Intel Arc Graphicの第1弾となるAシリーズのハイエンドモデル Arc A750搭載グラフィックボードとして玄人志向からリリースされた、全長225mmのショートモデル「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」をレビューしていきます。
製品公式ページ:https://www.kuroutoshikou.com/product/detail/ar-a750d6-e8gb-df.html
キャンペーン:https://www.kuroutoshikou.com/campaign/detail/intelarc-game-bundle-202307.html
玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF レビュー目次
1.玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DFの外観
2.玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DFの分解
3.玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DFの検証機材・GPU概要
4.玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DFのゲーム性能
5.玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DFの温度・消費電力・ファンノイズ
6.玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DFのレビューまとめ
玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DFの外観
早速、「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」を開封していきます。
「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」にはIntel Arcシリーズ ゲームバンドルキャンペーンのマスターキーコードが同封されています。
Intelの専用サイト Software Advantage Programでユーザー登録し(Googleアカウント等との連携でもログイン可能)、上記マスターキーを有効化すると、Ghostbusters: Spirits Unleashed(Epic Games)やGotham Knights(Steam)のゲームを受け取ることができます。なお同マスターキーの有効期限は8月31日までなので、入手した人は早めに有効化してください。
「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」のグラフィックボード本体を見ていきます。
「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」のGPUクーラー外装は黒色プラスチック製です。
クーラーやバックプレートの隙間から見える青色のPCB基板にIntel製GPUを搭載したグラフィックボードだと感じさせられます。
「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」は全長222mmです。グラフィックボード設置スペースに制限のあるメーカー製PCのアップグレードにも最適なサイズです。
「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」は標準的な全長に加えて、PCIEブラケットからはみ出す高さ方向も+5mm程度に収まっており、PCケースサイドパネルとの干渉についても心配はありません。
「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」のGPUクーラーには90mmサイズファンを2基搭載しています。また冷却ファンにはファンノイズを抑えつつ高い静圧&風量を得ることが可能なバリアーリング搭載冷却ファンが採用されています。
「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」は定格でTGP225WのIntel Arc A750を搭載したグラフィックボードとなっており、GPUの発熱は従来のハイエンドGPU一歩手前ですが、PCIEスロットの占有は2スロットぴったりに収まっています。
「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」の補助電源数はPCIE 8PIN×2です。
「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」のビデオ出力はHDMI2.0×1、DisplayPort2.0×3の4基が実装されています。
Intel純正のLimited Editionと違って、「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」はHDMI2.1に非対応なので注意してください。
DisplayPortビデオ出力は下位互換があるのでDisplayPort1.4(DSC)によって4K/144Hz/HDR 10bit RGB/VRRに対応しますが、HDMI接続時は4K/60Hzが上限となります。また現時点ではIntel Arc Controlにカラーフォーマットの設定項目がないため、10bit YUV422を使用できず、HDR表示では8bit RGBとなります。
Arc Controlの最新バージョンでは可変リフレッシュレート同期(VRR)の切り替えも、アプリケーション上で切り替えが可能になっています。
補足すると、Arc AシリーズのXe Display EngineがネイティブサポートするのはDisplayPort2.0とHDMI2.0bです。
HDMIポートにXe Display Engineが直接接続されていて接続規格がHDMI2.0bの場合、ビデオ出力可能な解像度の上限は4K/60Hz/SDR 8bit RGBや4K/60Hz/HDR 10bit YUV422になります。
一部製品では、DP2.0 to HDMI2.1のプロトコルコンバーターを追加実装することで、HDMIポートから4K/120Hz/HDR 10bit RGBなどHDMI2.1のビデオ出力に対応しています。
Intel純正のLimited Editionはこの方法でHDMIポートがHDMI2.1に対応していますが、AIBモデル次第ではHDMIポートのサポート規格がHDMI2.1ではなくHDMI2.0bの可能性もあるので注意してください。
「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」には黒色の金属製バックプレートが搭載されています。
基板の反りや破損を防止する保護プレートとしての役割を果たしますが、VRM電源回路やVRAMチップとの間にはサーマルパッドが貼られていないので冷却補助の機能はありません。
グラフィックボードの重量はIntel Arc A750 8GB Limited Editionが1062g、Intel Arc A770 16GB Limited Editionが584gに対して、玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DFは722gでした。
玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DFの分解
「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」を分解してGPUクーラーやグラフィックボード基板についてチェックしていきます。
なお今回は自己責任で(もしくはレビュー用サンプル貸出先の協力のもと特別に許可を頂いて)分解を行っています。GPUクーラーの取り外し(分解行為)は、一部を除く多くのメーカーではグラフィックボードの正規保証の対象外になる行為です。今回はレビューのために分解していますが、繰り返しますが保証対象外になるので基本的には非推奨の行為なのでご注意下さい。
【暇があれば更新予定】
玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DFの検証機材・GPU概要
外観やハードのチェックはこのあたりにして早速、「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」を検証用の機材に組み込みました。テストベンチ機の構成は次のようになっています。
テストベンチ機の構成 (ゲーム性能検証) |
|
OS | Windows11 Home 64bit |
CPU | Intel Core i9 13900K (レビュー) |
CPUクーラー | Fractal Design Celsius S36 (レビュー) Noctua NF-A12x25 PWM (レビュー) |
メインメモリ | G.Skill Trident Z5 RGB F5-7200J3445G16GX2-TZ5RK DDR5 16GB*2=32GB (レビュー) 7200MHz, 34-45-45-115 |
マザーボード | ASUS ROG MAXIMUS Z790 HERO (レビュー) |
システムストレージ | Samsung SSD 990 PRO 1TB (レビュー) |
ゲームストレージ | Samsung SSD 870 QVO 8TB (レビュー) |
電源ユニット | Corsair HX1500i (レビュー) |
ベンチ板 | STREACOM BC1 (レビュー) |
ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 990 PRO 1TB」を使用しています。
Samsung SSD 990 PROは、PCIE4.0対応SSDで最速クラスの性能を発揮し、なおかつ電力効率は前モデル980 PRO比で最大50%も向上しており、7GB/s超の高速アクセスでも低発熱なところも魅力な高性能SSDです。 これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
・「Samsung SSD 990 PRO 1TB」をレビュー。性能も電力効率もトップクラス!
検証機ではシステムメモリとして、Intel第13世代CPU向けメモリとしては4xメモリスロットのマザーボードでも動作可能な最速クラスの製品、メモリ周波数7200MHz/CL34の高メモリクロックかつ低レイテンシなメモリOCに対応した「G.Skill Trident Z5 RGB(型番:F5-7200J3445G16GX2-TZ5RK)」を使用しています。
G.Skill Trident Z5シリーズはIntel XMP3.0のOCプロファイルに対応した製品となっており、6000MHzの定番設定なモデルもあり、Intel第13世代CPUで高性能なPCを構築するお供としてオススメのOCメモリです。
ARGB LEDイルミネーションを搭載したバリエーションモデル G.Skill Trident Z5 Neo RGBもラインナップされています。
・「G.Skill Trident Z5 RGB」をレビュー。XMPで7200MHz OCに対応!
玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DFのGPU概要
「Intel Arc A750 8GB」のスペックについて簡単に確認しておきます。
「Intel Arc A750」は28基のXe-Coresを搭載し、AMD/NVIDIA製GPUでシェーダー数として数えられることの多いFP32演算ユニットを3584基搭載しています。またIntel製CPUのXe内蔵グラフィックスで言うところのEU数はXMX Enginesに当たり448基です。
GPUコアクロックは2050MHz、グラフィックメモリとして最新のGDDR6メモリを8GB容量搭載しています。メモリ速度は16.0Gbps、バス幅が256-bitなのでメモリ帯域は512GB/sとなります。
グラフィックボード全体の典型的な消費電力を示すTBPは225Wで、PCIE補助電源として8PIN×1&6PIN×1以上を要求します。
「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」の公式仕様ではファクトリーOCが施されており、コアクロックはブースト2200MHzとのことでしたが、GPU-ZやArc Controlで確認可能なコアクロックの設定値はリファレンス仕様と同じく2050MHzでした。
またGPUコア単体の電力制限は180Wに設定されています。Arc A750 8GBにおいてグラフィックボード全体の消費電力の仕様値TGPは225Wですが、Intel純正のLimited Editionは190Wが電力制限の設定値だったので、それよりも低い設定値というのは不思議です。
Intel Arc GPU専用のコントロールソフトウェア Arc Control上からGPU動作設定は変更可能であり、つまりOCに対応しています。
「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」の場合は、GPUパフォーマンスブースト(VFカーブを調整してコアクロックを引き上げるパラメータ)を定格の0から最大で100に、ターゲットGPU電圧を最大で+257mV、GPUコア電力制限を最大で216Wに変更できます。
Intel Arc AシリーズはグラフィックスエンジンXe-Core内にレイトレーシング専用実行ユニットを搭載しています。
GeForce RTX 30シリーズやRadeon RX 6000シリーズと同様に、DirectX Raytracing(DXR)などのレイトレーシング表現に対応したゲームをプレイできます。
レイトレーシング表現では、照明や光源(エリアライト)や太陽光(グローバルイルミネーション)の影響を厳密に再現し、光の反射や透過も現実に即して忠実に描写されます。
レイトレーシングを採用したわかりやすい例としては鏡に映る反射など、視覚(視点から見た)の外にある物体もリアルに描画することができます。小さい光源や太陽光などが生み出す影、反射によって生まれる光が現実に対して忠実に再現されるので、画面の中に引き込まれるような奥行き、陰影を感じる映像が生まれます。
なお高画質機能 Raytracing(レイトレーシング)はMicrosoftが提供するAPI”DirectX 12”内包されるDirectX Raytracing(DXR)を使用したレンダリング機能となっており、後述のDLSSと違ってNVIDIA独自技術というわけではなく、AMD/Intel製グラフィックボード、PlayStation 5やXbox Series S/Xといったコンソールゲーム機にも互換性のある機能です。
下はPlayStation 5のMarvel’s Spider-Man Remasteredでレイトレーシング表現のオン/オフを比較したものですが、オフでは鏡面になっている窓ガラスにスパイダーマンの身体の鏡像がないだけでなく、風景の反射も反対側と比較してデタラメなのが一目瞭然です。
加えてIntel Arc Aシリーズに実装されたAI支援ハードウェアによるIntel独自の超解像技術XeSS(Xe Super Sampling)にも対応しています。
Intel XeSS自体はネイティブでフルHD~WQHD、もしくはそれ以下の低解像度なレンダリングをWQHD~4Kの高解像度へアップスケールする機能です。
高画質アンチエイリアス技術として一般的なTAAと比較してフレームレートが大幅に向上するだけでなく、画質も改善するという一挙両得な高画質化機能になっています。
Intel Arc AシリーズGPUにおいてハイエンドモデルのIntel Arc A770でも、ネイティブレンダリングの場合レイトレーシング表現を有効にして60FPS以上をキープできるのはフルHD解像度までですが、超解像技術XeSSを組み合わせることでWQHD解像度にも対応できるようになります。
また、AI超解像というとNVIDIA DLSSやAMD FSRといった競合メーカーの技術がすでに広く認知されていますが、NVIDIA DLSSはGeForce RTXの専用ハードウェアを必須とし、一方、AMD FSRは他社製GPUでも汎用的に使用できる機能です。
Intel XeSSは専用ハードウェア(Arc GPUグラフィックスエンジンに実装されたXMXハードウェアアクセラレーション)によってより高度なアップスケールを可能としますが、最新のDP4a命令をサポートしている必要(NVIDIAではGTX10以降)はあるものの他社製GPUでも利用できるという、競合メーカーの超解像技術から良いとこ取りをしたような実装がされています。
3Dグラフィックス以外にもIntel Arc Aシリーズは大きな特徴として、内蔵ビデオプロセッサとしてXe Media Engineを搭載し、現在最も普及しているH.264、圧縮効率に優れた次世代規格として期待されているHEVCとAV1の3種類について全てハードウェアによるエンコードとデコードをサポートしています。
2023年1月現在、AV1ハードウェアエンコードはNVIDIA GeForce RTX 40やAMD Radeon RX 7000の次世代GPUもサポートしていますが、いずれも10万円を大幅に超える高価なGPUとなっており、5~6万円の価格帯で対応するIntel Arc A770/A750は貴重な存在です。
専用ソフトウェアArc Controlについて
Intel公式ページで配布されている「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」などに対応するArc GPU用ドライバには、GPU動作設定やゲーム画面の録画・配信が可能な専用コントロールソフトウェア Arc Controlが含まれています。
NVIDIA GeForceとAMD RadeonではWindowsデスクトップのウィンドウアプリとオーバーレイアプリが混在していますが、Intel ArcのArc Controlは全ての設定が1つのアプリケーションに統一されています。
Arc Controlの表示方法は登場当初、オーバーレイに固定されていましたが、2023年7月現在の最新バージョンではデスクトップウィンドウが標準設定となっており、オプションとしてオーバーレイにも切り替えが可能です。
Arc Controlはすでに日本語ローカライズもしっかりしているので、UI操作で困ることはないと思います。
パフォーマンスタブではGPU温度などモニタリング情報のオーバーレイ、GPU動作設定の変更(オーバークロック)の設定が可能です。
スタジオタブでは、ブロードキャストからTwitchやYoutubeへ直接ライブストリーミングが可能であり、キャプチャーならPCストレージへプレイ動画を保存できます。
いずれもGPUのハードウェアエンコーダを使用するので、NVIDIA ShadowPlayやAMD Radeon ReLiveのように軽量動作となっておりゲームプレイへの影響は最小限です。
玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DFのゲーム性能
「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」の性能を測るべく各種ベンチマークを実行しました。性能比較には「Intel Arc A770 16GB」、「Radeon RX 6600 XT」、「GeForce RTX 3060 Ti」、「GeForce RTX 3060 12GB」を使用しています。
(特定のモデルや型番を指名していない場合、各GPUメーカーのリファレンスモデルもしくはリファレンス仕様のオリファンモデルです)
GPUが同じならオリファンモデル(ファクトリーOCやGPUクーラー冷却性能)による性能差は数%あるかどうかなので、今回は検証を割愛します。
Arc A750 8GBの個別ゲームタイトルに関する性能については、すでに公開中のArc A750 8GBのレビューを参照してください。
(2023年1月のドライバで検証した記事なので、最新ドライバだと多少、性能の向上や、ゲームタイトル固有の不具合が解消されているかもしれません。ただ、DX12/11のゲームで検証しているのでだいたいの傾向は一致するはずです。)
【以下、2023年1月3日公開のドライバ ver31.0.101.4032を使用した検証結果より】
Intel Arc A750 8GBは、現在ミドルクラスGPUとして国内外で主流なGeForce RTX 3060と比較して、フルHDは若干下回るものの、WQHDでは同等の性能を発揮しました。
やはり120FPS程度でもフルHD解像度のハイフレームレートで性能が伸びない辺り、ドライバに最適化や完成度の不足を感じます。
ゲームタイトル毎に得手不得手はあるので抜粋するタイトル次第なところもあるものの、『120FPS+のハイフレームレートは弱いが60FPSに近づくWQHDなら同等』というのがRTX 3060と比較した場合のIntel Arc A750 8GBの性能と言っていい結果だと思います。
今回検証した15タイトルにおいてドライバ ver31.0.101.4032で、明らかにプレイに支障がありそうなのはBattlefield V、スタッターが若干怪しいMarvel’s Guardians of the Galaxyという2タイトルはあったものの、ミドルクラスのゲーミングGPUとして通用する実用性は確認できました。
明らかに支障があるという程ではないものの、VRAM容量の使い方が悪く、同じ8GB容量のRTX 3060 Tiは問題ないのに、Arc A750 8GBはArc A770 16GBに対して性能を落とすケースもありました。
Marvel’s Guardians of the Galaxyはグラフィック設定を下げてもダメな例ですが、Forza Horizon 5やWatch Dogs LegionはGPU性能は十分なのにVRAM使用量の超過で性能を落としてしまう例です。
普通、フルHDやWQHDならVRAM容量が8GBもあれば十分なのですが、Arc A770/A750はドライバ最適化の影響を受ける可能性が高いので、どちらにしようか悩んでいるなら16GB容量のArc A770を選ぶのが無難です。
玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DFの温度・消費電力・ファンノイズ
玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DFの負荷時のGPU温度やファンノイズや消費電力についてチェックしていきます。
「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」のGPU温度とファンノイズの検証負荷としては約20分間に渡たり連続してGPUに100%近い負荷をかける3DMark TimeSpy(Extreme) Stress Testを使用しています。
「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」のテスト終盤におけるGPU温度は最大70度程度と標準的ですが、ファン速度は最大2300~2400RPMと高速です。ミドルクラスのグラフィックボードとしては標準的です。
「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」はアイドル時にファンが停止するセミファンレス機能に対応しているものの、ファン始動・停止の閾値に対してヒステリシスがないので50度を境にして始動と停止を数秒おきに繰り返してしまいます。あと短期的なファン速度の変動幅が大きいところも少々気になりました。
コンシューマー向けグラフィックボードを長らく製造していなかったSPARKLEがOEM元なので、近年の大手メーカー製に比べると粗が目立つ仕上がりです。
モニタリング可能だったので参考までにVRAM温度の推移グラフです。
GPUコアクロックについて、今回入手した「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」の負荷テスト中の実動平均は2304MHzでした。
【補足】
コアクロック比較グラフはAIBモデル別の優劣を決めるための比較ではなく、特定のGPUがだいたいどの程度のコアクロックで動作するのか確認するために掲載しています。
AMD、NVIDIAともに最新GPUでは実動コアクロックはGPUコア個体毎に異なる内部設定のV-Fカーブが最も支配的なファクターです。加えて負荷中のGPU温度も5~10度刻みでブーストクロックの制御に影響します。
そのため、ファクトリーOCが施されたオリファンモデルの公式仕様値として公表されているブーストクロックは各メーカー内におけるOC耐性選別という意味で1つの指標にはなると思いますが、実動コアクロックの優劣にはあまり当てになりません。
今回検証している個体Aが他社AIBと比較して実動コアクロックが低くても、市場製品の個体Bは高い、個体Cは同程度…のように、本当に御神籤状態です。
玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DFを含めていくつかのグラフィックボードについてサウンドレベルメーターを利用してゲーム負荷時のノイズレベルを測定・比較しました。
検証機材はベンチ台の上に平置きにしているので、サウンドレベルメーターをスタンドで垂直上方向に50cm程度離して騒音値を測定しています。
この測定方法において電源OFF時の騒音値は30dB未満です。目安として騒音値が35dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになりますが、35~38dB以下であればPCケースに入れてしまえばファンノイズが気になることはそうそうないと思います。40dB前後になるとベンチ台上で煩く感じ始め、45dBを超えるとヘッドホンをしていてもはっきり聞き取れるくらいになります。
A特性で測定しているのである程度は騒音値にも反映されていますが、同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質(細かい乱高下の有無や軸ブレ)にもよるので注意してください。
ノイズレベルの測定結果は次のようになっています。
「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」は、ベンチ板上の負荷テストにおいてファン速度が2300RPMと高速なので、ノイズレベルも39~40dB程度と比較的に大きくなっています。めちゃくちゃ煩いと感じるほどではありませんが、PCケースに組み込んでもファン動作がはっきりと認識できる程度のファンノイズは生じます。
上で紹介したストレステストの結果の通り、GPU温度的にはファン速度を下げる余裕があります。手動設定で1800RPM程度まで下げるとノイズレベルも35dB程度になりPCケースに組み込んだ状態ではファンノイズも気にならなくなるはずなので、標準設定でファンノイズが気になる人はArc Controlからファンカーブを調整してみてください。
玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DFの消費電力と瞬間的な最大電源負荷を測定しました。
グラフィックボードの消費電力測定には、当サイトの検証に使用するためワンオフで特注した測定ツール「GPU Power Tester」を使用しています。GPU Power TesterはPCIEスロット経由とPCIE補助電源の消費電力を直接に測定しているので、シンプルにグラフィックボードそのものの消費電力をしることができます。
消費電力の測定にあたって検証するGPUランクによって負荷を変えており、通常はTime Spy(Extreme) グラフィックテスト1、一部のウルトラハイエンドGPUにはPort Royal 4K(GPU名に*マークを併記)をループ再生させ、各GPUがMaxTGPに張り付く状態を検証しています。
テスト全体から1ms間隔でモニタリングを行い、平均値を”消費電力”、最大値を”瞬間的な最大電源負荷”とします。
玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DFの消費電力は256W、最大瞬間負荷は299Wでした。
やはりGeForce RTX 3060/TiやRadeon RX 6600 XTといったミドルクラスかつ同世代の競合GPUと比較すると消費電力が大きく、ワットパフォーマンスには劣ります。
GPUコアクロックについては上で説明しているような事情(GPU個体差の影響が大きい)があるのですが、「玄人志向AR-A750D6-E8GB/DF」はグラフィックボードの消費電力が高く、メーカー公式ページでも”OCモデル”であるとの表記にもかかわらず、Intel純正のLimitedEditionよりもコアクロックが低いというのは正直なところ解せない仕様です。
3DMark TimeSpyで簡単に確認してみても、やはり「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」は5%弱ではあるものの、Intel純正のLimitedEditionより低い性能でした。
ちなみにIntel Arc A-SeriesはBIOS設定でPCIEの省電力機能ASPMを有効にし(下のスクリーンショットはASUS製Z790マザーボードの場合)、Windows OSの電力プラン詳細設定からPCIE-リンク状態の電源管理を”最大限の省電力”に変更することで、アイドル時の消費電力を下げることが可能です。
ただしアイドル時といっても、画面だけ表示して全く操作しない状態のこととなっており、少しエクスプローラーを動かすだけでも、非ASPM有効時同様に40~50W程度の消費電力になります。またデスクトップ解像度が4K/120Hzなど一定以上の高解像度・高リフレッシュレートの場合はASPMを有効にしても消費電力が下がりません。
シャットダウン・スリープを行わず、使用しない時もPC電源をつけっぱなしでその時の消費電力をさげたいとか、ハードウェアエンコーダ用にセカンダリGPUとして搭載しているとか、一定条件を満たさないのであれば、あえてASPMを有効化する意味はない気がします。
玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF レビューまとめ
最後に「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。
良いところ
- Intel Arc AシリーズGPUの中では上位のハイエンドモデル
- フルHD~WQHDのPCゲーミングに対応可能、現行世代では相対的にミドルクラス相当のGPU
- RTX 3060 12GBと比較してWQHDでは同等の性能、フルHDでは若干下回る(タイトル次第)
- AI超解像XeSSにより4K解像度やレイトレ&WQHD改造に対応
- 高圧縮かつ高画質な次世代コーデックAV1のハードウェアエンコードに対応
- 黒色ベースのシンプルデザインなGPUクーラー
- 2スロット占有、長さ222mmのコンパクトサイズ
- TGP225WのArc A750をノイズレベル40dB以下で十分冷やせるGPUクーラー
- 国内販売価格は税込み2.2万円程度(ただし数量限定)
悪いところor注意点
- NVIDIA/AMDと比較してドライバの不具合や最適化不足が目立つ
NVIDIA/AMDなら問題ないシーンで、8GB容量あってもVRAM不足になることがある - 同等性能のAMD/NVIDIA製GPUと比較して消費電力が大きい
- 標準設定ではファンノイズが大きめ
Intel Arc A750 8GBは、現在ミドルクラスGPUとして国内外で主流なGeForce RTX 3060と比較して、フルHD解像度では若干下回るものの、WQHD解像度では同等という性能を実現しています。フルHD~WQHDの解像度で近年の最新PCゲームをプレイするには十分なGPU性能です。
120FPS程度でもフルHD解像度のハイフレームレートで性能が伸びない辺り、ドライバに最適化や完成度の不足を感じます。また今回検証した15タイトル中ではプレイに支障がありそうなものも2つありましたが、一応、ミドルクラスのゲーミングGPUとして通用する実用性は確認できました。
今後登場が期待されるBシリーズ、Cシリーズと世代を重ねれば、AMD/NVIDIAの競合製品として安定性の面でも対抗できそうなポテンシャルは十分に感じます。
ゲーミングPC初心者には実績と安定性を兼ね備えたRTX 3060/TiやRX 6600 XTが推奨ですが、Intel Arc A750はAV1エンコード対応といった独自の魅力もあるGPUなので、サブマシン等で挑戦してみる分には面白い製品だと思います。
なおA770とA750のGPU性能の差そのものは10%未満ですが、ドライバ最適化不足の影響で8GB容量あってもVRAM超過による性能低下が発生することがあります。A770とA750のどちらにするか迷っているなら+1万円ですがVRAM容量16GBのA770が推奨です
3Dグラフィックス以外にもIntel Arc Aシリーズは大きな特徴として、内蔵ビデオプロセッサとしてXe Media Engineを搭載し、高画質かつ高圧縮な次世代コーデックAV1のハードウェアによるエンコードとデコードをサポートしています。
2023年8月現在、AV1ハードウェアエンコードはNVIDIA GeForce RTX 40やAMD Radeon RX 7000の次世代GPUもサポートしていますが、ミドルクラスでも4万円を超える比較的に高価なGPUとなっており、安いモデルなら2万円~の価格帯でAV1エンコードに対応するIntel Arc A770/A750は貴重な存在です。
「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」のGPUクーラーについては、TGP225WのArc A750(実際の消費電力は250W超)にフル負荷をかけ続けても、GPU温度は70度前半に収まり、なおかつ同測定環境においてノイズレベル40dB以下というそこそこの静音性を発揮しました。
「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」のGPUクーラーはメチャクチャ煩い、というわけではないものの、近年の大手メーカー製グラフィックボードと比較すると劣るというのが正直なところです。
OEM元のSPARKLEが10年ほどコンシューマー向けグラフィックボードの製造から遠ざかっていただけあって、GeForce GTX 700/900シリーズ頃のアッパーミドルクラス製品を思い出す感じです。
セミファンレス機能も一応対応していますが、閾値温度のヒステリシスがないせいで数秒置きに始動と停止を繰り返すとか、設計に粗が目立ちますし。
数量限定なのですでに入手が難しいものの、税込み2.2万円程という価格がそもそも破格です。さらにゲーム・ソフトウェアバンドルがあるので、実質タダはやや誇張ですが、Ghostbusters: Spirits Unleashed(Epic Games)やGotham Knights(Steam)のゲームを持っていないなら半額くらいになるのはガチです。
ゲーム性能で説明した通り、ゲーミングPC入門や自作PC初心者向けではありませんが、オモチャとしての2台目や、AV1ハードウェアエンコード用のセカンダリGPUとして使うなら安くていい製品だと思います。
以上、「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」のレビューでした。
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Intel Arc A750 8GB搭載、全長222mmのショートモデル「玄人志向 AR-A750D6-E8GB/DF」をレビュー。
数量限定ながら2.2万円で買えて、1万円分以上のゲームバンドル+αまで付くArc A750オリファンモデルの冷え具合をチェック。https://t.co/2yD21jiIpv pic.twitter.com/jz2FJSH0bi— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) August 4, 2023
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