WD_BLACK SN850X NVMe SSD 8TB with Heatsink


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Western DigitalのPCゲーマーなどハイエンド志向なユーザーをターゲットにしたWD_BLACKシリーズから発売された、8TBの超大容量に加えて連続読み出し7.2GB/sに達するハイエンドNVMe M.2 SSD「WD_BLACK SN850X NVMe SSD 8TB with Heatsink(型番:WDS800T2XHE)」をレビューします。



WD_BLACK SN850X 8TB レビュー目次


1.WD_BLACK SN850Xについて
2.WD_BLACK SN850X 8TBの外観
3.WD_BLACK SN850X 8TBの検証機材と基本仕様


4.WD_BLACK SN850X 8TBのベンチマーク比較
5.WD_BLACK SN850X 8TBの連続書き込みについて
6.WD_BLACK SN850X 8TBの消費電力


7.WD_BLACK SN850X 8TBの実用性能比較
8.WD_BLACK SN850X 8TBのデータコピー・ゲーム性能比較


9.WD_BLACK SN850X 8TBのレビューまとめ



製品公式ページ:https://shop.sandisk.com/ja-jp/products/ssd/internal-ssd/wd-black-sn850x-nvme-ssd






【機材協力:WD 国内正規代理店 株式会社ケミック】



WD_BLACK SN850Xについて

「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」は、メモリチップにWD/SanDisk製TLC型3D NAND、メモリコントローラーにPCIE4.0x4帯域のNVMe接続に対応するWD独自コントローラーが採用された、NVMe(PCIE4.0x4)接続でM.2 2280フォームファクタのM.2 SSDです。

「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」にはSSD容量として1TB(型番:WDS100T2X0E)、2TB(型番:WDS200T2X0E)、4TB(型番:WDS400T2X0E)、さらに2024年後半に追加された8TB(型番:WDS800T2X0E)の4モデルがラインナップされています。

加えてWD_BLACK製品でお馴染みのミリタリー風な独自M.2 SSDヒートシンクを搭載したモデルも同時に展開されています。PlayStation 5の拡張スロットにも互換サイズです。
WD_BLACK SN850X NVMe SSD with Heatsink_img




「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」のアクセススピードは容量によって若干異なりますが、最大でシーケンシャル読出7300MB/s、シーケンシャル書込6600MB/s、ランダム読出1,200,000IOPS、ランダム書込1,200,000IOPSの超高速アクセスを実現しています。

「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」は専用管理アプリケーションWD_BLACK Dashboardから設定可能な新機能 Game Mode 2.0(Windows PC限定)にも対応しています。
WD_BLACK Dashboard_Game Mode 2.0

「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」のMTTF(平均故障間隔)は175万時間、書込耐性(保証TBW:Total Byte Written)は1TBが600TB、2TBが1200TB、4TBが2400TB、8TBが4800TBとなっており、メーカーによる製品保証期間は5年間です。


WD_BLACK SN850X NVMe SSD スペック一覧
容量 1TB
WDS100T2X0E
2TB
WDS200T2X0E
4TB
WDS400T2X0E
4TB
WDS800T2X0E
ヒートシンク WDS100T2XHE
WDS200T2XHE
WDS400T2XHE
WDS800T2XHE
インターフェース
M.2, NVMe (PCIE4.0x4)
コントローラー
WD in-house NVMe
メモリー WD/SanDisk製 TLC型 3D NAND
キャッシュ 1GB DDR4
2GB DDR4
連続読み出し 7300MB/s 7200MB/s
連続書き込み 6300MB/s 6600MB/s
ランダム読み出し
(4KB)
800,000 IOPS 1,200,000 IOPS
ランダム書き込み
(4KB)
1,100,000 IOPS 1,100,000 IOPS 1,200,000 IOPS
動作温度範囲 0°C~85°C
MTTF 175万時間
書込耐性
(保証TBW:Total Byte Written)
600 TB 1200 TB 2400 TB 4800 TB
保証期間 メーカー5年



WD_BLACK SN850X 8TBの外観

まず最初にWD_BLACK SN850X 8TBの外観や付属品について簡単にチェックしておきます。
WD_BLACK SN850Xシリーズのパッケージは、近年のWD_BLACK製品と同じく、マットブラックを基調にオレンジのアクセントカラーで洒落なデザインです。
WD_BLACK SN850Xシリーズには各容量でヒートシンクなしとヒートシンクありがそれぞれラインナップされていますが、今回入手したのは8TB容量のヒートシンク搭載版です。
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「WD_BLACK SN850X 8TB」のSSD本体の外観は次のようになっています。標準でヒートシンク搭載ではありますが基板自体はM.2 2280サイズ、M-Key型のM.2 SSDです。PCB基板は黒色です。
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WD_BLACK SN850X ヒートシンク搭載版は、ポータブルストレージやTB3ドックなど近年のWD_BLACK製品でお馴染み、ミリタリー風デザインの独自M.2 SSDヒートシンクを搭載しています。
ヒートシンク天面はなだらかな隆起があるだけでほぼフラットな形状(放熱スリットがない)ですが、側面に目を向けると三角状の切り抜きが設けられており、放熱表面積が確保されています。
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WD_BLACK SN850Xヒートシンク搭載版には、WD_BLACKロゴの”LAC”の真上辺りに透明プラスチックのパーツが埋め込まれており、通電時にオレンジ色に点灯するLEDイルミネーションが内蔵されています。(外見がほぼ同じなのでLED点灯の参考写真は以前撮影したSN850)
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WD_BLACK SN850X NVMe SSD 1TB with Heatsink review_02369_DxO
標準では上の写真のようにオレンジ色、発光パターンはブリージングでゆっくりと明滅しますが、純正クライアントアプリケーション WD Dashboardから発光カラーや発光パターンの設定も可能です。完全に消灯させることもできます。
WD_BLACK SN850X ヒートシンク搭載版のLEDイルミネーションはWD Dashboardから一度変更すれば、発光カラー&発光パターンはSSD側に保存されるので、アプリをスタートアップ・常駐させる必要はありません。
WD Black SN850X with HS_WD Dashboard_LED (1)
加えて、WD_BLACK SN850X ヒートシンク搭載版は、ASUS AURA Sync、GIGABYTE RGB Fusion、MSI Mystic Light、Razer Chromaなど他社のライティング制御機能にも対応しています。
WD Black SN850X with HS_WD Dashboard_LED (2)


WD_BLACK SN850X ヒートシンク搭載版として2022年に初期投入された1TB/2TB容量モデルは金属製背面プレートのツメを折り曲げて、上側のヒートシンク本体を固定する構造でした。
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2024年に入ってから追加投入された4TBと8TBのヒートシンク搭載版は公式ページの製品サンプルイメージでも分かるようにヒートシンクの固定方法がネジ止めに変わっています。
ヒートシンクの着脱自体は製品保証対象外になってしまいますが、ユーザーによってヒートシンクの着脱が容易になったのは地味に嬉しい変更点です。PS5の増設ストレージに使った後に、市販のUSB変換ケースに組み込んでモバイルストレージとして再利用する時などに助かります。
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ちなみにWD_BLACK SN850X ヒートシンク搭載版で製品保証を維持したままUSB外付けストレージとして利用(再利用)したい場合は標準搭載ヒートシンクを付けたままでも使えるUSB変換ケースがオススメです。




今回は自己責任で(もしくはレビュー用サンプル提供先の協力のもと特別に許可を頂いて)、SSDヒートシンクの分解を行っています。
ヒートシンクを標準で搭載するSSDからユーザーがヒートシンクを取り外すのは、一部を除く多くのメーカーでは正規保証の対象外になる行為です。今回はレビューのために分解していますが、繰り返しますが保証対象外になるので基本的には非推奨の行為なのでご注意下さい。


WD_BLACK SN850X ヒートシンク搭載版も標準搭載のヒートシンクを取り外すとメーカー保証対象外となります。
WD_BLACK SN850X ヒートシンク搭載版の4TBモデルと8TBモデルでは、ヒートシンクは側面のネジ 5つで固定されています。分解の有無をチェックする封印シール等はありませんが、ネジはプラスネジではなく、T4規格のトルクスネジなので対応するドライバーが必要です。
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SSD基板とヒートシンク・バックプレートの間に使用されている熱伝導素材は粘着の緩い普通のサーマルパッドです。サーマルコンパウンドのような負荷逆な素材でもないので冷却的な意味では元に戻すことも可能です。
背面のメモリチップ2枚とバックプレートの間には熱伝導両面テープが使用されていますが、粘着はそれほど強くないタイプなので、製品保証は失効しますが、比較的簡単にヒートシンク&バックプレートからSSD基板を取り外せます。
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「WD_BLACK SN850X 8TB」のSSD基板についてチェックしておきます。SSD本体は普通にM.2 2280サイズ、M-Key型のM.2 SSDです。PCB基板は黒色になっています。
M.2端子の側から順にメモリコントローラー、その隣にDRAMキャッシュ、残り半分には2枚のメモリチップが実装されています。
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「WD_BLACK SN850X」の1TBと2TBはメモリコントローラーやメモリチップが表面のみに実装される片面実装ですが、今回レビューする最大容量の8TBモデルと4TBモデルは背面にもメモリチップ等の実装がある両面実装です。
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「WD_BLACK SN850X」のメモリコントローラーにはPCIE4.0対応SSDで採用の多いPHISON製ではなく、WD/SanDiskのインハウス製メモリコントローラーが採用されています。
データ保存領域となるNANDメモリについても、WD/SanDisk製ですが、従来モデルと同じTLC型 112層3D NAND”BiCS 5”なのか、最新のTLC型 164層3D NAND”BiCS 6”なのかは不明です。
DRAMキャッシュはロットによって変わるようですが、今回入手した個体はSamsung製でした。2TB、4TB、8TBの容量モデル 3種はいずれもDRAMキャッシュ容量が2GBです。
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WD_BLACK SN850X 8TBの検証機材と基本仕様

「WD_BLACK SN850X 8TB」の各種検証を行う環境としては、PCIE4.0/5.0に対応するAMD Ryzen 9 7950X&GIGABYTE X670E AORUS MASTERなどで構成されているベンチ機を使用しました。構成の詳細は下記テーブルの通りです。
テストベンチ機の構成
CPU AMD Ryzen 9 7950X (レビュー
CPUクーラー Fractal Design Celsius S36 (レビュー
Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー
メインメモリ G.Skill Trident Z5 Neo
F5-6000J3038F16GX2-TZ5N
DDR5 16GB×2=32GB (レビュー
マザーボード
GIGABYTE X670E AORUS MASTER
レビュー
ビデオカード PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8
Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN
レビュー
システムストレージ
Samsung SSD 990 PRO 1TB (レビュー
OS Windows 11 Pro 64bit 22H2
電源ユニット Corsair HX1500i 2022 (レビュー
ベンチ板 STREACOM BC1 (レビュー

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システムメモリの検証機材には、Ryzen 7000用OCメモリのスイートスポットとアピールされているメモリ周波数6000MHz/CL30の低レイテンシなメモリOCに対応した「G.Skill Trident Z5 Neo(型番:F5-6000J3038F16GX2-TZ5N)」を使用しています。
G.Skill Trident Z5 NeoシリーズはAMD EXPOのOCプロファイルに対応した製品なので、AMD Ryzen 7000シリーズCPUで高性能なPCを構築するお供としてオススメのOCメモリです。ARGB LEDイルミネーションを搭載したバリエーションモデル G.Skill Trident Z5 Neo RGBもラインナップされています。
「G.Skill Trident Z5 Neo」をレビュー。EXPOで6000MHz/CL30のOCを試す!
G.Skill Trident Z5 Neo

2024年最新のSSDレビューでは高度に圧縮されたゲームデータをグラフィックボードのVRAMへ直接取り込んで、GPUによって高速に展開するDirectX 12のDirectStorageのようなAPIに対応したPCゲームも検証しています。
その時にSSDの理想的な性能を検証できるように、最新のウルトラハイエンドGPUを搭載したグラフィックボード「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN」を使用しています。

PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8は、ベイパーチャンバー構造のベースコアや、厚みのあるファンブレードをバリヤーリングで結合した重厚な冷却ファンを採用する4スロット占有大型GPUクーラーにより、各社AIBモデルの中でもトップクラスの静音性を実現しています。
メーカーのPNYは2022年に株式会社アスクが販売代理店契約を結んだばかりの新参なので国内での知名度は高くありませんが、北米など海外市場では30年以上に渡りコンシューマーならびにビジネス向けで電子機器の製造・販売を行う大手メーカーです。
国内正規品なら代理店を介してPNY公式のグローバル保証と同じ3年間の長期保証が受けられるところも魅力です。
「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8」をレビュー
PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN


検証環境については上述の通り、AMD Ryzen 9 7950XやGIGABYTE X670E AORUS MASTERで構成されるテストベンチ機を使用していますが、検証するNVMe M.2 SSDはマザーボード上のCPUソケット直下に配置されている、CPU直結PCIE5.0x4レーン接続のM.2スロットに設置しています。
またサーマルスロットリングによる性能低下の可能性を排除するため、JIUSHARK M2-THREEという60mm角ファンでアクティブ冷却できるM.2 SSDヒートシンクを組み合わせた状態で設置しています。
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GIGABYTE X670E AORUS MASTERにM.2 SSDを設置する場合、M.2-PCIE変換ボードも使用するなら、計5つの候補があり、どこに接続するかでベンチマーク結果が大きく変わります。
Ryzen 7000シリーズCPU&X670Eマザーボードの環境においてCPU直結PCIEレーンは、主にグラフィックボードで使用するPCIE5.0x16レーンに加えて、NVMe M.2 SSD用のPCIE5.0x4レーンが2つがあり、実のところNVMe M.2 SSDを使用するなら、このNVMe M.2 SSD用のCPU直結PCIE5.0x4レーンが最速となります。
Storage Test System_202308
AMD X670E and X670_Diagram


「WD_BLACK SN850X 8TB」のボリュームをWindows 11上で作成したところ、空きスペースは7.27TBでした。
WD_BLACK SN850X 8TB_CDI

「WD_BLACK SN850X」などWD製SSD向けには純正クライアントアプリケーション WD Dashboardが配布されています。
ランダム性能を引き上げるゲームモードの切り替えやファームウェアの更新といったSSDの管理をWD Dashboardから行うことが可能です。
WD_BLACK SN850X NVMe SSD_WD Dashboard_1
WD_BLACK SN850X NVMe SSD_WD Dashboard_2

「WD_BLACK SN850X」はPCで使用する場合限定ですが、純正クライアントアプリケーションWD Dashboardから設定を行うことでゲーム性能を引き上げるゲームモードに切り替えが可能です。ゲームモードの切り替えにはシステムの再起動が要求されます。
WD_BLACK SN850X NVMe SSD_Game Mode_1
WD_BLACK SN850X NVMe SSD_Game Mode_2



WD_BLACK SN850X 8TBのベンチマーク比較

「WD_BLACK SN850X 8TB」の性能を測るためストレージに関する基本的なベンチマークソフトを使用して測定を行います。

まずはCrystalDiskMark8.0.4 (1GiB, +Mix)について、「WD_BLACK SN850X 8TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
「WD_BLACK SN850X 8TB」のベンチマークススコアは連続読み出し7200MB/s、連続書き込み6600MB/sとなりました。製品スペックの通り、PCIE4.0x4接続のハイエンドNVMe M.2 SSDとしては理想的な性能です。
実用性能への影響の大きい4Kランダム読み出し(Q1T1)も84MB/s程度と高速です。
WD_BLACK SN850X 8TB_CDM8m_1GiB

NVMe M.2 SSDで超大容量な8TBを実現しているのは、WDの「WD_BLACK SN850X 8TB」以外だと、PHISON製メモリコントローラー PS5018-E18を採用する製品が複数メーカーから発売されています。
PHISON PS5018-E18は1TB/2TBの標準的な容量モデルと比較して8TBの大容量モデルでは特に4Kランダム性能の低下が大きいのに対して、WD_BLACK SN850X(中身同等のSN850P)は1TBから最大容量の8TBまで性能がほぼ一貫して大きな違いがありません。
WD_BLACK SN850X 1TB_CDM8m_1GiB
WD_BLACK SN850P 4TB_CDM8m_1GiB

以下、各種比較対象SSDのCrystalDiskMark8 ベンチマークスコアになっています。

AS SSD Benchmark v2.0.6821.41776 (1GB)について、「WD_BLACK SN850X 8TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
WD_BLACK SN850P 4TB_AS_1GB

以下、各種比較対象SSDのAS SSD Benchmark ベンチマークスコアになっています。


Anvil’s Storage Utilities v1.1.0 (1GB)について、「WD_BLACK SN850X 8TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
WD_BLACK SN850P 4TB_Anvil
WD_BLACK SN850P 4TB_Anvil_4K-IOPS

以下、各種比較対象SSDのAnvil’s Storage Utilities ベンチマークスコアになっています。


ATTO Disk Benchmark 4.00.0f2 (512B-64MB, 1GB, QD1/QD4)について、「WD_BLACK SN850X 8TB」やその他の比較対象ストレージのベンチマーク結果は次のようになっています。
ATTO Disk Benchmarkはブロックサイズ別の性能を主にチェックするベンチマークなので4KB~1MBを抜粋してリード/ライト性能をグラフにして比較しました。
WD_BLACK SN850X 8TB_ATTO_QD1_read
WD_BLACK SN850X 8TB_ATTO_QD1_write
WD_BLACK SN850X 8TB_ATTO_QD4_read
WD_BLACK SN850X 8TB_ATTO_QD4_write
WD_BLACK SN850X 8TB_ATTO_QD1-horz



WD_BLACK SN850X 8TBの連続書き込みについて

「WD_BLACK SN850X 8TB」に連続書き込みを行った場合の動作についてチェックします。

TLC型やQLC型と呼ばれる3bit以上のマルチレベルセルで動作するNANDが採用されているSSDでは、マルチレベルセル化によって遅くなる書き込み速度の底上げのため、NANDメモリの一部を高速キャッシュ領域とする機能が実装されています。
2022年現在、TLCやQLCの記憶領域を動的にSLC化する製品が多いので、この高速キャッシュ領域のことをSLCキャッシュと呼ぶことにします。(可能性としてTLC型SSDやQLC型SSDがMLCで高速キャッシュを構築することもありうる)

このようなSLCキャッシュを有するSSDにおいては、連続した大容量の書き込みによって書き込み総量がSLCキャッシュを超過した場合、書き込み速度がステップ状にガクッと下がります。
例えば600MB/sが理論的な上限速度となるSATA SSDの場合は、動画ファイルなど数十GB以上の単一ファイルの連続書き込みが発生すると、SLCキャッシュ超過後はCrystalDiskMarkなどベンチマークソフトで表示される500MB/s程度の連続書き込み速度を維持できず、100~200MB/sまで書き込み速度が低下する可能性があります。


最新のTLC型NANDをメモリチップに採用する「WD_BLACK SN850X 8TB」がどのような挙動を見せるのか確認してみました。
「WD_BLACK SN850X 8TB」は空き容量が300~400GB以上あり、SLCキャッシュが十分に開放された状態であれば、100GBの書き込みを行っても、製品仕様でも紹介されているように書き込み開始から一貫して6GB/s程度の書き込みスピードを発揮できました。
SLCキャッシュ内なら6GB/s程度という高速な書き込み速度を発揮しますが、SLCキャッシュ容量を超過すると書き込み速度は1000MB/s程度に低下します。
WD_BLACK SN850X 8TB_SLC Cache_400GB-Free
WD_BLACK SN850X 8TB_SLC Cache_300GB-Free

フォーマット直後の状態からボリューム全域に書き込みを行った時の書き込み速度の推移が下のようになっています。実用的にはあまり意味のない評価方法ですが、SLCキャッシュの挙動を把握する上では役立つこともあるので参考までに。
6GB/s前後の書き込み速度を発揮する高速なSLCキャッシュは空き容量が100%の状態なら約2.2TBを使用でき、超過後は書き込み速度が1200~1300MB/s程度に低下しています。
書き込みと平行してSLCキャッシュの開放も行われるようで、断続的に書き込み速度が3GB/s程度に引き上がるのでSLCキャッシュ超過後の平均値は少し高くなっています。
WD_BLACK SN850X 8TB_SLC Cache_writing-all

「WD_BLACK SN850X 8TB」は空き容量の1/3というTLC型SSDの理想よりはのSLCキャッシュが少し小さいものの、基本的に100GB以上のSLCキャッシュを使用でき、アイドル状態になるとすぐに使用済みSLCキャッシュの開放が始まって、10分もあれば元通りに数十GB以上のSLCキャッシュを使用できます。

SLCキャッシュ超過後の書き込み速度は1000MB/s程度なので、この点は最速クラスではありませんが、8Tという元々の容量が非常に大きく、使用済みSLCキャッシュの開放も速いので実用的に不便を感じることはないはずです。



WD_BLACK SN850X 8TBの消費電力と温度

「WD_BLACK SN850X 8TB」の消費電力についてチェックしていきます。
NVMe M.2 SSDの消費電力測定には、当サイトの検証に使用するためワンオフで特注した測定ツール「GPU Power Tester」を使用しています。
GPU Power Tester_SSD_1



GPU Power Testerはその名の通り、PCIEスロット経由とPCIE補助電源の消費電力を直接に測定しグラフィックボードの消費電力を検証する機器ですが、M.2延長カードを改造した増設ユニットを使用することでNVMe M.2 SSDの消費電力を測定できます。
グラフィックボードの消費電力測定に使用するようなライザーケーブル/ライザーカードから、さらにM.2-PCIE変換ボードを中継すると、機器の組み合わせやPCIE5.0等の高速接続規格によってはSSDの動作が不安定になることがありますが、この方法ならマザーボードのM.2スロットにM.2 SSDを直結した時と同等の性能で安定して消費電力を測定できます。
GPU Power Tester_SSD_2

まずはSSDの消費電力の傾向を把握するため、CrystalDiskMark8.0.4 (1GiB, +Mix)を測定負荷としてアクセスタイプ別に消費電力がどうなるのかチェックしていきます。
CrystalDiskMarkの設定は各アクセスタイプで測定時間20秒/測定回数1回、測定インターバル10秒に変更しています。12種類のアクセスタイプの負荷に加えて、テスト終了後のアイドル状態の消費電力も測定しています。
CrystalDiskMarkを測定負荷とした時に連続読み出し/連続書き込みのアクセスタイプは、消費電力が最も大きくなる、ワーストケースに近い負荷となります。
GPU-Power-Test_app_1


CrystalDiskMarkで負荷をかけた時の「WD_BLACK SN850X 8TB」の消費電力の推移は次のようになっています。
「WD_BLACK SN850X 8TB」の消費電力は、連続アクセスの最大値で平均6.7W程度でした。連続性能が7GB/s程度のハイエンドPCIE4.0 SSDとしては標準的か、やや高いくらいの消費電力です。
一方、実用性能への影響が大きく、PCゲーミングの実消費電力に近い数値となる4Kランダム(Q1T1)では1.7~1.8Wとなっており、DRAMキャッシュ搭載のハイエンドPCIE4.0 SSDとしてはトップクラスの省電力性能です。
WD_BLACK SN850X 8TB_Power

PHISON PS5018-E18を採用する8TB容量SSDは同コントローラーの1TBモデルと比較して連続アクセスで2~3Wと大幅に消費電力が増加していたのですが、「WD_BLACK SN850X 8TB」は1TBモデルよりも消費電力が増えているアクセスはあるものの精々1.5W程度に収まり、連続読み出しアクセスなどより低電力になっているアクセスも存在しています。
大容量になるほど消費電力は大きくなる傾向なので、「WD_BLACK SN850X 8TB」の消費電力の小ささはかなり驚きでした。
WD_BLACK SN850X 1TB_Power

WD_BLACK SN850Xは各容量モデルで一貫した傾向として、アイドル消費電力が相対的に高めですが、8TBモデルについてはASPMを有効にしても0.7~0.8Wとアイドル時の消費電力が高めでした。
SSDのアイドル時消費電力が問題になるのは基本的にバッテリーで駆動するモバイルPCの場合であり、「WD_BLACK SN850X 8TB」をモバイルPCのストレージとして使用することはないと思うのですが、もし検討している人がいたら注意してください。
WD_BLACK SN850X 8TB_ASPM


消費電力が特に大きくなりやすい連続読み出し/連続書き込み(SEQ 1M Q8T1)について、「WD_BLACK SN850X 8TB」と各種ストレージを比較すると次のようになります。
WD_BLACK SN850X 8TB_Power_1_Read_1
WD_BLACK SN850X 8TB_Power_5_Write_1

実用性能に影響の大きいランダム読み出し/ランダム書き込み(RND 4K Q1T1)について、「WD_BLACK SN850X 8TB」と各種ストレージを比較すると次のようになります。
WD_BLACK SN850X 8TB_Power_4_Read_4
WD_BLACK SN850X 8TB_Power_8_Write_4

PC電源ONでSSDに対して読み書きアクセスがないアイドル状態の消費電力について、「WD_BLACK SN850X 8TB」と各種ストレージを比較すると次のようになります。
WD_BLACK SN850X 8TB_Power_14_Idle
WD_BLACK SN850X 8TB_Power_14_Idle-aspm


続いて、実用シーンのSSD消費電力として当サイト的に重要なPCゲームのプレイシーンをチェックしていきます。
使用しているタイトルは、DirectStorageに対応するPCゲームとしてラチェット&クランク パラレル・トラブル(Ratchet & Clank: Rift Apart)とFORSPOKEN、ストレージへのAPIが従来式の高画質PCゲームとしてMarvel’s Spider-Man RemasteredとForza Horizon 5となっており、いずれも4K解像度でグラフィック設定は基本的に各設定項目が最高設定です。以上4種類のゲームを使用して120秒間の5つのシーンについてSSDの消費電力を測定しており、具体的には次の動画の通りです。


「WD_BLACK SN850X 8TB」のDirectStorage対応を含む4種類のPCゲーム、5つのシーンにおけるSSD消費電力の推移は次のようになっています。
グラフ中には上で行ったCrystalDiskMarkによる消費電力測定の結果のうち、連続読み出し(SEQ 1M Q8T1)、ランダム読み出し(RND 4K Q1T1)、アイドルの3種類の消費電力も横線で併記しています。
2024年最新水準の高画質タイトルを使用して検証していますが、PCゲームシーンだとDirectStorage対応と従来式のどちらであっても、SSD消費電力の平均値は、CDMのランダム読み出しとアイドルの消費電力の中間に収まります。
DirectStorage対応PCゲーム、ラチェット&クランクのワープやFORSPOKENのロード・ファストトラベルでは連続アクセス的な大きい消費電力も発生しますが、いずれも1~2秒あるかどうかという瞬間的なものです。
WD_BLACK SN850X 8TB_Power_game

「WD_BLACK SN850X 8TB」を含めた各種ストレージについてゲームシーンの平均消費電力を比較すると次のようになっています。(最大値も併記していますが、上の推移グラフを見ての通り瞬間的なピーク値となっており測定毎に振れ幅があるので参考程度に考えてください。)
現状ではPCゲームプレイ中のSSD消費電力は、データの読み出しが多いタイトルでもCDMの4Kランダム読み出しと同程度、そうでなければアイドル状態をベースにして4Kランダム読み出し的な消費電力のアクセスがぽつぽつと発生する感じなので、製品別に見てもSSD消費電力の傾向はCDMの4Kランダム読み出しかアイドルに一致します。

「WD_BLACK SN850X(ほぼ同等品のSN850Pも)」はCrystalDiskMark等を使用した温度検証だと発熱が大きいと評価されることの多い製品ですが、ゲームデータのロードのように4Kランダム(Q1T1)的なアクセスが主となる実用シーンでは非常に低発熱なSSDです。
実際にゲームプレイ中のSSD消費電力を測定してみても、平均電力は1.3~1.4W程度となっており、DRAMキャッシュレスなSSDに近い省電力性能です。大容量のテクスチャ読み込みが発生するなどリッチグラフィックなゲームほど相対的に省電力性能が高まります。
WD_BLACK SN850X 8TB_Power_Game_1_RaC_1
WD_BLACK SN850X 8TB_Power_Game_2_RaC_2
WD_BLACK SN850X 8TB_Power_Game_3_Forspoken
WD_BLACK SN850X 8TB_Power_Game_4_Spider
WD_BLACK SN850X 8TB_Power_Game_5_FH5


「WD_BLACK SN850X 8TB」の温度についての検証は省略します。
近年ではマザーボードM.2スロットに十分な性能のM.2 SSDヒートシンク搭載が標準化しており、市販M.2 SSDヒートシンクも安価で高性能なものが簡単に見つかるようになっています。
PCIE4.0/5.0対応でドンドン高速化していく中、NVMe M.2 SSDをヒートシンクなしで温度測定や耐久テストを行うのは時勢に合わない、上記の通りヒートシンクも多様化しているので一例を示してもあまり参考にならない、と思ったというのも1つ理由です。
どうしてもヒートシンクなし、もしくは冷却が限定される環境での運用を検討する必要があるのであれば、上記の消費電力測定で消費電力が小さいSSDを選ぶ、というのが正解ですし。

またゲームシーンの消費電力検証で見た通り、実用シーンでCrystalDiskMarkの連続アクセスのようなPCIE4.0なら7GB/s前後、PCIE5.0なら10GB/sを超える高速アクセスが長時間に渡って発生するのかは疑わしく、比較的に理想的な連続アクセスが生じる動画ファイルのコピーでも、100GBの読み書きは5GB/sなら20秒、長く見積もっても30秒前後で済むので、それ以上のストレステストに意味があるのか疑問です。
またCrystalDiskMark自体はストレージベンチとして非常に有用ですが、SSDの温度検証という観点でいうとテストの3/4で連続アクセス的な消費電力が発生するCrystalDiskMarkを測定負荷に採用するのはあまり意味がないと感じています。


延長カード型でPCIE5.0にも対応するM.2 SSD消費電力測定モジュールも無事に完成したので、PCゲーム以外の実用シーンについてもSSD消費電力を調査しつつ、SSD温度検証の在り方について調べるのが今後の課題だと思っていますが、今回は省略ということで。


マザーボード備え付けのM.2 SSDヒートシンクの冷却性能が不十分で市販製品を探しているということであれば、PlayStation5の増設スロットにも互換なコンパクトサイズながら高い冷却性能を発揮する「CFD HSN-TITAN」、シリコンバンド固定で着脱が簡単な「SilverStone TP02」などがオススメです。






WD_BLACK SN850X 8TBの実用性能比較

「WD_BLACK SN850X 8TB」の実用性能をPCMark10 Storage Benchmarkを使用してチェックしていきます。
PCMark10 Storage BenchmarkはWindows OSの起動速度、PhotoshopやPremiere ProといったAdobeアプリの起動速度、PCゲームの起動速度、AdobeアプリやMicrosoft Officeの素材領域としての読み出し・書き込み速度など、SSDの実用性能について測定できるベンチマークソフトです。
PCMark10-Storage-Benchmarks


ベンチマーク測定に使用するPCMark10 Storage Benchmarkには上の概要で紹介したように23種類のテストがあるので、その中からシステム/ゲーム/データの3種類に大別された17種類のテストの結果を抜粋し、各テストにおいてSamsung SSD 980 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取り、「WD_BLACK SN850X 8TB」など各種SSDに関して総合的なSSD実用性能の比較グラフ(パフォーマンスサマリー)を作成しました。
WD_BLACK SN850X 8TB_PCM10_1_Summary

「WD_BLACK SN850X 8TB」はPCMark10 Storage Benchmarkの個別Traceについて比較してみても、1TBや2TBの一般的な容量モデルと同等以上の性能を発揮します。
WD_BLACK SN850X 8TB_PCM10_5_vs2
PHISON PS5018-E18を採用する8TB容量SSDはPCMark10による実用性能ベンチマーク比較において、同コントローラーの1TBモデルと比較して大きくスコアを落としていました。
1TB同士であればそれほどベンチマークスコアに差はないのですが、8TBモデル同士の比較となると「WD_BLACK SN850X 8TB」はベンチマークスコアでPHISON PS5018-E18採用SSDを大きく上回ります。
WD_BLACK SN850X 8TB_PCM10_5_vs1

PCMark10は性能差が分かり難いSSDを差別化する、という意味合いが強く、多少スコアが低くても、このレベルなら実用的には全く問題ない、というのが筆者の本音だったりしますが、やはりベンチマークスコアという目に見える形で大容量と性能がトレードオフになっているように分かるのが気になるという人もいると思うので、その意味で、容量によらず一貫した高性能を期待できるところは「WD_BLACK SN850X 8TB」の魅力です。


システムストレージとしての性能に大別された7種類のテスト結果を使用して、各テストにおいてSamsung SSD 980 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取り、「WD_BLACK SN850X 8TB」など各種SSDに関してシステムストレージとしてのSSD実用性能の比較グラフ(パフォーマンスサマリー)を作成しました。
WD_BLACK SN850X 8TB_PCM10_2_Summary_System

ゲームストレージとしての性能に大別された3種類のテスト結果を使用して、各テストにおいてSamsung SSD 980 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取り、「WD_BLACK SN850X 8TB」など各種SSDに関してゲームストレージとしてのSSD実用性能の比較グラフ(パフォーマンスサマリー)を作成しました。
WD_BLACK SN850X 8TB_PCM10_3_Summary_Game

データストレージとしての性能に大別された7種類のテスト結果を使用して、各テストにおいてSamsung SSD 980 PRO 1TBを基準として性能比率を算出、それらの平均値を取り、「WD_BLACK SN850X 8TB」など各種SSDに関してデータストレージとしてのSSD実用性能の比較グラフ(パフォーマンスサマリー)を作成しました。
WD_BLACK SN850X 8TB_PCM10_4_Summary_Data



WD_BLACK SN850X 8TBのデータコピー・ゲームロード性能比較

続いて「WD_BLACK SN850X 8TB」で大容量・多数データのコピーやPCゲームのロード時間など実際の使用について性能比較をしてみました。

まずはデータコピーに関する実性能比較となります。

データのコピーにおいては当然ですが、元データのあるストレージの読み出し性能とコピー先の書き込み性能の両方が重要になります。
検証ストレージのコピー相手、書き込み先/読み出し元となるストレージが必要なので、コピー相手にはPCIE5.0x4接続に対応したCrucial T700 2TBを使用しています。
Ryzen 9 7950XとGIGABYTE X670E AORUS MASTERの検証環境で、レビューストレージはCPU直下のM.2スロットに、コピー相手のCrucial T700 2TBはPCIEスロットを挟んで1つ下のM.2スロットに設置しており、いずれも個別のCPU直結PCIE5.0x4レーンに接続されているので、接続帯域がコピー速度のボトルネックになることはありません。
DSC07784_DxO


「WD_BLACK SN850X 8TB」など各種検証ストレージとWD_BLACK SN850X 8TBとの間で各種データをコピーした時間や転送速度の比較結果は次の通りです。

まずは50GBの動画フォルダのコピーについてですが、動画フォルダの中身は1つ10GBの大容量ファイルなので実際のコピーではベンチマークの連続読み出し・書き込み性能が重要になります。
Windows 11 21H2以前はエクスプローラーのファイルシステムがボトルネックになるためコピー速度は3GB/s程度で頭打ちでしたが、Windows 11 22H2とPCIE5.0に対応するRyzen 7000環境であれば実際のファイルコピーで最大6GB/sに迫る転送速度を発揮できます。
「WD_BLACK SN850X 8TB」は読み出し速度が5000MB/s程度、書き込み速度が5200MB/s程度でした。1TBモデルよりも少しスコアを落とすものの、PCIE4.0 SSDの中でトップクラスの性能です。
WD_BLACK SN850X 8TB_copy_1_movie_read
WD_BLACK SN850X 8TB_copy_2_movie_write

次はゲームフォルダのコピーについてですが、近年のPCゲームでは各種ゲームデータが数百MB~数GBのファイルにパッケージ化されているので、動画ファイルのコピーと同様、比較的にストレージの連続読み出し・書き込み性能が重要になります。
ゲームデータが大きいファイルにパッケージ化されているゲームフォルダの場合、動画ファイルのコピーよりも転送速度は若干下がりますが、それでも「WD_BLACK SN850X 8TB」は読み出しで4900MB/s、書き込みで4200MB/s程度という転送速度を発揮しています。
WD_BLACK SN850X 8TB_copy_3_game-seq_read
WD_BLACK SN850X 8TB_copy_4_game-seq_write

最後は先ほどと同じくゲームフォルダのコピーについてですが、こちらはゲームデータが大きいファイルにパッケージ化されておらず、15万を超えるファイル数があるので、ランダム性能が重要になっています。
ランダム性能が重要になる実際のファイルコピーでも、「WD_BLACK SN850X 8TB」はPCIEPCIE4.0x4接続のハイエンド製品として違和感のない性能を発揮しています。
ただしコピー元の読み出し速度がボトルネックになりやすく、コピー相手にはCrucial T700 2TBを使用しているので、書き込み性能はPCIE4.0x4接続の高性能SSDなら1300MB/s程度の速度で頭打ちになります。
WD_BLACK SN850X 8TB_copy_5_game-rnd_read
WD_BLACK SN850X 8TB_copy_6_game-rnd_write


続いて3DMark Storage Benchmarkを使用して、PCゲームのロード時間やプレイ動画の保存といったゲーミングシーンでの「WD_BLACK SN850X 8TB」のストレージ性能を比較します。
3DMark Storage Benchmarkは各検証ストレージについて3回ずつ実行しており、総合スコア、ゲームロード速度(Battlefield V、Call of Duty Black Ops 4、Overwatch)、プレイ動画の録画(Overwatchのゲームプレイ中のデータアクセスとOSBによるフルHD/60FPSの録画)について平均値を比較しています。
またPCMark10 Storage Benchmarkと同様に、各ストレージは空き容量が半分前後になるようにデータを書き込んだ状態で測定を行っています。
3DMark -Storage-Benchmarks

3DMark Storage Benchmarkのトータルスコアについて、「WD_BLACK SN850X 8TB」やその他ストレージの比較は次のようになっています。
WD_BLACK SN850X 8TB_3DM-SB_1

3DMark Storage Benchmarkの総合スコアには、プレイデータのセーブ、PCゲームのインストール/移動は実用面で優先度が低いテストの結果も含まれるので、ここからはPCゲーム用ストレージとして優先度の高い個別テストを抜粋して見ていきます。

3DMark Storage BenchmarkのBattlefield V ゲームロード速度について、「WD_BLACK SN850X 8TB」やその他ストレージの比較は次のようになっています。
WD_BLACK SN850X 8TB_3DM-SB_2

3DMark Storage BenchmarkのCall of Duty Black Ops 4 ゲームロード速度について、「WD_BLACK SN850X 8TB」やその他ストレージの比較は次のようになっています。
WD_BLACK SN850X 8TB_3DM-SB_3

3DMark Storage BenchmarkのOverwatch ゲームロード速度
について、「WD_BLACK SN850X 8TB」やその他ストレージの比較は次のようになっています。
WD_BLACK SN850X 8TB_3DM-SB_4

3DMark Storage Benchmarkのプレイ動画録画性能について、「WD_BLACK SN850X 8TB」やその他ストレージの比較は次のようになっています。
WD_BLACK SN850X 8TB_3DM-SB_5


DirectX 12のDirectStorageに代表されるPCゲーム向け高速ストレージアクセスAPIに対応したPCゲームにおけるロード性能については、実際の比較検証結果を元に解説しているので、こちらの記事を参照してください。
ゲーム向け高速ストレージAPIを使用しない従来式のゲームの傾向についても、2020年から2021年頃の検証ですが比較データを使って解説しています。


結論だけ言ってしまうと、DirectStorageのサポートの有無によってNVMe SSDとSATA SSDでは大幅な性能差がありますが、PCIE3.0~5.0の帯域、TLC NANDとQLC NAND、DRAMキャッシュの有無による差は確認できませんでした。
マイナーメーカーのそもそもSSD性能が怪しい製品とかになると保証もできませんが、Micron(Crucial)、Samsung、SK Hynix(Solidigm)、WD辺りの大手メーカー製品で、NVMe SSDであれば、DirectStorage対応ゲームのロード時間はほぼ同じになると思います。ブラインドで見分けられる差でないことは確かです。
DirectStorage対応タイトルはまだ少ないですが、これからゲーム用ストレージを購入するのであれば、PCIE4.0対応NVMe M.2 SSDが性能と容量単価のバランスも良く、ベストだと思います。


今回はPC環境における性能を検証しましたが、同じくNVMe M.2 SSDを使用するPlayStation 5の拡張スロットによるストレージ増設についてはこちらの記事で詳細を解説しています。気になる方は参照してみてください。




WD_BLACK SN850X 8TBのレビューまとめ

最後に「WD_BLACK SN850X 8TB」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ
  • 最大性能で連続読み出し7.2GB/s、連続書き込み6.6GB/s (8TBモデル)
  • PCMark10や3DMarkの実用性能ベンチでハイエンドPCIE4.0 SSDらしい性能
  • 超大容量な8TBモデルでも1TBや2TBの標準的な容量モデルと同等の性能を維持
  • PlayStation5の拡張スロットに使用可能なPCIE4.0対応NVMe M.2 SSD
    PS5の拡張スロットに互換サイズのヒートシンク搭載モデルもラインナップ
  • SLCキャッシュは100GB以上を使用でき、使用後の開放も速い
  • メーカー正規保証期間が5年間、保証条件のTBWは容量1TBあたり600TB
悪いところor注意点
  • 4TBモデルと8TBモデルは両面実装
  • 税込み12~13万円と非常に高価(2024年11月現在)
  • TLC型なのでSLCキャッシュ超過後に速度低下が発生する
    キャッシュ容量は空き容量依存(詳細)で、超過後の書き込み速度は1200MB/s程度
  • ASPM有効でもアイドル時の消費電力がやや高め

「WD_BLACK SN850X 8TB」を検証してみたところ、CrystalDiskMarkなど基礎的な各種ベンチマークでは仕様値通り、連続読み出しで7.2GB/s、連続書き込みで6.6GB/s前後というハイエンドPCIE4.0対応NVMe SSDとして理想的な性能です。

8TB容量のSSDとして先行して発売されていたPHISON PS5018-E18 メモリコントローラーを採用する製品は1TBや2TBの標準的な容量モデルと比較して、PCMark10や3DMark、ファイルコピーといった実用性能テストで大きくスコアを落とす傾向にあったのですが、「WD_BLACK SN850X 8TB」は実用性能系ベンチでも性能低下はなく、同シリーズの1TB/2TBモデルと同等以上の性能を発揮します。

実用性能系ベンチと言いつつ、PHISON PS5018-E18の8TBモデル程度のベンチスコアがあれば実用的には十分だったりするのですが、8TBの超大容量SSDは非常に高価なので、やはり目に見えるベンチスコアで多少なりともモヤッとすることがないのは購入を検討する上で助かると思います。

1つのSSDで8TB容量というのが「WD_BLACK SN850X 8TB」の最大の魅力です。
動画編集等のクリエイティブタスク用PCのデータストレージとして、また最近ではNVMe M.2 SSDに対応したNASも増えてきているので、そういった用途で超大容量なSSDを探している人に是非検討して欲しい製品です。

「WD_BLACK SN850X 8TB」にはTLC型3D NANDメモリが採用されているので、多くのTLC型SSDと同様の特徴が大容量書き込み時にでており、空き容量によって容量可変なSLCキャッシュを超過すると、平均1200MB/s程度まで書き込み速度は低下します。

「WD_BLACK SN850X 8TB」は基本的に100GB以上のSLCキャッシュを使用でき、使用済みSLCキャッシュの開放も速いので、実用的にSLCキャッシュ超過による性能低下で不便を感じることはないと思います。


以上、「WD_BLACK SN850X 8TB」のレビューでした。
WD_BLACK SN850X NVMe SSD 8TB with Heatsink



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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)



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