高”で動作させると、残像は1フレーム程度に収まり、ベストな状態では現在のフレームがほぼ単独で表示されます。60Hzの液晶モニタとしては速くもなく遅くもなく、普通な感じの応答速度です。
さらに「BenQ EW2880U」のリフレッシュレートを変えてみたり、他の液晶モニタを比較対象にしたりしながら、「UFO Test: Ghosting」の様子を「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、比較してみます。
「BenQ EW2880U」のリフレッシュレートを60Hzにした時、オーバードライブ設定は標準設定のまま”高”が最適設定です。”オフ”と比較すると差は小さいものの応答速度が高速化しています。ただ、”高”にしても、差は小さいのでもう少し補正強めのチューニングでもよかった気はします。
さらに補正の強い”プレミアム”に変更するとオーバーシュートの逆像が大きく発生してしまうので非推奨です。
最後に「BenQ EW2880U」の表示遅延(内部遅延)について測定を行いました。
モニタにはGPUのビデオ出力が送られてきてから実際にモニタに表示されるまで遅延が存在し、この遅延が大きいと例えば、FPSゲームでゲームパッドのトリガーやマウスのクリックによる操作からワンテンポ遅れて、マズルフラッシュが表示される、といった現象が発生します。人間は当然目で見てから操作するので、格闘ゲームやFPSゲームなど1,2フレームを争うような競技性の高いゲームにおいてはモニタの表示遅延が可能な限り小さいことが望まれます。
システム表示遅延やディスプレイ表示遅延の測定には、フォトセンサーを使用した特殊な測定機器「PC Gaming Latency Tester」を使用しています。当サイトのレビュー用に特注した機器なので、詳細についてはこちらの記事を参照してください。
「BenQ EW2880U」やその他の比較モニタのディスプレイ表示遅延の測定結果は次のようになりました。測定方法的に遅延が2ms以下であればディスプレイ内部の表示遅延は誤差の範囲内で十分に小さいと考えてOKです。
「BenQ EW2880U」やその他の比較モニタのシステム表示遅延の測定結果は次のようになりました。この測定値は一般的なPCゲームにおける操作から画面表示の変化までの遅延に一致します。
BenQ EW2880UのFreeSync/G-Sync CPについて
続いて「BenQ EW2880U」が対応する可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible(VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」についてチェックしていきます。モニタの画面更新(リフレッシュ)に関する基本的な予備知識や、「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」と「NVIDIA G-Sync Compatible」の関係についてはこちらの記事を参考にしてください。
・ゲーミングモニタの選び方[3] FreeSyncとG-Sync Compatibleについて
なお当サイトのレビューではNVIDIA環境について、G-Syncモジュールが搭載されたモニタにおける可変リフレッシュレート同期機能を単純にG-Syncと呼び、AMD FreeSync(VESA Adaptive-Sync)に対応したモニタにおける可変リフレッシュレート同期機能はG-Sync CompatibleもしくはAdaptive-Syncと呼びます。またドライバでそのモニタが正式にサポートされている場合はG-Sync Compatible認証取得済みと補足します。
「BenQ EW2880U」は40Hz~60Hzの範囲内で「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」など可変リフレッシュレート同期に対応しています。
2022年1月現在、GeForce Driver 511.23でG-Sync Compatible認証は未取得です。
NVIDIA環境からは「BenQ EW2880U」のHDMI2.0ビデオ入力に接続時はVRR同期を使用できませんが、AMD製GPU環境やXbox Series X/SではVRR同期を使用できます。
AMD製GPU環境でもAMD FreeSyncを有効化できます。DisplayPortとHDMI共に可変リフレッシュレート同期機能の対応フレームレートは40Hz~60Hzの範囲内です。
AMD FreeSyncの使い方
可変リフレッシュレート同期「AMD FreeSync」を有効化する手順について説明します。AMD製GPU搭載PCの場合はRadeon設定のウィンドウ右上にある歯車アイコンを選択、トップメニュータブからディスプレイを選択の手順で表示される「Radeon FreeSync」のスライドスイッチから機能を有効化します。
また上で紹介した参考記事中で解説しているように、AMD FreeSyncではテアリング解消とマウス遅延低減のどちらを優先するかで垂直同期の有無を各自で選択する必要があります。垂直同期は通常ゲーム内設定でON/OFFの切り替えが可能ですが、ドライバ側が上書きしてゲーム内からは切り替えられない場合があります。ゲーム内で設定して希望通りの動作にならない時はRadeon Settingsのゲームプロファイルもチェックしてください。
NVIDIA G-Sync Compatibleの使い方
可変リフレッシュレート同期「NVIDIA G-Sync Compatible」を有効化する手順について説明します。2019年1月15日以降の最新ドライバによってNVIDIA GeForce環境でもAdaptive-Syncが利用可能になりました。ドライバの更新に合わせてG-Sync Compatible認証を取得するモニタが増えています。
417.71以降の最新ドライバをインストールして、DisplayPortビデオ出力にAdaptive-Sync対応モニタを接続すると、G-Sync対応モニタを接続した時と同様にAdaptive-Syncを有効化するための設定が、NVIDIAコントロールパネル上の「G-Syncの設定」に表示されます。
「G-SYNC、G-SYNCとの互換性を有効化(Enable G-SYNC, G-SYNC Compatible)」のチェックボックスをチェックして、下のモニタアイコンに使用するモニタの名前が表示・選択されていることを確認し、適用をクリックすればNVIDIA GeForce環境でAdaptive-Syncを有効化できます。
なおG-Sync Compatible認証を取得していない一般のAMD FreeSync/VESA Adaptive-Sync対応モニタでも、互換性が検証されていないと注記が表示されますが、NVIDIA製GPU環境においてAdaptive-Syncを利用できます。
AMD FreeSync/NVIDIA G-Sync Compatibleの効果
可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible」の効果やメリットについて説明していきます。機能的にはほぼ同じなので以下まとめてFreeSyncと呼ぶことがあります。AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatibleの検証に際してはリプレイ機能があって同一シーンで検証がしやすいので「Project Cars 2」を使用しています。またフレームレートやテアリングの発生の様子を確認しやすいように、画面左上にはGPUフレームレートOSD、画面左端にはGPUフレームバッファで色の変わるカラーバーが表示されるようにしています。加えてモニタが対応していればモニタOSDのリフレッシュレート表示機能も使用します。
画面右上のフレームレートはGPUフレームバッファから算出されているので必ずしもリフレッシュレートとは一致しません。画面左端のカラーバーは連続するフレーム間、つまりn番目とn+1番目のフレームではそれぞれ異なる色になっているため、同時に複数色のカラーバーが表示されている画面はテアリングが発生していることを意味します。
まずは同期なし、垂直同期、FreeSync、FreeSync+垂直同期の違いを分かりやすく体感してもらうため、モニタリフレッシュレート60HzにおいてGPU側出力フレームレートが30FPS~60FPSの間で変動するようにして、「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影して、画面表示の様子を比較してみました。
同期なしでは盛大にテアリングが発生し、垂直同期ではスタッター(カクつき)が発生しているのがわかります。一方でFreeSyncと垂直同期の両方を有効にした場合はテアリングもスタッターも発生しません。ただし例外として動画で50秒以降のフレームレートが40FPSを下回るとAMD FreeSyncの対応フレームレート外となるためスタッターが発生しています。またFreeSyncのみを有効にして垂直同期は無効の場合、同期なしと比べて圧倒的にテアリングが減っているのがわかります。ただし対応フレームレート内であっても稀にテアリングが発生し、対応フレームレート外では同期なし同様にテアリングが発生します。
続いて144Hzリフレッシュレートにおいて、GPU側出力フレームレートが100FPS前後で変動するようにして、先ほど同様に同期なし、垂直同期、FreeSync、FreeSync+垂直同期の様子を16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影して比較してみました。
FreeSync有効であれば同期なしのテアリングや垂直同期のスタッターに悩まされることなく滑らかで綺麗な映像が表示できています。FreeSyncの60Hz/50FPS前後と144Hz/100FPS前後を比較すると当然ですが後者の方がコマ割りが増えるので16倍速スローモーションでもスムーズに見えます。
FreeSyncのみを有効した時に映像フレームレートが対応フレームレート範囲外になるとテアリングが発生しますが、リフレッシュレートを上回ってしまう場合については、Radeon設定のRadeon Chillの最大FPSに”リフレッシュレートから3,4FPSを引いた値”を指定してください。(グローバル設定だけでなくゲームタイトル別に設定が可能)
なおNVIDIA GeForce環境でAdaptive-Syncを利用する場合も、フレームレートがリフレッシュレートを超過するとテアリングが発生するので、テアリングを完全になくすには垂直同期を有効化する必要があります。もしくは垂直同期無効においてテアリングをなくすには、NVIDIAコントロールパネルの「Max Frame Rate」に”リフレッシュレートから3,4FPSを引いた値”を指定してください。(グローバル設定だけでなくゲームタイトル別に設定が可能)
これの設定以外にもRivaTunerやNvidia Profile Inspectorを使用してゲーム内フレームレートがモニタリフレッシュレートを上回らないように設定することも可能です。
下の比較はいずれもFreeSyncが有効になっているのでスタッターもなく滑らかですが、単純にFreeSyncだけを有効にすると対応フレームレートの上限となるリフレッシュレートを超えた時にテアリングが発生します。
リフレッシュレートが144Hz(フレームレートの上限が144FPS)の場合は120FPS~140FPSが上限になるようにフレームレートに制限をかければ、マウス操作を低遅延しつつ、テアリングの発生も最小限に抑えて快適なゲームプレイが可能です。
またPUBGやCS:GOのようなオンライン対戦FPSや格闘ゲームなど1,2フレームを争う競技性の高いPCゲームでは、表示遅延(入力遅延)が発生する垂直同期は嫌われる傾向にありますが、144Hzや240Hzといったハイリフレッシュレートモニタにおいて、同期機能を無効化した場合に発生するテアリングがどのように影響するのか検証してみました。
テアリングはモニタ表示更新中のフレームバッファの更新で発生しますが、目で見た時の違和感はn番目とn+1番目のフレームの絵の差に影響されます。コマ割りが細かくなる高フレームレートではn番目とn+1番目の絵の違いは当然、低フレームレートの場合よりも小さくなります。そのため50FPSでは画面の分断のように知覚できたテアリングは、200FPSのような高フレームレートでは細かいノイズのような形で知覚されます。
100FPSを超える高フレームレートでは大きな分断に見えるテアリングの代わりに、細かいノイズのように感じるテアリングが増えてきます。『細かいノイズの発生程度であれば高リフレッシュレートモニタのテアリングは実用上は大した問題ではなく、可変リフレッシュレート同期機能は不要である』という意見がありますが、高リフレッシュレートモニタのアドバンテージとして先に解説した「ゲーム内遠方に存在して動いているエネミーやオブジェクトの視認性」と合わせて考えると、このノイズの有無は遠方の細かいエネミーやオブジェクトの発見に影響します。なので高リフレッシュレートモニタを使用するのであれば可変リフレッシュレート同期機能はあったほうがいい、というのが管理人の意見です。
BenQ EW2880UのHDR表示やCSゲーム機対応について
最後に「BenQ EW2880U」のHDR表示やCSゲーム機の対応(4Kエミュレートなど)についてチェックしていきます。HDR表示やCSゲーム機対応について | |
HDMI ver, ポート数 |
HDMI2.0×2 |
HDR表示 | 対応 |
VRR同期 | 併用可能 |
カラーフォーマット DP1.4, USB Type-C |
4K/60Hz/10bit RGB |
カラーフォーマット HDMI2.0 |
4K/60Hz/8bit RGB 4K/60Hz/10bit YUV422 |
ピーク輝度(実測) | 322cd/m^2 |
輝度認証 | - |
ローカルディミング | 非対応 |
4Kエミュレート | 4Kネイティブ対応 |
PlayStation 5 | 4K/60FPS対応(HDR:YUV422) |
Xbox Series X/S | 4K/60FPS対応(HDR:YUV422) |
HDR表示への対応やカラーフォーマットについて
「BenQ EW2880U」はHDR表示に対応しています。VESAがPCモニタ向けに展開している輝度認証のVESA DisplayHDRは取得していません。「BenQ EW2880U」は映像ソース機器から常時、HDR信号を受け付けるように認識されますが、HDR映像の入力があると画像モードがHDRモードへ自動的に切り替わります。
「BenQ EW2880U」はHDRソースを検出した時に設定できる画像モードとして、「ゲームHDRi」「シネマHDRi」「HDR」の3つのモードが用意されています。
「ゲームHDRi」「シネマHDRi」「HDR」の3つのモードはモニタ右端に設置されたHDRiスイッチで表示されるショートカットメニューからも切り替えが可能です。
ゲームHDRiモードとシネマHDRiモードはその名の通りゲームや映画と言った映像ソースに最適化されています。
BenQ独自のHDRテクノロジーであるHDRiによって、画像のコントラストと鮮明度を向上させ、より詳細な表示を可能とし、暗い部分では隠れている部分を鮮明に表示し、明るい部分は露出オーバーならないよう調整しているとのことです。
「BenQ EW2880U」においてゲームHDRiモードとシネマHDRiモードを試してみたところ、白色が赤紫がかる感じになりました。色味にSDR表示モードとの差が大きいので違和感を覚えるかもしれません。
HDRモードならSDR表示モードをベースにした発色調整なので、違和感がある人はこちらを試してみてください。
「ゲームHDRi」「シネマHDRi」ではSDR表示同様に輝度の調整が可能です。自動調整になるので、色温度など発色関連のOSD設定はグレーアウトします。
「HDR」ではディスプレイ輝度の項目がグレーアウトし、輝度制御が自動になります。自動調整になるので、色温度など発色関連のOSD設定はグレーアウトします。
「BenQ EW2880U」はDisplayPort1.4ビデオ入力で接続した場合、4K/60HzのHDR表示において、RGB 10bitのカラーフォーマットに対応します。G-Sync Compatibleなど可変リフレッシュレート同期機能も併用が可能です。
また「BenQ EW2880U」のHDMI2.0ビデオ入力は4K/60Hz/HDR表示においてYUV422 10bitのカラーフォーマットに対応し、PC5やXbox Series X/SなどのCSゲーム機ではそのように使用できたのですが、NVIDIA製GPU搭載のデスクトップPCで確認したところ、カスタム設定でも10bitは選択できず、カラーフォーマットはRGB 8bitに固定でした。
NVIDIA環境は非対応ですが、AMD環境ではFreeSyncによるVRR同期も併用可能です。
HDRについて簡単に説明すると、HDR(ハイダイナミックレンジ)というのは、RGBの光の三原色の映像情報に加えて、輝度(明るさ)の情報が備わった映像ソースのことです。
従来の表示機器や映像ソースでは10^3程度のダイナミックレンジしかありませんでしたが、HDRに対応することでダイナミックレンジが10^5程度と100倍近く拡張され、従来よりも細かい階調で明るさや暗さを表現できるようになり、「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるように画面の明るさを操作することで、白飛びや黒潰れをなくして高画質を実現しています。
HDRに関する説明は色々とあると思いますが、管理人は『明るい場所はより明るく、暗い場所はより暗く』と大雑把に理解しています。
「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」するということは必ずしも”見えやすく”なるわけではありません。というか暗い場所は暗くなるので必然、暗い部分は見えにくくなります。逆に明るい場所が明るくなったら見えやすくなるかというと、再現可能な輝度の領域が増すので、ディスプレイによる描画は現実に近づきますが、太陽を覗き込んだ時のように特に明るい場所の周辺は光で潰れて(目の調光機能的な問題で)見えにくくなります。もちろん明暗が分かれることで境界線がクッキリして見えやすくなる場合もあります。
一部のゲーミングモニタに暗所を明るく(白く)して見えやすくする機能があるように、HDR表示は見やすさには直結しないので、見やすさという意味で画質が良くなるのかというと、その点はケースバイケースです。SDRダイナミックレンジの範囲内で平滑化されていた時に比べて、暗い部分が強調されることを考えると見えにくさの方が体感しやすい気がします。
HDRは原理的にはモニタから見える映像を”リアル”に近づける機能です。ただし実際のところはモニタ個別の色調設定などの都合で鮮やかになり過ぎたり色味が変わったりするので、「実際の視覚と同じ」という意味でリアルかというと疑問符が付くのですが。「明るい場所は明るく、暗い場所は暗く」なるので立体感は増して、平面表示の中に奥行を感じやすくなるという点ではリアルな表示に近づきます。個人的にはHDR表示の効果はSDRに比べて、鮮やかになって、立体感が増すと感じています。
4Kモニタの広告をフルHDモニタで見る以上に、SDRモニタでHDRについて体感的に理解することは困難です。なのでHDRについては店頭など実機で体験して気に入れば購入するくらいが正直なところおすすめです。HDRについては正直に言って”百聞は一見に如かず”な機能です。SDRモニタ上で調べるよりもHDR表示の実機を見て気に入るかどうかが全てな機能だと思います。
HDR表示におけるディスプレイ輝度やローカルディミングについて
「BenQ EW2880U」はVESAがPCモニタ向けに展開している輝度認証のVESA DisplayHDRを取得していません。VESAがMicrosoft Store上で無料アプリとして公開しているVESA DisplayHDR Compliance Testsから、「BenQ EW2880U」のディスプレイ輝度の扱いが確認できました。(データの読み方については管理人も怪しいので参考までに)
近年のモニタにおいてHDRモードのディスプレイ輝度は高輝度領域の広さや高輝度表示の継続時間に依存するので、i1 Display Pro Plusを使用してHDR時の最大輝度を条件別で測定してみました。なお持続最大輝度は十数秒後で測定しているのでもう少し下がる可能性もあります。
「BenQ EW2880U」は全体と10%部分、長時間の持続輝度のいずれも320cd/m^2の明るさで大きな変動はありませんでした。
近年ではVESA DisplayHDR 400認証を取得したHDR対応ゲーミングモニタが数多く発売されており、輝度400cd/m^2以上というのがHDR表示の表現力においてある種の最低水準なところがあります。またDisplayHDR 400ですらHDR表示としては不十分で、DisplayHDR 600は必要との声も。
「BenQ EW2880U」はHDR表示において最大輝度がSDR表示と大差ない300cd/m^2程度に留まるので、ゲームであれ映画であれ、HDRコンテンツを表示するモニタとしてはやや力不足を感じます。
「BenQ EW2880U」はHDR表示においてローカルディミングや可変バックライトには対応していません。
CSゲーム機接続時の4KエミュレートやHDCP対応について
「BenQ EW2880U」のディスプレイ解像度は3840×2160の4K解像度で、サブ入力として設置されている2基のHDMI端子はHDMI2.0なので、PlayStation 5やXbox Series X/Sに接続した場合、シンプルに4K/60FPS対応モニタとして認識されます。PlayStation 5やXbox Series X/Sのビデオ出力設定を4K解像度にすると、最新のデジタル著作権保護HDCP2.3に対応し、Ultra HD Blu-rayなど著作権保護のあるコンテンツも再生が可能になります。
Xbox Series X/Sでは4K/60FPSにおいて、可変リフレッシュレート同期機能も利用できます。
BenQ EW2880Uのレビューまとめ
最後に「BenQ EW2880U」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 画面サイズ28インチでゲーミングモニタとしてはちょうどいいサイズ
- 発色や視野角に優れたIPS液晶パネルで、90% DCI-P3の広色域
- 液晶パネルは反射防止のアンチグレア
- ビデオ入力はDisplayPort1.4とHDMI2.0×2とUSB Type-Cの計4系統
- 可変リフレッシュレート同期機能に対応(40FPS~60FPS)
- ゲーミングPCやPlayStation 5でHDR表示に対応
- 専用リモコンによるビデオ入力の切り替えやOSD操作に対応
- モニタ本体重量5.3kgかつVESAマウント対応でモニターアームを使用可能
- 4K/60Hz/HDR対応で5万円程度と高コストパフォーマンス
- HDR表示における最大輝度が300cd/m^2程度
- ローカルディミングには非対応
「BenQ EW2880U」はHDR表示や可変リフレッシュレート同期機能FreeSyncに対応、高音質なtreVoloスピーカーを搭載し、リモコンによるOSD操作にも対応する4K解像度IPS液晶モニタという充実のスペックながら、製品価格は5万円程度と高コストパフォーマンスなところが魅力です。
欲を言えばHDR表示において最大輝度400cd/m^2に達する高輝度表現が可能なら良かったのにと。ここだけはもったいなく感じました。
最新ゲーム機のPlayStation 5やXbox Series XはHDMI2.1ビデオ入力を介した4K/120FPSに対応していますが、対応タイトルが多いわけではなく、4K/120HzかつHDMI2.1搭載のゲーミングモニタは10万円前後と非常に高価なので、”4K/60FPSでスペック的には十分、コスパを重視”ということなら「BenQ EW2880U」は有力な候補だと思います。
以上、「BenQ EW2880U」のレビューでした。
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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