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DRAMキャッシュレスながらPCIE4.0x4接続で連続読み出し6GB/s前後に達する高コストパフォーマンスなNVMe M.2 SSD「Kingston NV3 PCIe 4.0 NVMe SSD 2TB(型番:SNV3S/2000G)」をレビューします。
Kingston NV3 2TB レビュー目次
1.Kingston NV3について
2.Kingston NV3 2TBの外観
3.Kingston NV3 2TBの検証機材と基本仕様
4.Kingston NV3 2TBのベンチマーク比較
5.Kingston NV3 2TBの連続書き込みについて
6.Kingston NV3 2TBの消費電力
7.Kingston NV3 2TBの実用性能比較
8.Kingston NV3 2TBのデータコピー・ゲーム性能比較
9.Kingston NV3 2TBのレビューまとめ
製品公式ページ:https://www.kingston.com/unitedkingdom/jp/ssd/nv3-nvme-pcie-ssd
【機材協力:Kingston】
Kingston NV3について
「Kingston NV3」は、メモリコントローラーにPCIE4.0対応でDRAMキャッシュレスのSilicon Motion SM2268XT2、メモリチップにQLC型3D NANDが採用された、NVMe(PCIE4.0)接続でM.2 2280フォームファクタのM.2 SSDです。
「Kingston NV3」にはSSD容量として500GB(型番:SNV3S/500G)、1TB(型番:SNV3S/1000G)、2TB(型番:SNV3S/2000G)、4TB(型番:SNV3S/4000G)の4モデルがラインナップされています。いずれも片面実装です。
2024年10月現在、500GB/1TB/2TBの3モデルは発売済みで、最大容量の4TBモデルは後日発売となります。
「Kingston NV3」のアクセススピードは容量によって若干異なりますが、最大でシーケンシャル読出6000MB/s、シーケンシャル書込5000MB/sの超高速アクセスを実現しています。
「Kingston NV3」のMTBFは200万時間、書込耐性(保証TBW:Total Byte Written)は1TBが320TB、2TBが640TBW、2TBが1280TBWとなっており、メーカーによる製品保証期間は3年間です。
Kingston NV3 スペック一覧 |
||||
容量 | 500GB 型番:SNV3S/500G |
1TB 型番:SNV3S/1000G |
2TB 型番:SNV3S/2000G |
4TB 型番:SNV3S/4000G |
インターフェース |
NVMe(PCIE4.0x4) | |||
メモリコントローラー | Silicon Motion SM2268XT2 (非公式、サンプル機より) | |||
メモリー | QLC型 3D NAND (非公式、サンプル機より) | |||
キャッシュ | DRAMキャッシュレス |
|||
連続読出 | 5000MB/s | 6000MB/s | ||
連続書込 | 3000 MB/s | 4000 MB/s | 5000 MB/s | |
動作温度範囲 | 0°C~70°C | |||
MTBF | 200万時間 | |||
書込耐性 (保証TBW:Total Byte Written) |
160 TB | 320 TB | 640 TB | 1280 TB |
保証期間 | メーカー3年 |
Kingston NV3 2TBの外観
まず最初にKingston NV3 2TBの外観や付属品について簡単にチェックしておきます。Kingston NV3シリーズは製品情報が描かれた厚紙にプラスチック製スペーサーが埋め込まれた簡素なパッケージで梱包されています。厚紙の封を開いてプラスチック製スペーサーを取り出す形です。
「Kingston NV3 2TB」のSSD本体デザインについては普通にM.2 2280サイズ、M-Key型のM.2 SSDです。PCB基板は青色になっています。
Kingston NV3 2TBの表面にはM.2端子の隣、右端にメモリコントローラー、基板上では中央付近に2枚のメモリチップが実装されています。DRAMキャッシュは非搭載です。
「Kingston NV3 2TB」のメモリコントローラーは公表されていませんが、今回入手したサンプル機には最新のSilicon Motion製DRAMキャッシュレスコントローラー SM2268XT2が搭載されていました。
データ保存領域となるNANDメモリについては公式情報では3D NANDとだけ記載されていますが、BiCS6とも呼ばれるWD/KIOXIA製QLC型 162層3D NANDが使用されているようです。
「Kingston NV3」はSSD上に実装されたDRAMキャッシュの代わりに、PCIE3.0/4.0の高速帯域を介してシステムメモリの一部をキャッシュとして使用するHMB(Host Memory Buffer)に対応しています。
Kingston NV3には500GBから最大4TBまで4モデルがラインナップされていますが、いずれもM.2基板表面にだけ素子が実装される片面実装です。
Kingston NV3 2TBの検証機材と基本仕様
「Kingston NV3 2TB」の各種検証を行う環境としては、PCIE4.0/5.0に対応するAMD Ryzen 9 7950X&GIGABYTE X670E AORUS MASTERなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。テストベンチ機の構成 | |
CPU | AMD Ryzen 9 7950X (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z5 Neo F5-6000J3038F16GX2-TZ5N DDR5 16GB×2=32GB (レビュー) |
マザーボード |
GIGABYTE X670E AORUS MASTER (レビュー) |
ビデオカード | PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN (レビュー) |
システムストレージ |
Samsung SSD 990 PRO 1TB (レビュー) |
OS | Windows 11 Pro 64bit 22H2 |
電源ユニット | Corsair HX1500i 2022 (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
システムメモリの検証機材には、Ryzen 7000用OCメモリのスイートスポットとアピールされているメモリ周波数6000MHz/CL30の低レイテンシなメモリOCに対応した「G.Skill Trident Z5 Neo(型番:F5-6000J3038F16GX2-TZ5N)」を使用しています。
G.Skill Trident Z5 NeoシリーズはAMD EXPOのOCプロファイルに対応した製品なので、AMD Ryzen 7000シリーズCPUで高性能なPCを構築するお供としてオススメのOCメモリです。ARGB LEDイルミネーションを搭載したバリエーションモデル G.Skill Trident Z5 Neo RGBもラインナップされています。
・「G.Skill Trident Z5 Neo」をレビュー。EXPOで6000MHz/CL30のOCを試す!
2024年最新のSSDレビューでは高度に圧縮されたゲームデータをグラフィックボードのVRAMへ直接取り込んで、GPUによって高速に展開するDirectX 12のDirectStorageのようなAPIに対応したPCゲームも検証しています。
その時にSSDの理想的な性能を検証できるように、最新のウルトラハイエンドGPUを搭載したグラフィックボード「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN」を使用しています。
PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8は、ベイパーチャンバー構造のベースコアや、厚みのあるファンブレードをバリヤーリングで結合した重厚な冷却ファンを採用する4スロット占有大型GPUクーラーにより、各社AIBモデルの中でもトップクラスの静音性を実現しています。
メーカーのPNYは2022年に株式会社アスクが販売代理店契約を結んだばかりの新参なので国内での知名度は高くありませんが、北米など海外市場では30年以上に渡りコンシューマーならびにビジネス向けで電子機器の製造・販売を行う大手メーカーです。
国内正規品なら代理店を介してPNY公式のグローバル保証と同じ3年間の長期保証が受けられるところも魅力です。
・「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8」をレビュー
検証環境については上述の通り、AMD Ryzen 9 7950XやGIGABYTE X670E AORUS MASTERで構成されるテストベンチ機を使用していますが、検証するNVMe M.2 SSDはマザーボード上のCPUソケット直下に配置されている、CPU直結PCIE5.0x4レーン接続のM.2スロットに設置しています。
またサーマルスロットリングによる性能低下の可能性を排除するため、JIUSHARK M2-THREEという60mm角ファンでアクティブ冷却できるM.2 SSDヒートシンクを組み合わせた状態で設置しています。
GIGABYTE X670E AORUS MASTERにM.2 SSDを設置する場合、M.2-PCIE変換ボードも使用するなら、計5つの候補があり、どこに接続するかでベンチマーク結果が大きく変わります。
Ryzen 7000シリーズCPU&X670Eマザーボードの環境においてCPU直結PCIEレーンは、主にグラフィックボードで使用するPCIE5.0x16レーンに加えて、NVMe M.2 SSD用のPCIE5.0x4レーンが2つがあり、実のところNVMe M.2 SSDを使用するなら、このNVMe M.2 SSD用のCPU直結PCIE5.0x4レーンが最速となります。
「Kingston NV3 2TB」のボリュームをWindows 11上で作成したところ、空きスペースは1.81TBでした。
「Kingston NV3 2TB」はSSD上に実装されたDRAMキャッシュの代わりに、PCIE3.0/4.0の高速帯域を介してシステムメモリの一部をキャッシュとして使用するHMB(Host Memory Buffer)に対応しています。
「Kingston NV3 2TB」でSSDが指定する最適バッファサイズは64MBで、実際に確保されるバッファサイズも64MBでした。
Kingston NV3 2TBのベンチマーク比較
「Kingston NV3 2TB」の性能を測るためストレージに関する基本的なベンチマークソフトを使用して測定を行います。まずはCrystalDiskMark8.0.4 (1GiB, +Mix)について、「Kingston NV3 2TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
「Kingston NV3 2TB」のベンチマークススコアは連続読み出し6200MB/s、連続書き込み5700MB/sとなりました。製品スペックを若干上回るスコアです。PCIE4.0x4接続ではエントリークラスは5000MB/s程度、ハイエンドクラスは700MB/s程度なので中間に位置する性能です。
実用性能への影響の大きい4Kランダム読み出し(Q1T1)も78MB/s程度とそこそこ高速です。
以下、各種比較対象SSDのCrystalDiskMark8 ベンチマークスコアになっています。
AS SSD Benchmark v2.0.6821.41776 (1GB)について、「Kingston NV3 2TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
以下、各種比較対象SSDのAS SSD Benchmark ベンチマークスコアになっています。
Anvil’s Storage Utilities v1.1.0 (1GB)について、「Kingston NV3 2TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
以下、各種比較対象SSDのAnvil’s Storage Utilities ベンチマークスコアになっています。
ATTO Disk Benchmark 4.00.0f2 (512B-64MB, 1GB, QD1/QD4)について、「Kingston NV3 2TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
ATTO Disk Benchmarkはブロックサイズ別の性能を主にチェックするベンチマークなので4KB~1MBを抜粋してリード/ライト性能をグラフにして比較しました。
Kingston NV3 2TBの連続書き込みについて
「Kingston NV3 2TB」に連続書き込みを行った場合の動作についてチェックします。TLC型やQLC型と呼ばれる3bit以上のマルチレベルセルで動作するNANDが採用されているSSDでは、マルチレベルセル化によって遅くなる書き込み速度の底上げのため、NANDメモリの一部を高速キャッシュ領域とする機能が実装されています。
2022年現在、TLCやQLCの記憶領域を動的にSLC化する製品が多いので、この高速キャッシュ領域のことをSLCキャッシュと呼ぶことにします。(可能性としてTLC型SSDやQLC型SSDがMLCで高速キャッシュを構築することもありうる)
このようなSLCキャッシュを有するSSDにおいては、連続した大容量の書き込みによって書き込み総量がSLCキャッシュを超過した場合、書き込み速度がステップ状にガクッと下がります。
例えば600MB/sが理論的な上限速度となるSATA SSDの場合は、動画ファイルなど数十GB以上の単一ファイルの連続書き込みが発生すると、SLCキャッシュ超過後はCrystalDiskMarkなどベンチマークソフトで表示される500MB/s程度の連続書き込み速度を維持できず、100~200MB/sまで書き込み速度が低下する可能性があります。
最新のQLC型NANDをメモリチップに採用する「Kingston NV3 2TB」がどのような挙動を見せるのか確認してみました。
「Kingston NV3 2TB」は空き容量が250GB以上あり、SLCキャッシュが十分に開放された状態であれば、100GBの書き込みを行っても、製品仕様でも紹介されているように書き込み開始から一貫して5GB/s程度の書き込みスピードを発揮できました。
SLCキャッシュ内なら5GB/s程度という高速な書き込み速度を発揮しますが、SLCキャッシュ容量を超過すると書き込み速度は200MB/s程度へと大幅に低下します。
フォーマット直後の状態からボリューム全域に書き込みを行った時の書き込み速度の推移が下のようになっています。実用的にはあまり意味のない評価方法ですが、SLCキャッシュの挙動を把握する上では役立つこともあるので参考までに。
5GB/s前後の書き込み速度を発揮する高速なSLCキャッシュは空き容量が100%の状態なら約530GB、QLC型SSDとしては理想的な1/4容量をそのまま使用でき、超過後は書き込み速度が200MB/s程度に低下しています。
空き容量が200~300GBになるまでデータを書き込んで、SLCキャッシュが解放されるまで十分に時間が経過してから100GBのデータを書き込んでみました。
「Kingston NV3 2TB」のSLCキャッシュ容量はシンプルに空き容量の1/4です。加えて、Windows上でボリュームとして認識される容量(空き容量に比例して確保されるSLCキャッシュ)とは別に、40~50GB程度の空き容量として表示されないSLCキャッシュ用領域がありそうです。
「Kingston NV3 2TB」は空き容量の1/4+αというQLC型SSDのSLCキャッシュとしては理想的な構造です。
基本的に100GB以上のSLCキャッシュを使用でき、短期・中期的にもアイドル状態になるとすぐに使用済みSLCキャッシュの開放が始まって、10分もあれば元通りに数十GB以上のSLCキャッシュを使用できます。
QLC型SSDのため超過後の書き込み速度は200MB/s程度と大幅に速度低下しますが、実用的にはSLCキャッシュの超過による性能低下で不便を感じることはないと思います。
Kingston NV3 2TBの消費電力と温度
「Kingston NV3 2TB」の消費電力についてチェックしていきます。NVMe M.2 SSDの消費電力測定には、当サイトの検証に使用するためワンオフで特注した測定ツール「GPU Power Tester」を使用しています。
GPU Power Testerはその名の通り、PCIEスロット経由とPCIE補助電源の消費電力を直接に測定しグラフィックボードの消費電力を検証する機器ですが、M.2延長カードを改造した増設ユニットを使用することでNVMe M.2 SSDの消費電力を測定できます。
グラフィックボードの消費電力測定に使用するようなライザーケーブル/ライザーカードから、さらにM.2-PCIE変換ボードを中継すると、機器の組み合わせやPCIE5.0等の高速接続規格によってはSSDの動作が不安定になることがありますが、この方法ならマザーボードのM.2スロットにM.2 SSDを直結した時と同等の性能で安定して消費電力を測定できます。
まずはSSDの消費電力の傾向を把握するため、CrystalDiskMark8.0.4 (1GiB, +Mix)を測定負荷としてアクセスタイプ別に消費電力がどうなるのかチェックしていきます。
CrystalDiskMarkの設定は各アクセスタイプで測定時間20秒/測定回数1回、測定インターバル10秒に変更しています。12種類のアクセスタイプの負荷に加えて、テスト終了後のアイドル状態の消費電力も測定しています。
CrystalDiskMarkを測定負荷とした時に連続読み出し/連続書き込みのアクセスタイプは、消費電力が最も大きくなる、ワーストケースに近い負荷となります。
CrystalDiskMarkで負荷をかけた時の「Kingston NV3 2TB」の消費電力の推移は次のようになっています。
「Kingston NV3 2TB」の消費電力は、連続アクセスの最大値で平均3.8W程度でした。
PCIE4.0x4帯域の理想値を若干下回る6GB/s程度のアクセススピードではありますが、従来の5GB/s程度かつDRAMキャッシュレスSSDよりも低消費電力になっており、ワットパフォーマンスはトップクラスに良い製品です。
実用性能に影響の大きい4Kランダム(Q1T1)の読み書きにおける消費電力も1.1~1.2Wなので、やはりトップクラスの省電力性能です。
消費電力が特に大きくなりやすい連続読み出し/連続書き込み(SEQ 1M Q8T1)について、「Kingston NV3 2TB」と各種ストレージを比較すると次のようになります。
実用性能に影響の大きいランダム読み出し/ランダム書き込み(RND 4K Q1T1)について、「Kingston NV3 2TB」と各種ストレージを比較すると次のようになります。
PC電源ONでSSDに対して読み書きアクセスがないアイドル状態の消費電力について、「Kingston NV3 2TB」と各種ストレージを比較すると次のようになります。
続いて、実用シーンのSSD消費電力として当サイト的に重要なPCゲームのプレイシーンをチェックしていきます。
使用しているタイトルは、DirectStorageに対応するPCゲームとしてラチェット&クランク パラレル・トラブル(Ratchet & Clank: Rift Apart)とFORSPOKEN、ストレージへのAPIが従来式の高画質PCゲームとしてMarvel’s Spider-Man RemasteredとForza Horizon 5となっており、いずれも4K解像度でグラフィック設定は基本的に各設定項目が最高設定です。以上4種類のゲームを使用して120秒間の5つのシーンについてSSDの消費電力を測定しており、具体的には次の動画の通りです。
「Kingston NV3 2TB」のDirectStorage対応を含む4種類のPCゲーム、5つのシーンにおけるSSD消費電力の推移は次のようになっています。
グラフ中には上で行ったCrystalDiskMarkによる消費電力測定の結果のうち、連続読み出し(SEQ 1M Q8T1)、ランダム読み出し(RND 4K Q1T1)、アイドルの3種類の消費電力も横線で併記しています。
2024年最新水準の高画質タイトルを使用して検証していますが、PCゲームシーンだとDirectStorage対応と従来式のどちらであっても、SSD消費電力の平均値は、CDMのランダム読み出しとアイドルの消費電力の中間に収まります。
DirectStorage対応PCゲーム、ラチェット&クランクのワープやFORSPOKENのロード・ファストトラベルでは連続アクセス的な大きい消費電力も発生しますが、いずれも1~2秒あるかどうかという瞬間的なものです。
「Kingston NV3 2TB」を含めた各種ストレージについてゲームシーンの平均消費電力を比較すると次のようになっています。(最大値も併記していますが、上の推移グラフを見ての通り瞬間的なピーク値となっており測定毎に振れ幅があるので参考程度に考えてください。)
現状ではPCゲームプレイ中のSSD消費電力は、データの読み出しが多いタイトルでもCDMの4Kランダム読み出しと同程度、そうでなければアイドル状態をベースにして4Kランダム読み出し的な消費電力のアクセスがぽつぽつと発生する感じなので、製品別に見てもSSD消費電力の傾向はCDMの4Kランダム読み出しかアイドルに一致します。
「Kingston NV3 2TB」の温度についての検証は省略します。
近年ではマザーボードM.2スロットに十分な性能のM.2 SSDヒートシンク搭載が標準化しており、市販M.2 SSDヒートシンクも安価で高性能なものが簡単に見つかるようになっています。
PCIE4.0/5.0対応でドンドン高速化していく中、NVMe M.2 SSDをヒートシンクなしで温度測定や耐久テストを行うのは時勢に合わない、上記の通りヒートシンクも多様化しているので一例を示してもあまり参考にならない、と思ったというのも1つ理由です。
どうしてもヒートシンクなし、もしくは冷却が限定される環境での運用を検討する必要があるのであれば、上記の消費電力測定で消費電力が小さいSSDを選ぶ、というのが正解ですし。
またゲームシーンの消費電力検証で見た通り、実用シーンでCrystalDiskMarkの連続アクセスのようなPCIE4.0なら7GB/s前後、PCIE5.0なら10GB/sを超える高速アクセスが長時間に渡って発生するのかは疑わしく、比較的に理想的な連続アクセスが生じる動画ファイルのコピーでも、100GBの読み書きは5GB/sなら20秒、長く見積もっても30秒前後で済むので、それ以上のストレステストに意味があるのか疑問です。
またCrystalDiskMark自体はストレージベンチとして非常に有用ですが、SSDの温度検証という観点でいうとテストの3/4で連続アクセス的な消費電力が発生するCrystalDiskMarkを測定負荷に採用するのはあまり意味がないと感じています。
延長カード型でPCIE5.0にも対応するM.2 SSD消費電力測定モジュールも無事に完成したので、PCゲーム以外の実用シーンについてもSSD消費電力を調査しつつ、SSD温度検証の在り方について調べるのが今後の課題だと思っていますが、今回は省略ということで。
Kingston NV3 2TBの実用性能比較
「Kingston NV3 2TB」の実用性能をPCMark10 Storage Benchmarkを使用してチェックしていきます。PCMark10 Storage BenchmarkはWindows OSの起動速度、PhotoshopやPremiere ProといったAdobeアプリの起動速度、PCゲームの起動速度、AdobeアプリやMicrosoft Officeの素材領域としての読み出し・書き込み速度など、SSDの実用性能について測定できるベンチマークソフトです。
ベンチマーク測定に使用するPCMark10 Storage Benchmarkには上の概要で紹介したように23種類のテストがあるので、その中からシステム/ゲーム/データの3種類に大別された17種類のテストの結果を抜粋し、各テストにおいてSamsung SSD 980 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取り、「Kingston NV3 2TB」など各種SSDに関して総合的なSSD実用性能の比較グラフ(パフォーマンスサマリー)を作成しました。
DRAMキャッシュレスの安価モデルという位置づけで競合製品となるNextorage G-Series LEやWD Blue SN5000とPCMark10 Storage Benchmarkの個別Traceについて比較(対象を100%として性能差をパーセント表示)すると下のグラフのようになっています。
タスク別で得手不得手はありますが
「Kingston NV3 2TB」はPCMark10の実用性能比較において、Nextorage G-Series LEやWD Blue SN5000といった競合製品と同等以上の性能を発揮していることが分かります。
システムストレージとしての性能に大別された7種類のテスト結果を使用して、各テストにおいてSamsung SSD 980 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取り、「Kingston NV3 2TB」など各種SSDに関してシステムストレージとしてのSSD実用性能の比較グラフ(パフォーマンスサマリー)を作成しました。
ゲームストレージとしての性能に大別された3種類のテスト結果を使用して、各テストにおいてSamsung SSD 980 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取り、「Kingston NV3 2TB」など各種SSDに関してゲームストレージとしてのSSD実用性能の比較グラフ(パフォーマンスサマリー)を作成しました。
データストレージとしての性能に大別された7種類のテスト結果を使用して、各テストにおいてSamsung SSD 980 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取り、「Kingston NV3 2TB」など各種SSDに関してデータストレージとしてのSSD実用性能の比較グラフ(パフォーマンスサマリー)を作成しました。
Kingston NV3 2TBのデータコピー・ゲームロード性能比較
続いて「Kingston NV3 2TB」で大容量・多数データのコピーやPCゲームのロード時間など実際の使用について性能比較をしてみました。まずはデータコピーに関する実性能比較となります。
データのコピーにおいては当然ですが、元データのあるストレージの読み出し性能とコピー先の書き込み性能の両方が重要になります。
検証ストレージのコピー相手、書き込み先/読み出し元となるストレージが必要なので、コピー相手にはPCIE5.0x4接続に対応したCrucial T700 2TBを使用しています。
Ryzen 9 7950XとGIGABYTE X670E AORUS MASTERの検証環境で、レビューストレージはCPU直下のM.2スロットに、コピー相手のCrucial T700 2TBはPCIEスロットを挟んで1つ下のM.2スロットに設置しており、いずれも個別のCPU直結PCIE5.0x4レーンに接続されているので、接続帯域がコピー速度のボトルネックになることはありません。
「Kingston NV3 2TB」など各種検証ストレージとKingston NV3 2TBとの間で各種データをコピーした時間や転送速度の比較結果は次の通りです。
まずは50GBの動画フォルダのコピーについてですが、動画フォルダの中身は1つ10GBの大容量ファイルなので実際のコピーではベンチマークの連続読み出し・書き込み性能が重要になります。
Windows 11 21H2以前はエクスプローラーのファイルシステムがボトルネックになるためコピー速度は3GB/s程度で頭打ちでしたが、Windows 11 22H2とPCIE5.0に対応するRyzen 7000環境であれば実際のファイルコピーで最大6GB/sに迫る転送速度を発揮できます。
「Kingston NV3 2TB」は読み出し速度が4400MB/s程度、書き込み速度が4500MB/s程度でした。PCIE4.0 SSDの中では最速というわけではありませんが、中の上くらいの性能です。
次はゲームフォルダのコピーについてですが、近年のPCゲームでは各種ゲームデータが数百MB~数GBのファイルにパッケージ化されているので、動画ファイルのコピーと同様、比較的にストレージの連続読み出し・書き込み性能が重要になります。
ゲームデータが大きいファイルにパッケージ化されているゲームフォルダの場合、動画ファイルのコピーよりも転送速度は若干下がりますが、それでも「Kingston NV3 2TB」は読み出しと書き込みで4000~4500MB/s程度という転送速度を発揮しています。
最後は先ほどと同じくゲームフォルダのコピーについてですが、こちらはゲームデータが大きいファイルにパッケージ化されておらず、15万を超えるファイル数があるので、ランダム性能が重要になっています。
ランダム性能が重要になる実際のファイルコピーでも、「Kingston NV3 2TB」はPCIEPCIE4.0x4接続のハイエンド製品として違和感のない性能を発揮しています。
ただしコピー元の読み出し速度がボトルネックになりやすく、コピー相手にはCrucial T700 2TBを使用しているので、書き込み性能はPCIE4.0x4接続の高性能SSDなら1300MB/s程度の速度で頭打ちになります。
続いて3DMark Storage Benchmarkを使用して、PCゲームのロード時間やプレイ動画の保存といったゲーミングシーンでの「Kingston NV3 2TB」のストレージ性能を比較します。
3DMark Storage Benchmarkは各検証ストレージについて3回ずつ実行しており、総合スコア、ゲームロード速度(Battlefield V、Call of Duty Black Ops 4、Overwatch)、プレイ動画の録画(Overwatchのゲームプレイ中のデータアクセスとOSBによるフルHD/60FPSの録画)について平均値を比較しています。
またPCMark10 Storage Benchmarkと同様に、各ストレージは空き容量が半分前後になるようにデータを書き込んだ状態で測定を行っています。
3DMark Storage Benchmarkのトータルスコアについて、「Kingston NV3 2TB」やその他ストレージの比較は次のようになっています。
3DMark Storage Benchmarkの総合スコアには、プレイデータのセーブ、PCゲームのインストール/移動は実用面で優先度が低いテストの結果も含まれるので、ここからはPCゲーム用ストレージとして優先度の高い個別テストを抜粋して見ていきます。
3DMark Storage BenchmarkのBattlefield V ゲームロード速度について、「Kingston NV3 2TB」やその他ストレージの比較は次のようになっています。
3DMark Storage BenchmarkのCall of Duty Black Ops 4 ゲームロード速度について、「Kingston NV3 2TB」やその他ストレージの比較は次のようになっています。
3DMark Storage BenchmarkのOverwatch ゲームロード速度について、「Kingston NV3 2TB」やその他ストレージの比較は次のようになっています。
3DMark Storage Benchmarkのプレイ動画録画性能について、「Kingston NV3 2TB」やその他ストレージの比較は次のようになっています。
DirectX 12のDirectStorageに代表されるPCゲーム向け高速ストレージアクセスAPIに対応したPCゲームにおけるロード性能については、実際の比較検証結果を元に解説しているので、こちらの記事を参照してください。
ゲーム向け高速ストレージAPIを使用しない従来式のゲームの傾向についても、2020年から2021年頃の検証ですが比較データを使って解説しています。
結論だけ言ってしまうと、DirectStorageのサポートの有無によってNVMe SSDとSATA SSDでは大幅な性能差がありますが、PCIE3.0~5.0の帯域、TLC NANDとQLC NAND、DRAMキャッシュの有無による差は確認できませんでした。
マイナーメーカーのそもそもSSD性能が怪しい製品とかになると保証もできませんが、Micron(Crucial)、Samsung、SK Hynix(Solidigm)、WD辺りの大手メーカー製品で、NVMe SSDであれば、DirectStorage対応ゲームのロード時間はほぼ同じになると思います。ブラインドで見分けられる差でないことは確かです。
DirectStorage対応タイトルはまだ少ないですが、これからゲーム用ストレージを購入するのであれば、PCIE4.0対応NVMe M.2 SSDが性能と容量単価のバランスも良く、ベストだと思います。
今回はPC環境における性能を検証しましたが、同じくNVMe M.2 SSDを使用するPlayStation 5の拡張スロットによるストレージ増設についてはこちらの記事で詳細を解説しています。気になる方は参照してみてください。
Kingston NV3 2TBのレビューまとめ
最後に「Kingston NV3 2TB」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 最大性能で連続読み出し6.2GB/s、連続書き込み5.7GB/s (2TBモデル)
- PCMark10や3DMarkの実用性能ベンチでハイエンドPCIE4.0 SSDに迫る性能
- PlayStation5の拡張スロットに使用可能なPCIE4.0対応NVMe M.2 SSD
- SLCキャッシュは100GB以上を使用でき(空き容量の1/4+α)、使用後の開放も速い
- DRAMキャッシュレスで、トップクラスの低消費電力
- メーカー正規保証期間が3年間、保証条件のTBWは容量1TBあたり320TB
- DRAMキャッシュレス、HMB(Host Memory Buffer)対応
- QLC型なのでSLCキャッシュ超過後に速度低下が発生する
キャッシュ容量は空き容量依存(詳細)で、超過後の書き込み速度は200MB/s程度 - メーカー正規保証期間が5年ではなく3年で少し短め
「Kingston NV3 2TB」を検証してみたところ、CrystalDiskMarkなど基礎的な各種ベンチマークでは仕様値通り、DRAMキャッシュレスの安価モデルながら連続読み出しが最大6.2GB/s前後というPCIE4.0x4帯域の限界まであと一歩に迫る性能です。
PCMark10や3DMarkの実用性能系のベンチマークについても、DRAMキャッシュを搭載するハイエンドNVMe M.2 SSDと遜色なく、同じくDRAMキャッシュレスで競合するWD Blue SN5000やNextorage G-Series LEと同等以上の性能を発揮しました。
「Kingston NV3 2TB」の最大の注目ポイントは消費電力の低さです。
少しでもバッテリー動作時間を伸ばしたいモバイルPCの容量増設に使用する換装用システムストレージとして最適かつ、コストパフォーマンスの高いSSDだと思います。
「Kingston NV3 2TB」にはQLC型3D NANDメモリが採用されているので、多くのTLC/QLC型SSDと同様の特徴が大容量書き込み時にでており、容量可変のSLCキャッシュを超過すると、理想値5000MB/s程度から200MB/s程度まで書き込み速度が大幅に低下します。
SLCキャッシュ超過時の速度低下は大きいですが、空き容量の1/4+αをSLCキャッシュとして使用でき、使用済みSLCキャッシュの開放も速いので、実用的にSLCキャッシュを超過して不便を感じることはないはずです。
QLC型NAND採用のデメリットのもう一方、1TB容量当りの書き込み耐性の低さについては、TLC型と比較した場合に1TBあたり半分程度しかないことは同じですが、仕様値TBWである1TB当たり320TBなら5年間に毎日200GBを書き込んでもお釣りがくる計算です。エントリークラスの大容量SSDとしては実用的にも十分な耐久性だと思います。
以上、「Kingston NV3 2TB」のレビューでした。
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DRAMキャッシュレスながらPCIE4.0x4接続で連続読み出し6GB/s前後に達する高コストパフォーマンスなNVMe M.2 SSD「Kingston NV3 2TB」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) October 14, 2024
トップクラスの省電力で高性能なエントリー向けSSDを徹底検証https://t.co/GAWjD4FKxZ pic.twitter.com/XoQ7tXYqdM
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