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高性能ファンNF-A12x25 PWMを2基搭載し、ヒートパイプ7本&フィン面積37%増で140サイズ空冷並みの冷却性能を実現したNH-U12Aのフルブラックモデル「Noctua NH-U12A chromax.black」をレビューします。
標準モデルの発売から2年、ついに登場したフルブラックモデルをCore i9 12900KやRyzen 9 5950Xなど2021年最新CPUを使用して冷却性能を徹底検証します。
製品公式ページ:https://noctua.at/en/nh-u12a-chromax-black
互換性ガイド:https://ncc.noctua.at/coolers/NH-U12A-chromax.black-83
レビュー目次
1.Noctua NH-U12A chromax.blackの梱包・付属品
2.Noctua NH-U12A chromax.blackのヒートシンク
3.Noctua NH-U12A chromax.blackの冷却ファン
4.Noctua NH-U12A chromax.blackの外観
5.Noctua NH-U12A chromax.blackの検証機材・セットアップ
6.Noctua NH-U12A chromax.blackの各種クリアランス
7.Noctua NH-U12A chromax.blackの冷却性能
8.Noctua NH-U12A chromax.blackのレビューまとめ
補足.空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて
【機材協力: Noctua国内正規代理店 サイズ】
Noctua NH-U12A chromax.blackの梱包・付属品
まずは「Noctua NH-U12A chromax.black」の外観や付属品をチェックしていきます。Noctua製CPUクーラーというと白とブラウンのカラー刷りパッケージのイメージが強いですが、オールブラックのchromax.blackシリーズはパッケージもオシャレな黒色になっています。
「Noctua NH-U12A chromax.black」のパッケージの蓋は上開きです。CPUクーラー本体と付属品は全て個別の箱に小分けされ、パッケージを開くと最初に付属品用の箱が現れます。
CPUクーラー本体は茶色段ボールのスペーサーに収められており、CPUクーラー本体を保護する段ボールは簡単な組み立て式です。各種付属品は内容品一覧が天面にプリントされた小分けパッケージに収められています。
付属品用パッケージにはCPUクーラーマウントパーツ、ファンクリップ、分岐ケーブルなど「Noctua NH-U12A chromax.black」の付属品が一通り入っています。
マニュアルは各種プラットフォームに合わせた冊子が付属します。
「Noctua NH-U12A chromax.black」のCPUクーラーマウントパーツのうち、Intel製CPUプラットフォーム用は次のようになっています。
Intel LGA1700/LGA1200等で使用するバックプレート(NM-IBP4)、スクリューピラー(NM-IBT5)、固定クリップ(NM-ICS1)、Intel LGA1700用の青色プラスチックスペーサー(NM-IPS3)、Intel LGA1200用の黒色プラスチックスペーサー(NM-IPS1)、Intelプラットフォーム用マウントバー(NM-IMB3)、ローレットナット(NM-ITS1)、Intel LGA2066用スタンドオフスクリュー(NM-IBT2)が付属しています。
AMD製CPUプラットフォーム用は次のようになっています。
AMD AM4用のグレー色プラスチックスペーサー(NM-APS4)、AMD AM3用の白色プラスチックスペーサー(NM-APS5)、AMDプラットフォーム用マウントバー(NM-AMB8)、マウントバー固定ネジ(NM-ALS1)が付属しています。
Noctua製CPUクーラーには78mmと83mmの2種類のピッチ(リテンションの幅)があり、「Noctua NH-U12A chromax.black」は78mmピッチなので、マウントバーについてはIntelプラットフォーム用マウントバー(NM-IMB3 v3)、AMDプラットフォーム用マウントバー(NM-AMB11)の2種類が付属します。
chromax.blackシリーズのCPUクーラーはマウントバーもカラーリングが黒色で統一されています。
マウントパーツ以外の付属品は、同社製熱伝導グリス「NT-H1」、PWM対応4PINファン端子2分岐Y字ケーブル「NA-YC1」、ファンを低速で動作させるための降圧変換ケーブル「Low Noise Adapter NA-RC14」*2、L字型プラスドライバー、エンブレムバッジシールでした。
詳しくは後ほど紹介しますが、CPUクーラー本体を簡単にチェックしておきます。
Noctua NH-U12A chromax.blackは120mmサイズの冷却ファンをヒートシンクの前後に搭載していますが、基本的な見た目には標準的なサイドフロー型のCPUクーラーです。
Noctua製空冷CPUクーラーというとシルバーのニッケルメッキで防錆処理された独特の光沢が目を引くのですが、「Noctua NH-U12A chromax.black」ではアルミニウム製放熱フィンにマットなブラックコーティングが施されています。空冷CPUクーラー一筋なNoctuaだけあって黒色塗装による冷却性能の低下はないとのこと。
「Noctua NH-U12A chromax.black」の重量を確認してみたところ、ヒートシンク本体に2基の付属ファンを装着した重さは1146gでした。ちなみにヒートシンク単体の重さは742gでした。
「NH-U12A」の標準モデルは1144gなので、標準モデルとChromax版で重さに大きな違いはないようです。また同社の120mmサイズスタンダードモデル「Noctua NH-U12S」は723g、150mmラウンドフレームファン搭載ハイエンドモデル「Noctua NH-D15」は1302gです。
Noctua NH-U12A chromax.blackのヒートシンク
続いて「Noctua NH-U12A chromax.black」のヒートシンクをチェックしていきます。Noctua NH-U12A 標準モデルのヒートシンクの放熱フィンは一般的なアルミニウム製で、標準モデルではシルバーのニッケルメッキ表面処理が施されていましたが、「Noctua NH-U12A chromax.black」には冷却性能を損なわないマットブラック塗装が施されています。造形についてはNoctuaらしい質実剛健な工業製品的な美しさを全面に押し出したデザインです。
PCケースのサイドパネル側から見える放熱フィン上部にはメーカーロゴのNoctuaが刻印されています。
ヒートシンクの放熱フィンはベースコアを中心にして左右方向には対称な形状ですが、前後方向にはオフセットされており、Intel LGA115XやAMD AM4などCPUソケットの片側にメモリスロットがある環境において、ヒートシンク付きメモリと干渉し難い構造です。
放熱フィンのフィンピッチは狭すぎず広すぎずなちょうどいい塩梅で低速から高速まで幅広い冷却ファン動作に対応可能なピッチが採用されていました。側面は放熱フィンの末端が折り曲げ加工によって平面化されており、フィンを手で持った時に指を切る心配もありません。
ニッケルメッキの施された銅製ベースコアからは同じくニッケルメッキ銅製のヒートパイプが左右へ7本ずつ計14本伸びています。
「Noctua NH-U12A chromax.black」のベースコアプレートはニッケルメッキの銅製です。この部分には流石に黒色塗装は施されておらず、メッキもブラックニッケルではなく、普通に銀色です。
CPUクーラーヒートスプレッダとの接触面積を最大化するため、ベースプレートの表面は平滑化されていますが、「Noctua NH-U12A chromax.black」ではやや磨き跡も見え、完全な鏡面にはなっていませんでした。
ちなみに2016年にレビューしたNH-D15標準モデルや、2019年にレビューしたNH-U12Aは綺麗な鏡面でした。海外レビューを見ても「Noctua NH-D15 chromax.black」のベースプレートは鏡面ではないようなので、これが仕様のようです。
Noctuaがすることなので、冷却性能的には大差ないということでしょうか。
「Noctua NH-U12A chromax.black」の銅製ベースプレートのサイズは縦38mm×横40mm程度となっており、縦長になったIntel第12世代CPUのIHSも余裕を持ってカバーできる大きさです。
「Noctua NH-U12A chromax.black」をマザーボードに固定するためのリテンションには同社独自の簡単かつ安定した固定が可能な「SecuFirm2」という構造が採用されています。
「Noctua NH-U12A chromax.black」にはIntel/AMDの各種プラットフォームで共通して使用するリテンションブラケットが標準で装着されています。スプリング付きスクリューが装着されており、付属のL字型ドライバーを使用して簡単かつ適切にCPUクーラーを装着可能となっています。
NH-U12Sのヒートシンクと比較してみると、同じシングルタワータイプの空冷CPUクーラーながら「Noctua NH-U12A chromax.black」のヒートシンクは厚みを増していることがわかります。また銅製ベースプレートがから伸びるヒートパイプの本数も1本1本の太さはそのままで5本から7本に増量しており、それに合わせて銅製ベースプレート自体も若干大型化しています。
同社がフラッグシップモデルに位置付けるNH-D15のヒートシンクと比較すると、やはりデュアルタワーのNH-D15に対して「Noctua NH-U12A chromax.black」はシングルタワーなのでコンパクトに見えます。ヒートパイプの本数も実はNH-D15が6本なので、7本の「Noctua NH-U12A chromax.black」のほうが多く、上と同様に銅製ベースプレートも若干大きいです。
Noctua NH-U12A chromax.blackの冷却ファン
「Noctua NH-U12A chromax.black」には冷却ファンとして、超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」の採用によってフレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現させた次世代汎用120mm口径ファン Noctua NF-A12x25 PWM chromax.blackが2基付属します。「Noctua NF-A12x25 PWM chromax.black」は定格2000RPMのPWM速度調整対応4PIN冷却ファンです。PWM速度調整によって450~2000RPMの範囲内で速度調整が可能です。また付属の低ファンノイズ変換アダプタ(L.N.A.)を接続すると降圧調整によって定格回転数が1700RPMに下がります。
Noctua製ファンというとベージュのファンフレームとブラウンのファンブレードのカラーリングが代表的で、『これぞNoctua!』という肯定的な意見もあれば、『ダサい、きたない』といった否定的な意見もある賛否両論なデザインでしたが、Noctuaが新たに投入したChromaxシリーズは従来機種と同じ仕様・性能のまま、万人受けしやすいブラックカラーで統一されています。
冷却ファンのサイズは汎用120mmファンと同じです。乱流の発生により静音化を向上させるファンブレードに刻み込まれた溝構造「Flow Acceleration Channels」も採用されています。
またファンフレーム内側を階段状のすり鉢形にする「Stepped Inlet Design」構造によって大風量の実現や、エア流れを最適化し静圧の改善やノイズの低減に寄与するそうです。ファンフレームの四隅には防振ラバーパッドが装着されており冷却ファンの振動による共振の発生を抑制します。
Noctua NF-A12x25シリーズではモーターハブが若干大型化され、中心部の材質をスチール製に、金色のアクスルマウントは真鍮製になっており補強が施されています。(Chromax版ではカバーに覆われていますが)
軸受けは従来機種でも採用されているNoctua第2世代「SSO2ベアリング」が使用され、さらに真鍮製CNCベアリングシェルによって軸ブレをなくし、高い耐久性が実現されています。
NF-F12 PWMでは直進整流効果が期待できる11枚羽の軸フレーム構造「Focused Flow frame」が採用されていましたが、「Noctua NF-A12x25 PWM」ではファンブレード回転方向と直交する向きに4本の軸フレームが伸びているシンプルな構造が採用されています。
「Noctua NF-A12x25 PWM」の最大の特徴は何といっても、0.5mmという限界に挑んだフレーム-ブレード間の隙間の小ささです。
この間隔が狭いほど漏れる空気は少なくなりエアの直進性も増すので、回転数に対する風量の効率が増し、静音性も向上するという、シンプルイズベストなアプローチになっています。
超硬質かつ軽量な新素材「Sterrox LCP」をファンブレードの素材として採用することによって、ファンブレード回転時の振動が軽減され、中心軸からぶれず、遠心力による変形が発生しないので、フレーム-ブレード間0.5mmの限界を実現しています。
冷却ファンのヒートシンクへの固定方法はサイドフローCPUクーラーとしては一般的な針金のファンクリップを使用する方式です。冷却ファンのネジ穴にファンクリップ左右端のU字部分を引っかけます。
あとはヒートシンクの溝にファンクリップ中央を引っかけるだけです。ファンクリップには中央に指をかけやすい凸形状があるので着脱も容易な構造になっています。
「Noctua NH-U12A chromax.black」にはPWM対応4PINファン2分岐ケーブルも標準で付属しているので、ヒートシンク前後に設置されるNF-A12x25 PWMのファン電源は1つの4PINファン端子から取得できます。
Noctuaからは「Noctua NH-U12A chromax.black」に付属するファンとほぼ同等品の「Noctua NF-A12x25 PWM chromax.black.swap」が単品で販売されているので保守部品の入手性についても心配ありません。
付属品と「Noctua NF-A12x25 PWM chromax.black.swap」の違いはファンから伸びるファンケーブルの構造だけです。「Noctua NF-A12x25 PWM chromax.black.swap」では延長ケーブル(標準で付属)を介した接続が前提になっています。
また追加要素として「Noctua NF-A12x25 PWM chromax.black.swap」には7種類でカラーバリエーション豊富な防振ゴムも付属しています。
Noctua NH-U12A chromax.blackの外観
ヒートシンクと冷却ファンの個別チェックも済んだところで、ヒートシンクへ冷却ファンを組み込んで「Noctua NH-U12A chromax.black」の完成状態の外観や寸法をチェックしていきます。Noctua NH-U12A chromax.blackは120mmサイズの冷却ファンをヒートシンクの前後に搭載していますが、基本的な見た目には標準的なサイドフロー型のCPUクーラーです。
冷却ファンが標準位置に配置されている場合は冷却ファンの方が最高位置が高く、「Noctua NH-U12A chromax.black」の全高は製品仕様通り158mmです。ヒートシンク自体は数mm程低くなっています。
Noctua NH-U12A chromax.blackの検証機材・セットアップ
「Noctua NH-U12A chromax.black」を検証機材のベンチ機にセットアップします。検証を行うベンチ機のシステム構成は次のようになっています。テストベンチ機の構成 | ||
CPU |
Intel Core i9 12900K (レビュー) |
AMD Ryzen 9 5950X (レビュー) |
M/B | ASUS ROG MAXIMUS Z690 HERO (レビュー) |
ASUS ROG Crosshair VIII Dark Hero (レビュー) |
メインメモリ | Kingston FURY Beast DDR5 KF552C40BBK2-32 (レビュー) 5200MHz, CL40-40-40-80-CR2 |
G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN (レビュー) 3600MHz, CL16-16-16-36-CR1 |
グラフィックボード |
MSI GeForce GT 1030 2GH LP OC ファンレス (レビュー) |
|
システム ストレージ |
Samsung SSD 980 PRO 500GB (レビュー) | |
OS | Windows10 Home 64bit | |
電源ユニット |
Corsair HX1200i (レビュー) | |
PCケース/ ベンチ板 |
STREACOM BC1 (レビュー) |
ベンチ機のシステムストレージには「Samsung SSD 980 PRO 500GB」を使用しています。Samsung SSD 980 PROは、PCIE4.0対応によって連続アクセススピードを最大で2倍に飛躍させただけでなく、ランダム性能の向上によってSSD実用性能においても前世代970 PROから大幅な向上を果たし、PCIE4.0アーリーアダプターなPhison PS5016-E16採用リファレンスSSDよりも高速なので、これからPCIE4.0対応プラットフォームの自作PCを組むなら、システム/データ用ストレージとして非常にオススメな製品です。
・「Samsung SSD 980 PRO 1TB」をレビュー。堂々の最速更新
CPUクーラーの設置方法について、当サイトの評価基準となるチェックポイントは次の3つです。
- LGA115Xの場合、CPU固定バックプレートが単独でマザーボードに固定できるか
- マウントパーツ設置状態でCPUを交換できるか
- 空冷の場合、ネジ止めの場合はマザーボード側から固定できるか
簡易水冷or水冷ブロックの場合、ハンドスクリューなどツールレス固定ができるか
上の3項目を全て満たす例として本格水冷用のCPU水冷ブロックですが「EK-Supremacy EVO」のマウンタ構造は「バックプレートをM/Bに固定可能」「完全ツールレス」「マウンタ設置状態でCPUの交換が可能」なので本格水冷・簡易水冷クーラーの水冷ブロック固定方式としてはベストだと思っています。水冷クーラーメーカーにはどんどん真似してもらいたい理想的な構造です。
「Noctua NH-U12A chromax.black」のCPUクーラー設置手順についてはNoctua公式からYouTube上で各プラットフォーム毎に動画が公開されているのでこちらを参照するのが一番わかりやすいと思います。
下の動画はIntel LGA1700のものですが、Intel LGA115X/1200やAMD AM4の取り付け動画もNoctua公式チャンネルで配信されています。
今回は検証環境の1つであるIntel Core i9 12900Kに対応するIntel LGA1700プラットフォームを例にして「Noctua NH-U12A chromax.black」の設置手順を簡単に紹介します。
「Noctua NH-U12A chromax.black」はマルチプラットフォーム対応CPUクーラーなのでマウントパーツの種類がいくつかありますが、Intel LGA1700プラットフォームでは下写真に写っている、Intelプラットフォーム用マウントバー、バックプレート、スクリューピラー、固定クリップ、青色プラスチックスペーサー、ローレットナットを使用します。
「Noctua NH-U12A chromax.black」に付属するIntelプラットフォーム用バックプレート(NM-IBP4)は、Intel LGA1700とIntel GA1200/115Xの共用となっており、スクリューピラーを固定する溝が2通り設けられています。
Intel LGA1700環境で使用する場合は、スクリューピラーを外側の溝に合わせて挿入し、スクリューピラーの底面とバックプレートを挟み込むように固定クリップを装着します。
4ヶ所全てでIntel LGA1700に合わせてスクリューピラーを装着したらバックプレートの組み立ては完了です。
なお、!マークが描かれている面がマザーボードと向かい合わせになる、スクリューピラーのネジ山が上になるようにバックプレートは使用してください。
バックプレートを組み立てたら、マザーボードを裏返してスクリューピラーをCPUソケット四隅のCPUクーラーマウントホールに挿入します。
バックプレートが脱落しないように注意してマザーボードを表に向け、Intel LGA1700用の青色プラスチックスペーサーを装着します。
あとはマウントバーを乗せてからローレットナットで固定したら、CPUクーラーヒートシンク本体を装着する下準備は完了です。
マウントパーツは単独でもマザーボードに固定されているので、CPUクーラーの設置が完了していない状態でもバックプレートなどが脱落することはなく、PCケースに設置した状態でもCPUクーラーの設置が容易です。
Intel LGA1700プラットフォームの場合、「Noctua NH-U12A chromax.black」のCPUクーラーヒートシンクの向きはマウントバーの設置に合わせて各自で選択できます。
一般的なメモリスロットからリアI/Oに風が流れる方向(Orientation A)でヒートシンクを設置する場合は、上の写真のようにマウントバーをCPUソケットの左右に装着してください。
「Noctua NH-U12A chromax.black」がサポートするAMD AM4プラットフォームのセットアップについてはNoctua公式のガイド動画に任せるとして、小ネタでオススメのアクセサリを紹介しておきます。
Noctuaの国内正規代理店サイズからは、他社ブランドの製品になりますが、俗にいう”スッポン”を防止するための保護フレーム「ProArtist IFE2」が発売されています。
グリスでCPUクーラーヒートシンクのベースプレートに熱伝導グリスで吸着してしまったCPU本体が、ヒートシンクの取り外しの際に一緒にとれてしまう現象”スッポン”を防止できます。
Noctua製ではなく他社製品になりますが、「Noctua NH-U12A chromax.black」などNoctua製空冷CPUクーラーとも互換性があるので、AMD AM4プラットフォームで組む時はオススメです。
水冷ヘッドをマザーボードに固定する準備はこれで完了したので熱伝導グリスをCPUのヒートスプレッダに塗布します。
熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。特にThermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスでCPUクーラー固定時の圧着で伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
熱伝導グリスを塗ったらCPUクーラーヒートシンクを乗せて、付属のL字型ドライバーでリテンションブラケットのネジ止めをします。
ファンクリップでヒートシンクに冷却ファンを装着したらNoctua NH-U12A chromax.blackの設置完了です。
Noctua NH-U12A chromax.blackの各種クリアランス
CPUクーラーの性能検証に入る前に、空冷CPUクーラーにはつきものである最上段PCIEスロットのグラフィックボードやヒートシンク搭載システムメモリとのクリアランス問題についてNoctua NH-U12A chromax.blackの事情をチェックしていきます。なお「Noctua NH-U12A chromax.black」についてはNoctua公式から詳細な互換性ガイドも掲載されているので、こちらも参照してみてください。
互換性ガイド:https://ncc.noctua.at/coolers/NH-U12A-chromax.black-83
PCIEスロットとのクリアランスについて
まずは「Noctua NH-U12A chromax.black」とマザーボードのプライマリグラフィックボード用PCIEスロットとのクリアランスについてチェックします。クリアランス検証には「Noctua NH-U12A chromax.black」が対応する主要プラットフォームから代表して、Intel LGA1700の「MSI MEG Z690 UNIFY」、Intel LGA1200/115Xの「ASUS WS X390 PRO」、AMD AM4の「ASUS ROG CROSSHAIR VIII Dark HERO」を使用しています。
Intel LGA1700環境ではCPUクーラーとグラフィックボードを設置するPCIEスロットの間隔の基準値として、左下CPUクーラーネジ穴の内周上端からPCIEスロットの上端までを測定して、「MSI MEG Z690 UNIFY」では約53.8mmです。
「MSI MEG Z690 UNIFY」において最上段のPCIEスロットにプライマリグラフィックボードを設置しても、「Noctua NH-U12A chromax.black」とグラフィックボードが干渉することはありませんでした。
CPUクーラーとグラフィックボードの間には約25.8mmほどまだ余裕があるので、各自で使用するIntel LGA1700系マザーボードにおいて、上で測定したCPUクーラーとPCIEスロットの間隔が約28mm以上あれば「Noctua NH-U12A chromax.black」を設置してもCPUクーラーとグラフィックボードの干渉は発生しません。
なおASUS製Z690マザーボードは冷却性能を重視してかなり巨大なVRM電源クーラーを搭載しているモデルが多く、一部モデル(特にROG STRIXシリーズ)ではCPUソケット上側のVRM電源ヒートシンクとCPUクーラーヒートシンクが干渉する可能性があります。念のため公式の互換性ガイドもチェックしておいてください。
Intel LGA1200/115X環境ではCPUクーラーとグラフィックボードを設置するPCIEスロットの間隔の基準値として、左下CPUクーラーネジ穴の内周上端からPCIEスロットの上端までを測定して、「ASUS WS X390 PRO」では約38.8mmです。
「ASUS WS X390 PRO」において最上段のPCIEスロットにプライマリグラフィックボードを設置すると、「Noctua NH-U12A chromax.black」とグラフィックボードが干渉しました。
現在は上から2段目にグラフィックボード用PCIEスロットがあるレイアウトが主流なので、1段目に配置されている「ASUS WS X390 PRO」は若干特殊な例ですが、1段目にグラフィックボード用のPCIEスロットがあるマザーボードでも120mm幅の「Noctua NH-U12A chromax.black」なら干渉することはないはずです。
各自で使用するIntel LGA1200/115X系マザーボードにおいて、上で測定したCPUクーラーとPCIEスロットの間隔が約31mm以上あれば「Noctua NH-U12A chromax.black」を設置してもCPUクーラーとグラフィックボードの干渉は発生しません。
AMD AM4環境ではCPUクーラーとPCIEスロットの間隔の基準値として、左下CPUクーラーネジ穴(標準搭載バックプレートのネジ穴)外周の下端からPCIEスロットの上端までを測定して、「ASUS ROG CROSSHAIR VIII Dark HERO」では約38.2mmです。
「ASUS ROG CROSSHAIR VIII Dark HERO」において最上段のPCIEスロットにプライマリグラフィックボードを設置しても、「Noctua NH-U12A chromax.black」とグラフィックボードが干渉することはありませんでした。
CPUクーラーとグラフィックボードの間には約12.3mmほどまだ余裕があるので、各自で使用するAMD AM4系マザーボードにおいて、上で測定したCPUクーラーとPCIEスロットの間隔が約17mm以上あれば「Noctua NH-U12A chromax.black」を設置してもCPUクーラーとグラフィックボードの干渉は発生しません。
比較的大型な空冷CPUクーラーの多くに言えることですが、干渉しないとしてもCPUクーラーとグラフィックボードの隙間は狭いので、CPUクーラーの設置自体は問題ないのですが取り外しの際には少し困るかもしれません。
取り付けよりも取り外しで困るというのは大型空冷CPUクーラーのあるあるネタなので注意してください。取り外しの際はグラフィックボード固定爪の解除のためにプラスチックの定規など細くて固いものを事前に用意しておくことをお勧めします。
システムメモリとのクリアランスについて
続いて空冷CPUクーラーではヒートシンク付きシステムメモリとの干渉が起きやすいので各種メモリを使用して、CPUクーラーとメモリの干渉の有無をチェックしていきます。メモリクリアランスの検証機材として、ヒートシンク非搭載のバルクメモリに加えて、「Kingston FURY Beast」「Kingston FURY Renegade」、「Corsair VENGEANCE LPX」、「G.Skill Flare X」、「G.Skill Trident Zシリーズ」「Corsair VENGEANCE RGB PRO」「Corsair Dominator Platinum RGB」などを使用します。
まずはCPUクーラーとメモリの高さ方向のクリアランスをチェックしていきます。
「Noctua NH-U12A chromax.black」ではヒートシンクなしのDDR4メモリより全高が12mm程度高いG.Skill Trident Zであれば、ファンの下端とメモリヒートシンクの上端が接して、ちょうど標準ファン固定位置にファンを設置することができました。
つまり「Noctua NH-U12A chromax.black」におけるメモリの高さ方向のクリアランスとしては、メモリの全高が約43mm以下なら左右方向のクリアランスも無視でき、干渉フリーでメモリとCPUクーラーを設置できます。
「Noctua NH-U12A chromax.black」ではファンを固定する高さをファンクリップの装着位置でオフセットして調節できますが、「Corsair VENGEANCE RGB PRO」や「Corsair Dominator Platinum RGB」など全高43mmよりも背の高いヒートシンク付きメモリでは、その分だけヒートシンク放熱フィンと冷却ファンのエアフロー面がずれてしまいます。
こういった使い方は避けた方が無難なので、左右方向クリアランスでファンとメモリスロットが被る場合は、使用するメモリの高さに制限がかかると考えてください。
ただし結論から言ってしまうと、Intel LGA1700やAMD AM4などマザーボード右端に4基のメモリスロットがある、一般的なATXマザーボードであれば、「Noctua NH-U12A chromax.black」はヒートシンクが後方にオフセットされているのでメモリスロットにファンが被さることはありません。
続いて各種プラットフォームに関してCPUクーラーとメモリの左右方向のクリアランスをチェックします。
Intel LGA1700環境ではCPUクーラーとメモリスロットの間隔の基準値として、右上CPUクーラーネジ穴の内周左端からメモリの左端までを測定して、「MSI MEG Z690 UNIFY」では約14.3mmです。
「MSI MEG Z690 UNIFY」においてCPUソケットに最も近いメモリスロットにヒートシンク付きメモリを設置しても、「Noctua NH-U12A chromax.black」とメモリが干渉することはありませんでした。
「Noctua NH-U12A chromax.black」はリアI/O側にヒートシンク本体がオフセットする形状になっているので、Intel LGA1700系マザーボードで使用する分にはCPUクーラーとメモリが干渉することはないと思います。
CPUクーラーとメモリヒートシンク表面の間には約4.0mmほどまだ余裕があるので、各自で使用するIntel LGA1700マザーボードにおいて、上で測定したCPUクーラーとPCIEスロットの間隔が約10mm以上あれば、「Noctua NH-U12A chromax.black」を設置してもCPUクーラーとメモリの干渉は発生しません。
Intel LGA1200/115X環境ではCPUクーラーとメモリスロットの間隔の基準値として、右上CPUクーラーネジ穴の内周左端からメモリの左端までを測定して、「ASUS WS X390 PRO」では約17.1mmです。
「ASUS WS X390 PRO」においてCPUソケットに最も近いメモリスロットにヒートシンク付きメモリを設置しても、「Noctua NH-U12A chromax.black」とメモリが干渉することはありませんでした。
「Noctua NH-U12A chromax.black」はリアI/O側にヒートシンク本体がオフセットする形状になっているので、Intel LGA1200/115X系マザーボードで使用する分にはCPUクーラーとメモリが干渉することはないと思います。
CPUクーラーとメモリヒートシンク表面の間には約4.0mmほどまだ余裕があるので、各自で使用するIntel LGA1200/115Xマザーボードにおいて、上で測定したCPUクーラーとPCIEスロットの間隔が約13mm以上あれば、「Noctua NH-U12A chromax.black」を設置してもCPUクーラーとメモリの干渉は発生しません。
AMD AM4環境ではCPUクーラーとメモリスロットの間隔の基準値として、右上CPUクーラーネジ穴(標準搭載バックプレートのネジ穴)外周の右端からPCIEスロットの右端までを測定して、「ASUS ROG CROSSHAIR VIII Dark HERO」では約22.2mmです。
「ASUS ROG CROSSHAIR VIII Dark HERO」においてCPUソケットに最も近いメモリスロットにヒートシンク付きメモリを設置しても、「Noctua NH-U12A chromax.black」とメモリが干渉することはありませんでした。
「Noctua NH-U12A chromax.black」はリアI/O側にヒートシンク本体がオフセットする形状になっているので、AMD AM4系マザーボードで使用する分にはCPUクーラーとメモリが干渉することはないと思います。
CPUクーラーとメモリヒートシンク表面の間には約3mmほどまだ余裕があるので、各自で使用するAMD AM4系マザーボードにおいて、上で測定したCPUクーラーとPCIEスロットの間隔が約19mm以上あれば、「Noctua NH-U12A chromax.black」を設置してもCPUクーラーとメモリの干渉は発生しません。
今回検証で使用した各種DDR4メモリと「Noctua NH-U12A chromax.black」のクリアランスに関する互換性を簡単にまとめると次の表のようになります。
Noctua NH-U12A chromax.blackのメモリ互換性 | ||||
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高さ 全高 |
HS 厚み |
Intel 1700 AMD AM4 |
Intel 2066 |
ヒートシンクなし | 31mm | - | 〇 | 〇 |
Kingston FURY Beast | 34mm +0mm |
2.9mm | 〇 | 〇 |
Corsair VENGEANCE LPX | 34mm +0mm |
3.0mm | 〇 | 〇 |
G.Skill Flare X G.Skill Ripjaws V |
39mm +0mm |
3.1mm | 〇 | 〇 |
Kingston FURY Renegade | 42mm +0mm |
3.4mm | 〇 | 〇 |
G.Skill Trident Z RGB/Royal/Neo |
43mm +0mm |
3.6mm | 〇 | 〇 |
Corsair Vengeance RGB PRO |
49mm +6mm |
2.9mm | 〇 | △ |
Corsair Dominator Platinum RGB |
54mm +11mm |
3.4mm | 〇 | △ |
Noctua NH-U12A chromax.blackのファンノイズと冷却性能
本題となるNoctua NH-U12A chromax.blackの冷却性能と静音性についてチェックしていきます。検証システムをベンチ板に置いた状態で測定を行っているためCPUクーラーが水冷・空冷によらず基本的にCPUクーラーの理想的な性能をチェックすることになります。
まずはサウンドレベルメーター(騒音計)を使用して「Noctua NH-U12A chromax.black」のファンノイズをファン回転数別で測定しました。
検証機材はベンチ台の上に平置きにしているので、サウンドレベルメーターをスタンドで垂直上方向に50cm程度離して騒音値を測定しています。
この測定方法において電源OFF時の騒音値は30dB未満です。目安として騒音値が35dBを超えたあたりからファンノイズがはっきりと聞こえるようになりますが、35~38dB以下であればPCケースに入れてしまえばファンノイズが気になることはそうそうないと思います。40dB前後になるとベンチ台上で煩く感じ始め、45dBを超えるとヘッドホンをしていてもはっきり聞き取れるくらいになります。
A特性で測定しているのである程度は騒音値にも反映されていますが、同じ騒音値でも周波数(ファン回転数)が高いほど体感としては大きな音に感じやすく、また不快に感じたり感じなかったりは音の性質(細かい乱高下の有無や軸ブレ)にもよるので注意してください。
「Noctua NH-U12A chromax.black」のファンノイズを測定したところ次のようになりました。
「Noctua NH-U12A chromax.black」は冷却ファンを1400~1600RPM前後に収まるようにするとノイズレベル35dB前後となり、静音動作で運用できると思います。
続いて「Noctua NH-U12A chromax.black」の冷却性能をチェックしていきます。
CPUクーラーの冷却性能を検証するためのストレステストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、Aviutl&x264を使って動画のエンコードを行います。動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列実行、16コア以上は3並列実行としています。テスト中のファン回転数については一定値に固定します。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
まずはIntel第12世代Alder Lake-S最上位モデル、16コア24スレッドCPUの「Intel Core i9 12900K」を使用して、Intel第12世代Core-S環境における、「Noctua NH-U12A chromax.black」の冷却性能を検証していきます。
Core i9 12900Kの動作設定はZ690マザーボードの多くで適用されている電力制限無効化とし、メモリのOC設定は「メモリ周波数:5200MHz(IMCはGear2)」「メモリ電圧:1.250V」「メモリタイミング:40-40-40-80-CR2」にしました。
16コア24スレッド「Intel i9 12900K」を定格動作倍率かつ電力制限無効化とすると、P-Core All 4.9GHzの動作になるので、Cinebench R23のマルチスレッドスコアは27600程度になります。シングルスレッドスコアは2020程度です。
この設定でx264動画エンコードを行うと、システム全体の消費電力が300~320W、VRM電源への影響が大きいEPS電源経由の消費電力は230Wに達します。
「Noctua NH-U12A chromax.black」のファン速度を1800RPMに固定した状態でストレステストを実行したところ、Core i9 12900KのCPU温度を最大96度、平均89.5度に収めることができました。
ストレステスト中のCPU消費電力(CPU Package Power)は230~240W程度で、CPU温度は高温ではあるものの強制的にコアクロックに制限がかかる臨界温度100度より低いので、コアクロックはP-Core All:4.9Hz、E-Core All:3.7GHzに綺麗に張り付いています。
Core i9 12900Kの動作倍率は定格設定のまま、長期間電力制限PL1を180Wや200Wに制限したケースについて検証してみました。短期間電力制限PL2は定格動作倍率に対して十分に高い300W、短期間電力制限時間Tauは56秒としています。
参考までに16コア24スレッド「Intel i9 12900K」を今回の検証で最も電力制限の厳しいPL1:180Wとすると、実動平均値でP-Core All 4.6~4.7GHzの動作になるので、Cinebench R23のマルチスレッドスコアは26600程度になります。シングルスレッドスコアは2020程度、電力制限の有無では変化しません。(PL1が十分に高いので)
この設定でx264動画エンコードを行うと、システム全体の消費電力が260W前後、VRM電源への影響が大きいEPS電源経由の消費電力は180Wに達します。
「Noctua NH-U12A chromax.black」のファン速度を1800RPMに固定した状態でストレステストを実行したところ、各電力制限設定においてCPU温度の推移は次のようになりました。
CPU Package Power(=PL1)が230~240Wで推移する電力制限無効化ではベンチ板測定でもCPU温度が90度を超えてしまいますが、PL1を200Wに設定すれば長期的な負荷に対して80度台前半、さらに電力制限を強めてPL1を180Wに設定すれば75度前後に収まります。
「Noctua NH-U12A chromax.black」で静音性も維持しつつ80度以下でCPUをしっかり冷やす、という条件になると、Core i9 12900KなどIntel第12世代CPUの場合はPL1:180W程度を目安に設定するのが良さそうです。
Noctua NH-U12Aは『120mmサイズ空冷ながら140mmサイズ空冷と同等の性能を実現』とアピールされているので、同社フラッグシップ空冷クーラーのNH-D15や、仮想140mmサイズCPUクーラーとしてNH-D15Sを比較対象として、Core i9 12900KなどIntel第12世代CPUにおける性能をチェックしてみました。
「Noctua NH-U12A chromax.black」など各CPUクーラーでファンノイズの騒音値が33dB前後と38dB前後になるように統一して、PL1:180Wに電力制限したCore i9 12900KのCPU温度を比較した結果が次のようになっています。
ヒートシンクの大きさだけ見れば仮想140mmサイズCPUクーラーのNH-D15Sの方が大きいですが、180Wクラスの発熱に対して「Noctua NH-U12A chromax.black」は同じノイズレベルで比較して高い冷却性能を実現しており、120mmサイズCPUクーラーとしては最強と言っても過言ではないと思います。
上の通り、「Noctua NH-U12A chromax.black」はCore i9 12900KのPL1:180Wに対してNH-D15と同等の冷却性能を発揮しています。さらにPL:200W、PL:Noと電力制限を緩めていくと下のグラフのように、NH-D15を上回る冷却性能でした。
「Noctua NH-U12A chromax.black」はヒートパイプ本数やヒートパイプの向き、ベースコアサイズといったヒートシンクの設計がIntel第12世代CPUにおいては有利な構造になっているようです。(Ryzen 5000シリーズやIntel第10世代Core-XだとNH-D15のほうが高冷却ですが)
続いてAMD Ryzen 5000シリーズ最上位モデル、16コア32スレッドCPUの「AMD Ryzen 9 5950X」を使用して、AMD Ryzen 5000シリーズ環境における「Noctua NH-U12A chromax.black」の冷却性能を検証していきます。
Ryzen 9 5950XのOC設定については、Precision Boost Overdriveを有効化して「PPT = 300W、TDC = 255A、EDC = 200A」、「OC Scaler:10x」、「Max:200Hz」としています。またCurve OptimizerはAll Core設定で一律に「-10Count」としました。
メモリのOC設定は「メモリ周波数:3600MHz」「メモリタイミング:16-16-16-36」「Command Rate:GearDownMode」「メモリ電圧:1.350V」としました。
この設定でRyzen 9 5950XをOCするとCinebench R23のスコアは29000ほどとなります。シングルスレッドスコアは1620程度です。
またこの動作設定において上で紹介したx264エンコードによるストレステストを実行すると、システムの消費電力(マイナス50~60WでRyzen 9 5950Xの消費電力)は270W前後に達します。
「Noctua NH-U12A chromax.black」の冷却ファンを1400RPMに固定してストレステストを実行したところ、「Noctua NH-U12A chromax.black」はPBOによって全コア4.3GHz前後にクロックアップしたRyzen 9 5950XのCPU温度を最大86.1度、平均84.1度に収めることができました。
CPU温度が85度前後と十分に低いので、CPU Package Powerは200W前後で安定し、実動CPUコアクロックは4.3GHz前後でした。
Noctua NH-U12A chromax.blackのレビューまとめ
最後に「Noctua NH-U12A chromax.black」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- Noctua製空冷ながら黒一色で一般受けしやすいChromaxデザイン
- 44mm×44mmの大型銅製ベースプレートと7本の6mm径ヒートパイプ
- NF-A12x25 PWM搭載で一般的な120mmサイズCPUクーラーよりも静音性が高い
- 120mmサイズ冷却ファン採用の標準サイズなのでオールラウンドに対応可能
- 全高43mm以下のヒートシンク付きメモリなら標準の高さのままで使用可能
- Intel LGA1700/1200やAMD AM4環境では基本的にメモリとの干渉は発生しない
- 基本的にグラフィックボードとの干渉は発生しない
- Core i9 12900KやRyzen 9 5950Xで200W前後の負荷を運用可能な冷却性能
- リテンションブラケットはCPUクーラーに固定済み
- CPUクーラーマウントパーツは単独でマザーボードに固定され脱落しない
- フラッグシップモデルNH-D15よりも若干高価
冷却性能の検証結果からもわかるように「Noctua NH-U12A chromax.black」は、電力制限無効化/手動OCによって200Wクラスの電力負荷も発生するメインストリーム向け最上位CPUのCore i9 12900KやRyzen 9 5950Xに対応可能な優れた冷却性能を実現しています。
「Noctua NH-U12A chromax.black」は同社のスタンダートモデルであるNH-U12Sを上回るのは当然に、仮想140mmサイズCPUクーラーとして今回用意したNH-D15Sと比較して同じノイズレベルで同等もしくは上回る冷却性能を発揮しています。
同社が『140サイズCPUクーラーなみの冷却性能』と謳っているのも納得のパフォーマンスでしたし、120mmサイズ空冷CPUクーラーでは最強の冷却性能と言っても過言ではないと思います。
シルバーのニッケルメッキで表面処理された大型のアルミ放熱フィンを搭載するヒートシンクは工業製品的な美しさがあるものの、Noctuaを代表するベージュ&ブラウンのカラーリングの冷却ファンはかなりユニークなのでNoctua製CPUクーラーは総じて人を選ぶデザインだというのが定説でした。
「Noctua NH-U12A chromax.black」は万人受けする黒一色のカラーリングなので、これまで高性能な空冷CPUクーラーと知っていいてもデザイン面でNoctua製品を敬遠していた人にも文句なしにオススメできます。
「Noctua NH-U12A chromax.black」は120mmサイズ冷却ファンを搭載する標準的なサイズのサイドフロー型CPUクーラーなのでPCケースとの干渉を気にすることなくオールラウンドに対応可能な汎用性も魅力です。Intel LGA1700/1200やAMD AM4の環境であればグラフィックボードとメモリともに基本的に干渉フリーです。
CPUソケット両側にメモリスロットがあるプラットフォームでも、G.Skill Trident Zなど全高43mm以下のメモリは問題なく使用でき、フロントファンのみで運用するのであれば干渉フリーで使用できます。
以上、「Noctua NH-U12A chromax.black」のレビューでした。
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140サイズ空冷並みの冷却性能を実現したNH-U12Aのフルブラックモデル「Noctua NH-U12A chromax black」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) January 2, 2022
Core i9 12900KやRyzen 9 5950Xで冷却性能を徹底検証https://t.co/gZ8ukLTaDt pic.twitter.com/KENg7avpi4
補足:空冷クーラーと水冷クーラーの違いについて
「空冷クーラー」と「水冷クーラー」の2種類ついて同じところと違うところ、また原理的に考えた冷却性能の比較を簡単に補足しておきます。関連記事
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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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